説明

光学用両面粘着シート

【課題】段差吸収性に優れるとともに、耐発泡剥がれ性に優れる光学用両面粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の光学用両面粘着シートは、アクリル系ポリマーAと重量平均分子量が1000〜30000のアクリル系ポリマーBとを含み、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力が3.0N/cm2以下である粘着剤層を有することを特徴とする。上記粘着剤層中の上記アクリル系ポリマーBの含有量は、上記アクリル系ポリマーA100重量部に対して1重量部以上15重量部未満であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートに関する。より詳細には、光学部材の貼り合わせや光学部品の製造に用いられる光学用両面粘着シート、及び、該光学用両面粘着シートを用いた粘着型光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シートが使用されている。例えば、タッチパネルなどと液晶表示装置との貼付に透明な両面粘着シートが使用されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記光学部材の中には、印刷段差等の段差を有する部材を含むものが増えてきている。例えば、液晶表示装置上に枠状の印刷が施されたレンズ部材を両面粘着シートを介して貼り合わせる場合などがある。このような場合、印刷段差に起因して製品に局所的な応力がかかる場合があり、これにより光学特性のムラ(斑)(例えば、表示ムラなど)が生じる場合がある。このため、このような用途においては、粘着シートには、部材を貼付固定する性能と同時に応力緩和性が要求される。また上記のような光学部材を貼り合わせる用途においては、特に、粘着シートには、接着性、透明性に加えて、高温や高湿環境下等で、発泡や剥がれを生じない性質(耐発泡剥がれ性)などの優れた信頼性が求められている。
【0004】
このような要求に対して、応力緩和性及び耐発泡剥がれ性を備える粘着シートが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2003−342542号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【特許文献4】特開2010−189545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、信頼性(特に耐発泡剥がれ性)、特にプラスチックに対する信頼性や段差吸収性の要求はますます厳しくなってきている。例えば、ガラス等の剛体同士の貼付において23〜28μm程度の大きな段差を埋めることなどが求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、段差吸収性に優れるとともに、耐発泡剥がれ性に優れる光学用両面粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、光学用両面粘着シートが有する粘着剤層を、アクリル系ポリマーと特定の重量平均分子量のアクリル系ポリマーとを含み、特定の残留応力が所定の値以下である粘着剤層とすると、段差吸収性及び耐発泡剥がれ性に優れる光学用両面粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、アクリル系ポリマーAと重量平均分子量が1000〜30000のアクリル系ポリマーBとを含み、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力が3.0N/cm2以下である粘着剤層を有することを特徴とする光学用両面粘着シートを提供する。
【0010】
上記粘着剤層中の上記アクリル系ポリマーBの含有量は、上記アクリル系ポリマーA100重量部に対して1重量部以上15重量部未満であることが好ましい。
【0011】
上記アクリル系ポリマーAは、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0012】
上記アクリル系ポリマーBは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0013】
上記アクリル系ポリマーAは、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0014】
上記光学用両面粘着シートは、粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シートであることが好ましい。
【0015】
上記光学用両面粘着シートの総厚みは、50〜600μmであることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明は、光学部材の表面に、上記光学用両面粘着シートを有することを特徴とする粘着型光学部材を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学用両面粘着シートは、粘着剤層がアクリル系ポリマーBを含むので耐発泡剥がれ性(耐発泡信頼性)に優れ、粘着剤層の特定の残留応力が所定の値以下であるので段差吸収性(被着体表面の段差を埋めることができる特性)に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、段差吸収性の評価に用いた、印刷段差付きガラス板を示す概略図(平面図)である。
【図2】図2は、段差吸収性の評価に用いた、印刷段差付きガラス板を示す概略図(A−A’線切断部端面図)である。
【図3】図3は、耐発泡信頼性の評価に用いた、印刷段差付きアクリル板を示す概略図(平面図)である
【図4】図4は、耐発泡信頼性の評価に用いた、印刷段差付きアクリル板を示す概略図(B−B’線切断部端面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光学用両面粘着シートは、アクリル系ポリマーAと重量平均分子量が1000〜30000のアクリル系ポリマーBとを含み、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力が3.0N/cm2以下である粘着剤層を、少なくとも1層有する。本明細書において、本発明の光学用両面粘着シートを、単に、「本発明の両面粘着シート」と称する場合がある。また、「アクリル系ポリマーAと重量平均分子量が1000〜30000のアクリル系ポリマーBとを含み、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力が3.0N/cm2以下である粘着剤層」を、「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。さらに、「温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力」を、単に「残留応力」と称する場合がある。
【0020】
なお、本発明の両面粘着シートにおいて、「粘着シート」という場合には、テープ状のもの、即ち、「粘着テープ」も含まれるものとする。また、本発明の両面粘着シートの「粘着剤層表面」を「粘着面」と称する場合がある。
【0021】
[本発明の粘着剤層]
本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーAとアクリル系ポリマーBとを少なくとも含む。なお、本発明の粘着剤層では、アクリル系ポリマーAが、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。さらに、アクリル系ポリマーBが、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていていてもよい。
【0022】
上記本発明の粘着剤層は、粘着剤組成物(粘着剤形成用組成物)により形成される。なお、上記「粘着剤組成物」には「粘着剤を形成するための組成物」という意味も含むものとする。
【0023】
本発明の粘着剤層における、アクリル系ポリマーA及びアクリル系ポリマーBの合計量は、特に限定されないが、本発明の粘着剤層の全重量(100重量%)に対して、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%である。すなわち、本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーA及びアクリル系ポリマーBを必須として含むアクリル系粘着剤層である。
【0024】
また、本発明の粘着剤層における、アクリル系ポリマーAの含有量は、特に限定されないが、粘着特性の点から、本発明の粘着剤層全量(100重量%)に対して、85重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上である。
【0025】
(アクリル系ポリマーA)
上記アクリル系ポリマーAは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として構成された重合体である。アクリル系ポリマーAは、アクリル系ポリマーBとは異なるポリマーである。上記「異なる」とは、構成モノマー種及びその量が完全一致ではないことを意味する。また、アクリル系ポリマーAの重量平均分子量は、アクリル系ポリマーBの重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。なお、上記アクリル系ポリマーAは、アクリル系モノマーと該アクリル系モノマー以外のモノマー(共重合性モノマー)とをモノマー成分として構成された共重合体であってもよい。
【0026】
上記アクリル系ポリマーAは、特に限定されないが、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましく、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることがより好ましい。上記アクリル系ポリマーAがアクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されていると、アクリル系ポリマーBとの相溶性が向上するためであり、さらに、粘着剤層の耐発泡剥がれ性が向上するためである。粘着剤層の耐発泡剥がれ性が向上するのは、アルコキシル基(アルコキシ基)の効果により、アクリル系ポリマーを架橋により高分子量化したときに適度な分子鎖同士の絡み合いが生じるため、高温下でも粘着剤層が高い粘着力を発揮でき、かつ高温下でも粘着剤層の貯蔵弾性率が低下しないためと考えられる。また、上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
【0027】
また、上記アクリル系ポリマーAは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであってもよい。
【0028】
上記アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸3−エトキシプロピル、アクリル酸4−メトキシブチル、アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。中でも、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)好ましい。なお、上記アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
また、上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n−ブチル)、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が1〜20であるアルキル基(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、炭素数が4〜12であるアルキル基(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
特に、上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、段差吸収性、低温落下衝撃性の点から、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が−55℃以下のものがより好ましい。具体的には、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)(Tg:−70℃)、アクリル酸ブチル(BA)(Tg:−57℃)、アクリル酸イソオクチル(iOA)(Tg:−58℃)などが好ましい。なお、該Tgは、ホモポリマーとした時のガラス転移温度を意味する。
【0031】
なお、モノマーのホモポリマーのTgについて、上記より、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)のホモポリマーTgは−70℃であり、アクリル酸ブチル(BA)のホモポリマーのTgは−57℃であり、アクリル酸イソオクチル(iOA)のホモポリマーにTgは、−58℃である。
【0032】
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸イソオクチル(iOA)以外の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマーTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。
【0033】
また、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸イソオクチル(iOA)以外であり、且つ上記文献にも記載されていないもののTgは、例えば、以下の測定方法1により得られる値(特開2007−51271号公報参照)を採用できる。
(測定方法1)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部及び重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを投入しながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚み約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0034】
上記アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、上記アクリル系モノマーの含有量、特に、上記アクリル系ポリマーAがアクリル酸アルコキシアルキルエステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである場合におけるアクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量と直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量との合計量は、特に限定されないが、本発明の粘着剤層の接着性の点から、80重量%以上(例えば80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは85重量%以上(例えば85〜95重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、90〜95重量%)である。
【0035】
特に、上記アクリル系ポリマーAがアクリル酸アルコキシアルキルエステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである場合、アクリル系モノマー全量(100重量%)における(メタ)アクリル酸アルキルエステルと直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーAのアクリル系ポリマーBに対する相溶性の点、粘着剤層の接着性の点、粘着剤層の貯蔵弾性率(23℃)を調整して粘着剤層の残留応力が高くなることを防ぐ点から、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル:直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(重量基準)で、30:70〜5:95が好ましく、より好ましくは30:70〜10:90、さらに好ましくは25:75〜10:90である。
【0036】
また、上記アクリル系ポリマーAは、アクリル系モノマーと共重合性モノマーとの共重合体である場合、該共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、窒素原子含有モノマー、多官能性モノマーなどが好ましく挙げられる。なお、上記共重合性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
上記アクリル系ポリマーAは、粘着剤層の耐発泡剥がれ性を向上させる点から、共重合性モノマー成分として窒素原子含有モノマーが用いられていることが好ましい。窒素原子含有モノマーとは、分子内に窒素原子を少なくとも一つ有するモノマーのことをいう。上記窒素原子含有モノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが好ましく挙げられる。中でも、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド(DMAA)などがより好ましく挙げられる。なお、窒素原子含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0038】
上記アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、上記窒素原子含有モノマーの含有量は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。上記窒素原子含有モノマーの含有量が1重量%以上であると、粘着剤層の耐発泡剥がれ性が向上する傾向がある。また上記窒素原子含有モノマーの含有量が30重量%以下とすると、粘着剤層が適度な柔らかさを有し、粘着力や段差吸収性が向上する傾向がある。
【0039】
上記アクリル系ポリマーAは、粘着剤層のゲル分率を調整して、所定の残留応力を得る点から、共重合性モノマー成分として多官能性モノマーが用いられていることが好ましい。上記多官能性モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が好ましい。なお、上記多官能性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0040】
アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の上記多官能性モノマーの含有量は、特に限定されないが、0.001〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.002〜0.15重量部である。
【0041】
また、上記の窒素原子含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマー(その他の共重合性モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0042】
さらに、上記共重合性モノマー(その他の共重合性モノマー)としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルなどの上記のアクリル酸アルコキシアルキルエステル、と直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、窒素原子含有モノマー、多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0043】
特に、上記アクリル系ポリマーAは、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が−55℃以下の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、N−ビニル−2−ピロリドンを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0044】
上記アクリル系ポリマーAは、上記アクリル系モノマーや上記共重合性モノマーなどの上記モノマー成分を公知乃至慣用の重合方法で重合することにより形成される。上記アクリル系ポリマーAの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、光学特性、プラスチックに対する信頼性の点から、溶液重合方法や活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは活性エネルギー線重合方法である。すなわち、上記アクリル系ポリマーAは、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
【0045】
上記の活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0046】
なお、上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。このような溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0047】
上記アクリル系ポリマーAの形成に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤が用いられてもよい。なお、重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
上記光重合開始剤としては、特に限定さないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0049】
上記光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量100重量部に対して0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部である。
【0050】
また、上記熱重合開始剤としては、特に限定さないが、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。上記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどが挙げられる。上記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどが挙げられる。なお、上記光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲で選択されることが好ましい。
【0051】
上記アクリル系ポリマーAのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−80〜20℃が好ましく、より好ましくは−60〜0℃、さらに好ましくは−50〜−10℃である。アクリル系ポリマーAのガラス転移温度を20℃以下とすることにより、粘着剤層が適度な柔軟性を有し、粘着力や段差吸収性が向上する傾向がある。
【0052】
上記アクリル系ポリマーAのガラス転移温度(Tg)は、下記式で表されるガラス転移温度(理論値)である。
1/Tg = W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記式中、Tgはアクリル系ポリマーAのガラス転移温度(単位:K)、Tgiはモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wiはモノマーiのモノマー成分全量中の重量分率を表す(i=1、2、・・・・n)。なお、上記はアクリル系ポリマーAがモノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0053】
なお、モノマーのホモポリマーのTgについて、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)のホモポリマーTgは−70℃であり、アクリル酸ブチル(BA)のホモポリマーのTgは−57℃であり、アクリル酸イソオクチル(iOA)のホモポリマーにTgは−58℃である。
【0054】
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸イソオクチル(iOA)以外のモノマーのホモポリマーTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。
【0055】
また、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸イソオクチル(iOA)以外のモノマーであり、且つ上記文献にも記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、上記測定方法1により得られる値(特開2007−51271号公報参照)を採用できる。
【0056】
なお、アクリル系ポリマーAのゾル分の重量平均分子量は、7万以上である。上記ゾル分は、アクリル系ポリマーA中のクロロホルム抽出における可溶分を示す。例えば、アクリル系ポリマーAのゾル分の重量平均分子量は、GPC測定(GPC法による分子量測定)により測定することができる。
【0057】
(アクリル系ポリマーB)
本発明の粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーBは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として構成されたオリゴマーである。
【0058】
上記アクリル系ポリマーBとしては、特に限定されないが、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、本明細書では、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを、「環含有(メタ)アクリル酸エステル」と称する場合がある。
【0059】
上記環含有(メタ)アクリル酸エステルの環状構造(環)は、芳香族性環、非芳香族性環のいずれであってもよく、特に限定されない。上記芳香族性環としては、例えば、ベンゼン環等の単環炭素環、ナフタレン環等の縮合炭素環などの芳香族性炭素環;各種の芳香族性複素環などが挙げられる。また、上記非芳香族性環としては、例えば、非芳香族性脂肪族環(非芳香族性脂環式環)、非芳香族性橋かけ環、非芳香族性複素環などが挙げられる。上記非芳香族性脂肪族環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などのシクロアルカン環;シクロヘキセン環などのシクロアルケン環などが挙げられる。上記非芳香族性橋かけ環としては、例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネンなどにおける二環式炭化水素環;アダマンタンなどにおける三環以上の脂肪族炭化水素環(橋かけ式炭化水素環)などが挙げられる。上記非芳香族性複素環としては、例えば、エポキシ環、オキソラン環、オキセタン環などが挙げられる。
【0060】
上記三環以上の脂肪族炭化水素環(三環以上の橋かけ式炭化水素環)としては、例えば、下記式(1a)で表されるジシクロペンタニル基、下記式(1b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(1c)で表されるアダマンチル基、下記式(1d)で表されるトリシクロペンタニル基、下記式(1e)で表されるトリシクロペンテニル基などが挙げられる。
【0061】
【化1】

【0062】
すなわち、上記環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートなどの三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステルなどの芳香族性環を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。中でも、上記環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に、非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)であり、さらに好ましくはアクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)である。なお、環含有(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
上記非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルの中でも、三環以上の脂肪族炭化水素環(特に、三環以上の橋かけ式炭化水素環)を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合、特に、重合阻害を起こしにくい点で好ましい。さらに、不飽和結合を有しない上記式(1a)で表されるジシクロペンタニル基、上記式(1c)で表されるアダマンチル基、上記式(1d)で表されるトリシクロペンタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合には、耐発泡剥がれ性をより高めることができ、さらに、ポリエチレンやポリプロプレンなどの低極性の被着体に対する接着性を顕著に向上させることができる点で好ましい。
【0064】
上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、上記環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、特に限定されないが、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜80重量%であり、さらに好ましくは35〜80重量%である。上記環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量が10重量%以上であると、アクリル系ポリマーのTgが大きくなり、耐発泡剥がれ性が向上する傾向がある。一方、含有量が90重量%以下であると、粘着剤層が適度な柔軟性を有し、粘着力や段差吸収性などが向上する傾向がある。
【0065】
また、上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が1〜20のアルキル基(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも、アクリル系ポリマーAとの相溶性が良好となる点で、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。なお、上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0066】
上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、特に限定されないが、耐発泡剥がれ性の点で、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。この含有量が10重量%以上であると、特に、アクリル樹脂やポリカーボネート製の被着体に対する粘着力が向上する傾向がある。
【0067】
また、上記アクリル系ポリマーBは、上記アクリル系モノマーと、上記アクリル系モノマー以外のモノマーであり、上記アクリル系モノマーと共重合が可能なモノマー(共重合性モノマー)とをモノマー成分として構成された共重合体であってもよい。上記共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、イミド基含有モノマーなどが挙げられる。より具体的には、上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。また、無水マレイン酸などの酸無水物基含有モノマーも上記カルボキシル基含有モノマーに含まれる。上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどが挙げられる。上記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどが挙げられる。上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。上記イミド基含有モノマーとしては、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどが挙げられる。なお、上記共重合性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0068】
上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、上記共重合性モノマーの含有量は、特に限定されないが、49.9重量%以下(例えば、0〜49.9重量%)が好ましく、より好ましくは30重量%以下である。
【0069】
上記アクリル系ポリマーBは、環含有(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましく、特に好ましい具体的構成としては、[1]アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、及びメタクリル酸シクロヘキシルからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー、ならびに[2]メタクリル酸メチルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーが挙げられる。上記の特に好ましい具体的構成のアクリル系ポリマーBにおける、上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、[1]アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、及びメタクリル酸シクロヘキシルの含有量(2種以上を含む場合はこれらの合計量)は30〜70重量%、[2]メタクリル酸メチルの含有量は30〜70重量%であることが好ましい。但し、アクリル系ポリマーBは、上記具体的構成に限定されるものではない。
【0070】
上記アクリル系ポリマーBは、上記モノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合することによって形成される。上記アクリル系ポリマーBの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、Tgの高いオリゴマーであっても、取り扱いが容易となる点から、塊状重合方法、溶液重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0071】
上記アクリル系ポリマーBの重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0072】
また、上記アクリル系ポリマーBの重合に際しては、公知乃至慣用の重合開始剤が使用されてもよい。具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系開始剤などが挙げられる。なお、溶液重合を行う場合には、油溶性の重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。上記重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲から適宜選択される。
【0073】
上記アクリル系ポリマーBの重合に際しては、分子量を調整するため(具体的には、重量平均分子量を1000〜30000に調整するため)に、連鎖移動剤を使用することができる。上記連鎖移動剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、α−チオグリセロール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、t−ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。なお、連鎖移動剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。中でも、チオグリコール酸、α−チオグリセロールなどが特に好ましい。
【0074】
上記連鎖移動剤の含有量(使用量)は、特に限定されないが、上記アクリル系ポリマーBを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部である。連鎖移動剤の含有量(使用量)を上記範囲とすることにより、重量平均分子量が1000〜30000に制御されたアクリル系ポリマーを容易に得ることができる。
【0075】
上記アクリル系ポリマーBの重量平均分子量(Mw)は、1000〜30000であり、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜4000である。上記アクリル系ポリマーBの重量平均分子量を1000以上とすることにより、粘着力や保持特性が向上し、耐発泡剥がれ性が向上する。一方、上記アクリル系ポリマーBの重量平均分子量を30000以下とすることにより、粘着力を高くしやすく、耐発泡剥がれ性が向上する。
【0076】
上記アクリル系ポリマーBの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。より具体的には、例えば、GPC測定装置として、商品名「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)を用いて、下記の条件にて測定し、標準ポリスチレン換算値により算出することができる。
(分子量測定条件)
・サンプル濃度:約2.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:20μL
・カラム:商品名「TSKgel,SuperAWM−H+superAW4000+superAW2500」(東ソー(株)製)
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.4mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
【0077】
上記アクリル系ポリマーBのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、20〜300℃が好ましく、より好ましくは30〜300℃、より好ましくは40〜300℃である。上記アクリル系ポリマーBのガラス転移温度を20℃以上とすることにより、耐発泡剥がれ性が向上する傾向がある。一方、上記アクリル系ポリマーBのガラス転移温度を300℃以下とすることにより、粘着剤層が適度な柔軟性を有し、粘着力や段差吸収性が向上する傾向がある。
【0078】
上記アクリル系ポリマーBのガラス転移温度(Tg)は、下記式で表されるガラス転移温度(理論値)である。
1/Tg = W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記式中、Tgはアクリル系ポリマーBのガラス転移温度(単位:K)、Tgiはモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wiはモノマーiのモノマー成分全量中の重量分率を表す(i=1、2、・・・・n)。なお、上記はアクリル系ポリマーBがモノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0079】
なお、モノマーのホモポリマーのTgについて、下記表1記載のモノマーは、下記表1の値を採用できる。
【0080】
下記表1記載のモノマー以外のモノマーのホモポリマーTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。
【0081】
また、下記表1記載のモノマー以外モノマーであり、且つ上記文献にも記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、上記測定方法1により得られる値(特開2007−51271号公報参照)を採用できる。
【0082】
【表1】

【0083】
上記本発明の粘着剤層中の上記オリゴマーBの含有量は、特に限定されないが、上記アクリル系ポリマーAとの相溶性の点、粘着剤層の耐発泡剥がれ性の点及び低温落下衝撃性の点から、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、1重量部以上15重量部未満であることが好ましく、より好ましくは1重量部以上8重量部未満であり、さらに好ましくは1重量部以上5.5重量部未満である。なお、粘着剤層中のアクリル系ポリマーAの量は、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分の総和と等しい。
【0084】
特に、本発明の両面粘着シートが有する上記本発明粘着剤層は、アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成され、構成するモノマー成分全量(100重量%)中のアクリル酸アルコキシアルキルエステルと直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計の含有量が80重量%以上であるアクリル系ポリマーAと、環含有(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として構成され、構成するモノマー成分全量(100重量%)中の環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量が10重量%以上であるアクリル系ポリマーBとを含むことが好ましい。
【0085】
上記本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーAとアクリル系ポリマーBとを含み、該アクリル系ポリマーAと該アクリル系ポリマーBとは、別のバッチでそれぞれ重合されたものであることが好ましい。特に、上記本発明の粘着剤層は、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーAと溶液重合により形成されたアクリル系ポリマーBとを含み、該アクリル系ポリマーAと該アクリル系ポリマーBとは、別のバッチでそれぞれ重合されたものであることが好ましい。
【0086】
上記本発明の粘着剤層は、粘着剤組成物により形成される。上記粘着剤組成物としては、特に限定されないが、本発明の粘着剤層を形成する組成物であって、アクリル系ポリマーBを必須成分として含む粘着剤組成物であることが好ましい。これは、信頼性、特にプラスチックに対する接着信頼性を向上させるためであるからである。
【0087】
つまり、上記粘着剤組成物では、アクリル系ポリマーBは、アクリル系ポリマーAとは別に重合されたものであることが好ましい。すなわち、本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーA及びアクリル系ポリマーBとを少なくとも含む粘着剤組成物により形成されていてもよいし、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)又はその部分重合物(プレポリマー)及びアクリル系ポリマーBを少なくとも含む粘着剤組成物により形成されていてもよい。
【0088】
上記粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系ポリマーA及びアクリル系ポリマーBとを必須成分として含む粘着剤組成物、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物及びアクリル系ポリマーBを必須成分として含む粘着剤組成物などが好ましく挙げられる。なお、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられる。また、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0089】
特に、上記粘着剤組成物は、生産性の点、環境の点、厚みのある粘着剤層の得やすさの点から、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物とアクリル系ポリマーBとを必須成分として含む活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。
【0090】
また、上記粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で用いられていてもよい。
【0091】
上記架橋剤を用いることにより、本発明の粘着剤層におけるアクリル系ポリマー(特に、アクリル系ポリマーA)を架橋し、本発明の粘着剤層のゲル分率をコントロールすることができる。上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、耐発泡剥がれ性向上の点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。また、上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートHL」]、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物[三井化学株式会社製、商品名「タケネートD−110N」]などの市販品が用いられてもよい。
【0093】
また、上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。また、上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」などの市販品が用いられてもよい。
【0094】
上記粘着剤組成物における架橋剤の含有量としては、特に限定されないが、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部である。架橋剤の含有量を0.001重量部以上とすることにより、耐発泡剥がれ性が向上する傾向がある。一方、架橋剤の含有量を10重量部以下とすることにより、粘着剤層が適度な柔軟性を有し、粘着力が向上する傾向がある。
【0095】
さらに、上記粘着剤組成物には、ガラスに対する接着性(特に、高温高湿でのガラスに対する接着信頼性)向上を目的として、シランカップリング剤が用いられてもよい。上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましく例示される。中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。上記シランカップリング剤としては、例えば、商品名「KBM−403」(信越化学工業株式会社製)などの市販品が用いられてもよい。なお、シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0096】
上記粘着剤組成物における上記シランカップリング剤の含有量としては、特に限定されないが、ガラスに対する接着信頼性向上の点、特に加湿環境下でのガラスに対する接着信頼性向上の点から、例えば、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0097】
上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよい。例えば、上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、エマルジョン型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などであってもよく、中でも、溶剤型(溶液型)粘着剤や活性エネルギー線硬化型粘着剤であることが好ましい。特に、上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、生産性の点、環境の点、厚みのある粘着剤層の得やすさの点から、活性エネルギー線硬化型粘着剤であることが好ましい。
【0098】
上記粘着剤組成物の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、上記活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーAの形成に用いられるモノマー混合物又はその部分重合物、アクリル系ポリマーB、必要に応じて加えられる添加剤等を混合することにより、調製される。
【0099】
上記本発明の粘着剤層は、特に限定されないが、例えば、上記粘着剤組成物を基材又は剥離ライナー上に塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化させることによって形成される。例えば、本発明の粘着剤層は、上記活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物を、基材又は剥離ライナー上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線を照射することにより形成される。なお、活性エネルギー線照射に加えて、必要に応じて、加熱乾燥が行われてもよい。
【0100】
なお、上記粘着剤組成物の塗布(塗工)には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、慣用のコーター、具体的には、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどが用いられてもよい。
【0101】
上記本発明の粘着剤層の残留応力(温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力)は、段差吸収性を向上させる点から、3.0N/cm2以下(例えば0.5〜3.0N/cm2)であり、好ましくは0.5〜2.5N/cm2、さらに好ましくは0.5〜2.0N/cm2である。
【0102】
なお、上記残留応力は、引張応力緩和試験により測定される。具体的には、引張試験機を使用して、23℃の環境下、測定サンプル(粘着剤層)を歪み(伸び)300%まで引っ張り(引張速度200m/分)、その歪みを保持し、引っ張り終了から180秒経過後の応力(引張応力)(N/cm2)を測定し、残留応力とすることができる。なお、測定は、例えば、後述の(評価)の「(4)引張応力緩和試験(残留応力)」に記載の方法で行われる。
【0103】
また、本発明の粘着剤層のゲル分率は、特に限定されないが、粘着剤層の残留応力を好ましい範囲に制御して、粘着剤層の段差吸収性を向上させる点から、10〜70%(重量%)であり、好ましくは20〜70%、さらに好ましくは35〜65%である。
【0104】
上記ゲル分率(溶剤不溶成分の割合)は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(X−Y)/(Z−Y)×100
(上記式において、Xは浸漬後重量であり、Yは包袋重量であり、Zは浸漬前重量である。)
【0105】
また、本発明の粘着剤層の、動的粘弾性測定により測定される23℃における貯蔵弾性率は、特に限定されないが、粘着剤層の残留応力を好ましい範囲に制御して、粘着剤層の段差吸収性を向上させる点から、1.2×105Pa以下(例えば5.0×104〜1.2×105Pa)が好ましく、より好ましくは6.0×104〜1.2×105Pa、さらに好ましくは6.0×104〜1.1×105Paである。なお、本明細書では、動的粘弾性測定により測定される23℃における貯蔵弾性率を、「貯蔵弾性率(23℃)」又は「G’(23℃)」と称する場合がある。
【0106】
なお、上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により測定される。例えば、粘着剤層を厚み約1.5mm程度になるように複数層積層させ、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」にて、剪断モードで、周波数1Hzの条件で、−70〜200℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定することができる。
【0107】
本発明の粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、50〜600μmが好ましく、より好ましくは70〜500μm、さらに好ましくは70〜250μmである。本発明の粘着剤層の厚みが50μm未満であると、被着体の段差に追従できない場合がある。一方、本発明の粘着剤層の厚みが600μmを超えると、加工性が低下する場合がある。
【0108】
[本発明の両面粘着シート]
本発明の両面粘着シートは、上記本発明の粘着剤層を少なくとも1層有する。本発明の両面粘着シートは、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプの両面粘着シート」(「基材レス両面粘着シート」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有する、いわゆる「基材付きタイプの両面粘着シート」(「基材付き両面粘着シート」と称する場合がある)であってもよい。なお、上記の「基材(基材層)」には、粘着シートの使用(貼付)時に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は含まない。
【0109】
上記基材レスタイプの両面粘着シートとしては、例えば、上記本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シートや、本発明の粘着剤層と上記他の粘着剤層からなる両面粘着シートなどが挙げられる。また、基材付きタイプの両面粘着シートとしては、例えば、基材の両面側に上記本発明の粘着剤層を有する両面粘着シート、基材の一方の面側に上記本発明の粘着剤層を有し、基材の他方の面側に上記他の粘着剤層を有する両面粘着シートなどが挙げられる。
【0110】
中でも、本発明の両面粘着シートは、透明性などの光学特性向上の点から、基材レス両面粘着シートであることが好ましく、本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シートであることが特に好ましい。すなわち、本発明の両面粘着シートは、本発明の粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シートであることが特に好ましい。
【0111】
なお、本発明の両面粘着シートは、本発明の粘着剤層、他の粘着剤層、基材以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0112】
本発明の両面粘着シートは、使用時までは粘着面にセパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。本発明の両面粘着シートの粘着面がセパレータにより保護される形態は、特に限定されないが、2枚のセパレータによりそれぞれの粘着面が保護される形態であってもよいし、ロール状に巻回されることにより、両面が剥離面である1枚のセパレータで、それぞれの粘着面が保護される形態であってもよい。セパレータは、粘着剤層の保護材として用いられ、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、本発明の両面粘着シートにおいて、セパレータは、粘着剤層の支持体としての役割も担う。なお、セパレータは必ずしも設けられなくてもよい。
【0113】
なお、上記セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、上記セパレータは公知乃至慣用の方法により形成される。また、セパレータの厚み等も、特に限定されない。
【0114】
(基材)
上記のように、本発明の両面粘着シートは、基材を有していてもよい。上記基材としては、特に限定されないが、例えば、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、これらのプラスチック材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の「基材」とは、粘着シートを被着体(光学部材等)に貼付する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。粘着シートの使用時(貼付時)に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は、「基材」には含まれない。
【0115】
上記基材は、透明であることが好ましい。上記基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。また、上記基材のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。このような透明な基材としては、例えば、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムなどが挙げられる。
【0116】
上記基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、12〜75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、上記基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理が適宜施されていてもよい。
【0117】
(他の粘着剤層)
本発明の両面粘着シートは、他の粘着剤層(上記本発明の粘着剤層以外の粘着剤層)を有していてもよい。上記他の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知乃至慣用の粘着剤層が挙げられる。なお、上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0118】
本発明の両面粘着シートの厚み(総厚み)は、特に限定されないが、50〜600μmが好ましく、より好ましくは50〜500μmである。上記厚みが50μm以下であると、貼り付け時に発生する応力が分散しにくくなり、被着体の段差に追従できないことがある。一方、上記厚みが600μmを超えると、光学用粘着シートとして求められる透明性や外観に悪影響を与えることがある。なお、本発明の両面粘着シートの厚みは、一方の粘着面から他方の粘着面までの厚みである。また、上記本発明の両面粘着シートの厚みには、セパレータの厚みは含まれない。
【0119】
本発明の両面粘着シートのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、3.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。ヘイズを3.0%以下とすることにより、粘着シートを貼付した光学部材や光学製品の透明性や外観が良好となる。なお、上記ヘイズは、例えば、粘着シートを常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定される。
【0120】
本発明の両面粘着シートの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、87%以上が好ましく、より好ましくは89%以上である。全光線透過率を87%以上とすることにより、粘着シートを貼付した光学部材や光学製品の透明性や外観が良好となる。なお、上記全光線透過率は、例えば、粘着シートを常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0121】
本発明の両面粘着シートの製造方法は、特に限定されないが、公知乃至慣用の方法が挙げられる。例えば、上記本発明の粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シートは、上記セパレータ上に、上記粘着剤組成物を用いて上記本発明の粘着剤層を形成することにより、作製される。
【0122】
本発明の両面粘着シートは、光学用途に用いられる光学用粘着シートである。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途などに用いられる光学用粘着シートである。
【0123】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)などが挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」を含むものとする。
【0124】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0125】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜などからなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、本発明における「光学部材」には、上記の通り、被着体である表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0126】
本発明の両面粘着シートによる光学部材の貼り合わせの態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)本発明の両面粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様、(2)本発明の両面粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。
【0127】
本発明の両面粘着シートは、上記本発明の粘着剤層を有するので、段差吸収性に優れるとともに、耐発泡剥がれ性(耐発泡信頼性)に優れる。
【0128】
(粘着型光学部材)
本発明の粘着型光学部材は、上記光学部材の表面に上記本発明の両面粘着シートを有する。本発明の粘着型光学部材は、上記光学部材の表面の少なくとも一部に上記本発明の両面粘着シートを有していてもよく、上記光学部材の表面の全面に上記本発明の両面粘着シートを有していてもよい。
【0129】
例えば、光学部材としてシート状(フィルム状、板状を含む)の光学部材が用いられている粘着型光学部材は、該シート状光学部材の少なくとも一部に上記本発明の両面粘着シートを有する。このような粘着型光学部材のより具体的な例としては、例えば、シート状光学部材の一方の面側に上記本発明の両面粘着シートを有する粘着型光学部材、シート状光学部材の両方の面側に上記本発明の両面粘着シートを有する粘着型光学部材などが挙げられる。
【0130】
本発明の光学型粘着部材は、光学部材の少なくとも一部に上記本発明の両面粘着シートを積層させることにより作製される。例えば、シート状光学部材の一方の面側に上記本発明の両面粘着シートを有する粘着型光学部材は、シート状光学部材の一方の面側に上記本発明の両面粘着シートを積層させることにより作製される。
【実施例】
【0131】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、プレポリマー組成物を作製する際の配合組成を表2に示し、アクリル系粘着剤組成物の配合組成を表3に示した。
【0132】
(プレポリマー組成物(a)の作製例)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)80重量部、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)11.5重量部、N−ビニルピロリドン(NVP)8.5重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュア184」(BASFジャパン株式会社製)(Irg184)0.05重量部及び商品名「イルガキュア651」(BASFジャパン株式会社製)(Irg651)0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa.sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を作製した。該プレポリマー組成物を、プレポリマー組成物(a)とした。
【0133】
(プレポリマー組成物(b)の作製例)
モノマー混合物として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)85重量部、N−ビニルピロリドン(NVP)15重量部が混合された混合物を用いたこと以外は、上記プレポリマー組成物の作製例1と同様にして、プレポリマー組成物を作製した。該プレポリマー組成物を、プレポリマー組成物(b)とした。
【0134】
(プレポリマー組成物(c)の作製例)
モノマー混合物として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)80重量部、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)11.5重量部、N−ビニルピロリドン(NVP7.5重量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)1.5重量部が混合されたモノマー混合物を用いたこと以外は、上記プレポリマー組成物の作製例1と同様にして、プレポリマー組成物を作製した。該プレポリマー組成物を、プレポリマー組成物(c)とした。
【0135】
【表2】

【0136】
(アクリル系ポリマーの製造例1)
モノマー成分として、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)(商品名「FA−513M」、日立化成工業株式会社製)60重量部、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部、連鎖移動剤としてのチオグリコール酸3.5重量部、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部を、4つ口フラスコに投入した。そして、窒素雰囲気下にて70℃で1時間攪拌した後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、酢酸エチル、連鎖移動剤、及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを得た。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は4000であった。また、上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
なお、アクリル系ポリマーの製造例1でアクリル系ポリマーを「アクリル系ポリマー(b1)」とする。
【0137】
(実施例1)
上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.065重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物(アクリル系粘着剤層形成用組成物)を作製した。
上記アクリル系粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(商品名「MRF75」、三菱樹脂株式会社製)上に、最終的な厚み(粘着剤層の厚み)が175μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。
次いで、上記塗布層上に、PETセパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂株式会社製)を設け、塗布層を被覆して酸素を遮断した。
その後、上記で得られたシート(MRF75/塗布層/MRF38の積層体)の上面(MRF38側)からブラックライト(東芝製)にて、照度5mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。さらに、120℃の乾燥機で2分間熱処理を行い、残存モノマーを揮発させて、粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を形成し、さらに50℃で1週間加温エージングを行い、厚み175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例1において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a1)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a1)を構成するモノマー成分の総和)は99.965重量部であり、アクリル系ポリマー(a1)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は5.002重量部であり、アクリル系ポリマー(a1)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0138】
(実施例2)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.04重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)2重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例2において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a2)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a2)を構成するモノマー成分の総和)は99.94重量部であり、アクリル系ポリマー(a2)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は2.001重量部であり、アクリル系ポリマー(a2)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0139】
(実施例3)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(a)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.065重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例3において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a3)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a3)を構成するモノマー成分の総和)は99.965重量部であり、アクリル系ポリマー(a3)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は5.001重量部であり、アクリル系ポリマー(a3)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0140】
(実施例4)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(a)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.100重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例4において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a4)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a4)を構成するモノマー成分の総和)は100重量部であり、アクリル系ポリマー(a4)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は5.000重量部であり、アクリル系ポリマー(a4)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0141】
(実施例5)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(a)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.08重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)10重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例5において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a5)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分の総和)は99.98重量部であり、アクリル系ポリマー(a5)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は10.002重量部であり、アクリル系ポリマー(a5)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0142】
(実施例6)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)10重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.03重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例6において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a6)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a6)を構成するモノマー成分の総和)は109.93重量部であり、アクリル系ポリマー(a6)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は4.548重量部であり、アクリル系ポリマー(a6)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.273重量部である。
【0143】
(実施例7)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)10重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.04重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例7において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a7)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a7)を構成するモノマー成分の総和)は109.94重量部であり、アクリル系ポリマー(a7)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は4.548重量部であり、アクリル系ポリマー(a7)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.273重量部である。
【0144】
(実施例8)
表3に示すように、上記プレポリマー組成物(b)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.05重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、実施例8において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a8)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a8)を構成するモノマー成分の総和)は99.95重量部であり、アクリル系ポリマー(a8)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は5.002重量部であり、アクリル系ポリマー(a8)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0145】
(比較例1)
上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.05重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、比較例1において、形成された粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a9)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a9)を構成するモノマー成分の総和)は99.95重量部であり、アクリル系ポリマー(a9)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。また、比較例1では、上記アクリル系ポリマー(b1)は用いられていない。
【0146】
(比較例2)
上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.03重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、比較例2において、形成された粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a10)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a10)を構成するモノマー成分の総和)は99.93重量部であり、アクリル系ポリマー(a10)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。また、比較例1では、上記アクリル系ポリマー(b1)は用いられていない。
【0147】
(比較例3)
上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.15重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、比較例3において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a11)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a11)を構成するモノマー成分の総和)は100.05重量部であり、アクリル系ポリマー(a11)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量4.998重量部であり、アクリル系ポリマー(a11)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.299重量部である。
【0148】
(比較例4)
上記プレポリマー組成物(c)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.2重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、比較例4において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a12)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a12)を構成するモノマー成分の総和)は100.1重量部であり、アクリル系ポリマー(a12)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は4.995重量部であり、アクリル系ポリマー(a12)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.299重量部である。
【0149】
(比較例5)
上記プレポリマー組成物(b)100重量部に、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.1重量部、上記アクリル系ポリマー(b1)5重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
なお、比較例5において、形成された粘着剤層に含まれる全アクリル系ポリマーのうち、上記アクリル系ポリマー(b1)以外のアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマー(a13)」と称する場合がある)の量(アクリル系ポリマー(a13)を構成するモノマー成分の総和)は100重量部であり、アクリル系ポリマー(a13)100重量部に対するアクリル系ポリマー(b1)の含有量は5.000重量部であり、アクリル系ポリマー(a13)100重量部に対するシランカップリング剤の含有量0.300重量部である。
【0150】
(評価)
上記の実施例および比較例で得られた両面粘着シートについて、以下の評価を行った。評価結果は表3に示した。
【0151】
(1)ゲル分率
両面粘着シートのゲル分率の測定は、上記「ゲル分率の測定方法」に従って測定した。
【0152】
(2)動的粘弾性測定[貯蔵弾性率(23℃)]
両面粘着シートを積層して、厚み約1.5mmの積層体を作製した。そして、該積層体を測定サンプルとした。
上記測定サンプルを、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、周波数1Hzの条件で、−70〜200℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定して、貯蔵弾性率を算出した。温度23℃における貯蔵弾性率を、「貯蔵弾性率(23℃)」とした。
【0153】
(3)全光線透過率及びヘイズ
一方のセパレータを剥がし、両面粘着シートをガラス板(品番「S−1111」、松浪硝子工業株式会社製、厚み1.3mm、ヘイズ0.1%、水縁磨)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータを剥がすことにより、試験片とした。
上記試験片について、ヘイズメータ(装置名「HM−150」、株式会社村上色彩技術研究所製)により、可視光領域における全光線透過率及びヘイズを測定した。
【0154】
(4)引張応力緩和試験(残留応力)
両面粘着シートから、長さ40mm、幅40mmのシート片(40mm×40mmのシート片)を切り出した。
次に、上記シート片からセパレータを剥離した後、シート片を幅方向に円柱状に丸めて測定サンプルとした。
引張試験機を用いて引張応力緩和試験を行った。
引張試験機にてチャック間距離(つかみ具間距離)を20mmに合わせて、上記測定サンプルをセットした。(初期のチャック間距離は20mmである。)
引張速度200mm/分、測定温度23℃で、60mm(歪み300%)引っ張った。(なお、引張後のチャック間距離は80mmである。)
60mm引っ張った位置で、180秒間チャック位置を固定(歪み300%を保持)し、180秒間経過後の応力(引張応力)(N/cm2)を測定し、「残留応力」とした。
【0155】
(5)段差吸収性(印刷段差吸収性)
両面粘着シートから、長さ100mm、幅50mmのシート片(100mm×50mmのシート片)を切り出した。
次に、上記で得られたシート片から一方のセパレータを剥離し、ハンドローラーを用いて、2kgローラ、1往復の条件で、ガラス板(青板切断品、松浪硝子工業株式会社製、長さ100mm、幅50mm、厚み0.7mm)に貼り合わせた。
次に、ガラス板に貼り合わせた上記シート片から他方のセパレータを剥離し、印刷段差付きガラス板を、印刷段差の施された面と粘着剤層とが接するように、下記の貼り合わせ条件で貼り合わせた。そして、評価用サンプルを得た。
(貼り合わせ条件)
面圧:0.4MPa
真空度:30Pa
貼り付け時間:2秒
なお、上記印刷段差付きガラス板は、ガラス板(青板切断品、松浪硝子工業株式会社製、長さ100mm、幅50mm、厚み0.7mm)の一方の面に枠状の印刷が施されたガラス板である。
上記印刷段差付きガラス板において、厚み(ガラス板部分の厚み)は0.7mmであり、長さは100mmであり、幅は50mmであり、印刷部分の厚み(印刷段差の高さ)は23μ〜28μmである。また、上記印刷段差付きガラス板の概略図を、図1及び図2に示す。
次に、上記評価用サンプルをオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後、上記評価用サンプルを取り出し、目視で観察し、下記評価基準に従い、段差吸収性を評価した。
評価基準
良好(○):気泡残りなし
不良(×):気泡残りあり
【0156】
(6)耐発泡信頼性(耐発泡剥がれ性)
両面粘着シートから、長さ100mm、幅50mmのシート片(100mm×50mmのシート片)を切り出した。
次に、上記で得られたシート片から一方のセパレータを剥離し、ハンドローラーを用いて、2kgローラ、1往復の条件で、ガラス板(青板切断品、松浪硝子工業株式会社製、長さ100mm、幅50mm、厚み0.7mm)に貼り合わせた。
次に、ガラス板に貼り合わせた上記シート片から他方のセパレータを剥離し、印刷段差付きアクリル板を、印刷段差のある面と粘着剤層とが接するように、下記の貼り合わせ条件で貼り合わせた。そして、評価用サンプルを得た。
(貼り合わせ条件)
面圧:0.4MPa
真空度:30Pa
貼り付け時間:2秒
上記印刷段差付きアクリル板は、アクリル板(商品名「アクリライト MR−200」、三菱レイヨン株式会社製)の一方の面に枠状の印刷が施されたアクリル板である。上記印刷段差付きアクリル板において、厚み(アクリル板部分の厚み)は0.7mmであり、長さは100mmであり、幅は50mmであり、印刷部分の厚み(印刷段差の高さ)は10μm〜13μmである。また、上記印刷段差付きアクリル板の概略図を、図3及び図4に示す。
次に、上記評価用サンプルをオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後、上記評価用サンプルをオートクレーブから取り出した。次に、取り出した上記評価用サンプルを、温度85℃に設定した乾燥機に投入し、24時間放置した。
24時間放置後、乾燥機から上記評価用サンプルを取り出し、30分間室温(23℃)で放置した。そして、マイクロスコープにより、上記評価用サンプルにおける発泡(異物起因の発泡を含む発泡)を観察し、下記評価基準に従い、耐発泡信頼性を評価した。なお、下記評価基準の数値が大きいほど、耐発泡信頼性が優れる。
評価基準
3:異物起因の発泡を含む発泡の個数が0又は1
2:異物起因の発泡を含む発泡の個数が2又は3
1:異物起因の発泡を含む発泡の個数が4又は5
0:異物起因の発泡を含む発泡の個数が6より多い
【0157】
【表3】

【0158】
実施例の両面粘着シートは、段差吸収性の評価でガラス板と印刷段差付きガラス板との貼り合わせに用いられており、剛体同士の貼り合わせでも、高い段差吸収性を発揮することが確認できた。また、実施例の両面粘着シートは、上記耐発泡信頼性の評価でガラス板と印刷段差付きアクリル板との貼り合わせに用いられており、プラスチックへ高い耐発泡信頼性を発揮することが確認できた。実施例の両面粘着シートは、高段差吸収性を有し、プラスチックへの信頼性に優れる。
【符号の説明】
【0159】
1 印刷段差付きガラス板
2 ガラス板
3 印刷部分
4 印刷段差付きアクリル板
5 アクリル板
6 印刷部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーAと重量平均分子量が1000〜30000のアクリル系ポリマーBとを含み、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力が3.0N/cm2以下である粘着剤層を有することを特徴とする光学用両面粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層中の前記アクリル系ポリマーBの含有量が、前記アクリル系ポリマーA100重量部に対して1重量部以上15重量部未満である請求項1記載の光学用両面粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーAが、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項1又は2記載の光学用両面粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマーBが、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項1〜3の何れか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーAが、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーである請求項1〜4の何れか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シートである請求項1〜5の何れか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項7】
総厚みが、50〜600μmである請求項1〜6の何れか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項8】
光学部材の表面に、請求項1〜7の何れか1項に記載の光学用両面粘着シートを有することを特徴とする粘着型光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6892(P2013−6892A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138410(P2011−138410)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】