説明

光学的に支援されたデジタル信号処理による分散補償を用いる通信伝送システム

【課題】インライン分散補償を用いないシングルモードファイバーを利用して光伝送路における分散補償を巧みに取り扱う。
【解決手段】通信システム端末装置は、伝送路から供給される光データ信号と関係する光分散の少なくともある部分を補償するように構成される1つ又はそれ以上の分散補償モジュールを含む。前記伝送路と通信可能に結合される受信機は、前記受信機より電気信号に変換された前記光データ信号と関係する分散のある追加的な部分を補償するように構成されたデジタル信号プロセッサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、光通信システムの分野に関する。より特に、本開示は、デジタル信号処理回路により実行される光学的DWDM信号の分散補償において光学的に支援するための分散補償モジュールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離光伝送システムにおいて、複数の光チャネルがある特定の各波長でファイバー光ケーブルを伝搬する高密度波長分割多重(DWDM)を使用する光信号を伝送するために、種々の変調方式が使用される。これらの長距離光システムは、チャネルごとに高いデータレートで動作する海底ファイバー光通信システムでもよい。不幸にも、これらのビットレートが増加するにつれて、伝送ファイバーの分散及び非線形な屈折率と関係する伝送上の不利益も増加する。長距離にわたる伝搬後、これらの効果の影響は、受信機における処理及び復号化の困難性を生成し、このことは伝送された情報の完全性を危うくする可能性がある。
【0003】
ファイバーによる光信号の伝搬により発生する信号の歪みの1つのタイプは、導波路分散(すなわち、異なる波長の光は異なる速度でファイバーを伝搬する。)及び材料分散(すなわち、その光の位相速度は異なる波長で変化する。)の結果である色分散である。もう1つのファイバー効果は、偏波モード分散(PMD)であり、この偏波モード分散は、ファイバーの欠陥の結果であり、このことは光信号の直交偏波成分に対して異なる伝搬速度へと導く。
【0004】
長距離DWDM伝送システムにおいて分散の有害な効果を減少させるために種々の技術が用いられている。例えば、2つの直交偏波を同時に伝送することによりスペクトル効率を増加させるのみならず色分散及びPMDに対する伝送許容誤差を改善する直交位相シフトキーイング(QPSK)や偏波多重QPSK(PM−QPSK)などの変調技術を実施することができる。もう1つの補償技術として、伝送経路により累積された分散を補償するため、伝送路の各ファイバースパン内に配置するインライン分散補償ファイバー(DCF)を用いる。例えば、図1は送信機20と、受信機25と、SMF30及び光増幅器35により構成される複数のファイバースパンを有する光伝送システム10を示す。DCFは、特定のスパン内に累積された分散を補償するため、各スパンに挿入される。勿論、伝送ファイバーの分散スロープのために、伝送された信号の波長は、ある特定のスパンに対して、ごく稀にゼロ分散を有する。いくらか残存する分散は、受信機25において補償されてもよい。例えば、受信機25は、デジタル信号処理(DSP)の使用により累積された分散補償を行うコヒーレント受信機であってもよい。
【0005】
一般的に、コヒーレント受信機は、受信された光データ信号を復号化するために、振幅及び位相の両方を検出する。これらの長距離システムにおいては、大西洋及び太平洋を横断して延在させるので、各ファイバースパン内に分散補償ファイバーを挿入するには(“インライン”という。)、莫大な費用と複雑性が存在する。従って、海底の通信システムに対する伝送媒体として、インライン分散補償を用いないファイバー光ケーブル又はSMFだけを使用することに興味が持たれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、もしインラインDCFを使用しないならば、伝送路にわたって累積された分散は非常に大きくなるため、DSP技術の使用だけでは補償できない。例えば、インライン補償を用いないで約6500kmの大西洋横断距離にわたる光伝送は、120000から140000ps/nmの範囲の累積された分散が生じ、約10000kmの太平洋横断距離にわたる光伝送は、200000ps/nmを超えるかもしれない累積された分散が生じる。これらのレベルで累積された分散は多数の複数のデータビットの重なりが生じ、それによって、伝送能力を危うくする。一例のために、40Gb/sの伝送レートでPM−QPSKを使用すると約10から10ビットの重なりが生じ、100Gb/sの伝送レートでPM−QPSKを使用すると約10から10ビットの重なりが生じる。DSPだけを用いてこれらの高い分散値を補償するためには、受信機端末装置において複数のタップを有する有限インパルス応答(FIR)フィルタを実装することを必要とするかまたは相対的に多数の複数のサンプルされた受信されたビットに対してフーリエ変換を実行することによって必要とするであろう。結果的には、このことは、信号のノイズ比感度に対する光学的な受信機の損失及びDSPを用いることに対して補償されることができる分散量の限界を生じる当該受信機においてDSP処理に対する非常に複数の用途特定の集積回路が必要となるであろう。
【0007】
従って、本開示の目的は、これらの問題を克服し、インライン分散補償を用いないSMFを利用する伝送路を提供し、システム端末装置においてDSP分散補償を光学的に支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の例示的な実施態様は、光通信システムにおいて分散補償を巧みに取り扱うことに関する。ある例示的な実施態様において、通信システムの端末装置は、光伝送路と通信可能に結合される分散補償ユニット(DCU)を含む。当該分散補償ユニット(DCU)は、第1と第2の光増幅器及びそれらの間に配置される分散補償モジュール(DCM)を有する。当該DCMは、伝送路から供給される光信号と関係する光分散の少なくとも第1の部分を補償するように構成される。受信機は、通信可能に第2の増幅器と結合され、複数の光信号を対応する電気信号へと変換するように構成される。当該受信機は、対応する各電気信号と関係する分散の第2の部分を補償するように構成されるデジタル信号プロセッサを含む。
【0009】
もう1つの例示的な実施態様において、通信システムは、複数の光チャネルを有して変調された光信号を供給するように構成される送信機を含む。第1の分散補償モジュール(DCM)は、通信可能に送信機と結合され、変調された光信号と関係する分散の少なくとも第1の部分を前置補償するように構成される。第1の分散補償ユニット(DCU)は、第1のDCMと光伝送路との間に配置される。当該DCUは、第1と第2の光増幅器及びそれらの間に配置される第2のDCMを備える。第2のDCMは、伝送路へ供給される変調された光信号と関係する光分散の少なくとも第2の部分を前置補償するように構成される。第2の分散補償ユニット(DCU)は通信可能に伝送路と結合され、第3及び第4の光増幅器及びそれらの間に配置される第3の分散補償モジュール(DCM)を含む。当該DCMは、伝送路から供給される光信号と関係する累積された光分散の少なくとも第1の部分を補償するように構成される。受信機は、通信可能に第4の増幅器と結合され、複数の光信号を、対応する電気信号へと変換するように構成される。当該受信機は、対応する各電気信号と関係する累積された分散の第2の部分を補償するように構成されるデジタル信号プロセッサを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インライン分散補償を用いない従来技術に係る光通信システムの簡単にされたブロック図である。
【図2】本開示に係る分散補償ユニットを利用する光伝送システムのブロック図である。
【図3】本開示の実施態様に係る図2に示されるDCUのブロック図である。
【図3A】本開示に係る図2の受信機の簡単なブロック図である。
【図4】本開示に係るDCMの例示的な実施態様を図示する。
【図5】本開示に係るDCMの例示的な実施態様を図示する。
【図6】本開示に係る光通信システムを一般的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はいま、当該発明の好ましい実施態様が示された添付する図を参照してより十分に以下に説明されるであろう。しかしながら、この発明は多くの異なる形式において具現化してもよく、ここで説明された実施態様に限定されて解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様はこの開示が詳細かつ完全であるように提供され、当業者に当該発明の範囲を十分に伝えるであろう。図において、初めから終わりまで、同じ番号が同じ構成要素に適用される。
【0012】
ここで開示された実施態様は、インライン分散補償を使用しないときのシステム端末装置において光学的に支援されたデジタル信号処理(DSP)分散補償を利用する光伝送システムを提供する。これにより、当該システムが大きい有効な領域を有するシングルモードファイバー(SMF)を備える伝送路を利用することを可能にさせてファイバー非線形効果を減少させる一方で、累積された分散をいまだ適切に補償する。光学的に支援されたDSPによる分散補償を用いることにより、非光学的に支援されたDSPを実行するために必要とされる複数の用途特定の集積回路(ASIC)が、これらASICと関連された電力要求に対する必要性を取り除くだけでなく避けられる。これによりまた、より低いコストのSMFが端末装置間の完全な伝送路に沿って設置される。
【0013】
図2は、例示的な送信端末装置110と、受信端末装置120と、それらの間に配置される光伝送路130を含む光通信システム100を一般的に図示する。当該光伝送路130は、端末装置110と120の間の光通信信号を伝搬するように構成されたシングルモードファイバー(SMF)スパン131…131及び複数の光増幅器135…135(例えばエルビウムが注入されたファイバー増幅器)を備える。当該伝送路130は、ある特定の各波長において複数の光チャネルを有する高密度波長分割多重された(DWDM)光信号を伝搬するように構成された複数のファイバーペアを有する海底ファイバー光ケーブルであってもよい。
【0014】
光伝送路130に、インライン分散補償を含まず、シングルモードファイバーを利用することを示すことが重要である。以前は、上記に参照されたように、分散補償ファイバー(DCF)は光通信システムのファイバースパンに沿って用いられて累積された分散を補償していた。しかしながら、DCFの使用はそれ自身の減衰及び非線形性を有する追加的な信号の伝搬経路に寄与する。さらに、全体の信号の品質を適切に維持する間、受信機125においてDSPを用いるために補償されることができる累積された分散量は制限される。従って、本実施形態に係る受信端末装置120は、伝送路130及び受信機125と通信可能に結合された1つ又はそれ以上の分散補償ユニット(DCU)126…126を含む。特に、各DCUは伝送された光信号を受信し、デジタル信号処理(DSP)技術を利用して電気の分散補償を使用する受信機125への伝送の前の伝送路130において伝搬する受信された信号のための光ドメインにおいて、ある量の分散補償を提供するように構成される。この方法において、各DCUは分散補償を提供して受信機125において実行されるDSP分散補償を光学的に支援する。受信機125に光信号を供給する前の分散に対して適切に補償するために必要とされるDCUの数は、伝送路130における信号の伝搬の長さと、チャネルの幅と、ファイバータイプなど、これらに限定されないのだが、これらを含む複数の要因に基づき必要とされる分散補償量に依存するであろう。
【0015】
図3は、本開示の実施態様に係る図2に示されたDCUの126…126のブロック図を図示する。DCU126は、第1の光増幅器127、第2の光増幅器128及びそれらの間に配置する1つ又はそれ以上の分散補償モジュール(DCM)129…129を備える。各光増幅器は、例えば、複数のチャネル波長と交差した受信された光信号を増幅するために、シングル又は多重のゲインステージを有するエルビウムが注入されたファイバー増幅器でもよい。DCM129は、伝送路130から供給される光信号に関係する光分散の少なくともある部分を補償し、これらの信号を受信機125に、追加的なDCM129に又はもう1つのDCU126に供給するように構成される。各DCMの129…129は当該DCMの挿入損失により除算された装置ごとの分散量である高い性能指数(FOM)を持つ。例えば、損失の約10ps/nm/dBの高いFOMは、ある長距離伝送システムに対して必要とされてもよい。
【0016】
好ましい実施態様の実施例として、DCU126は光学的に126と結合され、DCU126からの光信号を受信し、これらの信号を受信機125に、必要とされる分散補償量に依存する追加的なDCMに又はもう1つのDCUに供給するように構成される。DCU126は、第1の光増幅器128と、第2の光増幅器142及びそれらの間に配置される1つ又はそれ以上のDCMの141…141を備える。DCU126は第2の増幅器128をDCU126と物理的に共有してもよく、増幅器128は論理的にはDCU126の第1の増幅器と考えられる。増幅器127及び128と同様に、増幅器142は、例えば、シングル又は多重のゲインステージを有するエルビウムが注入されたファイバー増幅器でもよい。各DCM141…141は、DCU126から供給される光信号と関係する光分散の少なくともある部分に対して補償するように構成される。受信機125はDCU126の増幅器142と通信可能に結合される。もし1つのDCU126だけが必要とされる分散補償量に基づいて使用されるならば、その場合には受信機125は第2の増幅器128と結合される。送信機110及び受信機125は分離した素子として図示されるが、当該送信機110はまた、受信端末装置120に含まれてもよいし、逆にそれらの間で双方向伝送を行ってもよいと理解されるべきである。
【0017】
受信機125は、DCUの126…126のうちの少なくとも1つからの光データ信号を受信し、ある特定の各波長においてこれらの光信号を、対応する電気信号に変換するように構成される。受信機125は、光信号の振幅だけでなく位相及び偏波もまた検出するコヒーレント受信機であってもよい。特に、コヒーレント検出は当該DCUからの当該受信された光データ信号を、当該光データ信号の波長又はチャネルに近い波長に変更される局部発振器からの光と混合する。この結合された信号は、受信機125の光検出器により検出され、それは当該受信された光データ信号と当該局部発振器周波数との間の差である周波数においてある成分を含む光電流を出力する。この差信号は、送信機110からの当該光データ信号により運ばれる振幅及び位相を含む。言い換えれば、それはスペクトルと交差する受信された信号の全体の特性を検出し、これらの光信号を電気信号に変換する。
【0018】
図3Aは、本開示に係る図2に示される受信機125の簡単にされたブロック図である。伝送された光データ信号は受信され、伝送路130から偏波ビームスプリッター(PBS)161に供給される。上述したように、偏波スプリット信号は、受信された信号と局部発振器163の間の位相及び振幅を抽出する1対の90度光ハイブリッドである162A及び162Bに供給される。164のように一般的に示された複数の光検出器は、受信された光データ信号に比例するそれぞれの電気信号を生成する。それぞれの光検出器164に結合された複数のアナログからデジタルへの(A/D)変換器165は、当該電気信号を受信し、対応するデジタル信号をデジタル信号プロセッサ(DSP)170に供給する。当該DSP170は、A/D変換器165により供給される光データ信号を表す各電気信号(すなわち、電気的な分散補償)と関係する分散補償を実行するように構成された分散補償回路171を含む。DSP170はまた、偏波モード分散を補償するための分離したモジュールのみならず当該受信された信号を処理するための種々の他のモジュール/回路を含んでもよい。当該分散補償回路171は、DCUの126…126を介して既に分散補償を受けた信号に分散補償を提供する。この方法において、当該DCUは、光学的に支援された分散補償をDSP170の当該分散補償回路171に提供し、それによって受信機125において検出可能なデータ信号を提供する。
【0019】
図4は、本開示に係るDCM129…129、141…141の例示的な実施態様を図示する。説明の軽減のため、例示的なDCM129が説明されるであろうが、この説明は、ある特定のDCU内のそれぞれの位置を除き、他のDCMにも等しく適用可能である。DCM129は第1の光増幅器127と結合される第1の光サキュレータ210を含む。特に、サキュレータ210は複数の入力及び出力ポート210…210を含む。複数の入力ポートのうちの第1の210は増幅器127からの光信号を受信する。当該受信された信号は第1の出力ポート210に循環される(それは第2の入力ポートも同様である。)。ファイバーブラッググレーティング215は当該出力ポート210と結合され、後述するように、受信された光データ信号のある部分を当該第2の入力ポート210の方向に反射して戻して当該受信された光データ信号に対する分散補償を提供するように構成される。
【0020】
ファイバーブラッググレーティング215は光ファイバーであり、それは与えられた長さにおけるそのコア屈折率の一連の摂動又は変調を含む。当該グレーティングは、その光の波長が変調周期性に対応するとき、それを通じて伝搬する光を反射するように構成される。しかしながら、当該グレーティング周期はその長さに沿って変化し、異なる波長は当該グレーティングの異なる部分により反射される。このことはそれらのそれぞれの波長に基づいた反射された光信号の異なる時間遅延を発生する。上述したように、路130において伝送された光データ信号は長い距離を伝わって、これらのデータ信号を備える光パルスを拡張又は拡大する分散(色の及びPMD)の支配を受ける。従って、グレーティング215を用いてこれらの光パルスを反射することの影響は、それによって累積された分散を補償する受信された光パルスを多少圧縮することである。次に、当該反射された光信号は、サキュレータ210に供給されて戻されて、ポート210を介して出力される。
【0021】
DCM129はさらに、第2の光増幅器128と結合される第2の光サキュレータ220を含む。サキュレータ220は複数の入力及び出力ポート220…220を含む。複数の入力ポートのうちの第1の220は第1の光サキュレータ210から光信号を受信する。当該受信された信号は第1の出力ポート220に循環される。もう1つのファイバーブラッググレーティング225は出力ポート220と結合され、上述するように、受信された光データ信号のある部分をポート220の方向に反射して戻して当該受信された光データ信号に対する分散補償を提供するように構成される。次に、当該反射された光信号は、サキュレータ220に供給されて戻されて、ポート220を介して光増幅器128に、もう1つのDCMに又はもう1つのDCUに出力される。
【0022】
図5は、本開示に係る増幅器127と128の間に配置されるDCM129の代替の実施態様を図示する。DCM129の以下の説明は、ある特定のDCU内のそれぞれの位置を除き、他のDCMにも等しく適用可能である。DCM129は、第1のモード変換器250と、より高い次数のモード(HOM)の分散補償するファイバー250と、第2のモード変換器260を含む。当該第1のモード変換器250は増幅器127と結合され、伝送路130に沿って第1のモードで伝搬する光データ信号を受信するように構成される。第1のモード変換器はこれらの信号をより高い次数のモードへと変換し、それらをHOMファイバー255のスパンに供給する。当該モード変換器250は、増幅器127からのシングルモードファイバー及びHOMファイバー255が当該HOMファイバー255によるより低い次数のモードの伝搬が最小となるように満たされる接合に必要とされる。これはHOMファイバー255により伝搬するより低い次数とより高い次数のモードの間の干渉のためであり、別のやり方でもしモード変換器250に対して伝搬が最小とならないならば当該干渉が発生するであろう。HOMファイバー255は、モード変換器250からより高い次数のモードで光データ信号を受信し、光学的に分散に対して補償するように構成される。典型的なHOMファイバーは大きい有効な領域Aeffを有し、正の分散を補償する大きい負の導波管分散を示す。当該第2のモード変換器260はHOMファイバー255と結合され、より高い次数のモードで光信号を受信しこれらの信号を第1のモードに変換して戻すように構成される。次に、これらの光学的に補償された信号は光増幅器128に、要望される分散補償量に依存するもう1つのDCMに又はもう1つのDCUに出力される。
【0023】
図6は一般的に、送信端末装置310におけるDCMと、インライン分散補償なしの光り伝送路330と、当該端末装置において光学的にデジタル信号処理を支援して累積された分散を補償するためのDCMを含む受信端末装置320を用いて前置補償を使用する光通信システム300を図示する。特に、送信端末装置310はDCM316に対する複数の光チャネルを有する光データ信号を供給するように構成された送信機315を含む。システム300の各DCMの316、318…318、329…329は、図4及び図5に示されたような構成を有する。DCM316は送信機315により供給される変調された光信号と関係する分散補償の少なくとも第1の部分を前置補償するように構成される。光増幅器317、319及びそれらの間に配置するDCM318…318により定義される第1の分散補償ユニット(DCU)はDCM316から光データ信号を受信し、光分散の少なくとも第2の部分に対する追加的な前置分散補償を提供する。前置分散が補償された信号は伝送路330に供給され、それは送信端末装置310と受信端末装置320の間に光通信信号を伝搬するように構成されたシングルモードファイバー(SMF)スパン331…331及び複数の光増幅器335…335(例えばエルビウムが注入されたファイバー増幅器)を備える。当該伝送路330は、ある特定の各波長において複数の光チャネルを有する高密度波長分割多重された(DWDM)光信号を伝搬するように構成される複数のファイバーペアを有する海底ファイバー光ケーブルであってもよい。
【0024】
当該受信端末装置320は、増幅器327、328及びそれらの間に配置されるDCMの329…329により定義されるDCUを含む。各DCMの329…329は伝送路330により伝搬した光データ信号と関係する累積された光分散のある部分を補償するように構成される。受信端末装置320は通信可能に増幅器328と結合された受信機を含み、当該光データ信号を対応する電気信号に変換するように構成される。図3Aの受信機125に関して説明されたように、受信機325はコヒーレント受信機であってもよく、それは各対応する電気信号と関係する累積された分散のもう1つの部分を補償するように構成されたDSPを含む。この方法において、光分散補償はインライン分散補償を用いないシングルモードファイバーを用いる伝送システムのDSPを支援して長い距離にわたり伝搬された受信機において検出可能なデータ信号を供給する。
【0025】
本開示の実施態様は、光通信システムの送信機及び受信機において実行されてもよい。プロセッサは当業者に知られるように、通信システムと関係する動作を実現するために使用されてもよい。ここで用いられるようなプロセッサは、課題を成し遂げるために格納された機械が読み取り可能な命令を実行するための装置で、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアの任意の1つ又は結合を備えてもよい。プロセッサはまた課題を成し遂げるため、実行可能な機械が読み取り可能な命令を格納するメモリを備えてもよい。プロセッサは実行可能な方法又は情報装置、及び/又は当該情報を出力装置へのルーティングによる使用のための情報を操作し、解析し、変更し、変換し、又は送信することによって情報に基づいて行動する。プロセッサは、例えば、コントローラ又はマイクロプロセッサの能力を用いてもよく又は備えてもよい。プロセッサは電気的に任意の他のプロセッサと結合されてもよく、それらの間の相互作用及び/又は通信を可能とさせる。実行可能な命令を備えるプロセッサは、もう1つのプロセッサを備える実行可能な命令との相互作用及び/又は通信を可能とさせる格納された実行可能な命令内で結合されることによって電気的に結合されてもよい。ユーザのインターフェースプロセッサ又は発生器はそれの表示画像又は部分を生成するために、電気回路もしくはソフトウェア、又は両方の結合を備える既知の要素である。
【0026】
実行可能なアプリケーションは、例えば、ユーザコマンド又は入力に応じたオペレーティングシステム、コンテキストデータ取得システム、又は他の情報処理システムなどのような決定された機能を実行するために、プロセッサに条件付けするためのコード又は機械が読み取り可能な命令を備える。実行可能な方法は、コードもしくは機械が読み取り可能な命令のセグメントで、サブルーチン、又は1つもしくはそれ以上の特定の処理を成し遂げるための実行可能なアプリケーションのコード又は部分の他の別個のセクションである。これらの処理は、入力データ及び/又はパラメータを受信すること、受信された入力データ上で動作を成し遂げること及び/又は受信された入力パラメータに応じて機能を成し遂げること、及び出力データ及び/又はパラメータを生じることを提供することを含んでもよい。
【0027】
本開示はここで説明される特定の実施態様の範囲に限定されるべきでない。実際、ここで説明される実施態様に加え、本開示に対して変更したものの他の種々の実施態様及び本開示に対して変更したもの及び他の種々の実施態様が、上述した説明及び添付する図から当業者には明らかであろう。従って、そのような他の実施態様及び変更したものを本開示の範囲内において省略することが意図されている。さらに、本開示はある特定の目的のためのある特定の環境におけるある特定の実施を背景においてここで説明されるが、その有用性はそこに限定されておらず、本開示はあらゆる目的のためのあらゆる環境において有益に実施されてもよいことを当業者は認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路(130)と通信可能に結合される分散補償ユニット(DCU)(126)であって、
前記DCUは第1と第2の光増幅器(127、128)及びそれらの間に配置される分散補償モジュール(DCM)(129)を備え、
前記DCMは前記伝送路(130)から供給される前記光信号と関係する光分散の少なくとも第1の部分を補償するように構成され、
前記第2の光増幅器と通信可能に結合された受信機(125)であって、前記受信機は前記複数の光信号を対応する電気信号に変換するように構成され、
前記受信機はさらに、前記各対応する電気信号と関係する分散の第2の部分を補償するように構成されるデジタル信号プロセッサ(170)を備えた通信システム端末装置。
【請求項2】
前記DCM(129)は第1の分散補償モジュール(129)であり、
前記DCU(126)はさらに、前記第1のDCMと前記第2の増幅器(128)との間に配置された第2のDCM(129)を備え、
前記第2のDCMは、前記光信号と関係する光分散の第3の部分を補償するように構成されることを特徴とする請求項1記載の通信システムの端末装置。
【請求項3】
前記DCU(126)は第1のDCU(126)であり、
前記DCM(129)は第1のDCM(129)であり、
前記端末装置はさらに、前記第1のDCU(126)と前記受信機(125)との間に配置される第2のDCU(126)を備え、
前記第2のDCU(126)は、第3の光増幅器(142)及び第2のDCM(129)を備え、
前記第2のDCMは、前記第2の増幅器(128)と前記第3の増幅器(142)との間に配置され、前記第1のDCU(126)から供給される前記光信号と関係する光分散の少なくとも第3の部分を補償するように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム端末装置。
【請求項4】
前記DCM(129)は、
前記第1の光増幅器(127)と結合された光サキュレータ(210)であって、前記サキュレータは複数の入力及び出力(210から210)を備えた前記光サキュレータ(210)と、
前記複数の出力のうちの第1(210)及び前記光サキュレータ(210)の前記複数の入力のうちの第1(210)と結合されたファイバーブラッググレーティング(215)であって、前記ファイバーブラッググレーティングは1つ又はそれ以上の特定の波長を有する前記光信号のある部分を前記光サキュレータの前記複数の入力のうちの前記第1の方向に反射して戻すように構成され、前記反射された光信号は前記複数の出力(210)の第2を介して前記光サキュレータ(210)から出力される前記ファイバーブラッググレーティングを備えたことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
【請求項5】
前記DCM(129)は、
前記第1の増幅器(127)と結合された第1のモード変換器(250)であって、前記モード変換器は第1のモードで伝搬する前記光信号を受信して前記信号をより高い次数のモードに変換するように構成される前記第1のモード変換器(250)と、
前記第1のモード変換器(250)と結合されたより高い次数のモードファイバースパン(255)であって、より高い次数のモードで前記信号を受信し前記光信号に関係する光分散の前記第1の部分を補償するように構成される前記より高い次数のモードファイバースパン(255)と、
前記より高い次数のモードファイバースパン(255)と結合された第2のモード変換器(260)であって、前記より高い次数のモードで前記信号を受信して前記信号を前記第1のモードに変換するように構成された前記第2のモード変換器(260)とを備えたことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
【請求項6】
前記受信機(125)は、コヒーレント受信機であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
【請求項7】
前記受信機(125)は、非コヒーレント受信機であることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
であって
【請求項8】
送信機(110)から前記受信機(125)まで延在する前記伝送路(130)であって、前記伝送路はいかなるインライン分散補償も有さないことを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
【請求項9】
前記伝送路(130)は、シングルモードファイバー(131から131)のスパン間に配置される複数の光増幅器(127、128)を備えたことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか1つ記載の通信システム端末装置。
【請求項10】
複数の光チャネルを有する変調された光信号を供給するように構成された送信機(110)と、
前記送信機(110)と通信可能に結合された第1の分散補償モジュール(DCM)(129)であって、前記第1のDCMは前記変調された光信号と関係する分散の少なくとも第1の部分を前置補償するように構成される前記第1の分散補償モジュール(DCM)(129)と、
前記第1の分散補償モジュール(129)と光伝送路(130)との間に配置された第1の分散補償ユニット(DCU)(126)であって、前記DCUは第1と第2の光増幅器(127、128)及びそれらの間に配置される第2のDCM(129)を備え、前記第2のDCMは前記伝送路(130)に供給される前記変調された光信号と関係する第2の光分散の少なくとも第2の部分を前置補償するように構成される前記第1の分散補償ユニット(DCU)(126)と、
前記光伝送路(130)と通信可能に結合された第2の分散補償ユニット(DCU)(126)であって、前記DCUは第3と第4の光増幅器(128、142)及びそれらの間に配置される第3のDCM(129)を備え、前記第3のDCM(129)は前記伝送路(130)から供給される前記光信号と関係する累積された光分散の少なくとも第1の部分を補償するように構成された前記第2の分散補償ユニット(DCU)(126)と、
前記第4の増幅器(142)と通信可能に結合された受信機(125)であって、前記受信機は前記複数の光信号を対応する電気信号にするように構成され、前記受信機はさらに、対応する前記各信号と関係する累積された分散の第2の部分を補償するように構成されるデジタル信号プロセッサ(170)を備えた前記受信機(125)とを備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項11】
前記DCU(126)はさらに、前記第2のDCM(129)と前記第2の増幅器(128)との間に配置された第3のDCM(129)を備え、前記第3のDCMは前記変調された光信号と関係する光分散の第3の部分を補償することを特徴とする請求項10記載の通信システム。
【請求項12】
前記第1のDCM(129)は、
複数の出力及び入力(210から210)を有する光サキュレータ(210)であって、前記複数の入力のうちの第1(210)は前記送信機(110)と通信可能に結合され前記変調された光信号を受信する前記光サキュレータ(210)と、
前記複数の出力のうちの第1(210)及び前記光サキュレータ(210)の前記複数の入力のうちの第2の入力(210)と結合されたファイバーブラッググレーティング(215)であって、前記ファイバーブラッググレーティングは前記複数の光チャネルを前記光サキュレータ(210)の前記複数の入力のうちの前記第2(210)の方向に反射して戻すように構成され、前記反射された光信号は前記複数の出力のうちの第2の出力(210)を介して前記光サキュレータ(210)から出力される前記ファイバーブラッググレーティング(215)を備えたことを特徴とする請求項10又は11記載の通信システム。
【請求項13】
前記第2のDCM(129)は、
複数の出力及び入力(210から210)を有する光サキュレータ(210)であって、前記複数の入力のうちの第1の入力(210)が前記第1の増幅器(127)と通信可能に結合される前記光サキュレータ(210)と、
前記複数の出力のうちの第1(210)と前記光サキュレータ(210)の前記複数の入力のうちの第2(210)と結合されたファイバーブラッググレーティング(215)であって、前記ファイバーブラッググレーティング(215)は前記複数の光チャネルを前記光サキュレータ(210)の前記複数の入力のうちの前記第2(210)の方向に反射して戻すように構成され、前記反射された前記光信号は前記複数の出力のうちの第2(210)を介して前記光サキュレータ(210)から出力される前記ファイバーブラッググレーティング(215)を備えたことを特徴とする請求項10から12のうちのいずれか1つ記載の通信システム。
【請求項14】
前記第1のDCM(129)は、
前記第1の増幅器(127)と結合された第1のモード変換器(250)であって、前記第1のモード変換器は第1のモードで伝搬する前記変調された光信号を受信し前記信号をより高い次数のモードに変換するように構成された前記第1のモード変換器(25)と、
前記第1のモード変換器(250)と結合されたより高い次数のモードファイバーのスパン(255)であって、前記より高い次数のモードファイバーのスパンは前記より高い次数のモードで前記信号を受信し前記光信号と関係する光分散の前記第1の部分を前置補償するように構成された前記より高い次数のモードファイバーのスパン(255)と、
前記より高い次数のモードファイバーのスパン(255)と結合された第2のモード変換器(260)であって、前記第2のモード変換器は前記より高い次数のモードで前記信号を受信して前記信号を前記第1のモードに変換して戻すように構成され、前記第2の増幅器(127)と通信可能に結合された出力を有する前記第2のモード変換器(260)とを備えたことを特徴とする請求項10から13のうちのいずれか1つ記載の通信システム。
【請求項15】
前記第2のDCM(129)は、
前記第1の増幅器(127)と結合された第1のモード変換器(250)であって、前記第1のモード変換器は第1のモードで伝搬する前記変調された光信号を受信して前記信号をより高い次数のモードに変換するように構成された前記第1のモード変換器(250)と、
前記第1のモード変換器(250)と結合されたより高い次数のモードファイバーのスパン(255)であって、前記より高い次数のモードファイバーのスパンは前記より高い次数のモードで前記信号を受信して前記変調された光信号と関係する光分散の第2の部分を前置補償するように構成された前記より高い次数のモードファイバーのスパン(255)と、
前記より高い次数のモードファイバーのスパン(255)と結合された第2のモード変換器(260)であって、前記第2のモード変換器は前記より高い次数のモードで前記信号を受信して前記信号を前記第1のモードに変換して戻すように構成され、前記第1の増幅器(127)と通信可能に結合された出力を有する前記第2のモード変換器(260)とを備えたことを特徴とする請求項10から14のうちのいずれか1つ記載の通信システム。
【請求項16】
送信機(110)から前記受信機(125)まで延在する前記伝送路(130)であって、前記伝送路はいかなるインライン分散補償も有さないことを特徴とする請求項10から15のうちのいずれか1つ記載の通信システム。
【請求項17】
前記伝送路(130)は、シングルモードファイバー(131から131)のスパン間に配置される複数の光増幅器(127、128、142)を備えたことを特徴とする請求項10から16のうちのいずれか1つ記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16009(P2012−16009A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−140806(P2011−140806)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(502101180)タイコ エレクトロニクス サブシー コミュニケーションズ エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】