説明

光学素子の製造方法および型セット

【課題】型セットの製作や補修等のコストを増大させることなく、成形型と成形素材との非接触状態を的確に制御して、成形される光学素子の品質を向上させる。
【解決手段】内部にガラス素材30を支持する素材保持部材26を備えたスリーブ22に対して、フランジ部18aを備えた固定形としての上型18および下型20が対向して挿入され、スリーブ22内のガラス素材30が上型18の成形面18cおよび下型20の成形面20cに対して非接触に加熱される型セット16において、上型18のフランジ部18aとスリーブ22の上端面22aとの間に厚さ寸法tのスペーサリング40を装着し、上型18のフランジ部18aと成形面18cとの距離Lの変化に応じた厚さ寸法tを有するスペーサリング40を用いることで、成形面18cとガラス素材30の隙間g1を一定に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法および型セットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光学素子の量産工程では、筒状のスリーブの内部に上型および下型を上下方向に対向させて挿入し、スリーブの内部に位置するガラス素材を加熱軟化させた後に上型および下型の間でガラス素材を挟圧して成形する成形技術が知られている。
【0003】
ところで、ガラス素材の種類によっては、加熱軟化時にガラス素材が上型および下型に接していると、接触部分が変質して光学素子の品質が劣化する場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示される技術では、上型にスリーブの開口端に当接するフランジ部を設けて当該スリーブに対する挿入位置が固定された固定型とし、スリーブ内部のガラス素材に対して非接触にするとともに、スリーブの内部に設けられた支持部材によってガラス素材を支持することで、下型とガラス素材とが非接触となる構成の型セットが開示されている。
【0005】
そして、ガラス素材を上型および下型の成形面に対して非接触で加熱することで、光学素子のクモリ等の品質劣化の発生を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−186392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述の特許文献1の技術では、加工バラツキや再加工により上型の高さが変化すると、上型の成形面とガラス素材との隙間寸法が変化し、ガラス素材の加熱状態が変化する結果、成形品である光学素子の品質にバラツキが発生してしまう、という技術的課題があった。
【0008】
また、上型および下型とガラス素材の隙間寸法は、支持部材およびスリーブと、上型のフランジ部から成形面までの高さの各寸法で決定されるが、これらの各部材は、相互に軸心を一致させるために、各々の内径もしくは外径が高精度に加工される必要があり非常に高価である。
【0009】
このため、上型の寸法の変化に合わせてスリーブ等の再製作や寸法調整を行なうと、型セットのコストが増大してしまう、という技術的課題がある。
【0010】
本発明の目的は、型セットの製作や補修等のコストを増大させることなく、成形型と成形素材との非接触状態を的確に制御して、成形される光学素子の品質を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、筒体内に挿入される第1成形型が有するフランジ部と、該フランジ部のフランジ面に対向する前記筒体の開口端との間に挟まれた調整部材によって、前記第1成形型の成形面と成形素材との隙間を制御する第1工程と、
前記成形素材を加熱軟化させて、前記第1成形型と、該第1成形型に対向して前記筒体内に挿入される第2成形型との間で挟圧して成形する第2工程と、
を含む、光学素子の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第2の観点は、筒体と、
前記筒体内に挿入され、フランジ部を有する第1成形型と、
前記第1成形型と対向して前記筒体内に挿入される第2成形型と、
前記第1成形型の前記フランジ部と、該フランジ部のフランジ面に対向する前記筒体の開口端との間に配置され、前記第1成形型の成形面と成形素材との隙間を制御する調整部材と、
を含む、型セットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型セットの製作や補修等のコストを増大させることなく、成形型と成形素材との非接触状態を的確に制御して、成形される光学素子の品質を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法に使用される型セットの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である型セットの一部を分解して例示した斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法に使用される光学素子の製造装置の概略構成を示す略断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法および型セットの作用の一例を示すフローチャートである。
【図5A】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法および型セットの作用を、成形動作の進行順に例示する断面図である。
【図5B】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法および型セットの作用を、成形動作の進行順に例示する断面図である。
【図5C】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法および型セットの作用を、成形動作の進行順に例示する断面図である。
【図5D】本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法および型セットの作用を、成形動作の進行順に例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法に使用される型セットの構成の一例を示す断面図である。
図2は、本発明の一実施の形態である型セットの一部を分解して例示した斜視図である。
図3は、本発明の一実施の形態である光学素子の製造方法に使用される光学素子の製造装置の概略構成を示す略断面図である。
【0016】
最初に、図1および図2を参照して、本実施の形態の型セットの構成について説明する。
図1に例示されるように、本実施の形態の型セット16は、上型18(第1成形型)、下型20(第2成形型)、筒状のスリーブ22(筒体)、素材保持部材26、およびスペーサリング40(調整部材)を有している。
【0017】
上型18および下型20は、スリーブ22の内部で、それぞれの成形面18c,成形面20cが軸方向(この場合、上下方向)に対向するようにスリーブ22の両端側から嵌挿されている。
上型18は、大径のフランジ部18aとそれよりもやや小径で端面に成形面18cが形成された先端部18bとを有する段付き円柱状をなしている。
【0018】
すなわち、上型18の先端部18bの端面には、凹球面状の成形面18cが形成されている。また、成形面18cの外周部は平坦面に形成されている。
上型18のフランジ部18aはスペーサリング40を介してスリーブ22の上端面22a(開口端)に当接することにより、先端部18bがスリーブ22の内側に嵌挿されている。
【0019】
上型18のフランジ部18aにおいて、スペーサリング40に当接するフランジ面18dは、上型18の先端円柱部18bの円筒軸に直交する平坦な平面をなすように高精度に仕上げられている。
そして、上型18はフランジ部18aのスペーサリング40に対する当接面であるフランジ面18dを基準に成形面18cを加工している。
【0020】
すなわち、上型18の成形面18cのスリーブ22に対する挿入高さ位置は、スペーサリング40の厚さ寸法tによって制御可能となっている。
【0021】
スペーサリング40において、上型18のフランジ面18dに当接するリング上面40a、およびスリーブ22の上端面22aに当接するリング下面40bは、上型18および下型20と同程度の精度にて、互いに高精度に平坦かつ平行に仕上げられている。
【0022】
そして、互いに平行なリング上面40aとリング下面40bとの距離が、スペーサリング40の所望の厚さ寸法tである。
同様に、スリーブ22のスペーサリング40に当接する上端面22aは、当該スリーブ22の軸方向に直交する平坦な平面をなすように高精度に仕上げられている。
【0023】
高精度なリング上面40aおよびリング下面40bを有するスペーサリング40は、形状が単純であるため、上型18やスリーブ22等に比較して、はるかに安価に製作できる。
【0024】
スペーサリング40の材料は、耐熱性等を考慮すると、上型18、下型20、スリーブ22等と同一の、例えば工具鋼やタングステンカーバイド(WC)等の超硬合金が望ましいが、耐熱性を満たす範囲で、これらと異なる、より安価な材料でもよい。
【0025】
下型20は、大径の基部20aと小径の先端部20bとを有する段付き円柱状をなしている。この先端部20bの端面には、例えば凸球面状の成形面20cが成形されている。基部20aはスリーブ22の内側に嵌挿されている。
【0026】
スリーブ22は軸方向において、下型20の側と上型18の側で内周の径が異なっており、その境界部が段差面24を構成し、この段差面24よりも上の大径側には、上型18の先端部18bと外径がほぼ等しい素材保持部材26が載置されている。
【0027】
すなわち、スリーブ22において段差面24よりも下部に下型20が嵌挿され、上部に上型18が嵌挿されている。
下型20は、基部20aの外径が、スリーブ22における段差面24の下側の内径よりも小さく仕上げられ、下型20の全体が、スリーブ22の内部軸方向に摺動自在に押し込まれる構成となっている。
【0028】
段差面24に配置された素材保持部材26は、図1に示すように、円柱体の中央部に軸方向に貫通する型挿通穴26aと、この型挿通穴26aの成形面18cに面する開口端の周囲に同軸に設けられた凹形成形面26bを備えている。
【0029】
この凹形成形面26bは、上型18の成形面18cと下型20の成形面20cとの間に形成されるレンズの成形空間の外周面を構成する成形面になっている。
そして、型挿通穴26aの内径は、下型20の先端部20bの外径よりも僅かに大きく仕上げられ、先端部20bが型挿通穴26aの内部を軸方向に上下動することが可能になっている。
【0030】
素材保持部材26において、凹形成形面26bの中央底部に開口する型挿通穴26aのエッジ部には、所定形状の成形素材としてのガラス素材30(成形素材)が配置されている。このガラス素材30は、市販の光学ガラスが用いられている。
【0031】
本実施の形態では、このガラス素材30は、型挿通穴26aの直径よりも大きく、凹形成形面26bの開口部の直径よりも小さい球形状をなしている。
【0032】
このため、ガラス素材30は、自重で、型挿通穴26aの凹形成形面26bにおける開口端の円形のエッジの中心部に落ち込むことにより、スリーブ22の内部において、中心軸上に、すなわち、上型18と下型20の対向軸上に同軸に自動的に位置決めされる。
【0033】
また、素材保持部材26の凹形成形面26bの開口端の円形エッジと素材保持部材26の下面26cの距離によって、ガラス素材30の下面と下型20の成形面20cの隙間g2を調節することができる。
【0034】
そして、本実施の形態の場合、図1に例示されるように、上型18のフランジ面18dから成形面18cまでの距離Lに対して、ガラス素材30の上面と成形面18cとの間に隙間g1が形成されるように、スペーサリング40の厚さ寸法tを設定する。
【0035】
また、下型20の側では、ガラス素材30の下面と下型20の成形面20cとの間に隙間g2が形成されるように、先端部20bの長さ、または、素材保持部材26の寸法が設定される。
【0036】
なお、本実施の形態の場合、ガラス素材30の成形温度までの加熱状態において、上述の隙間g1および隙間g2が実現されるように、各部の熱膨張を考慮して、上述のスペーサリング40の厚さ寸法t等が設定あるいは選択されるものとする。
【0037】
このように、本実施の形態の型セット16の場合には、例えば上型18の距離Lや、ガラス素材30のサイズが変化しても、スペーサリング40の厚さ寸法tを適宜設定することによって、上型18の成形面18cとガラス素材30との間の隙間g1を所望の値に的確に制御することができる。
【0038】
次に、上述の型セット16が使用される本実施の形態の製造装置1について説明する。
図3に例示されるように、本実施の形態の製造装置1は、成形室2内に加熱・加圧ステージ3と冷却ステージ4とが設けられた構成となっている。
【0039】
成形室2における加熱・加圧ステージ3および冷却ステージ4の配列方向の両端に設けられた入口と出口の各々には、上下に開閉自在なシャッタ8、およびシャッタ9が設けられている。この入口側のシャッタ8を開いて型セット16を成形室2内に搬入し、また、出口側のシャッタ9を開いて型セット16を成形室2から外部に搬出する。
【0040】
加熱・加圧ステージ3は、上下に対向する一対の上加熱板12および下加熱板14と、これら上加熱板12および下加熱板14間には、シャッタ8を通じて投入される上述の型セット16が配置される。
【0041】
下加熱板14は基台5に固定されている。この基台5には、基台5および下カートリッジヒータ15を貫通して上下動する突き出し部材10が設けられ、型セット16の下型20を突き上げて、スリーブ22の内部に押し込む動作が可能になっている。
【0042】
なお、突き出し部材10による下型20の突き出し量は、図示しないスケールにて突き出し部材10の上下動の変位を計測して精密に制御される。
【0043】
上加熱板12および下加熱板14の各々には、上カートリッジヒータ13および下カートリッジヒータ15が内蔵されている。また、上加熱板12を上下(対向)方向に駆動するエアシリンダ17が設けられている。
【0044】
シャッタ8を通じて上加熱板12および下加熱板14の間に搬入される型セット16に対しては、エアシリンダ17による上加熱板12の昇降動作により、当該型セット16の挟持、挟圧等の動作が行われる。
【0045】
冷却ステージ4も同様の構成を有している。なお、冷却ステージ4では、型セット16を挟持して所定の温度まで冷却させる。冷却された型セット16は、出口側のシャッタ9を通じて外部に排出される。
【0046】
成形室2のシャッタ9およびシャッタ8の近傍には、気体流入口6と気体流出口7が設けられていて、成形室2の内部雰囲気を窒素ガス(N)等の不活性ガスにより置換可能な構造になっている。
【0047】
以下、本実施の形態の光学素子の製造方法および型セットの作用の一例を説明する。
図4は、本実施の形態の光学素子の製造方法および型セットの作用の一例を示すフローチャートである。
図5A、図5B、図5C、図5Dは、本実施の形態の光学素子の製造方法および型セットの作用を、成形動作の進行順に例示する断面図である。
【0048】
まず、成形温度での上型18、下型20、スリーブ22、素材保持部材26、ガラス素材30、スペーサリング40の熱膨張量を考慮して、成形温度でガラス素材30の上面と上型18の成形面18cが、所望の隙間g1で非接触になる厚さ寸法tを有するスペーサリング40を準備して型セット16を組み立てる(ステップ110(第1工程))。
【0049】
すなわち、ステップ110の詳細を例示すると、上型18の距離Lを測定し(ステップ111)、必要とされる隙間g1と距離Lおよび成形温度における熱膨張量等に基づいてスペーサリング40の厚さ寸法tを決定し(ステップ112)、この厚さ寸法tのスペーサリング40を用いて型セット16を組み立てる(ステップ113)。
【0050】
このように、本実施の形態の型セット16の場合には、スリーブ22と上型18のフランジ部18aとの間にスペーサリング40を挟んで組み立てられるので、上型18の距離Lやガラス素材30のサイズ等に応じて、スペーサリング40の厚さ寸法tを選択することで、ガラス素材30と上型18の成形面18cとの間に所望の隙間g1を的確に設定することができる。
【0051】
この結果、後述のガラス素材30の成形温度までの加熱において、成形面18cとガラス素材30を所望の隙間g1に非接触に保つことができ、ガラス素材30の加熱条件を一定に制御して、ガラス素材30から得られる光学素子31のクモリ等の品質劣化を防止できる。
【0052】
また、上型18のフランジ面18dと成形面18cの距離Lやガラス素材30のサイズが変化しても、当該距離Lに対応した厚さ寸法tのスペーサリング40を用いることで、上型18やスリーブ22の再製作等の高コストの対策を必要とすることなく、所望の隙間g1を一定に設定して、ガラス素材30の加熱等の成形条件を一定に制御できる。
換言すれば、低コストにて、隙間g1等によって変化するガラス素材30の加熱条件等の成形条件を一定に制御できる。
【0053】
次に、予め所定温度に加熱してある、製造装置1の上加熱板12および下加熱板14の間に型セット16を投入して成形を実行する(ステップ120(第2工程))。
【0054】
すなわち、図5Aのように上加熱板12を下げて上型18の上面に当接させることで、型セット16を上下方向から同時に加熱することで、ガラス素材30を屈伏点以上のプレス成形が可能な状態に加熱する(ステップ121)。
【0055】
その後、図5Bのように突き出し部材10を上昇させて下型20を突き上げ、スリーブ22の内部に押し込むことで成形を開始する(ステップ122)。
このとき、素材保持部材26は自重で段差面24に固定されているので下型20のみが上昇してガラス素材30を押し上げることで、素材保持部材26からガラス素材30が浮上する。
【0056】
さらに、下型20を突き上げることで、図5Cのように、素材保持部材26の下面26cと下型20の基部20aの端面が一致した高さ位置から素材保持部材26と下型20が一体となって上昇する(ステップ123)。
【0057】
上述のステップ123の状態で、図5Dのように、変形したガラス素材30の中心軸部が所定の肉厚になる位置まで突き出し部材10を上動させる(ステップ124)。
【0058】
上述のステップ124で変形したガラス素材30が所定の肉厚に到達して光学素子31の形状に成形された後に、加熱・加圧ステージ3でガラス転移点付近の温度まで冷却する(ステップ125)。
【0059】
その後、突き出し部材10を下降させるとともに上加熱板12を上昇させて型セット16を解放し、型セット16を冷却ステージ4に移動させて冷却を開始する(ステップ126)。
そして、型セット16が所定の温度に低下した時点で、シャッタ9を通じて型セット16を外部に取り出す(ステップ127)。
【0060】
その後、型セット16を分解して、ガラス素材30から成形された光学素子31を取り出す(ステップ130)。
このように、本実施の形態の型セット16を用いた光学素子の製造方法によれば、ガラス素材30の上面と上型18の成形面18cの隙間g1をスペーサリング40の厚さ寸法tで調整することが可能である。
【0061】
このため、例えば、上型18の距離Lの加工精度のバラツキや再加工による変化やガラス素材30のサイズの変化等に応じてスペーサリング40の厚さ寸法tを調整することにより、上型18やスリーブ22の再加工等の高コストの対策を必要とすることなく、最適な隙間g1を設定してガラス素材30の加熱条件を最適な状態に制御することが可能となる。
【0062】
この結果、低コストにて、不適切な隙間g1に起因する光学素子31のクモリ等の成形品質の悪化を防止し、光学素子31の品質を向上させることが可能となる。
【0063】
例えば、上型18の成形面18cの形状を変更して別の品種の光学素子31の成形に用いる場合でも、フランジ部18aと成形面18cの距離Lの変化に応じた厚さ寸法tを有するスペーサリング40を用いることで、上型18のフランジ部18a等を再加工して距離Lを一定にする等の高コストの対策は不要となり、上型18の再利用による成形工程の原価低減や生産性の向上を実現できる。
【0064】
すなわち、本実施の形態によれば、型セット16の製作や補修等のコストを増大させることなく、上型18等の成形型と成形素材であるガラス素材30との非接触状態を的確に制御して、成形される光学素子31の品質を向上させることができる。
【0065】
なお、上述の説明では,単一のスペーサリング40を上型18のフランジ部18aとスリーブ22との間に挟む例を示したが、複数のスペーサリング40を重ねて使用し、個々のスペーサリング40の厚さ寸法tの和によって、上型18の成形面18cとガラス素材30との隙間g1を制御することもできる。
【0066】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、成形素材としては、ガラス素材に限らず、熱可塑性の成形素材に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 製造装置
2 成形室
3 加熱・加圧ステージ
4 冷却ステージ
5 基台
6 気体流入口
7 気体流出口
8 シャッタ
9 シャッタ
10 突き出し部材
12 上加熱板
13 上カートリッジヒータ
14 下加熱板
15 下カートリッジヒータ
16 型セット
17 エアシリンダ
18 上型
18a フランジ部
18b 先端部
18c 成形面
18d フランジ面
20 下型
20a 基部
20b 先端部
20c 成形面
22 スリーブ
22a 上端面
24 段差面
26 素材保持部材
26a 型挿通穴
26b 凹形成形面
26c 下面
30 ガラス素材
31 光学素子
40 スペーサリング
40a リング上面
40b リング下面
L 距離
g1 隙間
g2 隙間
t 厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体内に挿入される第1成形型が有するフランジ部と、該フランジ部のフランジ面に対向する前記筒体の開口端との間に挟まれた調整部材によって、前記第1成形型の成形面と成形素材との隙間を制御する第1工程と、
前記成形素材を加熱軟化させて、前記第1成形型と、該第1成形型に対向して前記筒体内に挿入される第2成形型との間で挟圧して成形する第2工程と、
を含む、光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記第1成形型における前記フランジ面と前記成形面との距離に応じて前記調整部材の厚さ寸法を設定することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記調整部材の厚さ寸法を設定して前記隙間を制御することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法において、
前記第1工程では、前記筒体の内部に、前記第2成形型に対して非接触となるように前記成形素材を支持する素材保持部材を組み込むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項5】
筒体と、
前記筒体内に挿入され、フランジ部を有する第1成形型と、
前記第1成形型と対向して前記筒体内に挿入される第2成形型と、
前記第1成形型の前記フランジ部と、該フランジ部のフランジ面に対向する前記筒体の開口端との間に配置され、前記第1成形型の成形面と成形素材との隙間を制御する調整部材と、
を含む、型セット。
【請求項6】
請求項5記載の型セットにおいて、
さらに、前記筒体の内部に配置され、前記第2成形型に対して非接触で前記成形素材を支持可能な素材保持部材を含むことを特徴とする型セット。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の型セットにおいて、
前記調整部材の厚さ寸法は、前記第1成形型における前記フランジ面と前記成形面との距離に応じて設定されていることを特徴とする型セット。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の型セットにおいて、
前記隙間は、前記調整部材の厚さ寸法が設定されて制御されていることを特徴とする型セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2011−251856(P2011−251856A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124908(P2010−124908)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)