光学素子及びその製造方法
【課題】反射層を安定に且つ高い位置精度で形成することを可能とする光学技術を提供する。
【解決手段】レリーフ構造形成層110と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなる第1層120′と、前記第1材料とは異なる第2材料130′からなり、前記第1層を被覆し、第2領域R2の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は第2サブ領域SR2の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層とを含んでいる。
【解決手段】レリーフ構造形成層110と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなる第1層120′と、前記第1材料とは異なる第2材料130′からなり、前記第1層を被覆し、第2領域R2の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は第2サブ領域SR2の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層とを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、ブランド品及び個人認証媒体等には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品には、偽造防止効果に優れた光学素子を支持させることがある。
【0003】
このような光学素子の多くは、回折格子、ホログラム及びレンズアレイ等の微細構造を含んでいる。これら微細構造は、解析することが困難である。また、これら微細構造を含んだ光学素子を製造するためには、電子線描画装置等の高価な製造設備が必要である。それゆえ、このような光学素子は、優れた偽造防止効果を発揮し得る。
【0004】
これら光学素子は、通常、微細構造を含んだ主面を有するレリーフ構造形成層と、その上に設けられた反射層とを含んでいる。この場合、偽造防止効果を更に向上させるべく、反射層を、上記主面の一部のみにパターン状に形成することがある。例えば、上記主面上に、反射層をその輪郭がマイクロ文字を構成するように設けると、回折光を射出するマイクロ文字状のパターンが得られる。
【0005】
反射層をパターン状に形成するための方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この方法によると、パターン状に形成された反射層を、比較的高精細に設けることができる。
【0006】
この方法では、レリーフ構造形成層とマスクとの間の位置合わせが必要である。しかしながら、高い生産性と高い位置精度とを同時に達成することは、不可能であるか又は極めて困難である。例えば、この方法では、上記の目標位置の輪郭と反射層の輪郭との間に、100μm以上の位置ズレを生ずることもある。
【0007】
他方、特許文献2では、反射層を高い位置精度で形成すべく、以下の方法を採用している。
【0008】
第1の方法では、まず、深さ幅比が大きな凹凸構造を備えた「第一の領域」と、平坦であるか又は深さ幅比がより小さな凹凸構造を備えた「第二の領域」とを含んだレリーフ構造形成層を準備する。次に、このレリーフ構造形成層の上に、金属反射層を均一な表面密度で形成する。その後、得られた積層体をエッチング処理に供する。
【0009】
金属反射層のうち「第一の領域」に対応した部分は、「第二の領域」に対応した部分と比較して、エッチングに対する耐性がより低い。従って、上記のエッチング処理により、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分が完全に除去される前に、「第一の領域」に対応した部分を除去することができる。即ち、「第二の領域」の上のみに、金属反射層を形成することができる。
【0010】
しかしながら、この方法では、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の一部も、エッチング処理により除去される。それゆえ、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の膜厚が過度に小さくなり、当該部分の反射率が不十分となることがある。或いは、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の膜厚に、大きなムラが生じることがある。即ち、この方法では、金属反射層を安定に形成することが困難である。
【0011】
第2の方法では、上記積層体のうち「第一の領域」に対応した部分と「第二の領域」に対応した部分との透過率の差を利用する。具体的には、積層体のうち「第一の領域」に対応した部分の透過率が「第二の領域」に対応した部分のそれと比較してより大きいことを利用する。
【0012】
即ち、まず、レリーフ構造形成層と金属反射層との積層体を準備し、金属反射層上に感光性層を形成する。その後、積層体の全面をレリーフ構造形成層側から露光する。こうすると、上述した透過率の差異に起因して、感光性層のうち「第一の領域」に対応した部分において、より高い効率で光反応を生じさせることができる。次いで、これを適切な溶剤等を用いて処理することにより、感光性層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」の何れか一方に対応した部分を除去する。
【0013】
次に、部分的に除去された感光性層をマスクとして用いて、金属反射層のエッチング処理を行う。このようにして、金属反射層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」の何れか一方に対応した部分のみを除去する。
【0014】
しかしながら、通常、上記の透過率の差異は小さいので、感光性層のうち「第二の領域」に対応した部分においても、上記の光反応が進行する。それゆえ、感光性層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」に対応した部分の何れか一方のみで上記の反応を生じさせることは、現実的には不可能であるか又は極めて困難である。従って、この方法を用いて金属反射層を高い位置精度で形成することも、実際には不可能であるか又は極めて困難である。
【0015】
また、この方法は、感光性層の露光プロセスを必要とする。それゆえ、この方法は、コスト及び生産性の面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003―255115号公報
【特許文献2】特表2008−530600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、反射層を安定に且つ高い位置精度で形成することを可能とする光学技術を提供することにある。
【0018】
本発明の一側面によると、互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層であって、気相堆積法により形成される第2層とを具備した光学素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す光学素子のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図4】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図5】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図6】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図7】一変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図。
【図8】図7に示す光学素子のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】他の変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す光学素子のX−X線に沿った断面図。
【図11】本発明の他の態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図。
【図12】図11に示す光学素子のXII−XII線に沿った断面図。
【図13】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図14】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図15】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図16】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図17】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図18】マスク層の有無とエッチングの速さとの関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す光学素子のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、光学素子10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、光学素子10の主面に垂直な方向をZ方向としている。また、図1では、光学素子10のうち後述する第1領域R1に対応した部分を表示部DP1とし、後述する第2領域R2に対応した部分を表示部DP2としている。
【0022】
図1及び図2に示す光学素子10は、レリーフ構造形成層110と、第1層120´と、第2層130´とを備えている。
【0023】
レリーフ構造形成層110の一方の主面には、レリーフ構造が設けられている。第1層120´は、レリーフ構造形成層110の先の主面を部分的に被覆している。第2層130´は、第1層120´を被覆している。なお、光学素子10の構造等については、後で詳しく説明する。
【0024】
次に、図3乃至図6を参照しながら、図1及び図2に示す光学素子10の製造方法について説明する。
【0025】
図3乃至図6は、図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【0026】
この方法では、まず、図3に示すように、互いに隣接した第1領域R1及び第2領域R2を含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を準備する。
【0027】
第1領域R1は、平坦であるか、又は、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、この場合、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図3には、第1領域R1に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。これら複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを形成している。
【0028】
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図3には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0029】
第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら複数の溝の深さは、例えば20nm乃至1500nmの範囲内とする。これら複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.5以下とし、典型的には0.05乃至0.3の範囲内とする。
【0030】
第2領域R2は、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。これら凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図3には、第2領域R2に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。
【0031】
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図3には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0032】
第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。なお、ここでは、領域の「見かけ上の面積」とは、当該領域に平行な平面への当該領域の正射影の面積、即ち、凹構造及び凸構造を無視した当該領域の面積を意味することとする。また、領域の「表面積」とは、凹構造及び凸構造を考慮した当該領域の面積を意味することとする。
【0033】
第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、第2領域R2の複数の凹部又は凸部は、典型的には、第1領域R1の複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい。図3に示す例では、第2領域R2に設けられた複数の溝は、第1領域R1に設けられた複数の溝と比較して、溝の開口部の幅に対する深さの比がより大きい。
【0034】
第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら複数の溝の深さは、例えば80nm乃至6000nmの範囲内とする。領域R1及びR2の双方に複数の溝が設けられている場合、第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、第1領域R1に設けた複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値と比較してより大きくする。第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.8乃至2.0の範囲内とし、典型的には0.8乃至1.2の範囲内とする。この値が過度に大きいと、レリーフ構造形成層110の生産性が低下する場合がある。
【0035】
レリーフ構造形成層110は、例えば、微細な凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。この際、これら凸部の形状は、領域R2又は領域R1及びR2の双方に設ける凹部の形状に対応した形状とする。
【0036】
レリーフ構造形成層110は、例えば、基材上に熱可塑性樹脂を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法により形成する。この場合、上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用する。
【0037】
或いは、レリーフ構造形成層110は、基材上に熱硬化性樹脂層を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版を押し当てながら熱を印加し、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。この場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用する。なお、このウレタン樹脂は、例えば、反応性水酸基を有したアクリルポリオール及びポリエステルポリオール等に、架橋剤としてポリイソシアネートを添加して、これらを架橋させることにより得られる。
【0038】
或いは、レリーフ構造形成層110は、基材上に放射線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら紫外線等の放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。或いは、レリーフ構造形成層110は、基材と原版との間に上記組成物を流し込み、放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。
【0039】
放射線硬化樹脂は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
【0040】
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用する。光ラジカル重合が可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用する。或いは、光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又は、ウレタン変性アクリル樹脂及びエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーを使用してもよい。
【0041】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用する。この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンを使用する。
【0042】
或いは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー若しくはポリマー、オキセタン骨格含有化合物、又は、ビニルエーテル類を使用する。
【0043】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用する。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩又は混合配位子金属塩を使用する。
【0044】
或いは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用する。或いは、この場合、光ラジカル重合及び光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を使用してもよい。このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩又は芳香族スルホニウム塩を使用する。
【0045】
なお、放射線硬化樹脂に占める開始剤の割合は、例えば、0.1乃至15質量%の範囲内とする。
【0046】
放射線硬化樹脂は、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、離型剤又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。また、放射線硬化樹脂には、その成形性を向上させるべく、非反応性の樹脂を更に含有させてもよい。この非反応性の樹脂としては、例えば、上記の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0047】
レリーフ構造形成層110の形成に用いる上記の原版は、例えば、電子線描画装置又はナノインプリント装置を用いて製造する。こうすると、上述した複数の凹部又は凸部を高い精度で形成することができる。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0048】
レリーフ構造形成層110は、典型的には、基材と、その上に形成された樹脂層とを含んでいる。この基材としては、典型的には、フィルム基材を使用する。このフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルム等のプラスチックフィルムを使用する。或いは、基材として、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙を使用してもよい。なお、基材は、省略してもよい。
【0049】
樹脂層は、例えば、上述した方法により形成される。樹脂層の厚みは、例えば0.1μm乃至10μmの範囲内とする。この厚みが過度に大きいと、加工時の加圧等による樹脂のはみ出し及び/又は皺の形成が生じ易くなる。この厚みが過度に小さいと、所望の凹構造及び/又は凸構造の形成が困難となる場合がある。また、樹脂層の厚みは、その主面に設けるべき凹部又は凸部の深さ又は高さと等しくするか又はそれより大きくする。この厚みは、例えば、凹部又は凸部の深さ又は高さの1乃至10倍の範囲内とし、典型的には、その3乃至5倍の範囲内とする。
【0050】
なお、レリーフ構造形成層110の形成は、例えば、特許第4194073号公報に開示されている「プレス法」、実用新案登録第2524092号公報に開示されている「キャスティング法」、又は、特開2007−118563号公報に開示されている「フォトポリマー法」を用いて行ってもよい。
【0051】
次に、図4に示すように、レリーフ構造形成層110の材料とは屈折率が異なる第1材料を、領域R1及びR2の全体に対して気相堆積させる。これにより、レリーフ構造形成層110の領域R1及びR2を含んだ主面上に、反射材料層120を形成する。
【0052】
この第1材料としては、例えば、レリーフ構造形成層110の材料との屈折率の差が0.2以上である材料を使用する。この差が小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。
【0053】
第1材料としては、典型的には、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つの金属材料を使用する。
【0054】
或いは、透明性が比較的高い第1材料として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
【0055】
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。
有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
【0056】
第1材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又は化学蒸着法(CVD法)を用いて行う。
【0057】
この気相堆積は、レリーフ構造形成層110の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
【0058】
また、この気相堆積では、典型的には、レリーフ構造形成層110の主面が平坦面のみからなると仮定した場合の膜厚(以下、設定膜厚という)を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、反射材料層120が以下の要件を満足するようにして定める。
【0059】
第1に、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図4に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0060】
第2に、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図4には、一例として、前者の場合を描いている。即ち、図4に示す例では、この部分は、第2領域R2に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0061】
なお、上述したように、第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、反射材料層120が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。
【0062】
なお、ここでは、層の「平均膜厚」とは、当該層の一方の面上の各点と当該層の他方の面に下ろした垂線の足との間の距離の平均値を意味することとする。
【0063】
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第2領域R2に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層120を形成することができる。
【0064】
反射材料層120の設定膜厚は、典型的には、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。
【0065】
具体的には、反射材料層120の設定膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内とし、典型的には30nm乃至300nmの範囲内とする。この設定膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120を上記の要件を満足するように形成することが困難となる場合がある。
【0066】
反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内とし、典型的には30nm乃至300nmの範囲内とする。この平均膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この平均膜厚が過度に大きいと、光学素子10の生産性が低下する場合がある。
【0067】
次いで、図5に示すように、反射材料層120の材料とは異なる第2材料を、反射材料層120に対して気相堆積させる。これにより、反射材料層120を間に挟んでレリーフ構造形成層110と向き合ったマスク層130を形成する。
【0068】
この第2材料としては、典型的には、無機物を使用する。この無機物としては、例えば、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、Ni、Cu、Au、Ag、TiO2、MgO、SiO2 及び Al2O3が挙げられる。特には、第2材料としてMgF2を使用した場合、基材の曲げや衝撃に対するマスク層130及び第2層130´の追従性及び耐擦傷性を更に向上させることができる。
【0069】
或いは、この第2材料として、有機物を使用してもよい。この有機物としては、例えば、重量平均分子量が1500以下の有機物を使用する。このような有機物としては、例えば、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の重合性化合物が挙げられる。或いは、このような有機化合物として、これら重合性化合物と開始剤とを混合し、放射線硬化樹脂として気相堆積した後に、放射線照射によって重合させたものを使用してもよい。
【0070】
或いは、第2材料として、金属アルコキシドを使用してもよい。或いは、第2材料として、金属アルコキシドを気相堆積した後、これを重合させたものを使用してもよい。この際、気相堆積の後、重合させる前に、乾燥処理を行ってもよい。
【0071】
第2材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又はCVD法を用いて行う。
【0072】
この気相堆積は、レリーフ構造形成層110の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
【0073】
また、この気相堆積では、マスク層130の設定膜厚を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、マスク層130が以下の要件を満足するようにして定める。
【0074】
第1に、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図5に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0075】
第2に、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図5には、一例として、後者の場合を描いている。即ち、図5に示す例では、この部分は、反射材料層120の上で、第2領域R2に設けられた複数の溝の配置に対応して部分的に開口した不連続膜を形成している。
【0076】
なお、上述したように、第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、マスク層130が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。
【0077】
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第2領域R2に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口したマスク層130を形成することができる。
【0078】
マスク層130の設定膜厚は、典型的には、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。そして、マスク層130の設定膜厚は、典型的には、反射材料層120の設定膜厚と比較してより小さくする。
【0079】
具体的には、マスク層130の設定膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には3nm乃至80nmの範囲内とする。この設定膜厚が過度に小さいと、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚が過度に小さくなり、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分のマスク層130による保護が不十分となる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のマスク層130による保護が過剰となる場合がある。
【0080】
マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、典型的には、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と比較してより小さくする。
【0081】
マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には3nm乃至80nmの範囲内とする。この平均膜厚が過度に小さいと、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分のマスク層130による保護が不十分となり、後述する第1層120´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚が過度に小さくなる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のマスク層130による保護が過剰となる場合がある。
【0082】
続いて、マスク層130を、反射材料層120の材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝す。そして、少なくとも第2領域R2の位置で、反射材料層120の材料との上記反応を生じさせる。
【0083】
ここでは、反応性ガス又は液として、反射材料層120の材料を溶解可能なエッチング液を使用する場合について説明する。このエッチング液としては、典型的には、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液等のアルカリ性溶液を使用する。或いは、エッチング液として、塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸等の酸性溶液を使用してもよい。
【0084】
図5に示すように、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は連続膜を形成しているのに対し、第2領域R2に対応した部分は、部分的に開口した不連続膜を形成している。反射材料層120のうちマスク層130によって被覆されていない部分は、反射材料層120のうちマスク層130によって被覆された部分と比較して、反応性ガス又は液と接触し易い。従って、前者は、後者と比較してよりエッチングされ易い。
【0085】
また、反射材料層120のうちマスク層130によって被覆されていない部分が除去されると、反射材料層120には、マスク層130の開口に対応した開口が生じる。エッチングを更に続けると、反射材料層120のエッチングは、各開口の位置で面内方向に進行する。その結果、第2領域R2上では、反射材料層120のうちマスク層130を支持している部分が、その上のマスク層130と共に除去される。
【0086】
従って、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図6に示すように、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去することができる。これにより、領域R1及びR2のうち第1領域R1のみを被覆した第1層120´が得られる。
【0087】
以上のようにして、図1及び図2に示す光学素子10を得る。
上述した方法によって得られる光学素子10には、以下の特徴がある。
【0088】
第1層120´は、反射層であり、典型的には、上述した第1材料からなる。第1層120´は、領域R1及びR2のうち、第1領域R1のみを被覆している。即ち、第1層120´は、第1領域R1に対応した位置にのみ設けられている。また、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比は、ゼロである。
【0089】
第1層120´は、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有している。図1及び図2に示す例では、第1層120´は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有している。第1領域R1に設けられた複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを第1層120´の表面に形成している。この場合、光学素子10の表示部DP1は、回折光に対応した色を表示し得る。従って、この場合、より優れた偽造防止効果及び装飾効果を達成することができる。
【0090】
第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への正射影は、その全体が第1領域R1の輪郭と重なり合っている。即ち、第1層120´は、第1領域R1の形状に対応してパターニングされている。従って、領域R1及びR2を高い位置精度で形成しておくことにより、優れた位置精度で形成された第1層120´を得ることができる。
【0091】
なお、図3乃至図6を参照しながら説明した方法では、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、マスク層130によって被覆されている。それゆえ、上記のエッチング処理を行った場合でも、当該部分の膜厚は、殆ど又は全く減少しない。従って、第1層120´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、典型的には、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と等しい。即ち、この平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内にあり、典型的には30nm乃至300nmの範囲内にある。
【0092】
なお、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値は、例えば20μm未満とし、好ましくは10μm未満とし、より好ましくは3μm未満とする。
【0093】
第2層130´は、例えば、気相堆積法により形成される層である。第2層130´は、第1層120´を被覆している。第2層130´は、第1層120´を間に挟んで、領域R1及びR2のうち第1領域R1の全体のみと向き合っている。即ち、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への正射影は、その全体が第2層130´の輪郭の上記主面への正射影と重なり合っている。また、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比は、ゼロである。
【0094】
第2層130´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と等しいか又はより小さい。この平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内にあり、典型的には3nm乃至80nmの範囲内にある。
【0095】
第2層130´は、例えば、第1層120´を保護する役割を担っている。また、第2層130´を設けると、第2層130´が存在しない場合と比較して、光学素子10の偽造をより困難とすることができる。
【0096】
また、第2材料として着色している材料を使用し、光学素子10を第2層130´側から観察した場合、第2層130´は、光学素子10の他の部分の色彩に影響を与えることなしに、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分の色彩を変化させることを可能とする。例えば、第1材料としてAlを使用し且つ第2材料としてSn又はCrを使用した場合、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分に、黒味を帯びた色彩を付与することができる。或いは、第1材料としてAlを使用し且つ第2材料としてZnSを使用した場合、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分に、黄味を帯びた色彩を付与することができる。なお、第1層120´の平均膜厚が小さい場合には、光学素子10をレリーフ構造形成層110側から観察した場合であっても、これら効果を達成することができる。
【0097】
なお、以上においては、領域R1及びR2の双方に規則的に配列した複数の溝が設けられている場合について説明したが、領域R1及びR2の構成はこれには限られない。
【0098】
例えば、第1領域R1は、平坦であってもよい。この場合、表示部DP1は、例えば、鏡面のように見える。なお、この場合、第1領域R1の見かけ上の面積に対する表面積の比は1に等しい。
【0099】
或いは、第1領域R1は、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられていてもよい。この場合、これら凹部又は凸部は、典型的には、先細りしている。例えば、これら凹部又は凸部は、円錐、角錐、円錐台、角錐台、楕円放物面又は回転放物面形状を有している。これら凹部又は凸部の側壁は、滑らかであってもよく、階段状であってもよい。或いは、これら凹部又は凸部は、円柱及び角柱状等の柱状であってもよい。
【0100】
また、二次元的に配列した凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。前者の場合、これら凹部又は凸部は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを第1層120´の表面に形成している。
【0101】
第1領域R1に二次元的に配列した凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部又は凸部は、例えば、正方格子状に配列している。或いは、これら凹部又は凸部は、矩形格子状又は三角格子状に配列していてもよい。
【0102】
第1領域R1に二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部の開口部の径の平均値又はこれら凸部の底部の径の平均値は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら凹部の深さの平均値又はこれら凸部の高さの平均値は、例えば20nm乃至1500nmの範囲内とする。これら凹部の径に対する深さの比の平均値又はこれら凸部の底部の径に対する高さの比の平均値は、例えば0.5以下とし、典型的には0.05乃至0.3の範囲内とする。
【0103】
また、第2領域R2は、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられていてもよい。これら複数の凹部又は凸部としては、例えば、凹部の径に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径に対する高さの比の平均値がより大きいことを除いては、先に第1領域R1の複数の凹部又は凸部について説明したのと同様の構成を採用することができる。
【0104】
第2領域R2に二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部の開口部の径の平均値又はこれら凸部の底部の径の平均値は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら凹部の深さの平均値又はこれら凸部の高さの平均値は、例えば80nm乃至6000nmの範囲内とする。これら凹部の径に対する深さの比の平均値又はこれら凸部の底部の径に対する高さの比の平均値は、例えば0.8乃至2.0の範囲内とし、典型的には0.8乃至1.5の範囲内とする。
【0105】
なお、領域R1及びR2に設ける複数の凹部又は凸部は、レリーフホログラム、回折格子、サブ波長格子、マイクロレンズ、偏光素子、集光素子、散乱素子、拡散素子又はこれらの組み合わせを形成していてもよい。
【0106】
また、上では、反射材料層120が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有しており、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分がこの第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分が第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口している構成について説明したが、これら層の構成はこれには限られない。
【0107】
例えば、反射材料層120とマスク層130との双方が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有した構成を採用してもよい。この場合、先に述べたように、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分は、それぞれ、これら層のうち第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さい。
【0108】
一般に、マスク層130のうち平均膜厚がより小さい部分は、平均膜厚がより大きい部分と比較して、反応性ガス又は液を透過させ易い。また、反応性ガス又は液と第2材料とが反応し、この反応の生成物がマスク層130から直ちに除去される場合には、第2領域R2上でのみマスク層130を開口させることができる。
【0109】
従って、この場合においても、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図1及び図2に示す光学素子10を製造することが可能である。
【0110】
或いは、反射材料層120とマスク層130との双方が、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており、第2領域R2に対応した部分では第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口している構成を採用してもよい。この場合においても、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図1及び図2に示す光学素子10を製造することが可能となる。
【0111】
また、上では、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分を完全に除去する場合について説明したが、これら部分の一部が残存するようにしてもよい。例えば、エッチング処理に供する時間をより短くすることにより、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比が、ゼロより大きく且つ第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と比較してより小さくなるようにしてもよい。或いは、同様にして、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比が、ゼロより大きく且つ第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と比較してより小さくなるようにしてもよい。
【0112】
更には、上では、反射材料層120及び第1層120´が単層構造を有している場合について説明したが、これら層は、多層構造を有していてもよい。これにより、例えば、光学素子10において、第1層120´が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0113】
この場合、第1層120´は、例えば、レリーフ構造形成層110側から、ミラー層とスペーサ層とハーフミラー層とがこの順に積層した多層膜を含んでいる。
【0114】
ミラー層は、金属層であり、典型的には、金属の単体又は合金を含んでいる。ミラー層が含んでいる金属としては、例えば、アルミニウム、金、銅及び銀が挙げられる。この金属としては、アルミニウムが特に好ましい。ミラー層の厚みは、例えば300nm以下とし、典型的には20乃至200nmの範囲内とする。
【0115】
スペーサ層は、典型的には、誘電材料を含んでいる。この誘電材料の屈折率は、1.65以下であることが好ましい。また、この誘電材料は、透明であることが好ましい。このような誘電材料としては、例えば、SiO2及びMgF2が挙げられる。スペーサ層の厚みは、例えば、5乃至500nmの範囲内とする。
【0116】
ハーフミラー層は、光透過性のある反射層であり、典型的には、金属の単体、合金、金属酸化物又は金属硫化物を含んでいる。ハーフミラー層が含んでいる金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、イノセル(登録商標)、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化モリブデン(MoS2)、及び、酸化鉄(III)(Fe2O3)が挙げられる。ハーフミラー層の厚みは、例えば、5乃至80nmの範囲内とする。この厚みは、透明性の高い高屈折率材料である、酸化チタンなどの金属酸化物や硫化亜鉛などの金属硫化塩を使用する場合には、30乃至80nmの範囲内とすることが好ましい。また、この厚みは、反射率及び光遮蔽性が高いアルミニウムなどの金属を使用する場合には、5乃至45nmの範囲内とすることが好ましい。
【0117】
また、上では、マスク層130及び第2層130´が単層構造を有している場合について説明したが、これら層は、多層構造を有していてもよい。これにより、例えば、光学素子10において、第2層130´が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0118】
或いは、第1層120´と第2層130´との積層構造が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0119】
これら場合、図3乃至図6を参照しながら説明した方法を利用すると、多層干渉膜を安定に且つ高い位置精度で形成することが可能となる。
【0120】
図3乃至図6を参照しながら説明した方法において、第1層120´及び第2層130´を形成した後、図4及び図6を参照しながら説明した工程を繰り返してもよい。こうすると、第1領域R1上に、第1層120´と第2層130´とが交互に積層した構造を得ることができる。こうすると、例えば、第1領域R1上に、多層干渉膜を形成することが可能となる。この場合にも、多層干渉膜を安定に且つ高い位置精度で形成することが可能となる
また、上では、反応性ガス又は液としてエッチング液を使用する場合について説明したが、反応性ガス又は液はこれには限られない。例えば、反応性ガス又は液として、反射材料層120の材料を気化させ得るエッチングガスを使用してもよい。
【0121】
或いは、反応性ガス又は液として、第1材料との反応により、反射材料層120の一部を第1材料とは異なる材料からなる層に変化させ得るガス又は液を使用してもよい。この場合、例えば、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分を除去する代わりに、当該部分を第1材料とは異なる材料からなる層に変化させることが可能となる。
【0122】
このような反応性ガス又は液としては、例えば、第1材料を酸化させ得る酸化剤を使用することができる。この酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、若しくはハロゲン、又は、二酸化塩素、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次ハロゲン酸、過ハロゲン酸、及びその塩などのハロゲン化物、過酸化水素、過硫酸塩類、ペルオキソ炭酸塩類、ペルオキソ硫酸塩類、及びペルオキソリン酸塩類などの無機過酸化物、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、過蟻酸、過酢酸、及び過安息香酸などの有機過酸化物、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、重クロム酸塩、クロム酸塩、過マンガン酸塩、過フタル酸マグネシウム、塩化第二鉄、及び塩化第二銅などの金属又は金属化合物、又は、硝酸、硝酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、及びヨウ素酸塩などの無機酸若しくは無機酸塩を使用する。
【0123】
例えば、反射材料層120´の材料としてCuを使用した場合、反射材料層120´のうち少なくとも第2領域R2に対応した部分を酸化剤と反応させることにより、当該部分をCu酸化物からなる層に変化させることができる。或いは、反射材料層120´の材料としてAlを使用した場合、反射材料層120´のうち少なくとも第2領域R2に対応した部分を酸化剤と反応させることにより、当該部分をベーマイト等のAl酸化物からなる層に変化させることができる。
【0124】
或いは、上記の反応性ガス又は液として、反射材料層120´の材料を還元させ得る還元剤を使用してもよい。この還元剤としては、例えば、硫化水素、二酸化硫黄、フッ化水素、アルコール、カルボン酸、水素ガス、水素プラズマ、遠隔水素プラズマ、ジエチルシラン、エチルシラン、ジメチルシラン、フェニルシラン、シラン、ジシラン、アミノシラン)、ボラン、ジボラン、アラン、ゲルマン、ヒドラジン、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、t−ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、2−ヒドラジノエタノール、1−n−ブチルー1−フェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン、1−ナフチルヒドラジン、4−クロロフェニルヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、p−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、1,2−ジフェニルヒドラジン、アセチルヒドラジン又はベンゾイルヒドラジンを使用する。
【0125】
なお、図3乃至図6を参照しながら説明した方法において、エッチング処理等によって第1層120´を形成した後、第2層130´を除去してもよい。この第2層130´の除去は、例えば、第1材料と第2材料とのイオン化傾向の差異に基づいた第1材料のイオン化が懸念される場合に有効である。
【0126】
図7は、一変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図である。図8は、図7に示す光学素子のVIII−VIII線に沿った断面図である。図7及び図8に示す光学素子10は、レリーフ構造形成層110の主面が含んだ領域R1及びR2の構成を異ならしめることを除いては、図3乃至図6を参照しながら説明したのと同様の方法により製造することができる。
【0127】
図7及び図8に示す光学素子10では、第1領域R1は、「TP」なるマイクロ文字に対応した輪郭を有している。
【0128】
第1領域R1は、平坦面からなる平坦領域FRと、複数の凹部又は凸部を備えた凹凸領域URとを備えている。平坦領域FRは、凹凸領域URを縁取っている。図7では、光学素子10のうち平坦領域FRに対応した部分を表示部DPFとし、光学素子10のうち凹凸領域URに対応した部分を表示部DPUとしている。
【0129】
表示部DPUを縁取っている表示部DPFの幅は、例えば10μm乃至2000μmの範囲内にあり、典型的には50μm乃至1000μmの範囲内にある。このような表示部DPFを形成するためには、第1層120´を極めて高い位置精度で形成する必要がある。従って、このような光学素子10を従来のパターニング方法を用いて製造することは、不可能であるか又は極めて困難である。
【0130】
他方、先に図3乃至図6を参照しながら説明した方法を用いると、上述したように、第1層120´を高い位置精度で形成することができる。従って、このような方法を用いると、上記のマイクロ文字のような微細な像であっても、優れた解像度で表示させることが可能となる。
【0131】
図9は、他の変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図である。図10は、図9に示す光学素子のX−X線に沿った断面図である。図9では、光学素子10のうち後述する第1サブ領域SR1に対応した部分を表示部DSP1とし、第2サブ領域SR2に対応した部分を表示部DSP2としている。
【0132】
図9及び図10に示す光学素子10は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す光学素子10と同様の構成を有している。
【0133】
即ち、図9及び図10に示す光学素子10では、第1領域R1は、第1サブ領域SR1と第2サブ領域SR2とを含んでいる。第1サブ領域SR1は、第2領域R2と隣接し、領域R1及びR2間の境界に沿って延びている。第2サブ領域SR2は、第1サブ領域SR1を間に挟んで第2領域R2と隣接している。第2サブ領域SR2の輪郭は、典型的には、第1領域R1の輪郭に沿った形状を有している。
【0134】
第1層120´は、第2サブ領域SR2に対応した位置にのみ設けられている。即ち、領域R1及びR2のうち第2サブ領域SR2のみが第1層120´によって被覆されている。そして、第1層120´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分は、第2サブ領域SR2の表面形状に対応した表面形状を有している。
【0135】
第1層120´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分の平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内にあり、典型的には5nm乃至300nmの範囲内にある。この平均膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この平均膜厚が過度に大きいと、光学素子10の生産性が低下する場合がある。
【0136】
第2層130´は、典型的には、第1領域R1の全体と向き合っている。即ち、典型的には、第2層130´は、第1層120´を被覆した第1部分P1と、第1部分P1からその外側に突き出た第2部分P2とを含んでいる。そして、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への第1正射影は、典型的には、気相堆積層の輪郭の上記主面への第2正射影に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれている。
【0137】
従って、例えば、第2材料が着色している場合、光学素子10のうち第1サブ領域SR1に対応した部分DSR1と、第2サブ領域SR2に対応した部分DSR2とで、異なる色彩を表示させることができる。この色彩の差異は、例えば、光学素子10を顕微鏡を用いて観察することにより確認できる。或いは、第1サブ領域SR1が占める面積が大きい場合には、この色彩の差異を、肉眼で観察することができる。このように、図9及び図10を参照しながら説明した光学素子10は、特殊な光学効果を発揮し得る。
【0138】
なお、第2層130´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分の平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内にあり、典型的には3nm乃至80nmの範囲内にある。
【0139】
図9及び図10に示す光学素子10は、例えば、以下のようにして製造する。即ち、図3及び図5を参照しながら説明した工程の後、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチング処理の時間等を調整することにより、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分において、サイドエッチングを生じさせる。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分と共に、反射材料層120のうち第1サブ領域SR1に対応した部分を除去する。このようにして、図9及び図10に示す光学素子10を得る。
【0140】
上記のサイドエッチングは、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の輪郭から、その内側に向けて、ほぼ均一な速さで生じる。それゆえ、このサイドエッチングにより除去される部分の幅、即ち、第1サブ領域SR1の輪郭と第1領域R1の輪郭との間の距離のバラつきは、比較的小さい。それゆえ、典型的には、第2サブ領域SR2の輪郭は、典型的には、第1領域R1の輪郭に沿った形状を有している。従って、このような方法を採用した場合であっても、第1層120´を高い位置精度で形成することができる。
【0141】
また、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、マスク層130により被覆されているため、側面からのサイドエッチングが生じる条件下においても、その主面からのエッチングは殆ど又は全く生じない。従って、このような方法を採用した場合であっても、第1層120´を安定に形成することができる。
【0142】
なお、上では、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への第1正射影が気相堆積層の輪郭の上記主面への第2正射影に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれている構成について説明したが、第1層120´及び第2層130´の構成はこれには限られない。例えば、エッチング後の構造を第1領域R1を横切るように切断した場合、第1正射影の一部は第2正射影の一部と重なり合い、第1正射影の残りの部分は第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれる。
【0143】
図11は、本発明の他の態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図12は、図11に示す光学素子のXII−XII線に沿った断面図である。図13乃至図17は、図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、図11では、光学素子10のうち後述する第3領域R3に対応した部分を、表示部DP3としている。
【0144】
以下、図13乃至図17を参照しながら、図11及び図12に示す光学素子10の製造方法について説明する。
【0145】
まず、図13に示すように、第1領域R1と第2領域R2と第3領域R3とを含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を準備する。このレリーフ構造形成層110は、第3領域R3を更に含んでいることを除いては、図3を参照しながら説明したレリーフ構造形成層と同様の構成を有している。
【0146】
第3領域R3は、複数の凹部又は凸部が設けられている。そして、第3領域R3は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。この第3領域R3は、典型的には、第2領域R2と同様の構成を有している。
【0147】
次に、図14に示すように、第1材料を領域R1乃至R3の全体に対して気相堆積させる。これにより、反射材料層120を形成する。この反射材料層120の形成は、図4を参照しながら説明したのと同様にして行う。図14に示す例では、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。また、反射材料層120のうち領域R2及びR3に対応した部分は、これら領域R2及びR3に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0148】
次いで、図15に示すように、第2材料を反射材料層120に対して気相堆積させる。これにより、マスク層130を形成する。このマスク層130の形成は、図5を参照しながら説明したのと同様にして行う。
【0149】
図15に示す例では、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。また、マスク層130のうち領域R2及びR3に対応した部分は、反射材料層120の上で、これら領域R2及びR3に設けられた複数の溝の配置に対応して部分的に開口した不連続膜を形成している。
【0150】
続いて、図16に示すように、領域R2及びR3のうち第3領域R3のみと向き合った被覆層140を形成する。被覆層140は、第1領域R1の少なくとも一部と更に向き合っていてもよい。図16には、被覆層140が、第3領域R3の全体及び第1領域R1の一部と向き合っている場合を描いている。
【0151】
この被覆層140の形成は、公知のパターン形成方法を用いて行うことができる。このパターン形成方法としては、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法又はセキュリティー凹版印刷法を使用する。この被覆層140の材料としては、例えば、上述した熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は放射線硬化樹脂を使用する。或いは、被覆層140の材料として、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリイミド等の耐熱樹脂、これらの混合物又はこれらの共重合物を使用してもよい。なお、上記材料を印刷可能な塗料とすべく、水及び有機溶剤等の溶媒によって樹脂を溶解した後に、必要に応じて、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、又はこれらの組み合わせを添加してもよい。
【0152】
その後、マスク層130及び被覆層140を、反射材料層120の材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝す。そして、少なくとも第2領域R2の位置で、反射材料層120の材料との反応を生じさせる。ここでは、反応性ガス又は液の一例として、反射材料層120の材料を溶解可能なエッチング液を使用する場合について説明する。
【0153】
図16に示すように、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は連続膜を形成しているのに対し、第2領域R2に対応した部分は、部分的に開口した不連続膜を形成している。これに起因して、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較してよりエッチングされ易い。
【0154】
また、図16に示すように、マスク層130のうち第3領域R3に対応した部分の上には、被覆層140が形成されている。他方、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分の上には、被覆層140が形成されていない。これに起因して、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第3領域R3に対応した部分と比較してよりエッチングされ易い。
【0155】
従って、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図17に示すように、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去することができる。なお、この際、反射材料層120のうち第2領域R2に対応する部分の除去に伴って、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分も除去される。
【0156】
以上のようにして、図11及び図12に示す光学素子10を得る。
【0157】
この光学素子10は、レリーフ構造形成層110と第1層120´と第2層130´と被覆層140とを含んでいる。この光学素子10では、第1領域R1以外の領域、即ち第3領域R3上にも、第1層120´が存在する。それゆえ、例えば、第3領域R3に、ホログラム、回折格子、サブ波長格子、ゼロ次回折フィルタ及び偏光分離フィルタ等に対応した光学効果を発揮し得る複数の凹部又は凸部を設けることにより、更に特殊な視覚効果を有した光学素子10を得ることができる。
【0158】
光学素子10は、保護膜を更に備えていてもよい。光学素子10は、その表面に、反射防止処理を施されていてもよい。また、光学素子10を製造する際に、光学素子10を構成する層の少なくとも1つの表面に、コロナ処理、フレーム処理又はプラズマ処理を施してもよい。
【0159】
なお、以上において説明した種々の態様及び変形例は、それらの2以上を組み合わせて適用されてもよい。
【0160】
また、以上において説明した技術は、反射層を部分的に設けるための公知のプロセスと組み合わせて使用してもよい。この公知のプロセスとしては、例えば、レーザーを用いて反射層をパターン状に除去するレーザー法を使用する。或いは、このプロセスとして、反射層上にマスクをパターン状に設けた後、反射層のうちマスクに被覆されていない部分を除去する方法を使用してもよい。或いは、このプロセスとして、層又は基材の主面上にマスクをパターン状に設け、上記主面の全体に亘って反射層を形成し、その後、反射層のうちマスク上に位置した部分をマスクと共に除去する方法を使用してもよい。なお、これらマスクの形成は、例えば、印刷法又はフォトレジスト法により行う。
【0161】
光学素子10は、粘着ラベルの一部として使用してもよい。この粘着ラベルは、光学素子10と、光学素子10の背面上に設けられた粘着層とを備えている。
【0162】
或いは、光学素子10は、転写箔の一部として使用してもよい。この転写箔は、光学素子10と、光学素子10を剥離可能に支持した支持体層とを備えている。
【0163】
光学素子10は、物品に支持させて使用してもよい。例えば、光学素子10は、プラスチック製のカード等に支持させてもよい。或いは、光学素子10は、紙に漉き込んで使用してもよい。光学素子10は、燐片状に破砕して、顔料の一成分として使用してもよい。
【0164】
光学素子10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、光学素子10は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0165】
<マスク層の有無とエッチングの速さとの関係>
まず、マスク層130の有無と、反射材料層120のうち領域R1及びR2に対応した部分のエッチングの速さの差異との関係を調べた。
【0166】
(積層体LB1の製造)
以下のようにして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120とマスク層130との積層体を製造した。
【0167】
まず、紫外線硬化型樹脂の材料として、50.0質量部のウレタン(メタ)アクリレートと、30.0質量部のメチルエチルケトンと、20.0質量部の酢酸エチルと、1.5質量部の光開始剤とを含んだ組成物を準備した。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多官能性であり且つ分子量が6000であるものを使用した。光開始剤としては、チバスペシャリティー製「イルガキュア184」を使用した。
【0168】
次に、厚みが23μmである透明PETフィルム上に、上記の組成物を、乾燥膜厚が1μmとなるように、グラビア印刷法によって塗布した。
【0169】
次いで、複数の凸部が設けられた原版を版胴の円筒面に支持させ、この原版を先の塗膜に押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射した。これにより、上記の紫外線硬化樹脂を硬化させた。この際、プレス圧力は2kgf/cm2とし、プレス温度は80℃とし、プレススピードは10m/分とした。また、紫外線の照射は、高温水銀灯を用いて、300mJ/cm2の強度で行った。
【0170】
以上のようにして、領域R1及びR2を含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を得た。
【0171】
このレリーフ構造形成層110の第1領域R1には、その全体に、規則的に配列した複数の溝を形成した。これら溝の断面形状は、V字形状とした。また、これら溝のピッチは1000nmとした。そして、これら溝の開口部の幅は1000nmとし、深さは100nmとした。即ち、第1領域R1には、溝の開口部の幅に対する深さの比が100nm/1000nm=0.1である複数の溝を形成した。
【0172】
また、このレリーフ構造形成層110の第2領域R2には、その全体に、正方格子状に配列した複数の凹部を形成した。これら凹部の形状は、角錐状とした。また、これら凹部の最小中心間距離は、333nmとした。そして、これら凹部の開口部の幅は333nmとし、深さは333nmとした。即ち、第2領域R2には、溝の開口部の幅に対する深さの比が333nm/333nm=1.0である複数の凹部を形成した。
【0173】
続いて、レリーフ構造形成層110の上記主面上に、第1材料として、Alを真空蒸着させた。このようにして、反射材料層120を形成した。なお、この際、反射材料層120の設定膜厚は、50nmとした。
【0174】
その後、反射材料層120のレリーフ構造形成層110とは反対側の主面上に、第2材料として、MgF2を真空蒸着させた。このようにして、マスク層130を形成した。なお、この際、MgF2 の設定膜厚は、20nmとした。
【0175】
以上のようにして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120とマスク層130との積層体を得た。以下、このようにして製造された積層体を「積層体LB1」と呼ぶ。
【0176】
(積層体LB2の製造;比較例)
マスク層130の形成を省略したことを除いては、積層体LB1と同様にして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120との積層体を製造した。以下、この積層体を「積層体LB2」と呼ぶ。
【0177】
(評価)
積層体LB1及びLB2を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチング処理に供した。この際、水酸化ナトリウム水溶液の温度を順次変化させて、各々の場合について、以下の評価を行った。即ち、上記の積層体のうち第1領域R1に対応した部分の透過率が20%となるまでの時間T1と、第2領域R2に対応した部分の透過率が80%となるまでの時間T2とを測定した。その結果を、図18に示す。なお、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.1mol/Lとし、その液温は、高い方から順に、60℃、50℃、40℃、30℃及び25℃とした。
【0178】
図18は、マスク層の有無とエッチングの速さとの関係の一例を示すグラフである。図18には、積層体LB1及びLB2の各々についての時間T1及びT2の測定結果と、式T1=T2で表される直線とを描いている。なお、各曲線上のデータは、原点から離れる方向へ向けて水酸化ナトリウム水溶液の温度が減少するように並んでいる。
【0179】
この測定において、T1の値が大きいほど、反射材料層120のうち第1領域RG1に対応した部分のエッチングの速さが小さい。また、T2の値が小さいほど、反射材料層120のうち第2領域RG2に対応した部分のエッチングの速さが大きい。従って、比T1/T2の値が大きいほど、エッチングの選択性が高い。
【0180】
図18から分かるように、積層体LB2は、水酸化ナトリウム水溶液の温度が高い領域において、比T1/T2がほぼ1に等しかった。即ち、この領域では、エッチングの選択性が低かった。そして、水酸化ナトリウム水溶液の温度が低い領域では、その温度を低くするにつれて、比T1/T2が次第に増大していた。即ち、この領域では、水酸化ナトリウム水溶液の温度を低くすることにより、エッチングの選択性を向上させることができた。それゆえ、積層体LB2を用いた場合、光学素子を高い安定性で製造するためには、水酸化ナトリウム水溶液の温度を低くする必要がある。しかしながら、この場合、エッチング処理に要する時間が許容できないほど大きくなる。従って、この場合、光学素子の製造の生産性と安定性とを両立することは不可能であるか又は極めて困難であることが分かった。
【0181】
他方、積層体LB1は、水酸化ナトリウム水溶液の温度の高低に拘らず、比T1/T2の値が大きかった。即ち、積層体LB1は、水酸化ナトリウム水溶液の温度の高低に拘らず、エッチング選択性が高かった。従って、積層体LB1を用いた場合、光学素子を、短いエッチング処理時間で、安定に製造可能であることが分かった。即ち、この場合、光学素子の製造における生産性と安定性とを両立可能であることが分かった。
【0182】
<反射材料層の除去の選択性及び反射層の位置精度の評価>
まず、以下のようにして、光学素子OD1乃至OD9を製造した。
【0183】
(例1:光学素子OD1の製造)
先に述べた積層体LB1を、エッチング処理に供した。具体的には、この積層体LB1を、濃度が0.1mol/Lで、液温が60℃の水酸化ナトリウム水溶液に7秒間に亘って曝した。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分を除去した。
【0184】
以上のようにして、光学素子10を製造した。以下、この光学素子10を「光学素子OD1」と呼ぶ。この光学素子OD1は、レリーフ構造形成層110と、領域R1及びR2のうち第1領域R1の全体のみを被覆した第1層120´と、第1層120´の全体を被覆した第2層130´とからなる積層構造を有していた。
【0185】
また、この光学素子OD1では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0186】
(例2:光学素子OD2の製造)
第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を200nmとし、これら凹部の開口部の幅を200nmとし、深さを160nmとしたことを除いては、光学素子OD1と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD2」と呼ぶ。
【0187】
この光学素子OD2では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/1000nm=0.1であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、160nm/200nm=0.8であった。
【0188】
また、この光学素子OD2では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0189】
(例3:光学素子OD3の製造)
第1領域R1に設ける複数の溝のピッチを300nmとし、これら溝の開口部の幅を300nmとし、深さを100nmとすると共に、第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を375nmとし、これら凹部の開口部の幅を375nmとし、深さを300nmとしたことを除いては、光学素子OD1と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD3」と呼ぶ。
【0190】
この光学素子OD3では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/300nm=0.33であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、300nm/375nm=0.8であった。
【0191】
また、この光学素子OD3では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0192】
(例4:光学素子OD4の製造)
第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を300nmとし、これら凹部の開口部の幅を300nmとし、深さを300nmとしたことを除いては、光学素子OD3と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD4」と呼ぶ。
【0193】
この光学素子OD4では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/300nm=0.33であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、300nm/300nm=1.0であった。
【0194】
また、この光学素子OD4では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0195】
(例5:光学素子OD5の製造)
まず、先に積層体LB1について述べたのと同様にして、領域R1及びR2に加えて第3領域R3を更に含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を形成した。このレリーフ構造形成層110における領域R1及びR2としては、積層体LB1の場合と同様の構成を採用した。そして、第3領域R3としては、第2領域R2と同様の構成を採用した。
【0196】
次に、先に積層体LB1について述べたのと同様にして、反射材料層120及びマスク層130を形成した。
【0197】
その後、グラビア印刷法を用いて、領域R1乃至R3のうち、第3領域R3の全体及び第1領域R1の一部のみと向き合った被覆層140を形成した。
【0198】
続いて、先に光学素子OD1について述べたのと同様にして、エッチング処理を行った。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去して、反射層120及び気相堆積層130を形成した。以下、このようにして得られた光学素子を「光学素子OD5」と呼ぶ。
【0199】
この光学素子OD5では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/1000nm=0.1であった。また、領域R2及びR3に設けられた凹部の開口部の幅に対する深さの比は、333nm/333nm=1.0であった。
【0200】
また、この光学素子OD5では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0201】
(例6:光学素子OD6の製造;比較例)
積層体LB1の代わりに積層体LB2を使用し、これを、濃度が0.1mol/Lであり、液温が60℃であるの水酸化ナトリウム水溶液に7秒間に亘って曝す代わりに、濃度が0.1mol/Lであり、液温が30℃である水酸化ナトリウム水溶液に60秒間に亘って曝したことを除いては、光学素子OD1について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD6」と呼ぶ。
【0202】
(例7:光学素子OD7の製造;比較例)
反射材料層120の設定膜厚を20nmとしたことを除いては、光学素子OD6について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD7」と呼ぶ。
【0203】
(例8:光学素子OD8の製造;比較例)
反射材料層120の設定膜厚を80nmとしたことを除いては、光学素子OD6について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD8」と呼ぶ。
【0204】
(例9:光学素子OD9の製造;比較例)
この例では、マスク層130を以下のようにして形成したことを除いては、光学素子OD1について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。
【0205】
即ち、この例では、マスク層130を反射材料層120の全体に気相堆積法を用いて形成する代わりに、グラビア印刷法を用いて形成した。具体的には、まず、50.0質量部の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と、30.0質量部のメチルエチルケトンと、20.0質量部の酢酸エチルとからなる組成物を準備した。その後、この組成物を、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分が形成しているパターンの上に、グラビア印刷した。なお、この印刷は、マスク層130の平均膜厚が1.0μmとなるようにして行った。以下、このようにして得られた光学素子を「光学素子OD9」と呼ぶ。
【0206】
(評価)
まず、光学素子OD1乃至OD9の各々について、反射材料層120の除去の選択性を評価した。具体的には、光学素子OD1乃至OD9の各々について、領域R1及びR2に対応した部分の可視光透過率を測定した。そして、光学素子のうち第1領域R1に対応した部分の可視光透過率が20%以下であり且つ第2領域R2に対応した部分の可視光透過率が90%以上であるものを「OK」と評価し、それ以外のものを「NG」と評価した。その結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0207】
なお、表1において、「アスペクト比」とは、溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値を意味しているものとする。
【0208】
表1から分かるように、光学素子OD6乃至OD8では、反射材料層120の除去の選択性が不十分であった。即ち、これら光学素子OD6乃至OD8では、光学素子のうち第1領域R1に対応した部分の可視光透過率が20%より大きいか又は第2領域R2に対応した部分の可視光透過率が90%より小さかった。他方、光学素子OD1乃至OD5及びOD9では、反射材料層120の除去の選択性が高かった。
【0209】
次に、光学素子OD1乃至OD9の各々について、反射層120の位置精度の評価を行った。具体的には、各光学素子について、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値を測定した。そして、この値が20μm未満であるものを「OK」と評価し、この値が20μm以上であるものを「NG」と評価した。その結果を、先の表1に示す。
【0210】
表1から分かるように、光学素子OD9では、反射層120の位置精度が不十分であった。即ち、この光学素子OD9では、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値が20μm以上であった。他方、光学素子OD1乃至OD8では、反射層120の位置精度が高かった。
【0211】
以上の通り、光学素子OD1乃至OD5では、反射材料層120の除去の選択性と第1層120´の位置精度との双方が優れていた。
【0212】
更なる利益及び変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定されるべきではない。従って、添付の請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の包括的概念の真意又は範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能である。
【0213】
以下に、本出願の原出願(特願2011−501057)の当初の請求の範囲に記載していた発明を付記する。
〔1〕互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層とを具備した光学素子。
〔2〕前記第1領域は複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい〔1〕に記載の光学素子。
〔3〕前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.5以下であり、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.8乃至2.0の範囲内にある〔2〕に記載の光学素子。
〔4〕前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は二次元的に配列している〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の光学素子。
〔5〕前記第2層のうち前記第2サブ領域に対応した部分の平均膜厚は0.3nm乃至200nmの範囲内にある〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の光学素子。
〔6〕前記第2層は気相堆積法により形成される層である〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の光学素子。
〔7〕前記第1層は、前記第2サブ領域に対応した位置にのみ又は前記第1領域に対応した位置にのみ設けられている〔1〕〜〔6〕の何れかに記載の光学素子。
〔8〕前記第1層の輪郭の前記主面への第1正射影はその全体が前記第2層の輪郭の前記主面への第2正射影と重なり合っているか、又は、前記第1正射影は前記第2正射影に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれているか、又は、前記第1正射影の一部は前記第2正射影の一部と重なり合い、前記第1正射影の残りの部分は前記第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれている〔1〕〜〔7〕の何れかに記載の光学素子。
〔9〕前記第1領域と前記第2領域との境界と前記第1層の輪郭との最短距離の最大値は20μm未満である〔1〕〜〔8〕の何れかに記載の光学素子。
〔10〕互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層を形成することと、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料を前記第1及び第2領域の全体に対して気相堆積させて、前記第1及び第2領域の表面形状に対応した表面形状を有しているか又は前記第1領域に対応した部分では前記第1領域の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ前記第2領域に対応した部分では前記複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層を形成することと、前記第1材料とは異なる第2材料を前記反射材料層に対して気相堆積させて、前記第1及び第2領域の表面形状に対応した表面形状を有しているか又は前記第1領域に対応した部分では前記第1領域の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ前記第2領域に対応した部分では前記複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口したマスク層を形成することと、前記マスク層を前記第1材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝して、少なくとも前記第2領域の位置で前記反応を生じさせ、これにより、前記第1材料からなる第1層と前記第2材料からなる第2層とを得ることとを含んだ光学素子の製造方法。
〔11〕前記反応によって前記反射材料層を部分的に除去する〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記反射材料層の前記部分的な除去によって、前記第1層を、前記第1及び第2領域のうち前記第1領域のみを被覆した層として得る〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記反応によって前記反射材料層の一部を前記第1材料とは異なる材料からなる層に変化させる〔10〕に記載の方法。
〔14〕前記反射材料層を、前記第1領域に対応した部分において5nm乃至500nmの範囲内の平均膜厚を有するように形成し、前記マスク層を、前記第1領域に対応した部分において0.3nm乃至200nmの範囲内の平均膜厚を有するように形成する〔10〕〜〔13〕の何れかに記載の方法。
〔15〕前記レリーフ構造形成層の前記主面は第3領域を更に含み、前記第3領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きく、前記反射材料層は、前記第1材料を前記第1乃至第3領域の全体に対して気相堆積させることにより形成し、前記方法は、前記反応を生じさせる前に、前記第2及び第3領域のうち前記第3領域のみと向き合った被覆層を形成することを更に含んだ〔10〕〜〔14〕の何れかに記載の方法。
【符号の説明】
【0214】
10…光学素子、110…レリーフ構造形成層、120…反射材料層、120´…第1層、130…マスク層、130´…第2層、140…被覆層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DPF…表示部、DPU…表示部、DSP1…表示部、DSP2…表示部、P1…第1部分、P2…第2部分、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、SR1…第1サブ領域、SR2…第2サブ領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、ブランド品及び個人認証媒体等には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品には、偽造防止効果に優れた光学素子を支持させることがある。
【0003】
このような光学素子の多くは、回折格子、ホログラム及びレンズアレイ等の微細構造を含んでいる。これら微細構造は、解析することが困難である。また、これら微細構造を含んだ光学素子を製造するためには、電子線描画装置等の高価な製造設備が必要である。それゆえ、このような光学素子は、優れた偽造防止効果を発揮し得る。
【0004】
これら光学素子は、通常、微細構造を含んだ主面を有するレリーフ構造形成層と、その上に設けられた反射層とを含んでいる。この場合、偽造防止効果を更に向上させるべく、反射層を、上記主面の一部のみにパターン状に形成することがある。例えば、上記主面上に、反射層をその輪郭がマイクロ文字を構成するように設けると、回折光を射出するマイクロ文字状のパターンが得られる。
【0005】
反射層をパターン状に形成するための方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この方法によると、パターン状に形成された反射層を、比較的高精細に設けることができる。
【0006】
この方法では、レリーフ構造形成層とマスクとの間の位置合わせが必要である。しかしながら、高い生産性と高い位置精度とを同時に達成することは、不可能であるか又は極めて困難である。例えば、この方法では、上記の目標位置の輪郭と反射層の輪郭との間に、100μm以上の位置ズレを生ずることもある。
【0007】
他方、特許文献2では、反射層を高い位置精度で形成すべく、以下の方法を採用している。
【0008】
第1の方法では、まず、深さ幅比が大きな凹凸構造を備えた「第一の領域」と、平坦であるか又は深さ幅比がより小さな凹凸構造を備えた「第二の領域」とを含んだレリーフ構造形成層を準備する。次に、このレリーフ構造形成層の上に、金属反射層を均一な表面密度で形成する。その後、得られた積層体をエッチング処理に供する。
【0009】
金属反射層のうち「第一の領域」に対応した部分は、「第二の領域」に対応した部分と比較して、エッチングに対する耐性がより低い。従って、上記のエッチング処理により、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分が完全に除去される前に、「第一の領域」に対応した部分を除去することができる。即ち、「第二の領域」の上のみに、金属反射層を形成することができる。
【0010】
しかしながら、この方法では、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の一部も、エッチング処理により除去される。それゆえ、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の膜厚が過度に小さくなり、当該部分の反射率が不十分となることがある。或いは、金属反射層のうち「第二の領域」に対応した部分の膜厚に、大きなムラが生じることがある。即ち、この方法では、金属反射層を安定に形成することが困難である。
【0011】
第2の方法では、上記積層体のうち「第一の領域」に対応した部分と「第二の領域」に対応した部分との透過率の差を利用する。具体的には、積層体のうち「第一の領域」に対応した部分の透過率が「第二の領域」に対応した部分のそれと比較してより大きいことを利用する。
【0012】
即ち、まず、レリーフ構造形成層と金属反射層との積層体を準備し、金属反射層上に感光性層を形成する。その後、積層体の全面をレリーフ構造形成層側から露光する。こうすると、上述した透過率の差異に起因して、感光性層のうち「第一の領域」に対応した部分において、より高い効率で光反応を生じさせることができる。次いで、これを適切な溶剤等を用いて処理することにより、感光性層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」の何れか一方に対応した部分を除去する。
【0013】
次に、部分的に除去された感光性層をマスクとして用いて、金属反射層のエッチング処理を行う。このようにして、金属反射層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」の何れか一方に対応した部分のみを除去する。
【0014】
しかしながら、通常、上記の透過率の差異は小さいので、感光性層のうち「第二の領域」に対応した部分においても、上記の光反応が進行する。それゆえ、感光性層のうち「第一の領域」及び「第二の領域」に対応した部分の何れか一方のみで上記の反応を生じさせることは、現実的には不可能であるか又は極めて困難である。従って、この方法を用いて金属反射層を高い位置精度で形成することも、実際には不可能であるか又は極めて困難である。
【0015】
また、この方法は、感光性層の露光プロセスを必要とする。それゆえ、この方法は、コスト及び生産性の面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003―255115号公報
【特許文献2】特表2008−530600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、反射層を安定に且つ高い位置精度で形成することを可能とする光学技術を提供することにある。
【0018】
本発明の一側面によると、互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層であって、気相堆積法により形成される第2層とを具備した光学素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す光学素子のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図4】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図5】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図6】図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図7】一変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図。
【図8】図7に示す光学素子のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】他の変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す光学素子のX−X線に沿った断面図。
【図11】本発明の他の態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図。
【図12】図11に示す光学素子のXII−XII線に沿った断面図。
【図13】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図14】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図15】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図16】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図17】図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図18】マスク層の有無とエッチングの速さとの関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す光学素子のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、光学素子10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、光学素子10の主面に垂直な方向をZ方向としている。また、図1では、光学素子10のうち後述する第1領域R1に対応した部分を表示部DP1とし、後述する第2領域R2に対応した部分を表示部DP2としている。
【0022】
図1及び図2に示す光学素子10は、レリーフ構造形成層110と、第1層120´と、第2層130´とを備えている。
【0023】
レリーフ構造形成層110の一方の主面には、レリーフ構造が設けられている。第1層120´は、レリーフ構造形成層110の先の主面を部分的に被覆している。第2層130´は、第1層120´を被覆している。なお、光学素子10の構造等については、後で詳しく説明する。
【0024】
次に、図3乃至図6を参照しながら、図1及び図2に示す光学素子10の製造方法について説明する。
【0025】
図3乃至図6は、図1及び図2に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【0026】
この方法では、まず、図3に示すように、互いに隣接した第1領域R1及び第2領域R2を含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を準備する。
【0027】
第1領域R1は、平坦であるか、又は、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、この場合、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図3には、第1領域R1に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。これら複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを形成している。
【0028】
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図3には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0029】
第1領域R1に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら複数の溝の深さは、例えば20nm乃至1500nmの範囲内とする。これら複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.5以下とし、典型的には0.05乃至0.3の範囲内とする。
【0030】
第2領域R2は、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。これら凹構造及び凸構造は、それぞれ、複数の凹部及び複数の凸部からなる。これら複数の凹部又は凸部は、一次元的に配列していてもよく、二次元的に配列していてもよい。また、これら複数の凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。図3には、第2領域R2に、複数の凹部として、一次元的に且つ規則的に配列した複数の溝が設けられている場合を描いている。
【0031】
これら複数の溝の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図3には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0032】
第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。なお、ここでは、領域の「見かけ上の面積」とは、当該領域に平行な平面への当該領域の正射影の面積、即ち、凹構造及び凸構造を無視した当該領域の面積を意味することとする。また、領域の「表面積」とは、凹構造及び凸構造を考慮した当該領域の面積を意味することとする。
【0033】
第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、第2領域R2の複数の凹部又は凸部は、典型的には、第1領域R1の複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい。図3に示す例では、第2領域R2に設けられた複数の溝は、第1領域R1に設けられた複数の溝と比較して、溝の開口部の幅に対する深さの比がより大きい。
【0034】
第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら複数の溝の深さは、例えば80nm乃至6000nmの範囲内とする。領域R1及びR2の双方に複数の溝が設けられている場合、第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、第1領域R1に設けた複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値と比較してより大きくする。第2領域R2に設ける複数の溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値は、例えば0.8乃至2.0の範囲内とし、典型的には0.8乃至1.2の範囲内とする。この値が過度に大きいと、レリーフ構造形成層110の生産性が低下する場合がある。
【0035】
レリーフ構造形成層110は、例えば、微細な凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。この際、これら凸部の形状は、領域R2又は領域R1及びR2の双方に設ける凹部の形状に対応した形状とする。
【0036】
レリーフ構造形成層110は、例えば、基材上に熱可塑性樹脂を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法により形成する。この場合、上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用する。
【0037】
或いは、レリーフ構造形成層110は、基材上に熱硬化性樹脂層を塗布し、これに上記の凸部が設けられた原版を押し当てながら熱を印加し、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。この場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物を使用する。なお、このウレタン樹脂は、例えば、反応性水酸基を有したアクリルポリオール及びポリエステルポリオール等に、架橋剤としてポリイソシアネートを添加して、これらを架橋させることにより得られる。
【0038】
或いは、レリーフ構造形成層110は、基材上に放射線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら紫外線等の放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。或いは、レリーフ構造形成層110は、基材と原版との間に上記組成物を流し込み、放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成してもよい。
【0039】
放射線硬化樹脂は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
【0040】
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用する。光ラジカル重合が可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用する。或いは、光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又は、ウレタン変性アクリル樹脂及びエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーを使用してもよい。
【0041】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用する。この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンを使用する。
【0042】
或いは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー若しくはポリマー、オキセタン骨格含有化合物、又は、ビニルエーテル類を使用する。
【0043】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用する。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩又は混合配位子金属塩を使用する。
【0044】
或いは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用する。或いは、この場合、光ラジカル重合及び光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を使用してもよい。このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩又は芳香族スルホニウム塩を使用する。
【0045】
なお、放射線硬化樹脂に占める開始剤の割合は、例えば、0.1乃至15質量%の範囲内とする。
【0046】
放射線硬化樹脂は、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、離型剤又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。また、放射線硬化樹脂には、その成形性を向上させるべく、非反応性の樹脂を更に含有させてもよい。この非反応性の樹脂としては、例えば、上記の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0047】
レリーフ構造形成層110の形成に用いる上記の原版は、例えば、電子線描画装置又はナノインプリント装置を用いて製造する。こうすると、上述した複数の凹部又は凸部を高い精度で形成することができる。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0048】
レリーフ構造形成層110は、典型的には、基材と、その上に形成された樹脂層とを含んでいる。この基材としては、典型的には、フィルム基材を使用する。このフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルム等のプラスチックフィルムを使用する。或いは、基材として、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙を使用してもよい。なお、基材は、省略してもよい。
【0049】
樹脂層は、例えば、上述した方法により形成される。樹脂層の厚みは、例えば0.1μm乃至10μmの範囲内とする。この厚みが過度に大きいと、加工時の加圧等による樹脂のはみ出し及び/又は皺の形成が生じ易くなる。この厚みが過度に小さいと、所望の凹構造及び/又は凸構造の形成が困難となる場合がある。また、樹脂層の厚みは、その主面に設けるべき凹部又は凸部の深さ又は高さと等しくするか又はそれより大きくする。この厚みは、例えば、凹部又は凸部の深さ又は高さの1乃至10倍の範囲内とし、典型的には、その3乃至5倍の範囲内とする。
【0050】
なお、レリーフ構造形成層110の形成は、例えば、特許第4194073号公報に開示されている「プレス法」、実用新案登録第2524092号公報に開示されている「キャスティング法」、又は、特開2007−118563号公報に開示されている「フォトポリマー法」を用いて行ってもよい。
【0051】
次に、図4に示すように、レリーフ構造形成層110の材料とは屈折率が異なる第1材料を、領域R1及びR2の全体に対して気相堆積させる。これにより、レリーフ構造形成層110の領域R1及びR2を含んだ主面上に、反射材料層120を形成する。
【0052】
この第1材料としては、例えば、レリーフ構造形成層110の材料との屈折率の差が0.2以上である材料を使用する。この差が小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。
【0053】
第1材料としては、典型的には、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つの金属材料を使用する。
【0054】
或いは、透明性が比較的高い第1材料として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
【0055】
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。
有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
【0056】
第1材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又は化学蒸着法(CVD法)を用いて行う。
【0057】
この気相堆積は、レリーフ構造形成層110の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
【0058】
また、この気相堆積では、典型的には、レリーフ構造形成層110の主面が平坦面のみからなると仮定した場合の膜厚(以下、設定膜厚という)を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、反射材料層120が以下の要件を満足するようにして定める。
【0059】
第1に、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図4に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0060】
第2に、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図4には、一例として、前者の場合を描いている。即ち、図4に示す例では、この部分は、第2領域R2に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0061】
なお、上述したように、第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、反射材料層120が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。
【0062】
なお、ここでは、層の「平均膜厚」とは、当該層の一方の面上の各点と当該層の他方の面に下ろした垂線の足との間の距離の平均値を意味することとする。
【0063】
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第2領域R2に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層120を形成することができる。
【0064】
反射材料層120の設定膜厚は、典型的には、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。
【0065】
具体的には、反射材料層120の設定膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内とし、典型的には30nm乃至300nmの範囲内とする。この設定膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120を上記の要件を満足するように形成することが困難となる場合がある。
【0066】
反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内とし、典型的には30nm乃至300nmの範囲内とする。この平均膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と後述する第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この平均膜厚が過度に大きいと、光学素子10の生産性が低下する場合がある。
【0067】
次いで、図5に示すように、反射材料層120の材料とは異なる第2材料を、反射材料層120に対して気相堆積させる。これにより、反射材料層120を間に挟んでレリーフ構造形成層110と向き合ったマスク層130を形成する。
【0068】
この第2材料としては、典型的には、無機物を使用する。この無機物としては、例えば、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、Ni、Cu、Au、Ag、TiO2、MgO、SiO2 及び Al2O3が挙げられる。特には、第2材料としてMgF2を使用した場合、基材の曲げや衝撃に対するマスク層130及び第2層130´の追従性及び耐擦傷性を更に向上させることができる。
【0069】
或いは、この第2材料として、有機物を使用してもよい。この有機物としては、例えば、重量平均分子量が1500以下の有機物を使用する。このような有機物としては、例えば、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の重合性化合物が挙げられる。或いは、このような有機化合物として、これら重合性化合物と開始剤とを混合し、放射線硬化樹脂として気相堆積した後に、放射線照射によって重合させたものを使用してもよい。
【0070】
或いは、第2材料として、金属アルコキシドを使用してもよい。或いは、第2材料として、金属アルコキシドを気相堆積した後、これを重合させたものを使用してもよい。この際、気相堆積の後、重合させる前に、乾燥処理を行ってもよい。
【0071】
第2材料の気相堆積は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又はCVD法を用いて行う。
【0072】
この気相堆積は、レリーフ構造形成層110の主面に平行な面内方向について均一な密度で行う。具体的には、この気相堆積は、第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比とが、互いに等しくなるようにして行う。
【0073】
また、この気相堆積では、マスク層130の設定膜厚を、以下のように定める。即ち、この設定膜厚は、マスク層130が以下の要件を満足するようにして定める。
【0074】
第1に、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分が、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有するようにする。図5に示す例では、この部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0075】
第2に、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分が、第2領域R2の表面形状に対応した表面形状を有するか、又は、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口しているようにする。図5には、一例として、後者の場合を描いている。即ち、図5に示す例では、この部分は、反射材料層120の上で、第2領域R2に設けられた複数の溝の配置に対応して部分的に開口した不連続膜を形成している。
【0076】
なお、上述したように、第2領域R2は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。従って、マスク層130が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有するように上記の設定膜厚を定めた場合、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さくなる。
【0077】
また、上記の設定膜厚を更に小さな値に定めることにより、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ第2領域R2に対応した部分では複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口したマスク層130を形成することができる。
【0078】
マスク層130の設定膜厚は、典型的には、第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の深さ又は高さと比較してより小さくする。また、第1領域R1に複数の凹部又は凸部が設けられている場合、この設定膜厚は、典型的には、これらの深さ又は高さと比較してより小さくする。そして、マスク層130の設定膜厚は、典型的には、反射材料層120の設定膜厚と比較してより小さくする。
【0079】
具体的には、マスク層130の設定膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には3nm乃至80nmの範囲内とする。この設定膜厚が過度に小さいと、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚が過度に小さくなり、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分のマスク層130による保護が不十分となる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のマスク層130による保護が過剰となる場合がある。
【0080】
マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、典型的には、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と比較してより小さくする。
【0081】
マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内とし、典型的には3nm乃至80nmの範囲内とする。この平均膜厚が過度に小さいと、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分のマスク層130による保護が不十分となり、後述する第1層120´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚が過度に小さくなる場合がある。この設定膜厚が過度に大きいと、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のマスク層130による保護が過剰となる場合がある。
【0082】
続いて、マスク層130を、反射材料層120の材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝す。そして、少なくとも第2領域R2の位置で、反射材料層120の材料との上記反応を生じさせる。
【0083】
ここでは、反応性ガス又は液として、反射材料層120の材料を溶解可能なエッチング液を使用する場合について説明する。このエッチング液としては、典型的には、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液等のアルカリ性溶液を使用する。或いは、エッチング液として、塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸等の酸性溶液を使用してもよい。
【0084】
図5に示すように、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は連続膜を形成しているのに対し、第2領域R2に対応した部分は、部分的に開口した不連続膜を形成している。反射材料層120のうちマスク層130によって被覆されていない部分は、反射材料層120のうちマスク層130によって被覆された部分と比較して、反応性ガス又は液と接触し易い。従って、前者は、後者と比較してよりエッチングされ易い。
【0085】
また、反射材料層120のうちマスク層130によって被覆されていない部分が除去されると、反射材料層120には、マスク層130の開口に対応した開口が生じる。エッチングを更に続けると、反射材料層120のエッチングは、各開口の位置で面内方向に進行する。その結果、第2領域R2上では、反射材料層120のうちマスク層130を支持している部分が、その上のマスク層130と共に除去される。
【0086】
従って、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図6に示すように、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去することができる。これにより、領域R1及びR2のうち第1領域R1のみを被覆した第1層120´が得られる。
【0087】
以上のようにして、図1及び図2に示す光学素子10を得る。
上述した方法によって得られる光学素子10には、以下の特徴がある。
【0088】
第1層120´は、反射層であり、典型的には、上述した第1材料からなる。第1層120´は、領域R1及びR2のうち、第1領域R1のみを被覆している。即ち、第1層120´は、第1領域R1に対応した位置にのみ設けられている。また、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比は、ゼロである。
【0089】
第1層120´は、第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有している。図1及び図2に示す例では、第1層120´は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有している。第1領域R1に設けられた複数の溝は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを第1層120´の表面に形成している。この場合、光学素子10の表示部DP1は、回折光に対応した色を表示し得る。従って、この場合、より優れた偽造防止効果及び装飾効果を達成することができる。
【0090】
第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への正射影は、その全体が第1領域R1の輪郭と重なり合っている。即ち、第1層120´は、第1領域R1の形状に対応してパターニングされている。従って、領域R1及びR2を高い位置精度で形成しておくことにより、優れた位置精度で形成された第1層120´を得ることができる。
【0091】
なお、図3乃至図6を参照しながら説明した方法では、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、マスク層130によって被覆されている。それゆえ、上記のエッチング処理を行った場合でも、当該部分の膜厚は、殆ど又は全く減少しない。従って、第1層120´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、典型的には、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と等しい。即ち、この平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内にあり、典型的には30nm乃至300nmの範囲内にある。
【0092】
なお、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値は、例えば20μm未満とし、好ましくは10μm未満とし、より好ましくは3μm未満とする。
【0093】
第2層130´は、例えば、気相堆積法により形成される層である。第2層130´は、第1層120´を被覆している。第2層130´は、第1層120´を間に挟んで、領域R1及びR2のうち第1領域R1の全体のみと向き合っている。即ち、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への正射影は、その全体が第2層130´の輪郭の上記主面への正射影と重なり合っている。また、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比は、ゼロである。
【0094】
第2層130´のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚は、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分の平均膜厚と等しいか又はより小さい。この平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内にあり、典型的には3nm乃至80nmの範囲内にある。
【0095】
第2層130´は、例えば、第1層120´を保護する役割を担っている。また、第2層130´を設けると、第2層130´が存在しない場合と比較して、光学素子10の偽造をより困難とすることができる。
【0096】
また、第2材料として着色している材料を使用し、光学素子10を第2層130´側から観察した場合、第2層130´は、光学素子10の他の部分の色彩に影響を与えることなしに、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分の色彩を変化させることを可能とする。例えば、第1材料としてAlを使用し且つ第2材料としてSn又はCrを使用した場合、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分に、黒味を帯びた色彩を付与することができる。或いは、第1材料としてAlを使用し且つ第2材料としてZnSを使用した場合、光学素子10のうち第1層120´が設けられた部分に、黄味を帯びた色彩を付与することができる。なお、第1層120´の平均膜厚が小さい場合には、光学素子10をレリーフ構造形成層110側から観察した場合であっても、これら効果を達成することができる。
【0097】
なお、以上においては、領域R1及びR2の双方に規則的に配列した複数の溝が設けられている場合について説明したが、領域R1及びR2の構成はこれには限られない。
【0098】
例えば、第1領域R1は、平坦であってもよい。この場合、表示部DP1は、例えば、鏡面のように見える。なお、この場合、第1領域R1の見かけ上の面積に対する表面積の比は1に等しい。
【0099】
或いは、第1領域R1は、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられていてもよい。この場合、これら凹部又は凸部は、典型的には、先細りしている。例えば、これら凹部又は凸部は、円錐、角錐、円錐台、角錐台、楕円放物面又は回転放物面形状を有している。これら凹部又は凸部の側壁は、滑らかであってもよく、階段状であってもよい。或いは、これら凹部又は凸部は、円柱及び角柱状等の柱状であってもよい。
【0100】
また、二次元的に配列した凹部又は凸部は、規則的に配列していてもよく、不規則に配列していてもよい。前者の場合、これら凹部又は凸部は、典型的には、白色光で照明したときに回折光を射出する回折格子又はホログラムを第1層120´の表面に形成している。
【0101】
第1領域R1に二次元的に配列した凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部又は凸部は、例えば、正方格子状に配列している。或いは、これら凹部又は凸部は、矩形格子状又は三角格子状に配列していてもよい。
【0102】
第1領域R1に二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部の開口部の径の平均値又はこれら凸部の底部の径の平均値は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら凹部の深さの平均値又はこれら凸部の高さの平均値は、例えば20nm乃至1500nmの範囲内とする。これら凹部の径に対する深さの比の平均値又はこれら凸部の底部の径に対する高さの比の平均値は、例えば0.5以下とし、典型的には0.05乃至0.3の範囲内とする。
【0103】
また、第2領域R2は、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられていてもよい。これら複数の凹部又は凸部としては、例えば、凹部の径に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径に対する高さの比の平均値がより大きいことを除いては、先に第1領域R1の複数の凹部又は凸部について説明したのと同様の構成を採用することができる。
【0104】
第2領域R2に二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が設けられている場合、これら凹部の開口部の径の平均値又はこれら凸部の底部の径の平均値は、例えば100nm乃至3000nmの範囲内とする。また、これら凹部の深さの平均値又はこれら凸部の高さの平均値は、例えば80nm乃至6000nmの範囲内とする。これら凹部の径に対する深さの比の平均値又はこれら凸部の底部の径に対する高さの比の平均値は、例えば0.8乃至2.0の範囲内とし、典型的には0.8乃至1.5の範囲内とする。
【0105】
なお、領域R1及びR2に設ける複数の凹部又は凸部は、レリーフホログラム、回折格子、サブ波長格子、マイクロレンズ、偏光素子、集光素子、散乱素子、拡散素子又はこれらの組み合わせを形成していてもよい。
【0106】
また、上では、反射材料層120が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有しており、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分がこの第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分が第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口している構成について説明したが、これら層の構成はこれには限られない。
【0107】
例えば、反射材料層120とマスク層130との双方が領域R1及びR2の表面形状に対応した表面形状を有した構成を採用してもよい。この場合、先に述べたように、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分は、それぞれ、これら層のうち第1領域R1に対応した部分と比較して、平均膜厚がより小さい。
【0108】
一般に、マスク層130のうち平均膜厚がより小さい部分は、平均膜厚がより大きい部分と比較して、反応性ガス又は液を透過させ易い。また、反応性ガス又は液と第2材料とが反応し、この反応の生成物がマスク層130から直ちに除去される場合には、第2領域R2上でのみマスク層130を開口させることができる。
【0109】
従って、この場合においても、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図1及び図2に示す光学素子10を製造することが可能である。
【0110】
或いは、反射材料層120とマスク層130との双方が、第1領域R1に対応した部分では第1領域R1の表面形状に対応した表面形状を有しており、第2領域R2に対応した部分では第2領域R2に設けられた複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口している構成を採用してもよい。この場合においても、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図1及び図2に示す光学素子10を製造することが可能となる。
【0111】
また、上では、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分を完全に除去する場合について説明したが、これら部分の一部が残存するようにしてもよい。例えば、エッチング処理に供する時間をより短くすることにより、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第1材料の量の比が、ゼロより大きく且つ第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第1材料の量の比と比較してより小さくなるようにしてもよい。或いは、同様にして、第2領域R2の見かけ上の面積に対する第2領域R2の位置における第2材料の量の比が、ゼロより大きく且つ第1領域R1の見かけ上の面積に対する第1領域R1の位置における第2材料の量の比と比較してより小さくなるようにしてもよい。
【0112】
更には、上では、反射材料層120及び第1層120´が単層構造を有している場合について説明したが、これら層は、多層構造を有していてもよい。これにより、例えば、光学素子10において、第1層120´が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0113】
この場合、第1層120´は、例えば、レリーフ構造形成層110側から、ミラー層とスペーサ層とハーフミラー層とがこの順に積層した多層膜を含んでいる。
【0114】
ミラー層は、金属層であり、典型的には、金属の単体又は合金を含んでいる。ミラー層が含んでいる金属としては、例えば、アルミニウム、金、銅及び銀が挙げられる。この金属としては、アルミニウムが特に好ましい。ミラー層の厚みは、例えば300nm以下とし、典型的には20乃至200nmの範囲内とする。
【0115】
スペーサ層は、典型的には、誘電材料を含んでいる。この誘電材料の屈折率は、1.65以下であることが好ましい。また、この誘電材料は、透明であることが好ましい。このような誘電材料としては、例えば、SiO2及びMgF2が挙げられる。スペーサ層の厚みは、例えば、5乃至500nmの範囲内とする。
【0116】
ハーフミラー層は、光透過性のある反射層であり、典型的には、金属の単体、合金、金属酸化物又は金属硫化物を含んでいる。ハーフミラー層が含んでいる金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、イノセル(登録商標)、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化モリブデン(MoS2)、及び、酸化鉄(III)(Fe2O3)が挙げられる。ハーフミラー層の厚みは、例えば、5乃至80nmの範囲内とする。この厚みは、透明性の高い高屈折率材料である、酸化チタンなどの金属酸化物や硫化亜鉛などの金属硫化塩を使用する場合には、30乃至80nmの範囲内とすることが好ましい。また、この厚みは、反射率及び光遮蔽性が高いアルミニウムなどの金属を使用する場合には、5乃至45nmの範囲内とすることが好ましい。
【0117】
また、上では、マスク層130及び第2層130´が単層構造を有している場合について説明したが、これら層は、多層構造を有していてもよい。これにより、例えば、光学素子10において、第2層130´が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0118】
或いは、第1層120´と第2層130´との積層構造が多層干渉膜を形成するようにしてもよい。
【0119】
これら場合、図3乃至図6を参照しながら説明した方法を利用すると、多層干渉膜を安定に且つ高い位置精度で形成することが可能となる。
【0120】
図3乃至図6を参照しながら説明した方法において、第1層120´及び第2層130´を形成した後、図4及び図6を参照しながら説明した工程を繰り返してもよい。こうすると、第1領域R1上に、第1層120´と第2層130´とが交互に積層した構造を得ることができる。こうすると、例えば、第1領域R1上に、多層干渉膜を形成することが可能となる。この場合にも、多層干渉膜を安定に且つ高い位置精度で形成することが可能となる
また、上では、反応性ガス又は液としてエッチング液を使用する場合について説明したが、反応性ガス又は液はこれには限られない。例えば、反応性ガス又は液として、反射材料層120の材料を気化させ得るエッチングガスを使用してもよい。
【0121】
或いは、反応性ガス又は液として、第1材料との反応により、反射材料層120の一部を第1材料とは異なる材料からなる層に変化させ得るガス又は液を使用してもよい。この場合、例えば、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分を除去する代わりに、当該部分を第1材料とは異なる材料からなる層に変化させることが可能となる。
【0122】
このような反応性ガス又は液としては、例えば、第1材料を酸化させ得る酸化剤を使用することができる。この酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、若しくはハロゲン、又は、二酸化塩素、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次ハロゲン酸、過ハロゲン酸、及びその塩などのハロゲン化物、過酸化水素、過硫酸塩類、ペルオキソ炭酸塩類、ペルオキソ硫酸塩類、及びペルオキソリン酸塩類などの無機過酸化物、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、過蟻酸、過酢酸、及び過安息香酸などの有機過酸化物、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、重クロム酸塩、クロム酸塩、過マンガン酸塩、過フタル酸マグネシウム、塩化第二鉄、及び塩化第二銅などの金属又は金属化合物、又は、硝酸、硝酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、及びヨウ素酸塩などの無機酸若しくは無機酸塩を使用する。
【0123】
例えば、反射材料層120´の材料としてCuを使用した場合、反射材料層120´のうち少なくとも第2領域R2に対応した部分を酸化剤と反応させることにより、当該部分をCu酸化物からなる層に変化させることができる。或いは、反射材料層120´の材料としてAlを使用した場合、反射材料層120´のうち少なくとも第2領域R2に対応した部分を酸化剤と反応させることにより、当該部分をベーマイト等のAl酸化物からなる層に変化させることができる。
【0124】
或いは、上記の反応性ガス又は液として、反射材料層120´の材料を還元させ得る還元剤を使用してもよい。この還元剤としては、例えば、硫化水素、二酸化硫黄、フッ化水素、アルコール、カルボン酸、水素ガス、水素プラズマ、遠隔水素プラズマ、ジエチルシラン、エチルシラン、ジメチルシラン、フェニルシラン、シラン、ジシラン、アミノシラン)、ボラン、ジボラン、アラン、ゲルマン、ヒドラジン、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、t−ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、2−ヒドラジノエタノール、1−n−ブチルー1−フェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン、1−ナフチルヒドラジン、4−クロロフェニルヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、p−ヒドラジノベンゼンスルホン酸、1,2−ジフェニルヒドラジン、アセチルヒドラジン又はベンゾイルヒドラジンを使用する。
【0125】
なお、図3乃至図6を参照しながら説明した方法において、エッチング処理等によって第1層120´を形成した後、第2層130´を除去してもよい。この第2層130´の除去は、例えば、第1材料と第2材料とのイオン化傾向の差異に基づいた第1材料のイオン化が懸念される場合に有効である。
【0126】
図7は、一変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図である。図8は、図7に示す光学素子のVIII−VIII線に沿った断面図である。図7及び図8に示す光学素子10は、レリーフ構造形成層110の主面が含んだ領域R1及びR2の構成を異ならしめることを除いては、図3乃至図6を参照しながら説明したのと同様の方法により製造することができる。
【0127】
図7及び図8に示す光学素子10では、第1領域R1は、「TP」なるマイクロ文字に対応した輪郭を有している。
【0128】
第1領域R1は、平坦面からなる平坦領域FRと、複数の凹部又は凸部を備えた凹凸領域URとを備えている。平坦領域FRは、凹凸領域URを縁取っている。図7では、光学素子10のうち平坦領域FRに対応した部分を表示部DPFとし、光学素子10のうち凹凸領域URに対応した部分を表示部DPUとしている。
【0129】
表示部DPUを縁取っている表示部DPFの幅は、例えば10μm乃至2000μmの範囲内にあり、典型的には50μm乃至1000μmの範囲内にある。このような表示部DPFを形成するためには、第1層120´を極めて高い位置精度で形成する必要がある。従って、このような光学素子10を従来のパターニング方法を用いて製造することは、不可能であるか又は極めて困難である。
【0130】
他方、先に図3乃至図6を参照しながら説明した方法を用いると、上述したように、第1層120´を高い位置精度で形成することができる。従って、このような方法を用いると、上記のマイクロ文字のような微細な像であっても、優れた解像度で表示させることが可能となる。
【0131】
図9は、他の変形例に係る光学素子を概略的に示す平面図である。図10は、図9に示す光学素子のX−X線に沿った断面図である。図9では、光学素子10のうち後述する第1サブ領域SR1に対応した部分を表示部DSP1とし、第2サブ領域SR2に対応した部分を表示部DSP2としている。
【0132】
図9及び図10に示す光学素子10は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す光学素子10と同様の構成を有している。
【0133】
即ち、図9及び図10に示す光学素子10では、第1領域R1は、第1サブ領域SR1と第2サブ領域SR2とを含んでいる。第1サブ領域SR1は、第2領域R2と隣接し、領域R1及びR2間の境界に沿って延びている。第2サブ領域SR2は、第1サブ領域SR1を間に挟んで第2領域R2と隣接している。第2サブ領域SR2の輪郭は、典型的には、第1領域R1の輪郭に沿った形状を有している。
【0134】
第1層120´は、第2サブ領域SR2に対応した位置にのみ設けられている。即ち、領域R1及びR2のうち第2サブ領域SR2のみが第1層120´によって被覆されている。そして、第1層120´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分は、第2サブ領域SR2の表面形状に対応した表面形状を有している。
【0135】
第1層120´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分の平均膜厚は、例えば5nm乃至500nmの範囲内にあり、典型的には5nm乃至300nmの範囲内にある。この平均膜厚が過度に小さいと、レリーフ構造形成層110と第1層120´との界面における反射が生じ難くなる場合がある。この平均膜厚が過度に大きいと、光学素子10の生産性が低下する場合がある。
【0136】
第2層130´は、典型的には、第1領域R1の全体と向き合っている。即ち、典型的には、第2層130´は、第1層120´を被覆した第1部分P1と、第1部分P1からその外側に突き出た第2部分P2とを含んでいる。そして、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への第1正射影は、典型的には、気相堆積層の輪郭の上記主面への第2正射影に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれている。
【0137】
従って、例えば、第2材料が着色している場合、光学素子10のうち第1サブ領域SR1に対応した部分DSR1と、第2サブ領域SR2に対応した部分DSR2とで、異なる色彩を表示させることができる。この色彩の差異は、例えば、光学素子10を顕微鏡を用いて観察することにより確認できる。或いは、第1サブ領域SR1が占める面積が大きい場合には、この色彩の差異を、肉眼で観察することができる。このように、図9及び図10を参照しながら説明した光学素子10は、特殊な光学効果を発揮し得る。
【0138】
なお、第2層130´のうち第2サブ領域SR2に対応した部分の平均膜厚は、例えば0.3nm乃至200nmの範囲内にあり、典型的には3nm乃至80nmの範囲内にある。
【0139】
図9及び図10に示す光学素子10は、例えば、以下のようにして製造する。即ち、図3及び図5を参照しながら説明した工程の後、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチング処理の時間等を調整することにより、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分において、サイドエッチングを生じさせる。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分と共に、反射材料層120のうち第1サブ領域SR1に対応した部分を除去する。このようにして、図9及び図10に示す光学素子10を得る。
【0140】
上記のサイドエッチングは、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分の輪郭から、その内側に向けて、ほぼ均一な速さで生じる。それゆえ、このサイドエッチングにより除去される部分の幅、即ち、第1サブ領域SR1の輪郭と第1領域R1の輪郭との間の距離のバラつきは、比較的小さい。それゆえ、典型的には、第2サブ領域SR2の輪郭は、典型的には、第1領域R1の輪郭に沿った形状を有している。従って、このような方法を採用した場合であっても、第1層120´を高い位置精度で形成することができる。
【0141】
また、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、マスク層130により被覆されているため、側面からのサイドエッチングが生じる条件下においても、その主面からのエッチングは殆ど又は全く生じない。従って、このような方法を採用した場合であっても、第1層120´を安定に形成することができる。
【0142】
なお、上では、第1層120´の輪郭のレリーフ構造形成層110の主面への第1正射影が気相堆積層の輪郭の上記主面への第2正射影に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれている構成について説明したが、第1層120´及び第2層130´の構成はこれには限られない。例えば、エッチング後の構造を第1領域R1を横切るように切断した場合、第1正射影の一部は第2正射影の一部と重なり合い、第1正射影の残りの部分は第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ第2正射影に取り囲まれる。
【0143】
図11は、本発明の他の態様に係る光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図12は、図11に示す光学素子のXII−XII線に沿った断面図である。図13乃至図17は、図11及び図12に示す光学素子の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、図11では、光学素子10のうち後述する第3領域R3に対応した部分を、表示部DP3としている。
【0144】
以下、図13乃至図17を参照しながら、図11及び図12に示す光学素子10の製造方法について説明する。
【0145】
まず、図13に示すように、第1領域R1と第2領域R2と第3領域R3とを含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を準備する。このレリーフ構造形成層110は、第3領域R3を更に含んでいることを除いては、図3を参照しながら説明したレリーフ構造形成層と同様の構成を有している。
【0146】
第3領域R3は、複数の凹部又は凸部が設けられている。そして、第3領域R3は、第1領域R1と比較して、見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きい。この第3領域R3は、典型的には、第2領域R2と同様の構成を有している。
【0147】
次に、図14に示すように、第1材料を領域R1乃至R3の全体に対して気相堆積させる。これにより、反射材料層120を形成する。この反射材料層120の形成は、図4を参照しながら説明したのと同様にして行う。図14に示す例では、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。また、反射材料層120のうち領域R2及びR3に対応した部分は、これら領域R2及びR3に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。
【0148】
次いで、図15に示すように、第2材料を反射材料層120に対して気相堆積させる。これにより、マスク層130を形成する。このマスク層130の形成は、図5を参照しながら説明したのと同様にして行う。
【0149】
図15に示す例では、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は、第1領域R1に設けられた複数の溝に対応した表面形状を有した連続膜を形成している。また、マスク層130のうち領域R2及びR3に対応した部分は、反射材料層120の上で、これら領域R2及びR3に設けられた複数の溝の配置に対応して部分的に開口した不連続膜を形成している。
【0150】
続いて、図16に示すように、領域R2及びR3のうち第3領域R3のみと向き合った被覆層140を形成する。被覆層140は、第1領域R1の少なくとも一部と更に向き合っていてもよい。図16には、被覆層140が、第3領域R3の全体及び第1領域R1の一部と向き合っている場合を描いている。
【0151】
この被覆層140の形成は、公知のパターン形成方法を用いて行うことができる。このパターン形成方法としては、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法又はセキュリティー凹版印刷法を使用する。この被覆層140の材料としては、例えば、上述した熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は放射線硬化樹脂を使用する。或いは、被覆層140の材料として、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリイミド等の耐熱樹脂、これらの混合物又はこれらの共重合物を使用してもよい。なお、上記材料を印刷可能な塗料とすべく、水及び有機溶剤等の溶媒によって樹脂を溶解した後に、必要に応じて、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、又はこれらの組み合わせを添加してもよい。
【0152】
その後、マスク層130及び被覆層140を、反射材料層120の材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝す。そして、少なくとも第2領域R2の位置で、反射材料層120の材料との反応を生じさせる。ここでは、反応性ガス又は液の一例として、反射材料層120の材料を溶解可能なエッチング液を使用する場合について説明する。
【0153】
図16に示すように、マスク層130のうち第1領域R1に対応した部分は連続膜を形成しているのに対し、第2領域R2に対応した部分は、部分的に開口した不連続膜を形成している。これに起因して、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第1領域R1に対応した部分と比較してよりエッチングされ易い。
【0154】
また、図16に示すように、マスク層130のうち第3領域R3に対応した部分の上には、被覆層140が形成されている。他方、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分の上には、被覆層140が形成されていない。これに起因して、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分は、第3領域R3に対応した部分と比較してよりエッチングされ易い。
【0155】
従って、エッチング液の濃度及び温度並びにエッチングの処理時間等を調整することにより、図17に示すように、反射材料層120のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去することができる。なお、この際、反射材料層120のうち第2領域R2に対応する部分の除去に伴って、マスク層130のうち第2領域R2に対応した部分も除去される。
【0156】
以上のようにして、図11及び図12に示す光学素子10を得る。
【0157】
この光学素子10は、レリーフ構造形成層110と第1層120´と第2層130´と被覆層140とを含んでいる。この光学素子10では、第1領域R1以外の領域、即ち第3領域R3上にも、第1層120´が存在する。それゆえ、例えば、第3領域R3に、ホログラム、回折格子、サブ波長格子、ゼロ次回折フィルタ及び偏光分離フィルタ等に対応した光学効果を発揮し得る複数の凹部又は凸部を設けることにより、更に特殊な視覚効果を有した光学素子10を得ることができる。
【0158】
光学素子10は、保護膜を更に備えていてもよい。光学素子10は、その表面に、反射防止処理を施されていてもよい。また、光学素子10を製造する際に、光学素子10を構成する層の少なくとも1つの表面に、コロナ処理、フレーム処理又はプラズマ処理を施してもよい。
【0159】
なお、以上において説明した種々の態様及び変形例は、それらの2以上を組み合わせて適用されてもよい。
【0160】
また、以上において説明した技術は、反射層を部分的に設けるための公知のプロセスと組み合わせて使用してもよい。この公知のプロセスとしては、例えば、レーザーを用いて反射層をパターン状に除去するレーザー法を使用する。或いは、このプロセスとして、反射層上にマスクをパターン状に設けた後、反射層のうちマスクに被覆されていない部分を除去する方法を使用してもよい。或いは、このプロセスとして、層又は基材の主面上にマスクをパターン状に設け、上記主面の全体に亘って反射層を形成し、その後、反射層のうちマスク上に位置した部分をマスクと共に除去する方法を使用してもよい。なお、これらマスクの形成は、例えば、印刷法又はフォトレジスト法により行う。
【0161】
光学素子10は、粘着ラベルの一部として使用してもよい。この粘着ラベルは、光学素子10と、光学素子10の背面上に設けられた粘着層とを備えている。
【0162】
或いは、光学素子10は、転写箔の一部として使用してもよい。この転写箔は、光学素子10と、光学素子10を剥離可能に支持した支持体層とを備えている。
【0163】
光学素子10は、物品に支持させて使用してもよい。例えば、光学素子10は、プラスチック製のカード等に支持させてもよい。或いは、光学素子10は、紙に漉き込んで使用してもよい。光学素子10は、燐片状に破砕して、顔料の一成分として使用してもよい。
【0164】
光学素子10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、光学素子10は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0165】
<マスク層の有無とエッチングの速さとの関係>
まず、マスク層130の有無と、反射材料層120のうち領域R1及びR2に対応した部分のエッチングの速さの差異との関係を調べた。
【0166】
(積層体LB1の製造)
以下のようにして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120とマスク層130との積層体を製造した。
【0167】
まず、紫外線硬化型樹脂の材料として、50.0質量部のウレタン(メタ)アクリレートと、30.0質量部のメチルエチルケトンと、20.0質量部の酢酸エチルと、1.5質量部の光開始剤とを含んだ組成物を準備した。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多官能性であり且つ分子量が6000であるものを使用した。光開始剤としては、チバスペシャリティー製「イルガキュア184」を使用した。
【0168】
次に、厚みが23μmである透明PETフィルム上に、上記の組成物を、乾燥膜厚が1μmとなるように、グラビア印刷法によって塗布した。
【0169】
次いで、複数の凸部が設けられた原版を版胴の円筒面に支持させ、この原版を先の塗膜に押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射した。これにより、上記の紫外線硬化樹脂を硬化させた。この際、プレス圧力は2kgf/cm2とし、プレス温度は80℃とし、プレススピードは10m/分とした。また、紫外線の照射は、高温水銀灯を用いて、300mJ/cm2の強度で行った。
【0170】
以上のようにして、領域R1及びR2を含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を得た。
【0171】
このレリーフ構造形成層110の第1領域R1には、その全体に、規則的に配列した複数の溝を形成した。これら溝の断面形状は、V字形状とした。また、これら溝のピッチは1000nmとした。そして、これら溝の開口部の幅は1000nmとし、深さは100nmとした。即ち、第1領域R1には、溝の開口部の幅に対する深さの比が100nm/1000nm=0.1である複数の溝を形成した。
【0172】
また、このレリーフ構造形成層110の第2領域R2には、その全体に、正方格子状に配列した複数の凹部を形成した。これら凹部の形状は、角錐状とした。また、これら凹部の最小中心間距離は、333nmとした。そして、これら凹部の開口部の幅は333nmとし、深さは333nmとした。即ち、第2領域R2には、溝の開口部の幅に対する深さの比が333nm/333nm=1.0である複数の凹部を形成した。
【0173】
続いて、レリーフ構造形成層110の上記主面上に、第1材料として、Alを真空蒸着させた。このようにして、反射材料層120を形成した。なお、この際、反射材料層120の設定膜厚は、50nmとした。
【0174】
その後、反射材料層120のレリーフ構造形成層110とは反対側の主面上に、第2材料として、MgF2を真空蒸着させた。このようにして、マスク層130を形成した。なお、この際、MgF2 の設定膜厚は、20nmとした。
【0175】
以上のようにして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120とマスク層130との積層体を得た。以下、このようにして製造された積層体を「積層体LB1」と呼ぶ。
【0176】
(積層体LB2の製造;比較例)
マスク層130の形成を省略したことを除いては、積層体LB1と同様にして、レリーフ構造形成層110と反射材料層120との積層体を製造した。以下、この積層体を「積層体LB2」と呼ぶ。
【0177】
(評価)
積層体LB1及びLB2を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチング処理に供した。この際、水酸化ナトリウム水溶液の温度を順次変化させて、各々の場合について、以下の評価を行った。即ち、上記の積層体のうち第1領域R1に対応した部分の透過率が20%となるまでの時間T1と、第2領域R2に対応した部分の透過率が80%となるまでの時間T2とを測定した。その結果を、図18に示す。なお、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.1mol/Lとし、その液温は、高い方から順に、60℃、50℃、40℃、30℃及び25℃とした。
【0178】
図18は、マスク層の有無とエッチングの速さとの関係の一例を示すグラフである。図18には、積層体LB1及びLB2の各々についての時間T1及びT2の測定結果と、式T1=T2で表される直線とを描いている。なお、各曲線上のデータは、原点から離れる方向へ向けて水酸化ナトリウム水溶液の温度が減少するように並んでいる。
【0179】
この測定において、T1の値が大きいほど、反射材料層120のうち第1領域RG1に対応した部分のエッチングの速さが小さい。また、T2の値が小さいほど、反射材料層120のうち第2領域RG2に対応した部分のエッチングの速さが大きい。従って、比T1/T2の値が大きいほど、エッチングの選択性が高い。
【0180】
図18から分かるように、積層体LB2は、水酸化ナトリウム水溶液の温度が高い領域において、比T1/T2がほぼ1に等しかった。即ち、この領域では、エッチングの選択性が低かった。そして、水酸化ナトリウム水溶液の温度が低い領域では、その温度を低くするにつれて、比T1/T2が次第に増大していた。即ち、この領域では、水酸化ナトリウム水溶液の温度を低くすることにより、エッチングの選択性を向上させることができた。それゆえ、積層体LB2を用いた場合、光学素子を高い安定性で製造するためには、水酸化ナトリウム水溶液の温度を低くする必要がある。しかしながら、この場合、エッチング処理に要する時間が許容できないほど大きくなる。従って、この場合、光学素子の製造の生産性と安定性とを両立することは不可能であるか又は極めて困難であることが分かった。
【0181】
他方、積層体LB1は、水酸化ナトリウム水溶液の温度の高低に拘らず、比T1/T2の値が大きかった。即ち、積層体LB1は、水酸化ナトリウム水溶液の温度の高低に拘らず、エッチング選択性が高かった。従って、積層体LB1を用いた場合、光学素子を、短いエッチング処理時間で、安定に製造可能であることが分かった。即ち、この場合、光学素子の製造における生産性と安定性とを両立可能であることが分かった。
【0182】
<反射材料層の除去の選択性及び反射層の位置精度の評価>
まず、以下のようにして、光学素子OD1乃至OD9を製造した。
【0183】
(例1:光学素子OD1の製造)
先に述べた積層体LB1を、エッチング処理に供した。具体的には、この積層体LB1を、濃度が0.1mol/Lで、液温が60℃の水酸化ナトリウム水溶液に7秒間に亘って曝した。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分を除去した。
【0184】
以上のようにして、光学素子10を製造した。以下、この光学素子10を「光学素子OD1」と呼ぶ。この光学素子OD1は、レリーフ構造形成層110と、領域R1及びR2のうち第1領域R1の全体のみを被覆した第1層120´と、第1層120´の全体を被覆した第2層130´とからなる積層構造を有していた。
【0185】
また、この光学素子OD1では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0186】
(例2:光学素子OD2の製造)
第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を200nmとし、これら凹部の開口部の幅を200nmとし、深さを160nmとしたことを除いては、光学素子OD1と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD2」と呼ぶ。
【0187】
この光学素子OD2では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/1000nm=0.1であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、160nm/200nm=0.8であった。
【0188】
また、この光学素子OD2では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0189】
(例3:光学素子OD3の製造)
第1領域R1に設ける複数の溝のピッチを300nmとし、これら溝の開口部の幅を300nmとし、深さを100nmとすると共に、第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を375nmとし、これら凹部の開口部の幅を375nmとし、深さを300nmとしたことを除いては、光学素子OD1と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD3」と呼ぶ。
【0190】
この光学素子OD3では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/300nm=0.33であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、300nm/375nm=0.8であった。
【0191】
また、この光学素子OD3では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0192】
(例4:光学素子OD4の製造)
第2領域R2に設ける複数の凹部の最小中心間距離を300nmとし、これら凹部の開口部の幅を300nmとし、深さを300nmとしたことを除いては、光学素子OD3と同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD4」と呼ぶ。
【0193】
この光学素子OD4では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/300nm=0.33であった。また、第2領域R2に設けられた複数の凹部の開口部の幅に対する深さの比は、300nm/300nm=1.0であった。
【0194】
また、この光学素子OD4では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0195】
(例5:光学素子OD5の製造)
まず、先に積層体LB1について述べたのと同様にして、領域R1及びR2に加えて第3領域R3を更に含んだ主面を有したレリーフ構造形成層110を形成した。このレリーフ構造形成層110における領域R1及びR2としては、積層体LB1の場合と同様の構成を採用した。そして、第3領域R3としては、第2領域R2と同様の構成を採用した。
【0196】
次に、先に積層体LB1について述べたのと同様にして、反射材料層120及びマスク層130を形成した。
【0197】
その後、グラビア印刷法を用いて、領域R1乃至R3のうち、第3領域R3の全体及び第1領域R1の一部のみと向き合った被覆層140を形成した。
【0198】
続いて、先に光学素子OD1について述べたのと同様にして、エッチング処理を行った。これにより、反射材料層120及びマスク層130のうち第2領域R2に対応した部分のみを除去して、反射層120及び気相堆積層130を形成した。以下、このようにして得られた光学素子を「光学素子OD5」と呼ぶ。
【0199】
この光学素子OD5では、第1領域R1に設けられた溝の開口部の幅に対する深さの比は、100nm/1000nm=0.1であった。また、領域R2及びR3に設けられた凹部の開口部の幅に対する深さの比は、333nm/333nm=1.0であった。
【0200】
また、この光学素子OD5では、第1層120´の平均膜厚は50nmであった。そして、第2層130´の平均膜厚は20nmであった。
【0201】
(例6:光学素子OD6の製造;比較例)
積層体LB1の代わりに積層体LB2を使用し、これを、濃度が0.1mol/Lであり、液温が60℃であるの水酸化ナトリウム水溶液に7秒間に亘って曝す代わりに、濃度が0.1mol/Lであり、液温が30℃である水酸化ナトリウム水溶液に60秒間に亘って曝したことを除いては、光学素子OD1について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD6」と呼ぶ。
【0202】
(例7:光学素子OD7の製造;比較例)
反射材料層120の設定膜厚を20nmとしたことを除いては、光学素子OD6について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD7」と呼ぶ。
【0203】
(例8:光学素子OD8の製造;比較例)
反射材料層120の設定膜厚を80nmとしたことを除いては、光学素子OD6について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。以下、この光学素子を「光学素子OD8」と呼ぶ。
【0204】
(例9:光学素子OD9の製造;比較例)
この例では、マスク層130を以下のようにして形成したことを除いては、光学素子OD1について述べたのと同様にして、光学素子を製造した。
【0205】
即ち、この例では、マスク層130を反射材料層120の全体に気相堆積法を用いて形成する代わりに、グラビア印刷法を用いて形成した。具体的には、まず、50.0質量部の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と、30.0質量部のメチルエチルケトンと、20.0質量部の酢酸エチルとからなる組成物を準備した。その後、この組成物を、反射材料層120のうち第1領域R1に対応した部分が形成しているパターンの上に、グラビア印刷した。なお、この印刷は、マスク層130の平均膜厚が1.0μmとなるようにして行った。以下、このようにして得られた光学素子を「光学素子OD9」と呼ぶ。
【0206】
(評価)
まず、光学素子OD1乃至OD9の各々について、反射材料層120の除去の選択性を評価した。具体的には、光学素子OD1乃至OD9の各々について、領域R1及びR2に対応した部分の可視光透過率を測定した。そして、光学素子のうち第1領域R1に対応した部分の可視光透過率が20%以下であり且つ第2領域R2に対応した部分の可視光透過率が90%以上であるものを「OK」と評価し、それ以外のものを「NG」と評価した。その結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0207】
なお、表1において、「アスペクト比」とは、溝の開口部の幅に対する深さの比の平均値を意味しているものとする。
【0208】
表1から分かるように、光学素子OD6乃至OD8では、反射材料層120の除去の選択性が不十分であった。即ち、これら光学素子OD6乃至OD8では、光学素子のうち第1領域R1に対応した部分の可視光透過率が20%より大きいか又は第2領域R2に対応した部分の可視光透過率が90%より小さかった。他方、光学素子OD1乃至OD5及びOD9では、反射材料層120の除去の選択性が高かった。
【0209】
次に、光学素子OD1乃至OD9の各々について、反射層120の位置精度の評価を行った。具体的には、各光学素子について、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値を測定した。そして、この値が20μm未満であるものを「OK」と評価し、この値が20μm以上であるものを「NG」と評価した。その結果を、先の表1に示す。
【0210】
表1から分かるように、光学素子OD9では、反射層120の位置精度が不十分であった。即ち、この光学素子OD9では、領域R1及びR2の境界と第1層120´の輪郭との最短距離の最大値が20μm以上であった。他方、光学素子OD1乃至OD8では、反射層120の位置精度が高かった。
【0211】
以上の通り、光学素子OD1乃至OD5では、反射材料層120の除去の選択性と第1層120´の位置精度との双方が優れていた。
【0212】
更なる利益及び変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定されるべきではない。従って、添付の請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の包括的概念の真意又は範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能である。
【0213】
以下に、本出願の原出願(特願2011−501057)の当初の請求の範囲に記載していた発明を付記する。
〔1〕互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層とを具備した光学素子。
〔2〕前記第1領域は複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい〔1〕に記載の光学素子。
〔3〕前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.5以下であり、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.8乃至2.0の範囲内にある〔2〕に記載の光学素子。
〔4〕前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は二次元的に配列している〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の光学素子。
〔5〕前記第2層のうち前記第2サブ領域に対応した部分の平均膜厚は0.3nm乃至200nmの範囲内にある〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の光学素子。
〔6〕前記第2層は気相堆積法により形成される層である〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の光学素子。
〔7〕前記第1層は、前記第2サブ領域に対応した位置にのみ又は前記第1領域に対応した位置にのみ設けられている〔1〕〜〔6〕の何れかに記載の光学素子。
〔8〕前記第1層の輪郭の前記主面への第1正射影はその全体が前記第2層の輪郭の前記主面への第2正射影と重なり合っているか、又は、前記第1正射影は前記第2正射影に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれているか、又は、前記第1正射影の一部は前記第2正射影の一部と重なり合い、前記第1正射影の残りの部分は前記第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれている〔1〕〜〔7〕の何れかに記載の光学素子。
〔9〕前記第1領域と前記第2領域との境界と前記第1層の輪郭との最短距離の最大値は20μm未満である〔1〕〜〔8〕の何れかに記載の光学素子。
〔10〕互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層を形成することと、前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料を前記第1及び第2領域の全体に対して気相堆積させて、前記第1及び第2領域の表面形状に対応した表面形状を有しているか又は前記第1領域に対応した部分では前記第1領域の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ前記第2領域に対応した部分では前記複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口した反射材料層を形成することと、前記第1材料とは異なる第2材料を前記反射材料層に対して気相堆積させて、前記第1及び第2領域の表面形状に対応した表面形状を有しているか又は前記第1領域に対応した部分では前記第1領域の表面形状に対応した表面形状を有しており且つ前記第2領域に対応した部分では前記複数の凹部又は凸部の配置に対応して部分的に開口したマスク層を形成することと、前記マスク層を前記第1材料との反応を生じ得る反応性ガス又は液に曝して、少なくとも前記第2領域の位置で前記反応を生じさせ、これにより、前記第1材料からなる第1層と前記第2材料からなる第2層とを得ることとを含んだ光学素子の製造方法。
〔11〕前記反応によって前記反射材料層を部分的に除去する〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記反射材料層の前記部分的な除去によって、前記第1層を、前記第1及び第2領域のうち前記第1領域のみを被覆した層として得る〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記反応によって前記反射材料層の一部を前記第1材料とは異なる材料からなる層に変化させる〔10〕に記載の方法。
〔14〕前記反射材料層を、前記第1領域に対応した部分において5nm乃至500nmの範囲内の平均膜厚を有するように形成し、前記マスク層を、前記第1領域に対応した部分において0.3nm乃至200nmの範囲内の平均膜厚を有するように形成する〔10〕〜〔13〕の何れかに記載の方法。
〔15〕前記レリーフ構造形成層の前記主面は第3領域を更に含み、前記第3領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きく、前記反射材料層は、前記第1材料を前記第1乃至第3領域の全体に対して気相堆積させることにより形成し、前記方法は、前記反応を生じさせる前に、前記第2及び第3領域のうち前記第3領域のみと向き合った被覆層を形成することを更に含んだ〔10〕〜〔14〕の何れかに記載の方法。
【符号の説明】
【0214】
10…光学素子、110…レリーフ構造形成層、120…反射材料層、120´…第1層、130…マスク層、130´…第2層、140…被覆層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DPF…表示部、DPU…表示部、DSP1…表示部、DSP2…表示部、P1…第1部分、P2…第2部分、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、SR1…第1サブ領域、SR2…第2サブ領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、
前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層であって、気相堆積法により形成される第2層と
を具備した光学素子。
【請求項2】
前記第1領域は複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.5以下であり、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.8乃至2.0の範囲内にある請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は二次元的に配列している請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第2層のうち前記第2サブ領域に対応した部分の平均膜厚は0.3nm乃至200nmの範囲内にある請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1層は、前記第2サブ領域に対応した位置にのみ又は前記第1領域に対応した位置にのみ設けられている請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1層の輪郭の前記主面への第1正射影はその全体が前記第2層の輪郭の前記主面への第2正射影と重なり合っているか、又は、前記第1正射影は前記第2正射影に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれているか、又は、前記第1正射影の一部は前記第2正射影の一部と重なり合い、前記第1正射影の残りの部分は前記第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれている請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1領域と前記第2領域との境界と前記第1層の輪郭との最短距離の最大値は3μm未満である請求項1乃至7の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項1】
互いに隣接した第1及び第2領域を含んだ主面を有し、前記第1領域は第1及び第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第2領域と隣接し、前記第1及び第2領域間の境界に沿って延びており、前記第2サブ領域は前記第1サブ領域を間に挟んで前記第2領域と隣接し、前記第2領域は、複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第1領域と比較して見かけ上の面積に対する表面積の比がより大きいレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造形成層の材料とは屈折率が異なる第1材料からなり、少なくとも前記第2サブ領域を被覆し、前記第2サブ領域に対応した部分は前記第2サブ領域の表面形状に対応した表面形状を有しており、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第1材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第1材料の量の比と比較してより小さい第1層と、
前記第1材料とは異なる第2材料からなり、前記第1層を被覆し、前記第2領域の見かけ上の面積に対する前記第2領域の位置における前記第2材料の量の比は、ゼロであるか又は前記第2サブ領域の見かけ上の面積に対する前記第2サブ領域の位置における前記第2材料の量の比と比較してより小さい第2層であって、気相堆積法により形成される第2層と
を具備した光学素子。
【請求項2】
前記第1領域は複数の凹部又は凸部が設けられ、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きい請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.5以下であり、前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は、それら凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比の平均値又はそれら凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値が0.8乃至2.0の範囲内にある請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第2領域の前記複数の凹部又は凸部は二次元的に配列している請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第2層のうち前記第2サブ領域に対応した部分の平均膜厚は0.3nm乃至200nmの範囲内にある請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1層は、前記第2サブ領域に対応した位置にのみ又は前記第1領域に対応した位置にのみ設けられている請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1層の輪郭の前記主面への第1正射影はその全体が前記第2層の輪郭の前記主面への第2正射影と重なり合っているか、又は、前記第1正射影は前記第2正射影に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれているか、又は、前記第1正射影の一部は前記第2正射影の一部と重なり合い、前記第1正射影の残りの部分は前記第2正射影の残りの部分に沿った形状を有し且つ前記第2正射影に取り囲まれている請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1領域と前記第2領域との境界と前記第1層の輪郭との最短距離の最大値は3μm未満である請求項1乃至7の何れか1項に記載の光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−63738(P2012−63738A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22740(P2011−22740)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2011−501057(P2011−501057)の分割
【原出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2011−501057(P2011−501057)の分割
【原出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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