説明

光学薄膜およびホログラムシール

【課題】
明るさが十分でないためホログラム画像の輪郭部が周囲の明るさに埋没して際立たなかったり、反射率が低いとホログラム画像の輪郭部が暗くなるため視認性が悪くかつ装飾効果に劣るのみならず、本来の偽造防止効果が十分に発揮されなくなる問題が起こらない光学薄膜およびホログラムシールを提供することが課題であった。
を提供する。
【解決手段】
レリーフ面に反射性薄膜層が形成されてなるレリーフ型ホログラムである光学薄膜において、反射性薄膜層が銀合金の単層構造、あるいは銀合金層に隣接する両面または片面にセラミックス材料が形成されてなる積層構造であることを特徴とする光学薄膜およびホログラムシールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム絵柄の視認性を向上させた光学薄膜に関する。加えて、本発明の光学薄膜をホログラムシールに用いた場合の耐環境性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは光の干渉効果を利用して画像を立体的に再生する技術である。ホログラムの作製には高度な製造技術が用いられ、かつ箔状に形成することが可能であるため、例えば、紙幣、有価証券、債券、小切手、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、パスポートや免許証などの各種証明書、高額商品のパッケージ等の偽造、模造及び複製の防止に利用されている。
【0003】
レリーフ型ホログラムは基板上に微細な凹凸画像が形成されており、凹凸による光の回折効果によって画像が立体的に浮かび上がる方式である。レリーフ型ホログラムには通常画像の輪郭を際立たせるための反射性薄膜層が設けられる。反射性薄膜層の効果によってホログラム画像の輪郭が明瞭に浮かび上がって視認性が向上することで偽造防止効果が高くなるのみならず、装飾性にも寄与するため一層商品価値が増大する。
【0004】
この様な反射性薄膜層は、例えば酸化チタンを用いて単層で形成する方法が知られている。
【0005】
特許文献は以下の通り。
【特許文献1】特開平5−197323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反射性薄膜層を酸化チタンの単層で物理膜厚45nmだけ形成した場合、光の波長550nmの反射率は30%程度である。光の波長550nmでの反射率が30%程度では明るさが十分でないためホログラム画像の輪郭部が周囲の明るさに埋没して際立たない。また、反射率が低いとホログラム画像の輪郭部が暗くなるため視認性が悪くかつ装飾効果に劣るのみならず、本来の偽造防止効果が十分に発揮されなくなる。そこでその様な問題の起こらない光学薄膜およびホログラムシールを提供することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、レリーフ面に反射性薄膜層が形成されてなるレリーフ型ホログラムである光学薄膜において、反射性薄膜層が銀合金の単層構造、あるいは銀合金層に隣接する両面または片面にセラミックス材料が形成されてなる積層構造であることを特徴とする光学薄膜である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記光学薄膜の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の光学薄膜である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、レリーフ型ホログラムが偽造防止用であることを特徴とする請求項1ないし2の光学薄膜である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、支持体上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、保護層、請求項1から3何れか記載の光学薄膜である反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、保護層が防食剤を塗布することで形成されることを特徴とするホログラムシールである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、支持体上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、請求項1から3何れか記載の光学薄膜である反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、接着層の材料に防食剤を含有することを特徴とするホログラムシールである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4記載のホログラムシールにおいて、接着層の材料に防食剤を含有することを特徴とするホログラムシールである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、反射性薄膜層の反射率が高いため、ホログラム画像の輪郭部が明るく、視認性が良くかつ装飾効果に優れ、本来の偽造防止効果が十分に発揮される。
【0014】
また、ホログラム画像の視認性が向上したのに加えて、ホログラムシールの耐環境性が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明のホログラム用光学薄膜の一例を示す断面図を用いて説明する。図1は本発明の3層で構成されたホログラム用光学薄膜層7を有するホログラムシール1の構成を示す断面である。基材2上に剥離性保護層3が形成され、剥離性保護層3の上にホログラム形成層4が形成され、ホログラム形成層4の上に保護層5が形成され、保護層5の一部を覆うように印刷層6が形成され、保護層5及び印刷層6を覆うようにホログラム用光学薄膜層7が形成され、ホログラム用光学薄膜層7を覆うように接着層11が形成されてなる。
【0016】
基材2としては、無機化合物成形物または有機化合物成形物が挙げられる。成形物の形状としては、表面が平滑であれば特に限定されず、板状、ロール状等が挙げられる。また、基材2は、無機化合物成形物または有機化合物成形物の積層体であってもよい。
【0017】
無機化合物成形物としては、例えば、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラス、鉛ガラス等が挙げられる。有機化合物成形物としては、紙、合成紙、プラスチック等が挙げられる。特にプラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリエチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
【0018】
基材2の厚さは、目的の用途に応じて適宜選択され、通常5〜300μmである。有機化合物成形物には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0019】
剥離性保護層3はホログラム形成層4である被接着物、例えば紙、プラスチック、ガラスなど無機・有機化合物成形物に対して接着性があり、加えて、接着層11に較べて接着
力が弱く、続いて行われる工程に対する安定性を備えていればいかなるものでも構わない。例えば、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂あるいはこれらにオイルシリコン、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛等を添加した有機化合物である。あるいは無機化合物を使用してもよい。
【0020】
剥離性保護層3の形成の一例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物を用いてグラビア印刷法により、乾燥温度110℃で厚さ1.5μmを作製することができる。
【0021】
ホログラム形成層4はエンボス成形を行う際のプレス加工性に優れ、剥離性保護層3との接着性が良好であり、かつ印刷層5及びホログラム用光学薄膜層7との密着性に優れていればいかなるものでも構わない。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂等、あるいはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物等が使用できる。これらの樹脂等の混合物、2種類以上の樹脂等を積層して硬化した積層体、あるいは2種類以上の樹脂等を張り合わせた物も使用できる。
【0022】
ホログラム形成層4のレリーフ面は、前記基材の表面に対して微細な凹凸のパターンが形成されたニッケル製のホログラムスタンパを用いて加熱押圧するなどの周知の方法で形成できる。基材表面にして微細な凹凸のレリーフパターンが形成できるならフォトリソグラフィー等の他の手法を用いても構わない。
【0023】
ホログラム形成層4のレリーフ面上には防食剤を塗布して銀合金薄膜層9の腐食、劣化を防止する保護層5を形成する。JIS Z0103−2004は腐食を「金属がそれをとり囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象。」と定義している。更に、耐食性を「金属が腐食に耐える性質。」、防食を「金属が腐食するのを防止すること。」としている。従って、本発明に使用する防食剤としては金属を防食する性能を有するものであれば如何なる材料でも構わない。
【0024】
防食剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0025】
アミン類およびその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボ
キシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
トリアゾール環を有する物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ3'5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
ピラゾール環を有する物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
チアゾール環を有する物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
イミダゾール環を有する物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
インダゾール環を有する物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
メルカプト基を有する物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2‐エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0036】
防食剤を塗布する方法としては、スプレー法、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法等のウェットプロセスに加えて、蒸着法、CVD法、プラズマ重合法等の真空ドライプロセスにより成膜することができる。防食剤の成分の有効範囲に関しては、防食剤を成膜した箇所の表面に成分が存在する場合のみならず、成分が内部に浸透して表面以外の箇所でも存在する場合も含む。
【0037】
印刷層6は保護層5の一部を覆うように文字や絵柄のパターンで構成される。印刷層6は所望により保護層5の全面を覆うように形成してもよい。印刷層6に形成する印刷パターンは任意に決定でき、接着層11の側から覗いたときに印刷パターンが見えるように形成されればよい。印刷層6の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。印刷層6は光に対して吸収性を有すればよく、印刷層6を形成する材料は特に限定されるものではない。例えば印刷インキ等が挙げられる。
【0038】
ホログラム用光学薄層7は、銀合金薄膜層の両面をセラミックス材料で挟んだ3層構造であり、例えばホログラム形成層に近い側の層から、セラミックス薄膜層8、銀合金薄膜層9、セラミックス薄膜層10の順に積層する。
【0039】
銀合金薄膜層9の材料としては、銀を主成分とし、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウムを添加した合金である。これら金属元素は、2種類以上を銀に含有させてもよい。
【0040】
銀に他の金属元素を添加する理由は次のようである。銀の薄膜は、酸素、硫黄、ハロゲン、アルカリ等によって腐食しやすく、結果として凝集、マイグレーション等を引き起こして外観が損なわれるが、しかし、銀に他の金属元素を含有させると銀の化学的安定性が向上するからである。したがって、これらの金属元素を銀に含有させる場合、その含有量は、銀合金薄膜層8の光学性能を悪化させずに耐腐食性に寄与する程度であればよく、0.1原子%〜20原子%程度である。
【0041】
セラミックス層8及び10は銀合金薄膜層9を外界の腐食・劣化起因物質から保護する役割を果たして耐環境性を向上させるのみならず、ホログラム用光学薄膜層7の光学的性能にも寄与する。銀合金薄膜層9に隣接するセラミックス薄膜層の構成を選択することによって光学薄膜層6の反射率を調整できるのみならず、ホログラム用光学薄膜層7の色相も調整可能になる。
【0042】
セラミックス薄膜層8及び10の具体的な材料としては、二酸化チタン(n=2.3)、二酸化ジルコニウム(n=2.1)、硫化亜鉛(n=2.3)、二酸化セリウム(n=2.0〜2.4)、酸化亜鉛(n=2.0)、酸化タンタル(n=2.1)、酸化インジウム(n=2.0)、酸化錫(n=2.0)、酸化ビスマス(n=1.9〜2.4)、酸化ハフニウム(n=2.0)、酸化ニオブ(n=2.2)、酸化イットリウム(n=1.8)、セレニウム化亜鉛(n=2.6)、窒化シリコン(n=1.7)、フッ化マグネシウム(n=1.38)、フッ化カルシウム(n=1.25)、フッ化セリウム(n=1.63)、フッ化アルミニウム(n=1.36)、二酸化珪素(n=1.46)、酸化アルミニウム(n=1.63)、酸化マグネシウム(n=1.7)、フッ化ランタン(n=1.6)、フッ化アルミニウムナトリウム(n=1.35)、窒化チタン(n=1.4)の少なくとも1種類以上から選ばれることが望ましい。ここでnは光の波長550nmにおける屈折率を表す。一方、消衰係数は可視光の波長領域全体でゼロであることが望ましい。
【0043】
セラミックス薄膜層8及び10の材料は必ずしも同じでなくてもよく、適宜選択できる。加えて、銀合金薄膜層及びセラミックス薄膜層の数や配置の順番に関しても、所望の光学薄膜層の特性が得られるなら限定しない。更には、セラミックス薄膜層を形成せず、銀合金薄膜層9単層の構成でも構わない。
【0044】
セラミックス薄膜層8及び10は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法、湿式塗工法等の従来公知の方法により形成できる。
【0045】
接着層11は剥離性保護層3よりも被接着物に対する接着力が強く、ホログラム用光学薄膜層7を変質、変色、劣化させるものでなく、かつ続いて行われる工程に対する安定性を備えていればいかなるものでも構わない。接着層11の材料としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系接着剤、ポリエステル系ポリアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
接着層11の材料には銀合金薄膜層9の腐食・劣化防止のため防食剤を含有させてもよい。防食剤としては保護層5で用いた材料と同じものが使用できる。
【0047】
接着層11の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。
【0048】
図1のホログラムシール1は接着層11を紙、プラスチックカード、ガラス等の被接着物に密着して張り合わせ、剥離性保護層3と基材2の界面で基材2を剥離して使用される。
【0049】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0050】
[実施例1]
基材2には厚さ12μmのポリエステルフィルムを用い、基材2の上に剥離性保護層3としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物にオイルシリコンを添加した熱可塑性樹脂をグラビア印刷法によって形成した。剥離性保護層3の上にホログラム形成層4としてアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を重量比5:2で混合した混合物を用いてホログラム形成層4を形成した。ホログラム形成層4のレリーフ面全面に防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールをメタノールの溶媒に溶解した溶液をマイクログラビア法を用いて塗布し、保護層5を形成した。保護層5の一部を覆うように印刷層6を印刷インキを用いてシルクスクリー
ン印刷法によって絵柄を印刷して形成した。
【0051】
続いて、ホログラム形成層4と印刷層6の全面を覆うように3層構成のホログラム用光学薄膜層7を形成した。先ず、硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で34nm成膜してセラミックス薄膜層8を形成した。セラミックス薄膜層8の上に銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金をスパッタリング法により堆積させ、物理膜厚で20nm成膜して銀合金薄膜層9を形成した。更に銀合金薄膜層9の上に硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で77nm成膜しセラミックス薄膜層10を形成した。図2にホログラム用光学薄膜7の膜面を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は56%と高い値であった。図3にホログラム用光学薄膜7の膜面を真正面から見たときのxy色度図を示す。色度図のxy座標はxが0.31、yが0.33であり、ニュートラルな色相であった。xy色度図上でニュートラルな色相とはxが0.22〜0.43、かつyが0.23〜0.42の範囲にあることが好ましく、更にはxが0.25〜0.40、かつyが0.25〜0.40の範囲にあることがより好ましく、更にはxが0.28〜0.38、かつyが0.28〜0.36の範囲にあることが最も好ましい。
【0052】
ホログラム用光学薄膜層7の上に接着層11として、塩化ビニル−酢酸ビニル重合体、ポリエステル樹脂、メチルエチルケトン、トルエン、及び防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールを含有させた混合物をグラビア印刷法により形成してホログラムシール1を完成させた。
【0053】
ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0054】
[実施例2]
ホログラム用光学薄膜層7の構成及び材料以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。ホログラム用光学薄膜層7は2層構成とし、セラミックス薄膜層8及び銀合金薄膜層9の材料と物理膜厚に関してはホログラム形成層4から順次、以下のように作製した:
硫化亜鉛(物理膜厚34nm)/銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金(物理膜厚20nm)
図4にホログラム用光学薄膜7の膜面を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は61%と高い値であった。図5に真正面からホログラム用光学薄膜7の膜面を見たときのxy色度図を示す。xが0.33、yが0.33で、色相はニュートラルであった。
【0055】
ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0056】
[実施例3]
ホログラム用光学薄膜層7の構成及び材料以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。ホログラム用光学薄膜層7は1層構成とし、銀合金薄膜層9の材料と物理膜厚に関しては以下のようにした:
銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金(物理膜厚20nm)
図6にホログラム用光学薄膜7の膜面を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は61%と高い値であった。図7に真正面からホログラム用光学薄膜層7の膜面を見たときのxy色度図を示す。xが0.35、yが0.36であり、ニュートラ
ルな色相だった。
【0057】
ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0058】
[比較例1]
ホログラム用光学薄膜層7の銀合金を銀に変えた以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。視感平均反射率およびxy色度図における色相は実施例1とほぼ同様な値であった。ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0059】
[比較例2]
保護層5を形成しなかった以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。視感平均反射率およびxy色度図における色相は実施例1とほぼ同様な値であった。ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0060】
[比較例3]
ホログラム用光学薄膜層7の接着層11に防食剤を含有しなかった以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。視感平均反射率およびxy色度図における色相は実施例1とほぼ同様な値であった。ホログラムシール1を正面から見たときホログラム用光学薄膜層7の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたホログラムシール1に対して以下の評価を行った。
【0062】
(1)5重量%NaCl水溶液浸漬試験:
200mm×200mmのホログラムシール1を、200mm×200mmの石英ガラス基板上に粘着層11側が石英ガラス基板側になるように貼り合わせ、剥離性保護層3と基材2の界面で基材2を剥離したサンプルを作製した。続いて、サンプルを5重量%のNaCl水溶液に24時間浸漬した。浸漬後のサンプルを経時で観察し、銀合金薄膜層9の銀の凝集点を目視で数えた。サンプルの浸漬中はNaCl水溶液の温度は20℃に保持した。結果を表1に示す。
【0063】
(2)耐湿熱性試験:
200mm×200mmのホログラムシール1を、200mm×200mmの石英ガラス基板上に粘着層11側が石英ガラス基板側になるように貼り合わせ、剥離性保護層3と基材2の界面で基材2を剥離したサンプルを作製した。続いて、サンプルを65℃−95%RHの恒温恒湿槽内に入れた。1000時間までの耐湿熱試験を実施して、サンプルの経時変化を観察し、銀合金薄膜層9の銀の凝集点を目視で数えた。
【0064】
結果を表2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

5重量%NaCl水溶液浸漬試験に関しては、銀に金属を添加した銀合金薄膜層9を有する実施例1〜3のいずれもが高い耐性を示した。理由は、銀中に金属を添加した効果、保護層が防食剤で形成されている効果、接着層に防食剤を含有した効果が発現したためと推測される。一方、比較例1〜3ではいずれのサンプルも凝集が発生して耐性に問題がある。特にホログラムシールのような偽造防止用途に用いられる物品はセキュリティ保護の観点から問題である。
【0067】
耐湿熱試験に関しては、銀に金属を添加した銀合金薄膜層9を有する実施例1〜3のいずれもが1000時間経っても凝集が発生しなかった。理由は、銀中に金属を添加した効果、保護層が防食剤で形成されている効果、接着層に防食剤を含有した効果が発現したためと推測される。一方、比較例1〜3ではいずれのサンプルも240時間後には凝集が発生して耐湿熱性に問題がある。特にホログラムシールのような偽造防止用途に用いられる物品はセキュリティ保護の観点から問題である。
【0068】
本発明のホログラム用光学薄膜に銀合金薄膜層を用いることによって反射率を増大し、以って視認性を向上することが可能になる。加えて、銀合金薄膜層に隣接してセラミックス層を形成すればホログラム用光学薄膜の反射光の色相を調整することができるのみならず、銀を劣化・腐食させる起因物質の膜中への侵入を阻止できて有用である。銀合金薄膜層の銀の劣化・腐食を抑止するために保護層を設け、保護層の形成には防食剤を使用する、接着層に防食剤を含有することによって更に銀の劣化・腐食抑止効果が増大し、セキュリティ保護に対する信頼性を向上することが可能になる。
【0069】
本発明の光学薄膜は、ホログラムのみならず、CRT、液晶表示装置、PDP、窓ガラス、眼鏡、ゴーグル等の光学物品に設けられるフィルタとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のホログラム用光学薄膜を有するホログラムシールの一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1及び比較例1におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図3】本発明の実施例1及び比較例1におけるホログラム用光学薄膜のxy色度図である。
【図4】本発明の実施例2及び比較例2におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図5】本発明の実施例2及び比較例2におけるホログラム用光学薄膜のxy色度図である。
【図6】本発明の実施例3及び比較例3におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図7】本発明の実施例3及び比較例3におけるホログラム用光学薄膜のxy色度図である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・ホログラムシール
2・・・基材
3・・・剥離性保護層
4・・・ホログラム形成層
5・・・保護層
6・・・印刷層
7・・・ホログラム用光学薄膜層
8・・・セラミックス薄膜層
9・・・銀合金薄膜層
10・・・セラミックス薄膜層
11・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフ面に反射性薄膜層が形成されてなるレリーフ型ホログラムである光学薄膜において、反射性薄膜層が銀合金の単層構造、あるいは銀合金層に隣接する両面または片面にセラミックス材料が形成されてなる積層構造であることを特徴とする光学薄膜。
【請求項2】
前記光学薄膜の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の光学薄膜。
【請求項3】
レリーフ型ホログラムが偽造防止用であることを特徴とする請求項1ないし2の光学薄膜。
【請求項4】
支持体上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、保護層、請求項1から3何れか記載の光学薄膜である反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、保護層が防食剤を塗布することで形成されることを特徴とするホログラムシール。
【請求項5】
支持体上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、請求項1から3何れか記載の光学薄膜である反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、接着層の材料に防食剤を含有することを特徴とするホログラムシール。
【請求項6】
請求項4記載のホログラムシールにおいて、接着層の材料に防食剤を含有することを特徴とするホログラムシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−322632(P2007−322632A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151509(P2006−151509)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】