説明

光学装置及びプロジェクタ

【課題】色合成光学装置と光変調装置との位置ずれを抑制することのできる光学装置及びプロジェクタを提供すること。
【解決手段】複数の光変調装置441と、各光変調装置441に対向する複数の光束入射面を有する色合成光学装置445とを備えた光学装置44Aは、光変調装置441が固定される固定部材51と、色合成光学装置445に取り付けられ、かつ、固定部材51を支持する支持部材53とを、少なくとも1つずつ備える。支持部材53は、折曲加工された板金で形成されており、光束の透過領域外で固定部材51側に突出して支持する断面視略矩形状の複数の支持部532,533を有する。固定部材51は、支持部532,533の断面形状に応じて形成され、かつ、支持部532,533が挿入される孔部5151,5161と、光変調装置441が固定される固定部とを有し、孔部5151,5161と固定部とは、同一平面上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射した光束を画像情報に応じて変調する複数の光変調装置と、変調された前記光束を合成する色合成光学装置とを備えた光学装置、及び、当該光学装置を備えるプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源と、当該光源から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクタが知られている。このようなプロジェクタとして、光源から射出された光束を、赤、緑及び青の3色の色光に分離する色分離光学装置と、色光ごとに設けられた光変調装置としての3つの液晶パネルと、当該液晶パネルで変調された各色画像を合成する色合成光学装置としてのプリズムとを備えた、いわゆる三板式プロジェクタが知られている。
【0003】
ところで、このような三板式プロジェクタでは、それぞれの液晶パネルと色合成光学装置とを適切に位置合わせする必要がある。このため、各液晶パネルをプリズムに一体的に組み付けることで、ユニット化する手法が取られている。このようなプロジェクタとして、固定枠及び調整板を介して、プリズムの各光束入射面に、各液晶パネルを固定したプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のプロジェクタでは、プリズム(ダイクロイッククロスプリズム)の上面を覆う天板の3辺に、当該プリズムの3つの光束入射面の各周端縁を覆う3枚の固定枠が取り付けられ、当該固定枠に、それぞれ液晶パネルが固定された調整板が固定されている。このような構成により、プリズムと各液晶パネルとを一体的に構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−56516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のプロジェクタでは、調整板に形成された略円形状の穴を挿通する固定枠の支持片が略矩形状に形成されているので、穴内に接着剤等を注入した場合でも、当該支持片が揺動して、液晶パネルが固定された調整板と固定枠とが位置ずれを起こす可能性がある。
【0007】
一方、穴の形状に応じて支持片を略円形状にすることも考えられるが、固定枠は板金を折曲加工することで形成される場合が多く、支持片を断面視略円形状に形成することが困難である。これに対し、断面視略円形状の支持片を樹脂等により形成し、当該支持片を接着剤等により固定枠に取り付けることも考えられるが、このような固定枠には、液晶パネル等で生じた熱が伝導するため、当該熱で樹脂が変形するとともに、調整板及び液晶パネルの自重で、調整板と固定枠との位置がずれる可能性がある。特に、投射光学装置として、広角の投射レンズを用いた近接投射型のプロジェクタにおいては、この問題は顕著となる。
以上のような問題から、プリズムに固定される部材と、液晶パネルが固定された部材との位置ずれを生じにくくすることができ、ひいては、プリズムと液晶パネルとの位置ずれを生じにくくすることのできる構造が要望されてきた。
【0008】
本発明の目的は、色合成光学装置と光変調装置との位置ずれを抑制することのできる光学装置及びプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の光学装置は、複数の色光を色光毎に画像情報に応じて変調する複数の光変調装置と、それぞれの前記光変調装置に対向する複数の光束入射面を有し、かつ、それぞれの前記光変調装置で変調された前記色光を合成して画像光を形成する色合成光学装置とを備えた光学装置であって、前記光変調装置が固定される固定部材と、前記色合成光学装置における前記固定部材に固定された前記光変調装置に対向する前記光束入射面に対応する位置に取り付けられ、かつ、前記固定部材を支持する支持部材とを、少なくともそれぞれ1つずつ備え、前記支持部材は、折曲加工された板金で形成され、当該支持部材は、前記光束入射面に入射する前記色光の透過領域外で前記固定部材側に突出し、前記固定部材を支持する断面視略矩形状の複数の支持部と、当該支持部材が支持する前記固定部材に固定される前記光変調装置に入射する前記色光の入射方向である光軸方向から見た際に、当該固定部材の端縁から外側に突出し、かつ、当該支持部材を前記色合成光学装置に押し込むための一対の押込部とを有し、前記一対の押込部は、それぞれ前記支持部材の反対側の端部に設けられ、前記固定部材は、前記支持部の断面形状に応じて形成され、かつ、当該支持部が挿入される孔部と、前記光変調装置が固定される固定部とを有し、前記孔部と前記固定部とは、同一平面上に設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、光変調装置としては、入射光束が透過する過程で、当該入射光束を変調する液晶パネルを例示することができる。また、色合成光学装置としては、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状を有し、各直角プリズム同士を貼り合わせた界面に、例えば、赤色光及び青色光をそれぞれ反射し、かつ、緑色光をそれぞれ透過する2つの誘電体多層膜が形成されたクロスダイクロイックプリズムを例示することができる。
【0011】
本発明によれば、支持部材に形成された支持部は断面視略矩形状に形成され、当該支持部が挿入される固定部材の孔部は、当該支持部に応じた形状、すなわち、平面視略矩形状を有している。これによれば、孔部内に支持部を挿入した際の当該支持部の揺動を抑制することができる。従って、固定部材と支持部材との位置ずれを抑制することができ、ひいては、色合成光学装置と光変調装置との位置ずれを抑制することができる。
また、光変調装置を固定する固定部と孔部とが同一平面上に設けられていることにより、支持部材の支持部を孔部に挿入しつつ、固定部材を当該支持部に沿って摺動させることで、色合成光学装置に対する固定部材に固定された光変調装置の位置合わせを行う際に、固定部材にたわみが発生しても、これらの位置ずれを抑制することができる。従って、色合成光学装置に対する光変調装置の位置ずれを一層抑制することができる。
【0012】
本発明では、前記支持部材は、当該支持部材が支持する前記固定部材に固定される前記光変調装置に入射する前記色光の入射方向である光軸方向から見た際に、当該固定部材の端縁から外側に突出し、かつ、当該支持部材を前記色合成光学装置に押し込むための一対の押込部を有し、前記一対の押込部は、それぞれ前記支持部材の反対側の端部に設けられている。
【0013】
ここで、色合成光学装置に対して光変調装置を固定する場合には、光変調装置を固定した固定部材を治具により把持して、当該固定部材を支持部材に支持させるとともに、当該支持部材を色合成光学装置に取り付けて、これらを互いに接着剤にて固定する。この際、支持部材は、色合成光学装置に圧着させた状態で固定する必要があるが、この圧着方向は、色合成光学装置の光束入射面の法線方向であり、この方向は、光変調装置に入射する光束の光軸方向となる。このため、固定部材及び支持部材を当該光軸方向から見た場合に、固定部材の範囲内に支持部材が位置する場合には、固定部材を把持する治具とは異なる治具で支持部材を把持し、当該支持部材を色合成光学装置に圧着させる必要があるため、圧着工程が煩雑となる。
【0014】
これに対し、本発明では、支持部材は、固定部材の端縁から外側に突出する一対の押込部を有することにより、当該押込部を治具等により、光軸方向に沿って色合成光学装置に押し込むことで、支持部材を色合成光学装置を圧着させることができる。また、この際、一対の押込部が、それぞれ支持部材の反対側の端部に設けられていることにより、当該支持部材の色合成光学装置への圧着を確実に行うことができる。従って、色合成光学装置への支持部材の圧着を簡易に行うことができ、ひいては、光学装置の製造工程を簡略化することができる。
【0015】
本発明では、前記一対の押込部は、当該押込部を有する前記支持部材が保持する前記光変調装置から他の前記光変調装置に近接する側に延出していることが好ましい。
ここで、光変調装置には、当該光変調装置に画像情報を入力させるための信号線が接続される。この信号線は、それぞれが互いに干渉しないように、各光変調装置において互いに隣接する方向とは異なる方向(例えば、水平方向に沿って光変調装置が配列されている場合の上方向)に沿って各光変調装置から延出させる必要がある。このため、支持部材の一対の押込部が、当該信号線の延出方向に対して直交する方向である、他の光変調装置に近接する側に延出していることにより、一対の押込部を押し込んで色合成光学装置に支持部材を圧着させる際に、当該信号線が邪魔になることを防ぐことができる。従って、支持部材の色合成光学装置への圧着工程を簡略化することができ、これにより、光学装置の製造工程を簡略化することができる。
【0016】
本発明では、前記一対の押込部のそれぞれは、前記支持部材から前記固定部材側に突出し、かつ、当該突出方向の先端側で、当該支持部材の外側に向かって延出して形成されていることが好ましい。
ここで、色合成光学装置が、前述のクロスダイクロイックプリズムで構成されている場合、当該クロスダイクロイックプリズムの3つの光束入射面には、それぞれ支持部材、固定部材及び光変調装置が位置することとなる。このため、支持部材の一対の押込部が、他の光変調装置に近接する側に延出している場合には、当該一対の押込部と、他の支持部材との距離が短くなり、互いに干渉してしまう。これに対し、本発明では、一対の押込部のそれぞれが、固定部材側に突出した後、当該突出方向の先端側で支持部材の外側に向かって延出する構成を有していることにより、他の支持部材との距離を長くすることができる。従って、支持部材同士が干渉することを防ぐことができる。
【0017】
本発明では、前記固定部材は、当該固定部材に固定される前記光変調装置を挟み、かつ、前記光変調装置に入射する前記色光の透過領域近傍に形成された一対の凹部を有し、前記一対の押込部は、それぞれ前記一対の凹部に応じた位置に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、光変調装置に入射する色光の光軸方向に沿って光学装置を見た場合、支持部材の一対の押込部は、固定部材に形成された一対の凹部を介して露出することとなる。これによれば、当該一対の凹部を介して、一対の押込部を色合成光学装置に向かって押し込むことができる。従って、支持部材の色合成光学装置に対する圧着を簡易に行うことができる。また、これにより、一対の押込部の支持部材の外側への延出寸法を小さくすることができるので、支持部材を小型化することができる。
【0018】
また、一対の凹部は、当該凹部を有する固定部材に固定される光変調装置に入射する色光の透過領域近傍に形成されている。これによれば、光変調装置に適切に入射しない光を、固定部材における各凹部を挟む領域と、支持部材の各押込部とにより遮光することができる。従って、色合成光学装置に入射する光を、光変調装置の画像形成領域(光束変調領域)を透過した光とすることができるので、色合成光学装置に不要な光が入射することを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明のプロジェクタは、光源と、前述の光学装置と、当該光学装置により合成された光束を投射する投射光学装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、前述の光学装置と同様の効果を奏することができる。また、固定部材が前述の一対の凹部を有し、支持部材が、当該一対の凹部の形成位置に応じた一対の押込部を有する場合には、当該固定部材及び支持部材により、光変調装置の画像形成領域に入射しない光を遮ることができるので、当該光が投射光学装置に入射することを防ぐことができる。従って、投射画像に関与しない不要な光が投射光学装置によって投射されて、当該投射画像のコントラストが低下することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクタの概略構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における光学装置本体を示す斜視図。
【図3】前記実施形態における光学装置本体を示す分解斜視図。
【図4】前記実施形態における固定部材を光束入射側から見た斜視図。
【図5】前記実施形態における固定部材を光束射出側から見た斜視図。
【図6】前記実施形態における固定部材及び角度調整部材を示す斜視図。
【図7】前記実施形態における角度調整部材を光束射出側から見た斜視図。
【図8】前記実施形態における支持部材における押込部の形成位置を示す図。
【図9】前記実施形態における支持部材における押込部の形成位置を示す図。
【図10】前記実施形態の変形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクタの概略構成〕
図1は、本実施形態に係るプロジェクタ1の概略構成を示す模式図である。
本実施形態のプロジェクタ1は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光(フルカラー画像に係る光束)を形成し、当該画像光をスクリーン等の投射面上に拡大投射するものである。このプロジェクタ1は、図1に示すように、投射レンズ3と、当該投射レンズ3により投射される画像光を形成する光学ユニット4と、これらを内部に収納する外装筐体2とを備えて構成されている。
なお、図1において、具体的な図示は省略したが、外装筐体2内には、投射レンズ3及び光学ユニット4以外の空間には、プロジェクタ1内部の各構成部材を冷却する冷却ユニット、同じくプロジェクタ1を構成する電子部品に電力を供給する電源ユニット、及び、プロジェクタ1の駆動を制御する制御ユニット等が設けられている。
【0022】
外装筐体2は、詳しい図示を省略したが、全体略直方体形状を有している。そして、この外装筐体2は、上部を形成するアッパーケース、下部を形成するロアーケース、及び、正面部(投射レンズ3により画像光を投射する側の部分)を形成するフロントケースとから構成されている。
投射レンズ3は、光学ユニット4で形成された画像光を拡大投射する投射光学装置である。この投射レンズ3は、図1に示すように、鏡筒32内部に複数のレンズ(例えば、投射方向先端側に位置するフレネルレンズ31等)が収納された組レンズとして構成されており、本実施形態では、従来のプロジェクタに比べて画像光の投射距離が短くても、従来のプロジェクタと同じ投射領域を実現可能に構成されている。すなわち、短い投射距離で従来のプロジェクタと同じ投射領域を実現するために、フレネルレンズ31の直径は、鏡筒32の直径より大きくなっている。
【0023】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット4は、前述の制御ユニットから入力する画像信号に応じた画像光を形成する。この光学ユニット4は、外装筐体2の背面(図1における上側)に沿って延出するとともに、当該外装筐体2の側面(図1における右側)に沿って延出する平面視略L字形状を有している。
このような光学ユニット4は、照明光学装置41と、色分離光学装置42と、リレー光学装置43と、電気光学装置44と、これら各装置41〜44を内部に収納配置する光学部品用筐体45とを備えて構成されている。
このうち、光学部品用筐体45は、内部に所定の照明光軸Aが設定され、後述する各装置41〜44を照明光軸Aに対する所定位置に配置する合成樹脂製の箱状部材である。
【0024】
照明光学装置41は、光源装置411、第一レンズアレイ412、第二レンズアレイ413、偏光変換素子414及び重畳レンズ415を備えて構成されている。
光源装置411は、放射状の光線を射出する光源ランプ416と、当該光源ランプ416から射出された放射光を反射して所定位置に収束させるリフレクタ417と、リフレクタ417にて収束される光束を照明光軸Aに対して平行化する平行化凹レンズ418とを備えている。このような光源ランプ416としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ及び高圧水銀ランプ等を利用することができる。また、リフレクタ417としては、回転楕円面を有する楕円面リフレクタで構成することができるほか、回転放物面を有する放物面リフレクタで構成することも可能である。この場合には、平行化凹レンズ418を省略することができる。
【0025】
第一レンズアレイ412及び第二レンズアレイ413は、それぞれ対応する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有し、第一レンズアレイ412は、光源装置411から入射した光束を複数の部分光束に分割して、第二レンズアレイ413近傍に結像させる。
第二レンズアレイ413は、光路後段に位置する重畳レンズ415とともに、第一レンズアレイ412の各小レンズから射出された像を、電気光学装置44の後述する光変調装置441の画像形成領域に結像させる。
偏光変換素子414は、第二レンズアレイ413から入射した各部分光束を、略1種類の直線偏光光に変換する。
【0026】
色分離光学装置42は、2枚のダイクロイックミラー421,422及び反射ミラー423を備え、照明光学装置41から射出された複数の部分光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する。このような色分離光学装置42により分離された3色の色光のうち、赤色光及び緑色光は、集光レンズ419を介して赤色光用及び緑色光用の入射側偏光板442にそれぞれ入射し、青色光は、リレー光学装置43及び集光レンズ419を介して青色光用の入射側偏光板442に入射する。
【0027】
リレー光学装置43は、色分離光学装置42で分離された青色光を、後述する青色光用の光変調装置441Bまで導くものであり、入射側レンズ431、リレーレンズ433及び反射ミラー432,434を備えている。このようなリレー光学装置43が青色光の光路上に配置されているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いので光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。なお、リレー光学装置43には、3つの色光のうち青色光を通す構成としたが、これに限らず、例えば、赤色光を通す構成としてもよい。
【0028】
電気光学装置44は、入射した光束を画像信号に応じて変調してカラー画像に係る画像光を形成する。この電気光学装置44は、3つの光変調装置441(赤色光側の光変調装置を441R、緑色光側の光変調装置を441G、青色光側の光変調装置を441Bとする)と、各光変調装置441の光路前段側に配置される3つの入射側偏光板442と、各光変調装置441の光路後段側に配置される3つの視野角補償板443と、当該各視野角補償板443の光路後段側に配置される3つの射出側偏光板444と、クロスダイクロイックプリズム445とを備えて構成されている。
【0029】
3つの入射側偏光板442は、色分離光学装置42で分離された各色光のうち、偏光変換素子414で揃えられた偏光方向と略同一の偏光方向を有する偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収する。
3つの光変調装置441は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密閉封入された構成を有する液晶パネル4411(図2及び図3参照)を備え、前述の制御ユニットから入力する画像情報に応じて液晶の配向状態が制御されることで、入射側偏光板442から射出された偏光光の偏光方向を変調する。
【0030】
3つの視野角補償板443は、各光変調装置441の光路後段側にそれぞれ配設され、平面視矩形状の透光性基板上に光学補償フィルムが貼付された構成を有する。この光学補償フィルムは、光変調装置441の後述する液晶パネル4411で生じる複屈折による常光と異常光との間に生じる位相差を補償し、液晶パネル4411の明視特性を改善するものである。このような光学補償フィルムは、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明支持体上に配向膜を介してディスコティック(円盤状)化合物層を形成したもので構成でき、WVフィルム(富士写真フィルム社製)を採用することができる。
3つの射出側偏光板444は、光変調装置441を介して射出された光束のうち、一定方向の偏光光(例えば、入射側偏光板442における光束の透過軸と直交する偏光軸を有する光束)を透過し、その他の光を吸収する。
【0031】
クロスダイクロイックプリズム(以下、「プリズム」と略す場合がある)445は、各射出側偏光板444から射出された変調光を合成してカラー画像を形成する色合成光学装置である。このプリズム445は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状を有し、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、光変調装置441Gから射出され、かつ、射出側偏光板444を介した色光を透過し、光変調装置441R,441Bから射出され、かつ、射出側偏光板444を介した各色光を反射する。これにより、赤色光、緑色光及び青色光が合成された画像光が形成される。
【0032】
図2及び図3は、光学装置本体44Aを示す斜視図及び分解斜視図である。なお、図3においては、光学装置本体44Aにおける光変調装置441G側のみを図示するが、光変調装置441R,441B側も同様の構成を有している。
電気光学装置44は、前述のように、それぞれ3つの光変調装置441、入射側偏光板442、視野角補償板443及び射出側偏光板444と、1つのプリズム445とを備えている。
これらのうち、光変調装置441は、図2及び図3に示すように、固定部材51に固定され、当該固定部材51には、視野角補償板443が固定された角度調整部材52が取り付けられる。また、固定部材51は、射出側偏光板444を介してプリズム445に取り付けられた支持部材53に支持される。
【0033】
このようにして、光変調装置441、視野角補償板443、射出側偏光板444、プリズム445、固定部材51、角度調整部材52及び支持部材53は、それぞれ一体となり、本発明の光学装置に相当する光学装置本体44Aを構成している。すなわち、光学装置本体44Aにおいては、光束の入射順に、光変調装置441及び固定部材51と、視野角補償板443及び角度調整部材52と、支持部材53と、射出側偏光板444と、プリズム445とが並ぶこととなる。
【0034】
このうち、プリズム445の3つの光束入射面には、それぞれ射出側偏光板444が貼付される。この射出側偏光板444は、図3に示すように、当該光束入射面を覆う基板4441と、当該基板4441の略中央に積層形成された略長方形状の偏光層4442とを備えている。このうち、基板4441は、幅寸法(基板4441をプリズム445の光束入射面に貼付した際に他の基板4441に近接する方向の寸法)が、当該光束入射面の同方向の寸法と略同じであり、高さ寸法(幅方向に直交する方向の寸法)が、当該光束入射面の同方向の寸法より大きく形成されており、当該基板4441を光束入射面に貼付した際には、当該基板4441は、光束入射面から上下に延出する。これら基板4441には、後述する支持部材53がそれぞれ接着固定される。
【0035】
〔光変調装置の構成〕
光変調装置441は、図2及び図3に示すように、「4:3」のアスペクト比で形成された画像形成領域(光変調領域)を有する液晶パネル4411と、当該液晶パネル4411を内部に保持する保持枠4412とを備えて構成されている。
このうち、保持枠4412は、全体略直方体形状を有し、当該保持枠4412の光束射出側(支持部材53に対向する側)に、液晶パネル4411を内部に収納するための開口(図示省略)が形成されている。また、この保持枠4412の光束入射側の面には、内部に収納された液晶パネル4411に光束を入射させるための開口4412Aが形成されており、当該開口4412Aは、当該液晶パネル4411の画像形成領域に応じた形状及び寸法を有している。
【0036】
更に、この保持枠4412の光束入射側の面の隅部には、当該保持枠4412を固定部材51に固定するためのねじSが挿通する5つの孔部4412Bが形成されている。
具体的に、5つの孔部4412Bのうち、2つは開口4412Aの上方(当該光変調装置441を入射光束の光軸方向から見て、他の光変調装置441に近接する方向に対する直交方向のうちの一方向であり、液晶パネル4411の画像形成領域における短手方向に沿う方向のうちの一方向)で、かつ、当該保持枠4412の左右方向(他の光変調装置441に近接する方向であり、画像形成領域における長手方向に沿う方向)の両端に形成されている。また、残りの3つは開口4412Aの下方に、左右方向に沿って等間隔に形成されている。そして、開口4412Aの上方に位置する2つの孔部4412Bと、当該開口4412Aの下方略中央に位置する1つの孔部4412Bとを挿通したねじSが固定部材51に形成されたねじ孔512に螺合することにより、保持枠4412は、固定部材51に固定される。
【0037】
また、保持枠4412の上端面の略中央には、略矩形状の挿通口4412Cが形成されている。この挿通口4412Cには、保持枠4412内に収納された液晶パネル4411に画像情報を入力させるための信号線(図示省略)が挿通される。そして、この信号線は、一端が液晶パネル4411に接続され、他端が光学ユニット4の上方に位置する前述の制御ユニットに接続される。
【0038】
〔固定部材の構成〕
図4及び図5は、それぞれ固定部材51を光束入射側及び光束射出側から見た斜視図である。
固定部材51は、図4及び図5に示すように、平面視略長方形状を有する金属製部材であり、板金を折曲加工することにより形成されている。この固定部材51には、平面視略矩形の開口511が形成されている。この開口511は、当該固定部材51に光変調装置441が固定された際の液晶パネル4411の画像形成領域に対応し、当該開口511は、画像形成領域を透過した光束を透過させるための開口である。
【0039】
また、この開口511の上方及び下方には、それぞれ2つ及び1つの固定部としてのねじ孔512が形成されており、前述のように、当該ねじ孔512にねじSが螺合することにより、固定部材51の光束入射側の面51Aに光変調装置441が固定される。ここで、固定部材51の光束射出側の面51Bにおけるねじ孔512の端縁部分は、図5に示すように、当該面51Bから突出している。
【0040】
更に、固定部材51の端縁における長手方向、すなわち、開口511の短手方向に沿う方向の略中央には、光束射出側に突出した後、当該突出方向の先端部分にて固定部材51の外側に延出した一対の延出部513が形成されている。これら延出部513の延出方向先端部分は、当該延出部513が形成されていない場合の固定部材51の端縁から内側に位置しており、これにより、固定部材51における延出部513が形成された領域には、凹部514が形成されている。これら延出部513の光束射出側の面513Aは、後述する角度調整部材52が摺動する摺動面として形成されている。
【0041】
これら一対の凹部514を挟む固定部材51の上下方向の端部には、光変調装置441に入射しない光束を遮光する遮光部515,516が形成されている。このうち、上方に位置する各遮光部515には、平面視略長方形状の孔部5151が形成されており、これら孔部5151の長手方向は、固定部材51の上下方向に沿う方向に設定されている。また、下方に位置する遮光部516には、平面視略長方形状の孔部5161が形成されており、これら孔部5161の長手方向は、固定部材51の左右方向(幅方向)に沿う方向に設定されている。これら孔部5151,5161には、後述する支持部材53の支持部532,533が挿入される。すなわち、これら孔部5151,5161と、固定部としてのねじ孔512とは、それぞれ固定部材51における同一平面上(光束入射側の面51A及び光束射出側の面51B)に位置し、これらはそれぞれ面51A,51Bのそれぞれに開口している。
【0042】
固定部材51には、上方に位置する各遮光部515に挟まれる位置に、光束射出側に突出し、かつ、当該突出方向の先端にて上方に延出する取付部517が形成されている。この取付部517には、角度調整部材52が取り付けられる。そして、この取付部517には、略中央に円弧状の摺動孔5171が形成されており、当該摺動孔5171には、角度調整部材52の膨出部527が挿入され、これにより、当該角度調整部材52の摺動範囲が規定される。
【0043】
〔角度調整部材の構成〕
図6は、固定部材51及び角度調整部材52を示す斜視図である。また、図7は、固定部材51に取り付けられた角度調整部材52を光束射出側から見た斜視図である。
角度調整部材52は、視野角補償板443を保持するものであり、前述の固定部材51の取付部517に取り付けられ、当該取付部517に形成された摺動孔5171に沿って摺動することで、視野角補償板443の位置を最適化し、形成される画像光のコントラストを向上させるものである。この角度調整部材52は、図6及び図7に示すように、正面視略逆T字状を有し、幅広部分の略中央に略長方形状の開口521が形成されている。この開口521は、液晶パネル4411の画像形成領域と同様のアスペクト比で形成され、かつ、当該画像形成領域より大きく形成されている。そして、当該開口521の端縁には、4つの押さえ部522が形成されており、当該押さえ部522は、開口521に嵌め込まれた視野角補償板443を押さえる。
【0044】
また、角度調整部材52の幅広部分における開口521の短手方向に沿う方向の一方の端縁には、光束射出側に屈曲した屈曲部523が形成されている。更に、開口521の上方に、略矩形の開口524が形成されている。
【0045】
一方、角度調整部材52の上方側には、縦断面視略略U字状の取付部525が形成されている。この取付部525は、前述の固定部材51に形成された取付部517を挟むようにして、当該取付部517に取り付けられ、これにより、固定部材51に角度調整部材52が取り付けられる。この取付部517における互いに対向する面には、それぞれ対向する方向に膨出した略円形状の膨出部526,527が2つずつ形成されている。
このうち、膨出部526は、取付部517に当接し、膨出部527が形成された面とともに、角度調整部材52が固定部材51から外れないように、取付部517を挟持する。
また、膨出部527は、取付部517の摺動孔5171に挿入され、これにより、角度調整部材52の摺動範囲が規定される。なお、この角度調整部材52の摺動に際しては、当該角度調整部材52の光束入射側の面52Aが、面513A上を摺動することで、当該角度調整部材52の摺動時の抵抗を減少させている。
【0046】
〔支持部材の構成〕
支持部材53は、前述のように、射出側偏光板444を介してプリズム445の光束入射面に取り付けられ、光変調装置441及び角度調整部材52が取り付けられた固定部材51を支持するものである。この支持部材53は、図3に示すように、正面視略長方形状を有する板状部材であり、折曲加工された板金で形成されている。この支持部材53は、略中央に視野角補償板443を透過した光束を透過させる略長方形状の開口531が形成されている。
【0047】
また、支持部材53の四隅部分には、前述の固定部材51側に突出し、当該固定部材51の孔部5151,5161を挿通して固定部材51を支持する支持部532,533が形成されている。詳述すると、支持部材53における上端で、かつ、幅方向(左右方向)の両端に形成された一対の支持部532は、支持部材53の上下方向に長手方向を有する断面視略長方形状に形成されている。また、支持部材53における下端で、かつ、幅方向の両端に形成された一対の支持部533は、支持部材53の幅方向に長手方向を有する断面視略長方形状に形成されている。
【0048】
これら支持部532,533には、外周に接着剤が塗布された状態で、孔部5151,5161に挿入され、光変調装置441及び固定部材51のプリズム445に対する位置調整が行われつつ、当該接着剤を硬化させることで、固定部材51が支持部材53により支持される。
なお、一対の支持部532間の寸法は、前述の角度調整部材52の幅寸法より大きく設定されており、支持部材53に固定部材51を支持させた後でも、角度調整部材52を引き抜くことができるように構成されている。
【0049】
支持部材53の上下方向に沿う端縁の略中央には、当該支持部材53を射出側偏光板444に取り付ける際に、治具により押し込まれる一対の押込部534が形成されている。これら各押込部534は、固定部材51側に突出した後、当該突出方向の先端にて支持部材53の外側に延出する横断面視略L字状に形成されている。なお、このような一対の押込部534に挟まれる範囲内に、前述の開口531は形成されている。
【0050】
図8及び図9は、支持部材53における押込部534の形成位置を示す図である。換言すると、図8は、光変調装置441Gに入射する光束の光軸に沿って光学装置本体44Aを見た正面図であり、図9は、光学装置本体44Aを上方から見た平面図である。
この一対の押込部534は、図8に示すように、光変調装置441に入射する光束の光軸に沿って光学装置本体44Aを見た場合に、固定部材51の端縁から外側に突出しており、当該固定部材51に形成された凹部514を介して露出し、一部が遮光部515,516の一部を覆う。
【0051】
また、この一対の押込部534は、図9に示すように、凹部514を通過した光が、隣接する他の射出側偏光板444の側面に入射しない程度に、外側に突出している。このため、光変調装置441の開口4412A内に入射しない光のうち、凹部514を透過した光は一対の押込部534により遮られ、また、凹部514を挟む上方及び下方に入射した光は、固定部材51の遮光部515,516により遮られる。これにより、光変調装置441の外側を透過する光が、射出側偏光板444に入射することを防ぐことができる。
【0052】
特に、投射レンズ3の光束入射面に対向する位置には、光変調装置441Gが配置されており、当該光変調装置441Gに入射しなかった光が、光変調装置441R,441Bの光路後段に位置する射出側偏光板444に入射するなどして、投射レンズ3に入射した場合には、投射される画像光の他に当該光も投射されてしまうため、コントラストが低下する等の画像の劣化を引き起こす。これに対し、当該光変調装置441Gに入射しない光が、固定部材51の遮光部515,516及び支持部材53の押込部534により遮られるので、上記のような画像の劣化が生じることを防ぐことができる。
【0053】
〔光学装置本体の組立工程〕
光学装置本体44Aの組立に際しては、まず、固定部材51に対して光変調装置441をねじ固定した後、当該固定部材51に角度調整部材52を取り付ける。そして、この固定部材51を治具で把持するとともに、他の治具により、支持部材53を把持する。一方、プリズム445の光束入射面に紫外線硬化性の接着剤を塗布して、射出側偏光板444を仮固定する。次に、押込部534を押し込んで、射出側偏光板444に支持部材53を圧着させつつ、同時に、支持部材53の支持部532,533を固定部材51の孔部5151,5161に挿入させて、プリズム445に対する光変調装置441の位置調整をする。この後、接着剤を塗布した領域に紫外線を照射して、これらを接着固定する。この際、前述のように、固定部材51における孔部5151,5161と、固定部としてのねじ孔512とが同一平面上に位置するため、固定部材51における孔部5151,5161と、ねじ孔512が同一平面上にない場合と比較して、光変調装置441の調整時において、固定部材51にたわみが発生しても、プリズム445に対する光変調装置441の光軸方向のずれが生じることを防ぐことができる。
【0054】
また、孔部5151,5161と、ねじ孔512とが同一平面上にないようにすると、固定部材51を折曲加工する必要があり、曲げ加工時の公差を考慮して孔部5151,5161の孔径を大きめに設定しなくてはならない。これに対し、これらが同一平面上にあることにより、孔部5151,5161の孔径を大きく取る必要がない。よって、光変調装置441の取付精度の向上、及び、取付後の光変調装置441のずれを防ぐことができる。
【0055】
このようにして、プリズム445に対して、射出側偏光板444、支持部材53、固定部材51及び光変調装置441を固定した後、当該固定部材51に取り付けた角度調整部材52の位置調整を行う。この際、角度調整部材52の取付部525と、固定部材51の取付部517との間に、紫外線硬化性の接着剤を塗布しておき、形成される画像光のコントラストが最も高くなる位置にて、当該接着剤に対して紫外線を照射して、角度調整部材52を固定部材51に固定する。なお、角度調整部材52が誤った位置に固定されてしまった場合には、当該角度調整部材52は、一対の支持部532の間から抜き出すことができるので、固定部材51に対しての固定を解いて、再度、角度調整部材52の角度調整を行うことができる。
【0056】
以上説明した本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の効果がある。
(1)支持部材53に形成された支持部532,533は、断面視略矩形状に形成され、当該支持部532,533が挿入される固定部材51の孔部5151,5161は、当該支持部532,533に応じた略矩形状を有している。これによれば、孔部5151,5161内での支持部532,533の揺動を抑制することができる。従って、光学装置本体44Aを組み立てる時、及び、組み立てた後の固定部材51と支持部材53との位置ずれを抑制することができ、ひいては、光変調装置441とプリズム445との位置ずれを抑制することができる。
また、光変調装置を固定する固定部としてのねじ孔512と、支持部532,533が挿通する孔部5151,5161とは、固定部材51における同一平面上に形成されている。これによれば、光変調装置441の調整時において、固定部材51にたわみが発生しても、当該固定部材51に固定された光変調装置441とプリズム445との位置ずれを抑制することができる。
【0057】
(2)プリズム445の光束入射面に、射出側偏光板444を介して取り付けられる支持部材53が、固定部材51の端縁から外側に露出する一対の押込部534を備えていることにより、一対の押込部534を、光変調装置441に入射する光束の光軸方向に沿ってプリズム445に容易に押し込んで、当該プリズム445に支持部材53を圧着させることができる。また、押込部534が、支持部材53の長手方向に沿う端縁のそれぞれに形成されていることにより、それぞれに同じ荷重を加えることで、支持部材53をプリズム445に確実かつ適切に圧着させることができる。従って、プリズム445に対する支持部材53の圧着工程を簡略化することができ、ひいては、光学装置本体44Aの製造工程を簡略化することができる。
【0058】
(3)一対の押込部534の延出方向は、挿通口4412Cを介して延出する信号線の延出方向に対して直交する方向である。これによれば、当該一対の押込部534を押し込む際に、当該信号線が干渉することを防ぐことができる。従って、支持部材53のプリズム445への圧着工程を簡易に行うことができ、これにより、光学装置本体44Aの組立工程を簡略化することができる。
【0059】
(4)各押込部534は、支持部材53から固定部材51側に突出した後、先端側で支持部材53の外側に向かって延出する略L字状を有している。これによれば、他の支持部材53の押込部534が互いに干渉することを防ぐことができる。従って、プリズム445の光束入射面のそれぞれに射出側偏光板444を介して支持部材53を設けることができ、前述の光変調装置441の位置ずれ抑制の効果を、各光変調装置441で奏することができる。
【0060】
(5)一対の押込部534は、光変調装置441に入射する光束の光軸方向から光学装置本体44Aを見た場合、固定部材51に形成された一対の凹部514を介してそれぞれ露出する。これによれば、当該凹部514を介して露出した一対の押込部534を、治具等により、プリズム445に押し込みやすくすることができる。従って、射出側偏光板444を介して、支持部材53のプリズム445に対する圧着を簡易に行うことができる。
【0061】
また、光変調装置441の画像形成領域に対応する固定部材51の開口511は、一対の凹部514により挟まれる領域内に形成されている。すなわち、一対の凹部514は、光変調装置441に入射する光束の透過領域近傍に形成され、支持部材53の一対の押込部534は、当該凹部514を覆うように形成されている。また、各凹部514を挟むように、固定部材51の上下には、遮光部515,516が形成されている。これによれば、光変調装置441に入射しない光を、当該光変調装置441の外側を覆うように配置された固定部材51の遮光部515,516、及び、支持部材53の各押込部534により遮ることができる。従って、プリズム445及び隣接する他の射出側偏光板444を介して、投射レンズ3に不要な光(画像光に寄与しない光)が入射することを防ぐことができるので、投射画像が劣化することを防ぐことができる。
【0062】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0063】
図10は、前記実施形態の変形を示す図であり、固定部材51の光束射出側の面51Bに視野角補償板443を直接取り付けた構成を示す斜視図である。
前記実施形態では、光学装置本体44Aは、視野角補償板443を保持する角度調整部材52を備えるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、図10に示すように、角度調整部材52を設けずに、視野角補償板443を固定部材51の光束射出側の面51B(例えば、面513A)に直接貼付してもよい。更に、視野角補償板に限らず、他の光学素子、例えば、所定波長の色光を透過する光学フィルタ等を設けてもよい。
【0064】
前記実施形態では、支持部材53は、プリズム445の光束入射面に取り付けられた射出側偏光板444に接着固定されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、支持部材53をプリズム445の光束入射面に直接固定してもよい。このような場合、図10において示したように、固定部材51の光束射出側の面51Bに、射出側偏光板を貼付する構成とすればよい。
【0065】
前記実施形態では、支持部材53の押込部534は、他の支持部材53に隣接する端部側と、当該端部側の反対の端部側に形成されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、液晶パネル4411に接続される信号線に干渉しなければ、支持部材の上下の端部に形成してもよい。
【0066】
前記実施形態では、固定部材51は、光変調装置441に入射する光束の光軸に沿って光学装置本体44Aを見た際に、支持部材53の押込部534を露出させる凹部514が形成されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、角度調整部材52の摺動面となる延出部513の面513Aを他の構成にて形成することができれば、延出部513及び凹部514を形成する必要はない。すなわち、押込部534は、固定部材51の端縁の外側に延出していればよい。
【0067】
前記実施形態では、各光変調装置441は、それぞれ固定部材51に固定され、当該各固定部材51は、プリズム445の各光束入射面に射出側偏光板444を介して取り付けられる支持部材53により支持されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、各液晶パネル4411のうち、いずれかが固定部材51に固定され、当該固定部材51が支持部材53により支持される構成であれば、これらの数は問わない。特に緑色用の光変調装置441Gが固定部材51により保持され、当該固定部材51が支持部材53により支持される構成であれば、前述の効果を確実に奏することができる。
【0068】
前記実施形態では、プロジェクタ1は、3つの光変調装置441R,441G,441Bを備えるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、2つ以下、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも、本発明を適用可能である。
また、前記実施形態では、光学ユニット4は平面視略L字形状を有した構成を説明したが、これに限らず、例えば、平面視略U字形状を有した構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、プロジェクタに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…プロジェクタ、3…投射光学装置、44A…光学装置本体(光学装置)、51…固定部材、53…支持部材、411…光源装置(光源)、441(441R,441G,441B)…光変調装置、445…クロスダイクロイックプリズム(色合成光学装置)、512…ねじ孔(固定部)、514…凹部、532,533…支持部、534…押込部、5151,5161…孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色光を色光毎に画像情報に応じて変調する複数の光変調装置と、それぞれの前記光変調装置に対向する複数の光束入射面を有し、かつ、それぞれの前記光変調装置で変調された前記色光を合成して画像光を形成する色合成光学装置とを備えた光学装置であって、
前記光変調装置が固定される固定部材と、
前記色合成光学装置における前記固定部材に固定された前記光変調装置に対向する前記光束入射面に対応する位置に取り付けられ、かつ、前記固定部材を支持する支持部材とを、少なくともそれぞれ1つずつ備え、
前記支持部材は、折曲加工された板金で形成され、
当該支持部材は、
前記光束入射面に入射する前記色光の透過領域外で前記固定部材側に突出し、前記固定部材を支持する断面視略矩形状の複数の支持部と、
当該支持部材が支持する前記固定部材に固定される前記光変調装置に入射する前記色光の入射方向である光軸方向から見た際に、当該固定部材の端縁から外側に突出し、かつ、当該支持部材を前記色合成光学装置に押し込むための一対の押込部とを有し、
前記一対の押込部は、それぞれ前記支持部材の反対側の端部に設けられ、
前記固定部材は、
前記支持部の断面形状に応じて形成され、かつ、当該支持部が挿入される孔部と、
前記光変調装置が固定される固定部とを有し、
前記孔部と前記固定部とは、同一平面上に設けられていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記一対の押込部は、当該押込部を有する前記支持部材が保持する前記光変調装置から他の前記光変調装置に近接する側に延出していることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置において、
前記一対の押込部のそれぞれは、
前記支持部材から前記固定部材側に突出し、かつ、当該突出方向の先端側で、当該支持部材の外側に向かって延出して形成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学装置において、
前記固定部材は、
当該固定部材に固定される前記光変調装置を挟み、かつ、前記光変調装置に入射する前記色光の透過領域近傍に形成された一対の凹部を有し、
前記一対の押込部は、それぞれ前記一対の凹部に応じた位置に設けられていることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
光源と、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学装置と、当該光学装置により合成された光束を投射する投射光学装置とを備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−65033(P2013−65033A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255969(P2012−255969)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2007−254561(P2007−254561)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】