光学装置
【課題】好適な撮影を実現し得る光学装置および光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層とを含むことを特徴とする光学装置。
【解決手段】光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層とを含むことを特徴とする光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに備えられるレンズ鏡筒等の光学装置は、野外でのイベント撮影等に用いられた場合のように、太陽光のような赤外線を含む光線を多量に照射される環境下で使用される場合がある。従来技術に係る光学装置では、太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合、照射熱によって光学装置の温度が上昇するという問題が発生している。
【0003】
レンズ鏡筒等の温度上昇を防止するための従来技術としては、例えば筐体の表面に可逆感温変色層を備えた光学装置が知られている(特許文献1等参照)。しかし、従来技術に係る光学装置は、照射熱による光学装置の温度上昇を十分に抑制することができず、特に濃色の外装の場合に温度上昇を抑制することは困難であった。
【0004】
また、レンズ鏡筒のような光学装置は、撮影者等が光学装置の表面を直接手で振れて操作できるように設計されているものが多く存在する。しかし、従来技術に係る光学装置は、太陽光を照射される環境で使用される際、その輻射熱によって表面温度が上昇し、光学装置の操作が快適に行えない状態となる場合があり、問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−49370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、好適な撮影を実現し得る光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の観点に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の観点に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、例えば、前記第2反射層の層厚は、前記第1反射層の層厚より厚くてもよい。
【0011】
また、例えば、前記第1反射層と前記第2反射層は、当該第1反射層および当該第2反射層に共通する少なくとも1つの赤外線反射顔料(36)を含んでおり、
前記第2反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量は、第1反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量より多くてもよい。
【0012】
また、例えば、本発明に係る光学装置は、前記光通過領域に備えられる光学系(13)と、前記反射層よりも像側に備えられ、前記光学系の移動を操作するための操作部材(14)を含んでいてもよい。
【0013】
また、例えば、本発明に係る光学装置は、前記第1反射層および前記第2反射層が少なくとも一部に備えられた筐体部(12)と、前記反射層よりも像側に備えられ、前記筐体部を支持する支持台を取付け可能な取付部(28)を有していてもよい。
【0014】
また、例えば、前記第2反射層は、前記筐体部の物体側の端部から3分の2よりも前記物体側の領域に備えられていてもよい。
【0015】
また、例えば前記第1反射層および前記第2反射層は、塗布により形成された膜であってもよい。
【0016】
また、例えば、前記第1反射層および前記第2反射層は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有する膜であってもよい。
【0017】
また、例えば、前記第2反射層は、前記第1反射層の内側の一部に備えられていてもよい。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【図2A】図2Aは、図1に示すレンズ鏡筒における第1領域の断面図である。
【図2B】図2Bは、図1に示すレンズ鏡筒における第2領域の断面図である。
【図3A】図3Aは、図2Aに示す第1領域の表面付近の拡大図である。
【図3B】図3Bは、第2実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域の表面付近の拡大断面図である。
【図3C】図3Cは、第3実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域の表面付近の拡大断面図である。
【図4】図4は、反射層に光が照射された場合の照射光波長と反射率との関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るレンズフードの全体図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る支持台取付部の全体図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るカメラの全体図である。
【図8】図8は、本発明のその他の実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒10の全体図である。レンズ鏡筒10は、レンズ鏡筒10の外周を構成する筐体12を有している。筐体12は、無底の略円筒形状を有しており、略円筒形状の筐体12の中心軸Lに沿う方向に、光が通過可能な光通過領域15が形成されている。
【0021】
筐体12の内部に形成されている光通過領域15には、光学レンズ群13が備えられている。光学レンズ群13は、レンズ鏡筒10の一方の端部である被写体側の端部12aから入射した光を、レンズ鏡筒10の他方の端部である撮像面側の端部12bに、出射することができる。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、被写体側から入射した光の像を、当該光を撮像面側に出射した後の所定の位置で、形成することができる。
【0022】
レンズ鏡筒10の外周を形成する筐体12の撮像面側の端部12bには、不図示のカメラ本体部が取り付けられる。カメラ本体部は、レンズ鏡筒10に備えられる光学レンズ群13によって形成される光の像を記録する記録媒体等を有する。また、筐体12の被写体側の端部12aには、レンズ鏡筒10の光通過領域15に不要な光が入射することを防止するために、図5に示すようなレンズフード50を取り付けることができる。
【0023】
なお、実施形態では主としてレンズ鏡筒10を例に挙げて説明を行うが、本発明に係る光学装置としてはこれに限定されない。本発明に係る光学装置としては、レンズ鏡筒の他に、例えばレンズフード、カメラボディおよびカメラ(レンズ鏡筒とカメラとが一体化したもの)等が挙げられる。また、本発明に係る光学装置はスチルカメラや、スチルカメラに備えられるレンズ鏡筒に限定されるものではなく、ビデオカメラ、テレコンバータ、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡を含む。
【0024】
図1に示すレンズ鏡筒10は、筐体12を支持する支持台を取付け可能な支持台取付部16を有する。支持台取付部16は、レンズ鏡筒10の筐体12を挿通させるリング部17と、三脚等の支持台を取付けるための支持台固定孔28が形成されている座部18とを有する。また、支持台取付部16のリング部17には、筐体12に対して支持台取付部16を固定するための取付ねじ19が備えられている。また、筐体12には、焦点距離等の情報を表示するための表示器20が備えられている。表示器20は、例えば、撮影者がカメラを正位置に構えたとき、筐体12の上方に位置するように配置されている。
【0025】
また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒10に備えられる光学レンズ群13の焦点調整を行うための回転環14が取り付けられている。回転環14は、光学レンズ群13を構成する焦点調整レンズの移動を操作するための操作部材である。レンズ鏡筒10およびカメラ等を使用する撮影者は、回転環14を回転させることによって、光学レンズ群13の一部である焦点調整レンズの移動を操作し、レンズ鏡筒10の焦点調整を行うことができる。
【0026】
なお、レンズ鏡筒10に取り付けられる回転環14は、本実施形態のように光学レンズ群13の焦点調整を行ういわゆるフォーカス環に限られない。例えば、光学レンズ群13と撮像面の焦点距離を調整するズーム環や、光学レンズ群13を透過する光の量を調整する絞り環等であってもよい。
【0027】
筐体12には、赤外線の反射率が互いに異なる第1領域24(図1において斜線でハッチングを施した部分)と第2領域26が形成されている。後述のように、第1領域24には第1反射層と第2反射層とが備えられており、第2領域26には第1反射層が備えられている。
【0028】
本実施形態のレンズ鏡筒10に備えられる筐体12は、筐体12の中心軸Lに沿って、回転環14より被写体側に第1領域24を有し、回転環14より撮像面側に第2領域26を有する。第1領域24には、図2Aに示すように、筐体本体部30の外周面に沿って第1反射層32と第2反射層33とが備えられる。それに対して、第2領域26には、図2Bに示すように、筐体本体部30の外周面に沿って第1反射層32のみが備えられる。
【0029】
図2Aは、図1におけるIIA−IIA線に沿う断面図であり、筐体12の第1領域24の断面を表している。なお、筐体本体部30の内側に備えられる光学レンズ群13等については、図示を省略している。
【0030】
図2Aに示すように、第1領域24では、光通過領域15が内部に備えられる筐体12の外側表面に、第1反射層32が備えられる。さらに、第1反射層32の内側には第2反射層33が備えられており、第2反射層33の内側には筐体本体部30が備えられる。
【0031】
第1実施形態に係る第1反射層32は、図3Aに示すように、塗膜aによって構成されている。塗膜aは、図4に示すように、可視光領域(波長400nm以上800nm以下)の光の反射率が約10%で、Lab表色系における明度Lが40未満であり、黒色に近い色に見える塗膜である。また、塗膜aは、赤外線領域(波長900nm以上1700nm未満)の光の反射率が、約40%である。
【0032】
塗膜aは、黒色に近い色に見える塗膜であるが、同程度の明度を有する他の塗膜(例えば塗膜d)に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。すなわち、可視領域の光の反射率については、塗膜aも、塗膜dもほぼ同等であり、約10%の反射率を有している。しかし、赤外線領域の光の反射率については、塗膜dが可視光領域とほぼ同じの約10%の反射率しか有しないのに対して、塗膜aは、可視光領域の光の反射率より30%程度高い約40%の反射率を有する。
【0033】
第1反射層32に用いられる塗膜としては、塗膜aのように、赤外線領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率より10%以上高いことが好ましく、20%以上高いことがさらに好ましい。ここで、塗膜の反射率のうち、赤外線領域の光の反射率は、以下の式1を用いて表される。
【0034】
【数1】
【0035】
数式1において、Rλ(i)は各波長λ(i)の光の反射率、λ(i)はλ(1)=900,λ(2)=910,λ(3)=920,・・・λ(n)=1700nmとする。
【0036】
また、塗膜の反射率のうち、可視光領域の光の反射率は、以下の式2を用いて表される。
【0037】
【数2】
【0038】
数式2において、Rλ(i)は各波長λ(i)の光の反射率、λ(i)はλ(1)=400,λ(2)=410,λ(3)=420,・・・λ(n)=800nmとする。
【0039】
図3Aに示すように、塗膜aは、塗膜aの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。赤外線反射顔料36は、例えば、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有し、赤外線の反射率が高い。また、赤外線反射顔料36の形状としては特に限定されないが、板状もしくは箱形形状を有することが、第1反射層32に入射した赤外線を効率的に反射するために好ましい。
【0040】
図2Aに示すように、筐体12の第1領域24では、第1反射層32の内側に第2反射層33が備えられる。第2反射層33は、図3Aに示すように、塗膜cによって構成されている。塗膜cは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約65%で、Lab表色系における明度Lが70以上であり、白色に近い色に見える塗膜である。また、塗膜cは、赤外線領域の光の反射率が、約85%である。
【0041】
塗膜cは、白色に近い色に見える塗膜であるが、塗膜aと同様に、塗膜cと同程度の明度を有する他の塗膜に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。また、塗膜cは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率より約20%高い。
【0042】
さらに、塗膜cは、図3に示すように、塗膜cの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。本実施形態において、塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36は、塗膜aに含まれる赤外線反射顔料36と同じ顔料である。塗膜aおよび塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36の量としては、特に限定されないが、塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36の量は、塗膜aに含まれる赤外線反射顔料36の量より多いことが好ましい。これによって、図1に示す筐体12の外側表面の色を変化させることなく、第1領域24の反射率を高めることができる。
【0043】
図2Bは、図1におけるIIB−IIB線に沿う断面図であり、筐体12の第2領域26の断面を表している。なお、筐体本体部30の内側に備えられる光学レンズ群13等については、図示を省略している。
【0044】
図2Bに示すように、第2領域26では、第1領域24と同様に、光通過領域15が内部に備えられる筐体12の最外側表面に、第1反射層32が備えられる。しかし、第1反射層32の内側には、第2反射層33が備えられておらず、第1反射層32の内側には、筐体本体部30が備えられる。
【0045】
図2A等において説明したように、第1反射層32は、塗膜aによって構成されている。塗膜aは、黒色に近い色に見える塗膜であるが、先述のように、同程度の明度を有する他の塗膜(例えば塗膜d)に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0046】
筐体12の外周面に沿って備えられる第1反射層32および第2反射層33は、例えば、塗膜aおよび塗膜cの原料となる塗料を塗布することによって形成される。図2Aに示す第1領域24を形成する場合、最初に、筐体本体部30の外側表面に塗膜cからなる第2反射層33を形成し(図3A)、さらに塗膜cの上に塗膜aからなる第1反射層32を形成する。また、図2Bに示す第2領域26を形成する場合は、筐体本体部30の外側表面に塗膜cを形成する。なお、筐体本体部30は、Mg,Al等を含む金属材料や、ポリカーボネイト等の樹脂材料によって形成されている。
【0047】
本実施形態に係るレンズ鏡筒10においては、図2Aおよび図2Bに示すように、第1領域24と第2領域26の両方が、第1反射層32を有する。そのため、レンズ鏡筒10は、筐体12の外側表面全体に、第1反射層32を備える。第1反射層32は、Lab表色系における明度Lが40未満であり黒色に近い色に見える塗膜aによって構成されており、また、赤外線領域の光の反射率が30%以上であり同程度の明度を有する他の塗膜に比べて物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0048】
したがって、例えば太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合でも、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、第1反射層32が赤外線を反射することによって、筐体12の温度が上昇することを、効果的に防止することができる。また、筐体12の温度上昇が防止されるため、レンズ鏡筒10を使用する撮影者等は、レンズ鏡筒10の表面を直接手で振れながら、レンズ鏡筒10を快適に操作することができる。
【0049】
また、第1反射層32を構成する塗膜aは、Lab表色系における明度Lが40未満であり、黒色に近い色に見える。筐体12の外側表面は、第1反射層32の色である黒色に近い色に見えるため、筐体12は、白色等の明度Lが高い塗膜を備える筐体12より目立ちにくい。したがって、黒色に近い色に見える筐体12を備えるレンズ鏡筒10は、スポーツ競技等の撮影に用いられる場合であっても、観客のスポーツ観戦等の妨げになりにくい。
【0050】
さらに、筐体12の第1領域24には、図2Aに示すように、第1反射層32に加えて、第1反射層32の内側に第2反射層33が備えられる。第2反射層33は、Lab表色系における明度Lが70以上であり白色に近い色に見える塗膜cによって構成されており、また、赤外線領域の光の反射率が70%以上であり同程度の明度を有する他の塗膜に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0051】
ここで、第2反射層33は、Lab表色系における明度Lが高い(70以上である)塗膜cで構成されているため、明度Lの低い(40未満である)塗膜aで構成される第1反射層32に比べて、赤外線の反射率が高い。このように、図3Aに示す第1領域24には、第1反射層32の内側に、第1反射層32より赤外線の反射率が高い第2反射層33備えられる。すなわち、第2反射層33が、当該第2反射層33に入射した赤外線を、第1反射層32より高い反射率で反射することによって、筐体12の温度上昇を効果的に防止することができる。
【0052】
また、第2反射層33は、第1反射層32の内側に備えられるため、筐体12の外側表面の色(外見の色)に与える影響が少ない。したがって、第1領域24は、第2領域26に対して、筐体12の外側表面の色(外見の色)が略同一であるにもかかわらず、赤外線反射率が高い。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、明度Lの高い塗膜cによって構成される第2反射層33を有しているにもかかわらず、第2反射層33は第1反射層32の内側に備えられるため、筐体12の外側表面の色の明度が低く、目立ちにくいという特徴を有する。
【0053】
ここで、明度Lの低い塗膜は、可視光領域の光の反射率が低く、また、一般的には、赤外線領域の光の反射率も低い傾向にある。そのため、明度Lの低い塗膜の場合、たとえ赤外線反射顔料36を添加しても、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高い塗膜を得ることが難しい。その反対に、明度Lの高い塗膜では、可視光領域の光の反射率が高く、また、一般的には、赤外線領域の光の反射率も高い傾向にある。そのため、明度Lの高い塗膜の場合、比較的容易に赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高い塗膜を得られる。本実施形態に係る第1領域24では、図3Aに示すように、明度Lの低い塗膜(塗膜a)の内側に、明度Lの高い塗膜(塗膜c)を形成することによって、外側表面が黒色に近い色に見えるにもかかわらず、赤外線領域の光を効果的に反射し、遮熱性の高い筐体12を実現している。
【0054】
また、第2反射層33は、筐体12の外側表面の色(外見の色)に与える影響が少ないため、第1反射層32より多くの赤外線反射顔料36を含んでいても良い。これによって、図1に示す筐体12の最外周面の色を変化させることなく、第1領域24の反射率を高めることができ、筐体12の温度上昇を抑制することができる。また、第2反射層33の膜厚は、第2反射層33の膜厚より厚くても良い。赤外線の反射率が第1反射層32より第2反射層33を厚くすることによって、赤外線をより多く反射し、筐体12の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0055】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒10では、第2反射層33を有する第1領域24が、筐体12の被写体側の領域に備えられている。したがって、レンズ鏡筒10は、撮影者が直接手で触れやすい部分である筐体12の被写体側の部分について、筐体12の温度上昇を効果的に防止することができる。例えば、第1領域24は、筐体12の被写体側の端部12aから3分の2よりも被写体側の部分に備えられることが好ましい。
【0056】
野外での撮影に好適に用いられる望遠レンズ等のレンズ鏡筒10は、重量が大きいものも多い。したがって、このようなレンズ鏡筒10を用いる撮影者等は、筐体12の被写体側部分に片手を添えた状態で、撮影が行うことが多いからである。また、レンズ鏡筒10に備えられる回転環14は、撮影者の手元に近い側に配置したほうが操作し易いため、第1領域24より撮像面側に備えられることが好ましい。
【0057】
またレンズ鏡筒10は、レンズ鏡筒10に備えられた支持台取付部16に三脚等の支持台を取り付けて、レンズ鏡筒10を三脚等によって支持した状態で用いられる場合もある。このような場合、撮影者等は、筐体12の被写体側部分を一方の手で触り、他方の手をカメラのレリーズボタンに添えることによってレンズ鏡筒10を両手で保持し、レンズ鏡筒10を安定させた状態で撮影を行うことが多い。図1に示すレンズ鏡筒10は、支持台取付部16より被写体側に第1領域24が備えられるため、レンズ鏡筒10における被写体側の部分の温度上昇を効果的に防止することができる。したがって、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、このような使用に適している。
【0058】
本実施形態において、第2反射層33は、第1領域24のみに備えられるのに対して、第1反射層32は、第1領域24と第2領域26の両方に備えられる。このように、第2反射層33は、第1反射層32が備えられる領域の一部に備えられてもよく、例えば、筐体12の内部にモータまたは電子基板等の発熱源が設置されている位置から離間するように備えられていてもよい。これによって、レンズ鏡筒10は、筐体12の内部で発生した赤外線(放射熱)を、第2反射層33が備えられておらず比較的赤外線の反射率の低い第2領域26から放出することによって、筐体14の温度上昇を抑制できる。
【0059】
第2実施形態
第1実施形態に係るレンズ鏡筒10における第1領域24は、図3Aに示すように、塗膜aによって構成される第1反射層32と、塗膜cによって構成される第2反射層33とを有する。しかし、第1領域に備えられる第1反射層および第2反射層としては、これに限定されない。
【0060】
図3Bは、第2実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域24aの表面付近を拡大した拡大断面図である。第2実施形態に係る第1領域24aでは、筐体12の外側表面に、塗膜bによって構成される第1反射層32aが備えられている。さらに、第1反射層32aの内側に、塗膜cによって構成される第2反射層33備えられている。なお、第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1反射層を構成する塗膜が異なる他は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様である。
【0061】
第1反射層32aを構成する塗膜bは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約25%で、Lab表色系における明度が40以上70未満である。また、塗膜bは、赤外線領域の光の反射率が、約60%である。塗膜bは、第2反射層33を構成する塗膜cと同様に、塗膜bと同程度の明度を有する他の一般的な塗膜に比べて、赤外線領域の光の反射率が高い。また、塗膜bは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率(約25%)より約35%高い。さらに、塗膜bは、図3に示すように、塗膜bの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。
【0062】
したがって、第1領域24aも、第1実施形態における第1領域24と同様に、相対的に明度Lの低い塗膜(塗膜b)の内側に、明度Lの高い塗膜(塗膜c)を備える。これにより、第1領域24aを備える筐体は、外側表面の色の明度Lが低いにもかかわらず、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高く、遮熱性の高い筐体を実現できる。また、第1領域24aを備える第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様の効果を有する。
【0063】
第3実施形態
図3Cは、第3実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域24bの表面付近を拡大した拡大断面図である。第3実施形態に係る第1領域24bでは、筐体の外側表面に、塗膜aによって構成される第1反射層32が備えられている。さらに、第1反射層32の内側に、塗膜bによって構成される第2反射層33bが備えられている。なお、第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、第2反射層を構成する塗膜が異なる他は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様である。
【0064】
第2反射層33bを構成する塗膜bは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約25%で、Lab表色系における明度が40以上70未満である。また、塗膜bは、赤外線領域の光の反射率が、約60%である。塗膜bは、第1反射層32を構成する塗膜aと同様に、塗膜bと同程度の明度を有する他の一般的な塗膜に比べて、赤外線領域の光を反射する反射率が高い。また、塗膜bは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率(約25%)より約35%高い。さらに、塗膜bは、図3に示すように、塗膜bの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。
【0065】
したがって、図3Cに示す第1領域24bも、第1実施形態における第1領域24と同様に、明度Lの低い塗膜(塗膜a)の内側に、相対的に明度Lの高い塗膜(塗膜b)を備える。したがって、第1領域24bを備える筐体は、外側表面の色の明度Lが低いにもかかわらず、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高く、遮熱性の高い筐体を実現している。また、第1領域24bを備える第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様の効果を有する。
【0066】
その他の実施形態
第1反射層32および第2反射層33を構成する塗膜は、図4に示す、塗膜a〜cのように、赤外線領域(波長900nm〜1700nm)の光に対して、略一定反射率を有していても良いが、これに限定されない。たとえば、塗膜eにように、一部の波長の光に対して反射率が低くても、数式1で示す赤外線の反射率が、数式2で示す可視光の反射率に対して高いものであれば、第1反射層32および第2反射層33を構成する塗膜として好適である。
【0067】
上述の実施形態で説明した第1領域24,24a,24bが備えられる筐体としては、図1に示すレンズ鏡筒10の筐体12に限られない。例えば、図5に示すように、第1領域24,24a,24bは、レンズフード50の筐体51に備えられてもよい。これによって、レンズフード50は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体51の温度が上昇することを抑制することができる。
【0068】
また、図6に示すように、第1領域24,24a,24bは、支持台取付部54の筐体55に備えられてもよい。これによって、レンズフード50は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体55の温度が上昇することを抑制することができる。あるいは、図7に示すように、第1領域24,24a,24bは、レリーズボタン59等を有するカメラ61の筐体57に備えられてもよい。これによって、カメラ61は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体57の温度が上昇することを抑制することができる。
【0069】
また、第1反射層32及び第2反射層33とが備えられた第1領域24は、任意の位置に配置できる。例えば、図8に示すように、レンズ鏡筒10の筐体12のうち、回転環14及び表示器20を除く全ての部分に第1領域24を配置してもよい。また、第1反射層32および第2反射層33は、塗膜に限られず、蒸着等によって形成された薄膜その他の膜であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10… レンズ鏡筒
12,51,55,57… 筐体
13… 光学レンズ群
15… 光通過領域
14… 回転環
16,54… 支持台取付部
24,24a,24b… 第1領域
26… 第2領域
32,32a… 第1反射層
33,33b… 第2反射層
36… 赤外線反射顔料
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに備えられるレンズ鏡筒等の光学装置は、野外でのイベント撮影等に用いられた場合のように、太陽光のような赤外線を含む光線を多量に照射される環境下で使用される場合がある。従来技術に係る光学装置では、太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合、照射熱によって光学装置の温度が上昇するという問題が発生している。
【0003】
レンズ鏡筒等の温度上昇を防止するための従来技術としては、例えば筐体の表面に可逆感温変色層を備えた光学装置が知られている(特許文献1等参照)。しかし、従来技術に係る光学装置は、照射熱による光学装置の温度上昇を十分に抑制することができず、特に濃色の外装の場合に温度上昇を抑制することは困難であった。
【0004】
また、レンズ鏡筒のような光学装置は、撮影者等が光学装置の表面を直接手で振れて操作できるように設計されているものが多く存在する。しかし、従来技術に係る光学装置は、太陽光を照射される環境で使用される際、その輻射熱によって表面温度が上昇し、光学装置の操作が快適に行えない状態となる場合があり、問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−49370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、好適な撮影を実現し得る光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の観点に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の観点に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(15)の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層(32,32a)と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第2反射層(33,33b)とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、例えば、前記第2反射層の層厚は、前記第1反射層の層厚より厚くてもよい。
【0011】
また、例えば、前記第1反射層と前記第2反射層は、当該第1反射層および当該第2反射層に共通する少なくとも1つの赤外線反射顔料(36)を含んでおり、
前記第2反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量は、第1反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量より多くてもよい。
【0012】
また、例えば、本発明に係る光学装置は、前記光通過領域に備えられる光学系(13)と、前記反射層よりも像側に備えられ、前記光学系の移動を操作するための操作部材(14)を含んでいてもよい。
【0013】
また、例えば、本発明に係る光学装置は、前記第1反射層および前記第2反射層が少なくとも一部に備えられた筐体部(12)と、前記反射層よりも像側に備えられ、前記筐体部を支持する支持台を取付け可能な取付部(28)を有していてもよい。
【0014】
また、例えば、前記第2反射層は、前記筐体部の物体側の端部から3分の2よりも前記物体側の領域に備えられていてもよい。
【0015】
また、例えば前記第1反射層および前記第2反射層は、塗布により形成された膜であってもよい。
【0016】
また、例えば、前記第1反射層および前記第2反射層は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有する膜であってもよい。
【0017】
また、例えば、前記第2反射層は、前記第1反射層の内側の一部に備えられていてもよい。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【図2A】図2Aは、図1に示すレンズ鏡筒における第1領域の断面図である。
【図2B】図2Bは、図1に示すレンズ鏡筒における第2領域の断面図である。
【図3A】図3Aは、図2Aに示す第1領域の表面付近の拡大図である。
【図3B】図3Bは、第2実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域の表面付近の拡大断面図である。
【図3C】図3Cは、第3実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域の表面付近の拡大断面図である。
【図4】図4は、反射層に光が照射された場合の照射光波長と反射率との関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るレンズフードの全体図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る支持台取付部の全体図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るカメラの全体図である。
【図8】図8は、本発明のその他の実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒10の全体図である。レンズ鏡筒10は、レンズ鏡筒10の外周を構成する筐体12を有している。筐体12は、無底の略円筒形状を有しており、略円筒形状の筐体12の中心軸Lに沿う方向に、光が通過可能な光通過領域15が形成されている。
【0021】
筐体12の内部に形成されている光通過領域15には、光学レンズ群13が備えられている。光学レンズ群13は、レンズ鏡筒10の一方の端部である被写体側の端部12aから入射した光を、レンズ鏡筒10の他方の端部である撮像面側の端部12bに、出射することができる。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、被写体側から入射した光の像を、当該光を撮像面側に出射した後の所定の位置で、形成することができる。
【0022】
レンズ鏡筒10の外周を形成する筐体12の撮像面側の端部12bには、不図示のカメラ本体部が取り付けられる。カメラ本体部は、レンズ鏡筒10に備えられる光学レンズ群13によって形成される光の像を記録する記録媒体等を有する。また、筐体12の被写体側の端部12aには、レンズ鏡筒10の光通過領域15に不要な光が入射することを防止するために、図5に示すようなレンズフード50を取り付けることができる。
【0023】
なお、実施形態では主としてレンズ鏡筒10を例に挙げて説明を行うが、本発明に係る光学装置としてはこれに限定されない。本発明に係る光学装置としては、レンズ鏡筒の他に、例えばレンズフード、カメラボディおよびカメラ(レンズ鏡筒とカメラとが一体化したもの)等が挙げられる。また、本発明に係る光学装置はスチルカメラや、スチルカメラに備えられるレンズ鏡筒に限定されるものではなく、ビデオカメラ、テレコンバータ、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡を含む。
【0024】
図1に示すレンズ鏡筒10は、筐体12を支持する支持台を取付け可能な支持台取付部16を有する。支持台取付部16は、レンズ鏡筒10の筐体12を挿通させるリング部17と、三脚等の支持台を取付けるための支持台固定孔28が形成されている座部18とを有する。また、支持台取付部16のリング部17には、筐体12に対して支持台取付部16を固定するための取付ねじ19が備えられている。また、筐体12には、焦点距離等の情報を表示するための表示器20が備えられている。表示器20は、例えば、撮影者がカメラを正位置に構えたとき、筐体12の上方に位置するように配置されている。
【0025】
また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒10に備えられる光学レンズ群13の焦点調整を行うための回転環14が取り付けられている。回転環14は、光学レンズ群13を構成する焦点調整レンズの移動を操作するための操作部材である。レンズ鏡筒10およびカメラ等を使用する撮影者は、回転環14を回転させることによって、光学レンズ群13の一部である焦点調整レンズの移動を操作し、レンズ鏡筒10の焦点調整を行うことができる。
【0026】
なお、レンズ鏡筒10に取り付けられる回転環14は、本実施形態のように光学レンズ群13の焦点調整を行ういわゆるフォーカス環に限られない。例えば、光学レンズ群13と撮像面の焦点距離を調整するズーム環や、光学レンズ群13を透過する光の量を調整する絞り環等であってもよい。
【0027】
筐体12には、赤外線の反射率が互いに異なる第1領域24(図1において斜線でハッチングを施した部分)と第2領域26が形成されている。後述のように、第1領域24には第1反射層と第2反射層とが備えられており、第2領域26には第1反射層が備えられている。
【0028】
本実施形態のレンズ鏡筒10に備えられる筐体12は、筐体12の中心軸Lに沿って、回転環14より被写体側に第1領域24を有し、回転環14より撮像面側に第2領域26を有する。第1領域24には、図2Aに示すように、筐体本体部30の外周面に沿って第1反射層32と第2反射層33とが備えられる。それに対して、第2領域26には、図2Bに示すように、筐体本体部30の外周面に沿って第1反射層32のみが備えられる。
【0029】
図2Aは、図1におけるIIA−IIA線に沿う断面図であり、筐体12の第1領域24の断面を表している。なお、筐体本体部30の内側に備えられる光学レンズ群13等については、図示を省略している。
【0030】
図2Aに示すように、第1領域24では、光通過領域15が内部に備えられる筐体12の外側表面に、第1反射層32が備えられる。さらに、第1反射層32の内側には第2反射層33が備えられており、第2反射層33の内側には筐体本体部30が備えられる。
【0031】
第1実施形態に係る第1反射層32は、図3Aに示すように、塗膜aによって構成されている。塗膜aは、図4に示すように、可視光領域(波長400nm以上800nm以下)の光の反射率が約10%で、Lab表色系における明度Lが40未満であり、黒色に近い色に見える塗膜である。また、塗膜aは、赤外線領域(波長900nm以上1700nm未満)の光の反射率が、約40%である。
【0032】
塗膜aは、黒色に近い色に見える塗膜であるが、同程度の明度を有する他の塗膜(例えば塗膜d)に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。すなわち、可視領域の光の反射率については、塗膜aも、塗膜dもほぼ同等であり、約10%の反射率を有している。しかし、赤外線領域の光の反射率については、塗膜dが可視光領域とほぼ同じの約10%の反射率しか有しないのに対して、塗膜aは、可視光領域の光の反射率より30%程度高い約40%の反射率を有する。
【0033】
第1反射層32に用いられる塗膜としては、塗膜aのように、赤外線領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率より10%以上高いことが好ましく、20%以上高いことがさらに好ましい。ここで、塗膜の反射率のうち、赤外線領域の光の反射率は、以下の式1を用いて表される。
【0034】
【数1】
【0035】
数式1において、Rλ(i)は各波長λ(i)の光の反射率、λ(i)はλ(1)=900,λ(2)=910,λ(3)=920,・・・λ(n)=1700nmとする。
【0036】
また、塗膜の反射率のうち、可視光領域の光の反射率は、以下の式2を用いて表される。
【0037】
【数2】
【0038】
数式2において、Rλ(i)は各波長λ(i)の光の反射率、λ(i)はλ(1)=400,λ(2)=410,λ(3)=420,・・・λ(n)=800nmとする。
【0039】
図3Aに示すように、塗膜aは、塗膜aの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。赤外線反射顔料36は、例えば、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有し、赤外線の反射率が高い。また、赤外線反射顔料36の形状としては特に限定されないが、板状もしくは箱形形状を有することが、第1反射層32に入射した赤外線を効率的に反射するために好ましい。
【0040】
図2Aに示すように、筐体12の第1領域24では、第1反射層32の内側に第2反射層33が備えられる。第2反射層33は、図3Aに示すように、塗膜cによって構成されている。塗膜cは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約65%で、Lab表色系における明度Lが70以上であり、白色に近い色に見える塗膜である。また、塗膜cは、赤外線領域の光の反射率が、約85%である。
【0041】
塗膜cは、白色に近い色に見える塗膜であるが、塗膜aと同様に、塗膜cと同程度の明度を有する他の塗膜に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。また、塗膜cは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率より約20%高い。
【0042】
さらに、塗膜cは、図3に示すように、塗膜cの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。本実施形態において、塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36は、塗膜aに含まれる赤外線反射顔料36と同じ顔料である。塗膜aおよび塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36の量としては、特に限定されないが、塗膜cに含まれる赤外線反射顔料36の量は、塗膜aに含まれる赤外線反射顔料36の量より多いことが好ましい。これによって、図1に示す筐体12の外側表面の色を変化させることなく、第1領域24の反射率を高めることができる。
【0043】
図2Bは、図1におけるIIB−IIB線に沿う断面図であり、筐体12の第2領域26の断面を表している。なお、筐体本体部30の内側に備えられる光学レンズ群13等については、図示を省略している。
【0044】
図2Bに示すように、第2領域26では、第1領域24と同様に、光通過領域15が内部に備えられる筐体12の最外側表面に、第1反射層32が備えられる。しかし、第1反射層32の内側には、第2反射層33が備えられておらず、第1反射層32の内側には、筐体本体部30が備えられる。
【0045】
図2A等において説明したように、第1反射層32は、塗膜aによって構成されている。塗膜aは、黒色に近い色に見える塗膜であるが、先述のように、同程度の明度を有する他の塗膜(例えば塗膜d)に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0046】
筐体12の外周面に沿って備えられる第1反射層32および第2反射層33は、例えば、塗膜aおよび塗膜cの原料となる塗料を塗布することによって形成される。図2Aに示す第1領域24を形成する場合、最初に、筐体本体部30の外側表面に塗膜cからなる第2反射層33を形成し(図3A)、さらに塗膜cの上に塗膜aからなる第1反射層32を形成する。また、図2Bに示す第2領域26を形成する場合は、筐体本体部30の外側表面に塗膜cを形成する。なお、筐体本体部30は、Mg,Al等を含む金属材料や、ポリカーボネイト等の樹脂材料によって形成されている。
【0047】
本実施形態に係るレンズ鏡筒10においては、図2Aおよび図2Bに示すように、第1領域24と第2領域26の両方が、第1反射層32を有する。そのため、レンズ鏡筒10は、筐体12の外側表面全体に、第1反射層32を備える。第1反射層32は、Lab表色系における明度Lが40未満であり黒色に近い色に見える塗膜aによって構成されており、また、赤外線領域の光の反射率が30%以上であり同程度の明度を有する他の塗膜に比べて物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0048】
したがって、例えば太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合でも、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、第1反射層32が赤外線を反射することによって、筐体12の温度が上昇することを、効果的に防止することができる。また、筐体12の温度上昇が防止されるため、レンズ鏡筒10を使用する撮影者等は、レンズ鏡筒10の表面を直接手で振れながら、レンズ鏡筒10を快適に操作することができる。
【0049】
また、第1反射層32を構成する塗膜aは、Lab表色系における明度Lが40未満であり、黒色に近い色に見える。筐体12の外側表面は、第1反射層32の色である黒色に近い色に見えるため、筐体12は、白色等の明度Lが高い塗膜を備える筐体12より目立ちにくい。したがって、黒色に近い色に見える筐体12を備えるレンズ鏡筒10は、スポーツ競技等の撮影に用いられる場合であっても、観客のスポーツ観戦等の妨げになりにくい。
【0050】
さらに、筐体12の第1領域24には、図2Aに示すように、第1反射層32に加えて、第1反射層32の内側に第2反射層33が備えられる。第2反射層33は、Lab表色系における明度Lが70以上であり白色に近い色に見える塗膜cによって構成されており、また、赤外線領域の光の反射率が70%以上であり同程度の明度を有する他の塗膜に比べて、物体に熱エネルギーを与える赤外領域の光を反射する反射率が高い。
【0051】
ここで、第2反射層33は、Lab表色系における明度Lが高い(70以上である)塗膜cで構成されているため、明度Lの低い(40未満である)塗膜aで構成される第1反射層32に比べて、赤外線の反射率が高い。このように、図3Aに示す第1領域24には、第1反射層32の内側に、第1反射層32より赤外線の反射率が高い第2反射層33備えられる。すなわち、第2反射層33が、当該第2反射層33に入射した赤外線を、第1反射層32より高い反射率で反射することによって、筐体12の温度上昇を効果的に防止することができる。
【0052】
また、第2反射層33は、第1反射層32の内側に備えられるため、筐体12の外側表面の色(外見の色)に与える影響が少ない。したがって、第1領域24は、第2領域26に対して、筐体12の外側表面の色(外見の色)が略同一であるにもかかわらず、赤外線反射率が高い。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、明度Lの高い塗膜cによって構成される第2反射層33を有しているにもかかわらず、第2反射層33は第1反射層32の内側に備えられるため、筐体12の外側表面の色の明度が低く、目立ちにくいという特徴を有する。
【0053】
ここで、明度Lの低い塗膜は、可視光領域の光の反射率が低く、また、一般的には、赤外線領域の光の反射率も低い傾向にある。そのため、明度Lの低い塗膜の場合、たとえ赤外線反射顔料36を添加しても、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高い塗膜を得ることが難しい。その反対に、明度Lの高い塗膜では、可視光領域の光の反射率が高く、また、一般的には、赤外線領域の光の反射率も高い傾向にある。そのため、明度Lの高い塗膜の場合、比較的容易に赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高い塗膜を得られる。本実施形態に係る第1領域24では、図3Aに示すように、明度Lの低い塗膜(塗膜a)の内側に、明度Lの高い塗膜(塗膜c)を形成することによって、外側表面が黒色に近い色に見えるにもかかわらず、赤外線領域の光を効果的に反射し、遮熱性の高い筐体12を実現している。
【0054】
また、第2反射層33は、筐体12の外側表面の色(外見の色)に与える影響が少ないため、第1反射層32より多くの赤外線反射顔料36を含んでいても良い。これによって、図1に示す筐体12の最外周面の色を変化させることなく、第1領域24の反射率を高めることができ、筐体12の温度上昇を抑制することができる。また、第2反射層33の膜厚は、第2反射層33の膜厚より厚くても良い。赤外線の反射率が第1反射層32より第2反射層33を厚くすることによって、赤外線をより多く反射し、筐体12の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0055】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒10では、第2反射層33を有する第1領域24が、筐体12の被写体側の領域に備えられている。したがって、レンズ鏡筒10は、撮影者が直接手で触れやすい部分である筐体12の被写体側の部分について、筐体12の温度上昇を効果的に防止することができる。例えば、第1領域24は、筐体12の被写体側の端部12aから3分の2よりも被写体側の部分に備えられることが好ましい。
【0056】
野外での撮影に好適に用いられる望遠レンズ等のレンズ鏡筒10は、重量が大きいものも多い。したがって、このようなレンズ鏡筒10を用いる撮影者等は、筐体12の被写体側部分に片手を添えた状態で、撮影が行うことが多いからである。また、レンズ鏡筒10に備えられる回転環14は、撮影者の手元に近い側に配置したほうが操作し易いため、第1領域24より撮像面側に備えられることが好ましい。
【0057】
またレンズ鏡筒10は、レンズ鏡筒10に備えられた支持台取付部16に三脚等の支持台を取り付けて、レンズ鏡筒10を三脚等によって支持した状態で用いられる場合もある。このような場合、撮影者等は、筐体12の被写体側部分を一方の手で触り、他方の手をカメラのレリーズボタンに添えることによってレンズ鏡筒10を両手で保持し、レンズ鏡筒10を安定させた状態で撮影を行うことが多い。図1に示すレンズ鏡筒10は、支持台取付部16より被写体側に第1領域24が備えられるため、レンズ鏡筒10における被写体側の部分の温度上昇を効果的に防止することができる。したがって、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、このような使用に適している。
【0058】
本実施形態において、第2反射層33は、第1領域24のみに備えられるのに対して、第1反射層32は、第1領域24と第2領域26の両方に備えられる。このように、第2反射層33は、第1反射層32が備えられる領域の一部に備えられてもよく、例えば、筐体12の内部にモータまたは電子基板等の発熱源が設置されている位置から離間するように備えられていてもよい。これによって、レンズ鏡筒10は、筐体12の内部で発生した赤外線(放射熱)を、第2反射層33が備えられておらず比較的赤外線の反射率の低い第2領域26から放出することによって、筐体14の温度上昇を抑制できる。
【0059】
第2実施形態
第1実施形態に係るレンズ鏡筒10における第1領域24は、図3Aに示すように、塗膜aによって構成される第1反射層32と、塗膜cによって構成される第2反射層33とを有する。しかし、第1領域に備えられる第1反射層および第2反射層としては、これに限定されない。
【0060】
図3Bは、第2実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域24aの表面付近を拡大した拡大断面図である。第2実施形態に係る第1領域24aでは、筐体12の外側表面に、塗膜bによって構成される第1反射層32aが備えられている。さらに、第1反射層32aの内側に、塗膜cによって構成される第2反射層33備えられている。なお、第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1反射層を構成する塗膜が異なる他は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様である。
【0061】
第1反射層32aを構成する塗膜bは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約25%で、Lab表色系における明度が40以上70未満である。また、塗膜bは、赤外線領域の光の反射率が、約60%である。塗膜bは、第2反射層33を構成する塗膜cと同様に、塗膜bと同程度の明度を有する他の一般的な塗膜に比べて、赤外線領域の光の反射率が高い。また、塗膜bは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率(約25%)より約35%高い。さらに、塗膜bは、図3に示すように、塗膜bの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。
【0062】
したがって、第1領域24aも、第1実施形態における第1領域24と同様に、相対的に明度Lの低い塗膜(塗膜b)の内側に、明度Lの高い塗膜(塗膜c)を備える。これにより、第1領域24aを備える筐体は、外側表面の色の明度Lが低いにもかかわらず、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高く、遮熱性の高い筐体を実現できる。また、第1領域24aを備える第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様の効果を有する。
【0063】
第3実施形態
図3Cは、第3実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第1領域24bの表面付近を拡大した拡大断面図である。第3実施形態に係る第1領域24bでは、筐体の外側表面に、塗膜aによって構成される第1反射層32が備えられている。さらに、第1反射層32の内側に、塗膜bによって構成される第2反射層33bが備えられている。なお、第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、第2反射層を構成する塗膜が異なる他は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様である。
【0064】
第2反射層33bを構成する塗膜bは、図4に示すように、可視光領域の光の反射率が約25%で、Lab表色系における明度が40以上70未満である。また、塗膜bは、赤外線領域の光の反射率が、約60%である。塗膜bは、第1反射層32を構成する塗膜aと同様に、塗膜bと同程度の明度を有する他の一般的な塗膜に比べて、赤外線領域の光を反射する反射率が高い。また、塗膜bは、赤外領域の光の反射率が、可視光領域の光の反射率(約25%)より約35%高い。さらに、塗膜bは、図3に示すように、塗膜bの反射率を高めるための赤外線反射顔料36を含む。
【0065】
したがって、図3Cに示す第1領域24bも、第1実施形態における第1領域24と同様に、明度Lの低い塗膜(塗膜a)の内側に、相対的に明度Lの高い塗膜(塗膜b)を備える。したがって、第1領域24bを備える筐体は、外側表面の色の明度Lが低いにもかかわらず、赤外線領域の光の反射率の値(絶対値)が高く、遮熱性の高い筐体を実現している。また、第1領域24bを備える第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様の効果を有する。
【0066】
その他の実施形態
第1反射層32および第2反射層33を構成する塗膜は、図4に示す、塗膜a〜cのように、赤外線領域(波長900nm〜1700nm)の光に対して、略一定反射率を有していても良いが、これに限定されない。たとえば、塗膜eにように、一部の波長の光に対して反射率が低くても、数式1で示す赤外線の反射率が、数式2で示す可視光の反射率に対して高いものであれば、第1反射層32および第2反射層33を構成する塗膜として好適である。
【0067】
上述の実施形態で説明した第1領域24,24a,24bが備えられる筐体としては、図1に示すレンズ鏡筒10の筐体12に限られない。例えば、図5に示すように、第1領域24,24a,24bは、レンズフード50の筐体51に備えられてもよい。これによって、レンズフード50は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体51の温度が上昇することを抑制することができる。
【0068】
また、図6に示すように、第1領域24,24a,24bは、支持台取付部54の筐体55に備えられてもよい。これによって、レンズフード50は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体55の温度が上昇することを抑制することができる。あるいは、図7に示すように、第1領域24,24a,24bは、レリーズボタン59等を有するカメラ61の筐体57に備えられてもよい。これによって、カメラ61は、太陽光等からの赤外線の照射によって、筐体57の温度が上昇することを抑制することができる。
【0069】
また、第1反射層32及び第2反射層33とが備えられた第1領域24は、任意の位置に配置できる。例えば、図8に示すように、レンズ鏡筒10の筐体12のうち、回転環14及び表示器20を除く全ての部分に第1領域24を配置してもよい。また、第1反射層32および第2反射層33は、塗膜に限られず、蒸着等によって形成された薄膜その他の膜であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10… レンズ鏡筒
12,51,55,57… 筐体
13… 光学レンズ群
15… 光通過領域
14… 回転環
16,54… 支持台取付部
24,24a,24b… 第1領域
26… 第2領域
32,32a… 第1反射層
33,33b… 第2反射層
36… 赤外線反射顔料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層の層厚は、前記第1反射層の層厚より厚いことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層と前記第2反射層は、当該第1反射層および当該第2反射層に共通する少なくとも1つの赤外線反射顔料を含んでおり、
前記第2反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量は、第1反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量より多いことを特徴とする光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記光通過領域に備えられる光学系と、
前記第2反射層よりも像側に備えられ、前記光学系の移動を操作するための操作部材とを含むことを特徴とする光学装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層が少なくとも一部に備えられた筐体部と、
前記第2反射層よりも像側に備えられ、前記筐体部を支持する支持台を取付け可能な取付部を有することを特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層は、前記筐体部の物体側の端部から3分の2よりも前記物体側の領域に備えられていることを特徴とする光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層は、塗布により形成された膜であることを特徴とする光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有する膜であることを特徴とする光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層は、前記第1反射層の内側の一部に備えられていることを特徴とする光学装置。
【請求項1】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上となる第1反射層と、
前記光通過領域の外側であって前記第1反射層の内側に備えられ、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上となる第2反射層と
を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層の層厚は、前記第1反射層の層厚より厚いことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層と前記第2反射層は、当該第1反射層および当該第2反射層に共通する少なくとも1つの赤外線反射顔料を含んでおり、
前記第2反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量は、第1反射層に含まれる前記赤外線反射顔料の量より多いことを特徴とする光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された光学装置であって、
前記光通過領域に備えられる光学系と、
前記第2反射層よりも像側に備えられ、前記光学系の移動を操作するための操作部材とを含むことを特徴とする光学装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層が少なくとも一部に備えられた筐体部と、
前記第2反射層よりも像側に備えられ、前記筐体部を支持する支持台を取付け可能な取付部を有することを特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層は、前記筐体部の物体側の端部から3分の2よりも前記物体側の領域に備えられていることを特徴とする光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層は、塗布により形成された膜であることを特徴とする光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載された光学装置であって、
前記第1反射層および前記第2反射層は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有する膜であることを特徴とする光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までの何れか1項に記載された光学装置であって、
前記第2反射層は、前記第1反射層の内側の一部に備えられていることを特徴とする光学装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−175845(P2010−175845A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18584(P2009−18584)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]