説明

光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法

【課題】各画素色間の位相差を解消することのできる光学補償能を有するカラーフィルタ基板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板2の上に、2色以上の色画素が形成された液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3が設けられ、また、カラーフィルタ層3の各色画素の上に、光学補償層4が形成されている。カラーフィルタ層3は、基板2上に複数の画素色の顔料を含むカラーレジスト成分と、光配向膜成分と、光重合開始剤を含む着色樹脂組成物を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光、及び加熱することによって形成する。光学補償層4は、カラーフィルタ層3上に重合性液晶化合物と、光重合開始剤を含む溶液を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光を行ない、液晶化合物の等方相相転移温度以上に一定時間加熱するか、または同温度下で全面露光を行うことによって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に使用される光学補償層を備えるカラーフィルタ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、薄型である故に省スペース性および軽量性、また省電力性などが評価され、最近では携帯機器ならびにテレビ用途への普及が急速に進んでいる。液晶表示装置は、パネル構成中にカラーフィルタ基板を設けることで、多色表示を行なうことが可能であり、RGB3色を基本として多色表示を行うことが一般的である。
【0003】
ところで、携帯機器向けの液晶表示装置は、昼間戸外の強い外光下でも視認性を確保するため、反射型または一部に反射部を形成した半透過型の液晶表示装置が採用されることも多い。このような場合に反射光を有効に活用するため、吸収型円偏光板の一部をなす部材としてλ/4位相差フィルムやλ/2位相差フィルムなどが液晶パネル構成に組み込まれている。
【0004】
一方、テレビ用途向けの液晶表示装置は、全方位の視認性などをより高める目的で、直線偏光板とともに位相差フィルムが液晶パネル構成に組み込まれていることが多い。
【0005】
しかしながら、通常、こうした位相差フィルムの位相差値は面内で同一である。このため、位相差フィルムが組み込まれる液晶表示装置がカラーフィルタ基板によってカラー化されている場合、各色がその表示領域を通過する光の波長域が異なることに起因して、位相差を適切に制御するのが困難となる。
【0006】
例えば、携帯機器向けの反射型または半透過型液晶表示装置において、おおよそ緑の波長域(中心波長550nm前後)でλ/4の位相差量(約138nm)を有する位相差フィルムを直線偏光板と組み合わせて円偏光板として用いる場合、青の波長域(中心波長450nm前後)ではλ/4より過剰、赤の波長域(中心波長630nm前後)ではλ/4に対して不足となる。その結果、赤および青の表示画素においては完全な円偏光が得られない。
【0007】
また、テレビ用途向けの液晶表示装置などで、RGB3色のうちの1つの色(波長領域)で位相差が補償されるように位相差フィルムを設計すると、他の色(波長領域)においては補償が不完全となるという事態がしばしば発生する。この原因として次の点が挙げられる。
【0008】
まず、セルの液晶の位相差値が全波長領域で必ずしも同一でないのに加え、カラーフィルタに用いられる着色顔料の多くは光学的異方性を有している。さらに、光学的異方性の程度は顔料の種類によって別個であるため、赤・緑・青の画素によって位相差が異なる値になることである。
【0009】
このような問題に対して、液晶セルの内部に位相差層を設けて光学補償することで問題を解決する方法が知られている。(特許文献1及び2参照)
【0010】
特許文献1、2のいずれにおいても、カラーフィルタに段差を設けてこれを平坦化させるように位相差を成膜することにより各色画素の表示領域ごとの位相差を制御している。
この方法では、カラーフィルタ層の膜厚を厳密に制御する必要が生じ、カラーフィルタの設計が制限される、あるいはカラーフィルタの製造工程の難易度が上昇することで収率が低下するなどの問題がある。またそもそも、位相差層とカラーフィルタ層の合計膜厚を均一に保つように、膜厚段差のあるカラーフィルタ層の上に位相差層を成膜するのはそれほど容易なことではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−24919号公報
【特許文献2】特開2006−85130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、位相差の問題を解消することのできる光学補償能を有し、かつ所定の位相差が確実に得られるカラーフィルタ基板を提供することを課題とし、またカラーフィルタ基板を容易にかつ高品質で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するための請求項1に記載の発明は、基板と、前記基板上に設けられ複数の画素色のパターンを有するカラーフィルタ層と、前記カラーフィルタ層上に重合性液晶化合物を塗布、硬化させることによって形成した光学補償層とを含むカラーフィルタ基板の製造方法であって、前記基板上に、各々の画素色の顔料を含むカラーレジスト成分と、光配向膜成分と、光重合開始剤を含む着色樹脂組成物を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光、及び加熱することによって、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層を形成するカラーフィルタ層形成工程と、前記基板上に、少なくとも重合性液晶化合物と、光重合開始剤を含む溶液を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光を行ない、前記液晶化合物の等方相相転移温度以上に一定時間加熱するか、または同温度下で全面露光を行うことによって光学補償層を形成する光学補償層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記カラーフィルタ層形成工程において、各画素色の前記着色樹脂組成物中の前記光配向膜成分の成分量が同一または異なり、および/または、各画素色のパターンに対応する領域毎の露光照射量が同一または異なる数値であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記光学補償層形成工程において、各画素色のパターンに対応する領域毎の露光の照射量が同一または異なる数値であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記カラーフィルタ層形成工程において、前記着色樹脂組成物の塗布は、インクジェット法により行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、当該カラーフィルタ基板を用いた液晶表示装置において、別途位相差フィルム等を設けることなく、上記課題であった位相差の問題を解消することができた。
また、光学補償層の液晶配向機能を有するカラーフィルタ層によって、別途配向膜層の作成工程の簡略化ができ、光配向膜の成分量や露光量の最適化によって、面内位相差ならびに厚み方向位相差値を各色毎に所望の値に設定でき、高性能な光学補償を有するカラーフィルタ基板を安価で簡便に作成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のカラーフィルタ基板の一形態を示す断面図を示す。
【図2】液晶配向機能を有するカラーフィルタ層が形成される過程を示す模式図を示す。
【図3】光学補償層が形成される過程を示す模式図を示す。
【図4】本発明の液晶表示装置の一形態を示す断面図を示す。
【図5】本発明のカラーフィルタ基板の実施例、比較例の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は本発明によって得られるカラーフィルタ基板の一形態の断面(部分)を例示したものである。本カラーフィルタ基板は、基板2の上に液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3が設けられ、当該層は2色以上、典型的には赤色画素31・緑色画素32・青色画素33の3色よりなる多数の画素が形成されている。
前記液晶配向機能を有するカラーフィルタ層の各色画素は、黒色隔離壁6によって基板の面内方向に隔離されていてもよい。
前記液晶配向機能を有するカラーフィルタ層の各色画素の上には、光学補償層4が形成されている。
【0021】
次に、図2、図3を参照しながら光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法について説明する。図2に液晶配向機能を有するカラーフィルタ層の形成方法を示す。
【0022】
基板2は、ガラス板又は樹脂板などの光透過性基板である。
典型的には、ガラス板又は樹脂板などの光透過性基板である。ガラス板の材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス又は無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスを使用することができる。樹脂板の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル又はポリエチレンテレフタレートを使用することができる。
【0023】
基板2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。例えば、インジウム錫酸化物及び錫酸化物などの透明導電体からなる透明電極が形成された光透過性基板を使用してもよい。或いは、画素回路などの回路が形成された光透過性基板を使用してもよい。
【0024】
(黒色隔離壁)
次に、基板2の一方の主面上に、黒色隔離壁6を形成する。黒色隔離壁6は、基板2と液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3との間に介在している。
黒色隔離壁6は、例えば、樹脂と黒色顔料とを含んだ混合物からなる。或いは、樹脂と減法混色により黒色を呈するように混ぜ合わされた複数の着色顔料を含んだ混合物からなる。
【0025】
黒色隔離壁6は、例えば、顔料担体とこれに分散させた顔料とを含んだ黒色組成物の薄膜パターンを形成し、この薄膜パターンを硬化させることにより得られる。この薄膜パターンは、例えば、印刷法、フォトリソグラフィ法、インキジェット法、電着法又は転写法を利用して形成することができる。
【0026】
顔料担体としては、例えば、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3に関して後で例示する材料を使用することができる。顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料、又は、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3に関して後で例示する複数の顔料を減法混色により黒色を呈するように混ぜ合わせてなる混合物を使用することができる。
【0027】
(液晶配向機能を有するカラーフィルタ層)
次に、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3を形成する。赤色画素31、緑色画素32、青色画素33の着色画素パターンを形成する。
本実施形態では、フォトリソグラフィ法によりカラーレジストの画素パターンを形成する。
フォトリソグラフィ法による画素パターン形成の工程は、黒色隔離壁(ブラックマトリクス)6が形成された基板上に着色樹脂組成物を塗布する工程、露光工程、不要部となる未露光部分を除去する現像工程からなる。その後、後述する加熱工程を経て着色画素、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を形成する。
【0028】
当該着色樹脂組成物は、少なくとも顔料および顔料担体、ならびに光重合開始剤を含み、必要に応じて、溶剤、増感剤、連鎖移動剤、界面活性剤、重合禁止剤、貯蔵安定剤、密着向上剤、熱重合開始剤、粘度調整剤その他必要な材料を加えることができる。
着色樹脂組成物の着色剤としては、顔料、染料等を使用することができる。本発明では、耐候性に優れた有機顔料を用いることが好ましい。
以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、C.I. Pigment Yellow1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0029】
また緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用できる。黄色顔料としては、赤色着色組成物のところで挙げた顔料と同様のものが使用可能である。
【0030】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用できる。紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0031】
また、顔料として無機顔料を用いることも可能であり、具体的には黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。
着色組成物には、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0032】
また前記着色樹脂組成物に含まれる顔料担体は、顔料を分散させるものであり、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂・感光性樹脂などの透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成する多官能モノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0033】
着色樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂は、色素との関係で公知のカラーフィルタ基板の製造に用いる材料から適宜選択される。具体的には、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。特に、耐熱性や耐光性を要求されるカラーフィルタを製造する場合には、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
着色樹脂組成物に用いられる溶媒は、具体的には、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0035】
また、この他にも、溶媒の沸点をより高めるために、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を用いることが可能である。また、必要に応じて2種類以上の溶媒を前記条件に合うように混合し、調合したものを用いる。
【0036】
着色樹脂組成物の分散剤は、樹脂への色素の分散を向上させるために用いる。分散剤として、イオン性または非イオン性界面活性剤などを用いることができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等、その他に、有機顔料誘導体、ポリエステルなどが挙げられる。分散剤は1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0037】
光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン及び4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン及び2,4−トリクロロメチル(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤;ボレート系光重合開始剤;カルバゾール系光重合開始剤;イミダゾール系光重合開始剤;又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0038】
増感剤は、例えば、光重合開始剤と共に使用することができる。増感剤としては、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4'−ジエチルイソフタロフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンなどの化合物を使用することができる。
【0039】
連鎖移動剤としては、例えば多官能チオールを使用することができる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物である。多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール 、デカンジチオール 、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0040】
多官能モノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、エポキシアクリレート及びエポキシメタクリレートなどのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、アクリロニトリル、又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0041】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は感光性樹脂を使用することができる。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリイミド樹脂を使用することができる。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂又はフェノール樹脂を使用することができる。
【0044】
感光性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基などの反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基及びエポキシ基などの反応性置換基を有するアクリル化合物、メタクリル化合物又は桂皮酸を反応させて、アクリロイル基、メタクリロイル基及びスチリル基など光架橋性基を線状高分子に導入した樹脂を使用することができる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物及びα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などの酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル化合物又はメタクリル化合物によりハーフエステル化した樹脂も使用することができる。
【0045】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩及びそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン及びアルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤;又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0046】
重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、スチレン化フェノール、スチレン化p−クレゾール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス〔メチレン−3−(3',5'−ジ−1−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、オクタデシル 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)イソシアヌレート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、1−オキシ−3−メチル−イソプロピルベンゼン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ポリブチル化ビスフェノールA、ビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、2,6−ビス(2'−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5'−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テレフタロイルージ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルスルフィド)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、トルエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ヘキサメチレングリコール−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリン)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸ジエチルエステル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル〕イソシアヌレート、2,4,6−トリブチルフェノール、ビス〔3,3−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)−ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール及びビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイドなどのフェノール系禁止剤;N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物及びジアリール−p−フェニレンジアミンなどのアミン系禁止剤;ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート及び2−メルカプトベンズイミダノールなどの硫黄系禁止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系禁止剤;又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0047】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド;ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸及びシュウ酸などの有機酸;そのメチルエーテル;t−ブチルピロカテコール;テトラエチルホスフィン及びテトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン;亜リン酸塩;又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0048】
密着向上剤としては、例えば、シランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン類及びメタクリルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン類;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン;又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0049】
カラーフィルタ層3が液晶配向機能を有する様にする為に、着色樹脂組成物に光配向膜組成物を添加する。
光配向膜組成物としては、光の吸収能が偏光の電気ベクトルの方向によって異なる官能基(以下光配向性基と略す)を有する化合物を使用する。光配向性基としては、光異性化反応を生じるアゾベンゼン基、光二量化反応を生じるシンナモイル基、クマリン基、カルコン基、ベンゾフェノン基、光分解反応を生じるポリイミド樹脂、又はそれらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。また、アントラキノン、アゾ、キノフタロン、ぺリレン化合物など二色性の光配向性基化合物も使用することができる。
【0050】
液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3は、例えばフォトリソグラフィ法を利用して形成することができる。
【0051】
着色樹脂組成物を塗膜する方法としては、バーコータ、アプリケータ、ワイヤーバー、スピンコータ、ロールコータ、スロットコータ、カーテンコータ、ダイコータ、キャピラリーコータ、コンマコータ、スプレーコータ、などの公知の方法が挙げられる。この塗膜は、乾燥膜厚が例えば0.2乃至10μmとなるように形成する。
【0052】
次いで、この塗膜を乾燥させる。塗膜の乾燥には、例えば、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブンまたはホットプレートを利用する。塗膜の乾燥は、省略することができる。
【0053】
次に、所定のパターンで露光を行なう。露光には、紫外線や電子線、可視光線、赤外線、エックス線、ガンマ線等の放射線を用いることができる。
露光方法としては、例えば、超高圧水銀灯や半導体レーザを光源とした紫外線により、遮光部を形成したフォトマスクを用いた、プロキシミティ方式、あるいは、凸及び凹面鏡を使用した光学系を用いたミラープロジェクション露光方式、投影レンズを配し照射面を分割するレンズ投影露光方式などが挙げられる。
液晶配向機能を発現するために露光は、偏光露光が望ましい。
【0054】
次に、着色樹脂組成物膜のうち、不要部分、すなわち前記露光工程で光照射がなされなかった領域は、現像によって除去する。現像液としては、有機溶剤系または塩基性水溶液系が一般的に用いられるが、環境安全性の確保から、塩基性水溶液系が好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩の水溶液、ヒドロキシテトラメチルアンモニウム、ヒドロキシテトラエチルアンモニウム等の有機塩の水溶液など塩基性水溶液を挙げることができる。また現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。あるいは、アルカリ現像液として、ジメチルベンジルアミンおよびトリエタノールアミンなどの有機アルカリを含んだ液を使用してもよい。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
このような工程を繰り返すことで、赤色画素(R)31、緑色画素(G)32、青色画素(B)33の着色画素パターンを形成され、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3が完成する。
この方法では、着色レジストの重合を促進するために、熱処理を施してもよい。
【0055】
また、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層3は、他の方法で形成してもよい。例えば、印刷法、インキジェット法、電着法または転写法を利用して形成してもよい。インキジェット法によって、形成するケースを図2の模式図で説明する。インキジェット法によってカラーフィルタ層を形成する場合、例えば、平面体上に予め遮光性離画壁を形成しておき図2(a)、この遮光性離画壁によって区画された領域に向けてノズルからインキを吐出することにより各着色層を得る。その後、液晶配向機能を発現するために各画素パターン毎に偏光露光を行う。
ここで、露光照射量は例えば5mJ〜500mJ/cm2の範囲内で各画素のパターンに対応する領域毎に調整する。
なお、カラーフィルタ層3の液晶配向機能を最適化するために、光配向膜成分の成分量と露光照射量を調整するが、調整した結果、これらのパラメータが同一となることも異なる値となることもありうる。
図2(b)、(c)、(d)において、5eは露光部、5nは非露光部を示す。
フォトリソグラフィ法では必要な現像工程がインクジェット法では不要になる。インクジェット法は、工程削減面と、現像適性不要により液晶配向機能材料の選択幅が広がる点が長所となる。
また、赤色画素(R)31、緑色画素(G)32、青色画素(B)33の各々の着色樹脂組成物中の光配向膜の所定成分量を最適化と、各画素色のパターンに対応する領域毎の露光量の最適化で、その上に積層する光学補償層の液晶配向性の強弱を変えることができる。その結果、各色毎の所定の位相差補償が容易にかつ精度よく得られる。
【0056】
(光学補償層)
次に液晶配向機能を有するカラーフィルタ層の上に光学補償層4を設ける。図3に光学補償層の形成方法の模式図を示す。
本発明における光学補償層の製造工程は、洗浄工程/塗布工程/乾燥工程/露光工程/焼成工程に分けることができる。
光学補償層4は、例えばサーモトロピック液晶化合物に加え、例えば、溶剤、キラル剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、多官能モノマー及び/又はオリゴマー、樹脂、界面活性剤、重合禁止剤、貯蔵安定剤及び密着向上剤などの成分を、この液晶化合物を含んだ組成物が液晶性を失わない範囲で含んでいてもよい。
【0057】
サーモトロピック液晶化合物としては、例えば、アルキルシアノビフェニル、アルコキシビフェニル、アルキルターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、フェニルビシクロヘキサン、ピリミジン、シクロヘキサンカルボン酸エステル、ハロゲン化シアノフェノールエステル、アルキル安息香酸エステル、アルキルシアノトラン、ジアルコキシトラン、アルキルアルコキシトラン、アルキルシクロヘキシルトラン、アルキルビシクロヘキサン、シクロヘキシルフェニルエチレン、アルキルシクロヘキシルシクロヘキセン、アルキルベンズアルデヒドアジン、アルケニルベンズアルデヒドアジン、フェニルナフタレン、フェニルテトラヒドロナフタレン、フェニルデカヒドロナフタレン、これらの誘導体、またはそれら化合物のアクリレートを使用することができる。
【0058】
光重合開始剤としては、着色組成物について例示したのと同様のものを使用することができる。また、その他に、二色性の光重合開始剤を用いることができる。
【0059】
増感剤、連鎖移動剤、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー、樹脂、界面活性剤、貯蔵安定剤および密着向上剤としては、例えば、着色組成物について例示したのと同様のものを使用することができる。また、この溶剤としても、例えば、着色組成物について例示したのと同様のものを使用することができる。
図3(e)に示す塗布工程は、未硬化の重合性液晶を含むコーティング液を基板上に塗布して、液晶材料層を形成する工程である。
【0060】
光学補償層の塗布方法には、バーコータ、アプリケータ、ワイヤーバー、スピンコータ、ロールコータ、スロットコータ、カーテンコータ、ダイコータ、キャピラリーコータ、コンマコータ、インキジェット法、凸版印刷法、スクリーン印刷、平版印刷、反転印刷、グラビア印刷その他の印刷方法又はこれらを組合せた方法などの公知の方法を利用することができる。これらの方法によれば、光学補償層4を均一な厚さを有している連続膜として形成することができる。
【0061】
本実施形態では、スロットコータ法で形成した。洗浄工程後、塗布工程は、スロットコータで光学補償層4を均一な厚さに塗布する。
【0062】
塗布後乾燥工程(プリベーク工程)は、例えば、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブンまたはホットプレートを利用する。本実施形態では、ホットプレートで40〜130℃、1〜30分の条件で溶剤を揮発させる。また、予め減圧乾燥機を通してから加熱しても良い。この際、塗布した溶液中の液晶モノマーが液晶配向機能を有するカラーフィルタ層上で基板に対して略平行に配向する。
【0063】
次に、露光工程は、乾燥させた液晶モノマー層に対し、領域ごとに異なる照射量でパターン露光を行なう。液晶が重合するに充分な量の光が照射された領域はその配向の状態を保ったまま固定化され、少ない量の光が照射された領域は未硬化成分を残し一部が固定化され、光が照射されなかった領域は全てが未反応のままとなる。露光には、紫外線や電子線、可視光線、赤外線等の放射線を用いることができる。放射線は1種類あるいは複数種類を使用することができ、尚且つ逐次照射、同時照射のいずれも可能である。
ここで、露光照射量は例えば50mJ〜1000mJ/cm2の範囲内で各画素のパターンに対応する領域毎に調整する。
なお、光学補償機能を最適化するために、カラーフィルタ層3の光配向膜成分の成分量と露光照射量、および光学補償層4の露光照射量を調整するが、調整した結果、これらのパラメータが同一となることも異なる値となることもありうる。
【0064】
次に焼成工程は、液晶モノマーの等方相相転移温度以上に加熱する。
異なる照射量で露光された領域において、充分な量の光が照射された領域は、配向を保って固定化された高配向状態となる。不充分な量の光が照射された領域は、その照射量に応じて残る未硬化成分の配向が乱れて低配向状態となる。光が照射されなかった領域は等方相に転移して実質的に無配向状態となる。
この様に、各色毎の照射量を最適化することで、各色毎の所定の位相差補償が容易にかつ確実に得られる。図3(f)、(g)、(h)において、5eは露光部、5nは非露光部を示す。
このような領域ごとに異なる配向状態を固定化する方法には、(1)当該液晶モノマーが等方相に保たれる以上の温度に維持したまま、基板の全面露光を行なうか、(2)等方相の液晶モノマーを重合させるために必要な温度まで上げて焼成を行う。この(1)全面露光工程、(2)焼成工程は、各々のいずれかを行なっても良いし、併用しても良い。
【0065】
本発明の光学補償能を有したカラーフィルタ基板は、図4に示すように、様々な液晶表示装置に用いることができる。2枚の基板に狭持された液晶を、電圧を印加しない時には略垂直方向に配向する、いわゆるVA(Vertical Alignment)液晶とする構成や、2枚の基板に狭持された液晶を、電圧を印加しない時には面内方向に配向する、いわゆるIPS(In Plane Switching)液晶とする構成に使用することが可能である。また、これらの表示方式に限定されない。
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、実施の形態はこれに限定されない。
【実施例】
【0067】
(ブラックマトリクス層の作製)
下記着色組成物をスリットコーターを用いてガラス基板上に塗布した後、温度90℃で90秒間ホットプレート上において加熱乾燥を行った。その後、格子状のパターンを有するフォトマスクを用いた上で、超高圧水銀灯によりパターン露光を行った。露光量は、全ての色で50mJ/cm2とした。更に30秒間10%炭酸ナトリウム水溶液にて現像処理を行い、温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、膜厚1μmのブラックマトリクス層を形成した。
カーボン顔料分散液 50.0部
クレゾールーノボラック樹脂溶液 10.0部
トリメチロールプロパントリアクリ レート 3.0部
(新中村化学株式会社製「NKエステルATMPT」)
光重合開始剤 1.8部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「CGI―124」)
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」 0.2部
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート 10.0部
撥インキ剤(DIC製「メガファック350C」
全固形分重量に対し0.1wt%
【0068】
(液晶配向機能を有するカラーフィルタ層の作製)
本実施例では、インクジェット法により作成した。
下記着色組成物を顔料濃度が12〜15重量%、粘度が15mPa・sになるように、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加して調整し、赤色、緑色、青色の各着色インキを得た。各着色インキは、吐出量12pl、ピッチ180dpiヘッドを搭載したインキ吐出装置より上記ブラックマトリクス層の開口部に吐出し、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々の着色層を形成した。温度90℃で60秒間ホットプレート上において加熱乾燥を行った後、温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、カラーフィルタ層を形成した。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々の膜厚は、1.5μm、1.6μm、1.8μmであった。最後に、フォトマスクを用いた上で、312nmバンドパスフィルタとワイヤグリッド型偏光板を介してパターン露光を行うことで、液晶配向機能を誘起させた。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各領域の露光量は、500mJ/cm2、350mJ/cm2、300mJ/cm2とした。
顔料分散液 50.0部
アクリル樹脂溶液 4.0部
アゾベンゼン修飾アクリル樹脂 6.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート 3.0部
(新中村化学株式会社製「NKエステルATMPT」)
光重合開始剤 1.8部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「イルガキュアー907」)
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」) 0.2部
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート 10.0部
【0069】
(光学補償層の作製)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合し、0.6μmのフィルタで濾過して得た液晶化合物を、前記カラーフィルタ層の上に、スリットコーターで乾燥膜厚が2.5μmになるように塗布し、ホットプレートにて90℃で2分間加熱乾燥し液晶モノマー層を得た。
コレステリック重合性液晶 19.0部
(メルク社製「RMS」)
光重合開始剤 1.0部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「イルガキュアー907」)
界面活性剤 3.0部
(ビックケミー社製「BYK111」2%シクロヘキサノン溶液)
シクロヘキサノン 77.0部
次に当該液晶モノマー層に対し、超高圧水銀灯を用いて基板全面に紫外線照射した。紫外線の照射量は、500mJ/cm2とした。
更に、温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行うことで光学補償層を作成した。
当該カラーフィルタ基板の光学補償層の面内位相差Reを測定したところ、赤色画素部分は波長630nmの光において72nm、緑色画素部分は波長550nmの光において52nm、青色画素部分は波長490nmの光において41nmであった。厚み方向位相差Rthは、赤色画素部分は波長630nmの光において203nm、緑色画素部分は波長550nmの光において210nm、青色画素部分は波長490nmの光において215nmとなった。VAセルを作製した上で斜め45度コントラストを測定したところ、1500:1となった。
【0070】
(比較例)
光学補償層の作製を行う代わりに、下記作成のカラーフィルタ基板の外側に粘着層を介して、外付けフィルムのポジティブAプレート、ネガティブCプレートを積層させた。
ネガティブCプレート:セルロース系樹脂フィルム 100ミクロン
ポジティブAプレート:シクロオレフィン系樹脂フィルム 50ミクロン
(カラーフィルタ層の作製)
液晶配向機能を持ち合わせない汎用のカラーフィルタ層を作成した。
実施例と同様に、インクジェット法により作成した。
下記着色組成物を顔料濃度が12〜15重量%、粘度が15mPa・sになるように、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加して調整し、赤色、緑色、青色の各着色インキを得た。各着色インキは、吐出量12pl、ピッチ180dpiヘッドを搭載したインキ吐出装置より上記ブラックマトリクス層の開口部に吐出し、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々の着色層を形成した。温度90℃で60秒間ホットプレート上において加熱乾燥を行った後、温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、カラーフィルタ層を形成した。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々の膜厚は、1.5μm、1.6μm、1.8μmであった。
顔料分散液 50.0部
アクリル樹脂溶液 10.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート 3.0部
(新中村化学株式会社製「NKエステルATMPT」)
光重合開始剤 1.8部
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「イルガキュアー907」)
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」) 0.2部
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート 10.0部
【0071】
当該カラーフィルタ基板のカラーフィルタ層および位相差薄膜の面内位相差Reを測定したところ、赤色画素部分は波長630nmの光において88nm、緑色画素部分は波長550nmの光において90nm、青色画素部分は波長490nmの光において98nmであった。厚み方向位相差Rthは、赤色画素部分は波長630nmの光において209nm、緑色画素部分は波長550nmの光において208nm、青色画素部分は波長490nmの光において210nmとなった。VAセルを作製した上で斜め45度コントラストを測定したところ、450:1となった。
【0072】
図5に実施例と比較例の各画素毎の面内位相差Re、厚み方向位相差Rth、全画素平均の斜め45度コントラスト値を示す。
比較例に比べ、実施例の数値が良好で位相差補償の精度が良いことがわかる。
【符号の説明】
【0073】
1…カラーフィルタ基板
2…基板
3…液晶配向機能を有するカラーフィルタ層
31…赤色画素
32…緑色画素
33…青色画素
4…光学補償層
5e…露光部
5n…非露光部
6…黒色隔離壁
10…アレイ基板
20…対向基板
50…液晶層
70…対向電極
80…配向膜
90…画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられ複数の画素色のパターンを有するカラーフィルタ層と、前記カラーフィルタ層上に重合性液晶化合物を塗布、硬化させることによって形成した光学補償層とを含むカラーフィルタ基板の製造方法であって、
前記基板上に、各々の画素色の顔料を含むカラーレジスト成分と、光配向膜成分と、光重合開始剤を含む着色樹脂組成物を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光、及び加熱することによって、液晶配向機能を有するカラーフィルタ層を形成するカラーフィルタ層形成工程と、
前記基板上に、少なくとも重合性液晶化合物と、光重合開始剤を含む溶液を塗布し、各画素色のパターンに対応する領域毎に露光を行ない、前記液晶化合物の等方相相転移温度以上に一定時間加熱するか、または同温度下で全面露光を行うことによって光学補償層を形成する光学補償層形成工程と、
を含むことを特徴とする光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項2】
前記カラーフィルタ層形成工程において、各画素色の前記着色樹脂組成物中の前記光配向膜成分の成分量が同一または異なり、および/または、各画素色のパターンに対応する領域毎の露光照射量が同一または異なる数値であることを特徴とする請求項1の光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項3】
前記光学補償層形成工程において、各画素色のパターンに対応する領域毎の露光の照射量が同一または異なる数値であることを特徴とする請求項1又は2の光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項4】
前記カラーフィルタ層形成工程において、前記着色樹脂組成物の塗布は、インクジェット法により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの光学補償能を有するカラーフィルタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−70067(P2011−70067A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222308(P2009−222308)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】