説明

光学読取装置、光学読取装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】光学読取部に対向して設けられた付勢ローラーの汚れを検出できるようにする。
【解決手段】小切手の搬送路に設けられ、搬送される小切手を光学的に読み取る表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53と、これらスキャナーに対向して設けられ、これらスキャナーに対して小切手を付勢する付勢ローラーと、これらスキャナーによる読み取り範囲を小切手4のサイズよりも大きくすることにより、読取画像が、小切手に係る画像の外側に付勢ローラーに係る画像が付加された画像となるように、これらスキャナーを制御する読取制御部91と、読取画像における付勢ローラーに係る画像に基づいて、付勢ローラーの汚れを検出する汚れ検出部92とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の画像を光学的に読み取る光学読取装置、当該光学読取装置の制御方法、及び、当該光学読取装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、挿入された小切手等の記録媒体を搬送する搬送部と、光学的に画像を読み取る光学読取部(スキャナー)とを備え、装置に挿入された記録媒体を搬送部により搬送しつつ光学読取部によって記録媒体の画像を読み取る光学読取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の光学読取装置では、光学読取部に対して、光学読取部とともに記録媒体を挟持して付勢する付勢ローラーを設け、この付勢ローラーによって光学読取部へ向かって記録媒体を付勢することにより光学読取部による画像の読み取りの品質を向上したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−284191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような光学読取装置では、光学読取装置に入り込んだ塵埃が付勢ローラーに汚れとして付着し、また、記録媒体の裏面に塗布されたインクや、充填剤等が付勢ローラーに汚れとして付着することがある。これら汚れは、光学読取装置に読み取られる記録媒体に凹凸を生じさせたり、記録媒体の縁に付着したりする等して光学読取部の読取画像に悪影響を与える可能性がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光学読取部に対向して設けられた付勢ローラーの汚れを検出可能な光学読取装置、光学読取装置の制御方法、及び、光学読取装置を制御するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、光学読取装置であって、記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、この光学読取部に対向して設けられるローラーと、少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御する読取制御部と、前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出する汚れ検出部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、ローラー(付勢ローラー)に汚れが発生している場合、光学読取部の読取画像におけるローラーに係る画像に、ローラーの汚れに起因した画像が現出することとなる。そして、汚れ検出部が読取画像におけるローラーに係る画像に基づいて、ローラーの汚れを検出することによって、ローラーに汚れが発生している場合、そのことを適切に検出することができる。
【0006】
ここで、上記発明の光学読取装置であって、前記汚れ検出部は、前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像中に、前記ローラーの色に対応する色とは異なる色を有し、記録媒体の搬送方向に対応する方向に延び、かつ、前記ローラーに係る画像の外枠を形成する端部に接する線状の画像が存在する場合に、前記ローラーの汚れとして検出するようにしてもよい。
ここで、ローラーに汚れが発生している場合、読取画像におけるローラーに係る画像において、汚れに係る画像は、ローラーの色とは異なる色を有する画像として、記録媒体の搬送方向に対応する方向に延び、かつ、ローラーに係る画像の外枠を形成する端部に接する線状の領域として現れる。
これを踏まえ、上記構成によれば、汚れ検出部が、光学読取部の読取画像におけるローラーに係る画像中に、ローラーの色とは異なる色を有し、記録媒体の搬送方向に延び、かつ、ローラーに係る画像の外枠を形成する端部に接する直線状の画像が存在する場合に、ローラーの汚れを検出するため、より適切にローラーの汚れを検出することができる。
【0007】
また、上記発明の光学読取装置であって、前記光学読取部の読取画像における前記付勢部材に係る画像に含まれるもので、少なくとも前記付勢部材の色とは異なる色を有する部位の画像を、前記付勢部材の色を有する画像に変換する画像補整部を備えるようにしてもよい。
この構成によれば、画像補整部により、ローラーに係る画像中に現出した汚れに係る画像を除去した状態の読取画像を生成できる。
【0008】
また、上記発明の光学読取装置であって、前記汚れ検出部は、前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像中に、前記ローラーの色に対応する色とは明度の異なる色を、前記ローラーの汚れとして検出するようにしてもよい。
この構成によれば、明度の低い傾向にあるローラーに係る画像中に、明度の高い傾向にある汚れに係る画像を、より適切に検出できる。
【0009】
また、上記発明の光学読取装置であって、前記検出部により前記付勢部材の汚れが検出された場合、その旨報知する報知部を備えるようにしてもよい。
この構成によれば、ローラーに汚れが発生していることが報知され、その旨をユーザー等に認識させ、クリーニング等を指示することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、この光学読取部に対向して設けられるローラーと、を備える光学読取装置を制御して、少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御し、前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出することを特徴とする。
この制御方法によれば、ローラーに汚れが発生している場合、光学読取部の読取画像におけるローラーに係る画像に、ローラーの汚れに起因した画像が現出することとなる。そして、汚れ検出部が読取画像におけるローラーに係る画像に基づいて、ローラーの汚れを検出することによって、ローラーに汚れが発生している場合、そのことを適切に検出することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、この光学読取部に対向して設けられるローラーと、を備える光学読取装置を制御する制御部に読み取れるプログラムであって、前記制御部を、少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御する読取制御部と、前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出する汚れ検出部と、として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、ローラーに汚れが発生している場合、光学読取部の読取画像におけるローラーに係る画像に、ローラーの汚れに起因した画像が現出することとなる。そして、汚れ検出部が読取画像におけるローラーに係る画像に基づいて、ローラーの汚れを検出することによって、ローラーに汚れが発生している場合、そのことを適切に検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学読取部に対向して設けられたローラーの汚れを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】小切手処理装置の内部構造を示す図である。
【図3】表面側スキャナーと付勢ローラーとを模式的に示す図である。
【図4】小切手読取装置、ホストコンピューターの機能的構成を示すブロック図。
【図5】画像データを模式的に示す図である。
【図6】汚れ検出部の動作を示すフローチャートである。
【図7】表面側スキャナーと付勢ローラーとを模式的に示す図である。
【図8】ホストコンピューターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る小切手処理装置1の外観斜視図である。
小切手処理装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
小切手処理装置1は、本体ケース2と、この上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、この搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0015】
小切手4の表面4aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄に、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、磁気インク文字列4Aが記録された表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。
【0016】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが読み取られる。そして、後述する磁気インク文字認識部90によって磁気インク文字列4Aが正常に読み取られた小切手4については、適宜、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0017】
図2は小切手処理装置1の内部構造を示す説明図である。小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、この送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1、第2小切手排出部8、8に繋がっている僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0018】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30(搬送部)は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1〜第6押圧ローラー41〜46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0019】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側スキャナー52(光学読取部)、裏面側スキャナー53(光学読取部)が配置されている。表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53は、搬送路5を搬送中の小切手4の情報を連続的に読み取る光学イメージセンサーである。
表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)型の画像読取センサーであり、小切手4の画像を読み取るための光学読取ユニット78、79をそれぞれ備えている。光学読取ユニット78、79は、小切手4に密着する平坦なカバーガラスや、このカバーガラスを介してLED等の光源から出力される光を小切手4に対して照射する照射部、垂直方向に一列に配列された受光センサーを複数有し、照射部による照射光の反射光を受光する受光部83(図3参照、光学読取ユニット79が備える受光部については不図示)、これら受光部83からの信号を出力する出力部等を備えている。本実施形態では、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53はCISを備えたものに限らず、CCD(Charge Coupled Device)を備えたものであってもよい。
表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53の光学読取ユニット78、79に対向する位置には、付勢ローラー85、86(ローラー)が設けられている。
【0020】
図3は、表面側スキャナー52と付勢ローラー85との関係を説明するため、これら部材を斜視図として模式的に示す図である。
付勢ローラー85は、搬送路5における小切手4の搬送に応じて回転する構成とされ、小切手4の搬送を妨げない状態で、図示せぬ付勢部材により、光学読取ユニット78のカバーガラスへ向かって小切手4を付勢する。これにより、カバーガラスと小切手4が密着した状態で、表面側スキャナー52による小切手4の画像の読み取りが可能となり、画像の読取品質の向上が図られる。
また、図3に示すように、本実施形態では、付勢ローラー85は、光学読取ユニット78の受光部83の全域に対向した状態で垂直方向に延びている。このため、付勢ローラー85と、表面側スキャナー52との間に小切手4が介在していない状態で表面側スキャナー52によって画像の読み取りを実行した場合、付勢ローラー85の画像だけが読み取られる。
また、図3に示すように、付勢ローラー85は、上部付勢ローラー87と、下部付勢ローラー88との上下2つのローラーを備えており、小切手4の搬送に応じてこれらローラーが同軸上で回転する。このように付勢ローラー85が上下2つに分かれているのは、本実施形態に係る小切手処理装置1では、表面側スキャナー52やその他の部材との位置関係や、付勢ローラー85を配置するスペースの関係上、付勢ローラー85を上下2つに分けた方が、小切手処理装置1の組み立てが容易だからである。付勢ローラー85は、1本でもよい。
なお、裏面側スキャナー53と付勢ローラー86との関係は、表面側スキャナー52と付勢ローラー85との関係と同様である。
【0021】
表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53の受光部83が備える受光センサーは、垂直方向に一列に並べられ、小切手4の画像をライン状に読み取る。ここで、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53の受光センサーは、小切手処理装置1に処理されることが想定されている全ての小切手4の短辺(小切手4を搬送路5に配置した場合に垂直方向に延びる辺であり、図1の例では前端4g及び後端4h)よりも広い範囲に配設されており、小切手処理装置1に処理される全ての小切手4よりも広い幅で読み取りを行う。すなわち、表面側スキャナー52、及び、裏面側スキャナー53は、小切手処理装置1に処理される全ての小切手4の全面を読み取ることができる。
表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53は、それぞれ、R、G、Bの光源を備え、モノクロ(2値、16階調、256階調)及びフルカラーの読み取りが可能である。また、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53の読取解像度は、例えば、200dpi、300dpi、600dpiの3段階に設定可能である。小切手4の搬送方向における読取ライン数は、搬送方向に直交する方向における読取解像度に合わせて設定され、読み取り時の小切手4の搬送速度は読取解像度と、受光部83の検出値の処理速度等の仕様に合わせて調整される。
【0022】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド54(磁気インク文字読取部)が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、記録装置56が配置されている。記録装置56は、小切手4の裏面4bに対し裏書きに係る所定の画像を記録するプリンターであり、小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0023】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側スキャナー53と第2搬送ローラー32の間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、この検出器によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。第5搬送ローラー35の手間側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。この分岐路9には、不図示の駆動モーターによって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0024】
図4は小切手処理装置1の制御系を示す概略ブロック図である。
小切手処理装置1は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成された制御部71を備えている。
制御部71は、後述するホスト側制御部73から小切手4の読み取りに係る処理の開始指示を受け取ると、小切手送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
小切手4の搬送に伴って、表面側スキャナー52、及び、裏面側スキャナー53は、これらスキャナーのそれぞれが読み取った読取画像を示すデータを制御部71に出力する。用紙長検出器61により、小切手4の前端4g及び後端4hを検出できるので、表面側スキャナー52、及び、裏面側スキャナー53は、小切手4の搬送方向において、小切手4より大きい読み取り範囲を読み取ることができる。また、磁気ヘッド54は、通過する磁気インク文字列4Aによって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出信号として信号処理回路74に出力する。信号処理回路74は、入力された検出信号を、増幅し波形整形しデジタル信号に変換した上で、制御部71に出力する。そして、制御部71は、読取画像を示すデータ、及び、検出信号を示すデータを後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73に出力する。
なお、制御部71には、本体ケース2に形成された電源スイッチなどの操作スイッチを含む操作部75が接続されている。
【0025】
小切手処理装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。
上述したように、ホスト側制御部73には、制御部71から、表面側スキャナー52、及び、裏面側スキャナー53のそれぞれが読み取った読取画像を示すデータが入力される。ホスト側制御部73は、入力された読取画像を示すデータに基づいて、小切手4毎に、各小切手4の表面の画像を含む画像データ、及び、裏面の画像を含む画像データを生成する。
画像データとは、ビットマップ形式のデータであり、データ上でドットマトリクス状に配置された各画素について、モノクロの読み取りが実行された場合は、画素毎に明度を示す階調値(例えば、0−255で示される256段階の階調値)を保持し、また、フルカラーの読み取りが実行された場合は、画素毎に赤(R)、緑(G)及び青(B)系の色成分を階調値(例えば、0−255で示される256段階の階調値)として保持するデータのことである。
ホスト側制御部73は、磁気インク文字認識部90と、読取制御部91と、汚れ検出部92と、画像補整部93と、報知部94とを備えているが、これらについては後述する。
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器73aと、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部73bと、が接続されている。
また、ホスト側制御部73には、ハードディスクや、EEPROM等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部81が接続されている。記憶部81には、小切手画像データベース82が記憶されている。
小切手画像データベース82は、小切手処理装置1によって読み取られた小切手4の表面4aの表面画像を示す画像データ、及び、裏面4bの画像を示す画像データを記憶するデータベースである。これら小切手4の表面の画像を示す画像データ、及び、裏面の画像を示す画像データは、当該小切手4に記録された磁気インク文字が示す情報と関連づけて記憶される。
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手処理装置1の制御部71が小切手処理装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行し、制御部71に対して制御データを送信することにより、小切手処理装置1を制御する。また、本実施形態では、小切手処理装置1及びホストコンピューター70が協働して、光学読取装置として機能する。
【0026】
次いで、ホスト側制御部73が備える磁気インク文字認識部90について説明する。
磁気インク文字認識部90は、小切手処理装置1から受信した検出信号を示すデータに基づいて、磁気ヘッド54により検出された検出信号を、磁気インク文字の検出信号波形に対応するデジタルパターンを示す文字信号パターンと照合して検出信号をパターン認識し、これにより、小切手4に記録された磁気インク文字が示す情報をデータとして取得する。
ホスト側制御部73は、小切手4に記録された磁気インク文字列4Aに含まれる全ての文字について、磁気インク文字認識部90による磁気インク文字のパターン認識が成功した場合、磁気インク文字に記録された磁気インク文字の読み取りが成功したと判別し、それ以外の場合は磁気インク文字の読み取りが失敗したと判別する。
【0027】
次いで、ホスト側制御部73が備える読取制御部91について説明する。
図5は、表面側スキャナー52又は裏面側スキャナー53によって読み取られた読取画像を示す画像データの一例を模式的に示す図である。
上述したように、画像データは、ビットマップ形式のデータであり、データ上でドットマトリクス状に配置された各画素について、モノクロの読み取りが実行された場合は、画素毎に明度を示す階調値を保持し、また、フルカラーの読み取りが実行された場合は、画素毎に赤(R)、緑(G)及び青(B)系の色成分を階調値として保持するデータのことである。
なお、以下の説明では、説明の便宜のため、フルカラーの読み取りが実行されており、画像データは、画素毎に赤(R)、緑(G)及び青(B)系の色成分を階調値として保持したデータであるものとする。
図5に示すように、本実施形態では、読取画像を示す画像データは、小切手4の画像の領域である小切手領域A1と、この小切手領域A1を囲んだ領域であって、付勢ローラー85、86の画像の領域である付勢ローラー領域A2とを有している。
そして、ホスト側制御部73の読取制御部91は、読取画像を示す画像データが、これら小切手領域A1とこの小切手領域A1を囲む付勢ローラー領域A2との2つ領域を有することとなるように、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53を制御して、小切手4の画像の読み取りを実行する。
【0028】
表面側スキャナー52によって小切手4の画像を読み取る場合を例として読取制御部91の動作を具体的に説明すると、読取制御部91は、用紙長検出器61の検出値、及び、搬送用モーター37の駆動ステップ数により把握される小切手4の搬送量に基づいて、搬送路5における小切手4の前端4g(図1)及び後端4h(図1)の位置を、随時、管理する。
そして、読取制御部91は、小切手4の前端4gが受光部83に対応する位置に至る前に、表面側スキャナー52の光学読取ユニット78が備える照射部や受光部83等を作動させ、画像の読み取りを開始する。この場合、上述したように受光部83に対向して受光部83を覆った状態で付勢ローラー85が配置されているため、小切手4の前端4gが受光部83に対応する位置に至るまでの間は、付勢ローラー85に係る画像が光学読取ユニット78によって読み取られる。これにより、図5に示すように、画像データにおいて前側マージン領域A3が形成される。
また、読取制御部91は、小切手4の前端4gが受光部83に対応する位置を通過し、さらに、小切手4の後端4hが受光部83に対応する位置を通過した後、所定の時間の間は、表面側スキャナー52の光学読取ユニット78が備える照射部や受光部83等を作動させ、画像の読み取りを継続して実行する。この所定の時間の間は、付勢ローラー85に係る画像が光学読取ユニット78によって読み取られる。これにより、図5に示すように、画像データにおいて後側マージン領域A4が形成される。
また、上述したように、表面側スキャナー52の受光部83が備える受光センサーは、小切手処理装置1に処理されることが想定されている全ての小切手4の短辺よりも広い範囲に配設されているため、表面側スキャナー52によって画像の読み取りが実行されている間は、小切手4の上端4eより上方に位置する付勢ローラー85及び下端4fより下方に位置する付勢ローラー85の読み取りが実行される。これにより、図5に示すように、画像データにおいて、上側マージン領域A5及び下側マージン領域A6が形成される。
以上のようにして、読取制御部91は、読取画像を示す画像データが、これら小切手領域A1とこの小切手領域A1を囲む付勢ローラー領域A2との2つ領域を有することとなるように、表面側スキャナー52を制御する。以上のことは、読取制御部91が裏面側スキャナー53を制御する場合についても同様である。
【0029】
本実施形態では、詳細は後述するが付勢ローラー領域A2の前側マージン領域A3及び後側マージン領域A4に含まれる汚れ領域を検出することによって、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを検出するが、読取制御部91は、これらマージン領域に汚れ領域(後述)が現出する程度にマージン領域の大きさが確保されるように、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53を制御する。
このように、本実施形態では、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53による読み取り範囲が、小切手4のサイズよりも大きい構成とされる。これは、小切手処理装置1では、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53によって、搬送中の小切手4の画像が読み取られるという性質上、小切手4が傾いて搬送され、傾いた状態で表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53を通過する事態が生じ得るが、この場合であっても読み取り範囲を小切手4のサイズよりも大きい構成とすることにより、読取画像における小切手4に係る画像の外側にマージンを形成し、このマージンによって小切手4の全領域の画像を読み取ることができるようにしたためである。
【0030】
次いで、ホスト側制御部73が備える汚れ検出部92について説明する。
汚れ検出部92は、読取画像を示す画像データの付勢ローラー領域A2に基づいて、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを検出する。
【0031】
図6は、汚れ検出部92の動作を示すフローチャートである。
汚れ検出部92は、付勢ローラー85、86の汚れの検出にあたり、読取画像に基づいて生成された画像データを所定の座標系に展開する(ステップSA1)。これにより、画像データの各画素の座標は、座標系において原点として規定された位置からの相対的な距離によって一意に定義される。
以下の説明では、画像データが図5に示すような状態で座標系に展開されたものとする。すなわち図5では、画像データは、点P2A、点P2B、点P2C、点P2Dによって囲まれた領域として定義される。そして、小切手領域A1は、点P1A、点P1B、点P1C、点P1Dによって囲まれた領域として定義され、付勢ローラー領域A2は、点P2A、点P2B、点P2C、点P2Dによって囲まれた領域から小切手領域A1に対応する領域を除いた領域として定義される。
小切手領域A1において、点P1Aと点P1Bとを結んだ線分(以下、単に「線分P1A−P1B」と表現する。他の線分についても同様に表現する。)は、小切手4の下端4fに対応しており、また、線分P1B−P1Cは小切手4の前端4gに、線分P1C−P1Dは小切手4の上端4eに、線分P1D−P1Aは小切手4の後端4hにそれぞれ対応している。
ここで画像データは、垂直方向に一列に配列された受光センサーのそれぞれが一定間隔毎に検出した検出値に基づいて生成されたデータであるが、図5において、線分P2B−P2C、及び、線分P2A−P2Dの延在方向が、受光センサーの配列方向、すなわち、垂直方向に対応しており、また、線分P2A−P2B、及び、線分P2D−P2Cの延在方向がが、垂直方向と直交する方向、すなわち、小切手4の搬送方向に対応している。さらに、点P2Aが原点とされると共に、線分P2A−P2Bが座標系のX軸と重なるように配置され、また、線分P2A−P2DがY軸と重なるように配置される。従って、座標系のX軸は、搬送方向に対応する方向に平行に延びる仮想直線であり、Y軸は、垂直方向に対応する方向に平行に延びる仮想直線である。
なお、付勢ローラー85の色は、小切手4の背景の色として想定される色と異なる色とされ、これにより、画像データにおいて、小切手領域A1と付勢ローラー領域A2とを明確に区分けできる構成となっている。
【0032】
次いで、汚れ検出部92は、座標系に展開した画像データに基づいて、付勢ローラー領域A2に対応する領域に、付勢ローラー85の色に対応する色成分と異なる色成分を有する画素が集合した領域が存在するか否かを判別し、存在すると判別した場合はその領域を検出する(ステップSA2)。
詳細には、事前の実験等によって、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53と付勢ローラー85、86との間に小切手4が介在しない状態で、付勢ローラー85、86の画像を読み取った場合に、画像データにおける付勢ローラー85、86が読み取れた領域に含まれる画素の色成分が取り得る範囲が求められている。例えば、色成分の範囲は、例えば、各色のビット深度が8ビットの場合、(R、G、B)=(0、0、0)〜(5、5、5)等である。
そして、汚れ検出部92は、付勢ローラー領域A2に、上記範囲に含まれない色成分を有する画素が集合した領域が存在するか否かを判別し、存在すると判別した場合はその領域を検出する。汚れ検出部92は、領域を、座標系において複数の座標によって囲まれた領域として検出する。
なお、本実施形態では、付勢ローラー85、86は、上部付勢ローラー87と、下部付勢ローラー88との上下2つのローラーを備えており、上部付勢ローラー87と下部付勢ローラー88との間に隙間が介在するが、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53に対し隙間を介して対向する部材の色が事前に適切に調整されており、これにより、画像データにおいて当該隙間に対応する領域に含まれる各画素の色成分は、付勢ローラー85の色に対応する色成分が取り得る範囲内となっている。
図5の例では、汚れ検出部92は、付勢ローラー85の色に対応する色成分と異なる色成分を有する画素が集合した領域として、領域Q1、Q2、Q3の3つの領域を検出する。以下、付勢ローラー85の色に対応する色成分と異なる色成分を有する画素が集合した領域のことを、「汚れ領域」というものとする。
【0033】
次いで、汚れ検出部92は、ステップSA2で検出した汚れ領域について、X軸と略平行に延びた線状の形状をしており、かつ、付勢ローラー領域A2の端部である線分P2B−P2C、又は、線分P2A−P2Dに接する汚れ領域が存在するか否かを判別する(ステップSA3)。そして、このような汚れ領域が存在する場合(ステップSA3:YES)、汚れ検出部92は、付勢ローラー85に汚れが発生していると判別する(ステップSA4)。一方、このような汚れ領域が存在しない場合(ステップSA3:NO)、汚れ検出部92は、付勢ローラー85に汚れが発生していないと判別する(ステップSA5)。
このように、本実施形態では、付勢ローラー領域A2に、付勢ローラー85の色とは異なる色に対応する色成分を有する画素が集合した領域であって、小切手4の搬送方向に対応する方向に延びた線上の領域であり、かつ、付勢ローラー領域A2の外枠を形成する端部に接する領域が存在する場合、付勢ローラー85に汚れが発生していると判別するが、これは以下の理由による。
【0034】
図7は、上記の理由を説明するため、表面側スキャナー52と、付勢ローラー85と、小切手4とを模式的に示す図である。
上述したように、本実施形態では、小切手4の前端4gが受光部83に至る前に表面側スキャナー52を作動させて画像の読み取りを開始し、これにより、図5に示すように、画像データの付勢ローラー領域A2において前側マージン領域A3が形成されるようにしている。ここで、図7(A)のように、付勢ローラー85において、表面側スキャナー52の受光部83に対応する位置に塵埃等が付着して汚れが発生しているとする。この場合、画像データの前側マージン領域A3において、当該「汚れ」は、前側マージン領域A3の端部すなわち付勢ローラー領域A2の一方の端部に接し、かつ、X軸に平行に延びる線状の領域として現出する。
また、図7(B)に示すように、表面側スキャナー52と付勢ローラー85との間に小切手4が介在している間は、付勢ローラー85は、小切手4の搬送に応じて回転しつつ、小切手4を表面側スキャナー52に対して付勢する。この場合、小切手4に阻まれて、付勢ローラー85に付着した塵埃等の汚れは、表面側スキャナー52よって読み取られない。ただし、付勢ローラー85において図5に示す上側マージン領域A5及び下側マージン領域A6に対応する位置に塵埃等が付着している場合は、これら領域中に塵埃等に係る画像が点在して現出する。
また、本実施形態では、小切手4の後端4hが受光部83を通過した後も表面側スキャナー52を作動させて画像の読み取りを継続し、これにより、図5に示すように画像データの付勢ローラー領域A2において後側マージン領域A4が形成されるようにしている。
ここで、図7(C)のように、付勢ローラー85において、表面側スキャナー52の受光部83に対応する位置に塵埃等が付着し、汚れが発生しているとする。この場合、画像データの後側マージン領域A4おいて、当該「汚れ」は、後側マージン領域A4の端部すなわち付勢ローラー領域A2の一方の端部に接し、かつ、X軸に平行に延びる線状の領域として現出する。
【0035】
以上のように、付勢ローラー85に汚れが発生している場合であって、この汚れが受光部83に対応する場所に位置している場合、この「汚れ」は、画像データにおいて、付勢ローラー85の色とは異なる色に対応する色成分を有する画素が集合した領域であって、小切手4の搬送方向に対応する方向に延びた線上の領域であり、かつ、付勢ローラー領域A2の外枠を形成する端部に接する領域として現出する。これを踏まえ、本実施形態に係る汚れ検出部92は、このような領域が発生している場合は、付勢ローラー85に汚れが発生していると判別する。
このようにして付勢ローラー85に汚れが発生していることを検出することにより、付勢ローラー85は、確実かつ適切に付勢ローラー85に汚れが発生していることを検出できる。
また、例えば、受光部83が有する受光センサーの受光エラーや、画像データへの変換処理のエラー等に起因して、例外的に、画像データにおいて、付勢ローラー領域A2に、付勢ローラー85の色とは異なる色の色成分を有する画素の集合からなる領域(図5の領域Q3のような領域)が発生することがあるが、上述した手段によれば、このような場合であっても、汚れ検出部92は、当該領域を、汚れ領域として検出することがなく、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを適切に検出できる。
【0036】
なお、本実施形態では、表面側スキャナー52又は裏面側スキャナー53の受光部83に対応する位置に付勢ローラー85の汚れが位置している場合に、画像データ中に汚れ領域が現出するが、小切手処理装置1は、連続して複数枚の小切手4を処理する装置であり、複数枚の小切手4を処理する過程で、付勢ローラー85の表面の多くの部分が表面側スキャナー52又は裏面側スキャナー53によって読み取られることとなり、高い精度で付勢ローラー85の汚れを検出できる。
また、本実施形態では、付勢ローラー85は、上部付勢ローラー87と、下部付勢ローラー88との上下2つのローラーを備えているが、上部付勢ローラー87の下端の縁87a(図3)や、下部付勢ローラー88の上端の縁88a(図3)には、塵埃が付着しやすく汚れが発生しやすい傾向にある。従って、これら縁に汚れが発生したことを迅速、かつ、確実に検出したいとするより強いニーズがあるが、本実施形態では、汚れ検出部92によりこれら縁に汚れが発生していることを、迅速、かつ、確実に検出できる。
また、表面側スキャナー52又は裏面側スキャナー53において、LED等の光源から出力される光は、一般的に白く反射率の高い小切手4に対して反射し易いため、図5において、小切手領域A1は明度が高い傾向になる。一方、付勢ローラー85は、一般的にゴムなどで製造されるため、一般的に反射率が低く、図5において、付勢ローラー領域A2は明度が低い傾向になる。紙粉などを含む汚れは、反射する傾向にあるため、図5において、領域Q1、Q2は、周囲の付勢ローラー領域A2に対し、明度が高い傾向にあるため、明度の差により、汚れが発生していることを、迅速、かつ、確実に検出できる。
【0037】
次いで、ホスト側制御部73が備える画像補整部93について説明する。
画像補整部93は、汚れ領域が存在する画像データについて、画像データを補正して、汚れ領域を除去した新たな画像データを生成する。
具体的には、画像補整部93は、画像データにおいて、付勢ローラー領域A2中に存在する汚れ領域に含まれる各画素の色成分の値を、付勢ローラー85、86の色に対応する色の色成分が示す値に変換した画像データを生成する。これにより、汚れ領域が除去され、付勢ローラー領域A2の全ての画素が、付勢ローラー85、86の色に対応する色成分を有する画像データが生成される。
ここで、画像データは、小切手4の画像に対応する小切手領域A1と、付勢ローラー85の画像に対応する付勢ローラー領域A2との2つの領域を含んでいるが、例えば、画像データに基づいて、小切手4の画像の印刷や、小切手4の画像の表示パネルへの表示等が行われる場合は、画像データから小切手領域A1が特定された上で、特定された小切手領域A1に対応する画像データに基づいて、印刷や表示が実行される。そして、画像補整部93によって、汚れ領域が除去された画像データが生成されることにより、画像データから小切手領域A1を特定するための処理に際し、汚れ領域が当該処理へ悪影響(処理の煩雑化や、特性の精度の低下等)を及ぼすことが防止される。
【0038】
次いで、制御部71から入力された読取画像を示すデータに基づいて画像データを生成した後の、ホストコンピューター70の動作について説明する。
図8は、ホストコンピューター70の動作を示すフローチャートである。
まず、ホスト側制御部73の汚れ検出部92は、付勢ローラー85、86の汚れを検出し(ステップSB1)、付勢ローラー85、86に汚れが発生しているか否かを判別する(ステップSB2)。汚れが発生していない場合(ステップSB2:NO)、ホスト側制御部73は、処理を終了する。一方、汚れが発生している場合(ステップSB2:YES)、ホスト側制御部73の画像補整部93は、画像データを補正して画像データ中の汚れ領域を除去する(ステップSB3)。
次いで、ホスト側制御部73の報知部94は、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを報知する(ステップSB4)。報知の方法は、例えば、表示器73aにその旨表示し、また、音声出力部を備えている場合はその旨音声出力することによって行われる。これにより、ユーザーは、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを迅速、かつ、確実に認識でき、この認識に基づいて、付勢ローラー85、86の汚れの度合いを調べ、また、付勢ローラー85、86の汚れを除去する等適切な処理を行える。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る小切手処理装置1には、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53が設けられると共に、これらスキャナーに対して小切手4を付勢するための付勢ローラー85、86が設けられている。さらに、ホストコンピューター70のホスト側制御部73は、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53の読取画像に基づいて生成された画像データが、小切手領域A1とこの小切手領域A1を囲む付勢ローラー領域A2とを含むように、表面側スキャナー52及び裏面側スキャナー53を制御する読取制御部91と、画像データの付勢ローラー領域A2に基づいて、付勢ローラー85、86の汚れを検出する汚れ検出部92とを備えている。
これによれば、汚れ検出部92が、画像データの付勢ローラー領域A2に基づいて、付勢ローラー85、86の汚れを検出することによって、付勢ローラー85、86に汚れが発生している場合、そのことを適切に検出することができる。
【0040】
また、本実施形態では、汚れ検出部92は、画像データにおいて、付勢ローラー85、86の色とは異なる色に対応する色成分を有する画素が集合した領域であって、小切手4の搬送方向に対応する方向に延びた線上の領域であり、かつ、付勢ローラー領域A2の外枠を形成する端部に接する領域が存在する場合、付勢ローラー85、86に汚れが発生していると判別する。
このようにして付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを検出することにより、付勢ローラー85、86は、確実かつ適切に付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを検出できる。
また、例えば、受光部83が有する受光センサーの受光エラーや、画像データへの変換処理のエラー等に起因して、例外的に、画像データにおいて、付勢ローラー領域A2に、付勢ローラー85、86の色とは異なる色の色成分を有する画素の集合からなる領域が発生することがあるが、上述した手段によれば、このような場合であっても、汚れ検出部92は、当該領域を、汚れ領域として検出することなく、汚れの発生を適切に検出できる。
【0041】
また、本実施形態では、ホスト側制御部73の画像補整部93は、付勢ローラー85、86に汚れが発生しているため画像データに汚れ領域が発生している場合、画像データを補正して画像データ中の汚れ領域を除去した新たな画像データを生成する。
ここで、画像データは、小切手4の画像に対応する小切手領域A1と、付勢ローラー85、86の画像に対応する付勢ローラー領域A2との2つの領域を含んでいるが、例えば、画像データに基づいて、小切手4の画像の印刷や、小切手4の画像の表示パネルへの表示等が行われる場合は、画像データから小切手領域A1が特定された上で、特定された小切手領域A1に対応する画像データに基づいて、印刷や表示が実行される。そして、画像補整部93によって、汚れ領域が除去された画像データが生成されることにより、画像データから小切手領域A1を特定するための処理に際し、汚れ領域が当該処理へ悪影響(処理の煩雑化や、特性の精度の低下等)を及ぼすことが防止される。
【0042】
また、本実施形態では、汚れ検出部92は、画像データにおいて、付勢ローラー領域A2中に、付勢ローラー85,86の色に対応する色とは明度の異なる色を、付勢ローラー85,86の汚れとして検出する。
ここで、表面側スキャナー52又は裏面側スキャナー53において、LED等の光源から出力される光は、一般的に白く反射率の高い小切手4に対して反射し易いため、図5において、小切手領域A1は明度が高い傾向になる。一方、付勢ローラー85は、一般的にゴムなどで製造されるため、一般的に反射率が低く、図5において、付勢ローラー領域A2は明度が低い傾向になる。紙粉などを含む汚れは、反射する傾向にあるため、図5において、領域Q1、Q2は、周囲の付勢ローラー領域A2に対し、明度が高い傾向にあるため、明度の差により、汚れが発生していることを、迅速、かつ、確実に検出できる。
【0043】
また、本実施形態では、ホスト側制御部73の報知部94は、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを報知する。
これにより、ユーザーに対し、付勢ローラー85、86が汚れていることを伝え、また、クリーニング等を指示することができる。そして、ユーザーは、付勢ローラー85、86汚れが発生していることを迅速、かつ、確実に認識でき、この認識に基づいて、付勢ローラー85、86の汚れの度合いを調べ、また、付勢ローラー85、86の汚れを除去する等適切な処理を行える。
【0044】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73が汚れ検出部92、画像補整部93及び報知部94を備えると共に、ホストコンピューター70が小切手処理装置1を制御して、図8に示す動作が行われていた。しかしながら、小切手処理装置1が汚れ検出部92、画像補整部93及び報知部94を備え、かつ、小切手処理装置1単独で図8に示す動作を実行可能な構成としてもよい。この場合、報知部94による報知は、例えば、小切手処理装置1にLEDを設け、このLEDを所定の態様で点滅させることにより、付勢ローラー85、86に汚れが発生していることを報知するようにすればよい。また、この場合、小切手処理装置1が光学読取装置として機能する。
また、付勢ローラー85、86は、上部付勢ローラー87と、下部付勢ローラー88の2つのローラーを備えていたが、付勢ローラー85を1つのローラーによって構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…小切手処理装置(光学読取装置)、4…小切手(記録媒体)、30…小切手搬送機構(搬送部)、52…表面側スキャナー(光学読取部)、53…裏面側スキャナー(光学読取部)、70…ホストコンピューター(光学読取装置)、85、86…付勢ローラー(ローラー)、91…読取制御部、92…汚れ検出部、93…画像補整部、94…報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、
この光学読取部に対向して設けられるローラーと、
少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御する読取制御部と、
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出する汚れ検出部とを備えることを特徴とする光学読取装置。
【請求項2】
前記汚れ検出部は、
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像中に、前記ローラーの色に対応する色とは異なる色を有し、記録媒体の搬送方向に対応する方向に延び、かつ、前記ローラーに係る画像の外枠を形成する端部に接する線状の画像が存在する場合に、前記ローラーの汚れとして検出することを特徴とする請求項1に記載の光学読取装置。
【請求項3】
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に含まれるもので、少なくとも前記ローラーの色とは異なる色を有する部位の画像を、前記ローラーの色を有する画像に変換する画像補整部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学読取装置。
【請求項4】
前記汚れ検出部は、
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像中に、前記ローラーの色に対応する色とは明度の異なる色を、前記ローラーの汚れとして検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学読取装置。
【請求項5】
前記汚れ検出部により前記ローラーの汚れが検出された場合、その旨報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学読取装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、この光学読取部に対向して設けられるローラーと、を備える光学読取装置を制御して、
少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御し、
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出することを特徴とする光学読取装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体の搬送路に設けられ、前記搬送部により搬送される記録媒体を光学的に読み取る光学読取部と、この光学読取部に対向して設けられるローラーと、を備える光学読取装置を制御する制御部に読み取れるプログラムであって、
前記制御部を、
少なくとも搬送方向における前記光学読取部による読み取り範囲を前記記録媒体のサイズよりも大きくすることにより、前記光学読取部の読取画像が、前記記録媒体に係る画像の外側に前記ローラーに係る画像が付加された画像となるように、前記光学読取部を制御する読取制御部と、
前記光学読取部の読取画像における前記ローラーに係る画像に基づいて、前記ローラーの汚れを検出する汚れ検出部と、として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−160314(P2011−160314A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21888(P2010−21888)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】