光学部品保持部材およびその作製方法
【課題】本発明は、セラミック製の光学部品保持部材およびその作製方法に関し、脱脂、焼結過程を経た後の焼成体の、金型寸法に対する寸法変化が小さいセラミック製の光学部品保持部材とその作製方法を提供する。
【解決手段】ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するためのレンズホルダ11であって、前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有する。
【解決手段】ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するためのレンズホルダ11であって、前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製の光学部品保持部材およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話にはカメラ付きのものが一般化しており、また自動車にも後方確認用のカメラが搭載されてきている。これらカメラ付き携帯電話やカメラ付き自動車等に搭載されるカメラを構成する撮影レンズユニットには、極めて高い信頼性が要求されている。特に、自動車は専ら屋外で利用され、携帯電話も屋外で利用されることも多く、高温や低温、急激な温度変化による温度ショックなど、厳しい環境条件下での性能安定性や耐久性が必要とされている。
【0003】
そこで、温度変化の影響が極めて小さいセラミック製のレンズ保持部材が注目を受けてきている。
【0004】
ここで、レンズ等の光学部品を保持するための保持部材として、スポシュメンやコージェライトで低熱膨張性、剛性及び耐摩耗性を兼ね備え、黒色を呈するセラミックスを使用する事例が報告されている(特許文献1)。また、例えば、コージェライトをベースとしてカーボンを含有することにより黒色を呈する光学部品保持用セラミックスが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、光学部品保持部材への応用では無いが、緻密質のセラミックスを黒色化し、焼結時の色むら等を抑制する報告例もある。
【0006】
しかし、緻密質のセラミックスの場合、焼結時の収縮が大きいため、焼結体の精度がばらつき、そのために、二次的加工が必要となり、例えば、これを高均一性と高精度が求められる光学部品保持部材として使用する場合においては、コスト高になるなどの問題がある。
【0007】
さらに、多孔質で黒色を呈するセラミックス部品を焼結後未加工で使用する精密成形技術と組み合わせることで、セラミックス製保持部材を実用上低コストで提供可能な技術が提案されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、いずれの提案においても、セラミックスの脱脂、焼成のプロセスにおいての収縮を伴う寸法変化に関しての言及は無く、寸法変化の少ない反応焼結窒化ケイ素においてさえ、1%程度の収縮を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−220277号公報
【特許文献2】特開平11−343168号公報
【特許文献3】特開2007-238430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、脱脂、焼結過程を経ても金型寸法に対し寸法変化が小さいセラミック製の光学部品保持部材及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の光学部品保持部材の作製方法は、ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材作製方法であって、窒化処理前の混合粉末を構成する粉末として、ケイ素粉末、炭化ケイ素粉末、酸化鉄粉末が含まれることを特徴とする。
【0012】
ここで、上記混合粉末を成形した後、窒化せしめる行程を経て得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料は、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びケイ素と酸化鉄が反応して生じたケイ化鉄によって必然的に構成される。
【0013】
また、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料は、可視光に対する反射率が1%以下であり、かつ表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
【0014】
ここで、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上15mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることが好ましい。
【0015】
またより好適には、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上10mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることで窒化後も焼結体と同寸法の光学部品保持部材を得ることができる。特に好適には、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上30mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上10mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることが窒化後の焼結体精度が金型に対して優れた光学部品保持部材を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、上記成形体を射出成形により形成することで、焼成後未加工でかつ金型寸法に対して0.1%以内の公差を有する複雑形状の窒化ケイ素セラミックス基複合材料で構成される光学部品保持部材を得ることが可能となる。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の光学部品保持部材は、ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材であって、窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼結後未加工で金型寸法に対し寸法変化の小さく、かつ光学部品保持部材として必要な機能を有するセラミックス製複雑形状部品が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】セラミック製のレンズホルダを備えたレンズユニットの構成を示す図である。
【図2】炭化ケイ素を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の4点曲げ強度を示す図である。
【図3】材料別反射率を示した図である。
【図4】酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の強度を示す図である。
【図5】酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の反射率を示す図である。
【図6】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と反射率との関係を示した図である。
【図7】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と焼結体表面粗さRaとの関係を示した図である。
【図8】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と寸法変化との関係を示した図である。
【図9】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と4点曲げ強度との関係を示した図である。
【図10】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と反射率との関係を示した図である。
【図11】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と焼結体粗さRaとの関係を示した図である。
【図12】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と寸法変化との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、セラミック製のレンズホルダを備えたレンズユニットの構成を示す図である。
【0022】
図1のレンズユニット1にはレンズホルダ10が備えられており、そのレンズホルダ10には対物側開口101と結像側開口102とを有する中空部100が設けられている。このレンズホルダ10の対物側外周には雄ネジSR1が形成され、その対物側開口101から複数のレンズL1〜L4,複数の間隔環SP1〜SP3が光軸を揃えて装入される。なお、この例では、複数のレンズL1〜L4と複数の間隔環SP1〜SP3とが交互に配置されるようにしてレンズホルダ10の中空部100に順次に装入される構成のレンズユニットが示されているが、間隔環SP1〜SP3が省略されレンズの周縁部どうしを接触させることで各レンズの位置決めを行なう構成のレンズユニットもある。
【0023】
更に図1のレンズユニット1には、レンズホルダ10の中空部100の内部に装入された複数のレンズL1〜L4および間隔環SP1〜SP3を、対物側開口101から押さえ込んで固定するためのホルダキャップ11が備えられている。このホルダキャップ11は、レンズホルダ10の対物側の部分が入り込む装着開口110と、レンズホルダ内に装入された複数のレンズのうちの最も対物側に装入されたレンズL1の中央部を露出させる光学開口111とを有し、装着開口内側の内壁に、上記雄ネジSR1と螺合する雌ネジSR2が形成され、その雄ネジSR1とその雌ネジSR2との螺合により最も対物側に位置するレンズL1の対物側の面の周縁部を押えている。
【0024】
このホルダキャップ11によってレンズホルダ10内の複数のレンズL1〜L4および複数の間隔環SP1〜SP3が結像側開口側に向かって押さえ込まれることにより図1のレンズユニット1が組み立てられている。
【0025】
ここで、このレンズユニット1には、自動車に搭載することを考慮してレンズホルダ10にセラミックが用いられ、複数のレンズL1〜L4にガラスレンズが用いられている。さらにホルダキャップ11にもレンズホルダ10と同質のセラミックが用いられている。さらに、ここに示す例では、間隔環SP1〜SP3も、セラミック製のものが用いられている。
【0026】
この図1に示す例では、レンズホルダ10(あるいはレンズホルダ10とホルダキャップ11とを合わせたもの)が本発明にいう光学部品保持部材の一例に相当する。
【0027】
このレンズホルダ10およびホルダキャップ11としては、炭化ケイ素および鉄化合物を含有する窒化ケイ素セラミックス基複合材料が用いられている。このセラミックスは多孔質のものであり、線膨張係数は、約3×10−6であってレンズL1〜L4の材料であるガラスの線膨張係数(5〜10×10−6)にほぼ等しい。また、間隔環SP1〜SP3はジルコニアを原料とするセラミック製であって、線膨張係数は8〜11×10−6であり、こちらもガラスの線膨張係数(5〜10×10−6)にほぼ等しい。
【0028】
このように、この図1に示すレンズユニット1の場合、そのレンズユニット1を構成する、レンズホルダ10、ホルダキャップ11、レンズL1〜L4、および間隔環SP1〜SP3のいずれにも線膨張係数の極めて小さい材料を用い、かつほぼ等しい線膨張係数の材料で構成することで、広範囲の温度環境で使用可能な構造となっている。
【0029】
また、伸縮以外の特性として、レンズホルダ10やホルダキャップ11は、反射率1%以下、表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下では、上記のレンズホルダ10(又は、レンズホルダ10とホルダキャップ11)の好適な材料を探る一連の実験を説明することで、本発明の実施例を説明する。
【0031】
尚、以下では、各種のセラミック材料について説明するが、各種測定結果は、各原料粉末を混合し、有機バインダーを加え、射出成形により成形品を作製した後、脱脂、および窒化することにより得られた窒化ケイ素セラミックス基複合材料について測定した結果である。
【0032】
また、以下における材料比率の%は全てmass%である。
【0033】
図2は、炭化ケイ素を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の4点曲げ強度を示す図である。
【0034】
この図2の横軸は、焼結前のケイ素粉末に対する炭化ケイ素SiC粉末の混合比率(mass%)を示しており、縦軸は、JIS R1601ファインセラミックの室温曲げ強さ試験方法に記載された4点曲げ強さ試験結果を示している。
【0035】
また、図3は、材料別反射率を示した図である。
【0036】
この図3の横軸は、4種類の各材料を示しており縦軸は反射率(%)を示している。横軸の「窒化ケイ素+SiC」は、焼結前のケイ素Si70mass%と炭化ケイ素30mass%とを混合した材料を焼結したもの、「+Fe3O4」は、焼結前のケイ素Si70mass%と炭化ケイ素30mass%との混合材料90mass%にさらに酸化鉄Fe3O410mass%を混合した材料を焼結したものである。反射率は各波長別に示してある。
【0037】
図2より、反応焼結により得られる窒化ケイ素に焼結・窒化前に炭化ケイ素SiCを添加することにより、一定の比率までは強度が高まることがわかる。しかしこのときの反射率(図3)を見ると炭化ケイ素のみの添加では窒化ケイ素のみの場合(図3右から3番目)に対し反射率が高くなり反射率の低いセラミックが得られない(図3右から2番目)。そこで我々は反射率を抑える成分の検討を行い酸化鉄Fe3O4粉末を混合した原料粉末を用いて、窒化することにより反射率を低く抑えることができることを見出した(図3一番右)。炭化ケイ素SiCと酸化鉄Fe2O3との双方を添加した場合の詳細は後述する。
【0038】
図4は、酸化鉄Fe3O4を添加した焼結窒化ケイ素基セラミックスの強度を示す図である。
【0039】
この図4の横軸は焼結前のケイ素に対する酸化鉄Fe3O4の添加量を示しており、縦軸は4点曲げ強度を示している。なお、ここでは炭化ケイ素SiCは添加されていない。
【0040】
また、図5は、酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の反射率を示す図である。
【0041】
この図5の横軸は、図4と同様、焼結前のケイ素に対する酸化鉄Fe3O4の添加量を示している。縦軸は反射率である。反射率は、図3と同様、各波長別に示してある。なお、この図5の場合も炭化ケイ素SiCは添加されていない。
【0042】
酸化鉄Fe3O4のみを添加した場合は、図5から分かるように、可視光短波長側(400nm)では反射率が低くなるがそれ以外の可視光領域の波長(540〜830nm)で反射率の変化が少なく、十分な反射率低下が見られない。また、図4から、強度についても低下することがわかる。よって酸化鉄のみの添加では強度アップ、反射率低下は望めないことは明らかである。
【0043】
次に、焼結前のケイ素に炭化ケイ素SiCと酸化鉄Fe3O4の双方を添加した場合について説明する。
【0044】
図6〜図9は、ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と、それぞれ、反射率(図6)、焼結体表面粗さRa(図7)、寸法変化(図8)、および4点曲げ強度(図9)との関係を示した図である。
【0045】
図8の寸法変化は、脱脂後、焼結前の寸法に対する、焼結後の寸法比率を表わしている。射出成形金型の寸法との対比では、脱脂時に0.4%〜0.8%程度収縮することから、焼結により同じ程度膨張することで射出成形金型と同寸法の焼結体が得られることになる。
【0046】
ケイ素に炭化ケイ素SiCを加えたものにさらに酸化鉄Fe3O4を添加し、酸化鉄Fe3O4の配合量を増やすことによる反射率の変化を確認した(図6)。この結果より、酸化鉄を配合することで反射率が全体的に低下することが確認できる。酸化鉄を微少量(1%)添加した場合のみ若干増加が見られるがそれ以上の量を添加した場合では、添加しない場合に対し反射率が低い結果が得られた。酸化鉄の添加量15%以上では添加量増による効果は少なくなることから15%以下が適当と考える。
【0047】
通常、反射率を低くするために表面を粗くすることは一般的に用いられる手法であるが、図7に示すように、酸化鉄Fe3O4の添加により表面粗さも小さくなり、炭化ケイ素と酸化鉄の組み合わせにより、表面を粗くすることによる組立性の低下を招くことなく、表面の粗さを抑えたまま反射率を下げることができる。この表面粗さについても、同様に微少量(1%)では若干の増加が見られるがそれ以上では低い結果が得られた。
【0048】
また、寸法変化についても、図8に示すように、脱脂時の収縮量0.4%〜0.8%に対し、酸化鉄Fe3O4を添加することにより焼成時の体積が増加し、5%以上の添加でほぼ成形品同等の焼結体寸法が得られる。したがって酸化鉄Fe3O4の添加量は5%以上であることが好ましい。ただし、酸化鉄Fe3O4の添加量5%以下では、添加量変化に対する寸法変化の変化量が大きいことから添加量誤差で焼結体の寸法変化が大きくばらつく可能性がある。また図6に示す反射率に関しても酸化鉄添加量5%では反射率は添加量10%と比べ少し高い。したがって酸化鉄Fe3O4の添加量は10%以上であることがさらに好ましい。
【0049】
図9に示す曲げ強度についても炭化ケイ素を加えたものに酸化鉄Fe3O4をさらに加えた場合、15%程度まではなにも添加しない窒化ケイ素(図2参照)に対し高い値を示し、特に7.5〜10%程度で高い値を示している。10%を超えると4点曲げ強度が低下するが、添加量は15%では添加量5%と同程度の強度を示している。したがって、酸化鉄Fe3O4の添加量は15%以下であることが好ましい。
【0050】
図10〜図12は、ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と、それぞれ、反射率(図10)、焼結体粗さRa(図11)、および寸法変化(図12)との関係を示した図である。
【0051】
図10〜図12のそれぞれについて横軸は酸化ケイ素SiCの添加量を表わしている。ここでは酸化鉄Fe3O4の添加量は10mass%と一定であり、残りの90mass%をケイ素Siと炭化ケイ素SiCとで分けている。すなわち、例えば横軸の炭化ケイ素SiCが20mass%ということは、Si70mass%、SiC20mass%、およびFe3O410mass%ということを意味している。
【0052】
図10から分かるように、酸化鉄Fe3O4のみの投入時(図5参照)に比べ、炭化ケイ素SiC50%程度の添加まで全ての波長域で反射率が低下する。ただし、80%では反射率は大きく上昇している。50%と80%との間は未確認であるが、少なくとも50%以下であれば反射率は低減する。したがって炭化ケイ素の混合量は50%以下であることが好ましい。
【0053】
また、図11から分かるようにこのときの表面粗さRaも投入量に応じて小さくなり良好な平滑面が得られる。寸法変化については、図12に示すように、添加量増により若干低下傾向を示しているが10%以上の添加でほぼ狙い通りの寸法変化が得られる。ただし、炭化ケイ素SiCの添加量が10%の場合、寸法についてはほぼ狙い通りではあるが、図10から分かるように反射率の低減が小さい。したがって炭化ケイ素SiCの添加量は20%以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 レンズユニット
10 レンズホルダ
11 ホルダキャップ
100 中空部
101 対物側開口
102 結像側開口
110 装着開口
111 光学開口
L1〜L4 レンズ
SP1〜SP3 間隔環
SR1 雄ネジ
SR2 雌ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製の光学部品保持部材およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話にはカメラ付きのものが一般化しており、また自動車にも後方確認用のカメラが搭載されてきている。これらカメラ付き携帯電話やカメラ付き自動車等に搭載されるカメラを構成する撮影レンズユニットには、極めて高い信頼性が要求されている。特に、自動車は専ら屋外で利用され、携帯電話も屋外で利用されることも多く、高温や低温、急激な温度変化による温度ショックなど、厳しい環境条件下での性能安定性や耐久性が必要とされている。
【0003】
そこで、温度変化の影響が極めて小さいセラミック製のレンズ保持部材が注目を受けてきている。
【0004】
ここで、レンズ等の光学部品を保持するための保持部材として、スポシュメンやコージェライトで低熱膨張性、剛性及び耐摩耗性を兼ね備え、黒色を呈するセラミックスを使用する事例が報告されている(特許文献1)。また、例えば、コージェライトをベースとしてカーボンを含有することにより黒色を呈する光学部品保持用セラミックスが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、光学部品保持部材への応用では無いが、緻密質のセラミックスを黒色化し、焼結時の色むら等を抑制する報告例もある。
【0006】
しかし、緻密質のセラミックスの場合、焼結時の収縮が大きいため、焼結体の精度がばらつき、そのために、二次的加工が必要となり、例えば、これを高均一性と高精度が求められる光学部品保持部材として使用する場合においては、コスト高になるなどの問題がある。
【0007】
さらに、多孔質で黒色を呈するセラミックス部品を焼結後未加工で使用する精密成形技術と組み合わせることで、セラミックス製保持部材を実用上低コストで提供可能な技術が提案されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、いずれの提案においても、セラミックスの脱脂、焼成のプロセスにおいての収縮を伴う寸法変化に関しての言及は無く、寸法変化の少ない反応焼結窒化ケイ素においてさえ、1%程度の収縮を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−220277号公報
【特許文献2】特開平11−343168号公報
【特許文献3】特開2007-238430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、脱脂、焼結過程を経ても金型寸法に対し寸法変化が小さいセラミック製の光学部品保持部材及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の光学部品保持部材の作製方法は、ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材作製方法であって、窒化処理前の混合粉末を構成する粉末として、ケイ素粉末、炭化ケイ素粉末、酸化鉄粉末が含まれることを特徴とする。
【0012】
ここで、上記混合粉末を成形した後、窒化せしめる行程を経て得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料は、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びケイ素と酸化鉄が反応して生じたケイ化鉄によって必然的に構成される。
【0013】
また、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料は、可視光に対する反射率が1%以下であり、かつ表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
【0014】
ここで、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上15mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることが好ましい。
【0015】
またより好適には、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上10mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることで窒化後も焼結体と同寸法の光学部品保持部材を得ることができる。特に好適には、上記成形体を形成するための混合粉末の組成は、ケイ素粉末に、20mass%以上30mass%以下の炭化ケイ素粉末と、5mass%以上10mass%以下の酸化鉄Fe3O4粉末とを混合した粉末を用いることが窒化後の焼結体精度が金型に対して優れた光学部品保持部材を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の光学部品保持部材の作製方法において、上記成形体を射出成形により形成することで、焼成後未加工でかつ金型寸法に対して0.1%以内の公差を有する複雑形状の窒化ケイ素セラミックス基複合材料で構成される光学部品保持部材を得ることが可能となる。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の光学部品保持部材は、ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材であって、窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼結後未加工で金型寸法に対し寸法変化の小さく、かつ光学部品保持部材として必要な機能を有するセラミックス製複雑形状部品が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】セラミック製のレンズホルダを備えたレンズユニットの構成を示す図である。
【図2】炭化ケイ素を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の4点曲げ強度を示す図である。
【図3】材料別反射率を示した図である。
【図4】酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の強度を示す図である。
【図5】酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の反射率を示す図である。
【図6】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と反射率との関係を示した図である。
【図7】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と焼結体表面粗さRaとの関係を示した図である。
【図8】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と寸法変化との関係を示した図である。
【図9】ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と4点曲げ強度との関係を示した図である。
【図10】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と反射率との関係を示した図である。
【図11】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と焼結体粗さRaとの関係を示した図である。
【図12】ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と寸法変化との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、セラミック製のレンズホルダを備えたレンズユニットの構成を示す図である。
【0022】
図1のレンズユニット1にはレンズホルダ10が備えられており、そのレンズホルダ10には対物側開口101と結像側開口102とを有する中空部100が設けられている。このレンズホルダ10の対物側外周には雄ネジSR1が形成され、その対物側開口101から複数のレンズL1〜L4,複数の間隔環SP1〜SP3が光軸を揃えて装入される。なお、この例では、複数のレンズL1〜L4と複数の間隔環SP1〜SP3とが交互に配置されるようにしてレンズホルダ10の中空部100に順次に装入される構成のレンズユニットが示されているが、間隔環SP1〜SP3が省略されレンズの周縁部どうしを接触させることで各レンズの位置決めを行なう構成のレンズユニットもある。
【0023】
更に図1のレンズユニット1には、レンズホルダ10の中空部100の内部に装入された複数のレンズL1〜L4および間隔環SP1〜SP3を、対物側開口101から押さえ込んで固定するためのホルダキャップ11が備えられている。このホルダキャップ11は、レンズホルダ10の対物側の部分が入り込む装着開口110と、レンズホルダ内に装入された複数のレンズのうちの最も対物側に装入されたレンズL1の中央部を露出させる光学開口111とを有し、装着開口内側の内壁に、上記雄ネジSR1と螺合する雌ネジSR2が形成され、その雄ネジSR1とその雌ネジSR2との螺合により最も対物側に位置するレンズL1の対物側の面の周縁部を押えている。
【0024】
このホルダキャップ11によってレンズホルダ10内の複数のレンズL1〜L4および複数の間隔環SP1〜SP3が結像側開口側に向かって押さえ込まれることにより図1のレンズユニット1が組み立てられている。
【0025】
ここで、このレンズユニット1には、自動車に搭載することを考慮してレンズホルダ10にセラミックが用いられ、複数のレンズL1〜L4にガラスレンズが用いられている。さらにホルダキャップ11にもレンズホルダ10と同質のセラミックが用いられている。さらに、ここに示す例では、間隔環SP1〜SP3も、セラミック製のものが用いられている。
【0026】
この図1に示す例では、レンズホルダ10(あるいはレンズホルダ10とホルダキャップ11とを合わせたもの)が本発明にいう光学部品保持部材の一例に相当する。
【0027】
このレンズホルダ10およびホルダキャップ11としては、炭化ケイ素および鉄化合物を含有する窒化ケイ素セラミックス基複合材料が用いられている。このセラミックスは多孔質のものであり、線膨張係数は、約3×10−6であってレンズL1〜L4の材料であるガラスの線膨張係数(5〜10×10−6)にほぼ等しい。また、間隔環SP1〜SP3はジルコニアを原料とするセラミック製であって、線膨張係数は8〜11×10−6であり、こちらもガラスの線膨張係数(5〜10×10−6)にほぼ等しい。
【0028】
このように、この図1に示すレンズユニット1の場合、そのレンズユニット1を構成する、レンズホルダ10、ホルダキャップ11、レンズL1〜L4、および間隔環SP1〜SP3のいずれにも線膨張係数の極めて小さい材料を用い、かつほぼ等しい線膨張係数の材料で構成することで、広範囲の温度環境で使用可能な構造となっている。
【0029】
また、伸縮以外の特性として、レンズホルダ10やホルダキャップ11は、反射率1%以下、表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下では、上記のレンズホルダ10(又は、レンズホルダ10とホルダキャップ11)の好適な材料を探る一連の実験を説明することで、本発明の実施例を説明する。
【0031】
尚、以下では、各種のセラミック材料について説明するが、各種測定結果は、各原料粉末を混合し、有機バインダーを加え、射出成形により成形品を作製した後、脱脂、および窒化することにより得られた窒化ケイ素セラミックス基複合材料について測定した結果である。
【0032】
また、以下における材料比率の%は全てmass%である。
【0033】
図2は、炭化ケイ素を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の4点曲げ強度を示す図である。
【0034】
この図2の横軸は、焼結前のケイ素粉末に対する炭化ケイ素SiC粉末の混合比率(mass%)を示しており、縦軸は、JIS R1601ファインセラミックの室温曲げ強さ試験方法に記載された4点曲げ強さ試験結果を示している。
【0035】
また、図3は、材料別反射率を示した図である。
【0036】
この図3の横軸は、4種類の各材料を示しており縦軸は反射率(%)を示している。横軸の「窒化ケイ素+SiC」は、焼結前のケイ素Si70mass%と炭化ケイ素30mass%とを混合した材料を焼結したもの、「+Fe3O4」は、焼結前のケイ素Si70mass%と炭化ケイ素30mass%との混合材料90mass%にさらに酸化鉄Fe3O410mass%を混合した材料を焼結したものである。反射率は各波長別に示してある。
【0037】
図2より、反応焼結により得られる窒化ケイ素に焼結・窒化前に炭化ケイ素SiCを添加することにより、一定の比率までは強度が高まることがわかる。しかしこのときの反射率(図3)を見ると炭化ケイ素のみの添加では窒化ケイ素のみの場合(図3右から3番目)に対し反射率が高くなり反射率の低いセラミックが得られない(図3右から2番目)。そこで我々は反射率を抑える成分の検討を行い酸化鉄Fe3O4粉末を混合した原料粉末を用いて、窒化することにより反射率を低く抑えることができることを見出した(図3一番右)。炭化ケイ素SiCと酸化鉄Fe2O3との双方を添加した場合の詳細は後述する。
【0038】
図4は、酸化鉄Fe3O4を添加した焼結窒化ケイ素基セラミックスの強度を示す図である。
【0039】
この図4の横軸は焼結前のケイ素に対する酸化鉄Fe3O4の添加量を示しており、縦軸は4点曲げ強度を示している。なお、ここでは炭化ケイ素SiCは添加されていない。
【0040】
また、図5は、酸化鉄Fe3O4を添加した窒化ケイ素セラミックス基複合材料の反射率を示す図である。
【0041】
この図5の横軸は、図4と同様、焼結前のケイ素に対する酸化鉄Fe3O4の添加量を示している。縦軸は反射率である。反射率は、図3と同様、各波長別に示してある。なお、この図5の場合も炭化ケイ素SiCは添加されていない。
【0042】
酸化鉄Fe3O4のみを添加した場合は、図5から分かるように、可視光短波長側(400nm)では反射率が低くなるがそれ以外の可視光領域の波長(540〜830nm)で反射率の変化が少なく、十分な反射率低下が見られない。また、図4から、強度についても低下することがわかる。よって酸化鉄のみの添加では強度アップ、反射率低下は望めないことは明らかである。
【0043】
次に、焼結前のケイ素に炭化ケイ素SiCと酸化鉄Fe3O4の双方を添加した場合について説明する。
【0044】
図6〜図9は、ケイ素と炭化ケイ素を7:3の重量比率で混合した材料に対する酸化鉄Fe3O4の混合比率と、それぞれ、反射率(図6)、焼結体表面粗さRa(図7)、寸法変化(図8)、および4点曲げ強度(図9)との関係を示した図である。
【0045】
図8の寸法変化は、脱脂後、焼結前の寸法に対する、焼結後の寸法比率を表わしている。射出成形金型の寸法との対比では、脱脂時に0.4%〜0.8%程度収縮することから、焼結により同じ程度膨張することで射出成形金型と同寸法の焼結体が得られることになる。
【0046】
ケイ素に炭化ケイ素SiCを加えたものにさらに酸化鉄Fe3O4を添加し、酸化鉄Fe3O4の配合量を増やすことによる反射率の変化を確認した(図6)。この結果より、酸化鉄を配合することで反射率が全体的に低下することが確認できる。酸化鉄を微少量(1%)添加した場合のみ若干増加が見られるがそれ以上の量を添加した場合では、添加しない場合に対し反射率が低い結果が得られた。酸化鉄の添加量15%以上では添加量増による効果は少なくなることから15%以下が適当と考える。
【0047】
通常、反射率を低くするために表面を粗くすることは一般的に用いられる手法であるが、図7に示すように、酸化鉄Fe3O4の添加により表面粗さも小さくなり、炭化ケイ素と酸化鉄の組み合わせにより、表面を粗くすることによる組立性の低下を招くことなく、表面の粗さを抑えたまま反射率を下げることができる。この表面粗さについても、同様に微少量(1%)では若干の増加が見られるがそれ以上では低い結果が得られた。
【0048】
また、寸法変化についても、図8に示すように、脱脂時の収縮量0.4%〜0.8%に対し、酸化鉄Fe3O4を添加することにより焼成時の体積が増加し、5%以上の添加でほぼ成形品同等の焼結体寸法が得られる。したがって酸化鉄Fe3O4の添加量は5%以上であることが好ましい。ただし、酸化鉄Fe3O4の添加量5%以下では、添加量変化に対する寸法変化の変化量が大きいことから添加量誤差で焼結体の寸法変化が大きくばらつく可能性がある。また図6に示す反射率に関しても酸化鉄添加量5%では反射率は添加量10%と比べ少し高い。したがって酸化鉄Fe3O4の添加量は10%以上であることがさらに好ましい。
【0049】
図9に示す曲げ強度についても炭化ケイ素を加えたものに酸化鉄Fe3O4をさらに加えた場合、15%程度まではなにも添加しない窒化ケイ素(図2参照)に対し高い値を示し、特に7.5〜10%程度で高い値を示している。10%を超えると4点曲げ強度が低下するが、添加量は15%では添加量5%と同程度の強度を示している。したがって、酸化鉄Fe3O4の添加量は15%以下であることが好ましい。
【0050】
図10〜図12は、ケイ素と炭化ケイ素との混合材料90mass%に酸化鉄Fe3O410mass%を添加した材料における、SiC添加量(mass%)と、それぞれ、反射率(図10)、焼結体粗さRa(図11)、および寸法変化(図12)との関係を示した図である。
【0051】
図10〜図12のそれぞれについて横軸は酸化ケイ素SiCの添加量を表わしている。ここでは酸化鉄Fe3O4の添加量は10mass%と一定であり、残りの90mass%をケイ素Siと炭化ケイ素SiCとで分けている。すなわち、例えば横軸の炭化ケイ素SiCが20mass%ということは、Si70mass%、SiC20mass%、およびFe3O410mass%ということを意味している。
【0052】
図10から分かるように、酸化鉄Fe3O4のみの投入時(図5参照)に比べ、炭化ケイ素SiC50%程度の添加まで全ての波長域で反射率が低下する。ただし、80%では反射率は大きく上昇している。50%と80%との間は未確認であるが、少なくとも50%以下であれば反射率は低減する。したがって炭化ケイ素の混合量は50%以下であることが好ましい。
【0053】
また、図11から分かるようにこのときの表面粗さRaも投入量に応じて小さくなり良好な平滑面が得られる。寸法変化については、図12に示すように、添加量増により若干低下傾向を示しているが10%以上の添加でほぼ狙い通りの寸法変化が得られる。ただし、炭化ケイ素SiCの添加量が10%の場合、寸法についてはほぼ狙い通りではあるが、図10から分かるように反射率の低減が小さい。したがって炭化ケイ素SiCの添加量は20%以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 レンズユニット
10 レンズホルダ
11 ホルダキャップ
100 中空部
101 対物側開口
102 結像側開口
110 装着開口
111 光学開口
L1〜L4 レンズ
SP1〜SP3 間隔環
SR1 雄ネジ
SR2 雌ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材であって、
前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有することを特徴とする光学部品保持部材。
【請求項2】
前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に含まれる鉄化合物がケイ化鉄であることを特徴とする請求項1記載の光学部品保持部材。
【請求項3】
可視光に対する反射率が1%以下であり、かつ表面粗さRaが1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学部品保持部材。
【請求項4】
ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製される窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる光学部品を保持するための光学部品保持部材の作製方法であって、ケイ素粉末に、炭化ケイ素粉末および酸化鉄粉末を加えた混合粉末を作製したのち、有機バインダーを添加することで作製した成形体を脱脂し、窒素雰囲気中でケイ素と窒素とを反応せしめる工程を経て得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる光学部品保持部材を作製することを特徴とする光学部品保持部材の作製方法。
【請求項5】
前記成形体を形成するにあたり、ケイ素に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素と、5mass%以上15mass%以下の酸化鉄Fe3O4とを混合して成形することを特徴とする請求項4記載の光学部品保持部材の作製方法。
【請求項6】
前記成形体を射出成形により形成することを特徴とする請求項4又は5記載の光学部品保持部材の作製方法。
【請求項7】
前記成形体を脱脂して焼結するにあたり、該成形体形成用の金型の寸法に対し焼結後未加工で0.1%以内の公差の窒化ケイ素セラミックス基複合材料を形成することを特徴とする請求項4から6のうちのいずれか1項記載の光学部品保持部材の作製方法。
【請求項1】
ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製された窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる、光学部品を保持するための光学部品保持部材であって、
前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に炭化ケイ素および鉄化合物を含有することを特徴とする光学部品保持部材。
【請求項2】
前記窒化ケイ素セラミックス基複合材料中に含まれる鉄化合物がケイ化鉄であることを特徴とする請求項1記載の光学部品保持部材。
【請求項3】
可視光に対する反射率が1%以下であり、かつ表面粗さRaが1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学部品保持部材。
【請求項4】
ケイ素と窒素を反応させ窒化せしめる工程を経て作製される窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる光学部品を保持するための光学部品保持部材の作製方法であって、ケイ素粉末に、炭化ケイ素粉末および酸化鉄粉末を加えた混合粉末を作製したのち、有機バインダーを添加することで作製した成形体を脱脂し、窒素雰囲気中でケイ素と窒素とを反応せしめる工程を経て得られる窒化ケイ素セラミックス基複合材料からなる光学部品保持部材を作製することを特徴とする光学部品保持部材の作製方法。
【請求項5】
前記成形体を形成するにあたり、ケイ素に、20mass%以上50mass%以下の炭化ケイ素と、5mass%以上15mass%以下の酸化鉄Fe3O4とを混合して成形することを特徴とする請求項4記載の光学部品保持部材の作製方法。
【請求項6】
前記成形体を射出成形により形成することを特徴とする請求項4又は5記載の光学部品保持部材の作製方法。
【請求項7】
前記成形体を脱脂して焼結するにあたり、該成形体形成用の金型の寸法に対し焼結後未加工で0.1%以内の公差の窒化ケイ素セラミックス基複合材料を形成することを特徴とする請求項4から6のうちのいずれか1項記載の光学部品保持部材の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−286662(P2010−286662A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140333(P2009−140333)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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