光導波路およびそれを用いた熱アシスト磁気記録ヘッド
【課題】レーザ光発生装置の設置を簡単にするため、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させる構造、および、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる光導波路を提供する。
【解決手段】導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、コアは、平板形状で、光が入射される広幅のコア基部と、コア基部に連接されて幅が徐々に絞られる絞り部と、絞り部に連接され延設された先端コア部とを有し、広幅のコア基部の一方の平面上に、グレーティング(格子)を備え、グレーティングは、平面に多数の凹溝を幅方向に有した構成で、グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合できるように構成され、グレーティングの周期は、垂直入射されるレーザ光の波長よりも小さく構成されており、グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たす。
【解決手段】導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、コアは、平板形状で、光が入射される広幅のコア基部と、コア基部に連接されて幅が徐々に絞られる絞り部と、絞り部に連接され延設された先端コア部とを有し、広幅のコア基部の一方の平面上に、グレーティング(格子)を備え、グレーティングは、平面に多数の凹溝を幅方向に有した構成で、グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合できるように構成され、グレーティングの周期は、垂直入射されるレーザ光の波長よりも小さく構成されており、グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路およびそれを用いた熱アシスト磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドおよび媒体を用いた磁気記録の分野においては、磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録媒体のさらなる向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、現在、読み出し用の磁気抵抗(MR)素子と書き込み用の電磁変換素子とが積層された構造からなる複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
【0003】
一方、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかしながら、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
この問題への対策として、磁性微粒子の磁気異方性エネルギーKuを大きくすることが考えられる。しかし、このKuの増加は、磁気記録媒体の異方性磁界(保磁力)の増加をもたらす。これに対して、薄膜磁気ヘッドにより書き込み磁界強度の上限は、ヘッド内の磁気コアを構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、磁気記録媒体の異方性磁界が、この書き込み磁界強度の上限から決まる許容値を超えると、書き込みが不可能となってしまう。現在、このような熱安定性の問題を解決する1つの方法として、Kuの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界を印加する直前に磁気記録媒体に熱を加えるころによって、異方性磁界を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。
【0005】
この熱アシスト磁気記録方式においては、照射されたレーザ光によって励起されたプラズモンから近接場光を生成する金属片である近接場光プローブ、いわゆるプラズモン・アンテナを用いる方法が一般に知られている。例えば、米国特許第6,768,556号明細書(US Patent No. 6,768,556)においては、基板上に形成された円錐体等の形状をした金属の散乱体と、その散乱体の周辺に形成された誘電体等の膜とを備えたプラズモン発生素子が開示されている。
【0006】
また、米国特許出願公開第2004/081031号明細書(US Patent Publication No.2004/081031 A1)においては、プラズモン発生素子が、その照射される面が磁気記録媒体に垂直となるように、垂直磁気記録用ヘッドの主磁極に接する位置に形成された構成が開示されている。また、米国特許出願公開第2003/066944号明細書(US Patent Publication No.2003/066944 A1)においては、プラズモン・アンテナの先端を優先的に磁気記録媒体に近づけることによって、磁気記録媒体に対してより強い近接場光の照射を試みた技術が開示されている。
【0007】
本願発明者らもまた、近接場光の照射を利用して磁気記録の可能性を極限まで追求し、より改善された熱アシスト磁気記録ヘッドの開発を進めている。
【0008】
近接場光の照射を利用した熱アシスト記録を磁気記録ヘッドで行うに際しては、発光素子としてのレーザ発生装置を磁気記録ヘッドに搭載し、レーザ発生装置から発せられたレーザ光を光導波路(光waveguide)に取り込み、磁気記録媒体に対向する位置付近に存在するプラズモン・アンテナまで導く必要性がある。
【0009】
レーザ発生装置から発せられたレーザ光を光導波路に取り込む際、光導波路の片側平面の上に、grating (格子)を設けて、当該grating (格子)を介して、レーザ光を光導波路に光結合させ、しかる後、光導波路内を伝搬させる手法がある(US 6944112、文献Nature Photonics (Seagate) 2009.03.22など)。
【0010】
US 6944112に開示の技術は、planer 導波路(平面導波路)に形成された格子に対して、レーザ発生装置から発せられたレーザ光を垂直入射させるものではなく、斜め照射するものである。また、planer 導波路(平面導波路)の外部形態は、放物線形状であり、単一モードに絞り込む形態であるスポットサイズコンバータとは異なる。US 6944112の開示の技術によれば、伝搬される光は、一旦、放物線形状の部分で反射されて、焦点に集光される。
【0011】
また、文献Nature Photonics (Seagate) に開示の技術は、US 6944112と同様に、平面導波路の外部形態は、放物線形状であり、単一モードに絞り込む形態であるスポットサイズコンバータではない。従って、一旦、放物線形状部分で反射されて、焦点に集光される。また、当該文献においては、2つの格子が並列に配列されたdual offset gratingを備えている。そのため、放物線形状部分で反射された光同士が焦点で交差するために、最終的な光の偏光(振動)方向は、紙面の上での上下方向と同じ方向となる。そのため、ABSへ向かって導波する表面プラズモンを使用する素子には効率よく結合できないという不都合が生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第US 6,944,112号
【特許文献2】特開2008−010093
【特許文献3】特開2008−016096
【特許文献4】特開2010−108584
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nature Photonics (Seagate):PUBLISHED ONLINE:22 MARCH 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような実状のもとに本願発明は創案されたものであって、その目的は、レーザ光発生装置との配置関係をシンプルにして、レーザ光発生装置の設置を簡単に行うことが可能となるように、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させる構造、および、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる光導波路を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の光導波路は、光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアを構成する材料の屈折率は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも大きくなっており、前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されてなるように構成される。
【0016】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記コア基部の導波方向と反対側の端面(後端部)には、反射膜が設けられているように構成される。
【0017】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記幅細の先端コア部は、前記絞り部の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設されているように構成される。
【0018】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記グレーティング(格子)は、single grating として構成される。
【0019】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記グレーティング(格子)は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される。
【0020】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記広幅のコア基部の幅W1は、0.4〜10.0μmであり、前記狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μmであるように構成される。
【0021】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドは、媒体対向面側の端面から書き込み磁界を発生させる磁極と、プラズモンを励起するための光を伝播させる上記記載の光導波路と、前記光とプラズモンモードで結合する部分であるプラズモン発生素子と、を備えてなるように構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させることができるとともに、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる。これにより、光導波路とレーザ光発生装置との配置関係がきわめてシンプルとなり、レーザ光発生装置などの設置を容易に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、発光素子から発せられた光ビームが照射されている本発明の光導波路の模式的断面図を示す図面である。
【図2】図2は、図1に示される本発明の光導波路のα−α断面矢視図であり、クラッドを除いて描いた断面図である。
【図3】図3は、図1に示される光導波路の要部の拡大断面図であり、コアのグレーティング形成面にレーザ光が垂直入射される部分の拡大断面図である。
【図4】図4は、図1に相当する図面であって、コアのグレーティング形成面にレーザ光を垂直入射させる他の方法を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光導波路を適用させることのできる磁気記録装置およびHGAの一実施形態の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の光導波路を適用させることのできる熱アシスト磁気記録ヘッドの要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部の構成を概略的に示す図6のA―A面による断面図である。
【図8】図8は、導波路、プラズモン発生素子および主磁極層の構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】図9は、プラズモン発生素子および電磁変換素子のヘッド部端面上での端面の形状を示す平面図である。
【図10】図10は、表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録を説明するための概略図である。
【図11】図11は、図5に示した磁気ディスク装置の記録再生および発光制御回路の回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、他の形態のプラズモン発生素子を適用した場合の図8相当図であり、導波路、プラズモン発生素子および主磁極層の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】図13は、他の形態のプラズモン発生素子を適用した場合の図9相当図であり、プラズモン発生素子および電磁変換素子のヘッド部端面上での端面の形状を示す平面図である。
【図14】図14は、図2相当図であり、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コアの形態の一例を示す平面図である。
【図15】図15は、図2相当図であり、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コアの形態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための光導波路の最良の形態について詳細に説明する。
図1は、発光素子から発せられた光ビームが照射されている本発明の光導波路の模式的断面図を示す図面であり、図2は、図1に示される本発明の光導波路のα−α断面矢視図であり、クラッドを除いて描いた断面図であり、図3は、図1に示される光導波路の要部の拡大断面図であり、コアのグレーティング形成面にレーザ光が垂直入射される部分の拡大断面図である。
【0025】
図1に示されるように、本発明の光導波路1100は、光を導くための主要部をなす導波路本体であるコア1150と、その周囲を囲むクラッド1300と、を有して構成されている。そして、コア1150を構成する材料の屈折率は、クラッド1300を構成する材料の屈折率よりも大きくなるように、コアおよびクラッドの材料選定が行われる。
【0026】
コア1150は、図1および図2に示されるように、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部1151と、このコア基部1151に連接されて導波方向(図1および図2における−X方向)に沿って幅が徐々に絞られる絞り部1152と、この絞り部1152に連接され導波方向(−X方向)に沿って延設された狭幅の先端コア部1153とを有している。
【0027】
絞り部1152では、主としてシングルモードへの光変換が行われ、狭幅の先端コア部1153では、主としてシングルモードでの光伝搬が行われる。シングルモードとは、光を伝搬する経路(モード)が1つであることを言う。光の振動方向を所望の方向に変換するために、狭幅の先端コア部1153の途中に、例えば、TE−TMモード変換素子を設けるようにしてもよい。これによって、例えば、図2におけるY方向に振動方向を有する偏光をZ方向に振動方向を有する偏光に変換させることができる。
【0028】
図2に示される広幅のコア基部1151の幅W1は、0.4〜10.0μm程度とされ、狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μm程度とされる。例えば、幅細の先端コア部1153は、絞り部1152の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設される。
【0029】
また、図2に示される導波方向(−X方向)の各構成部の長さは、広幅のコア基部1151の長さL1が、2〜200μm程度、絞り部1152の長さL2が30〜200μm程度、狭幅の先端コア部の長さL3が、0.5〜100μm程度とされる。
【0030】
広幅のコア基部1151の一方の平面の上には、グレーティング(格子)1200が形成されている。このグレーティング1200は、平面に多数の断面矩形状の凹溝1201を幅方向(Y方向)に沿って刻むことによって構成されている。凹溝1201の数は、10〜200本程度である。
【0031】
グレーティング1200は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される(図3参照)。なお、広幅のコア基部1151の一方の平面の上に凹部溝ではなく突起した凸部を設けるグレーティング構造では、効果的な光結合が実現できないことに注意されたい。
【0032】
本発明におけるグレーティング1200は、図1に示されるように、例えば、広幅のコア基部1151と対向配置された光源ユニット1400(例えば、レーザダイオード1400)から、グレーティング1200形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、グレーティング1200の周期(格子ピッチP:凹溝1201のピッチP)は、垂直入射されるレーザ光の波長λcよりも小さくなるように構成される。
【0033】
つまり、格子ピッチP(nm)<レーザ光の波長λc(nm)、の不等式の関係が成立するように構成される。波長λcはクラッド1300における波長として規定される。なお、本発明において、垂直入射とは、90°±5°の角度範囲での入射をいう。
【0034】
ただし、図1に示される形態に限定されるわけではなく、例えば、図4に示されるように、広幅のコア基部1151の後方に光源ユニット1400を配置して、反射膜1401の反射を利用して、レーザ光(L)をグレーティング1200形成面に対して垂直入射させるようにしてもよい。図4に示される反射膜1401の反射を利用する態様によれば、例えば、光源ユニット1400の設置場所の選定の自由度(Z方向への設置の自由度)が増大するというメリットがある。
【0035】
本発明において、特に重要なことは、図3に示されるように、グレーティング1200の凹溝1201の深さH1は、コア基部1151の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係、特に、好ましくは、H1=(0.45〜0.55)H2を満たすよう形成されている。
【0036】
なお、コア基部1151の厚さH2は、通常、0.3〜3.0μm程度とされる。凹溝1201の個数は、X方向に、10〜200個程度形成される。
【0037】
上記H1とH2との厚さ比の関係が必要であるのは、以下の考察に基づく。すなわち、導波路の中で導波するための光の強度分布および位相などと、グレーティング1200に対して垂直照射されたレーザ光によって凹溝1201の下端エッジ近傍で発生するエバネッセント波(近接場光)の強度分布および位相などを一致させることによって、入射されるレーザ光と導波路内の導波光との光の結合を図るという作用が奏される。本願におけるグレーティング1200を介しての導波路への光結合は、回折によるものではない。凹溝1201の下端エッジ近傍で発生する近接場光そのものは伝搬しないが、そのエネルギーが導波路の中で導波するためのエネルギーに変換されるものと考えられる。
【0038】
なお、入射されるレーザ光の振動方向(偏光方向)は、広幅のコア基部1151の幅方向であるY方向とすることが好ましい。(例えば、TE偏波)
【0039】
また、本発明においてもう一つの重要な点は、コア基部1151の導波方向と反対側の端面(後端部)には、Au膜等からなる反射膜1159が設けられていることである。本願発明においては、コア基部1151に形成されたグレーティング1200に対する垂直方向への光入射が基本であるため、反射膜1159を設けることによって、確実に、目的とする導波方向(−X方向)に光を伝搬させるように構成している。
【0040】
また、本発明におけるグレーティング1200(格子)は、図2に示されるようにsingle grating であることが望ましい。先行技術に記載したように、Single grating を並列に配置したDual gratingにすると、伝搬方向において、互いの干渉が生じ得るおそれがあるからである。なお、single gratingの格子の長さWo(Y方向)は、0.34〜9.90μm程度とされる。
【0041】
このような本発明における光導波路は、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させることができるとともに、光導波路内を目的とする方向に伝搬させることができ、例えば、極小サイズの磁気記録ヘッドであって光導波路を備える熱アシスト磁気記録ヘッド、光伝送部品、Si細線導波路などに適用可能である。
【0042】
なお、レーザ光を発生させるレーザダイオードとしては、InP系、GaAs系、GaN系等の、通信用、光学系ディスクストレージ用又は材料分析用等として通常用いられているものが使用可能であり、放射されるレーザ光の波長λLは、例えば375nm〜1.7μmの範囲内のいずれの値のものを用いてもよい。
【0043】
また、図1〜図4に示されるような光導波路の積層構成は、スパッタ、ミリング、RIE、フォトレジスト手法等の薄膜製造技術を利用して積層することができる。
【0044】
以下、本発明の光導波路が好適に適用される熱アシスト磁気記録ヘッドの好適例について説明する。ただし、以下に詳述する熱アシスト磁気記録ヘッドそのものの構造に限定されるものではない。
【0045】
〔熱アシスト磁気記録ヘッドの説明〕
熱アシスト磁気記録ヘッドの説明をする前に、本明細書において用いられる用語の定義を行う。磁気記録ヘッドのスライダ基板の素子形成面に形成された積層構造もしくは素子構造において、基準となる層又は素子から見て、基板側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。
【0046】
また、磁気ヘッドの実施形態において、必要に応じていくつかの図面中、「X,Y,Z方向」を規定している。ここで、Z軸方向は、上述の上下方向に対応しており、+Z側がトレーリング側に相当し、−Z側がリーディング側に相当する。Y軸方向をトラック幅方向とし、X軸方向をハイト方向とする。
【0047】
また、磁気記録ヘッドの説明において当該磁気記録ヘッド内に設けられた導波路の「側面」とは、導波路を取り囲む端面のうち、導波路を伝播する光の伝播方向(−X方向)に垂直な端面以外の端面を指すものとする。従って、磁気記録ヘッドの説明における導波路の「上面」または「下面」もこの「側面」の1つであり、この「側面」は、コアに相当する導波路において伝播する光が全反射し得る面となる。
【0048】
図5は、磁気記録装置およびHGA(ヘッドジンバルアセンブリ)の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。ここで、HGAの斜視図においては、HGAの磁気記録媒体表面に対向する側が上になって表示されている。
【0049】
図5に示される磁気記録装置としての磁気ディスク装置は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する、磁気記録媒体としての複数の磁気ディスク10と、複数の駆動アーム14が設けられたアセンブリキャリッジ装置12と、各駆動アーム14の先端部に取り付けられており薄膜磁気ヘッドである熱アシスト磁気記録ヘッド21を備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17と、熱アシスト磁気記録ヘッド21の書き込みおよび読み出し動作を制御し、さらに、後述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードの発光動作を制御するための記録再生および発光制御回路13とを備えている。
【0050】
磁気ディスク10は、本実施の形態において、垂直磁気記録用であり、ディスク基板に、軟磁性裏打ち層、中間層および磁気記録層(垂直磁化層)が順次積層された構造を有している。アセンブリキャリッジ装置12は、熱アシスト磁気記録ヘッド21を、磁気ディスク10の磁気記録層に形成されており記録ビットが並ぶトラック上に位置決めするための装置である。アセンブリキャリッジ装置12内において、駆動アーム14は、ピポットベアリング軸16に沿った方向にスタックされており、ボイスコイルモータ(VCM)15によってこの軸16を中心にして角揺動可能となっている。
【0051】
なお、本発明に係る磁気ディスク装置の構造は、以上に述べた構造に限定されるものではない。例えば、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17および熱アシスト磁気記録ヘッド21は、単数であってもよい。
【0052】
さらに、同様の図5によれば、HGA17において、サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200に固着されておりしかも弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、を備えて構成されている。また、フレクシャ201上には、リード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203が設けられている。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、各磁気ディスク10の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション20の先端部であってフレクシャ201に固着されている。さらに、配線部材203の一端が、熱アシスト磁気記録ヘッド21の端子電極に電気的に接続されている。
【0053】
なお、サスペンション20の構造も、以上に述べた構造に限定されるものではない。図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されていてもよい。
【0054】
図6は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の一実施形態を示す斜視図である。
【0055】
ただし、図6のヘッドにおいて、光導波路の基部である広幅のコア基部に形成されたグレーティング(格子)に対して、レーザ光を垂直方向に入射させるレーザ光発生装置(光源ユニット)の記載は省略してある。垂直方向に入射されるレーザ光は、単に照射状態を矢印LAで示すに留まっている。
【0056】
レーザ光発生装置(光源ユニット)は、例えば、図1に示されるように、光導波路のコアに対向するように配置してもよいし、図4に示されるように光導波路のコアの後部に配置されて、反射膜を介してグレーティング(格子)に垂直入射させるようにしてもよい。ヘッド内への取り付け手法には種々の形態が考えられる。レーザ光発生装置(光源ユニット)は、すでに外部で予め形成していたものをヘッド内に取り付けるようにしてもよいし、ヘッド内に成膜技術を応用して薄膜形成するようにしてもよい。
【0057】
図6に示されるように、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、スライダ22を有している。
【0058】
スライダ22は、アルチック(Al2O3−TiC)等から形成されており、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)2200を有するスライダ基板220と、ABS2200とは垂直な素子形成面2202上に形成されたヘッド部221とを備えている。
【0059】
スライダ22のスライダ基板220の素子形成面2202上に形成されたヘッド部221は、磁気ディスクからデータを読み出すためのMR素子33および磁気ディスクにデータを書き込むための電磁変換素子34の双方を備えて構成されるヘッド素子32と、図示していない光源ユニットに備えられたレーザダイオードからのレーザ光を媒体対向面側に導くための導波路35と、導波路35と共に近接場光発生素子を構成するプラズモン発生素子36と、MR素子33、電磁変換素子34、導波路35およびプラズモン発生素子36を覆うように素子形成面2202上に形成された保護層38と、保護層38の上面に露出しておりMR素子33に電気的に接続された一対の端子電極370と、同じく保護層38の上面に露出しており電磁変換素子34に電気的に接続された一対の端子電極371とを備えている。近接場光発生素子は、プラズモン発生素子と導波路からなる。
【0060】
ここで、導波路35は、前記図1〜図4を用いて説明したコア1150のコア材料と同じ材料からなり、同義である。導波路35は、図面の紙面の大きさ等の関係から、必ずしも、図1〜図4に示されるコア形態と同じに描かれていないこともあるが、実際は同じものである。
【0061】
端子電極370および371は、フレクシャ201(図5参照)に設けられた配線部材203の接続パッドに電気的に接続される。
【0062】
MR素子33、電磁変換素子34およびプラズモン発生素子36の一端は、ヘッド部221の媒体対向面であるヘッド部端面2210に達している。ここで、ヘッド部端面2210とABS2200とが熱アシスト磁気記録ヘッド21全体の媒体対向面をなしている。
【0063】
実際の書き込み又は読み出し時においては、熱アシスト磁気記録ヘッド21が回転する磁気ディスク表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR素子33および電磁変換素子34の端が、磁気ディスクの磁気記録層の表面と適当なマグネティックスペーシングを介して対向することになる。
【0064】
この状態において、MR素子33が磁気記録層からのデータ信号磁界を感受して読み出しを行い、電磁変換素子34が磁気記録層にデータ信号磁界を印加して書き込みを行う。ここで、書き込みの際、光源ユニットのレーザダイオードから導波路35のグレーティング1200に垂直照射され、導波路35を通って伝播してきたレーザ光が、後に詳述するように、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合し、プラズモン発生素子36に表面プラズモンを励起する。
【0065】
この表面プラズモンが、後述するプラズモン発生素子36に設けられた伝播エッジを、ヘッド部端面2210に向けて伝播することにより、プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210側の端において、近接場光が発生する。この近接場光が磁気ディスク表面に達し、磁気ディスクの磁気記録層部分を加熱し、それにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その結果、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0066】
図7は、熱アシスト磁気記録ヘッド21の要部の構成を概略的に示す、図6のA―A面による断面図に相当する。
【0067】
図7に示されるように、MR素子33は、MR積層体332と、対となってMR積層体332および絶縁層381を挟む位置に配置されている下部シールド層330および上部シールド層334とを含み、素子形成面2202上に形成された絶縁層380上に形成されている。上下部シールド層334および330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界を受けることを防止する。
【0068】
上下部シールド層334および330は、例えばフレームめっき法又はスパッタリング法等によって形成された磁性層であり、例えばNiFe(パーマロイ)、FeSiAl(センダスト)、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN、もしくはCoZrTaCr等、又はこれらの材料の多層膜等の軟磁性材料からなり、厚さは、例えば0.5〜3μm程度とされる。
【0069】
MR積層体332は、MR効果を利用して信号磁界を感受する感磁部であり、例えば、面内通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCIP−GMR(Current In Plane-Giant Magnetoresistive)積層体、垂直通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCPP−GMR(Current perpendicular to Plane-Giant Magnetoresistive)積層体、又はトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel-Magnetoresistive)積層体のいずれであってよい。
【0070】
これらのMR効果を利用したMR積層体332はいずれにおいても、高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受することができる。なお、MR積層体332がCPP−GMR積層体又はTMR積層体である場合、上下部シールド層334および330は、電極としての役割も果たす。一方、MR積層体332がCIP−GMR積層体である場合、MR積層体332と上下部シールド層334および330それぞれとの間には絶縁層が設けられ、さらに、MR積層体332に電気的に接続されたMRリード層が設けられる。
【0071】
MR積層体332は、例えば、TMR積層体である場合、例えばIrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えばCoFe等からなる2つの強磁性層がRu等の非磁性金属層を間に挟んだ構造を有しており、反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有していてもよい。
【0072】
同じく図7に示されるように、電磁変換素子34は、垂直磁気記録用であって、主磁極層340と、ギャップ層341と、書き込みコイル層343と、コイル絶縁層344と、ライトシールド層345とを備えている。
【0073】
主磁極層340は、Al2O3(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層384上に形成されており、書き込みコイル層343に書き込み電流を印加することによって発生した磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの磁気記録層(垂直磁化層)まで収束させながら導くための導波路である。
【0074】
主磁極層340は、主磁極3400および主磁極本体部3401が順次積層された構造を有している。このうち、主磁極3400は、ヘッド部端面2210に達しており、トラック幅方向の小さな幅Wp(図9を参照)を有する第1の主磁極部3400aと、この第1の主磁極部3400a上であって第1の主磁極部3400aの後方(+X側)に位置している第2の主磁極部3400bとを有している。
【0075】
このように、第1の主磁極部3400aが小さな幅Wpを有することによって、微細な書き込み磁界が発生可能となり、トラック幅を高記録密度化に対応した微小値に設定可能となる。
【0076】
主磁極3400は、主磁極本体部3401よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料から形成されており、例えば、Feが主成分である鉄系合金材料である、FeNi、FeCo、FeCoNi、FeN又はFeZrN等の軟磁性材料から形成される。第1の主磁極部3400aの厚さは、例えば、0.1〜0.8μmである。
【0077】
ギャップ層341は、主磁極層340とライトシールド層345とをヘッド端面300近傍において磁気的に分離させるためのギャップを形成する。ギャップ層341は、Al2O3(アルミナ)、SiO2(二酸化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)若しくはダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の非磁性絶縁材料、又はRu(ルテニウム)等の非磁性導電材料で構成されている。ギャップ層341の厚さは、主磁極層340とライトシールド層345との間のギャップを規定しており、例えば、0.01〜0.5μm程度である。
【0078】
書き込みコイル層343は、Al2O3(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層3421上において、1ターンの間に少なくとも主磁極層340とライトシールド層345との間を通過するように形成されており、バックコンタクト部3402を中心として巻回するスパイラル構造を有している。
【0079】
この書き込みコイル層343は、例えば、Cu(銅)等の導電材料から形成されている。ここで、加熱キュアされたフォトレジスト等の絶縁材料からなる書き込みコイル絶縁層344が、書き込みコイル層343を覆っており、書き込みコイル層343と主磁極層340およびライトシールド層345との間を電気的に絶縁している。
【0080】
書き込みコイル層343は、本実施形態において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。また、巻き数も図7に示される数に限定されるものではなく、例えば、2〜7ターンに設定され得る。
【0081】
ライトシールド層345は、ヘッド部端面2210に達しており、磁気ディスクの磁気記録層(垂直磁化層)の下に設けられた軟磁性裏打ち層から戻ってきた磁束のための導磁路としての役割を果たす。ライトシールド層345の厚さは、例えば、0.5〜5μm程度である。また、ライトシールド層345において、主磁極層340と対向する部分は、同じくヘッド部端面2210に達しており、主磁極層340から発して広がった磁束を取り込むためのトレーリングシールド3450となっている。
【0082】
トレーリングシールド3450は、本実施の形態において、絶縁層3420および主磁極本体部3401とともに平坦化されていて、第1の主磁極部3400aのみならず主磁極本体部3401よりも大きなトラック幅方向の幅を有している。このようなトレーリングシールド3450を設けることによって、トレーリングシールド3450の端部と第1の主磁極部3400aとの間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートが低減可能となる。また、ライトシールド層345は、軟磁性材料から形成されるが、特に、トレーリングシールド3450は、高飽和磁束密度を有する、NiFe(パーマロイ)又は主磁極3400と同様の鉄系合金材料等から形成される。
【0083】
同じく図7に示されるように、導波路35およびプラズモン発生素子36は、MR素子33と電磁変換素子34との間に設けられており、ヘッド部221内の光学系である近接場光-Generatorをなす。
【0084】
ここで、導波路35(図1〜2、図4における符号1150と同義である)は、素子形成面2202と平行に形成されており、ヘッド部端面2210側の端面350まで伸張されている。
【0085】
また、導波路35の上面(側面)の一部とプラズモン発生素子36の(伝播エッジ360(図8)を含む)下面の一部とは、所定の間隔をもって対向しており、これら一部に挟まれた部分は、導波路35の屈折率よりも低い屈折率を有する緩衝部50となっている。
【0086】
緩衝部50は、導波路35を伝播するレーザ光を、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。なお、この緩衝部50は、保護層38の一部である絶縁層384の一部であってもよいし、絶縁層384とは別に設けられた新たな層であってもよい。これら、導波路35、プラズモン発生素子36および緩衝部50については、さらに、図8を参照して説明を加える。
【0087】
また、本実施形態においては、MR素子33と電磁変換素子34(導波路35)との間に、絶縁層382および383に挟まれた素子間シールド層39が設けられている。この素子間シールド層39は、電磁変換素子34より発生する磁界からMR素子33をシールドする役割を果たしており、上下部シールド層334および330と同じ軟磁性材料で形成されていてもよい。なお、素子間シールド層39は必ずしも必要ではなく、素子間シールド層39が存在しない形態であってもよい。また、この素子間シールド層39と導波路35との間に、バッキングコイル部が形成されていてもよい。
【0088】
バッキングコイル部は、電磁変換素子34から発生してMR効果素子33の上下部シールド層334および330を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み動作又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE:wide area adjacent track eraser)現象の抑制を図るものである。
【0089】
なお、図7や図8に示されるヘッドの形態において、導波路35とプラズモン発生素子36が結合される領域においては、レーザ光の電場の振動方向が、垂直(Z軸方向:TMモードの偏光)であることが必要である。
【0090】
図8は、導波路35、プラズモン発生素子36および主磁極層340の構成を概略的に示す斜視図である。同図においては、書き込み磁界および近接場光が磁気記録媒体に向かって放射される位置を含むヘッド部端面2210が、左側に位置している。
【0091】
図8に示されるように、近接場光発生用のレーザ光53を伝播させるための導波路35と、レーザ光53によって励起される表面プラズモンが伝播するエッジである伝播エッジ(Propagative Edge)360を備えたプラズモン発生素子36とが設けられている。
【0092】
なお、図8に部分的に示されている導波路35の箇所は、図1〜図4における狭幅の先端コア部1153に相当している。
【0093】
さらに、導波路35の側面354の一部と、この一部に対向したプラズモン発生素子36の伝播エッジ360を含む下面362の一部との間に挟まれた部分が、緩衝部50となっている。すなわち、伝播エッジ360の一部は、緩衝部50に覆われている。
【0094】
緩衝部50は、レーザ光53を表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。ここで、導波路35の側面とは、導波路35を取り囲む端面のうち、レーザ光53の伝播方向(−X方向)に垂直なヘッド部端面2210側の端面350およびその反対側の端面(図示していない)以外の端面を指すものとする。この側面は、コアに相当する導波路35において伝播するレーザ光53が全反射し得る面となる。
【0095】
なお、本実施形態において、一部が緩衝部50に接面した導波路35の側面354は、導波路35の上面となっている。また、緩衝部50は、保護層38(図6参照)の一部であってもよいし、保護層38とは別に設けられた新たな層であってもよい。
【0096】
プラズモン発生素子36は、さらに、ヘッド部端面2210に達した近接場光発生端面36aを備えている。この近接場光発生端面36aは、主磁極3400のヘッド部端面2210に達した端面3400eに近接している。また、伝播エッジ360は、レーザ光53と表面プラズモンモードで結合する部分である緩衝部50に覆われた部分から、近接場光発生端面36aまで伸張しており、レーザ光53によって励起される表面プラズモンを近接場光発生端面36aまで伝播させる役割を果たす。
【0097】
ここで、伝播エッジ360のヘッド部端面2210側の部分は、近接場光発生端面36aに向かうにつれて、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360とは反対側の端面361に近づくように伸張している直線状又は曲線状となっている。なお、伝播エッジ360の角は、表面プラズモンが伝播エッジ360から逃げてしまう現象を防止するために、丸められていてもよい。この際、丸められた角の曲率半径は、例えば5〜500nmとされる。
【0098】
また、プラズモン発生素子36は、本実施の形態において、ヘッド部端面2210の近傍において、近接場光発生端面36aに向かってハイト方向(Z軸方向)に先細となる形状を有している。
【0099】
また、プラズモン発生素子36においては、YZ面による断面が三角形状を有しており、特にヘッド部端面2210の近傍において所定の三角形状を有している。その結果、近接場光発生端面36aは、本実施形態において、端面36aに達した伝播エッジ360の端を1つの頂点とする三角形状を有している(図9参照)。ここで、伝播エッジ360を伝播する表面プラズモンが近接場光発生端面36aに至って、近接場光発生端面36aから近接場光が発生する。
【0100】
導波路35および緩衝部50は、プラズモン発生素子36の−Z側(図面の下方側)、すなわち主磁極3400とは反対側に設けられている。その結果、緩衝部50に覆われた伝播エッジ360も主磁極3400とは反対側に位置することになる。このような構成においては、書き込み磁界を発生させる主磁極3400の端面3400eと近接場光を発生させる近接場光発生端面36aとの距離を十分に、好ましくは100nm以下に小さくした状態においても、導波路35を、主磁極3400および主磁極本体部3401から十分に離隔させることができる。その結果、レーザ光53の一部が金属からなる主磁極3400および主磁極本体部3401に吸収されてしまって近接場光に変換される光量が低減してしまう事態を回避することができる。
【0101】
図8に示されるように、導波路35(ここでは図1〜図4における狭幅の先端コア部1153と同義)の形状は直方体でもよいが、ヘッド部端面2210側の部分のトラック幅方向(Y軸方向)の幅が狭くなっていてもよい。端面350側の部分におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WWG2は、例えば約0.3〜100μmとすることができ、(Z軸方向の)厚さTWGは、例えば0.1〜4μmとすることができる。(X軸方向の)高さ(長さ)は、例えば10〜300μmとすることができる。
【0102】
また、導波路35の側面、すなわち上面354、下面353、およびトラック幅方向(Y軸方向)の両側面351は、緩衝部50と接面した部分を除いて、保護層38(図6参照)と接している。ここで、導波路35は、保護層38の構成材料の屈折率nOCよりも高い屈折率nWGを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された材料から構成されている。例えば、レーザ光の波長λLが633nmであって、保護層38が、SiO2(n=1.5)から形成されている場合、導波路35は、Al2O3(n=1.63)から形成されていてもよい。さらに、保護層38が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、導波路35は、SiOXNY(n=1.7〜1.85)、Ta2O5(n=2.16)、Nb2O5(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO2(n=2.3〜2.55)から形成されていてもよい。導波路35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によってレーザ光53の伝播損失が低く抑えられる。さらに、導波路35がコアとして働く一方、保護層38がクラッドとしての機能を果たし、全側面での全反射条件が整うことになる。これにより、より多くのレーザ光53が緩衝部50の位置に達し、導波路35の伝播効率が向上する。
【0103】
プラズモン発生素子36は、金属等の導電材料、例えばPd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、Cu若しくはAl、又はこれら元素のうちの複数の合金から形成されていることが好ましい。また、プラズモン発生素子36の上面361におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WNFは、レーザ光53の波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(Z軸方向の)厚さTNF1も、レーザ光53の波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(X軸方向の)長さ(高さ)HNFは、例えば約0.8〜6.0μmとすることができる。
【0104】
緩衝部50は、導波路35の屈折率nWGよりも低い屈折率nBFを有する誘電材料で形成されている。例えば、レーザ光の波長λLが633nmであって、導波路35が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、緩衝部50は、SiO2(n=1.46)から形成されていてもよい。
【0105】
また、導波路35が、Ta2O5(n=2.16)から形成されている場合、緩衝部50は、SiO2(n=1.46)又はAl2O3(n=1.63)から形成されていてもよい。これらの場合、この緩衝部50を、SiO2(n=1.46)又はAl2O3(n=1.63)からなるクラッドとしての保護層38(図6)の一部とすることも可能である。
【0106】
また、緩衝部50の(X軸方向の)長さ、すなわち導波路35とプラズモン発生素子36との結合部分の長さLBFは、0.5〜5μmであることが好ましい。緩衝部50の(Z軸方向の)厚さTBFは、10〜200nmであることが好ましい。これら緩衝部50の長さLBFおよび厚さTBFは、表面プラズモンの適切な励起、伝播を得るために重要なパラメータとなる。
【0107】
また、緩衝部50のヘッド部端面2210側の端は、X軸方向においてヘッド部端面2210から距離DBFだけ離隔している。表面プラズモンの伝播距離は、この距離DBFによって調整される。
【0108】
同じく図8に示されるように、プラズモン発生素子36と第1の主磁極部3400aとの間であってヘッド部端面2210側の位置に、熱伝導層51が設けられることが好ましい。この熱伝導層51は、保護層38(図6参照)に比べて熱伝導率の高い、例えばAlN、SiC又はDLC等の絶縁材料で形成されている。このような熱伝導層51を設けることによって、プラズモン発生素子36が近接場光を発生させる際に生じる熱の一部を、この熱伝導層51を介して主磁極3400および主磁極本体部3401に逃がすことができる。
【0109】
すなわち、主磁極3400および主磁極本体部3401をヒートシンクとして用いることができる。その結果、プラズモン発生素子36の過度の温度上昇を抑制することができ、近接場光発生端面36aの不要な突出や、プラズモン発生素子36における光利用効率(Optical-Power-Efficiency)の大幅な低下を回避することができる。
【0110】
この熱伝導層51の厚さTTCは、ヘッド部端面2210上における近接場光発生端面36aと主磁極3400の端面3400eとの間隔DN-P(図9参照)に相当し、100nm以下の十分に小さい値に設定される。
【0111】
さらに、熱伝導層51の屈折率nIN2は、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360を覆う絶縁層52の屈折率nIN1と同じに、又はそれよりも低くなるように設定されている。すなわち、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360は、自身とは反対側の端面361を覆う材料の屈折率nIN2と同じか、又はそれよりも高い屈折率nIN1を有する材料で覆われていることになる。
【0112】
これにより、伝播エッジ360上を表面プラズモンが安定して伝播することが可能となる。実際には、屈折率nIN1≧屈折率nIN2×1.5であることが好ましいことが分かっている。
【0113】
同じく図8に示されるように、主磁極層340は、上述したように、主磁極3400と主磁極本体部3401とを含む。このうち、主磁極3400は、ヘッド部端面2210に達した端面3400eを有する第1の主磁極部3400aと、ヘッド部端面2210側の端部が第1の主磁極部3400aのヘッド部端面2210とは反対側の部分上に重なっている第2の主磁極部3400bとを含む。
【0114】
また、主磁極本体部3401のヘッド部端面2210側の端部は、第2の主磁極部3400bのヘッド部端面2210とは反対側の部分上に重なっている。このように、主磁極層340のヘッド部端面2210側の部分は、ヘッド部端面2210に向かうにつれて、プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210側の端部に近づくように素子形成面2202(図7参照)に対して傾斜している。これにより、主磁極層340を導波路35から十分に隔離させた上で、主磁極3400の端面3400eと近接場光発生端面36aとを十分に近接させることができる。
【0115】
図9は、プラズモン発生素子36および電磁変換素子34のヘッド部端面2210上での端面の形状を示す平面図である。
【0116】
図9に示されるように、電磁変換素子34においては、主磁極3400(第1の主磁極部3400a)とライトシールド層345(トレーリングシールド3450)とがヘッド部端面2210に達している。このうち、主磁極3400のヘッド部端面2210上における端面3400eの形状は、例えば、長方形、正方形又は台形である。
【0117】
ここで、上述した幅WPは、この主磁極3400の端面3400eにおけるリーディング側の辺の長さであり、磁気ディスクの磁気記録層に形成されるトラックの幅を規定する。幅WPは、例えば0.05〜0.5μm程度である。
【0118】
また、ヘッド部端面2210上において、プラズモン発生素子36の近接場光発生端面36aは、主磁極3400の端面3400eの近傍にあって、端面3400eのリーディング側(−Z側)に位置している。ここで、近接場光発生端面36aと端面3400eとの間隔をDN-Pとすると、間隔DN-Pは、100nm以下の十分に小さい値であって、特に、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
【0119】
本実施形態の熱アシスト磁気記録においては、この近接場光発生端面36aが主要な加熱作用部分となり、端面3400eが書き込み部分となるので、磁気ディスクの磁気記録層において十分に加熱した部分に、十分に大きな勾配を有する書き込み磁界を印加することができる。これにより、熱アシストによる安定した書き込み動作が確実に実施可能となる。
【0120】
さらに、近接場光発生端面36aは、本実施形態において、ヘッド部端面2210上で、底辺361aをトレーリング側(+Z側)に持ち、伝播エッジ360の端360aをリーディング側(−Z側)の頂点とする二等辺三角形となっている。この近接場光発生端面36aの高さ(プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210における厚さ)TNF2は、30nm以下とすることが好ましく、20nm以下とすることがより好ましい。これにより、近接場光発生端面36a上における近接場光の発光位置が、トレーリング側の端辺361a近傍となり、より主磁極3400の端面3400eに近づくこととなる。
【0121】
また、二等辺三角形の頂点360aにおける頂角θNFは、60〜130度であることが好ましく、特に、80〜110度であることがより好ましい。この頂角θNFを調整することによって、近接場光発生端面36a内における近接場光の発光位置を、トレーリング側にすることが可能となる。
【0122】
さらに、導波路35と主磁極3400との間隔をDW-Pとすると、上述したように間隔DN-Pを非常に小さい値に設定した上で、間隔DW-Pを十分に大きくすることができる。すなわち、図9に示される構成によれば、導波路35を、主磁極3400および主磁極本体部3401から十分に離隔させることができる。その結果、レーザ光の一部が金属からなる主磁極3400又は主磁極本体部3401に吸収されてしまって近接場光に変換される光量が低減してしまう事態を回避することができる。
【0123】
図10は、表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録を説明するための概略図である。
【0124】
図10に示されるように、電磁変換素子34による磁気ディスク10の磁気記録層への書き込みの際、最初に、光源ユニット23のレーザダイオード40から放射されたレーザ光53が、導波路35を伝播する。次いで、緩衝部50の近傍まで進行したレーザ光53は、屈折率nWGを有する導波路35と、屈折率nBFを有する緩衝部50と、金属等の導電材料からなるプラズモン発生素子36との光学的構成と結びついて、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360に表面プラズモンモードを誘起する。すなわち、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合する。
【0125】
実際には、コアである導波路35と緩衝部50との光学的な界面条件から、緩衝部50内にエバネッセント光が励起される。次いで、このエバネッセント光と、プラズモン発生素子36の金属表面(伝播エッジ360)に励起される電荷のゆらぎとが結合する形で表面プラズモンモードが誘起され、表面プラズモンが励起される。なお、正確には、この系においては素励起である表面プラズモンが電磁波と結合することになるので、励起されるのは表面プラズモン・ポラリトンである。しかしながら以後、省略して、表面プラズモン・ポラリトンを表面プラズモンとも呼ぶ。
【0126】
伝播エッジ360は、プラズモン発生素子36の傾斜した下面362において導波路35に最も近い位置にあり、また角部であって電場が集中しやすいので、表面プラズモンが励起されやすい。この際、この表面プラズモンモードの誘起は、緩衝部50の屈折率nBFを導波路35の屈折率nWGよりも小さく設定し(nBF<nWG)、さらに、上述したように緩衝部50の(X軸方向の)高さ、すなわち導波路35とプラズモン発生素子36との結合部分の長さLBFと、(Z軸方向の)緩衝部50の厚さTBFとを適切に選択することによって可能となる。この表面プラズモンモードの誘起は、例えば、Michael Hochberg, Tom Baehr-Jones, Chris Walker & Axel Scherer, “Integrated Plasmon and dielectric 導波路s”, OPTICS EXPRESS Vol.12, No.22, pp5481-5486(2004)、およびUS patent Publication No.2005/0249451 A1に記載されている。
【0127】
この誘起された表面プラズモンモードにおいては、表面プラズモン60が、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360上に励起され、この伝播エッジ360上を矢印61の方向に沿って伝播する。この表面プラズモン60の伝播は、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360が自身とは反対側の端面361を覆う材料の屈折率nIN2と同じか、又はそれよりも高い屈折率nIN1を有する材料で覆われている。という条件の下、可能となる。実際には、屈折率nIN1≧屈折率nIN2×1.5であることが好ましいことが分かっている。図11においては、熱伝導層51の屈折率nIN2が、近接場光発生層36の伝播面360を覆う絶縁層52の屈折率nIN1よりも低くなるように設定される。
【0128】
このように表面プラズモン60が伝播することにより、ヘッド部端面2210に達しており伝播エッジ360の行き着く先である頂点360aを有する近接場光発生端面36aに、表面プラズモン60すなわち電場が集中することになる。
【0129】
その結果、この近接場光発生端面36aから近接場光62が発生する。この近接場光62が磁気ディスク10の磁気記録層に向けて照射され、磁気ディスク10の表面に達し、磁気ディスク10の磁気記録層部分を加熱する。これにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その直後、この部分に、主磁極3400から発生する書き込み磁界63を印加して書き込みを行う。このような手順を踏んで、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0130】
ここで、上述したように、ヘッド部端面2210上での近接場光発生端面36aの形状およびサイズを調整することによって、近接場光発生端面36a上での近接場光62の発光位置を、第1の主磁極部3400aにより近いトレーリング側(端辺361a側)に位置させることができる。これにより、磁気ディスク10の磁気記録層における十分に加熱した部分に、十分に大きな勾配を有する書き込み磁界を印加することができる。その結果、熱アシストによる安定した書き込み動作が確実に実施可能となる。
【0131】
また、上記のプラズモン発生素子36において、表面プラズモンが伝播する伝播エッジ360は、非常に狭いトラック幅方向の幅を有する伝播領域となっている。また、本実施形態においては、プラズモン発生素子36のYZ面による断面が三角形状を有しており、特にヘッド部端面2210の近傍において所定の三角形状を有している。従って、ヘッド製造の際の研磨加工後のヘッド部端面2210において、研磨面として現れる近接場光発生端面36aを、所望の形状(本実施形態では三角形状)とし、そのサイズを非常に小さくし、その上で確実に表面プラズモンが伝播されてくるようにすることが可能となる。
【0132】
また、以上に述べたような表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録においては、プラズモン発生素子36における光利用効率(Optical-Power-Efficiency)が、従来のプラズモン発生素子を用いた場合の報告例に見られるように5〜10%程度又はそれ未満であったのに対して、例えば約20%前後となり、大幅に向上する。
【0133】
これにより、プラズモン発生素子36が過度に温度上昇することがなく、近接場光発生端面36aの磁気ディスク10に向かう方向の突出が抑制される。
【0134】
さらに、従来の、導波路を伝播するレーザ光がヘッド端面の位置に設けられたプラズモン発生素子に直接照射される形態においては、照射されたレーザ光の多くの部分が、プラズモン発生素子内で熱エネルギーに変わってしまう。一方、このプラズモン発生素子のサイズはレーザ光の波長以下に設定されており、その体積は非常に小さい。従って、この熱エネルギーによって、プラズモン発生素子は非常な高温、例えば500℃にまで達していた。これに対して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録においては、表面プラズモンモードを利用しており、表面プラズモン60をヘッド部端面2210に向かって伝播させることによって近接場光62を発生させている。
【0135】
これにより、近接場光発生端面36aにおける近接場光発生時の温度が、例えば約100℃前後となり大幅に低減する。その結果、近接場光発生端面36aの磁気ディスク10に向かう方向の突出が抑制され、良好な熱アシスト磁気記録が可能となる。
【0136】
なお、図8〜図10に示されるようなプラズモン発生素子36の形態を、図12〜図13に示されるようなプラズモン発生素子36´に変更して使用するようにしてもよい。
【0137】
図12〜図13に示されるプラズモン発生素子36´は、ABS側の端面36aが断面V字形状であり、かつ、同じ形態がX方向に延設された形態を有している。この場合、主磁極3400の下部は、断面V字形状の凸部3400´がーZ方向に延設された形態を有しており、この断面V字形状の凸部3400´に断面V字形状のプラズモン発生素子36´が密着される構成となっている。プラズモン発生素子36´のV字の先端が伝播エッジとなり、ここで表面プラズモンモードを誘起する。すなわち、緩衝部の近傍まで進行した導波路35中のレーザ光は、緩衝部と、プラズモン発生素子36´との光学的構成と結びついて、プラズモン発生素子36´の伝播エッジに表面プラズモンモードを誘起する。この誘起された表面プラズモンモードにおいては、表面プラズモンが、プラズモン発生素子36´の伝播エッジ上に励起され、この伝播エッジ上をABS方向(−X方向)に沿って伝播して、伝播エッジのABS端面から磁気記録媒体に向けて、近接場光が発せられる。
【0138】
このような形態とすることによって、磁極の近傍に、発光位置が制御された近接場光発光素子を配置することが可能となり、書き込み用の磁極と近接場光発光素子との距離を近づけることができる。
【0139】
なお、図12〜図13に示されるプラズモン発生素子36´の形態に限定されることなく、変形例として、断面V字形状のV字の上端部の両側にそれぞれウイング(Y方向、およびーY方向)を付加したり、あるいは、ABS端面近傍が断面V字形状であって、奥域(X方向)に進むにつれてあたかも船状に広がる形態部分を備えるプラズモン発生素子としてもよい。この変形例の場合もやはり、磁極は、プラズモン発生素子の凹部と密着されるような凸形状を有するように構成される。
【0140】
図11は、図5に示した磁気ディスク装置の記録再生および発光制御回路13の回路構成を示すブロック図である。
【0141】
図11において、90は制御LSI、91は、制御LSI90から記録データを受け取るライトゲート、92はライト回路、93は、レーザダイオード40に供給する動作電流値の制御用テーブル等を格納するROM、95は、MR効果素子33へセンス電流を供給する定電流回路、96は、MR効果素子33の出力電圧を増幅する増幅器、97は、制御LSI90に対して再生データを出力する復調回路、98は温度検出器、99は、レーザダイオード40の制御回路をそれぞれ示している。
【0142】
制御LSI90から出力される記録データは、ライトゲート91に供給される。ライトゲート91は、制御LSI90から出力される記録制御信号が書き込み動作を指示するときのみ、記録データをライト回路92へ供給する。ライト回路92は、この記録データに従って書き込みコイル層343に書き込み電流を流し、主磁極3400から発生する書き込み磁界により磁気ディスク上に書き込みを行う。
【0143】
制御LSI90から出力される再生制御信号が読み出し動作を指示するときのみ、定電流回路95からMR積層体332に定電流が流れる。このMR効果素子33により再生された信号は増幅器96で増幅された後、復調回路97で復調され、得られた再生データが制御LSI90に出力される。
【0144】
レーザ制御回路99は、制御LSI90から出力されるレーザON/OFF信号および動作電流制御信号を受け取る。このレーザON/OFF信号がオン動作指示である場合、発振しきい値以上の動作電流がレーザダイオード40に印加される。これによりレーザダイオード40が発光し、レーザ光が導波路35を伝播して、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合する。これにより、プラズモン発生素子36の端から近接場光が発生し、磁気ディスクの磁気記録層に照射され、磁気記録層を加熱する。この際の動作電流値は、動作電流制御信号に応じた値に制御される。制御LSI90は、記録再生動作とのタイミングに応じてレーザON/OFF信号を発生させ、温度検出器98によって測定された磁気ディスクの磁気記録層の温度等を考慮し、ROM93内の制御テーブルに基づいて、動作電流値制御信号の値を決定する。ここで、制御テーブルは、発振しきい値および光出力−動作電流特性の温度依存性のみならず、動作電流値と熱アシスト作用を受けた磁気記録層の温度上昇分との関係、および磁気記録層の異方性磁界(保磁力)の温度依存性についてのデータも含んでいてもよい。このように、記録/再生動作制御信号系とは独立して、レーザON/OFF信号および動作電流値制御信号系を設けることによって、単純に記録動作に連動したレーザダイオード40への通電のみならず、より多様な通電モードを実現することができる。
【0145】
なお、記録再生および発光制御回路13の回路構成は、図11に示したものに限定されるものではないことは明らかである。記録制御信号および再生制御信号以外の信号で書き込み動作および読み出し動作を特定してもよい。
【0146】
上記の内容を考慮しつつ、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コア1150の形態は、図14や図15に示される形態とすることが望ましい。
【0147】
図14に示されるコア1150は、上述してきた伝搬エッジを備えるプラズモン発生素子36、36´との組み合わせ使用において、特に、好適である。図14に示されるコア1150は、狭幅の先端コア部1153にTE−TM変換素子777を設けており、これにより、コア基部1151および絞り部1152においてTEモードの偏光(振動方向Y方向)で伝搬されているレーザ光を、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合できるように、TMモードの偏光(振動方向Z方向)に変換している。
【0148】
また、図15に示されるコア1150は、狭幅の先端コア部1153をさらに細幅に絞り込んだ先端部1154を設け、その先端にプラズモン発生素子チップ3600を直接付着させた構造を備えている。この形態は近接場光を発生させるもっともシンプルかつオーソドックスな形態である。この場合、プラズモン結合させる必要性がないため、TEモードの偏光(振動方向Y方向)のままで、プラズモン発生素子チップに至るまで光伝搬される。
【実施例】
【0149】
上述してきた本発明の光導波路について、具体的実施例を示し本発明をさらに詳細に説明する。
【0150】
〔実験例I〕
図1〜図3に示されるような形態の光導波路において、グレーティング1200に照射された光がどの程度導波路内で光結合して伝搬するのかの指標となる光強度をシミュレーションによって解析した実験例を示す。
【0151】
パラメータは、図3に示されるコア基部1151の厚さH2に対するグレーティング1200の凹溝1201の深さH1の比(H1/H2)である。
【0152】
<シュミレーション条件>
・コアの材料:TaOx(屈折率:2.15)
・コア寸法:
広幅のコア基部1151(幅W1=4μm;長さL1=50μm)
絞り部1152(長さL2=100μm)
狭幅の先端コア部1153(幅W3=0.5μm;長さL3=30μm)
厚さ(H2)=0.3μm
・クラッドの材料:SiO2 (屈折率:1.45)
・使用レーザ光:波長800nm(クラッド内での換算波長)、TM偏波
・グレーティング1200の仕様:
Single grating(格子長Wo(Y方向)=10μm)
格子ピッチP=0.54μm
格子の凹溝1201の深さH1(パラメータ)
凹溝1201にクラッド材を充填
凹溝1201の個数;20本
・反射膜1159:コア基部の導波方向と反対側の端面に厚さ100nmのAu
【0153】
シミュレーションによって解析した結果を下記表1に示した。なお、光強度の測定位置は、L2とL1の間の場所とした。
【0154】
【表1】
【0155】
上記表1において、凸25%とは、コア平面を基準として、コア厚さに対して25%突出した凸状グレーティングを意味する。凸50%とは、コア平面を基準として、コア厚さに対して50%突出した凸状グレーティングを意味する。
【0156】
上記の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明の光導波路は、光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されているので、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させ、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる。これにより、レーザ光発生装置との配置関係をシンプルにして、レーザ光発生装置の設置を簡単に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の産業上の利用可能性として、例えば、極小サイズの磁気記録ヘッドであって光導波路を備える熱アシスト磁気記録ヘッド、光伝送部品、Si細線導波路などの産業に適用できる。
【符号の説明】
【0158】
1100…光導波路
1150…コア
1151…コア基部
1152…絞り部
1153…先端コア部
1200…グレーティング(格子)
1201…凹溝
1300…クラッド
1400…光源ユニット
1401…反射膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路およびそれを用いた熱アシスト磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドおよび媒体を用いた磁気記録の分野においては、磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録媒体のさらなる向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、現在、読み出し用の磁気抵抗(MR)素子と書き込み用の電磁変換素子とが積層された構造からなる複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
【0003】
一方、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかしながら、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
この問題への対策として、磁性微粒子の磁気異方性エネルギーKuを大きくすることが考えられる。しかし、このKuの増加は、磁気記録媒体の異方性磁界(保磁力)の増加をもたらす。これに対して、薄膜磁気ヘッドにより書き込み磁界強度の上限は、ヘッド内の磁気コアを構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、磁気記録媒体の異方性磁界が、この書き込み磁界強度の上限から決まる許容値を超えると、書き込みが不可能となってしまう。現在、このような熱安定性の問題を解決する1つの方法として、Kuの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界を印加する直前に磁気記録媒体に熱を加えるころによって、異方性磁界を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。
【0005】
この熱アシスト磁気記録方式においては、照射されたレーザ光によって励起されたプラズモンから近接場光を生成する金属片である近接場光プローブ、いわゆるプラズモン・アンテナを用いる方法が一般に知られている。例えば、米国特許第6,768,556号明細書(US Patent No. 6,768,556)においては、基板上に形成された円錐体等の形状をした金属の散乱体と、その散乱体の周辺に形成された誘電体等の膜とを備えたプラズモン発生素子が開示されている。
【0006】
また、米国特許出願公開第2004/081031号明細書(US Patent Publication No.2004/081031 A1)においては、プラズモン発生素子が、その照射される面が磁気記録媒体に垂直となるように、垂直磁気記録用ヘッドの主磁極に接する位置に形成された構成が開示されている。また、米国特許出願公開第2003/066944号明細書(US Patent Publication No.2003/066944 A1)においては、プラズモン・アンテナの先端を優先的に磁気記録媒体に近づけることによって、磁気記録媒体に対してより強い近接場光の照射を試みた技術が開示されている。
【0007】
本願発明者らもまた、近接場光の照射を利用して磁気記録の可能性を極限まで追求し、より改善された熱アシスト磁気記録ヘッドの開発を進めている。
【0008】
近接場光の照射を利用した熱アシスト記録を磁気記録ヘッドで行うに際しては、発光素子としてのレーザ発生装置を磁気記録ヘッドに搭載し、レーザ発生装置から発せられたレーザ光を光導波路(光waveguide)に取り込み、磁気記録媒体に対向する位置付近に存在するプラズモン・アンテナまで導く必要性がある。
【0009】
レーザ発生装置から発せられたレーザ光を光導波路に取り込む際、光導波路の片側平面の上に、grating (格子)を設けて、当該grating (格子)を介して、レーザ光を光導波路に光結合させ、しかる後、光導波路内を伝搬させる手法がある(US 6944112、文献Nature Photonics (Seagate) 2009.03.22など)。
【0010】
US 6944112に開示の技術は、planer 導波路(平面導波路)に形成された格子に対して、レーザ発生装置から発せられたレーザ光を垂直入射させるものではなく、斜め照射するものである。また、planer 導波路(平面導波路)の外部形態は、放物線形状であり、単一モードに絞り込む形態であるスポットサイズコンバータとは異なる。US 6944112の開示の技術によれば、伝搬される光は、一旦、放物線形状の部分で反射されて、焦点に集光される。
【0011】
また、文献Nature Photonics (Seagate) に開示の技術は、US 6944112と同様に、平面導波路の外部形態は、放物線形状であり、単一モードに絞り込む形態であるスポットサイズコンバータではない。従って、一旦、放物線形状部分で反射されて、焦点に集光される。また、当該文献においては、2つの格子が並列に配列されたdual offset gratingを備えている。そのため、放物線形状部分で反射された光同士が焦点で交差するために、最終的な光の偏光(振動)方向は、紙面の上での上下方向と同じ方向となる。そのため、ABSへ向かって導波する表面プラズモンを使用する素子には効率よく結合できないという不都合が生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第US 6,944,112号
【特許文献2】特開2008−010093
【特許文献3】特開2008−016096
【特許文献4】特開2010−108584
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nature Photonics (Seagate):PUBLISHED ONLINE:22 MARCH 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような実状のもとに本願発明は創案されたものであって、その目的は、レーザ光発生装置との配置関係をシンプルにして、レーザ光発生装置の設置を簡単に行うことが可能となるように、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させる構造、および、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる光導波路を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の光導波路は、光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアを構成する材料の屈折率は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも大きくなっており、前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されてなるように構成される。
【0016】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記コア基部の導波方向と反対側の端面(後端部)には、反射膜が設けられているように構成される。
【0017】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記幅細の先端コア部は、前記絞り部の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設されているように構成される。
【0018】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記グレーティング(格子)は、single grating として構成される。
【0019】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記グレーティング(格子)は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される。
【0020】
また、本発明の光導波路の好ましい態様として、前記広幅のコア基部の幅W1は、0.4〜10.0μmであり、前記狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μmであるように構成される。
【0021】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドは、媒体対向面側の端面から書き込み磁界を発生させる磁極と、プラズモンを励起するための光を伝播させる上記記載の光導波路と、前記光とプラズモンモードで結合する部分であるプラズモン発生素子と、を備えてなるように構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させることができるとともに、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる。これにより、光導波路とレーザ光発生装置との配置関係がきわめてシンプルとなり、レーザ光発生装置などの設置を容易に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、発光素子から発せられた光ビームが照射されている本発明の光導波路の模式的断面図を示す図面である。
【図2】図2は、図1に示される本発明の光導波路のα−α断面矢視図であり、クラッドを除いて描いた断面図である。
【図3】図3は、図1に示される光導波路の要部の拡大断面図であり、コアのグレーティング形成面にレーザ光が垂直入射される部分の拡大断面図である。
【図4】図4は、図1に相当する図面であって、コアのグレーティング形成面にレーザ光を垂直入射させる他の方法を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光導波路を適用させることのできる磁気記録装置およびHGAの一実施形態の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の光導波路を適用させることのできる熱アシスト磁気記録ヘッドの要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部の構成を概略的に示す図6のA―A面による断面図である。
【図8】図8は、導波路、プラズモン発生素子および主磁極層の構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】図9は、プラズモン発生素子および電磁変換素子のヘッド部端面上での端面の形状を示す平面図である。
【図10】図10は、表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録を説明するための概略図である。
【図11】図11は、図5に示した磁気ディスク装置の記録再生および発光制御回路の回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、他の形態のプラズモン発生素子を適用した場合の図8相当図であり、導波路、プラズモン発生素子および主磁極層の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】図13は、他の形態のプラズモン発生素子を適用した場合の図9相当図であり、プラズモン発生素子および電磁変換素子のヘッド部端面上での端面の形状を示す平面図である。
【図14】図14は、図2相当図であり、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コアの形態の一例を示す平面図である。
【図15】図15は、図2相当図であり、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コアの形態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための光導波路の最良の形態について詳細に説明する。
図1は、発光素子から発せられた光ビームが照射されている本発明の光導波路の模式的断面図を示す図面であり、図2は、図1に示される本発明の光導波路のα−α断面矢視図であり、クラッドを除いて描いた断面図であり、図3は、図1に示される光導波路の要部の拡大断面図であり、コアのグレーティング形成面にレーザ光が垂直入射される部分の拡大断面図である。
【0025】
図1に示されるように、本発明の光導波路1100は、光を導くための主要部をなす導波路本体であるコア1150と、その周囲を囲むクラッド1300と、を有して構成されている。そして、コア1150を構成する材料の屈折率は、クラッド1300を構成する材料の屈折率よりも大きくなるように、コアおよびクラッドの材料選定が行われる。
【0026】
コア1150は、図1および図2に示されるように、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部1151と、このコア基部1151に連接されて導波方向(図1および図2における−X方向)に沿って幅が徐々に絞られる絞り部1152と、この絞り部1152に連接され導波方向(−X方向)に沿って延設された狭幅の先端コア部1153とを有している。
【0027】
絞り部1152では、主としてシングルモードへの光変換が行われ、狭幅の先端コア部1153では、主としてシングルモードでの光伝搬が行われる。シングルモードとは、光を伝搬する経路(モード)が1つであることを言う。光の振動方向を所望の方向に変換するために、狭幅の先端コア部1153の途中に、例えば、TE−TMモード変換素子を設けるようにしてもよい。これによって、例えば、図2におけるY方向に振動方向を有する偏光をZ方向に振動方向を有する偏光に変換させることができる。
【0028】
図2に示される広幅のコア基部1151の幅W1は、0.4〜10.0μm程度とされ、狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μm程度とされる。例えば、幅細の先端コア部1153は、絞り部1152の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設される。
【0029】
また、図2に示される導波方向(−X方向)の各構成部の長さは、広幅のコア基部1151の長さL1が、2〜200μm程度、絞り部1152の長さL2が30〜200μm程度、狭幅の先端コア部の長さL3が、0.5〜100μm程度とされる。
【0030】
広幅のコア基部1151の一方の平面の上には、グレーティング(格子)1200が形成されている。このグレーティング1200は、平面に多数の断面矩形状の凹溝1201を幅方向(Y方向)に沿って刻むことによって構成されている。凹溝1201の数は、10〜200本程度である。
【0031】
グレーティング1200は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される(図3参照)。なお、広幅のコア基部1151の一方の平面の上に凹部溝ではなく突起した凸部を設けるグレーティング構造では、効果的な光結合が実現できないことに注意されたい。
【0032】
本発明におけるグレーティング1200は、図1に示されるように、例えば、広幅のコア基部1151と対向配置された光源ユニット1400(例えば、レーザダイオード1400)から、グレーティング1200形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、グレーティング1200の周期(格子ピッチP:凹溝1201のピッチP)は、垂直入射されるレーザ光の波長λcよりも小さくなるように構成される。
【0033】
つまり、格子ピッチP(nm)<レーザ光の波長λc(nm)、の不等式の関係が成立するように構成される。波長λcはクラッド1300における波長として規定される。なお、本発明において、垂直入射とは、90°±5°の角度範囲での入射をいう。
【0034】
ただし、図1に示される形態に限定されるわけではなく、例えば、図4に示されるように、広幅のコア基部1151の後方に光源ユニット1400を配置して、反射膜1401の反射を利用して、レーザ光(L)をグレーティング1200形成面に対して垂直入射させるようにしてもよい。図4に示される反射膜1401の反射を利用する態様によれば、例えば、光源ユニット1400の設置場所の選定の自由度(Z方向への設置の自由度)が増大するというメリットがある。
【0035】
本発明において、特に重要なことは、図3に示されるように、グレーティング1200の凹溝1201の深さH1は、コア基部1151の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係、特に、好ましくは、H1=(0.45〜0.55)H2を満たすよう形成されている。
【0036】
なお、コア基部1151の厚さH2は、通常、0.3〜3.0μm程度とされる。凹溝1201の個数は、X方向に、10〜200個程度形成される。
【0037】
上記H1とH2との厚さ比の関係が必要であるのは、以下の考察に基づく。すなわち、導波路の中で導波するための光の強度分布および位相などと、グレーティング1200に対して垂直照射されたレーザ光によって凹溝1201の下端エッジ近傍で発生するエバネッセント波(近接場光)の強度分布および位相などを一致させることによって、入射されるレーザ光と導波路内の導波光との光の結合を図るという作用が奏される。本願におけるグレーティング1200を介しての導波路への光結合は、回折によるものではない。凹溝1201の下端エッジ近傍で発生する近接場光そのものは伝搬しないが、そのエネルギーが導波路の中で導波するためのエネルギーに変換されるものと考えられる。
【0038】
なお、入射されるレーザ光の振動方向(偏光方向)は、広幅のコア基部1151の幅方向であるY方向とすることが好ましい。(例えば、TE偏波)
【0039】
また、本発明においてもう一つの重要な点は、コア基部1151の導波方向と反対側の端面(後端部)には、Au膜等からなる反射膜1159が設けられていることである。本願発明においては、コア基部1151に形成されたグレーティング1200に対する垂直方向への光入射が基本であるため、反射膜1159を設けることによって、確実に、目的とする導波方向(−X方向)に光を伝搬させるように構成している。
【0040】
また、本発明におけるグレーティング1200(格子)は、図2に示されるようにsingle grating であることが望ましい。先行技術に記載したように、Single grating を並列に配置したDual gratingにすると、伝搬方向において、互いの干渉が生じ得るおそれがあるからである。なお、single gratingの格子の長さWo(Y方向)は、0.34〜9.90μm程度とされる。
【0041】
このような本発明における光導波路は、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させることができるとともに、光導波路内を目的とする方向に伝搬させることができ、例えば、極小サイズの磁気記録ヘッドであって光導波路を備える熱アシスト磁気記録ヘッド、光伝送部品、Si細線導波路などに適用可能である。
【0042】
なお、レーザ光を発生させるレーザダイオードとしては、InP系、GaAs系、GaN系等の、通信用、光学系ディスクストレージ用又は材料分析用等として通常用いられているものが使用可能であり、放射されるレーザ光の波長λLは、例えば375nm〜1.7μmの範囲内のいずれの値のものを用いてもよい。
【0043】
また、図1〜図4に示されるような光導波路の積層構成は、スパッタ、ミリング、RIE、フォトレジスト手法等の薄膜製造技術を利用して積層することができる。
【0044】
以下、本発明の光導波路が好適に適用される熱アシスト磁気記録ヘッドの好適例について説明する。ただし、以下に詳述する熱アシスト磁気記録ヘッドそのものの構造に限定されるものではない。
【0045】
〔熱アシスト磁気記録ヘッドの説明〕
熱アシスト磁気記録ヘッドの説明をする前に、本明細書において用いられる用語の定義を行う。磁気記録ヘッドのスライダ基板の素子形成面に形成された積層構造もしくは素子構造において、基準となる層又は素子から見て、基板側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。
【0046】
また、磁気ヘッドの実施形態において、必要に応じていくつかの図面中、「X,Y,Z方向」を規定している。ここで、Z軸方向は、上述の上下方向に対応しており、+Z側がトレーリング側に相当し、−Z側がリーディング側に相当する。Y軸方向をトラック幅方向とし、X軸方向をハイト方向とする。
【0047】
また、磁気記録ヘッドの説明において当該磁気記録ヘッド内に設けられた導波路の「側面」とは、導波路を取り囲む端面のうち、導波路を伝播する光の伝播方向(−X方向)に垂直な端面以外の端面を指すものとする。従って、磁気記録ヘッドの説明における導波路の「上面」または「下面」もこの「側面」の1つであり、この「側面」は、コアに相当する導波路において伝播する光が全反射し得る面となる。
【0048】
図5は、磁気記録装置およびHGA(ヘッドジンバルアセンブリ)の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。ここで、HGAの斜視図においては、HGAの磁気記録媒体表面に対向する側が上になって表示されている。
【0049】
図5に示される磁気記録装置としての磁気ディスク装置は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する、磁気記録媒体としての複数の磁気ディスク10と、複数の駆動アーム14が設けられたアセンブリキャリッジ装置12と、各駆動アーム14の先端部に取り付けられており薄膜磁気ヘッドである熱アシスト磁気記録ヘッド21を備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17と、熱アシスト磁気記録ヘッド21の書き込みおよび読み出し動作を制御し、さらに、後述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードの発光動作を制御するための記録再生および発光制御回路13とを備えている。
【0050】
磁気ディスク10は、本実施の形態において、垂直磁気記録用であり、ディスク基板に、軟磁性裏打ち層、中間層および磁気記録層(垂直磁化層)が順次積層された構造を有している。アセンブリキャリッジ装置12は、熱アシスト磁気記録ヘッド21を、磁気ディスク10の磁気記録層に形成されており記録ビットが並ぶトラック上に位置決めするための装置である。アセンブリキャリッジ装置12内において、駆動アーム14は、ピポットベアリング軸16に沿った方向にスタックされており、ボイスコイルモータ(VCM)15によってこの軸16を中心にして角揺動可能となっている。
【0051】
なお、本発明に係る磁気ディスク装置の構造は、以上に述べた構造に限定されるものではない。例えば、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17および熱アシスト磁気記録ヘッド21は、単数であってもよい。
【0052】
さらに、同様の図5によれば、HGA17において、サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200に固着されておりしかも弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、を備えて構成されている。また、フレクシャ201上には、リード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203が設けられている。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、各磁気ディスク10の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション20の先端部であってフレクシャ201に固着されている。さらに、配線部材203の一端が、熱アシスト磁気記録ヘッド21の端子電極に電気的に接続されている。
【0053】
なお、サスペンション20の構造も、以上に述べた構造に限定されるものではない。図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されていてもよい。
【0054】
図6は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の一実施形態を示す斜視図である。
【0055】
ただし、図6のヘッドにおいて、光導波路の基部である広幅のコア基部に形成されたグレーティング(格子)に対して、レーザ光を垂直方向に入射させるレーザ光発生装置(光源ユニット)の記載は省略してある。垂直方向に入射されるレーザ光は、単に照射状態を矢印LAで示すに留まっている。
【0056】
レーザ光発生装置(光源ユニット)は、例えば、図1に示されるように、光導波路のコアに対向するように配置してもよいし、図4に示されるように光導波路のコアの後部に配置されて、反射膜を介してグレーティング(格子)に垂直入射させるようにしてもよい。ヘッド内への取り付け手法には種々の形態が考えられる。レーザ光発生装置(光源ユニット)は、すでに外部で予め形成していたものをヘッド内に取り付けるようにしてもよいし、ヘッド内に成膜技術を応用して薄膜形成するようにしてもよい。
【0057】
図6に示されるように、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、スライダ22を有している。
【0058】
スライダ22は、アルチック(Al2O3−TiC)等から形成されており、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)2200を有するスライダ基板220と、ABS2200とは垂直な素子形成面2202上に形成されたヘッド部221とを備えている。
【0059】
スライダ22のスライダ基板220の素子形成面2202上に形成されたヘッド部221は、磁気ディスクからデータを読み出すためのMR素子33および磁気ディスクにデータを書き込むための電磁変換素子34の双方を備えて構成されるヘッド素子32と、図示していない光源ユニットに備えられたレーザダイオードからのレーザ光を媒体対向面側に導くための導波路35と、導波路35と共に近接場光発生素子を構成するプラズモン発生素子36と、MR素子33、電磁変換素子34、導波路35およびプラズモン発生素子36を覆うように素子形成面2202上に形成された保護層38と、保護層38の上面に露出しておりMR素子33に電気的に接続された一対の端子電極370と、同じく保護層38の上面に露出しており電磁変換素子34に電気的に接続された一対の端子電極371とを備えている。近接場光発生素子は、プラズモン発生素子と導波路からなる。
【0060】
ここで、導波路35は、前記図1〜図4を用いて説明したコア1150のコア材料と同じ材料からなり、同義である。導波路35は、図面の紙面の大きさ等の関係から、必ずしも、図1〜図4に示されるコア形態と同じに描かれていないこともあるが、実際は同じものである。
【0061】
端子電極370および371は、フレクシャ201(図5参照)に設けられた配線部材203の接続パッドに電気的に接続される。
【0062】
MR素子33、電磁変換素子34およびプラズモン発生素子36の一端は、ヘッド部221の媒体対向面であるヘッド部端面2210に達している。ここで、ヘッド部端面2210とABS2200とが熱アシスト磁気記録ヘッド21全体の媒体対向面をなしている。
【0063】
実際の書き込み又は読み出し時においては、熱アシスト磁気記録ヘッド21が回転する磁気ディスク表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR素子33および電磁変換素子34の端が、磁気ディスクの磁気記録層の表面と適当なマグネティックスペーシングを介して対向することになる。
【0064】
この状態において、MR素子33が磁気記録層からのデータ信号磁界を感受して読み出しを行い、電磁変換素子34が磁気記録層にデータ信号磁界を印加して書き込みを行う。ここで、書き込みの際、光源ユニットのレーザダイオードから導波路35のグレーティング1200に垂直照射され、導波路35を通って伝播してきたレーザ光が、後に詳述するように、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合し、プラズモン発生素子36に表面プラズモンを励起する。
【0065】
この表面プラズモンが、後述するプラズモン発生素子36に設けられた伝播エッジを、ヘッド部端面2210に向けて伝播することにより、プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210側の端において、近接場光が発生する。この近接場光が磁気ディスク表面に達し、磁気ディスクの磁気記録層部分を加熱し、それにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その結果、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0066】
図7は、熱アシスト磁気記録ヘッド21の要部の構成を概略的に示す、図6のA―A面による断面図に相当する。
【0067】
図7に示されるように、MR素子33は、MR積層体332と、対となってMR積層体332および絶縁層381を挟む位置に配置されている下部シールド層330および上部シールド層334とを含み、素子形成面2202上に形成された絶縁層380上に形成されている。上下部シールド層334および330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界を受けることを防止する。
【0068】
上下部シールド層334および330は、例えばフレームめっき法又はスパッタリング法等によって形成された磁性層であり、例えばNiFe(パーマロイ)、FeSiAl(センダスト)、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN、もしくはCoZrTaCr等、又はこれらの材料の多層膜等の軟磁性材料からなり、厚さは、例えば0.5〜3μm程度とされる。
【0069】
MR積層体332は、MR効果を利用して信号磁界を感受する感磁部であり、例えば、面内通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCIP−GMR(Current In Plane-Giant Magnetoresistive)積層体、垂直通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCPP−GMR(Current perpendicular to Plane-Giant Magnetoresistive)積層体、又はトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel-Magnetoresistive)積層体のいずれであってよい。
【0070】
これらのMR効果を利用したMR積層体332はいずれにおいても、高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受することができる。なお、MR積層体332がCPP−GMR積層体又はTMR積層体である場合、上下部シールド層334および330は、電極としての役割も果たす。一方、MR積層体332がCIP−GMR積層体である場合、MR積層体332と上下部シールド層334および330それぞれとの間には絶縁層が設けられ、さらに、MR積層体332に電気的に接続されたMRリード層が設けられる。
【0071】
MR積層体332は、例えば、TMR積層体である場合、例えばIrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えばCoFe等からなる2つの強磁性層がRu等の非磁性金属層を間に挟んだ構造を有しており、反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有していてもよい。
【0072】
同じく図7に示されるように、電磁変換素子34は、垂直磁気記録用であって、主磁極層340と、ギャップ層341と、書き込みコイル層343と、コイル絶縁層344と、ライトシールド層345とを備えている。
【0073】
主磁極層340は、Al2O3(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層384上に形成されており、書き込みコイル層343に書き込み電流を印加することによって発生した磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの磁気記録層(垂直磁化層)まで収束させながら導くための導波路である。
【0074】
主磁極層340は、主磁極3400および主磁極本体部3401が順次積層された構造を有している。このうち、主磁極3400は、ヘッド部端面2210に達しており、トラック幅方向の小さな幅Wp(図9を参照)を有する第1の主磁極部3400aと、この第1の主磁極部3400a上であって第1の主磁極部3400aの後方(+X側)に位置している第2の主磁極部3400bとを有している。
【0075】
このように、第1の主磁極部3400aが小さな幅Wpを有することによって、微細な書き込み磁界が発生可能となり、トラック幅を高記録密度化に対応した微小値に設定可能となる。
【0076】
主磁極3400は、主磁極本体部3401よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料から形成されており、例えば、Feが主成分である鉄系合金材料である、FeNi、FeCo、FeCoNi、FeN又はFeZrN等の軟磁性材料から形成される。第1の主磁極部3400aの厚さは、例えば、0.1〜0.8μmである。
【0077】
ギャップ層341は、主磁極層340とライトシールド層345とをヘッド端面300近傍において磁気的に分離させるためのギャップを形成する。ギャップ層341は、Al2O3(アルミナ)、SiO2(二酸化珪素)、AlN(窒化アルミニウム)若しくはダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の非磁性絶縁材料、又はRu(ルテニウム)等の非磁性導電材料で構成されている。ギャップ層341の厚さは、主磁極層340とライトシールド層345との間のギャップを規定しており、例えば、0.01〜0.5μm程度である。
【0078】
書き込みコイル層343は、Al2O3(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層3421上において、1ターンの間に少なくとも主磁極層340とライトシールド層345との間を通過するように形成されており、バックコンタクト部3402を中心として巻回するスパイラル構造を有している。
【0079】
この書き込みコイル層343は、例えば、Cu(銅)等の導電材料から形成されている。ここで、加熱キュアされたフォトレジスト等の絶縁材料からなる書き込みコイル絶縁層344が、書き込みコイル層343を覆っており、書き込みコイル層343と主磁極層340およびライトシールド層345との間を電気的に絶縁している。
【0080】
書き込みコイル層343は、本実施形態において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。また、巻き数も図7に示される数に限定されるものではなく、例えば、2〜7ターンに設定され得る。
【0081】
ライトシールド層345は、ヘッド部端面2210に達しており、磁気ディスクの磁気記録層(垂直磁化層)の下に設けられた軟磁性裏打ち層から戻ってきた磁束のための導磁路としての役割を果たす。ライトシールド層345の厚さは、例えば、0.5〜5μm程度である。また、ライトシールド層345において、主磁極層340と対向する部分は、同じくヘッド部端面2210に達しており、主磁極層340から発して広がった磁束を取り込むためのトレーリングシールド3450となっている。
【0082】
トレーリングシールド3450は、本実施の形態において、絶縁層3420および主磁極本体部3401とともに平坦化されていて、第1の主磁極部3400aのみならず主磁極本体部3401よりも大きなトラック幅方向の幅を有している。このようなトレーリングシールド3450を設けることによって、トレーリングシールド3450の端部と第1の主磁極部3400aとの間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートが低減可能となる。また、ライトシールド層345は、軟磁性材料から形成されるが、特に、トレーリングシールド3450は、高飽和磁束密度を有する、NiFe(パーマロイ)又は主磁極3400と同様の鉄系合金材料等から形成される。
【0083】
同じく図7に示されるように、導波路35およびプラズモン発生素子36は、MR素子33と電磁変換素子34との間に設けられており、ヘッド部221内の光学系である近接場光-Generatorをなす。
【0084】
ここで、導波路35(図1〜2、図4における符号1150と同義である)は、素子形成面2202と平行に形成されており、ヘッド部端面2210側の端面350まで伸張されている。
【0085】
また、導波路35の上面(側面)の一部とプラズモン発生素子36の(伝播エッジ360(図8)を含む)下面の一部とは、所定の間隔をもって対向しており、これら一部に挟まれた部分は、導波路35の屈折率よりも低い屈折率を有する緩衝部50となっている。
【0086】
緩衝部50は、導波路35を伝播するレーザ光を、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。なお、この緩衝部50は、保護層38の一部である絶縁層384の一部であってもよいし、絶縁層384とは別に設けられた新たな層であってもよい。これら、導波路35、プラズモン発生素子36および緩衝部50については、さらに、図8を参照して説明を加える。
【0087】
また、本実施形態においては、MR素子33と電磁変換素子34(導波路35)との間に、絶縁層382および383に挟まれた素子間シールド層39が設けられている。この素子間シールド層39は、電磁変換素子34より発生する磁界からMR素子33をシールドする役割を果たしており、上下部シールド層334および330と同じ軟磁性材料で形成されていてもよい。なお、素子間シールド層39は必ずしも必要ではなく、素子間シールド層39が存在しない形態であってもよい。また、この素子間シールド層39と導波路35との間に、バッキングコイル部が形成されていてもよい。
【0088】
バッキングコイル部は、電磁変換素子34から発生してMR効果素子33の上下部シールド層334および330を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み動作又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE:wide area adjacent track eraser)現象の抑制を図るものである。
【0089】
なお、図7や図8に示されるヘッドの形態において、導波路35とプラズモン発生素子36が結合される領域においては、レーザ光の電場の振動方向が、垂直(Z軸方向:TMモードの偏光)であることが必要である。
【0090】
図8は、導波路35、プラズモン発生素子36および主磁極層340の構成を概略的に示す斜視図である。同図においては、書き込み磁界および近接場光が磁気記録媒体に向かって放射される位置を含むヘッド部端面2210が、左側に位置している。
【0091】
図8に示されるように、近接場光発生用のレーザ光53を伝播させるための導波路35と、レーザ光53によって励起される表面プラズモンが伝播するエッジである伝播エッジ(Propagative Edge)360を備えたプラズモン発生素子36とが設けられている。
【0092】
なお、図8に部分的に示されている導波路35の箇所は、図1〜図4における狭幅の先端コア部1153に相当している。
【0093】
さらに、導波路35の側面354の一部と、この一部に対向したプラズモン発生素子36の伝播エッジ360を含む下面362の一部との間に挟まれた部分が、緩衝部50となっている。すなわち、伝播エッジ360の一部は、緩衝部50に覆われている。
【0094】
緩衝部50は、レーザ光53を表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合させる役割を果たす。ここで、導波路35の側面とは、導波路35を取り囲む端面のうち、レーザ光53の伝播方向(−X方向)に垂直なヘッド部端面2210側の端面350およびその反対側の端面(図示していない)以外の端面を指すものとする。この側面は、コアに相当する導波路35において伝播するレーザ光53が全反射し得る面となる。
【0095】
なお、本実施形態において、一部が緩衝部50に接面した導波路35の側面354は、導波路35の上面となっている。また、緩衝部50は、保護層38(図6参照)の一部であってもよいし、保護層38とは別に設けられた新たな層であってもよい。
【0096】
プラズモン発生素子36は、さらに、ヘッド部端面2210に達した近接場光発生端面36aを備えている。この近接場光発生端面36aは、主磁極3400のヘッド部端面2210に達した端面3400eに近接している。また、伝播エッジ360は、レーザ光53と表面プラズモンモードで結合する部分である緩衝部50に覆われた部分から、近接場光発生端面36aまで伸張しており、レーザ光53によって励起される表面プラズモンを近接場光発生端面36aまで伝播させる役割を果たす。
【0097】
ここで、伝播エッジ360のヘッド部端面2210側の部分は、近接場光発生端面36aに向かうにつれて、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360とは反対側の端面361に近づくように伸張している直線状又は曲線状となっている。なお、伝播エッジ360の角は、表面プラズモンが伝播エッジ360から逃げてしまう現象を防止するために、丸められていてもよい。この際、丸められた角の曲率半径は、例えば5〜500nmとされる。
【0098】
また、プラズモン発生素子36は、本実施の形態において、ヘッド部端面2210の近傍において、近接場光発生端面36aに向かってハイト方向(Z軸方向)に先細となる形状を有している。
【0099】
また、プラズモン発生素子36においては、YZ面による断面が三角形状を有しており、特にヘッド部端面2210の近傍において所定の三角形状を有している。その結果、近接場光発生端面36aは、本実施形態において、端面36aに達した伝播エッジ360の端を1つの頂点とする三角形状を有している(図9参照)。ここで、伝播エッジ360を伝播する表面プラズモンが近接場光発生端面36aに至って、近接場光発生端面36aから近接場光が発生する。
【0100】
導波路35および緩衝部50は、プラズモン発生素子36の−Z側(図面の下方側)、すなわち主磁極3400とは反対側に設けられている。その結果、緩衝部50に覆われた伝播エッジ360も主磁極3400とは反対側に位置することになる。このような構成においては、書き込み磁界を発生させる主磁極3400の端面3400eと近接場光を発生させる近接場光発生端面36aとの距離を十分に、好ましくは100nm以下に小さくした状態においても、導波路35を、主磁極3400および主磁極本体部3401から十分に離隔させることができる。その結果、レーザ光53の一部が金属からなる主磁極3400および主磁極本体部3401に吸収されてしまって近接場光に変換される光量が低減してしまう事態を回避することができる。
【0101】
図8に示されるように、導波路35(ここでは図1〜図4における狭幅の先端コア部1153と同義)の形状は直方体でもよいが、ヘッド部端面2210側の部分のトラック幅方向(Y軸方向)の幅が狭くなっていてもよい。端面350側の部分におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WWG2は、例えば約0.3〜100μmとすることができ、(Z軸方向の)厚さTWGは、例えば0.1〜4μmとすることができる。(X軸方向の)高さ(長さ)は、例えば10〜300μmとすることができる。
【0102】
また、導波路35の側面、すなわち上面354、下面353、およびトラック幅方向(Y軸方向)の両側面351は、緩衝部50と接面した部分を除いて、保護層38(図6参照)と接している。ここで、導波路35は、保護層38の構成材料の屈折率nOCよりも高い屈折率nWGを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された材料から構成されている。例えば、レーザ光の波長λLが633nmであって、保護層38が、SiO2(n=1.5)から形成されている場合、導波路35は、Al2O3(n=1.63)から形成されていてもよい。さらに、保護層38が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、導波路35は、SiOXNY(n=1.7〜1.85)、Ta2O5(n=2.16)、Nb2O5(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO2(n=2.3〜2.55)から形成されていてもよい。導波路35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によってレーザ光53の伝播損失が低く抑えられる。さらに、導波路35がコアとして働く一方、保護層38がクラッドとしての機能を果たし、全側面での全反射条件が整うことになる。これにより、より多くのレーザ光53が緩衝部50の位置に達し、導波路35の伝播効率が向上する。
【0103】
プラズモン発生素子36は、金属等の導電材料、例えばPd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、Cu若しくはAl、又はこれら元素のうちの複数の合金から形成されていることが好ましい。また、プラズモン発生素子36の上面361におけるトラック幅方向(Y軸方向)の幅WNFは、レーザ光53の波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(Z軸方向の)厚さTNF1も、レーザ光53の波長よりも十分に小さく、例えば約10〜100nmとすることができ、(X軸方向の)長さ(高さ)HNFは、例えば約0.8〜6.0μmとすることができる。
【0104】
緩衝部50は、導波路35の屈折率nWGよりも低い屈折率nBFを有する誘電材料で形成されている。例えば、レーザ光の波長λLが633nmであって、導波路35が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、緩衝部50は、SiO2(n=1.46)から形成されていてもよい。
【0105】
また、導波路35が、Ta2O5(n=2.16)から形成されている場合、緩衝部50は、SiO2(n=1.46)又はAl2O3(n=1.63)から形成されていてもよい。これらの場合、この緩衝部50を、SiO2(n=1.46)又はAl2O3(n=1.63)からなるクラッドとしての保護層38(図6)の一部とすることも可能である。
【0106】
また、緩衝部50の(X軸方向の)長さ、すなわち導波路35とプラズモン発生素子36との結合部分の長さLBFは、0.5〜5μmであることが好ましい。緩衝部50の(Z軸方向の)厚さTBFは、10〜200nmであることが好ましい。これら緩衝部50の長さLBFおよび厚さTBFは、表面プラズモンの適切な励起、伝播を得るために重要なパラメータとなる。
【0107】
また、緩衝部50のヘッド部端面2210側の端は、X軸方向においてヘッド部端面2210から距離DBFだけ離隔している。表面プラズモンの伝播距離は、この距離DBFによって調整される。
【0108】
同じく図8に示されるように、プラズモン発生素子36と第1の主磁極部3400aとの間であってヘッド部端面2210側の位置に、熱伝導層51が設けられることが好ましい。この熱伝導層51は、保護層38(図6参照)に比べて熱伝導率の高い、例えばAlN、SiC又はDLC等の絶縁材料で形成されている。このような熱伝導層51を設けることによって、プラズモン発生素子36が近接場光を発生させる際に生じる熱の一部を、この熱伝導層51を介して主磁極3400および主磁極本体部3401に逃がすことができる。
【0109】
すなわち、主磁極3400および主磁極本体部3401をヒートシンクとして用いることができる。その結果、プラズモン発生素子36の過度の温度上昇を抑制することができ、近接場光発生端面36aの不要な突出や、プラズモン発生素子36における光利用効率(Optical-Power-Efficiency)の大幅な低下を回避することができる。
【0110】
この熱伝導層51の厚さTTCは、ヘッド部端面2210上における近接場光発生端面36aと主磁極3400の端面3400eとの間隔DN-P(図9参照)に相当し、100nm以下の十分に小さい値に設定される。
【0111】
さらに、熱伝導層51の屈折率nIN2は、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360を覆う絶縁層52の屈折率nIN1と同じに、又はそれよりも低くなるように設定されている。すなわち、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360は、自身とは反対側の端面361を覆う材料の屈折率nIN2と同じか、又はそれよりも高い屈折率nIN1を有する材料で覆われていることになる。
【0112】
これにより、伝播エッジ360上を表面プラズモンが安定して伝播することが可能となる。実際には、屈折率nIN1≧屈折率nIN2×1.5であることが好ましいことが分かっている。
【0113】
同じく図8に示されるように、主磁極層340は、上述したように、主磁極3400と主磁極本体部3401とを含む。このうち、主磁極3400は、ヘッド部端面2210に達した端面3400eを有する第1の主磁極部3400aと、ヘッド部端面2210側の端部が第1の主磁極部3400aのヘッド部端面2210とは反対側の部分上に重なっている第2の主磁極部3400bとを含む。
【0114】
また、主磁極本体部3401のヘッド部端面2210側の端部は、第2の主磁極部3400bのヘッド部端面2210とは反対側の部分上に重なっている。このように、主磁極層340のヘッド部端面2210側の部分は、ヘッド部端面2210に向かうにつれて、プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210側の端部に近づくように素子形成面2202(図7参照)に対して傾斜している。これにより、主磁極層340を導波路35から十分に隔離させた上で、主磁極3400の端面3400eと近接場光発生端面36aとを十分に近接させることができる。
【0115】
図9は、プラズモン発生素子36および電磁変換素子34のヘッド部端面2210上での端面の形状を示す平面図である。
【0116】
図9に示されるように、電磁変換素子34においては、主磁極3400(第1の主磁極部3400a)とライトシールド層345(トレーリングシールド3450)とがヘッド部端面2210に達している。このうち、主磁極3400のヘッド部端面2210上における端面3400eの形状は、例えば、長方形、正方形又は台形である。
【0117】
ここで、上述した幅WPは、この主磁極3400の端面3400eにおけるリーディング側の辺の長さであり、磁気ディスクの磁気記録層に形成されるトラックの幅を規定する。幅WPは、例えば0.05〜0.5μm程度である。
【0118】
また、ヘッド部端面2210上において、プラズモン発生素子36の近接場光発生端面36aは、主磁極3400の端面3400eの近傍にあって、端面3400eのリーディング側(−Z側)に位置している。ここで、近接場光発生端面36aと端面3400eとの間隔をDN-Pとすると、間隔DN-Pは、100nm以下の十分に小さい値であって、特に、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
【0119】
本実施形態の熱アシスト磁気記録においては、この近接場光発生端面36aが主要な加熱作用部分となり、端面3400eが書き込み部分となるので、磁気ディスクの磁気記録層において十分に加熱した部分に、十分に大きな勾配を有する書き込み磁界を印加することができる。これにより、熱アシストによる安定した書き込み動作が確実に実施可能となる。
【0120】
さらに、近接場光発生端面36aは、本実施形態において、ヘッド部端面2210上で、底辺361aをトレーリング側(+Z側)に持ち、伝播エッジ360の端360aをリーディング側(−Z側)の頂点とする二等辺三角形となっている。この近接場光発生端面36aの高さ(プラズモン発生素子36のヘッド部端面2210における厚さ)TNF2は、30nm以下とすることが好ましく、20nm以下とすることがより好ましい。これにより、近接場光発生端面36a上における近接場光の発光位置が、トレーリング側の端辺361a近傍となり、より主磁極3400の端面3400eに近づくこととなる。
【0121】
また、二等辺三角形の頂点360aにおける頂角θNFは、60〜130度であることが好ましく、特に、80〜110度であることがより好ましい。この頂角θNFを調整することによって、近接場光発生端面36a内における近接場光の発光位置を、トレーリング側にすることが可能となる。
【0122】
さらに、導波路35と主磁極3400との間隔をDW-Pとすると、上述したように間隔DN-Pを非常に小さい値に設定した上で、間隔DW-Pを十分に大きくすることができる。すなわち、図9に示される構成によれば、導波路35を、主磁極3400および主磁極本体部3401から十分に離隔させることができる。その結果、レーザ光の一部が金属からなる主磁極3400又は主磁極本体部3401に吸収されてしまって近接場光に変換される光量が低減してしまう事態を回避することができる。
【0123】
図10は、表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録を説明するための概略図である。
【0124】
図10に示されるように、電磁変換素子34による磁気ディスク10の磁気記録層への書き込みの際、最初に、光源ユニット23のレーザダイオード40から放射されたレーザ光53が、導波路35を伝播する。次いで、緩衝部50の近傍まで進行したレーザ光53は、屈折率nWGを有する導波路35と、屈折率nBFを有する緩衝部50と、金属等の導電材料からなるプラズモン発生素子36との光学的構成と結びついて、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360に表面プラズモンモードを誘起する。すなわち、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合する。
【0125】
実際には、コアである導波路35と緩衝部50との光学的な界面条件から、緩衝部50内にエバネッセント光が励起される。次いで、このエバネッセント光と、プラズモン発生素子36の金属表面(伝播エッジ360)に励起される電荷のゆらぎとが結合する形で表面プラズモンモードが誘起され、表面プラズモンが励起される。なお、正確には、この系においては素励起である表面プラズモンが電磁波と結合することになるので、励起されるのは表面プラズモン・ポラリトンである。しかしながら以後、省略して、表面プラズモン・ポラリトンを表面プラズモンとも呼ぶ。
【0126】
伝播エッジ360は、プラズモン発生素子36の傾斜した下面362において導波路35に最も近い位置にあり、また角部であって電場が集中しやすいので、表面プラズモンが励起されやすい。この際、この表面プラズモンモードの誘起は、緩衝部50の屈折率nBFを導波路35の屈折率nWGよりも小さく設定し(nBF<nWG)、さらに、上述したように緩衝部50の(X軸方向の)高さ、すなわち導波路35とプラズモン発生素子36との結合部分の長さLBFと、(Z軸方向の)緩衝部50の厚さTBFとを適切に選択することによって可能となる。この表面プラズモンモードの誘起は、例えば、Michael Hochberg, Tom Baehr-Jones, Chris Walker & Axel Scherer, “Integrated Plasmon and dielectric 導波路s”, OPTICS EXPRESS Vol.12, No.22, pp5481-5486(2004)、およびUS patent Publication No.2005/0249451 A1に記載されている。
【0127】
この誘起された表面プラズモンモードにおいては、表面プラズモン60が、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360上に励起され、この伝播エッジ360上を矢印61の方向に沿って伝播する。この表面プラズモン60の伝播は、プラズモン発生素子36の伝播エッジ360が自身とは反対側の端面361を覆う材料の屈折率nIN2と同じか、又はそれよりも高い屈折率nIN1を有する材料で覆われている。という条件の下、可能となる。実際には、屈折率nIN1≧屈折率nIN2×1.5であることが好ましいことが分かっている。図11においては、熱伝導層51の屈折率nIN2が、近接場光発生層36の伝播面360を覆う絶縁層52の屈折率nIN1よりも低くなるように設定される。
【0128】
このように表面プラズモン60が伝播することにより、ヘッド部端面2210に達しており伝播エッジ360の行き着く先である頂点360aを有する近接場光発生端面36aに、表面プラズモン60すなわち電場が集中することになる。
【0129】
その結果、この近接場光発生端面36aから近接場光62が発生する。この近接場光62が磁気ディスク10の磁気記録層に向けて照射され、磁気ディスク10の表面に達し、磁気ディスク10の磁気記録層部分を加熱する。これにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その直後、この部分に、主磁極3400から発生する書き込み磁界63を印加して書き込みを行う。このような手順を踏んで、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0130】
ここで、上述したように、ヘッド部端面2210上での近接場光発生端面36aの形状およびサイズを調整することによって、近接場光発生端面36a上での近接場光62の発光位置を、第1の主磁極部3400aにより近いトレーリング側(端辺361a側)に位置させることができる。これにより、磁気ディスク10の磁気記録層における十分に加熱した部分に、十分に大きな勾配を有する書き込み磁界を印加することができる。その結果、熱アシストによる安定した書き込み動作が確実に実施可能となる。
【0131】
また、上記のプラズモン発生素子36において、表面プラズモンが伝播する伝播エッジ360は、非常に狭いトラック幅方向の幅を有する伝播領域となっている。また、本実施形態においては、プラズモン発生素子36のYZ面による断面が三角形状を有しており、特にヘッド部端面2210の近傍において所定の三角形状を有している。従って、ヘッド製造の際の研磨加工後のヘッド部端面2210において、研磨面として現れる近接場光発生端面36aを、所望の形状(本実施形態では三角形状)とし、そのサイズを非常に小さくし、その上で確実に表面プラズモンが伝播されてくるようにすることが可能となる。
【0132】
また、以上に述べたような表面プラズモンモードを利用した熱アシスト磁気記録においては、プラズモン発生素子36における光利用効率(Optical-Power-Efficiency)が、従来のプラズモン発生素子を用いた場合の報告例に見られるように5〜10%程度又はそれ未満であったのに対して、例えば約20%前後となり、大幅に向上する。
【0133】
これにより、プラズモン発生素子36が過度に温度上昇することがなく、近接場光発生端面36aの磁気ディスク10に向かう方向の突出が抑制される。
【0134】
さらに、従来の、導波路を伝播するレーザ光がヘッド端面の位置に設けられたプラズモン発生素子に直接照射される形態においては、照射されたレーザ光の多くの部分が、プラズモン発生素子内で熱エネルギーに変わってしまう。一方、このプラズモン発生素子のサイズはレーザ光の波長以下に設定されており、その体積は非常に小さい。従って、この熱エネルギーによって、プラズモン発生素子は非常な高温、例えば500℃にまで達していた。これに対して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録においては、表面プラズモンモードを利用しており、表面プラズモン60をヘッド部端面2210に向かって伝播させることによって近接場光62を発生させている。
【0135】
これにより、近接場光発生端面36aにおける近接場光発生時の温度が、例えば約100℃前後となり大幅に低減する。その結果、近接場光発生端面36aの磁気ディスク10に向かう方向の突出が抑制され、良好な熱アシスト磁気記録が可能となる。
【0136】
なお、図8〜図10に示されるようなプラズモン発生素子36の形態を、図12〜図13に示されるようなプラズモン発生素子36´に変更して使用するようにしてもよい。
【0137】
図12〜図13に示されるプラズモン発生素子36´は、ABS側の端面36aが断面V字形状であり、かつ、同じ形態がX方向に延設された形態を有している。この場合、主磁極3400の下部は、断面V字形状の凸部3400´がーZ方向に延設された形態を有しており、この断面V字形状の凸部3400´に断面V字形状のプラズモン発生素子36´が密着される構成となっている。プラズモン発生素子36´のV字の先端が伝播エッジとなり、ここで表面プラズモンモードを誘起する。すなわち、緩衝部の近傍まで進行した導波路35中のレーザ光は、緩衝部と、プラズモン発生素子36´との光学的構成と結びついて、プラズモン発生素子36´の伝播エッジに表面プラズモンモードを誘起する。この誘起された表面プラズモンモードにおいては、表面プラズモンが、プラズモン発生素子36´の伝播エッジ上に励起され、この伝播エッジ上をABS方向(−X方向)に沿って伝播して、伝播エッジのABS端面から磁気記録媒体に向けて、近接場光が発せられる。
【0138】
このような形態とすることによって、磁極の近傍に、発光位置が制御された近接場光発光素子を配置することが可能となり、書き込み用の磁極と近接場光発光素子との距離を近づけることができる。
【0139】
なお、図12〜図13に示されるプラズモン発生素子36´の形態に限定されることなく、変形例として、断面V字形状のV字の上端部の両側にそれぞれウイング(Y方向、およびーY方向)を付加したり、あるいは、ABS端面近傍が断面V字形状であって、奥域(X方向)に進むにつれてあたかも船状に広がる形態部分を備えるプラズモン発生素子としてもよい。この変形例の場合もやはり、磁極は、プラズモン発生素子の凹部と密着されるような凸形状を有するように構成される。
【0140】
図11は、図5に示した磁気ディスク装置の記録再生および発光制御回路13の回路構成を示すブロック図である。
【0141】
図11において、90は制御LSI、91は、制御LSI90から記録データを受け取るライトゲート、92はライト回路、93は、レーザダイオード40に供給する動作電流値の制御用テーブル等を格納するROM、95は、MR効果素子33へセンス電流を供給する定電流回路、96は、MR効果素子33の出力電圧を増幅する増幅器、97は、制御LSI90に対して再生データを出力する復調回路、98は温度検出器、99は、レーザダイオード40の制御回路をそれぞれ示している。
【0142】
制御LSI90から出力される記録データは、ライトゲート91に供給される。ライトゲート91は、制御LSI90から出力される記録制御信号が書き込み動作を指示するときのみ、記録データをライト回路92へ供給する。ライト回路92は、この記録データに従って書き込みコイル層343に書き込み電流を流し、主磁極3400から発生する書き込み磁界により磁気ディスク上に書き込みを行う。
【0143】
制御LSI90から出力される再生制御信号が読み出し動作を指示するときのみ、定電流回路95からMR積層体332に定電流が流れる。このMR効果素子33により再生された信号は増幅器96で増幅された後、復調回路97で復調され、得られた再生データが制御LSI90に出力される。
【0144】
レーザ制御回路99は、制御LSI90から出力されるレーザON/OFF信号および動作電流制御信号を受け取る。このレーザON/OFF信号がオン動作指示である場合、発振しきい値以上の動作電流がレーザダイオード40に印加される。これによりレーザダイオード40が発光し、レーザ光が導波路35を伝播して、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合する。これにより、プラズモン発生素子36の端から近接場光が発生し、磁気ディスクの磁気記録層に照射され、磁気記録層を加熱する。この際の動作電流値は、動作電流制御信号に応じた値に制御される。制御LSI90は、記録再生動作とのタイミングに応じてレーザON/OFF信号を発生させ、温度検出器98によって測定された磁気ディスクの磁気記録層の温度等を考慮し、ROM93内の制御テーブルに基づいて、動作電流値制御信号の値を決定する。ここで、制御テーブルは、発振しきい値および光出力−動作電流特性の温度依存性のみならず、動作電流値と熱アシスト作用を受けた磁気記録層の温度上昇分との関係、および磁気記録層の異方性磁界(保磁力)の温度依存性についてのデータも含んでいてもよい。このように、記録/再生動作制御信号系とは独立して、レーザON/OFF信号および動作電流値制御信号系を設けることによって、単純に記録動作に連動したレーザダイオード40への通電のみならず、より多様な通電モードを実現することができる。
【0145】
なお、記録再生および発光制御回路13の回路構成は、図11に示したものに限定されるものではないことは明らかである。記録制御信号および再生制御信号以外の信号で書き込み動作および読み出し動作を特定してもよい。
【0146】
上記の内容を考慮しつつ、本発明の光導波路を熱アシスト磁気記録ヘッドに応用する場合、コア1150の形態は、図14や図15に示される形態とすることが望ましい。
【0147】
図14に示されるコア1150は、上述してきた伝搬エッジを備えるプラズモン発生素子36、36´との組み合わせ使用において、特に、好適である。図14に示されるコア1150は、狭幅の先端コア部1153にTE−TM変換素子777を設けており、これにより、コア基部1151および絞り部1152においてTEモードの偏光(振動方向Y方向)で伝搬されているレーザ光を、表面プラズモンモードでプラズモン発生素子36に結合できるように、TMモードの偏光(振動方向Z方向)に変換している。
【0148】
また、図15に示されるコア1150は、狭幅の先端コア部1153をさらに細幅に絞り込んだ先端部1154を設け、その先端にプラズモン発生素子チップ3600を直接付着させた構造を備えている。この形態は近接場光を発生させるもっともシンプルかつオーソドックスな形態である。この場合、プラズモン結合させる必要性がないため、TEモードの偏光(振動方向Y方向)のままで、プラズモン発生素子チップに至るまで光伝搬される。
【実施例】
【0149】
上述してきた本発明の光導波路について、具体的実施例を示し本発明をさらに詳細に説明する。
【0150】
〔実験例I〕
図1〜図3に示されるような形態の光導波路において、グレーティング1200に照射された光がどの程度導波路内で光結合して伝搬するのかの指標となる光強度をシミュレーションによって解析した実験例を示す。
【0151】
パラメータは、図3に示されるコア基部1151の厚さH2に対するグレーティング1200の凹溝1201の深さH1の比(H1/H2)である。
【0152】
<シュミレーション条件>
・コアの材料:TaOx(屈折率:2.15)
・コア寸法:
広幅のコア基部1151(幅W1=4μm;長さL1=50μm)
絞り部1152(長さL2=100μm)
狭幅の先端コア部1153(幅W3=0.5μm;長さL3=30μm)
厚さ(H2)=0.3μm
・クラッドの材料:SiO2 (屈折率:1.45)
・使用レーザ光:波長800nm(クラッド内での換算波長)、TM偏波
・グレーティング1200の仕様:
Single grating(格子長Wo(Y方向)=10μm)
格子ピッチP=0.54μm
格子の凹溝1201の深さH1(パラメータ)
凹溝1201にクラッド材を充填
凹溝1201の個数;20本
・反射膜1159:コア基部の導波方向と反対側の端面に厚さ100nmのAu
【0153】
シミュレーションによって解析した結果を下記表1に示した。なお、光強度の測定位置は、L2とL1の間の場所とした。
【0154】
【表1】
【0155】
上記表1において、凸25%とは、コア平面を基準として、コア厚さに対して25%突出した凸状グレーティングを意味する。凸50%とは、コア平面を基準として、コア厚さに対して50%突出した凸状グレーティングを意味する。
【0156】
上記の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明の光導波路は、光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されているので、光導波路に対して垂直方向のレーザ光入射で、確実に、レーザ光を光導波路に光結合させ、光導波路内を目的とする方向に向けて伝搬させることができる。これにより、レーザ光発生装置との配置関係をシンプルにして、レーザ光発生装置の設置を簡単に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の産業上の利用可能性として、例えば、極小サイズの磁気記録ヘッドであって光導波路を備える熱アシスト磁気記録ヘッド、光伝送部品、Si細線導波路などの産業に適用できる。
【符号の説明】
【0158】
1100…光導波路
1150…コア
1151…コア基部
1152…絞り部
1153…先端コア部
1200…グレーティング(格子)
1201…凹溝
1300…クラッド
1400…光源ユニット
1401…反射膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアを構成する材料の屈折率は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも大きくなっており、
前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、
前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、
当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、
前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、
前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されてなることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記コア基部の導波方向と反対側の端面(後端部)には、反射膜が設けられている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記幅細の先端コア部は、前記絞り部の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設されている請求項1または請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記グレーティング(格子)は、シングル格子(single grating)である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記グレーティング(格子)は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記広幅のコア基部の幅W1は、0.4〜10.0μmであり、前記狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μmである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
媒体対向面側の端面から書き込み磁界を発生させる磁極と、
プラズモンを励起するための光を伝播させる請求項1に記載の光導波路と、
前記光とプラズモンモードで結合する部分であるプラズモン発生素子と、を備えてなる熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項1】
光が伝播される導波路であるコアと、その周囲を囲むクラッドと、を有する光導波路であって、前記コアを構成する材料の屈折率は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも大きくなっており、
前記コアは、平板形状をなしており、光が入射される広幅のコア基部と、このコア基部に連接されて導波方向に沿って幅が徐々に絞られる絞り部と、この絞り部に連接され導波方向に沿って延設された狭幅の先端コア部とを有し、
前記広幅のコア基部の一方の平面の上には、グレーティング(格子)を備えており、
当該グレーティングは、平面に多数の断面矩形状の凹溝を幅方向に沿って刻むことによって構成されており、
前記グレーティングは、当該グレーティング形成面に垂直入射されるレーザ光との光結合ができるように構成されており、前記グレーティングの周期(格子ピッチ:凹溝のピッチ)は、垂直入射されるレーザ光の波長(当該波長はクラッド内での波長として規定される)よりも小さくなるように構成されており、
前記グレーティングの溝深さH1は、コア基部の厚さH2に対して、H1=(0.33〜0.67)H2の関係を満たすよう形成されてなることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記コア基部の導波方向と反対側の端面(後端部)には、反射膜が設けられている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記幅細の先端コア部は、前記絞り部の絞られた最終幅と実質的に同じ幅で導波方向に沿って延設されている請求項1または請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記グレーティング(格子)は、シングル格子(single grating)である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記グレーティング(格子)は、コア平面の上に凹部溝を形成し、当該凹部内にクラッド材料を埋設させることにより構成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記広幅のコア基部の幅W1は、0.4〜10.0μmであり、前記狭幅の先端コア部の幅W3は、0.3〜1.0μmである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
媒体対向面側の端面から書き込み磁界を発生させる磁極と、
プラズモンを励起するための光を伝播させる請求項1に記載の光導波路と、
前記光とプラズモンモードで結合する部分であるプラズモン発生素子と、を備えてなる熱アシスト磁気記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−79398(P2012−79398A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117604(P2011−117604)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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