説明

光導波路および電子機器

【課題】受発光素子等に対する実装容易性に優れた信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路1は、下側からクラッド層11、コア層13、クラッド層121、コア層13、およびクラッド層122の5層をこの順で積層してなる積層体を有しており、細長い帯状をなしている。各コア層13には、並列する2つのコア部14が形成されている。各コア部14は、その幅が光入射端部1Aから光出射端部1Bに向かうにつれて漸減するよう構成された漸減部6を有している。また、光導波路1の横断面の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布は、2つの極小値と、1つの第1の極大値と、第1の極大値より小さい2つの第2の極大値と、を有し、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、および第2の極大値がこの順で並んだ領域を含んでおり、かつ全体で屈折率が連続的に変化している分布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ここで、光導波路としては、従来、一定の屈折率を有するコア部と、コア部より低い一定の屈折率を有するクラッド部とを有するステップインデックス型のものが一般的であったが、近年、屈折率が連続的に変化したグレーデッドインデックス型のものが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ポリマー基体中に屈折率調整剤を拡散させることにより、横断面において屈折率が同心円状に分布した光導波路が提案されている。このようなグレーデッドインデックス型の光導波路によれば、ステップインデックス型のものに比べ、伝送損失の低減が図られるとされている。
【0009】
ところが、グレーデッドインデックス型の光導波路は、コア部に相当する高屈折率部の横断面積が小さいため、光導波路の入射面に対して発光素子の位置合わせをする際、高いアライメント精度が要求される。このため、実装容易性が低いことが問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−276735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、受発光素子等に対する実装容易性に優れた信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) コア部と、該コア部の側面に隣接するクラッド部と、を有し、帯状をなす光導波路であって、
当該光導波路の光入射側から光出射側に向かうにつれて前記コア部の幅が漸減している漸減部を備えており、
横断面上において当該光導波路の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布は、2つの極小値と、1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい2つの第2の極大値と、を有し、前記第2の極大値、前記極小値、前記第1の極大値、前記極小値、および前記第2の極大値がこの順で並んだ領域を含んでおり、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している分布であることを特徴とする光導波路。
【0013】
(2) 前記屈折率分布のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部に対応し、前記各極小値から前記各第2の極大値側の領域が前記クラッド部に対応しており、
前記各極小値は、それぞれ、前記クラッド部における平均屈折率未満である上記(1)に記載の光導波路。
【0014】
(3) 前記屈折率分布のうち、前記クラッド部に対応する領域では、その中心部に前記第2の極大値が位置するよう屈折率が変化している上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0015】
(4) 前記各極小値と前記クラッド部における平均屈折率との差は、前記各極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0016】
(5) 前記漸減部は、当該光導波路の長手方向の端部に設けられている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路。
【0017】
(6) 前記コア部の光路を変換する光路変換部を有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0018】
(7) 前記コア部が厚さ方向に2層以上積層されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、受発光素子等に対する実装容易性に優れた(光結合効率の高い光結合を可能にする)信頼性の高い光通信を行うことが可能な信頼性の高い光導波路が得られる。
また、このような光導波路を用いることにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示す光導波路中のコア層の平面図である。
【図3】図2に示す平面図の一部を示す図である。
【図4】図3に示す漸減部の他の構成例である。
【図5】図3に示す漸減部の他の構成例である。
【図6】図3に示す漸減部の他の構成例である。
【図7】図7(a)は、図1のX−X線断面図であり、図7(b)は、X−X線断面図の幅方向に引かれた中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図である。
【図8】光導波路のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【図9】図9(a)は、図1のX−X線断面図であり、図9(b)は、X−X線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図10】光導波路のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【図11】本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。
【図12】図11に示すY−Y線断面図である。
【図13】図12に示す断面図の一部を示す図である。
【図14】図13に示す漸減部の他の構成例である。
【図15】図13に示す漸減部の他の構成例である。
【図16】本発明の光導波路の第3実施形態を示す断面図である。
【図17】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図18】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図19】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図20】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図21】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図22】照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図2は、図1に示す光導波路中のコア層の平面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0024】
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。ここでは、一例として図1に示す光導波路1の光入射端部1Aから光を入射し、光出射端部1Bから光を出射する場合について説明する。
【0025】
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、コア層13、クラッド層121、コア層13、およびクラッド層122の5層をこの順で積層してなるものであり、細長い帯状をなしている。
【0026】
このうち、2層のコア層13中には、それぞれ光入射端部1Aから光出射端部1Bにかけて並列して延在する2つのコア部14が形成されている。各コア層13のうち、コア部14以外の部分は側面クラッド部15である。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
【0027】
また、本発明の光導波路は、光入射側から光出射側に向かうにつれてコア部14の幅が漸減している漸減部を、少なくとも一部に有している。このような漸減部があると、コア部14の光入射面は相対的に大きく、光出射面は相対的に小さくなる。このため、発光素子から発せられた光は、光導波路1の大きな入射面に対して効率よく入射することができ、一方、光導波路1の小さな出射面から出射した光は、細く絞られた状態で出射するため、受光素子の受光部の面積が小さくても効率よく入射させることができる。したがって、この漸減部が形成されていることにより、光導波路1は、受発光素子等との光結合効率において顕著な特性を示すものとなる。また、光入射面に対する発光素子の位置ズレの許容量や、光出射面に対する受光素子の位置ズレの許容量を、それぞれ緩和することができるので、光導波路1は、実装容易性の高いものとなる。本実施形態では、一例として、コア部14の幅が全長にわたって横断面積が漸減しているよう構成された漸減部を有する形態について説明する。
【0028】
ここで、図1に示す2層のコア層13は、下方に位置するコア層131と、上方に位置するコア層132である。このうち、コア層131には、2つのコア部141、142と、3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、コア部141、142は、それぞれ側面クラッド部151、152、153およびクラッド層11、121で囲まれた状態となる。また、コア層132には、2つのコア部143、144と、3つの側面クラッド部154、155、156とが交互に設けられている。これにより、コア部143、144は、それぞれ側面クラッド部154、155、156およびクラッド層121、122で囲まれた状態となる。
【0029】
このような光導波路1の横断面に対して幅方向に線を引いたとき、その線上における屈折率分布Wは、屈折率が高い領域とその両側にそれぞれ隣接する屈折率が低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。本明細書では、このような特徴を有する屈折率分布をグレーデッドインデックス型の分布という。この屈折率分布Wにおいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分が各側面クラッド部15になっている。
【0030】
一方、光導波路1の横断面に対して厚さ方向に線を引いたとき、その線上における屈折率分布Tは、特に限定されないが、本実施形態では、屈折率が高い領域とその両側にそれぞれ隣接する屈折率が低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。この屈折率分布Tにおいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、121、122になっている。
【0031】
以下、光導波路1について詳述する。
(漸減部)
図2に示す光導波路1では、光入射端部1Aから光出射端部1Bに向かうにつれて各コア部14のそれぞれの厚さが一定で、幅が徐々に減少している。本発明では、このようにコア部の幅が漸減している構造を漸減部という。
【0032】
ここで、図3は、図2に示す平面図の一部を示す図である。なお、以下の説明は、各コア部14において共通である。
【0033】
図3に示すように、漸減部6は、光入射端部1Aにおけるコア部14の幅をp1とし、光出射端部1Bにおけるコア部14の幅をp2としたとき、p1>p2の関係を満足するよう構成されている。
【0034】
また、p2は、好ましくはp1の0.1〜0.9倍程度、より好ましくはp1の0.2〜0.8倍程度とされる。p2を前記範囲内にすれば、発光素子からの信号光を効率よく受光するための光結合効率と、光導波路1から出射した信号光を受光素子に効率よく受光させるための光結合効率と、を高度に両立することができる。すなわち、p2が前記下限値を下回った場合、光導波路1の出射面が小さくなり過ぎてしまい、かえって光結合効率を損なうおそれがあり、p2が前記上限値を上回った場合、光導波路1の出射面が広過ぎてしまい、受光素子の受光部において信号光を受光し切れないおそれがある。
【0035】
なお、p2は、受光素子の受光部の大きさに合わせて適宜設定されるが、一例として5〜1000μm程度であるのが好ましく、10〜500μm程度であるのがより好ましい。
【0036】
また、光入射端部1Aにおいてコア部14と側面クラッド部15との境界線と端面とがなす角度α1、および、光出射端部1Bにおいてコア部14と側面クラッド部15との境界線と端面とがなす角度α2は、それぞれ好ましくは45度以上90度未満、より好ましくは50度以上89度以下とされる。これにより、コア部14から側面クラッド部15へと光が漏れ出る確率をより低くすることができる。
【0037】
また、コア部14の幅の中心を通る中心線を引いたとき、漸減部6の形状(コア部14と側面クラッド部15との境界線の形状)は、中心線に対して対称の関係にあるのが好ましい。これにより、コア部14の伝送特性の均一性の低下を防止することができる。
【0038】
ここで、漸減部6の他の構成例について説明する。
図4〜6は、それぞれ、図3に示す漸減部6の他の構成例である。
【0039】
図4に示す漸減部6は、コア部14の長手方向の一部に設けられている以外、図3に示す漸減部6と同様である。
【0040】
具体的には、図4(a)に示す光導波路1には、1つのコア部14に対して2つの漸減部6が設けられており、そのうちの1つは光入射端部1A近傍に設けられ、残る1つは光出射端部1B近傍に設けられている。また、2つの漸減部6の間ではコア部14の幅が一定になっている。
【0041】
このような漸減部6を有する光導波路1は、図3に示す光導波路1と同程度の光結合効率を有するとともに、コア部14の幅が一定である部位を有しているため、この部位における優れた伝送効率を享受できる。これは、すなわち、コア部14の幅が一定である部位は、幅が可変である部位に比べて製造し易く、製造条件も均一にし易いため、屈折率差、透明度等の特性にバラツキが少なく、光伝送の阻害要因が少ないからである。このため、図4(a)に示す光導波路1は、光結合効率のみならず、伝送効率にも優れたものとなる。
【0042】
図4(b)に示す光導波路1は、漸減部6の位置が異なる以外、図4(a)に示す光導波路1と同様である。すなわち、図4(a)では、漸減部6が光入射端部1A近傍と光出射端部1B近傍にそれぞれ設けられているのに対し、図4(b)では、各漸減部6がそれぞれ端部からやや内側に移動している点で相違している。
【0043】
このような光導波路1でも、図4(a)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0044】
図5(a)に示す光導波路1は、漸減部6におけるコア部14と側面クラッド部15との境界線が曲線になっている以外、図4(a)に示す光導波路1と同様である。
【0045】
この曲線は、それぞれ、光入射端部1A側に向かって開く放物線であり、その放物線の焦点はコア部14の幅方向のほぼ中央に位置している。このため、コア部14と側面クラッド部15との境界線で反射された信号光は、この焦点近傍に集光されることとなり、その結果、側面クラッド部15側への光の漏出が抑制される。
【0046】
このような光導波路1でも、図4(a)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0047】
また、図5(b)に示す光導波路1は、前記境界線を上記のように曲線にした以外、図4(b)に示す光導波路1と同様であり、これらと同様の作用・効果が得られる。
なお、上記曲線は、放物線に限らず、円弧、双曲線、多次関数曲線等であってもよい。
【0048】
図6に示す漸減部6は、2つのコア部14において、幅が減少する方向が互いに異なっている以外、図2に示す漸減部6と同様である。
【0049】
すなわち、図6に示すコア部141は、図6の左から右に向かうにつれて幅が徐々に減少するよう構成されているのに対し、コア部142は、反対に、図6の右から左に向かうにつれて幅が徐々に減少するよう構成されている。このように漸減部6が形成されることにより、コア部141とコア部142との離間距離が著しく変化するのを防止することができる。すなわち、幅が減少する方向が同じであると、前記離間距離が小さい箇所と大きい箇所とが生じるため、それにより小さい箇所ではクロストークが発生するおそれがあるが、幅が減少する方向が逆であれば、前記離間距離の変化を小さくすることができるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0050】
なお、この場合、光を入射する向きをコア部141とコア部142とで逆方向にすれば、それぞれ図1に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0051】
(屈折率分布W)
光導波路1では、幅方向の屈折率分布Wが、屈折率が連続的に変化する分布(グレーデッドインデックス型の分布)になっている。
【0052】
図7(a)は、図1のX−X線断面図であり、図7(b)は、X−X線断面図の幅方向に引かれた中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図である。
【0053】
図7(b)に示す屈折率分布Wは、屈折率が相対的に高い領域とその両側にそれぞれ隣接する低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。図7(a)に示すX−X線断面図のうち、図7(b)に示す屈折率分布Wの屈折率が高い領域に対応する部分がコア部14になっており、屈折率が低い領域に対応する部分が側面クラッド部15になっている。グレーデッドインデックス型の分布は、コア部14に屈折率の極大値が位置し、そこから両側にかけて裾を引くように屈折率が連続的に低下する分布を含んでいればよいが、その裾の先に極小値や別の極大値(前記極大値よりも小さな極大値)を含むような分布もグレーデッドインデックス型の分布の一種である。このような分布が形成されたコア層13に入射された光は、この極大値近傍に集中し易くなる。このため、コア部14を伝搬する信号光はより中心部に閉じ込められることとなり、側面クラッド部15側への漏出が抑制される。その結果、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
【0054】
図7(b)に示す屈折率分布Wは、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む分布になっている。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の高い極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の低い極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0055】
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の高い極大値Wm2、Wm4が存在している。
【0056】
光導波路1では、図7に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間に、相対的に屈折率の高い極大値Wm2が位置していることから、この領域に対応する部分がコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間にも極大値Wm4が位置していることから、この領域に対応する部分もコア部14となる。なお、図7では、各コア部14のうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間に位置しているのをコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間に位置しているのをコア部142とする。
【0057】
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間の領域、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14の側面に隣接する領域であることから、この領域に対応する部分がそれぞれ側面クラッド部15となる。なお、図7では、各側面クラッド部15のうち、極小値Ws1の左側に位置しているのを側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間に位置しているのを側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側に位置しているのを側面クラッド部153とする。
【0058】
このように屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有している。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられる。本実施形態のように光導波路1の幅方向に並ぶコア部14の数が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値とが交互に並ぶ領域を有しており、その上で第1の極大値の数が2つであればよい。つまり、コア部14の数に対して第1の極大値の数が同数に設定され、さらにそれに応じて第2の極大値や極小値の数が決まることとなる。例えばコア部14がn個である場合には、屈折率分布Wは、第1の極大値をn個、極小値を2n個、第2の極大値をn+1個有していればよい。なお、このような極大値と極小値に対する一定の規則は、屈折率分布Wの全体に適用されている必要はなく、屈折率分布Wの一部のみに適用されていてもよい。
【0059】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値が第1の極大値や第2の極大値より低く、第2の極大値が第1の極大値より低いという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0060】
また、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の光路上においてほぼ同じ分布になるよう設定されている。
【0061】
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部141、142と、これらのコア部14の側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
【0062】
2つのコア部141、142の平均屈折率は、3つの側面クラッド部151、152、153の平均屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。
【0063】
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間には、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各コア部14と各側面クラッド部15との境界付近では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが確実に抑制されることとなる。その結果、光導波路1の伝送損失を特に小さくすることができる。
【0064】
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、屈折率が不連続的に変化している場合に比べて、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0065】
さらに、上述したような屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い部分を信号光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、信号光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
【0066】
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、かつ微分可能な曲線であるということである。
【0067】
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理による制約から、コア部14の平均屈折率と側面クラッド部15の平均屈折率との間で十分な屈折率差を形成することが難しいが、本発明によれば、平均屈折率の差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
【0068】
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図7に示すように、極小値Ws1とWs2との間(コア部141)および極小値Ws3とWs4との間(コア部142)に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、信号光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0069】
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1の位置と極小値Ws2の位置との中点から、その両側にコア部141の幅の30%の距離の領域である。
【0070】
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0071】
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
【0072】
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図7に示すように、極小値Ws1の左側(側面クラッド部151)、極小値Ws2と極小値Ws3との間(側面クラッド部152)、極小値Ws4の右側(側面クラッド部153)に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の信号光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
【0073】
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
【0074】
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から、それぞれに隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かって、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保されることとなり、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができるため、前述したコア部141、142からの信号光の漏出をより確実に抑制することができる。
【0075】
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも相対的に小さいので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が若干高くなっているため、側面クラッド部151、152、153はわずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した信号光を閉じ込めることができ、漏出した信号光が他のコア部へと波及するのを防止することを可能にする。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、各コア部14間のクロストークを抑制することができる。
【0076】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0077】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0078】
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図7(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の幅方向の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0079】
また、屈折率分布Wは、図7(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍、極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極小値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。
【0080】
なお、上述したような屈折率分布Wが形成された光導波路1では、複数のコア部141、142のうち、一方のコア部に光を入射したとき、他方のコア部への光の漏出が抑制される。すなわち、光導波路1ではクロストークを確実に抑制することができる。
【0081】
図8は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0082】
光導波路1のコア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端面の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、光導波路1では、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このように光導波路1では、光を入射したコア部141に隣り合うコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致するため、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなる。その結果、光導波路1は、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止することができる。
【0083】
このような出射光の強度分布は、光導波路1における屈折率分布Wの特徴的な分布形状に起因したものであると考えられる。すなわち、屈折率分布Wが、極小値とそれに隣接する高さの異なる2種類の極大値とを有し、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な分布になっているため、従来であればコア部142に漏れ出ていた光を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせ、その結果、コア部142には強度分布の極小値が位置することになったと考えられる。このような理由から、光導波路1においてクロストークが抑えられることとなり、光導波路1は、クロストークの発生が抑制され、光通信の品質を高め得るものとなる。
【0084】
また、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0085】
なお、上記のような出射光の強度分布は、屈折率分布Wが上記のような分布になっていれば必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、あるいは極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0086】
また、図7(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0087】
また、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、例えば、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
【0088】
なお、上記のような屈折率分布Wは、コア層131の横断面のみならず、コア層132の横断面にも同様に形成されている。
【0089】
(屈折率分布T)
本発明では、光導波路の厚さ方向の屈折率分布Tは、特に限定されず、いかなる分布(例えば、ステップインデックス型の分布)であってもよいが、以下の説明では、一例として屈折率分布Wと同様のグレーデッドインデックス型の分布になっている場合について説明する。
【0090】
図9(a)は、図1のX−X線断面図であり、図9(b)は、X−X線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【0091】
図9(b)に示す屈折率分布Tは、上述した屈折率分布Wと同様、屈折率が相対的に高い領域とその両側にそれぞれ隣接する低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。図9(a)に示すX−X線断面図のうち、図9(b)に示す屈折率分布Tの屈折率が高い領域に対応する部分がコア部14になっており、屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、121、122になっている。グレーデッドインデックス型の分布は、コア部14に対応して屈折率の極大値が位置し、そこから両側にかけて裾を引くように屈折率が連続的に低下する分布を含んでいればよいが、その裾の先に極小値や別の極大値(前記極大値よりも小さな極大値)を含むような分布もグレーデッドインデックス型の分布の一種である。このような分布が形成された光導波路1に入射された光は、コア部14に対応する極大値近傍に集中し易くなる。このため、コア部14を伝搬する信号光はより中心部に閉じ込められることとなり、クラッド層11、121、122側への漏出が抑制される。その結果、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
【0092】
図9(b)に示す屈折率分布Tは、4つの極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と、5つの極大値Tm1、Tm2、Tm3、Tm4、Tm5と、を含む分布になっている。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の高い極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の低い極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0093】
このうち、極小値Ts1と極小値Ts2との間および極小値Ts3と極小値Ts4との間には、それぞれ相対的に屈折率の高い極大値Tm2、Tm4が存在している。
【0094】
光導波路1では、図9に示すように、極小値Ts1と極小値Ts2との間に、相対的に屈折率の高い極大値Tm2が位置していることから、この領域に対応する部分がコア部14となり、同様に、極小値Ts3と極小値Ts4との間にも極大値Tm4が位置していることから、この領域に対応する部分もコア部14となる。なお、図8では、各コア部14のうち、極小値Ts1と極小値Ts2との間に位置しているのをコア部141とし、極小値Ts3と極小値Ts4との間に位置しているのをコア部143とする。
【0095】
また、極小値Ts1の下側の領域に対応する部分はクラッド層11となり、極小値Ts2と極小値Ts3との間の領域に対応する部分はクラッド層121となり、極小値Ts4の上側の領域に対応する部分はクラッド層122となる。
【0096】
このように屈折率分布Tは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有している。なお、この領域は、コア部の数(コア層の積層数)に応じて繰り返し設けられる。本実施形態のように光導波路1の厚さ方向に並ぶコア部14の数が2つである場合、屈折率分布Tは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値とが交互に並ぶ領域を有しており、その上で第1の極大値の数が2つであればよい。つまり、コア部14の数に対して第1の極大値の数が同数に設定され、さらにそれに応じて第2の極大値や極小値の数が決まることとなる。例えばコア部14がn個である場合には、屈折率分布Tは、第1の極大値をn個、極小値を2n個、第2の極大値をn+1個有していればよい。なお、このような極大値と極小値に対する一定の規則は、屈折率分布Tの全体に適用されている必要はなく、屈折率分布Tの一部のみに適用されていてもよい。
【0097】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値が第1の極大値や第2の極大値より低く、第2の極大値が第1の極大値より低いという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0098】
また、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の光路上においてほぼ同じ分布になるよう設定されている。
【0099】
以上のような屈折率分布Tに伴い、光導波路1には、長尺状の2つのコア部141、143と、これらのコア部14の側面に隣接する3つのクラッド層11、121、122とが形成されることとなる。
【0100】
2つのコア部141、143の平均屈折率は、3つのクラッド層11、121、122の平均屈折率より高くなっているので、各コア部141、143と各クラッド層11、121、122との界面において光の反射を生じさせることができる。
【0101】
ここで、4つの極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4は、それぞれ、隣接するクラッド層における平均屈折率TA未満である。例えば、図9の場合、Ts2およびTs3に隣接しているのはクラッド層121であるので、クラッド層121の平均屈折率TAよりTs2およびTs3が小さければよい。同様に、Ts1に隣接しているのはクラッド層11であり、Ts4に隣接しているのはクラッド層122であるので、そのクラッド層の平均屈折率よりTs1およびTs4が小さければよい。これにより、各コア部14と各クラッド層11、121、122との間には、クラッド層11、121、122よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各コア部14と各クラッド層11、121、122との境界付近では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが確実に抑制されることとなる。その結果、光導波路1の伝送損失を特に小さくすることができる。
【0102】
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、屈折率が不連続的に変化している場合に比べて、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0103】
さらに、上述したような屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い部分を信号光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、信号光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
【0104】
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、かつ微分可能な曲線であるということである。
【0105】
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tm2、Tm4は、図9に示すように、極小値Ts1とTs2との間(コア部141)および極小値Ts3とTs4との間(コア部143)に位置しているが、コア部141、143の中でもその厚さの中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、143では、信号光がコア部141、143の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的にクラッド層11、121、122に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、143の伝送損失をより低減することができる。
【0106】
なお、コア部141の厚さの中心部とは、極小値Ts1の位置と極小値Ts2の位置との中点から、その両側にコア部141の厚さの30%の距離の領域である。
【0107】
また、極大値Tm2、Tm4の位置は、必ずしも中心部でなくても、コア部141、143の縁部近傍(各クラッド層11、121、122との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、143の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0108】
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の厚さの5%の距離の領域である。
【0109】
一方、屈折率分布Tのうち、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、図9に示すように、極小値Ts1の下側(クラッド層11)、極小値Ts2と極小値Ts3との間(クラッド層121)、極小値Ts4の上側(クラッド層122)に位置しているが、特にクラッド層11、121、122の縁部近傍(コア部141、143との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、143中の極大値Tm2、Tm4と、クラッド層11、121、122中の極大値Tm1、Tm3、Tm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、143中の信号光が、クラッド層11、121、122中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、143の伝送損失を低減することができる。
【0110】
なお、クラッド層11、121、122の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、クラッド層11、121、122の厚さの5%の距離の領域である。
【0111】
また、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、クラッド層11、121、122の厚さの中央部に位置しており、しかも、極大値Tm1、Tm3、Tm5から、それぞれに隣接する極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4に向かって、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、143中の極大値Tm2、Tm4とクラッド層11、121、122中の極大値Tm1、Tm3、Tm5との離間距離は、最大限確保されることとなり、しかも極大値Tm1、Tm3、Tm5近傍に光を確実に閉じ込めることができるため、前述したコア部141、143からの信号光の漏出をより確実に抑制することができる。
【0112】
さらに、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、前述したコア部141、143に位置する極大値Tm2、Tm4よりも相対的に小さいので、コア部141、143のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が若干高くなっているため、クラッド層11、121、122はわずかな光伝送性を有することとなる。その結果、クラッド層11、121、122は、コア部141、143から漏出した信号光を閉じ込めることができ、漏出した信号光が他のコア部へと波及するのを防止することを可能にする。すなわち、極大値Tm1、Tm3、Tm5が存在することで、各コア部14間のクロストークを抑制することができる。
【0113】
なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4は、前述したように、クラッド層11、121、122の平均屈折率TA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とクラッド層11、121、122の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とコア部141、143中の極大値Tm2、Tm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層11、121、122は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とクラッド層11、121、122の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、クラッド層11、121、122における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、クラッド層11、121、122における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、143の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0114】
なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とコア部141、143中の極大値Tm2、Tm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、143中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0115】
また、コア部141、143における屈折率分布Tは、図9(b)に示すように、横軸に屈折率をとり、縦軸に光導波路1の横断面の厚さ方向の位置をとったとき、極大値Tm2近傍および極大値Tm4近傍において、連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは上に凸(図9の場合、右に凸)の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、143における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0116】
また、屈折率分布Tは、図9(b)に示すように、極小値Ts1近傍、極小値Ts2近傍、極小値Ts3近傍、極小値Ts4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは下に凸(図9の場合、左に凸)の略U字状(極小値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。
【0117】
なお、上述したような屈折率分布Tが形成された光導波路1では、複数のコア部141、143のうち、一方のコア部に光を入射したとき、他方のコア部への光の漏出が抑制される。すなわち、光導波路1ではクロストークを確実に抑制することができる。
【0118】
図10は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0119】
光導波路1のコア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端面の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、光導波路1では、コア部141に隣り合うコア部143において極小値をとるような強度分布が得られる。このように光導波路1では、光を入射したコア部141に隣り合うコア部143の位置に出射光の強度分布の極小値が一致するため、コア部143におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなる。その結果、光導波路1は、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止することができる。
【0120】
このような出射光の強度分布は、光導波路1における屈折率分布Tの特徴的な分布形状に起因したものであると考えられる。すなわち、屈折率分布Tが、極小値とそれに隣接する高さの異なる2種類の極大値とを有し、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な分布になっているため、従来であればコア部143に漏れ出ていた光を、コア部143に隣接するクラッド層122等にシフトさせ、その結果、コア部143には強度分布の極小値が位置することになったと考えられる。このような理由から、光導波路1においてクロストークが抑えられることとなり、光導波路1は、クロストークの発生が抑制され、光通信の品質を高め得るものとなる。
【0121】
また、出射光の強度分布がクラッド層122にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0122】
なお、上記のような出射光の強度分布は、屈折率分布Tが上記のような分布になっていれば必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、143のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、あるいは極小値の位置がコア部143から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0123】
また、図9(b)に示す屈折率分布Tにおいて、クラッド層11、121、122における平均屈折率をTAとしたとき、極大値Tm2、Tm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率TA以上である部分の厚さをa’[μm]とし、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4近傍における屈折率が連続して平均屈折率TA未満である部分の厚さをb’[μm]とする。このとき、b’は、0.01a’〜1.2a’程度であるのが好ましく、0.03a’〜1a’程度であるのがより好ましく、0.1a’〜0.8a’程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な厚さが、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、b’が前記下限値を下回っている場合は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な厚さが薄過ぎるため、コア部141、143に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、b’が前記上限値を上回っている場合は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な厚さが厚過ぎて、その分、コア部141、143の厚さやピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0124】
また、クラッド層11、121、122における平均屈折率TAは、極大値Tm1と極小値Ts1との中点で近似することができる。
【0125】
なお、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の横断面のうち、コア部141とコア部143とを通過する線上のみならず、コア部142とコア部144とを通過する線上にも同様に形成されている。
【0126】
(コア層およびクラッド層)
次に、コア層131、132およびクラッド層11、121、122について説明する。
【0127】
コア層131、132の構成材料(主材料)としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよく、未重合のモノマーを含んでいてもよい。
【0128】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0129】
一方、クラッド層11、121、122の構成材料として、例えば、前述したコア層131、132の構成材料と同様の材料が挙げられ、特にノルボルネン系ポリマーが好ましく用いられる。
【0130】
クラッド層11、121、122の平均厚さは、コア層131、132の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、121、122の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
【0131】
また、コア層131、132の構成材料およびクラッド層11、121、122の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、121、122との境界において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、121、122に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0132】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層131、132の構成材料とクラッド層11、121、122の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。両者の構成材料として同じものを用いることにより、界面の密着性を高めることができる。
【0133】
また、クラッド層11、122は必要に応じて設ければよく、いずれか一方または双方を省略してもよい。この場合、コア層131、132の表面は大気(空気)に露出することとなるが、空気の屈折率は十分に低いため、この空気がクラッド層11、122の機能を代替することとなり、信号光の伝搬は可能である。
【0134】
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
【0135】
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0136】
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
【0137】
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0138】
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0139】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0140】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0141】
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
【0142】
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0143】
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
【0144】
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
【0145】
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
【0146】
以上、第1実施形態について、コア層131、132がそれぞれ2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0147】
また、第1実施形態では、コア層が2層である場合について説明したが、コア層の数は1層であっても、3層以上であってもよい。
【0148】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0149】
図11は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図12は、図11に示すY−Y線断面図である。なお、以下の説明では、図11中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図11、12は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0150】
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0151】
第2実施形態は、漸減部6が、各コア部14の幅のみならず、厚さも徐々に減少することにより構成されている以外、第1実施形態と同様である。
【0152】
図11、12に示す漸減部6は、光入射端部1Aから光出射端部1Bに向かうにつれて、幅と厚さのそれぞれが徐々に減少しているよう構成されている。
【0153】
ここで、図13は、図12に示す断面図の一部を示す図である。なお、以下の説明は、各コア部14において共通である。
【0154】
図13に示すように、漸減部6は、光入射端部1Aにおけるコア部14の厚さをq1とし、光出射端部1Bにおけるコア部14の厚さをq2としたとき、q1>q2の関係を満足するよう構成されている。
【0155】
また、q2は、好ましくはq1の0.1〜0.9倍程度、より好ましくはq1の0.2〜0.8倍程度とされる。q2を前記範囲内にすれば、発光素子からの信号光を効率よく受光するための光結合効率と、光導波路1から出射した信号光を受光素子に効率よく受光させるための光結合効率と、を高度に両立することができる。すなわち、q2が前記下限値を下回った場合、光導波路1の出射面が小さくなり過ぎてしまい、かえって光結合効率を損なうおそれがあり、q2が前記上限値を上回った場合、光導波路1の出射面が広過ぎてしまい、受光素子の受光部において信号光を受光し切れないおそれがある。
【0156】
なお、q2は、受光素子の受光部の大きさに合わせて適宜設定されるが、一例として5〜1000μm程度であるのが好ましく、10〜500μm程度であるのがより好ましい。
【0157】
また、図13に示す光入射端部1Aにおいて、コア部14とクラッド層121との境界線と端面とがなす角度β1、および、光出射端部1Bにおいてコア部14とクラッド層121との境界線と端面とがなす角度β2は、それぞれ、好ましくは45度以上90度未満、より好ましくは50度以上89度以下とされる。これにより、コア部14からクラッド層121へと光が漏れ出る確率をより低くすることができる。
【0158】
なお、光入射端部1Aにおいてコア部14とクラッド層11との境界線と端面とがなす角度は、伝送特性の均一性の観点から、前記角度β1と同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。その場合も、角度は前記角度β1の範囲であるのが好ましい。
【0159】
同様に、光出射端部1Bにおいてもコア部14とクラッド層11との境界線と端面とがなす角度は、伝送特性の均一性の観点から、前記角度β2と同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。その場合も、角度は前記角度β2の範囲であるのが好ましい。
【0160】
ここで、第2実施形態に係る漸減部6の他の構成例について説明する。
図14、15は、それぞれ、図13に示す漸減部6の他の構成例である。
【0161】
図14に示す漸減部6は、コア部14の長手方向の一部に設けられている以外、図13に示す漸減部6と同様である。
【0162】
具体的には、図14(a)に示す光導波路1には、1つのコア部14に対して2つの漸減部6が設けられており、そのうちの1つは光入射端部1A近傍に設けられ、残る1つは光出射端部1B近傍に設けられている。また、2つの漸減部6の間ではコア部14の厚さが一定になっている。
【0163】
このような漸減部6を有する光導波路1は、図13に示す光導波路1と同程度の光結合効率を有するとともに、コア部14の厚さが一定である部位を有しているため、この部位における優れた伝送効率を享受できる。これは、すなわち、コア部14の厚さが一定である部位は、厚さが可変である部位に比べて製造し易く、製造条件も均一にし易いため、屈折率差、透明度等の特性にバラツキが少なく、光伝送の阻害要因が少ないからである。このため、図4(a)に示す光導波路1は、光結合効率のみならず、伝送効率にも優れたものとなる。
【0164】
図14(b)に示す光導波路1は、クラッド層11、121の厚さが部分的に異なっている以外、図14(a)に示す光導波路1と同様である。すなわち、図4(b)では、漸減部6におけるコア部14の厚さの変化に応じて、その変化を打ち消すように各クラッド層11、121の厚さが変化している。これにより、図14(b)に示す光導波路1の総厚は、全体で一定になっている。
【0165】
このような光導波路1でも、図14(a)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0166】
また、このような光導波路1は、図14の上下方向に湾曲させたときの曲げ剛性が全体で均一になるため、取り扱い性および実装性に優れたものとなる。
【0167】
また、このような光導波路1では、コア部14(コア層13)の厚さが薄くなっている部分でも、クラッド層11、121がその分を補っているので、機械的強度の低下が防止される。これにより、光導波路1と受発光素子とを組み立てる際に、光導波路1が損傷してしまうのを防止することができる。
【0168】
図14(c)に示す光導波路1は、コア部14(コア層13)の下面のみが変位することで漸減部6が構成されている以外、図14(b)に示す光導波路1と同様である。このような光導波路1では、上方のクラッド層121の厚さは一定であるのに対し、下方のクラッド層11の厚さは部分的に異なることとなる。
【0169】
このような光導波路1でも、図14(b)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0170】
図14(d)に示す光導波路1は、漸減部6の位置が異なる以外、図14(b)に示す光導波路1と同様である。すなわち、図14(b)では、漸減部6が光入射端部1A近傍と光出射端部1B近傍にそれぞれ設けられているのに対し、図14(d)では、各漸減部6がそれぞれ端部からやや内側に移動している点で相違している。
【0171】
このような光導波路1でも、図14(a)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0172】
図15(a)に示す光導波路1は、漸減部6におけるコア部14と各クラッド層11、121との境界線が曲線になっている以外、図14(a)に示す光導波路1と同様である。
【0173】
この曲線は、それぞれ、光入射端部1A側に向かって開く放物線であり、その放物線の焦点はコア部14の厚さ方向のほぼ中央に位置している。このため、コア部14と各クラッド層11、121との境界線で反射された信号光は、この焦点近傍に集光されることとなり、その結果、各クラッド層11、121側への光の漏出が抑制される。
【0174】
このような光導波路1でも、図14(a)に示す光導波路1と同様の作用・効果が得られる。
【0175】
また、図15(b)、図15(c)および図15(d)に示す光導波路1は、それぞれ前記境界線を上記のように曲線にした以外、図14(b)、図14(c)および図14(d)に示す光導波路1と同様であり、これらと同様の作用・効果が得られる。
なお、上記曲線は、放物線に限らず、円弧、双曲線、多次関数曲線等であってもよい。
【0176】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
【0177】
図16は、本発明の光導波路の第3実施形態を示す断面図である。なお、以下の説明では、図16中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0178】
以下、第3実施形態について説明するが、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0179】
第3実施形態は、光入射端部1A近傍に設けられたミラー71および光出射端部1B近傍に設けられたミラー72を有している以外、第2実施形態と同様である。
【0180】
各ミラー71、72は、図16の左右方向に延伸する光導波路1の光路を、光導波路1の外部へと変換するもの(光路変換部)であり、図16では、光路を90°変換するよう構成されている。このようなミラー71、72を介することにより、コア部14の軸線の延長線上以外の位置に配置した受発光素子に対しても、コア部14を光学的に接続することができる。
【0181】
図16に示すミラー71、72は、それぞれコア部14を横断するように光導波路1に対して掘り込み加工を施し、これにより得られた空間(空洞)の内壁面で構成されている。すなわち、内壁面の一部は、コア部14を斜め45°の角度で横切る平面になっており、この平面がミラー71、72となる。
【0182】
なお、ミラー71、72には、必要に応じて反射膜を成膜するようにしてもよい。この反射膜としては、Au、Ag、Al等の金属膜が好ましく用いられる。
【0183】
このようなミラー71、72は、光導波路1に対してレーザー加工法、ダイシングソーによるダイシング加工法等により形成される。
【0184】
ここで、図16に示す光導波路1は漸減部6を有しているため、光入射端部1A近傍ではコア部14の幅が広く、厚さが厚くなっており、一方、光出射端部1B近傍ではコア部14の幅が狭く、厚さが薄くなっている。このため、このようなコア部14に対してミラー71、72を形成した場合、光入射端部1A近傍に設けられたミラー71の有効面積は相対的に大きくなり、光出射端部1B近傍に設けられたミラー72の有効面積は相対的に小さくなる。その結果、ミラー71、72を有する第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。すなわち、第3実施形態は、受発光素子等との光結合効率が十分に高いものとなる。また、光導波路1のミラー71、72の位置に対して受発光素子を実装する際に、両者の位置ズレの許容量を緩和することができる。このため、光導波路1は、実装容易性の高いものとなる。
【0185】
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
【0186】
≪第1の製造方法≫
まず、本発明の光導波路を製造する第1の方法(第1の製造方法)について説明する。
【0187】
図17〜21は、それぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図17〜21中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0188】
光導波路1の第1の製造方法では、[1]まず、支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902(第1の組成物および第2の組成物)を層状に押出成形して層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、光導波路1を得る。以下、各工程について詳述する。
【0189】
[1]まず、光導波路形成用組成物901、902を用意する。
[1−1]光導波路形成用組成物901、902は、それぞれ、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)と、を含有するものであるが、その組成は異なっている。
【0190】
2種類の組成物のうち、光導波路形成用組成物901は、主に各コア層13を形成するための材料であり、活性放射線の照射により、ポリマー915中において少なくともモノマーの活発な反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、光導波路形成用組成物901は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0191】
一方、光導波路形成用組成物902は、主に各クラッド層11、121、122を形成するための材料であり、光導波路形成用組成物901より低屈折率の材料で構成されている。
【0192】
光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との屈折率差は、それぞれに含まれるポリマー915の組成、モノマーの組成、ポリマー915とモノマーの存在比率等を設定することにより、適宜調整することができる。
【0193】
例えば、モノマーの屈折率がポリマー915より低い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物901より光導波路形成用組成物902の方が高くなっている。一方、モノマーの屈折率がポリマー915より高い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物902より光導波路形成用組成物901の方が高くなっている。換言すれば、ポリマー915やモノマーの各屈折率に応じて、各光導波路形成用組成物901、902中のポリマー915および添加剤920の組成が適宜選択されている。
【0194】
また、光導波路形成用組成物901および光導波路形成用組成物902では、モノマーの含有率が互いにほぼ等しくなるよう、組成が設定されているのが好ましい。このように設定すれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、モノマーの含有率の差をきっかけにしたモノマーの拡散移動が抑制される。モノマーの拡散移動は、前述したように屈折率差の形成において有用であるが、望ましくない方向に移動することが避けられない場合もある。例えば、後述する多色押出成形法により、層910の厚さ方向の屈折率分布を形成することが可能であるため、少なくとも厚さ方向においてはモノマーの拡散移動が抑制されていても差し支えなく、むしろ厚さ方向における意図しないモノマーの拡散移動は抑制される方が好ましい。意図しないモノマーの拡散移動を抑制することにより、最終的に目的とする形状の屈折率分布Tを有する光導波路1を確実に製造することができるからである。
【0195】
なお、モノマーの含有率をほぼ等しくした場合には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、ポリマー915またはモノマーの条件を異ならせればよい。具体的には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで、用いるポリマー915の組成を異ならせるほか、同じ組成であっても分子量や重合度を異ならせるようにすればよい。同じ組成のものを用いることで、互いの相溶性が高くなるため、組成物同士が混合し易くなる。これにより、屈折率分布Tの連続性を高めることができる。
【0196】
また、異なる組成のものを用いる場合、ポリマー915の基本組成は同じであるものの、離脱性基(反応媒体)の有無を変えるようにしてもよい。例えば、光導波路形成用組成物901が含有するポリマー915は離脱性基を含む一方、光導波路形成用組成物902が含有するポリマー915は離脱性基を含まないのが好ましい。これにより、コア層13においてのみ、離脱性基の離脱が生じ、層内で屈折率差が形成するとともに、クラッド層11、121、122では、離脱性基の離脱が生じないので、層内で屈折率が変化せず、クラッド層11、121、122の屈折率を比較的均一にすることができる。
【0197】
また、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれるモノマーは同じ組成のものでも、異なる組成のものでもよい。なお、同じ組成のものを用いることで、相互の密着性(親和性)が向上する。その結果、特性に優れた光導波路1が得られる。
【0198】
また、光導波路形成用組成物901がモノマーを含む一方、光導波路形成用組成物902はモノマーを含まないようにしてもよい。この場合、各クラッド層11、121、122では、層内でのモノマーの拡散移動が生じないので、各クラッド層11、121、122の層内の屈折率を均一にすることができる。
【0199】
また、用いるモノマーの組成、すなわち屈折率を異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、前述したように、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率をほぼ等しくし、モノマーの拡散移動を抑制しながら、両者の間に屈折率差を形成することができる。
【0200】
また、光導波路形成用組成物901中の添加剤920が重合開始剤を含んでいる一方、光導波路形成用組成物902中の添加剤920が重合開始剤を含まないようにしてもよい。この場合、コア層13においてのみ、層内でモノマーの重合反応が促進され、クラッド層11、121、122では、モノマーの重合反応が促進されない。したがって、クラッド層11、121、122では屈折率の変化が抑えられ、層内での屈折率を比較的均一にすることができる。
【0201】
一方、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の双方が重合開始剤を含んでいる場合でも、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで含まれる重合開始剤の種類や添加量を異ならせるようにすれば、各組成物で重合反応の程度に差を付けることができるので、屈折率分布W、Tの形成において有用である。具体的には、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として活性放射線930の波長に対して反応性の高いものを用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として活性放射線930の波長に対して反応性の低いものを用いればよい。また、同じ種類の重合開始剤を用いる場合には、光導波路形成用組成物901に比べて光導波路形成用組成物902への添加量を少なくすればよい。
【0202】
さらに、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として光酸発生剤を用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として熱酸発生剤を用いるようにしてもよい。これにより、活性放射線930の照射に伴って主にコア層13の層内でのみモノマーの重合反応が促進され、屈折率分布Wが形成される一方、クラッド層11、121、122ではモノマーの重合反応が促進されない。屈折率分布Wが形成された後、層910に熱を加えることにより、今度はクラッド層11、121、122においてモノマーの重合反応が促進される。その結果、層910では、厚さ方向の屈折率分布Tが固定される。
【0203】
熱酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなスルホニウム塩型化合物、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなヨードニウム塩型化合物、ペンタフェニルホスニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ペンタフェニルホスニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなホスニウム塩型化合物等が挙げられる。
【0204】
[1−2]次いで、支持基板951上に光導波路形成用組成物901、902を多色押出成形法により層状に成形する。
【0205】
まず、光導波路形成用組成物901を5層で押し出すと同時に、これらの各層の間にそれぞれ光導波路形成用組成物902を押し出すことで、9層を積層してなる多色成形体914を一括形成する(図17(a)参照)。具体的には、多色成形体914は、光導波路形成用組成物901、902、901、902、901、902、901、902、901を、下方からこの順で層状に押し出すことにより形成され、組成物同士の境界においては、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混濁する。したがって、組成物同士の境界近傍では、光導波路形成用組成物901の一部と光導波路形成用組成物902の一部とが混合し、厚さ方向に沿って混合比率が連続的に変化している領域が形成される。その結果、多色成形体914は、光導波路形成用組成物901が押し出された位置では屈折率が高く、光導波路形成用組成物902が押し出された位置では屈折率が低く、これらの位置の間では屈折率が連続的に変化した層となる。
【0206】
なお、各層において押し出す光導波路形成用組成物901、902の条件を異ならせることで、層910における厚さ方向の屈折率分布Tの形状を自在に調整することができる。これについては後に詳述する。
【0207】
そして、得られた多色成形体914中の溶媒を蒸発(脱溶媒)させ、層910を得る(図17(b)参照)。
【0208】
得られた層910は、下方から、クラッド層11、コア層131、クラッド層121、コア層132、クラッド層122がこの順で積層された積層体となり、厚さ方向に屈折率分布Tを有するものとなる。
【0209】
また、得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。
【0210】
層910の平均厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。
【0211】
ところで、このような層910を得るための多色成形体914は、以下のようなダイコーター(多色押出成形装置)800を用いて製造される。なお、図が複雑になるのを避けるため、以下の説明では、押出成形する層数が少なくなるよう簡略化した図を用いて説明する。
【0212】
図18は、多色成形体914を得るダイコーターを示す分解斜視図、図19は、ダイコーターの一部(ミキシングユニット)を拡大して示す縦断面図である。
【0213】
ダイコーター800は、図18に示すように、上リップ部811と、その下方に設けられた下リップ部812とを備えるダイヘッド810を有している。
【0214】
上リップ部811および下リップ部812は、それぞれ長尺のブロック体で構成され、互いに重ね合わされている。合わせ面には空洞のマニホールド820が形成されている。マニホールド820の幅はダイヘッド810の右側ほど広くなるよう連続的に拡張している。一方、マニホールド820の厚さはダイヘッド810の右側ほど小さくなるよう連続的に縮小している。そして、マニホールド820の右端では、空洞の幅が最大でかつ厚さが最小になっており、スリット821を形成している。
【0215】
このダイヘッド810は、マニホールド820の左側から供給された光導波路形成用組成物901、902をスリット821から右側に成形しつつ押し出すことができる。すなわち、スリット821の形状に応じて、多色成形体914の幅および厚さが決定される。
【0216】
ダイヘッド810の左側には、ミキシングユニット830が設けられている。ミキシングユニット830は、光導波路形成用組成物901、902をそれぞれダイヘッド810に供給するための2系統の配管を組み合わせて構成されており、光導波路形成用組成物901をダイヘッド810に供給する第1の供給管831と、光導波路形成用組成物902をダイヘッド810に供給する第2の供給管832とを有している。
【0217】
また、第1の供給管831および第2の供給管832から供給された光導波路形成用組成物901、902は、ダイヘッド810との接続を担う接続部835において合流し、ダイヘッド810のマニホールド820へと供給される。なお、第2の供給管832は、途中で上下2つに分岐し、接続部835の上層部および下層部にそれぞれ接続されている。一方、第1の供給管831は、接続部835の中層部に接続されている。すなわち、接続部835では、光導波路形成用組成物901で構成される1層の流れを、光導波路形成用組成物902で構成される上下2層の流れで挟み込むようにして合流している。その結果、ダイコーター800は、光導波路形成用組成物902、901、902が3層に押出成形されてなる多色成形体914を形成することができる。
【0218】
また、ミキシングユニット830は、第1の供給管831と第2の供給管832との合流地点に設けられた、複数のピン836を有している。これらのピン836は、長尺の円柱状をなしており、その軸と、第1の供給管831および第2の供給管832の延伸方向とがほぼ直交するよう配置されている。図19では、これらのピン836が、接続部835の上層部と中層部との間、および、下層部と中層部との間にそれぞれ3本ずつ設けられている。なお、ピン836の本数は特に限定されないが、好ましくは2本以上とされ、より好ましくは3〜10本程度とされる。また、ピン836は、光導波路形成用組成物901、902間に乱流を生じさせ得るものであれば、他の構造物(例えば、メッシュ、パンチングメタル等)で代替することもできる。
【0219】
ダイヘッド810の右側には、多色押出成形された多色成形体914を搬送する搬送部840が設けられている。搬送部840は、ローラー841と、ローラー841に沿って移動する搬送フィルム842とを有している。搬送フィルム842はローラー841の回転により、図18の下方から右側へと搬送されるが、その際に、ローラー841上にて多色成形体914を積層する。これにより、多色成形体914の形状を保持しつつ、右側へと搬送することができる。
【0220】
次いで、ダイコーター800の動作について説明する。
ミキシングユニット830に光導波路形成用組成物901、902が同時に供給されると、接続部835において3層の層流が形成される。接続部835において光導波路形成用組成物901、902が合流する際、合流部に設けられた複数のピン836の作用により、光導波路形成用組成物901、902の流れに乱れが生じる。この乱れは、層流間の境界を不明瞭とし、境界では光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混在した領域が形成される。
【0221】
このようにして形成された層流は、ダイヘッド810のマニホールド820において、幅方向に拡張されるとともに厚さ方向には圧縮される。その結果、前述したような多色成形体914が形成される。そしてこのような多色成形体914を用いることにより、最終的に前述した厚さ方向の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
【0222】
なお、多色成形体914は、搬送フィルム842上に形成されるが、この搬送フィルム842をそのまま前述した支持基板951として利用することもできる。
【0223】
また、図18に示すダイコーター800では、コア層13を1層含む層910を形成可能であるが、コア層13を複数層設ける場合には、それに応じて、ミキシングユニット830の構造を変更すればよい。具体的には、コア層13の層数に応じて第1の供給管831を分岐し、さらに、各第1の供給管831から押し出された光導波路形成用組成物901の各層を挟むように、第2の供給管832の分岐数を増やすようにすればよい。
【0224】
図20は、ミキシングユニット830の他の構成例を示す断面図である。なお、図20では、複雑になるのを避けるため、第1の供給管831および第2の供給管832の管軸を線で模式的に示しており、各供給管831、832に各組成物を注入する始点を●印で示している。また、光導波路形成用組成物901の流れを実線の矢印で、光導波路形成用組成物902の流れを破線の矢印で、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物の流れを一点鎖線の矢印で、それぞれ示している。
【0225】
図20に示す第1の供給管831は、始点831aから3つに分岐しており、このうち、中央の分岐管8311は、真っ直ぐにダイヘッド810方向に延伸している。
【0226】
一方、中央の分岐管8311の上方には、始点831aから分岐した分岐管8312が斜めに延伸しており、中央の分岐管8311の下方には、始点831aから分岐した分岐管8313が斜めに延伸している。
【0227】
中央の分岐管8311からやや上方に離れた位置には、第2の供給管832の第1の始点832aが設けられており、この第1の始点832aからは分岐した分岐管8321が上方に延伸しており、また、分岐した分岐管8322が下方に延伸している。
【0228】
このうち、下方に延伸した分岐管8322は、合流点J1で中央の分岐管8311に合流している。
【0229】
また、上方に延伸した分岐管8321は、上述した分岐管8312と混合点M1で合流するよう構成されている。混合点M1より先では、分岐管8321と分岐管8312とが集合管8331に集約されており、この集合管8331は、分岐管8322よりもダイヘッド810側(先端側)に位置する合流点J2で中央の分岐管8311に合流している。
【0230】
一方、中央の分岐管8311からやや下方に離れた位置には、第2の供給管832の第2の始点832bが設けられており、この第2の始点832bからは分岐した分岐管8323が上方に延伸しており、また、分岐した分岐管8324が下方に延伸している。
【0231】
このうち、上方に延伸した分岐管8323は、合流点J1で中央の分岐管8311に合流している。
【0232】
また、下方に延伸した分岐管8324は、上述した分岐管8313と混合点M2で合流するよう構成されている。混合点M2より先では、分岐管8323と分岐管8324とが集合管8332に集約されており、この集合管8332は、分岐管8323よりもダイヘッド810側(先端側)に位置する合流点J2で中央の分岐管8311に合流している。
【0233】
また、各混合点M1、M2および各合流点J1、J2には、前述したピン836が設けられている(図示せず)。このうち、各混合点M1、M2では、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが完全に混合されるよう、ピン836の配置および本数が設定されている。一方、各合流点J1、J2では、光導波路形成用組成物901と前記混合物とが部分的に混合されるよう、ピン836の配置および本数が設定されている。
【0234】
ここで、第1の供給管831の始点831aには、光導波路形成用組成物901が注入され、第2の供給管832の第1の始点832aおよび第2の始点832bには、光導波路形成用組成物902が注入される。
【0235】
光導波路形成用組成物901は、中央の分岐管8311を介して、多色成形体914の中央の層を構成することとなる。
【0236】
一方、光導波路形成用組成物902は、分岐管8322と分岐管8323とを介して、中央の層を挟むように合流する。
【0237】
さらに、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との混合物は、第2の供給管832を介して、上記の光導波路形成用組成物902で構成された層を挟むように合流する。
【0238】
以上のようにして多色成形体914が成形される。
このようなミキシングユニット830を用いることにより、多色成形体914を成形することができる。
【0239】
また、第1の供給管831からの光導波路形成用組成物901の供給条件、例えば、第1の供給管831の内径、第2の供給管832に対する第1の供給管831の合流角度、単位時間当たりの供給量、供給圧力、粘度、温度等と、第2の供給管832からの光導波路形成用組成物902の供給条件、例えば、第2の供給管832の内径、第1の供給管831に対する第2の供給管832の合流角度、単位時間当たりの供給量、供給圧力、粘度、温度等と、を適宜設定することにより、多色成形体914中の各組成物の占有率を変更することができる。これにより、最終的に光導波路1の屈折率分布Tの形状を自在に変更することができる。
【0240】
なお、上記多色押出成形法およびダイコーターは、多色成形体914を製造する方法および装置の一例であり、層間での組成物の混濁を生じ得る多色成形方法および多色成形装置であれば、例えば射出成形法(装置)等の各種方法(装置)を用いることもできる。
【0241】
ところで、光導波路1においてコア部14の厚さが漸減している漸減部6を形成するためには、多色成形体914を成形する際に以下のような調整を行う。
【0242】
光導波路1は、前述したように、光入射端部1Aから光出射端部1Bにかけて各コア層13の厚さが徐々に減少しているが、この厚さは、光導波路形成用組成物901、902の単位時間当たりの供給量を経時的に変化させることによって調整可能である。
【0243】
例えば、図17(a)において光導波路形成用組成物901、902を押し出す際に、光導波路形成用組成物901の単位時間当たりの供給量を徐々に増やすとともに、光導波路形成用組成物902の単位時間当たりの供給量を徐々に減らす。このようにすれば、光導波路形成用組成物901からなる層の厚さは、図17の左側ほど厚くなり、一方、光導波路形成用組成物902からなる層の厚さは、図17の左側ほど薄くなる。このようにして得られた多色成形体914を用いることにより、最終的に、図12に示す光導波路1を得ることができる。
【0244】
なお、厚さを調整するには、光導波路形成用組成物901、902の単位時間当たりの供給量を経時的に変化させる以外に、各組成物の供給圧力、粘度、温度等を変化させる方法も用いられる。
【0245】
また、上記のような条件の変化は、途中で変化を停止する、あるいは、変化率を連続的に変化させるようにしてもよい。これにより、図14、15に示す形態も製造することができる。
【0246】
[1−3]そして、得られた多色成形体914中の溶媒を蒸発(脱溶媒)させ、層910を得る(図17(b)参照)。
【0247】
層910の平均厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。
【0248】
なお、支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0249】
ここで、各光導波路形成用組成物901、902に含まれるポリマー915および添加剤920について説明する。
【0250】
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
【0251】
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0252】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、光導波路形成用組成物901、902中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
【0253】
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0254】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層13を得ることができる。
【0255】
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0256】
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0257】
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0258】
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0259】
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0260】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0261】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記構造式Bで表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
【0262】
【化1】

【0263】
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する構造式Cで表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
【0264】
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0265】
中でも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0266】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0267】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0268】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0269】
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0270】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0271】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0272】
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
【0273】
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
【0274】
【化2】

(式(1)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0275】
式(1)のノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
【0276】
【化3】

【0277】
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
【0278】
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH=CH−CH−OH)を高温高圧下で反応させる。
【0279】
【化4】

【0280】
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
【0281】
【化5】

【0282】
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
【0283】
式(1)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0284】
【化6】

(式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0285】
式(2)のノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0286】
なお、式(2)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
【0287】
【化7】

(式(3)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0288】
式(3)の樹脂は、Rを有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0289】
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、Xがメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0290】
【化8】

(式(4)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p/(q+r)が20以下である。)
【0291】
式(4)の樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0292】
【化9】

(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
【0293】
【化10】

(式(6)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
【0294】
【化11】

(式(7)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
【0295】
なお、式(4)で表されるノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
【0296】
【化12】

(式(8)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、Xは、酸素原子またはメチレン基を表し、Xは、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0297】
式(8)の樹脂は、Rを有するノルボルネンと、側鎖に−(CH−X−X(R3−j(Ar)を含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0298】
なお、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
【0299】
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基、Rがメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0300】
【化13】

(式(9)におけるR、p、q、iは、式(8)と同じである。)
【0301】
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、Xがメチレン基、Xが炭素原子、Arがフェニル基、Rが水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
【0302】
【化14】

(式(10)において、R10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p/qは20以下である。)
【0303】
また、p/q〜p/q、p/q、p/qまたはp/(q+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
【0304】
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン等であってもよい。
【0305】
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0306】
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0307】
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
【0308】
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
【0309】
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
【0310】
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0311】
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
【0312】
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
【0313】
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
【0314】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0315】
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
【0316】
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0317】
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0318】
なお、コア層13の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
【0319】
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
【0320】
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
【0321】
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
【0322】
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有している。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
【0323】
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0324】
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0325】
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0326】
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
【0327】
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
【0328】
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−Xの部分で脱離する場合がある。
【0329】
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
【0330】
【化15】

【0331】
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することでクラッド層11、121、122や基材に対して密着性に優れたコア層131、132が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
【0332】
【化16】

(式(31)において、p/(q+r)は、20以下である。)
【0333】
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH−O−Si(CH)(Ph)を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0334】
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
【0335】
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に離脱性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
【0336】
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
【0337】
(添加剤)
添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
【0338】
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0339】
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0340】
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
【0341】
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
【0342】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
【0343】
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が屈折率分布Wの極小値を形成し、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が屈折率分布の極大値を構成する。
【0344】
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
【0345】
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0346】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13(光導波路1)が得られる。
【0347】
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
【0348】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
【0349】
【化17】

【0350】
【化18】

【0351】
【化19】

【0352】
【化20】

【0353】
【化21】

【0354】
【化22】

【0355】
【化23】

【0356】
【化24】

(式(18)においてnは0以上、3以下である。)
【0357】
【化25】

【0358】
【化26】

【0359】
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0360】
さらには、ポリマー915の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
【0361】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
【0362】
【化27】

【0363】
【化28】

(式(33)において、nは1または2である)
【0364】
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
【0365】
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
【0366】
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
【0367】
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
【0368】
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
【0369】
【化29】

【0370】
【化30】

【0371】
【化31】

【0372】
【化32】

【0373】
【化33】

【0374】
【化34】

【0375】
さらに、モノマーとしては、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0376】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0377】
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、上記成分Bを含むモノマーを「第2モノマー」とすると、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
【0378】
なお、第2モノマーに相当するモノマーには、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーやビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの第2モノマーを用いることにより、第1モノマーとポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
【0379】
このような第2モノマーの具体例としては、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
【0380】
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Dで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
【0381】
【化35】

【0382】
【化36】

[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R12〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R12およびR13のいずれか一方、R14およびR15のいずれか一方は存在しない。]
【0383】
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R12およびR13、R14およびR15が、それぞれ炭素数1〜10(C〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
【0384】
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0385】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0386】
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0387】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0388】
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
【0389】
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
【0390】
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0391】
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
【0392】
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
【0393】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0394】
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
【0395】
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
【0396】
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
【0397】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0398】
なお、モノマーの反応性が著しく高い場合には、重合開始剤の添加を省略してもよい。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
【0399】
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0400】
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0401】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0402】
増感剤の含有量は、光導波路形成用組成物901、902中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0403】
なお、光導波路形成用組成物901、902には、添加剤920として上記の他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0404】
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
【0405】
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図21参照)。
【0406】
以下では、光導波路形成用組成物901中に含まれるモノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。
【0407】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
【0408】
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
【0409】
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0410】
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
【0411】
また、図21においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
【0412】
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0413】
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
【0414】
また、活性放射線930の照射量は、0.05〜9J/cm程度であるのが好ましく、0.1〜6J/cm程度であるのがより好ましく、0.1〜3J/cm程度であるのがさらに好ましい。
【0415】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、層910のうち、照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0416】
図22は、層910において、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0417】
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図22(a)参照)。
【0418】
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図22(a)に示すように、照射領域925と未照射領域940との境界を挟んで、未照射領域940側に高屈折率部H、照射領域925側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
【0419】
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。
【0420】
一方、未照射領域940では、重合開始剤やモノマーが活性化されないため、モノマーは重合しない。
【0421】
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、未照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。
【0422】
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有していてもよい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、層910では、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図22(b)参照)。
【0423】
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図22(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図22(a)における屈折率の変化と、図22(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こり、屈折率分布Wが形成されることとなる。図22(a)では、屈折率分布を誇張して表現しているが、実際のモノマーの拡散移動に伴う高屈折率部Hと低屈折率部Lとの屈折率差は比較的小さい。図22(b)における屈折率変化によってこの屈折率差は十分に拡大し、グレーデッドインデックス型の屈折率分布Wが形成される。
【0424】
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。
【0425】
次に、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、未照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなってポリマー915に近い屈折率となる。
【0426】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0427】
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0428】
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、光導波路1が得られる。
【0429】
得られた光導波路1の幅方向の屈折率分布には、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており、これにより屈折率分布Wが形成されることとなる。
【0430】
なお、この屈折率分布Wは、モノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
【0431】
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
【0432】
さらには、出射光の強度分布が、屈折率分布Wと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wを間接的に特定することができる。
【0433】
もちろん、屈折率分布Wは、屈折ニアフィールド法、微分干渉法等により、直接特定することもできる。
【0434】
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
【0435】
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
【0436】
≪第2の製造方法≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態を製造する第2の方法(第2の製造方法)について説明する。
【0437】
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0438】
第2の製造方法では、光導波路形成用組成物901の組成が異なる以外は、第1の製造方法と同様である。
【0439】
光導波路1の第2の製造方法では、[1]まず、支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902(第1の組成物および第2の組成物)を層状に押出成形して層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、光導波路1を得る。
【0440】
[1]まず、光導波路形成用組成物901、902を用意する。
第2の製造方法で用いられる光導波路形成用組成物901は、重合開始剤に代えて、触媒前駆体および助触媒を含有している。
【0441】
触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、光の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、光の照射領域925と未照射領域940との間で、モノマーの反応を開始させる温度に差が生じ、その結果、照射領域925のみにおいてモノマーを反応させることができる。
【0442】
触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路1)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0443】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0444】
【化37】

[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0445】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0446】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0447】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0448】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0449】
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0450】
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)およびPd(OAc)(P(Cy)のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
【0451】
助触媒は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0452】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の離脱性基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0453】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)等が挙げられる。
【0454】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記式で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0455】
【化38】

【0456】
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
【0457】
なお、助触媒として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
【0458】
[2]
[2−1]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
【0459】
照射領域925では、助触媒が活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0460】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0461】
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことをいう。
【0462】
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して後述する加熱処理を施すことにより、コア層13を得ることができ、利便性が高い。
【0463】
また、上記のような触媒前駆体の分子構造の変化に加え、第1の製造方法と同様、ポリマー915から離脱性基が離脱する。これにより、層910の照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0464】
[2−2]次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0465】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散移動して照射領域925に集まってくる。
【0466】
その結果、層910には、第1の製造方法と同様の屈折率分布が形成される。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
【0467】
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0468】
次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
【0469】
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
【0470】
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
【0471】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0472】
次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
【0473】
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0474】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0475】
以上の工程を経て、光導波路1が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理以降または第3の加熱処理を省略してもよい。
【0476】
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、他の光学素子(受発光素子等)との光結合効率が高いものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0477】
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0478】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0479】
また、前記各実施形態に係る光導波路は、パルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
【0480】
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0481】
例えば、本発明の光導波路の横断面の厚さ方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Tは、ステップインデックス型の分布であってもよい。このような分布を形成する場合、各コア層および各クラッド層をそれぞれ個別に製造した後、互いに貼り合わせる製法(ラミネート法)が採用される。これにより、層間における屈折率の変化は自ずと不連続的になるため、ステップインデックス型の分布を形成することができる。なお、コア層については、長手方向の一方から他方に向かって厚さが徐々に変化しているものを用いることで、漸減部を形成することができる。このようなコア層は、例えば塗布法でコア層を形成する際に、塗布厚みを徐々に変化させる、あるいは、部分的に塗布回数を異ならせる等の方法で容易に製造することができる。
【0482】
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射線により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
【0483】
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
【実施例】
【0484】
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0485】
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0486】
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0487】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0488】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0489】
【化39】

【0490】
【化40】

【0491】
(2)光導波路形成用組成物(第1の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物(第1の組成物)を得た。
【0492】
(3)光導波路形成用組成物(第2の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2gを加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物(第2の組成物)を得た。
【0493】
(4)光導波路の製造
まず、図19に示すミキシングユニットの構造を変更し、第1の供給管および第2の供給管の各分岐数を増やしたミキシングユニットを用意した。
【0494】
そして、ダイコーターにより、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に上記光導波路形成用組成物を一定の供給速度で押し出し、多色押出成形を行った。これにより、第1の組成物を第1層、第3層、第5層、第7層および第9層とし、第2の組成物を第2層、第4層、第6層および第8層とする多色成形体を得た。
【0495】
次いで、得られた多色成形体を45℃の乾燥器に15分間投入し、溶剤を完全に除去して、図8に示すような屈折率分布Tを有する光導波路形成用フィルムを得た。次いで、光導波路形成用フィルムにフォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中で150℃、1.5時間の加熱を行った。加熱後、コア部および側面クラッド部が形成されているのが確認された。その後、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。なお、形成された光導波路は、2層のコア層を含むものであり、各コア層は、それぞれコア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の厚さを50μmとし、光導波路の厚さを100μmとした。さらに、フォトマスクには、コア部の幅が漸減するよう開口部が設定されたものを用い、図3に示す形状の漸減部を各コア部に形成した。なお、光入射端部の端面におけるコア部の幅は60μm、光出射端部の端面におけるコア部の幅は30μmであった。
【0496】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路の横断面について、幅方向および厚さ方向にそれぞれ引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定し、幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。得られた屈折率分布の各パラメーターを表1、2に示す。なお、得られた屈折率分布Wおよび屈折率分布Tは、それぞれグレーデッドインデックス型の分布であった。
【0497】
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cmに高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0498】
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0499】
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0500】
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0501】
(実施例6)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0502】
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が20mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が80mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0503】
(実施例8)
紫外線の照射量を300mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0504】
(実施例9)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0505】
(実施例10)
紫外線の照射量を100mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0506】
(実施例11)
紫外線の照射量を1500mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0507】
(実施例12)
紫外線の照射量を3000mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0508】
(実施例13)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0509】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
【0510】
(実施例14)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0511】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
【0512】
(実施例15)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0513】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P) 1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
【0514】
(実施例16)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0515】
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0516】
【化41】

【0517】
(実施例17)
多色成形の際、以下のように設定を変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0518】
まず、第1の組成物については単位時間当たりの供給量が徐々に多くなるように、また、第2の組成物については単位時間当たりの供給量が徐々に少なくなるように供給した。なお、各組成物の供給量の変化量については、増加率と減少率とが同じになるよう調整した。また、増加率および減少率は、それぞれ押し出し開始後から一定に維持され、押し出し終了時には増加率および減少率が押し出し開始時の50%になるよう設定した。すなわち、第1の組成物の単位時間当たりの供給量は、最終的に、押し出し開始時の150%になるよう設定し、第2の組成物の単位時間当たりの供給量は、最終的に、押し出し開始時の50%になるよう設定した。
【0519】
得られた光導波路は、コア部の幅および厚さの双方が漸減している漸減部を有するものであった。なお、コア部は、厚さが60μmから30μmに一定の割合で変化したものであった。
【0520】
(実施例18)
(1)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成した。形成された下側クラッド層は、無色透明であった。
【0521】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上に実施例1で用いたのと同じ光導波路形成用組成物(第1の組成物)をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、実施例1と同様の漸減部を有するコア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の厚さは50μmであった。また、フォトマスクには、コア部の幅が漸減するよう開口部が設定されたものを用い、図3に示す形状の漸減部を各コア部に形成した。なお、光入射端部の端面におけるコア部の幅は60μm、光出射端部の端面におけるコア部の幅は30μmであった。
【0522】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
【0523】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路の横断面について、幅方向および厚さ方向にそれぞれ引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定し、幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。得られた屈折率分布の各パラメーターを表1、2に示す。
【0524】
(実施例19)
(1)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成した。この際、塗膜を形成したシリコンウエハーを傾けた状態で乾燥させた。これにより、下側クラッド層の厚さに偏りを生じさせた。形成された下側クラッド層は、厚さが20μmから50μmに一定の割合で変化したものであり、無色透明であった。
【0525】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上に実施例1で用いたのと同じ光導波路形成用組成物(第1の組成物)をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア層は、厚さが60μmから30μmに一定の割合で変化したものであった。また、フォトマスクには、コア部の幅が漸減するよう開口部が設定されたものを用い、図3に示す形状の漸減部を各コア部に形成した。なお、光入射端部の端面におけるコア部の幅は60μm、光出射端部の端面におけるコア部の幅は30μmであった。
【0526】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
【0527】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路の横断面について、幅方向および厚さ方向にそれぞれ引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定し、幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。得られた屈折率分布の各パラメーターを表1、2に示す。
【0528】
(比較例1)
(1)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
【0529】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上に実施例1で用いたのと同じ光導波路形成用組成物(第1の組成物)からモノマーを除いた組成物をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、幅が一定のコア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。
【0530】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
【0531】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路の横断面について、幅方向および厚さ方向にそれぞれ引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定し、幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。得られた屈折率分布の各パラメーターを表1、2に示す。なお、得られた屈折率分布Wおよび屈折率分布Tは、それぞれステップインデックス型の分布であった。
【0532】
【表1】

【0533】
【表2】

【0534】
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路の横断面について、幅方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。
【0535】
各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wは、いずれも図7(b)に示すような形状であった。そして、得られた屈折率分布Wから、分布のパラメーターを求めた。
また、比較例1のものは、いずれもステップインデックス型の分布であった。
【0536】
一方、得られた光導波路の横断面について、厚さ方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Tとした。
【0537】
各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tのうち、実施例1〜17のものは、いずれも図9(b)に示すような形状であった。そして、得られた屈折率分布Tから、分布のパラメーターを求めた。
【0538】
また、実施例18、19および比較例1のものは、いずれもステップインデックス型の分布であった。
【0539】
2.2 光導波路の伝送損失および挿入損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから光導波路の伝送損失を算出した。なお、このようにして得られた伝送損失は、光導波路自体の伝送損失(単位dB/cm)である。
【0540】
一方、長さ10cmの光導波路について測定された挿入損失は、光導波路自体の伝送損失と光導波路と光ファイバーとの結合損失とを含むものである。そこで、各実施例で得られた光導波路の損入損失について、比較例1で得られた光導波路の損入損失を1としたときの相対値を求めた。
【0541】
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
【0542】
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
【0543】
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表3に示す。
【0544】
【表3】

【0545】
表3から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失、挿入損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。特に挿入損失については、比較例で得られた光導波路に比べて優れていた。これは、漸減部を設けたことにより、入射端では入射可能な面積が広くなるため、発光用光ファイバーからの信号光をもれなく受けることができ、一方、出射端では、出射時の収束性が高いため、受光用光ファイバーに対して信号光をもれなく入射させることができるため、受発光素子に対する結合損失を確実に抑えることができたためと考えられる。
【0546】
また、漸減部において、幅だけでなく厚さも漸減するよう構成されている場合には、その傾向が顕著である(実施例17、19参照)。
【0547】
また、屈折率分布がグレーデッドインデックス型の分布になっている場合、光導波路の伝送損失および挿入損失を特に抑えられることが認められた。
【符号の説明】
【0548】
1 光導波路
1A 光入射端部
1B 光出射端部
11、121、122 クラッド層
13 コア層
131、132 コア層
14 コア部
141、142、143、144 コア部
15 側面クラッド部
151、152、153、154、155、156 側面クラッド部
2 支持フィルム
3 カバーフィルム
6 漸減部
71、72 ミラー
800 ダイコーター(多色押出成形装置)
810 ダイヘッド
811 上リップ部
812 下リップ部
820 マニホールド
821 スリット
830 ミキシングユニット
831 第1の供給管
832 第2の供給管
835 接続部
836 ピン
831a 始点
8311、8312、8313 分岐管
832a 第1の始点
832b 第2の始点
8321、8322、8323、8324 分岐管
8331、8332 集合管
M1、M2 混合点
J1、J2 合流点
840 搬送部
841 ローラー
842 搬送フィルム
901、902 光導波路形成用組成物
910 層
914 多色成形体
915 ポリマー
920 添加剤
930 活性放射線
935 マスク(マスキング)
9351 開口(窓)
925 照射領域
940 未照射領域
951 支持基板
W、T 屈折率分布
WA 側面クラッド部における平均屈折率
Ws1、Ws2、Ws3、Ws4 極小値
Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5 極大値
TA クラッド層における平均屈折率
Ts1、Ts2、Ts3、Ts4 極小値
Tm1、Tm2、Tm3、Tm4、Tm5 極大値
C1、C2 中心線
H 高屈折率部
L 低屈折率部
a、b 幅
a’、b’ 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、該コア部の側面に隣接するクラッド部と、を有し、帯状をなす光導波路であって、
当該光導波路の光入射側から光出射側に向かうにつれて前記コア部の幅が漸減している漸減部を備えており、
横断面上において当該光導波路の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布は、2つの極小値と、1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい2つの第2の極大値と、を有し、前記第2の極大値、前記極小値、前記第1の極大値、前記極小値、および前記第2の極大値がこの順で並んだ領域を含んでおり、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している分布であることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記屈折率分布のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部に対応し、前記各極小値から前記各第2の極大値側の領域が前記クラッド部に対応しており、
前記各極小値は、それぞれ、前記クラッド部における平均屈折率未満である請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記屈折率分布のうち、前記クラッド部に対応する領域では、その中心部に前記第2の極大値が位置するよう屈折率が変化している請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記各極小値と前記クラッド部における平均屈折率との差は、前記各極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記漸減部は、当該光導波路の長手方向の端部に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記コア部の光路を変換する光路変換部を有している請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記コア部が厚さ方向に2層以上積層されている請求項1ないし6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−189824(P2012−189824A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53468(P2011−53468)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】