説明

光導波路の製法

【課題】光導波路の伝播損失の低下が抑制され、かつアライメントマークの視認性が向上し、生産性に優れた光導波路の製法を提供する。
【解決手段】金属製基板10表面にアンダークラッド層1,コア2,アライメントマーク1aを形成する。一方、凹部21が形成され、上記アライメントマーク1aに対応するアライメントマーク22が形成された成形型Mを準備する。つぎに、上記対応する一対のアライメントマーク1a,22を基準に金属製基板10と成形型Mを位置合わせする際に、成形型M側から光を照射しその照射光を利用して位置合わせする。そして、上記コア2を被覆した状態でオーバークラッド層3を形成するという光導波路の製法である。上記アンダークラッド層1は、波長400〜700nmの光を吸収する染料を含有し、かつ上記位置合わせに使用する波長400〜700nmの光に対して吸光度0.24以上の特性を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,位置センサ,その他一般光学で広く用いられる光導波路の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、通常、アンダークラッド層の表面に、光の通路であるコアを所定パターンに形成し、そのコアを被覆した状態で、オーバークラッド層を形成して構成されている。このような光導波路の量産性の向上を図るために、ロール・トゥ・ロール工程による製造が実施されており、形成材料である各種樹脂の硬化に伴う応力(硬化収縮)に耐えうる基材として、ステンレス(SUS)等のような金属製基材を用いる傾向がある。
【0003】
上記SUSは塗膜の収縮応力による反りを抑制することができる安価な材料である反面、金属であり、その表面が微細な粗面であるため、コア形成における露光プロセスにおいて光の散乱反射を生起し、コアの壁面荒れが生じる場合がある。このため、例えば、アンダークラッド層形成材料に、紫外線吸収剤を導入することにより、上記SUS等の金属製基板の背面反射を抑制する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この種の、光導波路を用いた光学式タッチパネルでは、オーバークラッド層にて光の出射部および入射部をレンズ形状にするため、インプリントプロセス製法により作製する必要がある。その際、光を出射するコア端部とオーバークラッド層(レンズ)間の位置精度を上げるため、予めコアにアライメントマークを作製し、アライメントカメラを用いて上記アライメントマークを認識しながらコアとオーバークラッド層の位置合わせを行ない、両者を貼り合わせる工程が必須となっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−276724号公報
【特許文献2】特開2008−20343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの光導波路の製造工程では、上記アライメントカメラに使用される光源は可視光領域(波長400〜700nm)の光を照射するものが使用されており、かつ金属製基材として一般にSUSを使用することから、アライメントカメラにSUSの表面荒れが映り込むことになる。そのため、例えば、コアに設けられたアライメントマークのエッジ部のコントラストが低下し、その結果、アライメントカメラによるアライメントマークの検出精度が悪化するという問題が生起している。このような問題に対して、例えば、アライメントマーク形成においてハーフトーンマスク露光によるエッジの丸型化が提案されコントラストを明確にして認識の度合いを向上させるという改善が提案されている。しかしながら、根本原因であるSUS表面の荒れに起因した上記映り込みに対する直接的な解決手段ではないことや、上記ハーフトーンマスク露光方法によるアライメントマークの形成では、その出来上がりの精度が低いことから、アライメントマークの認識の向上という点で充分に満足のいくものではなく、生産効率(歩留り)の悪化を招いているのが実情である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路の伝播損失の低下が抑制され、かつアライメントマークの視認性が向上し、生産性に優れた光導波路の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の光導波路の製法は、金属製基板の表面にアンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層表面にコアをパターン形成する工程と、上記アンダークラッド層の所定位置にアライメントマークを形成する工程と、オーバークラッド層の形状に対応する型面を有する凹部が形成され、上記アンダークラッド層に形成されたアライメントマークに対応するアライメントマークが所定位置に形成された成形型を準備する工程と、この成形型を、上記コアおよびアンダークラッド層が形成された金属製基板に対面させ、上記対応する一対のアライメントマークを基準に金属製基板と成形型を位置合わせする際に、成形型側から波長400〜700nmの光を照射しその照射光を利用して位置合わせする工程と、上記コアを被覆した状態でオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層が、波長400〜700nmの光を吸収する染料を含有し、かつ上記位置合わせに使用する波長400〜700nmの光に対して吸光度0.24以上の特性を有するものであるという構成をとる。
【0009】
本発明者は、アライメントマークを用いた位置合わせの際に、アライメントカメラにSUSの表面荒れが映り込むことから、アライメントマークの検出精度が悪化して製造作業性が低下することを解決するために鋭意検討を重ねた。そして、まず、上記SUS表面の荒さに起因した映り込みを抑制するため、アンダークラッド層に、アライメントカメラにて用いられる光を吸収させる染料を導入することを想起し実験を行なった。しかし、上記染料の使用によりコア中の伝播光をも吸収するためか、染料の使用により光導波路の伝播損失が悪化する。このようなことから、アンダークラッド層には光導波路としての伝播損失を悪化させずに、かつSUS表面の荒れによる映り込みを抑制させアライメント用光を吸収することのできる特性を有する形成材料の使用が望まれる。本発明者は、このような観点から、さらに検討を重ねた結果、光導波路を伝播する波長(約850nm)に対して離れた波長帯領域に吸収特性を有する染料を選択して用い、形成したアンダークラッド層の吸光度を特定値以上となるように形成すると、染料導入による光導波路の伝播損失の悪化が抑制され、かつSUS表面の荒れによる映り込みが抑制されて、アライメントマークの視認性が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、通常、高透明性が要求される光導波路形成材料では、光導波路構成部材(アンダークラッド層、コア、オーバークラッド層)中の伝播光を吸収するような着色成分を導入することは行なわないのが技術常識である。これは、直接、光が伝播するコアはもちろんのこと、その光は両クラッド層中に若干染みだしながら伝播するため、伝播損失の悪化の要因となるためである。しかしながら、光導波路の作製に際して、使用する金属製基板となるSUSの表面荒れがアライメントカメラに映り込むことによるアライメントマーク視認性悪化の低減を図るためには、使用するアライメントカメラ光源からの照射光に対応した吸光特性をアンダークラッド層に付与する必要があるのではないかと本発明者は想起した。そこで、本発明者は吸光特性を持たせるべく様々な手段を試行した結果、光導波路の光源波長(約850nm)に対して、離れた波長帯領域(400〜700nm)に吸光特性を備えた染料を用い、これをアンダークラッド層形成材料に配合し、得られたアンダークラッド層の吸光度が特定値以上となると、アライメントカメラへのSUS表面の荒れの映り込みが抑制されて、光導波路の伝播損失が維持されたまま、アライメントマークの視認性の向上を達成することが可能になったと推測される。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の光導波路の製法では、アンダークラッド層が、波長400〜700nmの光を吸収する染料を含有し、かつ位置合わせに使用する波長400〜700nmの光に対して吸光度0.24以上の特性を有するよう形成される。このため、染料導入による光導波路の伝播損失の悪化が抑制され、例えば、SUS表面の荒れに起因したアライメントカメラへの映り込みが抑制されて、アライメントマークの視認性が向上する。したがって、光導波路の生産歩留りが向上して、優れた生産性が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の光導波路の製法を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の光導波路の製法を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の光導波路の製法を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の光導波路の製法を模式的に示す説明図である。
【図5】上記製法により得られた光導波路を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0014】
《光導波路の製法》
まず、光導波路の製法について詳しく説明する。
【0015】
まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の金属製基板10〔図1(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、各種金属があげられるが、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるという観点から、SUS製基板が好ましい。また、基板10の厚みは、例えば、20μm(フィルム状)〜5mm(板状)の範囲内に設定される。
【0016】
ついで、図1(a)に示すように、上記基板10の表面に、アンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、熱硬化性樹脂または感光性樹脂があげられる。上記熱硬化性樹脂を用いる場合は、その熱硬化性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、それを加熱することにより、アンダークラッド層1に形成する。一方、上記感光性樹脂を用いる場合は、その感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、それを紫外線等の照射線で露光することにより、アンダークラッド層1に形成する。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜30μmの範囲内に設定される。
【0017】
そして、上記アンダークラッド層1の形成材料として、染料を用いることを本発明の最大の特徴とする。上記染料としては、波長400〜700nmの光を吸収することのできる染料が用いられ、例えば、上記波長帯領域に対して吸光特性を有する黄色染料、赤色染料、緑色染料等、すなわち、カラーインデックス(C.I.)として、黄色染料λmax440nm、赤色染料λmax515nm、緑色染料λmax689nm等があげられる。なかでも、光導波路を伝播する波長(約850nm)に対して離れた波長帯領域(例えば、400nm近傍)に吸光特性を有する黄色染料が好ましく用いられる。具体的には、有本化学社製のPlast yellow8070、Plast red8630、Plast green8620等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、本発明において、染料とは、水等の特定の溶媒に溶解可能な着色に用いられる有色の物質をいい、溶媒に不溶の顔料はこれに含まれない。
【0018】
上記染料の配合量は、染料の種類、アンダークラッド層の厚み等を考慮して、アンダークラッド層の吸光度が後述の範囲となるように適宜設定される。
【0019】
上記アンダークラッド層1の形成材料により形成されたアンダークラッド層1は、アライメントマークの視認性という観点から、波長400〜700nmの光に対して吸光度0.24以上の特性を有するものでなければならない。特に好ましくは吸光度0.24〜0.30である。すなわち、吸光度が低過ぎると、SUS表面の荒れによる映り込みの抑制効果が得られずアライメントマークの視認性が低下するからである。上記吸光度は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、可視紫外吸収スペクトルによって、SUS基板上に作製したアンダークラッド層(厚み15μmに規格)を、積分球を用いた反射測定により吸光度を測定する。
【0020】
つぎに、図1(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により所定パターンのコア2を形成する。このコア2の形成材料としては、好ましくは、パターニング性に優れた感光性樹脂が用いられる。その感光性樹脂としては、例えば、アクリル系紫外線硬化樹脂,エポキシ系紫外線硬化樹脂,シロキサン系紫外線硬化樹脂,ノルボルネン系紫外線硬化樹脂,ポリイミド系紫外線硬化樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、コア2の断面形状は、例えば、パターニング性に優れた台形または長方形である。コア2の幅は、例えば、10〜500μmの範囲内に設定される。コア2の厚み(高さ)は、例えば、25〜100μmの範囲内に設定される。
【0021】
なお、上記コア2の形成材料としては、上記アンダークラッド層1および後述のオーバークラッド層3(図3参照)の形成材料よりも屈折率が高く、伝播する光の波長で透光性が高い材料が用いられる。上記屈折率の調整は、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料である樹脂に導入する有機基の種類および含有量の少なくとも一方を変化させることにより、適宜、増加ないし減少させることができる。例えば、環状芳香族性の基(フェニル基等)を樹脂分子中に導入するか、あるいはその芳香族性基の樹脂分子中の含有量を増加させることにより、屈折率を大きくすることができる。他方、直鎖または環状脂肪族性の基(メチル基,ノルボルネン基等)を樹脂分子中に導入するか、あるいはその脂肪族性基の樹脂分子中の含有量を増加させることにより、屈折率を小さくすることができる。
【0022】
上記コア2の形成とともに、上記アンダークラッド層1の所定位置となる両端部分〔図1(b)参照〕にアライメントマーク1aを形成する。上記アライメントマーク1aの形状としては、特に限定するものではなく、アライメントマークとして視認することができるものであればよい。また、上記アライメントマーク1aの形成方法としては、例えば、感光性樹脂材料(例えば、コア2形成材料)を用いてアプリケーターによりアンダークラッド層1上に塗工し乾燥させる。乾燥後、所定形状のフォトマスクを介して紫外線等の照射線を照射して露光を行なった後、加熱処理を行なうことにより露光部を硬化させる。つぎに、現像液(γ−ブチロラクトン等)を用いて未露光部を現像,水洗して除去し、乾燥することにより所定形状のアライメントマークを形成する。
【0023】
一方、図1(c)に示すように、オーバークラッド層形成用の成形型Mを準備する。上記成形型Mは、例えば、透光性樹脂(例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)と透光性支持板G(例えば、石英ガラス、青板ガラス、ポリカーボネート、アクリル等)とを形成材料とし、オーバークラッド層の形状と同一形状の型部材を用いて型成形することにより、上記透光性樹脂を硬化させ、これを上記透光性支持板Gに固着させることにより作製することができる。上記成形型M〔図1(c)参照〕は、上記透光性樹脂の硬化体20の下面に、上記透光性支持板Gが固着され、上記透光性樹脂の硬化体20の上面に、上記オーバークラッド層3の形状に対応する型面を有する凹部21が2個形成されており、各凹部21の一端部分〔図1(c)では左端部分〕が、レンズ曲面21aに形成されている。
【0024】
そして、上記成形型Mの両端部分には、前記アンダークラッド層1に設けられたアライメントマーク1aに対応するアライメントマーク22が設けられる。上記アライメントマーク22の形状は、前記アンダークラッド層1に設けられたアライメントマーク1aに対応する形状であれば特に限定するものではなく、またその形成方法も前記アライメントマーク1aの形成と同様である。
【0025】
つぎに、上記成形型Mを、その凹部21を上にして、成形ステージ(図示せず)の上に設置し、その凹部21に、オーバークラッド層3〔図5参照〕の形成材料である液状の感光性樹脂3Aを充填する。
【0026】
ついで、図2に示すように、凹部21内に液状の感光性樹脂3Aが充填された成形型M上に、コア2がパターン形成されたアンダークラッド層1を対峙させる。このとき、アンダークラッド層1上に設けられたアライメントマーク1aと成形型Mに設けられたアライメントマーク22とを、成形型M側から矢印L方向にアライメントカメラを用いて、光を照射してアライメントマーク1a,22とが一致することを確認して位置合わせが行なわれる。上記アライメントカメラの光には、一般に、可視光領域の波長400〜700nmの光が用いられる。
【0027】
つぎに、図3に示すように、上記オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3A内に、上記アンダークラッド層1の表面にパターン形成されたコア2を浸した状態で、そのコア2を成形型Mの凹部21に対して位置決めし、上記アンダークラッド層1を上記成形型Mに押圧する。
【0028】
上記位置決めしてアンダークラッド層1を成形型Mに押圧する際の荷重は、例えば、49〜980Nの範囲内に設定される。ここで、上記成形型Mの凹部21の形成部分は、樹脂製であることから、耐圧性のあるものとなっている。そのため、上記のようにアンダークラッド層1を成形型Mに押圧して密着させることができ、ばりの形成を防止することができる。
【0029】
つぎに、図4〔図3とは上下を逆に図示している〕に示すように、紫外線等の照射線を、上記成形型Mを通して上記感光性樹脂3Aに照射することにより、その感光性樹脂3Aを露光する。これにより、上記感光性樹脂3Aが硬化し、一端部分がレンズ部3aに形成されたオーバークラッド層3が形成される。なお、紫外線等の照射による露光に際しては、金属製基板10は作業ステージ(図示せず)に吸着固定される。上記オーバークラッド層3の厚み(アンダークラッド層1の表面からの厚み)は、例えば、25〜1500μmの範囲内に設定される。
【0030】
そして、上記成形型Mから、上記オーバークラッド層3を、上記金属製基板10,アンダークラッド層1およびコア2と共に脱型し、図5に示すように、金属製基板10の表面に形成された、アンダークラッド層1とコア2とオーバークラッド層3とからなる光導波路を得る。この実施の形態では、2個の光導波路が形成されているが、一般に、2個以上の複数個の光導波路が形成され、光導波路を使用する際には、個々の光導波路が切り出され各種用途に供される。
【0031】
さらに、上記オーバークラッド層3の脱型前または脱型後に、必要に応じて、加熱処理(例えば、70〜90℃程度)が適宜行なわれる。また、上記金属製基板10は、必要に応じて、アンダークラッド層1から剥離してもよい。
【0032】
なお、上記実施の形態では、オーバークラッド層3の一端部分をレンズ部3aに形成したが、他端部分と同様に平面状に形成してもよい。
【0033】
《光導波路の用途》
上記光導波路は、例えば、L字板状に形成することにより、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段(位置センサ)として用いることができる。すなわち、上記L字板状の光導波路において、複数のコア2を、上記L字板状の角部から内側端縁部に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成する。このようなL字板状の光導波路を2個作製する。そして、一方の光導波路の角部の外側に、発光素子を光結合し、他方の光導波路の角部の外側に、受光素子を光結合する。そして、それら光導波路を、タッチパネルの四角形のディスプレイの画面周縁部に沿って設置すると、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段として用いることができる。
【実施例】
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1〕
〈アンダークラッド層形成用ワニスの調製〉
脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂をベースとした感光性ワニス中の固形エポキシ樹脂成分100重量部に対して、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)0.2重量部を添加して、80℃の加熱下にて撹拌することにより染料成分を完全に溶解した。このようにして下記に示す各成分からなるアンダークラッド層形成用ワニスを調製した。
(アンダークラッド層形成用ワニス)
エポキシ樹脂(ダイセル社製、EHPE−3150)75重量部
エポキシ樹脂(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部
紫外線吸収剤(チバジャパン社製、TINUVIH479)5重量部
光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部
溶媒(和光純薬社製、シクロヘキサノン)70重量部
黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)0.2重量部
【0036】
〈アンダークラッド層の作製〉
得られた上記ワニスをスピンコーターを用いて、SUS基材(厚み50μm)上に塗工し(5000rpm×10秒)、乾燥炉内にて150℃で3分間乾燥を行なった。得られた未硬化のアンダークラッド層をUV照射機にて〔B線、1000mJ(365nm)〕露光することによりアンダークラッド層を作製した(膜厚15μm)。露光後に加熱は行なわず、露光時に生じる熱によりエポキシ基の重合反応を進行させた。
【0037】
〈アライメントマークの作製〉
作製されたアンダークラッド層上に、アプリケーターを用いて下記に示すコアワニスを塗工し(アプリケーターギャップ約100μm)、乾燥炉内にて150℃で3分間乾燥を行なった。乾燥後、フォトマスクを介して露光(I線、3000mJ)を行なった後、120℃×10分間の加熱処理を行なった。つぎに、スプレー現像機によりγ−ブチロラクトンにて現像,水洗して未露光部を除去し、乾燥することによりアンダークラッド層上にアライメントマークを作製した。
(コアワニス)
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、157S70)85重量部
エポキシ樹脂(日油社製、マープルーフG−0250SP)10重量部
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)5重量部
光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部
溶媒(和光純薬社製、乳酸エチル)55重量部
【0038】
〔実施例2〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)の配合量を0.4重量部に変えた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0039】
〔実施例3〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて赤色染料(有本化学社製、Plast red8630)0.4重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0040】
〔実施例4〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて赤色染料(有本化学社製、Plast red8630)1.2重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0041】
〔実施例5〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて緑色染料(有本化学社製、Plast green8620)0.3重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0042】
〔実施例6〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて緑色染料(有本化学社製、Plast green8620)0.5重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0043】
〔比較例1〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)の配合量を0.1重量部に変えた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0044】
〔比較例2〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて赤色染料(有本化学社製、Plast red8630)0.1重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0045】
〔比較例3〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)に代えて緑色染料(有本化学社製、Plast green8620)0.1重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0046】
〔比較例4〕
アンダークラッド層形成用ワニスにおいて、黄色染料(有本化学社製、Plast yellow8070)の配合量を0.14重量部に変えた。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0047】
〔比較例5〕
染料を用いなかった。それ以外は実施例1と同様にしてアンダークラッド層およびアライメントマークを作製した。
【0048】
上記のようにして作製した実施例品および比較例品について、下記に示す特性を測定,評価した。その結果を後記の表1に併せて示す。
【0049】
〔吸光度〕
SUS基材上に、厚み15μmにて作製したアンダークラッド層を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V−670)にて積分球を用いた反射モードにて吸光度を測定し、評価した。なお、ターゲットとする波長は、黄色染料は青色光源(470nm)、赤色染料は緑色光源(525nm)、緑色染料は赤色光源(660nm)とし、各染料を使用した際に使用する光源波長における吸光度で評価した。
【0050】
〔視認性〕
アンダークラッド層側から、画像処理システム(カメラ含む、マニュファクチャリングシステム、シャープ社製、IV−S210X)を用いて、その光(下記の表1に示す光源からの波長の光)を照射してアライメントマークの視認性を目視により確認し評価した。その結果、SUSの映り込みが抑制され、アライメントマークが通常通り鮮明に確認されたものを○、SUSの映り込みによりアライメントマークの視認が困難となったものを×として評価した。
【0051】
〔光導波路の伝播損失〕
得られた実施例品および比較例品について、カットバック法を用いて長さ5cmの波長850nmにおける伝播損失(dB/5cm)を測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記結果から、実施例にて作製されたアンダークラッド層は伝播損失を大きく損なうことなく、アライメントカメラによるアライメントマークの視認性が良好であった。これに対して、比較例品は、いずれもアライメントカメラによるアライメントマークの視認性に劣るものであった。
【0054】
〈光導波路の作製〉
つぎに、光導波路を作製した。すなわち、図1(c)に示す、オーバークラッド層形成用の、透光性樹脂製(シリコーン樹脂)の硬化体20と石英ガラス板Gからなる成形型Mを準備するとともに、上記各実施例にて準備したアンダークラッド層形成用ワニス(オーバークラッド層形成にも使用)およびコアワニスを用いて前述の実施の形態での光導波路の製法に基づき、光導波路(図5参照)を作製した。その際、アライメントカメラ(表1に示す各光源からの波長の光を使用)によるアライメントマークの視認が良好であったため、作業性良く光導波路を製造することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光導波路の製法は、光通信,光情報処理,タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段(位置センサ)等に用いられる光導波路の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 アンダークラッド層
1a,22 アライメントマーク
2 コア
3 オーバークラッド層
M 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製基板の表面にアンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層表面にコアをパターン形成する工程と、上記アンダークラッド層の所定位置にアライメントマークを形成する工程と、オーバークラッド層の形状に対応する型面を有する凹部が形成され、上記アンダークラッド層に形成されたアライメントマークに対応するアライメントマークが所定位置に形成された成形型を準備する工程と、この成形型を、上記コアおよびアンダークラッド層が形成された金属製基板に対面させ、上記対応する一対のアライメントマークを基準に金属製基板と成形型を位置合わせする際に、成形型側から波長400〜700nmの光を照射しその照射光を利用して位置合わせする工程と、上記コアを被覆した状態でオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層が、波長400〜700nmの光を吸収する染料を含有し、かつ上記位置合わせに使用する波長400〜700nmの光に対して吸光度0.24以上の特性を有するものであることを特徴とする光導波路の製法。
【請求項2】
上記位置合わせが、アライメントカメラを用いて行なうものである請求項1記載の光導波路の製法。
【請求項3】
上記成形型が透光性樹脂製のものであり、上記アライメントマークを基準に金属製基板と成形型とを位置合わせする工程が、透光性樹脂製の成形型側の裏側から、その成形型を通して、アライメントカメラによって両者のアライメントマークを確認し合致させて行なわれ、かつ上記オーバークラッド層を形成する工程が、上記透光性樹脂製の成形型の凹部内に、オーバークラッド層形成用の感光性樹脂を充填し、その感光性樹脂内に上記コアを埋めた状態で、上記成形型を通して上記感光性樹脂を露光し硬化させてオーバークラッド層に形成することにより行なわれる請求項1または2記載の光導波路の製法。
【請求項4】
上記コアの先端部を被覆するオーバークラッド層部分に対応する、上記成形型の凹部の型面部分がレンズ曲面に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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