説明

光弾性定数が低いポリカーボネート樹脂および光学成形体

【課題】屈折率とアッベ数のバランスが良好であり、光弾性定数が低く、耐熱性、成形性が良好なポリカーボネート樹脂および光学成形品の提供。
【解決手段】主たる繰り返し単位が、フルオレン構造を有する特定のフルオビスフェノール化合物からなるカーボネート前駆物質(A)と繰り返し単位(B)からなり、それらのモル比が(A/B)が1/99以上30/70以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。およびこのポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率とアッベ数とのバランスが良好であり、光弾性定数が低く、耐熱性、成形性に優れるポリカーボネート樹脂および光学成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂(以下、PCと称することがある)は、ビスフェノールを炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネート樹脂(BPA−PC)は、透明性、耐熱性に優れ、また耐衝撃性等の機械特性に優れた性質を有することから多くの分野に用いられている。各種レンズ、光ディスク等の光学分野においては、その耐衝撃性、透明性等の特性が注目され、光学用途材料として重要な位置を占めている。
【0003】
特にレンズ分野において、熱可塑性樹脂であるPCはその生産性および加工性の良さから注目を浴びており、これまでプラスチックレンズの材料として主流を占めてきたCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に代表される熱硬化性樹脂の代替として需要が増大し、例えば、眼鏡レンズでは、BPA−PCの優れた靭性が、他の材料よりも高い安全性を与えるものとして広く利用されている。
しかしながら、BPA−PCは屈折率は1.585と高いがアッベ数が30と低いため、色収差の問題が出やすく、屈折率とアッベ数のバランスが悪いという問題がある。また、光弾性定数が高く、成形品の光学歪みが大きいという問題がある。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂の問題を解決するために、芳香族ジオールと脂肪族ジオールとの共重合ポリカーボネート樹脂が提案されている。例えば、脂肪族ジオールにスピログリコールを用いたポリカーボネート樹脂は、光弾性定数は低減された。しかし、屈折率とアッベ数のバランスが悪いという問題がある(特許文献1参照)。脂肪族ジオールにトリシクロデカンジメタノールを用いたポリカーボネート樹脂は、屈折率とアッベ数のバランスが優れているが、ガラス転移温度が低いため耐熱性に劣り、また光弾性定数の低減が十分ではないという問題がある(特許文献2、3参照)。また、脂肪族ジオールにシクロヘキサンジメタノールを用いたポリカーボネート樹脂についても、屈折率とアッベ数のバランスが優れているが、ガラス転移温度が低いため耐熱性に劣り、また光弾性定数の低減が十分ではないという問題がある(特許文献4参照)。さらに、脂肪族ジオールにイソソルビドを用いて芳香族ジオールにビスフェノールAを用いたポリカーボネート樹脂は、屈折率とアッベ数のバランスが優れ、耐熱性も優れているが、光弾性定数が高いという問題がある(特許文献5参照)。
【0005】
一方、芳香族ジオールに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを用いて脂肪族ジオールと共重合させたポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、耐熱性にも優れていることが記載されている(特許文献6参照)。しかし、特許文献6には、屈折率とアッベ数とのバランスについては記載されておらず、しかも脂肪族ジオールに特定の割合でイソソルビド等を用いた際の記載もされていなかった。
その為、屈折率とアッベ数のバランスが良好で、光弾性定数が低く、耐熱性、成形性に優れるポリカーボネート樹脂および光学成形体は未だ提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−120777号公報
【特許文献2】特開平01−066234号公報
【特許文献3】特開平11−228683号公報
【特許文献4】特開2003−90901号公報
【特許文献5】特開2009−62501号公報
【特許文献6】特開2004−67990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、屈折率とアッベ数のバランスが良好であり、光弾性定数が低く、耐熱性、成形性が良好なポリカーボネート樹脂および光学成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、フルオレン構造を有する特定のフルオビスフェノール化合物から誘導される繰り返し単位(A)(下記式(A))と特定のエーテルジオールから誘導される繰り返し単位(B)(下記式(B))を特定の割合で構成することで、屈折率とアッベ数とのバランスが良好であり、光弾性定数が低く、耐熱性、成形性が良好なポリカーボネート樹脂および光学成形体が得られることを究明し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の通りである。
1.主たる繰り返し単位が下記式
【化1】

[式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して1〜4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して1以上の整数を示す。]
で表される繰り返し単位(A)と下記式
【化2】

で表される繰り返し単位(B)であり、それら繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が1/99以上30/70以下のポリカーボネート樹脂。
【0010】
2.繰り返し単位(A)が下記式
【化3】

で表される繰り返し単位(A1)であり、および繰り返し単位(B)が下記式
【化4】

で表される繰り返し単位(B1)である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
【0011】
3.屈折率が1.510以上1.580以下の範囲であり、且つアッベ数が32以上60以下の範囲である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
4.上記1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。
5.上記1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂は、フルオレン構造を有する特定のフルオビスフェノール化合物と特定のエーテルジオールとをカーボネート前駆物質と特定の割合で反応させることで、屈折率とアッベ数とのバランスが良好で、光弾性定数が低く、耐熱性が良好である特性を有することが可能となった。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることで、屈折率とアッベ数とのバランスが良好で、光弾性定数が低く、耐熱性が良好である特性示す光学成形体を提供することが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が、単位(A)と繰り返し単位(B)とから構成される。
【0014】
(繰り返し単位(A))
本発明にかかる繰り返し単位(A)は、前記式(A)に示したように、フルオレン構造を有するフルオビスフェノール化合物から誘導されるものである。前記式(A)中、このR1、R2は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)が好ましい。さらに好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)である。また、R及びRは、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基である。なお、R及びRは互いに同一又は異なるアルキレン基である。また、p及びqは、それぞれ−(R−O)−及び−(O−R)−の繰り返しの数を表す。p及びqは、同一又は異なり、1以上の整数であり、例えば、1〜5、好ましくは1〜3、特に好ましくは1である。p及びqが0では、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)と特定の割合で構成した際にガラス転移温度が高くなり成形性に問題がある。具体的には、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロペニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フルオロフェニル]フルオレン、及びこれらの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類、p及びqが2以上である9,9−ビス[ヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)フェニル]フルオレン類等から誘導される繰り返し単位が例示される。これらのなかでも9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンから誘導される繰り返し単位は、屈折率が高く流動性に優れるため好ましい。なかでも特に9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)から誘導される繰り返し単位(前記式(A1))は、屈折率が高く光弾性定数が低いために好ましい。
【0015】
(繰り返し単位(B))
本発明にかかる繰り返し単位(B)は前記式(B)に示したように、エーテル基を有する脂肪族ジオールから誘導されるものである。前記式(B)は、立体異性体の関係にある下記式
【化5】

で表される繰り返し単位(B1)、(B2)および(B3)が例示される。これらは、糖質由来のエーテルジオールであり、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。繰り返し単位(B1)、(B2)および(B3)は、それぞれイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドと呼ばれる。イソソルビドは、でんぷんから得られるDーグルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
【0016】
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドのなかでも特に、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)から誘導される繰り返し単位は、製造の容易さ、耐熱性に優れることから好ましい。
【0017】
(組成)
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とからなり、それらのモル比(A/B)は、1/99以上30/70以下である。モル比(A/B)が1/99以上では、屈折率が高くなり好ましい。モル比(A/B)が30/70以下では、光弾性定数が低く、またアッベ数が32以上となり好ましい。アッベ数が下限以上では、レンズとして使用した際に色収差が少なくなるため好ましい。好ましくは、主たる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)は、5/95以上24/76以下であり、さらに好ましくは、主たる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)は、10/90以上23/77以下である。モル比(A/B)は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。なお、本発明における主たる繰り返し単位とは、繰り返し単位(A)及び(B)の合計が全繰り返し単位を基準として90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%である。
【0018】
(比粘度:ηSP
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.15以上1.50以下である。比粘度が下限以上では強度等が向上し、上限以下では成形加工特性が優れる。好ましくは、0.20以上1.20以下であり、特に好ましくは、0.20以上1.00以下である。本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してよい。
【0019】
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0020】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
【0021】
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは140以上170℃以下、より好ましくは140以上160℃以下である。Tgが下限以上であると、光学成形体として使用した際に、耐熱安定性が良好とであり好ましい。またTgが上限以下では、成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0022】
(光弾性定数)
本発明のポリカーボネート樹脂の光弾性定数の絶対値は、25×10−12Pa−1以下、より好ましくは23×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは22×10−12Pa−1以下である。絶対値が25×10−12Pa−1以下では、光学成形体として用いる際に、応力による複屈折が発生しづらく、光学歪みが少なくなるため好ましい。光弾性定数は全繰り返し単位を基準として繰り返し単位(B)の組成を増加させることで低減することができる。光弾性定数は未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し測定する。
【0023】
(屈折率とアッベ数)
本発明のポリカーボネート樹脂は、屈折率が1.510以上1.580以下の範囲であり、かつアッベ数が32以上60以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは屈折率が1.520以上1.570以下の範囲であり、かつアッベ数が34以上60以下の範囲であり、さらに好ましくは屈折率が1.530以上1.570以下の範囲であり、かつアッベ数が35以上55以下の範囲である。屈折率は、全繰り返し単位を基準として繰り返し単位(A)の組成を増加させることで高くすることができる。一方、アッベ数は、全繰り返し単位を基準として繰り返し単位(B)の組成を増加させることで高くすることができる。本発明における屈折率とアッベ数のバランスに優れるとは、具体的に屈折率が1.51以上でかつアッベ数が32以上のことであり、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の組成をコントロールすることで達成することができる。
【0024】
(えんぴつ硬度)
本発明のポリカーボネート樹脂は、えんぴつ硬度がHB以上であることが好ましい。耐傷性に優れるという点で、HB以上であることが好ましく、F以上であることがさらに好ましい。えんぴつ硬度は全繰り返し単位を基準として繰り返し単位(B)の組成を増加させることで硬くすることができる。本発明において、えんぴつ硬度とは、本発明の樹脂を特定のえんぴつ硬度を有する鉛筆で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことであり、JIS K−5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いるえんぴつ硬度を指標とすることが好ましい。えんぴつ硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
【0025】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0026】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0027】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
【0028】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0029】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0030】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0031】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0032】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
【0033】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0034】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0035】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
また、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0036】
<光学成形体>
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、成形性および耐熱性に優れているので種々の成形体として利用することができる。殊に光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学成形体として有利に使用することができる。これらのうち、光学レンズとして特に有利に使用することができる。
【0037】
<光学フィルム>
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムは、具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられ、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムに好適に用いることができる。
光学フィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。なかでも、溶液キャスト法、溶融押出法が好ましく、特に生産性の点から溶融押出法が好ましい。
【0038】
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押出し、冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、180〜350℃の範囲であり、200℃〜320℃の範囲がより好ましい。180℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく好ましくない。また、350℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。
【0039】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト法も適用することが出来る。溶液キャスト法の場合は、溶媒としては塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。溶液キャスト法で獲られるフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。残留溶媒量が2重量%を超えるとフィルムのガラス転移温度の低下が著しくなり耐熱性の点で好ましくない。
【0040】
本発明のポリカーボネートを用いてなる未延伸フィルムの厚みとしては、30〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜300μmの範囲である。かかる未延伸フィルム状物をさらに延伸して位相差フィルムとする場合には、光学フィルムの所望の位相差値、厚みを勘案して上記範囲内で適宜決めればよい。
【0041】
<光学レンズ>
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズは、眼鏡レンズ、カメラレンズ、双眼鏡レンズ、顕微鏡レンズ、プロジェクターレンズ、携帯電話用レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラレンズ、fθレンズ、ヘッドランプレンズまたはピックアップレンズ等の用途が挙げられる。
【0042】
本発明のポリカーボネート樹脂からなるペレット、パウダー、フレーク等の成形材料から光学レンズを成形する方法としては、それ自体公知の方法を採用することができる。具体的には、射出成形、圧縮成形、押出成形または射出圧縮成形等各種の成形方法により成形される。光学レンズの成形方法としては、射出圧縮成形が光学歪みの少ないレンズを成形できるため最も好ましい方法である。
射出圧縮成形において、シリンダー温度は200〜300℃、金型温度は40〜120℃が好ましい。成形に当たって、必要に応じて離型剤を配合する事ができる。
【0043】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0044】
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
【0045】
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
【0046】
前述した比粘度、ガラス転移温度、光弾性定数、えんぴつ硬度、屈折率、およびアッベ数を満足する特性を持つポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズは、光学特性及び物理特性に優れているので、工業的にも好適である。
【0047】
本発明の光学レンズは必要に応じてその表面にハードコート(硬化)層、反射防止コート層または防曇コート層などの後加工処理をして用いることができる。
本発明のレンズ基材表面に形成されるハードコート層としては、熱硬化性または活性エネルギー硬化性のいずれも好ましく用いられる。熱硬化性ハードコート材料としては、オルガノポリシロキサンなどのシリコーン系樹脂およびメラミン系樹脂等が挙げられる。かかるシリコーン系樹脂については、特開昭48−056230号、特開昭49−014535号、特開平08−054501号および特開平08−198985号公報等に記載されている樹脂を用いることができる。
【0048】
メラミン系樹脂としては、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミンまたはイソブチル化メチロールメラミン等のメラミン樹脂に架橋剤、硬化剤等からなるコーティング組成物を乾燥および/または加熱硬化させて得られるハードコート層である。
【0049】
コーティング組成物には、上記成分以外に得られる硬化膜の物性を損なわない限り、他の成分を添加できる。例えば、反応を促進させるため硬化剤を、種々の基材との屈折率を合わせるために微粒子状無機物を、また塗布時における濡れ性や硬化膜の平滑性を向上させる目的で各種界面活性剤を含有させることができる。
また、着色剤(染料および顔料)や充填剤を分散させたり、有機ポリマーを溶解させて塗膜を着色させることが可能である。さらに紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加も可能である。
【0050】
コーティング組成物の基材(プラスチックレンズ)への塗布手段としては、特に制限されず、例えばディップ法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、フローコート法、ロールコート法等の公知の方法が採用できる。面精度の点からディップ法、スピンコート法が好ましく用いられる。
【0051】
必要に応じて前記硬化層上に単層または多層の反射防止層を形成させても良い。反射防止層の構成成分としては、無機酸化物、フッ化物、窒化物などの従来から公知のものが用いられる。具体的には、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化マグネシウム、窒化ケイ素等が挙げられる。その形成方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等が挙げられる。この反射防止層を設けることにより、反射防止性能が向上する。さらに前記硬化層または反射防止層の上にさらに防曇層を形成させてもよい。
【実施例】
【0052】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂および評価方法は以下のとおりである。
【0053】
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0054】
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0055】
3.ガラス転移温度測定
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0056】
4.屈折率およびアッベ数
厚み100μmの未延伸フィルムを用いて(株)アタゴ製多波長アッベ屈折計DR−M2により測定した。
【0057】
5.光弾性定数測定
未延伸フィルムを製膜方向に50mm、それと直交する幅方向に10mmサイズに切り出し、そのサンプルを用いて光弾性定数を測定した。日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し光弾性定数を測定した。
【0058】
6.えんぴつ硬度
厚み2mmの成型試験片を用いて、JIS K5600の基図板試験方法によって測定した。
【0059】
7.生物起源物質含有率(植物由来度)
ASTM D6866 05に準拠し、放射性炭素濃度(percent moder
n carbon;C14)による生物起源物質含有率試験から、生物起源物質含有率を
測定した。
【0060】
8.光学歪み
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形し、レンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は、◎:殆ど光漏れがない、○:僅かに光漏れが認められる、×:光漏れが顕著であるとした。
【0061】
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
イソソルビド(以下ISSと略す)361部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下BPEFと略す)421部、ジフェニルカーボネート749.7部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10−2部と水酸化ナトリウム0.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の2倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
【0062】
<光学フィルムの製造>
次に、(株)テクノベル製15mmφ二軸押出混練機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート樹脂を260℃でフィルム成形することにより透明な厚み100μmの未延伸フィルムを得た。得られたフィルムより50mm×10mmサイズのサンプルを切り出し、そのサンプルを用いて光弾性定数、屈折率、アッベ数、えんぴつ硬度を測定し、表1に記載した。
【0063】
<光学レンズの製造>
シリンダ温度270℃、金型温度90℃の条件にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形し、光学歪みを評価し、表1に記載した。
【0064】
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS376部、BPEF376部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0065】
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS381部、BPEF361部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0066】
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS426.1部、BPEF226部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0067】
[実施例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS444.2部、BPEF180.6部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0068】
[実施例6]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS451.2部、BPEF150.5部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、シリンダ温度を275℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0069】
[実施例7]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS476.3部、BPEF75.2部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、シリンダ温度を275℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0070】
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS250.6部、BPEF752.3部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0071】
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS326部、BPEF527部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0072】
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS、BPEFの量をISS501.3部、BPEF0部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、シリンダ温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0073】
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPEFの代わりにビスフェノールA(以下BPAと略す)を用い、ISS、BPAの量をISS340.9部、BPA250部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0074】
[比較例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPEFの代わりに9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)を用い、ISS、BCFの量をISS441部、BCF156部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定した。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、実施例1と同様に光学レンズの作成を試みたが、溶融粘度が高く、シリンダ温度が310℃、金型温度100℃での成型となったため、気泡が発生し、成型片は得られなかった。結果を表1に示した。
【0075】
[比較例6]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISSの代わりに3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(以下SPGと略す)を用い、SPG、BPEFの量を以下SPG782部、BPEF376部に変更した他は、実施例1と全く同様の操作を行い、該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定た。また、実施例1と同様にフィルムを作成し評価した。また、シリンダ温度を250℃、金型温度を70℃に変更した以外は実施例1と同様に光学レンズを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1中のBPEFは9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン誘導体、BCFは9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン誘導体、BPAは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン誘導体、ISSはイソソルビド誘導体、SPGはスピログリコール誘導体を示し、繰り返し単位のジオール成分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位が下記式
【化1】

[式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して1〜4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して1以上の整数を示す。]
で表される繰り返し単位(A)と下記式
【化2】

で表される繰り返し単位(B)からなり、それら繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が1/99以上30/70以下のポリカーボネート樹脂。
【請求項2】
繰り返し単位(A)が下記式
【化3】

で表される繰り返し単位(A1)であり、および繰り返し単位(B)が下記式
【化4】

で表される繰り返し単位(B1)である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
屈折率が1.510以上1.580以下の範囲であり、且つアッベ数が32以上60以下の範囲である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
請求項1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形体。
【請求項5】
請求項1記載のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学レンズ。

【公開番号】特開2011−236336(P2011−236336A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109225(P2010−109225)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】