説明

光情報記録媒体用粘着シート、光情報記録媒体ならびに光情報記録媒体再生方法および装置

【課題】再生装置の有する光学系解像度より短い長さのマークを再生することができ、かつ使用状況に応じた時の外部環境の変化に対して安定している光情報記録媒体の製造に使用される粘着性の透明樹脂層を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】再生時に照射される再生用の光によって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号が再生され得る光情報記録媒体D1を構成する粘着シート1であって、光情報記録媒体D1の情報記録層3上に設けられる粘着性の透明樹脂層11を有し、透明樹脂層11は、酸性基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主成分であり、23℃における貯蔵弾性率が1.5×10Pa以下であり、かつゲル分率が68質量%以上である光情報記録媒体用粘着シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を光学的に記録または再生する光情報記録媒体、当該光情報記録媒体の製造に使用される粘着シート、ならびに当該光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生方法および光情報記録媒体再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光情報記録媒体においては、映像等の膨大な情報量の処理のために、ますます情報記録密度を増加させることが求められている。その解決法の一つとして超解像技術がある。超解像技術とは、再生装置が有する光学的解像度限界(レーザ波長及び光学系の開口数によって決まる)以下の長さのマーク(プリピットや記録型の光情報媒体に情報を記録する場合に生じる記録マークの意)を再生する技術であり、これによって短い長さのマークを使用した記録が可能となるので、実質的な情報記録密度が増加する。
【0003】
そのため、従来から、再生装置の有する光学系解像度より短い長さのマークを再生するための多くの光情報記録媒体(以下「超解像媒体」という。)が提案されてきた。その一例として、特許文献1および特許文献2には、光情報記録媒体にマスク層を形成して実質的にスポット径を小さくする手法が記載されている。
【0004】
具体的には、特許文献1には、光ディスク媒体の基板上に形成された凹凸状のプリピットによる反射率変化を用いて記録再生を行う光ディスク装置において、信号が記録されている媒体層の上(ディスク面における対物レンズからレーザー光が照射される側)に、常温では再生レーザ光を吸収し、再生レーザパワーによる温度上昇によって再生レーザ光を吸収しなくなり、再生集光スポット通過後に再び温度低下により再生レーザ光を吸収するような温度依存性光シャッタ層を形成することが開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、記録材料の相変化による反射率変化を用いて情報の記録再生を行う光ディスク装置において、情報が記録されている媒体層の上(ディスク面における対物レンズからレーザ光が照射される側)に、常温では再生レーザ光を吸収し、再生レーザパワーによる温度上昇によって再生レーザ光を吸収しなくなり、再生集光スポット通過後に再び温度低下により再生レーザ光を吸収するような温度依存性光シャッタ層を形成することも開示されている。
【0006】
一方、特許文献2には、基板上に記録膜を有する光情報記録媒体において、記録膜に、読出光又は記録光が入射する手前の位置に、読出光が照射される前は光を透過しない発色状態にあり、読出光の照射により照射部分の中央部分が温度上昇するとともに部分的に消色して光透過性になるサーモクロミズム物質を主成分として含有する光シャッタ層を設けることが開示されている。
【0007】
これらの手法におけるマスク層(光シャッタ層)を形成するサーモクロミック材料や相変化材料等の物質は、ある一定以上の温度に昇温したときに融解することでマスク効果を発揮するものである。融解した状態の物質は、流動性が高くなり、初期状態の組成や形状が変化しやすい。このため、ある一定以上の温度に昇温したときにマスク効果を発揮するマスク層を有する光情報記録媒体では、繰り返し記録や再生を行うと、マスク層の組成や形状のずれによりマスク効果が徐々に小さくなり、数千回程度の繰り返しによってマスク効果がほとんどなくなるという問題がある。したがって、上記従来の光情報記録媒体は、耐久性が不十分である。
【0008】
この問題を解決する方法として、特許文献3および特許文献4には、マスク層に、温度の変化に応じて反射率及び/又は透過率が変化する金属酸化物を用いた発明が開示されている。この特許文献3および特許文献4には、記録や再生時の温度上昇により融解を生じない金属酸化物(好ましくは酸化亜鉛)等の物質でマスク層を形成することにより、繰り返し記録や再生を行っても、マスク効果が低下しない旨が記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、マスク層としての情報記録層に接する層に関しては、昇温を促進させるために熱伝導率が低い方が好ましく、光透過性基材フィルムと情報記録層との間に透明樹脂層を介在させて、両者を接合することが好ましい旨が記載されている。
【0010】
ところで、特許文献5に記載の光情報記録媒体としては、光透過性基材フィルムと、透明樹脂層と、情報記録層と、基板とが積層され、情報記録層を構成するマスク層は常に透明樹脂層に接することとなる。このため透明樹脂層の性能としては、情報記録層を構成する金属酸化物との接着力を十分に維持しつつ、凹凸を有する情報記録層に対する埋め込み性(追従性)を有し、さらに金属酸化物に対し悪影響を及ぼさないことが求められる。
【0011】
一般的に金属との接着力を向上させる手段として、透明樹脂層の主成分として酸性基を含有させる方法が用いられる。しかしながら、この場合、特に高温多湿下において、透明樹脂層に接触している金属酸化膜に腐食が生じてしまう。一方、酸性基を含有させなければ、腐食性は抑えられるものの、その反面金属に対する接着力が劇的に低下してしまう。
【0012】
この問題を改良する方法として、特許文献6には、カルボキシル基含有共重合性単量体を含有せず、かつ窒素原子含有共重合性単量体を含有する粘着剤が提案されている。しかし、特許文献6にて合成された(メタ)アクリル酸エステル共重合体については、透明樹脂層の物性挙動に関して一切触れられておらず、実施例に挙げられた構成では、急激な環境変化において情報記録層を形成する金属酸化物の膜にクラックが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−12673号公報
【特許文献2】特開平5−12715号公報
【特許文献3】特開2004−220747公報
【特許文献4】特開2004−362718公報
【特許文献5】特開2006−302494公報
【特許文献6】特開2005−325250公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、再生装置の有する光学系解像度より短い長さのマーク(プリピットや記録型の光情報媒体に情報を記録する場合に生じる記録マークの意)を再生することができ、かつ使用状況に応じた時の外部環境の変化に対して安定している光情報記録媒体、当該光情報記録媒体の製造に使用される粘着性の透明樹脂層を有する粘着シート、ならびに当該光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生方法および光情報記録媒体再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、第1発明群は、再生時に照射される再生用の光によって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号が再生され得る光情報記録媒体を構成する粘着シートであって、前記光情報記録媒体の情報記録層上に設けられる粘着性の透明樹脂層を有し、前記透明樹脂層は、酸性基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主成分であり、23℃における貯蔵弾性率が1.5×10Pa以下であり、かつゲル分率が68質量%以上であることを特徴とする光情報記録媒体用粘着シートを提供する(発明1)。
【0016】
なお、本明細書における「粘着シート」は、粘着性の透明樹脂層を含む層であり、単体でもよいし、複数層からなってもよい。また粘着シートの形状としては特に制限はなく、透明樹脂層とそれ以外の基材(例えば保護シート)を積層させてロール形状としたものや、2層の剥離フィルムに挟持された基材がない形状のものであってもよい。また、本明細書における「情報記録層」は、再生装置の有する光学系解像限界より短い長さのマークを再生させる機能を有する情報記録層であって、金属膜および/または金属酸化物膜を含む層であり、単層でもよいし、複数層からなってもよい。また、本明細書における「光情報記録媒体」とは、光学的に情報を記録・再生することのできる媒体をいい、主として再生専用型、追記型または書換え型のディスク状の媒体が該当する。具体的には、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、Blu−ray Disc等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
上記発明(発明1)によれば、上記条件を満たす透明樹脂層を有することで、得られる光情報記録媒体が高温および/または多湿下におかれたとしても、あるいは急激な温度変化および/または湿度変化が生じた場合であっても、当該透明樹脂層に隣接する情報記録層にクラックが発生すること等を防止することができる。したがって、上記発明(発明1)によれば、再生装置の有する光学系解像度より短いマークを再生することができ、かつ外部環境の変化に対して安定している光情報記録媒体を得ることができる。
【0018】
上記発明(発明1)において、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルを単量体成分として含むことが好ましい(発明2)。
【0019】
上記発明(発明1,2)において、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含むことが好ましい(発明3)。
【0020】
上記発明(発明1〜3)においては、保護層をさらに含むことが好ましい(発明4)。
【0021】
第2発明群は、前記光情報記録媒体用粘着シート(発明1〜4)が、情報記録層上に設けられてなる光情報記録媒体を提供する(発明5)。
【0022】
上記発明(発明5)においては、再生時に再生用の光が入射する入射面側から、保護層と、前記透明樹脂層と、前記情報記録層と、基板とが積層されてなることが好ましい(発明6)。
【0023】
第3発明群は、前記光情報記録媒体(発明5,6)を用いることを特徴とする光情報記録媒体再生方法を提供する(発明7)。
【0024】
第4発明群は、前記光情報記録媒体(発明5,6)を用いることを特徴とする光情報記録媒体駆動装置を提供する(発明8)。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、再生装置の有する光学系解像度より短いマークを再生することができ、かつ外部環境の変化に対して安定している光情報記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体の断面図である。
【図3】同実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光情報記録媒体製造シート〕
図1は本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シートの断面図である。本実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シートは、光情報記録媒体における情報記録層を保護するためのものであるが、これに限定されない。
【0028】
図1に示す本実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シート1は、透明樹脂層11と、透明樹脂層11の一方の面(図1中上面)に積層された保護シート(保護層)12と、透明樹脂層11の他方の面(図1中下面)に積層された剥離シート13とからなる。なお、保護シート12は光情報記録媒体における保護層となるものであり、剥離シート13は、光情報記録媒体用粘着シート1の使用時に剥離され、除かれるものである。
【0029】
本実施形態における透明樹脂層11は、光情報記録媒体の基板2上に形成された情報記録層3(図2参照)と、保護シート12とを接着するのに使用される。このため透明樹脂層11は粘着剤からなる層であることが好ましい。この透明樹脂層11は、酸性基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主成分であり、23℃における貯蔵弾性率が1.5×10Pa以下であり、かつゲル分率が68質量%以上であることが必要である。この条件を満たすことで、得られる光情報記録媒体が高温および/または多湿下におかれたとしても、あるいは急激な温度変化および/または湿度変化が生じた場合であっても、透明樹脂層11に隣接する情報記録層3にクラックが発生すること等を防止することができる。したがって、上記透明樹脂層11を有する光情報記録媒体用粘着シート1によれば、外部環境の変化に対して安定している光情報記録媒体を製造することができる。
【0030】
前述の通り、透明樹脂層11は、酸性基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主成分であることを必要とする。(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を構成成分として含む重合体であり、光学用途として優れ、また、単量体の種類、その配合比および架橋度を適宜選択・調整することで、前述の貯蔵弾性率およびゲル分率の条件を満たすことができる。また(メタ)アクリル酸エステル共重合体は酸性基を含有しない。酸性基を含有すると、透明樹脂層11の情報記録層3に対する接着力は向上するが、情報記録層3が腐食し易くなってしまい、その結果読み取りエラーが生じることとなる。
【0031】
透明樹脂層11の23℃における貯蔵弾性率は、1.5×10Pa以下であることを必要とし、好ましくは1.3×10Pa以下である。貯蔵弾性率が1.5×10Paを超えると、得られる光情報記録媒体の環境において急激な温度・湿度変化が生じた場合等に、透明樹脂層11に隣接する情報記録層3にクラックが発生し、光情報記録媒体としての機能を失ってしまう。
【0032】
透明樹脂層11の23℃における貯蔵弾性率の下限は、上記クラック防止の観点からは特に制限されないが、1.0×10Pa以上であることが好ましく、特に1.0×10Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であると、透明樹脂層11に積層された保護シート12の保持性が良好となる。
【0033】
透明樹脂層11のゲル分率は、68質量%以上であることを必要とし、好ましくは74質量%以上である。透明樹脂層11のゲル分率が68質量%未満であると、得られる光情報記録媒体の再生感度が低下することとなる。
【0034】
透明樹脂層11のゲル分率の上限は、上記クラック防止の観点からは特に制限されないが、95質量%以下であることが好ましく、特に85質量%以下であることが好ましい。透明樹脂層11のゲル分率が95質量%を超えると、透明樹脂層11にタックがなくなり、情報記録層3に対する接着力が得られない。
【0035】
このゲル分率は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とする透明樹脂層11を構成する樹脂成分を製造する際の架橋度によって調整することができる。
【0036】
なお、上記貯蔵弾性率およびゲル分率の測定方法は、後述する実施例に示す通りである。
【0037】
次に(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体について説明する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、炭素原子数1〜20のアルキルエステル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、好ましくは炭素原子数1〜12のアルキルエステル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられ、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する全ての単量体に対する上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の比率は、70〜97質量%であることが好ましく、特に75〜95質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率がこの範囲にあると、情報記録層3に圧着した透明樹脂層11が当該情報記録層3の凹凸に良好に追従するため、情報の記録や再生の信頼性が高くなり、また、後述する窒素原子含有共重合性単量体の含有量も確保することができる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、特に(メタ)アクリル酸メチルを単量体成分として含むことが好ましく、アクリル酸メチルを単量体成分として含むことがより好ましい。(メタ)アクリル酸メチルを単量体成分として含むことにより、得られる透明樹脂層11の金属・金属酸化物に対する接着力を向上させることができる。
【0040】
(メタ)アクリル酸メチルとしては、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルを単独で使用することもできるし、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを組み合わせて使用することもできる。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する全ての単量体に対する(メタ)アクリル酸メチルの比率は、1〜40質量%であることが好ましく、特に5〜35質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸メチルの比率がこの範囲にあると、透明樹脂層11の情報記録層3への接着力が良好になる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、構成成分として窒素原子含有共重合性単量体を含むことが好ましい。窒素原子含有共重合性単量体は、極性成分であり、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の金属・金属酸化物に対する接着力を向上させることができる。
【0043】
窒素原子含有共重合性単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリロイルピペリジン等が挙げられ、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する全ての単量体に対する窒素原子含有共重合性単量体の比率は、0.1〜30質量%であることが好ましく、特に0.3〜30質量%であることが好ましく、さらには0.4〜25質量%であることが好ましい。窒素原子含有共重合性単量体の比率がこの範囲であると、透明樹脂層11の情報記録層3に対する接着力がより良好なものとなる。また、窒素原子含有共重合性単量体の比率が30質量%を超えると、透明樹脂層11の情報記録層3に対する埋め込み性(追従性)が悪くなることがある。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、上記(メタ)アクリル酸メチルおよび窒素原子含有共重合性単量体の両者を単量体成分とすることが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、分子内に架橋性官能基を有することが好ましい。架橋性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、グリシジル基、炭素−炭素不飽和結合などが挙げられるが、情報記録層3を腐食しないことから、ヒドロキシ基、グリシジル基および炭素−炭素不飽和結合が好ましい。ヒドロキシ基およびグリシジル基は架橋剤と反応して架橋し、炭素−炭素不飽和結合は、それら相互の付加反応により架橋する。炭素−炭素不飽和結合を付加反応させるためには、電子線や紫外線などの活性エネルギー線を照射する方法等が行われる。なお、カルボキシル基も架橋性官能基であるが、カルボキシル基は酸性基であり、情報記録層3が腐食する原因となるため、カルボキシル基を有する単量体は含まないことが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体にヒドロキシ基またはグリシジル基を導入するには、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内にヒドロキシ基またはグリシジル基を有し(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体とを重合すればよい。分子内にヒドロキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられ、分子内にグリシジル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体に炭素−炭素不飽和結合を有する官能基を導入するには、例えば、分子内に炭素−炭素不飽和結合および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の官能基と反応する官能基を有する化合物(以下、「不飽和結合含有化合物」という)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体とを反応させる方法が挙げられる。不飽和結合含有化合物の官能基および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の官能基は、適宜選定すればよく、それぞれヒドロキシ基、イソシアナート基、グリシジル基などを用いることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の官能基がヒドロキシ基の場合、不飽和結合含有化合物の官能基としてはイソシアナート基を用いればよい。不飽和結合含有化合物の例としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、アリルイソシアナート等のイソシアナート基を有する化合物、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基を有する化合物等が挙げられ、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する全ての単量体に対する上記分子内に架橋性官能基を有する単量体の比率は、0.1〜10質量%であることが好ましく、特に0.2〜5質量%であることが好ましい。上記分子内に架橋性官能基を有する単量体の比率がこの範囲内にあることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を良好に架橋することができ、透明樹脂層のゲル分率を前述した好ましい値にすることができる。なお、架橋性官能基が炭素−炭素不飽和結合の場合、架橋性官能基を有する単量体とは、不飽和結合含有化合物と反応して炭素−炭素不飽和結合が導入された単量体のことをいう。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、所望により、上記単量体以外の単量体を構成成分として含んでもよい。かかる単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチルや(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0051】
以上説明した(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、上記単量体の混合物を原料とし、溶液重合や塊状重合等の任意の公知の重合方法によって製造することができる。重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤や過酸化物系開始剤を挙げることができる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどが挙げられ、過酸化物系開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどが挙げられる。
【0052】
重合開始剤の使用量は、特に制限されることはないが、通常、単量体成分の100質量部に対して0.01〜2質量部である。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは20万〜180万程度であり、より好ましくは50万〜150万である。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、架橋剤によって架橋することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体を架橋することで、透明樹脂層11の強度や保存安定性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の架橋度を調整することにより、透明樹脂層11のゲル分率を制御することができる。
【0055】
架橋剤としては、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているもの、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などの中から、光情報記録媒体の情報記録層3の種類などに応じて適宜選択されるが、中でもポリイソシアナート化合物が好ましい。
【0056】
ポリイソシアナート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアナートもしくはその水素化物、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、トリフェニルメタントリイソシアナート、メチレンビス−ジ−フェニルイソシアナートもしくはその水素化物、ヘキサメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、キシリレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、またはこれらの重合物のように、分子内に2個以上のイソシアナート基を有するものを用いることができる。
【0057】
架橋性官能基が炭素−炭素不飽和結合の場合は、光や熱でラジカルを生成する化合物等の中から、光情報記録媒体の情報記録層3の種類等に応じて適宜選択される。
【0058】
架橋剤の使用量は特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、0.001〜20質量部である。
【0059】
透明樹脂層11を構成する粘着剤は、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体および架橋剤以外にも、酸化防止剤、粘着付与樹脂(石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂等)、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、防錆剤、シランカップリング剤、充填剤等を含有してもよい。
【0060】
酸化防止剤としては、従来公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤等の中から任意のものを適宜選択して用いることができるが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。これら酸化防止剤を添加することで、情報記録層3の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0061】
酸化防止剤の具体例としては、単環フェノール系酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール及びステアリルβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどを、2環フェノール系酸化防止剤として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)及び3,6−ジオキサオクタメチレンビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ5−メチルフェニル)プロピオネート]などを、3環フェノール系酸化防止剤として1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどを、4環フェノール系酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを好ましく挙げることができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
酸化防止剤の使用量は特に限定されないが、透明樹脂層11を構成する粘着剤中、通常、0.005〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。酸化防止剤の使用量が0.005質量%以上であると、情報記録層3の腐食抑制効果が発揮される。一方、10質量%を超えて含有しても、その量の割には効果の向上がみられず、むしろ経済的に不利となる場合がある。
【0063】
透明樹脂層11を構成する粘着剤は、残留溶剤および残留モノマーの合計含有量が100質量ppm以下、特に50質量ppm以下、さらには20質量ppm以下であることが好ましい。このように溶剤およびモノマーの残留量が少ないことで、情報記録層3の腐食をより効果的に抑制することができるとともに、保護シート12や光情報記録媒体の基板2に対する侵食を抑制することができる。
【0064】
透明樹脂層11の厚さは、基板2に形成されている凹凸パターン(プリピットやランド又はグルーブ)の深さ等に応じて適宜決定されるが、通常は5〜60μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
【0065】
本実施形態における保護シート12は、光情報記録媒体における情報記録層3を保護するためのものであり、光情報記録媒体の受光面を構成する。
【0066】
保護シート12の材料としては、光情報記録媒体に使用されるレーザ光の波長域に対し十分な光透過性を有するものである必要があり、一般的には、波長380〜780nmの領域の可視光を透過する光透過性フィルムが用いられる。
【0067】
このような光透過性フィルムとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の透明樹脂からなるフィルムを用いることができる。ただし、保護シート12の線膨張係数は、高温で光情報記録媒体が反りを起こさないよう、基板2の線膨張係数とほぼ同じであるのが好ましい。したがって、基板2がポリカーボネート樹脂からなる場合には、保護シート12も同じポリカーボネート樹脂からなるのが好ましい。
【0068】
上記光透過性フィルムの透明樹脂層11と反対側の表面には、ハードコート層を設けてもよい。このハードコート層を設けることにより、例えば、ドライブの光学ヘッドが保護シート12の表面に接触しても傷が付き難くなる。
【0069】
なお、保護シート12は、表面ができるだけ平坦であって、複屈折が生じ難いものが好ましい。保護シート12に複屈折が生じると、集光したレーザ光の集光度が悪化する。また、厚みむらが存在すると、レーザ光の集光度低下の原因となるため、厚みむらもできるだけ少ない方が好ましい。
【0070】
保護シート12の厚さは、光情報記録媒体の種類や基板2の厚さ等に応じて決定されるが、通常は50〜100μm程度であり、好ましくは60〜90μm程度である。
【0071】
剥離シート13としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、それら樹脂フィルムをシリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、アルキド樹脂系剥離剤等で剥離処理した剥離シートを使用することができる。
【0072】
剥離シート13は、透明樹脂層11に平滑性を付与するために、剥離処理した側(透明樹脂層11と接触する側)の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であるのが好ましい。また、剥離シート13の厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μm程度である。
【0073】
光情報記録媒体用粘着シートの接着力は、後述の酸化亜鉛膜に対する接着力が8.0N/25mm以上であることが好ましく、特に10N/25mm以上であることが好ましい。接着力が8.0N/25mm以上であることにより、透明樹脂層11と情報記録層3との間の接着力が十分なものとなり、両者間での剥離が生じ難くなる。なお、接着力の測定方法は、後述する実施例に示す。
【0074】
本実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シート1の形態は特に限定されず、単体でもよいし、複数層からなってもよい。また粘着シートの形状としては特に制限はなく、透明樹脂層11とそれ以外の基材(例えば保護シート12)を積層させてロール形状としたものや、2層の剥離フィルムに挟持された基材がない形状のものであってもよい。これらのうち、ロール形状とする方法が生産性、粘着シートの厚み精度の面で好ましい。
【0075】
本実施形態に係る光情報記録媒体用粘着シート1の製造方法は特に限定されないが、例えば透明樹脂層11を構成する材料と、所望によりさらに溶媒(例えば酢酸エチル、トルエン、2−ブタノン等)とを含有する塗布剤を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、スピンコーター等の塗工機によって保護シート12上に塗布して乾燥させ、透明樹脂層11を形成した後、その透明樹脂層11の表面に剥離シート13の剥離処理面を重ねて両者を積層することによって、あるいは、上記塗布剤を剥離シート13の剥離処理面に塗布して乾燥させ、透明樹脂層11を形成した後、その透明樹脂層11の表面に保護シート12を積層することによって得られる。透明樹脂層11の乾燥は、70℃以上、好ましくは80〜150℃で10秒〜10分間程度加熱して行うことが好ましい。
【0076】
このようにして得られた光情報記録媒体用粘着シート1は、光情報記録媒体、特に記録・再生に用いる光の波長が395〜432nmである光情報記録媒体に好ましく適用することができる。その場合、剥離シート13を除く光情報記録媒体製造用粘着シート1(保護シート12と透明樹脂層11との積層体)は、波長395〜432nmにおける光線透過率が、85%以上であることが好ましい。光線透過率が85%以上であれば、光情報記録媒体の情報記録層に入射されるレーザ光および情報記録層からの反射光の透過が良好となる。光線透過率は、より好ましくは90%以上である。
【0077】
〔光情報記録媒体〕
図2は、本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体の断面図であり、図3(a)〜(d)は、同実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例を示す図である。
【0078】
図2に示すように、本実施形態に係る光情報記録媒体D1は、再生時に再生用の光が入射する入射面側(図2中、上面側)から、保護シート(保護層)12と、透明樹脂層11と、情報記録層3と、基板2とが積層されて構成される。
【0079】
なお、保護シート12および透明樹脂層11の材料等に関しては、前述した通りである。基板2としては、光情報記録媒体に通常用いられるものを使用することができ、一般的にはポリカーボネートからなり、射出成形等の成形法によって成形することができる。
【0080】
情報記録層3は、再生専用光情報記録媒体、又は記録型光情報記録媒体に適応する層を有する。再生専用光情報記録媒体に適応する層としては、再生光入射面側から順に、酸化亜鉛膜、Ta膜スパッタリング層の2層構造が再生耐久性を含む実用性の観点から好ましい。また、書き換え型や追記録型などの記録型光情報記録媒体では、酸化亜鉛膜とGeSbTeとからなる相変化膜等からなる多層構造が好ましい。しかしながら、本実施形態における情報記録層3の構造は上記に限るものではなく、超解像特性を示す層構造であればよい。
【0081】
基板2は、例えば、厚さ1.1mmのポリカーボネートからなる。基板2の材料及び厚さは、これに限られるものではなく、表面にプリピット又はグルーブ等の凹凸が設けられる基板として使用できる程度の所定の強度があれば良い。具体的には、基板2は、例えばポリオレフィン樹脂、金属等からなっていても良い。さらに、基板2は、多層構造であっても良い。
【0082】
次に、上記光情報記録媒体用粘着シート1を使用した再生専用光情報記録媒体D1(片面1層式)の製造方法の一例について説明する。
【0083】
最初に、図3(a)に示すように、プリピット又はグルーブ等の凹凸パターンを有する基板2を製造する。この基板2の凹凸パターン上には、図3(b)に示すように、情報記録層3を形成する。
【0084】
情報記録層3は、スパッタリングにより基板2の凹凸パターン上にTa(7nm)と酸化亜鉛膜(60nm)とを積層成膜することにより形成される。
【0085】
次に、図3(c)に示すように、光情報記録媒体用粘着シート1の剥離シート13を剥離除去して透明樹脂層11を露出させ、図3(d)に示すように、透明樹脂層11を基板2上の情報記録層3表面に圧着する。
【0086】
このようにして得られる光情報記録媒体D1においては、高温および/または多湿下におかれたとしても、あるいは急激な温度変化および/または湿度変化が生じた場合であっても、透明樹脂層11に隣接する情報記録層3にクラックが発生すること等が防止され、したがって、外部環境の変化に対して安定している。さらに、透明樹脂層11を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が酸性基を含有しない場合には、情報記録層3の腐食を抑制することができる。したがって、上記光情報記録媒体用粘着シート1によれば、情報の記録・再生機能に支障のない、信頼性の高い光情報記録媒体D1を得ることができる。この光情報記録媒体D1は、超解像媒体として好適である。
【0087】
上述した光情報記録媒体および光情報記録媒体の製造方法はあくまでも一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、上記光情報記録媒体D1は片面1層式のものであるが、片面2層式のものであっても良いし、より多層であっても良い。
【0088】
また、上記実施形態では、光情報記録媒体用粘着シート1を構成する透明樹脂層11を構成する粘着剤は、あらかじめ層状に形成して光情報記録媒体用粘着シート1として使用したが、例えば、上記透明樹脂層11を、融解もしくは溶媒に溶解するなどの方法で液状とし、スピンコート法等によって光情報記録媒体用粘着シートを情報記録層3上に成形してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、光情報記録媒体の保護層を形成するための光情報記録媒体用粘着シートを例にして説明したが、例えば、透明樹脂層11を有し保護シート12を有さない光情報記録媒体用粘着シートを作製し、その光情報記録媒体用粘着シートの透明樹脂層11を、情報記録層が設けられた2つの基板同士を貼り合わせるのに用いてもよい。
【0090】
〔光情報記録媒体再生方法〕
本実施形態に係る光情報記録媒体再生方法では、超解像媒体として、上記光情報記録媒体を用いる。
【0091】
この光情報記録媒体再生法では、超解像媒体として、上記光情報記録媒体を用いるため、従来の超解像媒体よりフォーカス手段が簡略化でき、再生レーザパワーが従来の超解像媒体に対するレーザパワーより低い値に設定されても、十分再生が可能であるので、再生装置の消費電力を低減することができる。
【0092】
〔光情報記録媒体駆動装置〕
本実施形態に係る光情報記録媒体駆動装置では、超解像媒体として、上記光情報記録媒体を用いる。
【0093】
この光情報記録媒体駆動装置では、超解像媒体として、上記光情報記録媒体を用いるため、従来の比較的反射率が低い超解像媒体よりフォーカス手段が簡略化でき、再生レーザパワーが従来の超解像媒体に対するレーザパワーより低い値に設定されても、十分再生が可能であるので、再生装置の消費電力を低減できる。また、フォーカスエラーが生じたときに、再生レーザパワーを増加させて再トライする手段が設けられている場合、受光素子のゲイン調整を従来通りにしたままで、フォーカスをかけやすくできるので、コスト上昇を最低限にしつつ、フォーカスの信頼性を向上させることが出来る。
【0094】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0095】
例えば、光情報記録媒体用粘着シート1における剥離シート13は省略されてもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
〔実施例1〕
実施例1の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
まず、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル68.5質量部、アクリル酸メチル30質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1質量部、及びアクリルアミド0.5質量部と、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部とを酢酸エチル200質量部中に添加し、60℃で17時間攪拌することにより、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は60万であった。
【0098】
得られたアクリル酸エステル共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのキシレンジイソシアナート系3官能性アダクト体(綜研化学社製,TD−75)を固形分で0.6質量部加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液を得た。
【0099】
この粘着剤溶液をナイフコーターによって剥離シート(リンテック社製,SP−PET381031,ポリエチレンテレフタレートフィルムをシリコーン樹脂系剥離剤で剥離処理したもの)の剥離処理面に塗布し、90℃で1分間乾燥して厚さ25μmの透明樹脂層を形成した。次いで、その透明樹脂層に、保護シートとしてのポリカーボネートフィルム(帝人社製,ピュアエースC110-75,厚さ:75μm)をラミネートした。このようにして、厚さ138μmの実施例1の光情報記録媒体用粘着シートを得た。
【0100】
〔実施例2〕
実施例2の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、アクリル酸n−ブチルの添加量を78.5質量部、アクリル酸メチルの添加量を20質量部として得られたアクリル酸エステル共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの実施例2の光情報記録媒体用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は65万であった。
【0101】
〔実施例3〕
実施例3の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、アクリル酸n−ブチルの添加量を78.5質量部、アクリル酸メチルの添加量を20質量部として得られたアクリル酸エステル共重合体を用い、キシレンジイソシアナート系架橋剤の添加量を1.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの実施例3の光情報記録媒体用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は65万であった。
【0102】
〔実施例4〕
実施例4の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、キシレンジイソシアナート系架橋剤の添加量を0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの実施例4の光情報記録媒体製造用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は60万であった。
【0103】
〔比較例1〕
比較例1の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、キシレンジイソシアナート系架橋剤の添加量を1.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの比較例1の光情報記録媒体用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は55万であった。
【0104】
〔比較例2〕
比較例2の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、アクリル酸n−ブチルの添加量を78.5質量部、アクリル酸メチルの添加量を20質量部として得られたアクリル酸エステル共重合体を用い、キシレンジイソシアナート系架橋剤の添加量を0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの比較例2の光情報記録媒体用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は60万であった。
【0105】
〔比較例3〕
比較例3の光情報記録媒体用粘着シートの作製方法を、以下に説明する。
実施例1において、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル77質量部、アクリル酸エチル20質量部、及びアクリル酸3質量部として得られたアクリル酸エステル共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ138μmの比較例3の光情報記録媒体用粘着シートを作製した。なお、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は54万であった。
【0106】
〔参考例1〕
一般的な光情報記録媒体用透光層(光ディスク用カバー層)の例として、紫外線硬化型樹脂(三菱レイヨン社製,MP107)を、後述の試験例6に記載するポリカーボネート基板上に成膜した情報記録層にスピンコートにより塗布した後、紫外線照射し硬化させることで、カバー層を形成した。
【0107】
上記光情報記録媒体用粘着シートの貯蔵弾性率、ゲル分率、耐腐食性、耐クラック、接着力の測定、および上記光情報記録媒体用粘着シートを用いた光情報記録媒体の信号特性評価の詳細を、以下に示す。
【0108】
〔試験例1〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で作製した光情報記録媒体用粘着シートの透明樹脂層を重ね合わせ、厚さ2.5mmの透明樹脂層を形成した。
【0109】
形成した透明樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(Pa)を、粘弾性測定装置(Rheometrics社製,DYNAMIC ANALYZER RDA II)を用いて測定周波数1Hzで測定した。結果を表1に示す。
【0110】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で調製した粘着剤溶液をナイフコーターによって重剥離シート(リンテック社製,SP−PET381031,ポリエチレンテレフタレートフィルムをシリコーン樹脂系剥離剤で剥離処理したもの)の剥離処理面に塗布し、90℃で1分間乾燥して厚さ25μmの透明樹脂層を形成した。次いで、その透明樹脂層に、軽剥離シート(リンテック社製,SP−PET38GS,ポリエチレンテレフタレートフィルムをシリコーン樹脂系剥離剤で剥離処理したもの)をラミネートし、これをサンプルとした。
【0111】
得られたサンプルを23℃、相対湿度50%の条件下で1週間放置した後、剥離シートから透明樹脂層を剥ぎ取り、粘着剤の質量を測定し、続いてソックスレー抽出器を用いて、酢酸エチルにて約16時間還流させて抽出を行った。抽出後の未溶解分成分を風乾した後、100℃で10時間乾燥させ、23℃、相対湿度50%の条件下で3時間放置して調湿を行った。そのときの未溶解分成分の質量を測定して、以下の式によりゲル分率を測定した。結果を表1に示す。
ゲル分率(%)=(乾燥・調湿後の未溶解成分質量/抽出前の粘着剤質量)×100
【0112】
〔試験例3〕(耐腐食性試験[透過率変化度測定])
<熱による耐腐食性試験>
実施例および比較例で製造した光情報記録媒体用粘着シートを、酸化亜鉛膜をスパッタしたガラス板に透明樹脂層を介して貼付し、これをサンプルとした。なお、このときの光情報記録媒体用粘着シートの状態を初期状態とする。
【0113】
得られたサンプルについて、波長405nmの光に対する初期透過率Ta1を測定した。具体的には、紫外可視分光光度計(島津製作所社製,UV−3100PC)を用いて、サンプルの保護シート側から405nmの光を照射して、透過率を測定した。
【0114】
次いで、サンプルを温度80℃の環境下に500時間放置した後、上記と同様にして波長405nmの光に対する透過率Tb1を測定した。そして、以下の式に基づいて、透過率変化度(Y1;%)を求めた。なお、光情報記録媒体における透過率変化度の望ましい値は、0.5%以下である。結果を表1に示す。
Y1(%)=[(Ta1−Tb1)/Ta1]×100
【0115】
<熱および湿度による耐腐食性試験>
実施例および比較例で製造した光情報記録媒体用粘着シートを、酸化亜鉛膜をスパッタしたガラス板に透明樹脂層を介して貼付し、これをサンプルとした。なお、このときの光情報記録媒体用粘着シートの状態を初期状態とする。
【0116】
得られたサンプルについて、波長405nmの光に対する初期透過率Ta2を測定した。具体的には、紫外可視分光光度計(島津製作所社製,UV−3100PC)を用いて、サンプルの保護シート側から405nmの光を照射して、透過率を測定した。
【0117】
次いで、サンプルを温度60℃、相対湿度85%の環境下に500時間放置した後、上記と同様にして波長405nmの光に対する透過率Tb2を測定し、以下の式に基づいて、透過率変化度(Y2;%)を求めた。なお、光情報記録媒体における透過率変化度の望ましい値は、0.5%以下である。結果を表1に示す。
Y2(%)=[(Ta2−Tb2)/Ta2]×100
【0118】
〔試験例4〕(耐クラック試験)
<熱による耐クラック試験>
実施例および比較例で製造した光情報記録媒体用粘着シートを、Ta膜(7nm)と酸化亜鉛膜(60nm)を順にスパッタリングにより成膜したポリカーボネート板(厚さ:1.2mm)のスパッタ膜面上に透明樹脂層を介して貼付し、これをサンプルとした。
【0119】
得られたサンプルを温度80℃の環境下に70時間置いた後、直ちに23℃、相対湿度65%の環境下に24時間置いた。その後、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,UV−3100PC)を用いて酸化亜鉛膜の観察を行い、クラックの発生状況を観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:初期状態に対し変化なし(クラックの発生なし)
△:部分的にクラックが発生している
×:全体にクラックが発生している
【0120】
<熱および湿度による耐クラック試験>
実施例および比較例で製造した光情報記録媒体用粘着シートを、Ta膜(7nm)と酸化亜鉛膜(60nm)を順にスパッタリングにより成膜したポリカーボネート板(厚さ:1.2mm)のスパッタ膜面上に透明樹脂層を介して貼付し、これをサンプルとした。
【0121】
得られたサンプルを温度60℃、相対湿度85%の環境下に70時間置いた後、直ちに23℃、相対湿度65%の環境下に24時間置いた。その後、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,UV−3100PC)を用いて酸化亜鉛膜の観察を行い、クラックの発生状況を観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:初期状態に対し変化なし(クラックの発生なし)
△:部分的にクラックが発生している
×:全体にクラックが発生している
【0122】
〔試験例5〕(接着力の測定)
ポリカーボネート板(厚さ:1.1mm)上に、Ta膜(7nm)および酸化亜鉛膜(60nm)を順にスパッタリングにより成膜した。実施例および比較例で製造した光情報記録媒体用粘着シートを幅25mm、長さ100mmに切断した後、ラミネーターを用いて剥離シートを剥離しながら、透明樹脂層を上記酸化亜鉛膜上に貼付し、これをサンプルとした。
【0123】
得られたサンプルを23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した後、万能引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で光情報記録媒体用粘着シートを酸化亜鉛膜から剥離し、接着力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0124】
〔試験例6〕(信号特性評価)
最短ピット長94nmとなる1−7変調ランダムパターンが設けられたポリカーボネート製基板に、スパッタリングにより酸化亜鉛膜(60nm)およびTa膜(7nm)を情報記録層3として成膜し、その上にカバー層として、実施例1,2,4および比較例2で製造した光情報記録媒体用粘着シートを情報記録層3に隣接するように貼付し、これをサンプルディスクとした。また、上記参考例1で作製したポリカーボネート基板とカバー層との積層体を、比較用サンプルディスクとした。
【0125】
上記サンプルディスクを、波長405nmのレーザ光を出射可能な半導体レーザとN.A.(開口率)0.85の光学系とを有するディスク評価機(パルステック社製,DDU−1000)にて再生し、再生レーザパワー毎に得られた再生信号をPRML(12221)にて復号し、再生レーザパワー毎のbER(ビットエラーレート)をサンプルディスク毎に算出した。また、上記再生時に各サンプルディスクの再生波長での反射率を得た。
【0126】
その結果、実施例1、2、4と比較例2と参考例1とを用いたサンプルディスクの再生レーザパワー0.7mW時のbERは、それぞれ、1.4×10−4、2.0×10−5、2.3×10−4、1.2×10−4、1.4×10−4となり、再生レーザパワー0.5mW時のbERは、それぞれ、8.4×10−4、1.1×10−3、1.2×10−3、1.6×10−3、1.0×10−3となり、再生レーザパワー0.4mW時のbERは、それぞれ、2.9×10−3、4.2×10−3、3.4×10−3、3.8×10−3、3.0×10−3となり、bERが底値付近に到達する再生レーザパワー0.7mWから立ち上がり部分に相当する再生レーザパワー0.4mWまでのbERの傾向から、再生感度にはほとんど差が無いことが確認できた。
【0127】
また、実施例1、2、4と比較例2と参考例1とを用いたサンプルディスクの反射率は、参考例1のみが再生レーザパワー0.5mWで約4%と他のサンプルディスクの反射率(5.0〜5.4%)より低い値となった。一方、実施例1、2、4と比較例2とを用いたサンプルディスクの反射率は、再生レーザパワーが増加するにつれて増加した。すなわち、一般的な光ディスク用カバー層である参考例1と比較すると、実施例1、2、4と比較例2とは、再生感度の点では同等であり、反射率は高いという結果になった。
【0128】
なお、超解像光情報記録媒体においては、光を吸収することで超解像再生を行うため、一般に反射率が低くなる。そのため、必要な反射率を製造時に常に得ることが困難であるため、再生感度が同等であるならば、反射率が高くなる実施例1、2、4と比較例2とは、一般的な光ディスク用カバー層材料である参考例1よりも、超解像光情報記録媒体製造マージンの点で優れているといえる。
【0129】
また、同様の方法で、実施例3と比較例1とを用いたサンプルディスクを、再生感度と反射率の点で参考例1を用いたサンプルディスクと比較した場合、参考例1を用いたサンプルディスクに比較して、実施例3と比較例1とは、0.2mW程度よくなることが確認され、反射率も他のサンプル同様に向上し、再生レーザパワーの増加に伴って増加することが確認された。
【0130】
なお、比較例3を用いたサンプルディスクについては、上記耐腐食性試験において劣化が激しかったことから信号特性評価の対象から除外した。
【0131】
上記結果を以下の基準に基づいて評価したものを表1に示す。
<再生感度>
◎:参考例1より良い(より低い再生レーザパワーから信号再生可能)
○:参考例1と同等(同程度の再生レーザパワーから信号再生可能)
×:参考例1より悪い(より高い再生レーザパワーから信号再生可能)
<反射率>
○:参考例1より高い
△:参考例1と同等
×:参考例1より低い
【0132】
【表1】

【0133】
表1から分かるように、実施例で得られた光情報記録媒体用粘着シートによれば、高温・多湿下でも酸化亜鉛膜の腐食は防止され、急激な温度・湿度変化の下でも酸化亜鉛膜にクラックの発生はなかった。また、酸化亜鉛膜に対する透明樹脂層の接着力は十分であった。さらに、信号特性評価結果をみると、実施例の光情報記録媒体用粘着シートを使用して製造した光情報記録媒体において、bERの値は良好であり、一般的な光ディスク用カバー層材料である参考例1と同等の再生感度を維持しつつ、それよりも高い反射率が得られるため、超解像光情報記録媒体の製造に、実施例で得られた光情報記録媒体用粘着シートを用いることにより、再生感度や信頼性を犠牲にすることなく、製造マージンが向上するといえる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、急激な環境変化の下においても耐久性に優れ、信頼性の高い超解像媒体の製造に、または当該超解像媒体として有用である。
【符号の説明】
【0135】
1…光情報記録媒体用粘着シート
11…透明樹脂層
12…保護シート(保護層)
13…剥離シート
2…基板
3…情報記録層
D1…光情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生時に照射される再生用の光によって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号が再生され得る光情報記録媒体を構成する粘着シートであって、
前記光情報記録媒体の情報記録層上に設けられる粘着性の透明樹脂層を有し、
前記透明樹脂層は、
酸性基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主成分であり、
23℃における貯蔵弾性率が1.5×10Pa以下であり、かつ
ゲル分率が68質量%以上である
ことを特徴とする光情報記録媒体用粘着シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルを単量体成分として含むことを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体用粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含むこと特徴とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体用粘着シート。
【請求項4】
保護層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光情報記録媒体用粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光情報記録媒体用粘着シートが、情報記録層上に設けられてなる光情報記録媒体。
【請求項6】
再生時に再生用の光が入射する入射面側から、保護層と、前記透明樹脂層と、前記情報記録層と、基板とが積層されてなることを特徴とする請求項5に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光情報記録媒体を用いることを特徴とする光情報記録媒体再生方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の光情報記録媒体を用いることを特徴とする光情報記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−76692(P2011−76692A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229912(P2009−229912)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】