説明

光拡散性レンズシート、該シートを用いた直下型バックライト、及び該バックライトを組み込んだ液晶テレビ

【課題】光の利用効率が高く、正面から画面が見やすく、光源の配置個所を見え難くするとともに干渉縞の発生も抑えて出射面全体から均質な光を出射することが可能で、更に、バックライトの部品数も低減でき、拡散板と貼り合せても正面輝度が低下しないので、光学性能を低下させずに製造コストを低下させることができ、生産性を向上できる光拡散性レンズシート及びこれを用いた直下型バックライト、液晶テレビを提供する。
【解決手段】レンズ面及び凸条列構造が設けられた裏面を有し、拡散剤を含有する透明材料からなる光拡散性レンズシートであって、レンズ面には実質的に三角柱のプリズム部を該三角柱の長軸が互いにほぼ平行になるように一定周期で多数配列し、裏面には凸条列構造が、プリズム部の長軸に対して10度〜90度の振り角度をつけて設けられていることを特徴とする光拡散性レンズシート及びこれを用いた直下型バックライト、液晶テレビである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光拡散性レンズシートに関し、更に詳しくは、光の利用効率が高く、かつ線状光源を用いた直下型バックライトから均一で高品位な光を得ることができる光拡散性レンズシート、該シートを用いた直下型バックライト、及び該バックライトを組み込んだ液晶テレビに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトは導光板の端面に光源を配置したエッジライト型と、複数の光源を配置してその上に光拡散板を配備した直下型のバックライトとがある。近年、表示装置が大型化するのに伴って光の利用効率が高く均質な光が得られる面状の直下型バックライトが要求されている。
直下型バックライトの光源としては、主として、線状からなる陰極線管が多く用いられるが、線状光源を並列してバックライトとした場合は場所による明暗差が生じやすく、特に線状光源の真上と該光源同士の中間部との間で明暗差が生じやすい。そこで、これらの光源からの光を均質にするために、拡散機能のある板状の半透明板である光拡散板を通して面状光源とされるのが通例である。しかし、この光拡散板で光源の配置個所が視認できない程度に光を拡散均質化すると、光の利用効率が悪く、即ち光の透過量が少なくなって画面が暗くなり、一方、光の利用効率を良くしようとすると背後の光源が透けて見えてしまい、画面が見にくくなる。
【0003】
そこで、光の利用効率を上げてなお且つ光源の配置個所が視認できないようにするために、表面に拡散面を形成した光拡散シートを半透明の光拡散板の上に設置して用いることも行われている。しかし、光の透過率を確保して且つ光源の配置個所を視認できないようにするために、半透明の光拡散板のヘイズを調節し、その上に設置する拡散シートを2枚、3枚と重ねて使用しなければならないため、部品数が増大して原材料コストが増大するばかりでなく、製造工程が増加して組み立てコストも増大するという問題がある。
【0004】
一方、直下型のバックライトでは、表面にプリズム構造を設けたプリズムシートを光拡散板上に設置することにより、出射される光を光拡散板の法線方向へ集中する集光が行われている。しかし、光源の配置個所を視認できなくする効果については、これだけでは不十分である。その上、特に特定方向に光が出射されることによりギラツキが発生し易い。このギラツキは一般に出射光を集光しようとしてレンズ類を設置した場合に起こりやすいものである。従って、表面に拡散面を形成した拡散シートをプリズムシートの上部又は下部に、更に多くの場合、上部及び下部の両方に設置しなければならないため、この場合も原材料コスト及び組み立てコストが増大してしまう。
【0005】
プリズムシートによる出射光の拡散性を高めるために、光拡散粒子を利用して裏面にコーティングしたもの(特許文献1参照)、プリズム形状部を設けた層と光拡散剤が混錬された層との多層フィルム(特許文献2参照)、更にプリズム機構の内部に光拡散粒子を含ませる方法(特許文献3参照)等が提案されている。これによれば、一枚のプリズムシートで集光と光拡散を行えるので、部品点数が若干減少し、組み立てコストも若干減少する。しかしながら、拡散板とプリズムシートを別々に扱うことになるため組み立てコストが増大する問題は完全には解決されていない。
【0006】
この問題を解決するために、拡散板とプリズムシートを接着剤などで貼り合せる方法が採られることがある。この場合、拡散板表面の凹凸が接着剤で埋められてしまうが、接着剤層と拡散板との屈折率の差が小さいため、拡散板による集光、光拡散機能が低下し、正面輝度が小さくなってしまう。
【特許文献1】特開平10−300908号公報
【特許文献2】特開平8−313708号公報
【特許文献3】特開平10−68804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記従来の問題を解決するため、レンズシートの裏面に凸条列構造を設け、この凸条列構造により部分的に拡散板とレンズシートを接着することにより、拡散板表面の凹凸が接着剤で埋められることによる正面輝度の低下を防ぐという着想を得た。しかしながら、この場合には、表面側に設けられたプリズム構造と裏面側に設けられた凸条列構造とが干渉し、干渉縞が生じてしまうばかりか、表面輝度も若干減少してしまうことがわかった。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑み、光の利用効率が高く、表示面の法線方向に集光するとともにギラツキの発生を抑えて正面から画面が見やすくし、線状光源の使用に由来する明暗差を実質的になくして光源の配置個所を見え難くするとともにプリズム構造と凸条列構造の間で起こる干渉縞の発生も抑えて均質な面光源が得られ、更にバックライトの部品数も低減でき、原材料コストと組み立てコストを低く抑えることができる光拡散性レンズシート、該シートを用いた直下型バックライト、及び該バックライトを組み込んだ液晶テレビを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1に係わる発明は、一方の面には、実質的に三角柱のプリズム部が一定周期でほぼ平行に多数配列されており、他方の面には、凸条列構造がプリズム部の長軸に対して10度〜90度の振り角度をつけて配列されており、拡散剤を含有する透明材料からなる事を特徴とする光拡散性レンズシートを内容とする。
【0010】
本発明の請求項2に係わる発明は、振り角度が30度〜90度であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0011】
本発明の請求項3に係わる発明は、振り角度が60度〜90度であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0012】
本発明の請求項4に係わる発明は、凸条列構造の高低差Aが8μm〜30μm、周期Bが100μm〜900μm、高低差Aに対する周期Bの比率B/Aが10〜50の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0013】
本発明の請求項5に係わる発明は、該レンズシートからプリズム構造及び凸条列構造を除いた厚さであって両面が平坦なシートについてJIS K7136により測定したヘイズが18.0%〜78.0%となる材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0014】
本発明の請求項6に係わる発明は、プリズム部の配列周期Cが10μmから500μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0015】
本発明の請求項7に係わる発明は、厚さが50μmから500μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0016】
本発明の請求項8に係わる発明は、並列配列した複数本の線状光源からなる直下型バックライトに用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光拡散性レンズシートを内容とする。
【0017】
本発明の請求項9に係わる発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の光拡散性レンズシートのプリズム部の長軸の方向を線状光源の方向とほぼ一致するように配置したことを特徴とする直下型バックライトを内容とする。
【0018】
本発明の請求項10に係わる発明は、請求項9記載の直下型バックライトを、プリズム部の長軸の方向を液晶テレビの表示面の長手方向に一致するように組み込んだことを特徴とする液晶テレビを内容とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光拡散性レンズシートは、一方の面に三角柱のプリズム部が配列されたレンズ面を有し、他方の面に凸条列構造を有する光拡散性レンズシートであるから、これを線状光源を用いた直下型のバックライトの光拡散板上にレンズ面を光の射出側になるようにして設けることにより、バックライトの法線方向の明るさが大きくなり光の利用効率が高くなるとともに、拡散板と貼り合せても拡散板表面の凹凸が接着剤で埋まらないため正面輝度の減少が最小限に抑えられる。
更に、凸条列構造が、プリズム部の長軸に対して特定の振り角度をつけて設けられているため、干渉縞が発生せず均一な光を発する面光源を得ることができる。
なお、この光拡散性レンズシートは、並列配列した複数本の線状光源からなる直下型バックライトに用いた場合であっても好適な面光源を提供することができ、特に液晶テレビに使用する直下型バックライトのための光拡散性レンズシートとして好適である。
また、プリズム部の長軸方向を線状光源の方向とほぼ一致させるように配置すると、上下方向に発せられる光を制限しつつ、画面の正面及び左右方向には適量の光が発せられるため、本発明の光拡散性レンズシートを配置したバックライトは液晶テレビ用としてさらに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の光拡散性レンズシートは、その一方の面(以下、レンズ面ということがある)にプリズム部が設けられ、他方の面(以下、裏面ということがある)に凸条列構造が設けられる。ここで、図1〜図3に示すとおり、裏面4の凸条列構造5の長軸方向L2はレンズ面2のプリズム部3の長軸方向L1に対し振り角度αを付けて設けられる。なお、図1において、プリズム部3は実線で示し、凸条列構造5は破線で示している。
【0021】
図1及び図2に示すとおり、レンズ面2には実質的に三角柱からなるプリズム形状部の単位からなるプリズム部3が互いにほぼ平行になるように一定周期Cで配列される。
このプリズム部3は、三角柱の断面の形状が集光能力を発揮し易い、頂角が60度より120度の形状を選ぶことができる。好ましくは70度より110度の範囲である。三角形の形状は特に限定されず、等辺、不等辺のいずれでもよいが、拡散シートの法線方向に集光性能を向上させる点で二等辺三角形が好ましく、従って、頂角に相対した底辺に隣接して隣の二等辺三角形を順次配置し、頂角の列が長軸となり互いにほぼ平行になるように配列した構造とするのが好ましい。この場合、集光能力が著しく減退しない限り、三角柱の頂角及び底角が曲率を持っても差し支えない。
プリズム部3を配列周期Cについては、10μmより500μmの範囲が出射光の均質性を高めるので好ましく、より好ましくは、30μmより200μmの範囲である。配列周期Cが10μmより小さいと輝度低下が起こり、一方、500μmより大きいと目視で容易に表面構造が確認できるようになるので好ましくない。
【0022】
図1及び図3に示すとおり、裏面4には拡散板と本発明の光拡散性レンズシートを部分的に接着させるために凸条列構造5が設けられる。凸条列構造5の高低差Aは8μm〜30μmが好ましい。高低差Aが8μmより小さいと市販の最も薄い両面テープ(厚さ5μm程度)を使用した場合でも、凸条列構造5の殆どが埋まってしまい、良好な接着性を得るために上から強く押圧すると、結局全面で接着した場合と同様になり、正面輝度が低下してしまうことがある。30μmより大きいと凸条列構造5をプリズムシートの裏面に設けるために高度の加工技術が必要となり、コスト高となるばかりでなく、生産性が低下する。
この凸条列構造5の周期Bは好ましくは100μm〜900μm、さらに好ましくは250μm〜400μmである。周期Bが100μmより小さいとプリズム部3に干渉して集光能力を低下させるばかりでなく、拡散板との接着部分が広くなってしまい、正面輝度が小さくなる傾向にある。900μmより大きいと、一本一本の凸条列構造が肉眼で判別できる場合があり、画像の品位が低下することがある。
高低差Aに対する周期Bの比B/Aは10〜50の範囲に調整されるのが好ましい。この比が10未満では凸条列構造の数が増加するので正面輝度が低くなる傾向があり、一方る50を越えると凸条列構造の数が少なくなり、その結果、プリズムとの干渉が減って明暗差が大きくなる傾向がある。
【0023】
本発明における凸条列構造5としては、代表的には一定の高さ及び幅を有する線状突起(図4(a)参照)が例示できるが、必ずしも連続的である必要はなく、断続的であってもよく、また列設された突起の列(図4(b)参照)であってもよい。この場合、それぞれの突起の高低差がそれぞれ異なっていると、凸条列構造5全体を光拡散板7に接着して十分な接着力を得るには、接着剤層6を厚くする必要が生じる(図5(a)参照)が、この場合には、接着剤の透光性にもよるが、光線透過率が低下して正面輝度が低下する傾向がある。従って、本発明ではそれぞれの突起の高低差がほぼ一定になるようにする(図5(b)参照)ほうが接着剤層6を薄くできる点で好ましい。この点は隣接するそれぞれの凸条列構造5、5の関係についても同様である。
凸条列構造5の上端は平面状であることが好ましく、具体的には断面形状が長方形や台形等の線状突起が好ましいが、その場合、凸条列構造の周期Bに対する凸条列構造5上面の幅Dの比D/Bは0.01〜0.3程度が好ましい。この比が0.01未満であると、接着剤の量や性質にもよるが、接着力が不足して光拡散レンズシートと拡散板が剥れやすくなる傾向があり、一方、0.3を超えると接着面積が広くなりすぎて拡散板の性能が妨げられる部分が多くなり、正面輝度が低下する傾向がある。
なお、凸条列構造5としてはプリズム状など、上端が平面状ではない(即ち、凸条列構造の周期Bに対する凸条列構造5上面の幅Dの比D/Bが0)ものも使用できるが、この場合、接着剤層6を厚くして、凸条列構造5の先端部分を接着剤層6の中にめり込ませる(図6参照)必要が生じるため、接着剤の透光性にもよるが、光線透過率が低下して正面輝度が低下する傾向がある。
【0024】
凸条列構造5は、図1に示すとおり、プリズム部3の長軸に対して10度〜90度、好ましくは30度〜90度、さらに好ましくは60度〜90度の振り角度αをつけて設けられる。即ち、凸条列構造5の方向に平行な線L2とプリズム部3の長軸方向に平行な線L1は10度から90度の角度で交わる。ここで振り角度αが10度より小さくなると干渉縞を起こしやすくなる。一方、振り角度αは大きいほど、プリズム部3の集光機能を妨げる作用が減少するため好ましく、90度が最適である。
尚、凸条列構造5は直線状である必要はなく、曲線状や波線状であってもよいが、凸条列構造のそれぞれの部分において、プリズム部3の長軸方向と平行な線L1に対して上記所定の振り角度とされている必要がある。
【0025】
本発明の光拡散性レンズシートにおいては、線状光源の配置個所による明暗差の解消と特定方向に光が射出して発するギラツキの解消のために、ヘイズを18〜78%とするのが好ましい。ヘイズが18%未満であると、明暗差及びギラツキが解消しにくくなる傾向があり、78%を超えると正面輝度が低下する傾向がある。
なお、レンズシートはその法線と平行に入射した光を所定の角度に曲げてしまうため、JIS K7136に規定される方法で直接ヘイズを測定することができないので、該レンズシートと同一の材料からなり、該レンズシートからプリズム構造及び凸条列構造を除いた厚さであって両面が平坦なシートについてヘイズを測定している。
【0026】
光拡散性レンズシートの材質は拡散剤を含有する透明材料である限り特に限定されず、通常の光学用の透明樹脂と拡散剤を任意に組み合わせて使用することができる。本発明で使用できる光学用の透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート、ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離性放射線等により硬化する硬化性樹脂が例示できる。本発明で使用できる拡散剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機粒子や、架橋ポリアクリレート、シリコン樹脂等の有機粒子が例示できる。
【0027】
光拡散性レンズシートのレンズ面にプリズム部を形成し、裏面に凸条列構造を形成する方法は、熱可塑性樹脂を用いる方法と硬化性樹脂を用いる方法がある。熱可塑性樹脂の場合には通常の形成方法が可能で、所望の金型内へ射出成形するか、シート状材料を金型により圧縮成形する方法が可能である。
押出成形にあっては、シート状に押し出された材料を加熱下にエンボスするか、溶融押出時に金型ロールに押圧するか、特許第2925069号に記載されているように、前もって型付けされた離型性シートに挟圧して該型を転写して成形することができる。そして、同時成形する場合は、一方の片面は離型性シートにより、他方の片面は金型ロールによって成形することも出来る。
また、硬化性樹脂において、電離性放射線による場合は紫外線硬化樹脂を使用するのが通常である。一般的には透明な支持体上に硬化性樹脂を塗布後、型内で紫外線を照射して成形される。
なお、レンズ面のプリズム部及び裏面の凸条列構造は一体的に同時に形成してもよいが、別々に形成してこれを貼り合わせてもよい。別々に形成する場合は、拡散剤はいずれか一方だけに配合することもでき、さらに特許文献2に記載されているような溶融共押出しにより形成することもできる。
【0028】
以下、本発明の光拡散性レンズシートの使用方法について説明する。
通常、直下型バックライトは複数本の冷陰極線管からなる線状光源を並列に配列し、表示面側に1mm〜4mmの厚さの光拡散板を設置し、その反対側に光反射板を設置して形成されるが、本発明の光拡散性レンズシートはレンズ面を光の出射側にむけて前記光拡散板の上に接着される。
接着方法については特に限定されず、接着剤、粘着剤を光拡散板の上側全体に塗布して、上から光拡散性レンズシートを載置、押圧する方法、両面粘着シートを貼着する方法、スプレーで微細な球状の粘着成分を噴霧するいわゆるスプレー糊を使用する方法、ホットメルト接着剤を細い糸状に噴射するいわゆるカーテンスプレーを使用する方法、ドット印刷により接着剤を付着させる方法などが例示できる。但し、レンズシートとの接着部分で光拡散板の集光、拡散効果が一部減衰されるため、接着力が保たれる範囲で、可能な限り小さな面積で接着するほうが好ましい。
接着する方向はプリズム部の長軸方向が概ね横向きになっている限り特に限定されないが、プリズム部の長軸方向を線状光線の方向とほぼ一致させて接着するのが、出射光が光拡散性レンズシートの法線方向に集光し易い点で好ましい。
【0029】
液晶テレビの場合には、表示面は横長手方が一般的である。そして、表示面の左右斜め方向からも観賞しやすいことが重要であり、上下方向からの観賞はあまり重要でない。従って、表示面の正面方向、左右方向及び左右斜め方向の明るさを確保するには、重要でない上下方向の光を正面方向に集光して出射を調節するのが好ましい。
【0030】
ここで、プリズム部をほぼ平行に配列したレンズシートは、長軸方向と、これに直交する垂直方向とで出射輝度が異なり、このプリズムシートにより垂直方向に拡散する光が正面方向に集光されることは知られている。
従って、液晶テレビのバックライトの線状光源が液晶画面の長手方向に設置されていれば、プリズム部の長軸方向もほぼ液晶画面の長手方向に向けて光拡散性レンズシートを設置するのが得策である。これにより、やや不必要な上下方向への出射は制限的となり正面方向の明るさと表示面の左右斜め方向の明るさを確保して、均質でマイルドな光源とすることができる。
【0031】
本発明の光拡散性レンズシートの厚さは任意であるが、液晶テレビの組立て作業時の取扱い性の点からは、通常50μmより500μmが好ましく、連続生産上からは200μmより400μmが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
実施例1
(光拡散性レンズシートの製造)
ポリカーボネートの透明樹脂「パンライトL−1225Y」(帝人化成株式会社製)100重量部に拡散剤として10μm粒径のアクリルを0.15重量部配合し、これを溶融押出の樹脂温度295℃でダイスよりシート状に押し出し、押出されたシート状溶融樹脂を、プリズム部の形状が予め型付けされた離型性シートと、該プリズム部の長軸方向に対し90度の振り角度をつけて凸条列構造をその表面に設けた冷却ロールとの間に挟圧する、特許第2925069号に記載の方法でレンズシートを製造した。
上記離型性シートは、断面の三角形が頂角100度で底辺との角が40度の二等辺三角形である三角柱状を底辺が50μmの周期で隣接して長軸が互いに平行になるように配列したものを用いた。また、上記冷却ロールの凸条列構造は、高低差Aが10μm、周期Bが400μm、凸条列構造の断面形状は下底50μm、上底(凸条列構造の上面の幅D)30μmの台形状とした。なお、高低差Aに対する周期Bの比B/Aは40であり、凸条列構造の上面の幅に対する周期Bの比D/Bは0.075である。
得られたシートからプリズム構造と凸条列構造を除いた部分の厚みは240μmであり、下記の方法で測定したヘイズは40%であった。得られた光拡散性レンズシートの光学特性は、次に示す方法で測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0034】
(ヘイズの測定)
レンズシートはその法線と平行に入射した光を所定の角度に曲げてしまうため、JIS K7136に規定される方法で直接ヘイズを測定することができないので、該レンズシートと同一の材料からなり、該レンズシートからプリズム構造及び凸条列構造を除いた厚さであって両面が平坦なシートについてJIS K7136に規定される方法ヘイズを測定した。
【0035】
(光学特性の測定・判定方法)
光拡散性レンズシートの明暗差は、輝度計の受光面を小さくしてバックライトの各部の輝度を測定し、その差を計算することにより測定できる。しかし面光源の品位は肉眼による判定も欠かすことが出来ない。
更にバックライトの品位の特徴付けには特定の方向に強く出射するような光線の存在の有無があり、これはギラツキとして肉眼により判定できる。
従って、輝度計による測定と肉眼による判定とにより、光学特性を評価した。
【0036】
(バックライトの構成)
線状の陰極線管16本を横方向に等間隔に列設した縦400mm×横705mmの32インチテレビ用のバックライトを点灯し、このバックライトキャビティ内の線状光源の下に光反射板を配置した。
一方、厚さ2mmの光拡散板「オプトマックス」(住友ベークライト株式会社製)の上面側の全面に接着剤として両面接着糊(積水化学工業株式会社製、商品名:ダブルタックテープ♯5511、粘着剤層の厚さ:5μm)を貼着し、その上に上記レンズシートを載置し、レンズシートの上から軽く押さえて拡散板とレンズシートを密着させて光拡散板上に光拡散性レンズシートを貼着した。接着剤の形状は凸条列構造の上底の実質的に全面であり、接着剤の塗布面積は上底の実質的に100%であった。
この貼り合わされた光拡散板と光拡散レンズシートを、前記のバックライトの上に、レンズ面が出射面側となり、プリズム部の長軸方向が陰極線管の長軸方向と一致するように設置した。
【0037】
(輝度の測定)
光拡散性レンズシートを設置した面の上方500mmの距離に、輝度計ミノルタCA−1500(コニカ・ミノルタ株式会社製)により、測定面積4.8cm2 として、設置した光拡散性レンズシートの中心点の輝度を測定した。
【0038】
バックライト出射光の外観品位の判定:
ギラツキ:
光源から反射、屈折等により直接各方向からの観賞者の目に入るギラツキ感を下記の基準により目視判定する。
○:ギラツキが見えず、穏やかな出射状況である。
×:ギラツキが見え、液晶パネルを透過した後も見える場合がある。
【0039】
線状光源直上とその中間部との明暗差:
線状光源直上とその中間部との明暗差を下記の基準により目視判定する。
○:明暗差が認められない。
△:明暗差が僅かに認められる。
×:明暗差がはっきり認められる。
【0040】
干渉縞:
干渉縞の有無を下記の基準により目視判定した。
○:干渉縞が認められる。
×:干渉縞が認められない。
【0041】
取り扱い性:
レンズシート複合体又はレンズシート積層体を手でもって10回揺動させ、レンズシートと拡散板が分離するか否かを下記の基準により目視判定した。
○:揺動後も分離が確認できなかった。
×:揺動中又は揺動後に分離が確認された。
【0042】
実施例2、3
ヘイズがそれぞれ18%、78%になるように拡散剤の配合量を調節した他は実施例1と同様にして光拡散性レンズシートを作成し、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0043】
実施例4〜6
振り角度αをそれぞれ10度、30度、60度とした他は実施例1と同様にして光拡散性レンズシートを作成し、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0044】
実施例7
冷却ロールの凸条列構造の高低差Aを15μmとし、周期Bを250μmとした以外は実施例1と同様にして光拡散性レンズシートを製造し、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0045】
実施例8
冷却ロールの凸条列構造の高低差Aを30μmとし、周期Bを900μmとした以外は実施例1と同様にして光拡散性レンズシートを製造し、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0046】
実施例9
光拡散板との接着をスプレー糊(東急ハンズ、商品名:ハンズセレクト スプレーのり、ブチルゴム系接着剤)により行った他は請求項1と同様にして、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。尚、接着剤の形状は球形であり、接着剤の塗布面積は凸条列構造の上底の約10%であった。
【0047】
実施例10、11
光拡散板との接着をUV硬化型接着剤(十条ケミカル株式会社製、商品名:レイキュア−GA)により行い、塗布面積がそれぞれ全面積の10%、25%になるようドット印刷により塗布した他は実施例1と同様にして、その光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。尚、接着剤の形状はドット状であり、接着剤の塗布面積は凸条列構造の上底のそれぞれ約10%、約25%であった。
【0048】
比較例1
光拡散性レンズシートに代えて市販の光拡散シートBS300(恵和株式会社製)を2枚使用した点と、接着剤を使用しない点を除き、実施例1と同様にして光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
光拡散性レンズシートに代えて市販の光拡散シートBS702(恵和株式会社製)を3枚重ねて使用した点と、接着剤を使用しない点を除き、実施例1と同様にして光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0050】
比較例3
冷却ロールの凸状列構造の振り角度を0度に変更した他は実施例4と同様にしてレンズシートを製造し、得られたレンズシートの光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0051】
比較例4
透明材料に拡散剤を配合しなかった他は実施例1と同様にしてレンズシートを製造し、得られたレンズシートの光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0052】
比較例5
凸条列構造を設けなかった他は実施例1と同様にしてシートを製造し、得られたシートの光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。尚、接着剤の形状は全面であり、塗布面積はシートの裏面の実質的に100%であった。
【0053】
比較例6
光拡散性レンズシートを使用しない他は実施例1と同様にして光学特性を測定・判定した。測定・判定結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
叙上のとおり、本発明の光拡散性レンズシートは、プリズム部を有するレンズ面の反対側にプリズム部の長軸の方向に対して特定の振り角度をつけるとともに、レンズシートに拡散剤を配合することにより、線状の光源を持つ直下型のバックライトの光源直上と光源間の明暗やギラツキを解消して品位を大きく向上させ、正面の輝度を高くすることができ、更にバックライトの部品数も低減できるので、原料コストと組み立てコストを低減することができ、生産性が高く、液晶表示装置用の光拡散シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の光拡散性レンズシートのプリズム面と凸条列構造面の関係を示す概略説明図である。
【図2】本発明の光拡散性レンズシートのプリズム面側のW−W断面図である。
【図3】本発明の光拡散性レンズシートの凸条列構造面側のX−X断面図である。
【図4】(a)は断面形状が長方形状で平面視が直線状の凸条列構造の平面図及びそのY−Y断面図であり、(b)は 円筒状突起を直線状に列設してなる凸条列構造の平面図及びそのZ−Z断面図である。
【図5】(a)は突起の高さが異なる凸条列構造を光拡散板に貼着した様子を示す概念断面図であり、(b)は突起の高さがほぼ同じ凸条列構造を光拡散板に貼着した様子を示す概念断面図である。
【図6】先端が平面状でない凸条列構造を光拡散板に貼着した様子を示す概念断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 光拡散性レンズシート
2 レンズ面
3 プリズム部
4 裏面
5 凸条列構造
6 接着剤層
7 光拡散板
L1 プリズム部の長軸方向と平行な線
L2 凸条列構造の長軸方向と平行な線
A 凸条列構造の高低差
B 凸条列構造の周期
C プリズム部の配列周期
D 凸条列構造の上面の幅
α 振り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面には、実質的に三角柱のプリズム部が一定周期でほぼ平行に多数配列されており、
他方の面には、凸条列構造がプリズム部の長軸に対して10度〜90度の振り角度をつけて配列されており、
拡散剤を含有する透明材料からなる事を特徴とする光拡散性レンズシート。
【請求項2】
振り角度が30度〜90度であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性レンズシート。
【請求項3】
振り角度が60度〜90度であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性レンズシート。
【請求項4】
凸条列構造の高低差Aが8μm〜30μm、周期Bが100μm〜900μm、高低差Aに対する周期Bの比率B/Aが10〜50の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光拡散性レンズシート。
【請求項5】
該レンズシートからプリズム構造及び凸条列構造を除いた厚さであって両面が平坦なシートについてJIS K7136により測定したヘイズが18.0%〜78.0%となる材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光拡散性レンズシート。
【請求項6】
プリズム部の配列周期Cが10μmから500μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光拡散性レンズシート。
【請求項7】
厚さが50μmから500μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光拡散性レンズシート。
【請求項8】
並列配列した複数本の線状光源からなる直下型バックライトに用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光拡散性レンズシート。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の光拡散性レンズシートのプリズム部の長軸の方向を線状光源の方向とほぼ一致するように配置したことを特徴とする直下型バックライト。
【請求項10】
請求項9記載の直下型バックライトを、プリズム部の長軸の方向を液晶テレビの表示面の長手方向に一致するように組み込んだことを特徴とする液晶テレビ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−169004(P2009−169004A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5706(P2008−5706)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000166649)五洋紙工株式会社 (43)
【Fターム(参考)】