説明

光架橋されたハイドロゲルブレンドの表面コーティング

組成物の架橋形態および前駆体を含むハイドロゲルポリマーブレンド。ブレンドすることによって、共重合を含む他の手法よりも、良好な商業的実現性を伴う高品質で均一なコーティングを得るための改善された手法を提供する。用途としては、タンパク質などの生体分子アナライトの質量分光分析が挙げられる。デキストランおよびアクリルアミド系が好ましい。ベンゾフェノン基を光架橋基として用いることができる。光開始剤は必要でない。生体分子アナライトと選択的に結合しうる官能基が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
「ハイドロゲル」という用語は一般に、水中で膨潤し、かつ保水する、親水性の架橋した有機ポリマー材料(すなわち、親水性ポリマーの網状構造体)を意味する(例えば、Ciphergen BiosystemsのWO 00/66265および米国特許第6,613,234号(Voute)を参照のこと)。ハイドロゲルは様々な商業的用途を有する(例えば、コンタクトレンズ、センサー、組織接着剤、薬剤送達、包帯、および表面コーティングにおける用途)。例えば、Hostettlerらの米国特許第6,017,577号を参照のこと。とりわけ、ハイドロゲル表面コーティングは、生物医学的装置(例えば、カテーテル、カテーテル風船およびステントなど)に用いられる(例えば、Deemの米国特許第5,601,538号)。ハイドロゲルは、連続的な層として、または表面上の目立たない領域のパターンとして使用することができる(例えば、ゲル「パッチ」または「パッド」)。
【0002】
水中で大きく膨潤し、構造的に安定であるが液体相容性構造を形成するハイドロゲルの独特の能力は、軽く架橋した特徴から生じ、この特徴はさらにハイドロゲルの作り方から生じる。このような製造に対する1つのアプローチは、光重合および光架橋によるものである(米国特許第5,567,435号および同第6,156,478号にそれぞれ記載される)。‘478特許は、光架橋可能なおよび光によるパターニング可能なハイドロゲル組成物を記載する。この組成物はアズラクトン官能性モノマーを主成分とする。これらのハイドロゲルは、光マスクまたはレーザー誘導性熱造影法によって基板上にパターニング可能であり、また、アズラクトン官能基を用いて基板に生体分子を結合することができる。‘478特許によると、記載されるハイドロゲル組成物を用いて、「マイクロチップ」、例えば低密度もしくは高密度DNAチップまたは酵素含有ゲルパッドから成るマイクロアレイなどを作製することができる。
【0003】
ハイドロゲル材料を作製するための別のアプローチは、基板表面へのモノマー溶液の堆積、ならびに熱または光開始剤を用いたモノマー混合物のその場(in situ)重合および架橋によるものである(例えば、PCT出願WO 00/66265に記載される)。モノマーおよび架橋リンカーの量を変えることによって、得られるハイドロゲル層の厚さや孔径(pore size)に影響を与えることができる。
【0004】
Guireらの米国特許第5,512,329号および同第5,002,582号は、基板表面に共有結合するための潜在性反応基を有するポリマーを開示する。これらのポリマーは、潜在性反応基を外部刺激(化学放射線など)によって刺激した場合、基板表面に共有結合する。しかし、これらのポリマーは、タンパク質を吸着したり、または官能基化学の適合した制御によりタンパク質と選択的に相互作用したり結合したりするのではなく、タンパク質に反発するように一般に設計されている。さらに、これらのポリマーは、好適なハイドロゲル形成ならびにタンパク質および他の生体分子との好適な化学結合選択性を可能とする制御された共重合法によっては製造されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の関連において実証された多目的性および適用性にもかかわらず、ハイドロゲルの可能性は、タンパク質検出、特に質量スペクトル技術(例えば、タンパク質分析のための大衆性が増しているマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法および表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)質量分析法)のためのバイオチップ系方法において、十分に活用されているわけではない。さらに、ハイドロゲルを作製するための従来方法は一般的に、MALDIまたはSELDI質量分析法を容易にする、一様かつ均一なコーティングを与えない。例えば、モノマー混合物のin situ重合を用いた場合一般的に、制御された重合プロセスを与えない。重合および表面付着は一般的に、個々のスポットで同時に起こり、そして各スポットは別個の反応器を示す。得られたハイドロゲル材料は、スポット間およびチップ間の違いのあおりを受ける。従来方法はまた、広範にわたる分子量のタンパク質および生体分子を捕らえるのに十分な表面積、制御可能な多孔度およびリガンド密度を有する3次元ポリマー構造を与えない。十分な表面積を有するハイドロゲルは、高い結合能と感度を有するプローブを与えることができる。このプローブは、分析に利用することができる試料の量が非常にわずかで、かつ制限されている場合、魅力的である。制御可能な孔径および/またはリガンド密度を有するハイドロゲルは、特定の生物学的用途における要求を満たす、望ましい感度および結合能をプローブに与えることができる。さらに、従来方法は一般的に、MALDIまたはSELDI質量分析法を容易にする、コーティングの一様性かつ均一性を与えない。例えば、ハイドロゲル表面コーティングの一様性は、プローブ表面に吸収された全てのアナライトが気相イオン分光光度計のエネルギー源から等距離にあるために、試料のより正確な飛行時間分析を提供することができる。さらに、プローブ材料の従来の処方では、望ましい処理方法(例えば、スピンコーティング、浸漬コーティング、光パターニング、またはそれらの有用な組合せなど)と適合することはできない。低分子量の成分が存在することによって、問題が生じうる。例えば、PCT出願WO 00/66265および米国特許出願20020060290 Alを参照のこと。別の文献としては、米国特許第6,579,719号(Hutchens)、第6,610,630号(Schwarz)、および第6,675,104号(Paulse)が挙げられる。
【0006】
より一様であり、構造的に安定であることを特徴とするプローブ材料を用いることによって、コーティングの厚さ、ハイドロゲルの多孔度、およびスポットの変化をより良く制御することによって、MALDI、SELDI、および他の質量分析による検出を含む、生体分子(例えばタンパク質など)を検出するためのバイオチップ方法を改善する必要性が存在する。本発明が提供する利点としては、SELDIおよびMALDI分析のハイドロゲル表面の値を最大にすることが挙げられ、(1)ハイドロゲルの完全適用範囲、(2)ハイドロゲルの厚さおよび膨潤の程度の制御、(3)ハイドロゲルコーティングの一様性、(4)表面上のハイドロゲルの安定性、(5)選択的結合官能基の密度の制御、(6)ハイドロゲル作製の容易性と一貫性、および(7)拡散し、シグナルノイズを生じることによって分析を妨げうる低分子量成分の実質的欠如、などの要因を含むが、これらに限定されない。
【0007】
ハイドロゲルブレンドは、米国特許第6,586,493号(Massia)、同第6,211,296号(Frate)、および同第4,693,887号(Shah)に記載されるブレンドを含むことが知られている。しかし、ハイドロゲルブレンドは一般的に、質量スペクトル法(例えばSELDIおよびMALDIなど)に用いるために開発されていない。改善された処理能力、合成物の多目的性、経済性、および利便性を含む、ハイドロゲル系の制御を改善する必要性が存在する。しかし、しばしばハイドロゲル系中の1つの有用な官能基の存在が、別の官能基の使用および合成戦略を妨げうるために課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
本発明の複数の非限定的な態様を、この節に要約する。他の発明と比べて本発明は、ハイドロゲル系について、ブレンディングは、有用なハイドロゲルブレンドを製造するために必要とされる合成化学反応の独立した制御を得るための有用なツールを提供することを実証するが、共重合などの他のツールではそのような提供がより困難である。ブレンドの製造は、広範の様々な材料を製造するために用いられるべき限られた数の供給材料ポリマーを用いることを可能とし、研究および開発の時間、ならびに必要とされる合成作業の量を減らすことができる。さらにポリマーの性質に関してより良い制御を得ることができる。
【0009】
第1の実施形態において、本発明は、ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物を与える。これは、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(b)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含む第2ポリマーとを含み、ここで第1ポリマーおよび第2ポリマーにおける生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基は、同一であってもよいし、または異なっていてもよく、第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋可能な官能基および生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルに光架橋する能力、および生体分子アナライトに選択的に結合するハイドロゲルの能力をそれぞれ与える。好ましい実施形態において、第1ポリマーに生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基が存在し、これは第2ポリマーの生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基と同一でありうる。好ましい実施形態において、第1ポリマーは、光架橋可能な官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含むことができ、そして第2ポリマーは、生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含む。好ましい実施形態において、選択的に結合するための官能基は、生体分子アナライトとの共有結合または非共有結合に有効でありうる。さらに、選択的に結合するための官能基は、クロマトグラフィー結合官能基または生体分子特異的結合官能基でありうる。所望の場合には、ハイドロゲル組成物はさらに、エネルギー吸収部分または1つ以上の蛍光基を含むことができる。好ましくは、ハイドロゲル組成物は光開始剤を実質的に含まない。
【0010】
第2の実施形態において、本発明はまたハイドロゲルポリマーブレンド組成物を提供する。これは、(A)(i)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(ii)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾し、それによって架橋したハイドロゲルを形成することができる第2ポリマーとを含むハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋すること;(B)生体分子アナライトに選択的に結合するための官能基を含むように架橋したハイドロゲルを合成的に修飾することによって製造され、ここで第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋可能な官能基および選択的に結合するための官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物にハイドロゲルに光架橋する能力与え、および生体分子アナライトに選択的に結合するハイドロゲルを与える。
【0011】
第3の実施形態は、基板表面および該表面上にハイドロゲルポリマーブレンド組成物を含む基板であり、ここで、この組成物は、(i)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、架橋した官能基を含む第1ポリマーと、(ii)第1ポリマーの生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基と同一または異なるものでありうる生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含む第2ポリマーとを含む。
【0012】
さらに第4の実施形態においては、ハイドロゲル組成物を用いて表面を官能化するための方法を提供する。この方法は、(A)(i)表面を提示する基板と、(ii)この要約の節において上記の第1および第2の実施形態によるハイドロゲルブレンド前駆体組成物を提供すること、(B)この要約の節において上記の第1および第2の実施形態による前駆体組成物を接触させ、表面上に組成物からなる層を形成すること、(C)表面上の少なくともいくつかの組成物を架橋して、表面と接触しているハイドロゲルを形成すること、を含む。
【0013】
別の実施形態は、この要約の節において上記の第1および第2の実施形態によるハイドロゲルブレンド前駆体組成物を作製する方法を含む。この方法は、第1および第2ポリマーを混合して、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンドを形成するステップを含む。
【0014】
さらに、本発明はこの要約の節において上記の第1および第2の実施形態によるハイドロゲル組成物の架橋形態によるハイドロゲルを含む粒子を提供する。
【0015】
そしてさらに、本発明は、生体分子アナライトを検出するための方法を提供する。この方法は、(i)この要約の節において上記の第3の実施形態による基板と生体分子アナライトを含む試料とを接触させること、次に(ii)選択的に結合するための官能基と生体分子アナライトを結合することによって生体分子アナライトを検出すること、を含む。
【0016】
別の実施形態は、ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物である。この組成物は、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(b)エネルギー吸収官能基を含む第2ポリマーとを含み、ここで、第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋する官能基およびエネルギー吸収官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルに光架橋する能力、ならびに、レーザーのような高エネルギー源が照射された場合に結合アナライトを気相へ脱離するハイドロゲルの能力を、それぞれ与える。
【0017】
別の実施形態は、ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物である。この組成物は、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(b)第2ポリマーとを含む。ここでこのハイドロゲルは生体分子と共有結合を形成することができる反応基をさらに含み、そして第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋可能な官能基およびエネルギー吸収官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物にハイドロゲルへ光架橋する能力を与える。
【0018】
本発明はまた、ハイドロゲルポリマーブレンド組成物を提供する。これは、(a)光架橋した官能基を含む第1ポリマーと、(b)(i)生体分子アナライトと非共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基、(ii)生体分子アナライトと共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基、(iii)1つ以上のエネルギー吸収部分、またはそれらの組合せを含む第2ポリマー、とを含む。好ましい実施形態において、第2ポリマーは、(i)生体分子アナライトと非共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基を含む。別の好ましい実施形態において、第2ポリマーは、(ii)生体分子アナライトと共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基を含む。別の好ましい実施形態において、第2ポリマーは、(iii)1つ以上のエネルギー吸収部分を含む。本実施形態において、第2ポリマーは必ずしも、共有結合または非共有結合のいずれかに関わらず、生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を有さなくてもよい。本実施形態において、所望の場合、第1ポリマーはまた、選択的に結合(共有結合もしくは非共有結合)するための官能基、またはエネルギー吸収部分を含むことができる。第1および第2ポリマーの量ならびに、選択的に結合するための官能基およびエネルギー吸収部分の量を特定の用途のために制御し、それによって有用なハイドロゲルを形成することができる。
【0019】
本発明はまた、ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物を提供する。この組成物は、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(b)エネルギー吸収官能基を含む第2ポリマーとを含み、ここで第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋可能な官能基およびエネルギー吸収官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルへ光架橋する能力、および、レーザーのような高エネルギー源が照射された場合、結合アナライトを気相に脱離することを促すハイドロゲルの能力を、それぞれ提供する。
【0020】
本発明はまた、ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物を提供する。この組成物は、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、(b)第2ポリマーとを含み、ここでハイドロゲルはさらに、生体分子と共有結合を形成することができる反応基を含み、第1および第2ポリマーの量ならびに光架橋可能な官能基およびエネルギー吸収官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルに光架橋する能力を与える。
【0021】
ハイドロゲルコーティングキットもまた提供される。これは、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含みかつ光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーを含む第1組成物と、(b)(i)第1ポリマーおよび第2ポリマーの生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基は、同一であってもよいしまたは異なるものであってもよい、該生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基、または(ii)1つ以上のエネルギー吸収部分、を含む第2ポリマーを含む第2組成物とを含む。
【0022】
別のハイドロゲルコーティングキットは、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含みかつ光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーを含む第1組成物と、(b)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾されうる第2ポリマーを含む第2組成物とを含む。
【0023】
本発明のさらなる非限定的な基本的および新規の特徴としては、光開始剤を、別個の成分として必要としないことが挙げられるが、これに限定されない。さらに、ポリマー分子が、光架橋可能な基を有していない場合であっても、ポリマー分子に架橋反応が生じる。例えば、ベンゾフェノン基は多数のC-H結合を抜き取ることができる。多くの架橋反応は、ポリマー骨格に沿って結合したアクリレートまたはメタクリレートのような非飽和基からのラジカル重合、または光二量体形成によって生じる反応を必要とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
詳細な説明
I. 序
他のものよりもハイドロゲルのための改善された材料および方法を記載し、かつプロテオミクスおよび質量分析法での使用を記載する本願では、以下の用語を用いる。
【0025】
「表面増強レーザー脱離/イオン化」または「SELDI」とは、脱離/イオン化気相イオン分光法(例えば質量分光法)をいう。この方法において、アナライトは気相イオン分光計のプローブインターフェースに関与するSELDIプローブの表面に捕らえられる。「SELDI MS」において、気相イオン分光計は質量分析器である。SELDI技術は、米国特許第5,719,060号(HutchensおよびYip)ならびに米国特許第6,225,047号(HutchensおよびYip)などに記載されている。「表面増強親和性捕獲」(「SEAC」)または「親和性気相イオン分光法」(例えば「親和性質量分光法」)は、吸着表面を含むプロープ(「SEACプローブ」)を用いるSELDI法の1つのバージョンである。「吸着表面」とは、プローブの試料を提示する表面をいい、これに対して吸着剤(「捕獲試薬」または「親和性試薬」とも呼ばれる)が結合する。吸着剤はアナライト(標的ポリペプチドまたは標的核酸など)に結合することができる任意の材料である。「クロマトグラフィー吸着剤」とは、クロマトグラフィーに用いられる典型的な材料をいう。クロマトグラフィー吸着剤としては、例えば、イオン交換材料、金属キレート剤(ニトリロ酢酸またはイミノ二酢酸など)、固定化金属キレート剤(Cu、Fe、Ni、Zn、ガリウムなど)、疎水的相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、色素、単純な生体分子(ヌクレオチド、アミノ酸、単糖および脂肪酸など)ならびに混合型吸着剤(疎水性引力/静電反発吸着剤など)が挙げられる。「生体分子特異的な吸着剤」とは、生体分子(核酸分子(例えばアプタマー)、ポリペプチド、多糖、脂質、ステロイドまたはこれらのコンジュゲート(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)-タンパク質コンジュゲート))を含む吸着剤をいう。特定の例において、生体分子特異的な吸着剤は、多タンパク質複合体、生物学的な膜またはウイルスなどの高分子構造でありうる。生体分子特異的な吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質および核酸である。生体分子特異的な吸着剤は一般に、クロマトグラフィー吸着剤よりも標的アナライトに対して高い特異性を有する。少なくとも10-8 M、10-9 M、10-l0 M、10-11 Mまたは10-l2 Mの親和性をもってアナライトに結合している場合、吸着剤はアナライトに対して「生物選択的」である。SELDIに用いるための吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号(HutchensおよびYip、「Use of retentate chromatography to generate difference maps」、2001年5月1日)に見出すことができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、SEACプローブを、選択の吸着剤を与えるように改変しうる予め活性化した表面として与える。例えば、特定のプローブに、共有結合によって生物学的分子に結合することができる反応部分を与える。エポキシドおよびカルボジイミジゾールは、抗体または細胞受容体などの生体分子特異的な吸着剤に共有結合するための有用な反応部分である。
【0027】
好ましい実施形態において、親和性質量分光法は、アナライトを含む液体試料をSELDIプローブからなる吸着剤表面にアプライすることを含む。吸着剤に対して親和性を有するアナライト(ポリペプチドなど)はプローブ表面に結合する。一般的にその後、表面を洗浄して非結合分子を除去し、保持された分子を残す。アナライト保持の程度は、用いた洗浄のストリンジェンシーによるものである。次にエネルギー吸収材料(マトリックスなど)を吸着剤表面に適用する。次に保持されている分子を、レーザー脱離/イオン化質量分光法によって検出する。
【0028】
SELDIはタンパク質のプロファイリングに有用である。SELDIにおいて試料中のタンパク質を、1つまたは複数の異なるSELDI表面を用いて検出する。このあとのタンパク質プロファイリングは、相違点をマッピングするのに有用である。このマッピングにおいて、異なる試料のタンパク質のプロファイルを比較し、試料間のタンパク質発現における差異を検出する。
【0029】
「表面増強ニート脱離(Surface-Enhanced Neat Desorption」」または「SEND」は、SELDIの1つのバージョンであり、プローブ表面に結合したエネルギー吸収分子の層を含むプローブ(「SENDプローブ」)を用いることを含む。結合は、例えば共有または非共有化学結合によるものでありうる。従来のMALDIと異なり、SEND中のアナライトを、脱離/イオン化のためにエネルギー吸収分子の結晶マトリックス内に捕らえる必要がない。「エネルギー吸収分子」(「EAM」)とは、レーザー脱離/イオン化源よりエネルギーを吸収し、その後この分子に接触する分析分子の脱離およびイオン化に寄与することができる分子をいう。この用語は、しばしば「マトリックス」と称される、MALDIに用いられる分子を含み、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノ-ヒドロキシ-ケイ皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、ヒドロキシアセトフェノン誘導体などが明確に挙げられる。この用語はまた、SELDIに用いられるEAMも含む。特定の実施形態において、エネルギー吸収分子を線状または架橋ポリマー(例えばポリメタクリレートなど)に組み込む。例えば、組成物はα-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸とアクリレートとからなるコポリマーでありうる。別の実施形態において、組成物は、α-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸、アクリレートおよび3-(トリ-メトキシ)シリルプロピルメタクリレートからなるコポリマーである。別の実施形態において、組成物は、α-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸とオクタデシルメタクリレート(「C18 SEND」)とを含むコポリマーである。SENDはさらに、米国特許第5,719,060号およびWO 03/64594に記載されている(Kitagawa, 「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In desorption/Ionization Of Analytes」2003年8月7日)。
【0030】
SEAC/SENDは、SELDIの1つのバージョンである。SEAC/SENDにおいて、捕獲試薬とエネルギー吸収分子の両方を試料提示表面に結合する。そのため、SEAC/SENDプローブは、親和性捕獲によってアナライトを捕獲すること、および外部マトリックスに適用する必要なしに脱離すること、を可能とする。C18 SEND バイオチップは、SEAC/SENDの1つのバージョンであり、捕獲試薬として機能するC18部分と、エネルギー吸収部分として機能するCHCA部分とを含む。
【0031】
「表面増強光感受性結合および放出(Surface-Enhanced Photolabile Attachment and Release)」または「SEPAR」は、SELDIの1つのバージョンであり、表面に結合している部分を有するプローブの使用を含む。このプローブは、アナライトと共有結合し、そして光(レーザー光など)に曝した後、結合部分の光感受性結合を破壊することによってアナライトを放出することができる。SEPARはさらに米国特許第5,719,060号に記載されている。
【0032】
「吸着」とは、吸着剤または捕獲試薬に対するアナライトの検出可能な非共有結合をいう。
【0033】
「溶離液」または「洗浄液」とは、吸着剤表面へのアナライトの吸着に影響するか、もしくは該吸着を改変する、および/または表面から非結合物質を除去するのに用いられる薬剤(一般的に溶液)をいう。溶離液の溶離特性は、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズム(Chaotropism)の程度、界面活性強度および温度などに依存しうる。
【0034】
「アナライト」とは、検出されることが望ましい試料の任意の成分をいう。この用語は、試料中の単一成分または複数の成分をいうことができる。
【0035】
「バイオチップ」とは、捕獲試薬(吸着剤)が結合されている一般に平面表面を有する固体基板をいう。しばしばバイオチップの表面は、複数のアドレス可能な位置を含み、各位置はその位置に結合した捕獲試薬を有する。バイオチップは、プローブインターフェースに関与し、そのためプローブとして機能するように適合することができる。
【0036】
ハイドロゲルブレンドの序論
本発明は一般に、ハイドロゲルブレンドに関し、そしてハイドロゲルとブレンドは一般に、ポリマーの分野にて公知である。例えば、(1)Contemporary Polymer Chemistry、AllcockおよびLamp、Prentice Hall, 1981、ならびに(2)Textbook of Polymer Science, 第3版, Billmeyer, Wiley-Interscience, 1984、を参照のこと。
【0037】
本発明において、ポリマーブレンドを、2成分および3成分のブレンドと共に2種以上のポリマーを混合することによって製造できる。いくつかの場合、低分子量のポリマーまたはオリゴマーを用いることができるが、一般に高分子量、フィルム形成、自己支持ポリマーが、ブレンドを製造するのに好ましい。本発明において、ブレンドを処方し、高品質の薄いフィルムまたは層を提供することが可能である。ポリマーは様々な形態(例えば、ホモポリマー、コポリマー、架橋ポリマー、網状構造ポリマー、短鎖または長鎖の分枝状ポリマー、相互貫入型ポリマー網状構造体、およびポリマー分野で公知である別の型の混合系など)でありうる。水環境に曝した場合、ポリマーブレンドは膨潤し、孔の大きさおよび高含水量によって特徴付けられるハイドロゲル状態を形成することができる。質量スペクトルの用途に用いるためのハイドロゲルが米国特許出願公開2003/0218130(2003年4月14日出願、Boschettiら)に記載されている。これは一連の多糖ベース(特にデキストランベース)の材料(相互貫入型網状構造体を含む)を記載し、仮出願番号第60/376,837号(2002年5月2日出願)の優先権を主張する。これらは共にその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0038】
ブレンド中の1つのポリマーは、該ポリマーを、他のポリマーおよびそのポリマー自体と架橋するのに用いることができる光架橋可能な官能基を含む。別のポリマーは、数種類のうちの1つに入れることができる官能基を含む。1つの種類は結合官能基である。結合官能基は、アナライトと非共有結合するための基(例えば、クロマトグラフィー吸着剤または生体特異的吸着剤など)を含むことができる。結合官能基はまた、その後アナライトと結合できる分子と共有結合するための手段を有すことができる。例えば、エポキシドまたはイミジゾールは、タンパク質と結合し、その後、別のタンパク質または低分子(薬物など)と結合することができる。別の種類はエネルギー吸収官能基である。エネルギー吸収官能基は、レーザー脱離/イオン化方法に用いられるエネルギー源の波長に優先的な吸光度を有する。この場合、エネルギー吸収官能基はレーザー脱離方法において、気相へのアナライトの脱離およびイオン化を促す。特定の実施形態において、ブレンドポリマーは、ブレンド中の1つ以上のポリマーに、結合官能基およびエネルギー吸収官能基の両方を含むことができる。
【0039】
より具体的には、本発明は以下の架橋ハイドロゲルを包含する。1つの実施形態において、ハイドロゲルは、架橋反応に従事しうる光反応部分(例えばベンゾフェノンなど)を含む第1ポリマーと、アナライトとの非共有結合に従事する部分(例えば、クロマトグラフィー吸着剤または生体特異的吸着剤など)を含む第2ポリマーとが架橋している製品である。別の実施形態において、ハイドロゲルは、光反応部分を含む第1ポリマーと、高エネルギー源(レーザーなど)から光を吸収し、ハイドロゲルと結合している分析分子の気相への脱離を促すことができるエネルギー吸収部分を含む第2ポリマーとが架橋している生成物である。別の実施形態において、ハイドロゲルは、光反応部分を含む第1ポリマーと、光反応基を有さない第2ポリマーとが共有結合している生成物であって、ここでハイドロゲルは架橋した後に、それ自体が分析分子と結合することに用いられうる生体分子(タンパク質など)と共有結合できる1つ以上の吸着官能基、エネルギー吸収官能基または反応官能基(エポキシドもしくはイミジゾールなど)によって、誘導体化されている。さらなる実施形態において、これらハイドロゲルは、基板(バイオチップなど)の表面の少なくとも一部をコーティングする。
【0040】
図1は、本発明により提供されるブレンド戦略の概要を提供する。図1はデキストランベースの材料を用いた好ましい実施形態を記載するが、本発明はデキストラン材料に限定されない。図1において、「光リンカーで修飾されたデキストラン」とは、光架橋可能な官能基に基づく以下にさらに記載される第1ポリマーについての実施形態であり、そして「リガンドにより官能化されたデキストラン」とは、生体分子アナライトと選択的に結合できる官能基に基づく以下にさらに記載される第2ポリマーについての実施形態である。図1はさらに、未修飾ポリマー(未修飾デキストランおよび標識ポリマー(例えば蛍光標識デキストランでありうる)など)でありうるさらなる成分を例示する。未修飾ポリマーは例えば、リガンドにより官能化されたデキストランおよび/または光架橋リンカーで修飾されたデキストランの希釈剤に用いることができ、そしてリガンドおよび/または架橋リンカーの濃度を制御することができる。蛍光標識したデキストランは、例えば二重検出品質制御に用いることができる。
【0041】
本ブレンドは、光架橋可能な官能基を含むモノマーサブユニット(これまでに、その全体が本明細書中に参考として援用されるPCT出願 PCT/US04/04887(2004年2月20日出願(代理人整理番号035394-0252))に記載されている)を含むことができる。本ブレンドはまた、選択的結合官能基(これまでに、その全体が本明細書中に参考として援用されるPCT出願 PCT/US04/04887(2004年2月20日出願(代理人整理番号035394-0252))に記載されている)を含むモノマーサブユニットを含みうる。
【0042】
ハイドロゲルブレンドの実施形態はまた、その完全な開示が本明細書中参考として援用されかつ依存される先願である米国特許出願第10/660,738号(2003年9月12日出願)(「Preparation and Use of Mixed Mode Solid Substrates for Chromatography Adsorbents and BioChip Arrays」;代理人整理番号035394-0245)に記載された。この‘738号特許出願において、固体支持体は例えば、架橋多糖と同様に共有結合する、共有結合にコートされる層(シリル層など)で修飾されうることが記載される。‘738号特許出願の実施例10に示すように、多糖は第1の多糖と第2の多糖とを含む、2つの多糖からなる混合物が好ましく、それは1つ以上の架橋基で置換されている。好ましくは、‘738号特許出願により、これに関連する多糖としては、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、アミラーゼおよびアガロースが挙げられ、最も好ましくはデキストランである。好適な架橋剤としては、ベンゾフェノン基が挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
‘738号特許出願による、架橋に関して、多糖は支持体に架橋およびまた共有結合する。本明細書において、ハイドロゲルブレンドはさらに、第1ポリマーと第2ポリマーとからなる混合物を含んで記載されている。
【0044】
亜実施形態A
1つの亜実施形態(実施形態A)は、同上第10/660,738号特許出願の特定の開示を超えて新規である、添付のクレームの主題(その均等物を含む)を含む。本亜実施形態Aにおいて、多糖ベースのハイドロゲルブレンド、ベンゾフェノンの使用、実施例10(35〜37頁)、およびクレーム68の記述を含む、‘738号特許出願の特定の主題は除く。
【0045】
II. 第1ポリマー:光架橋可能なポリマー
本発明は、生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーを提供する。第1ポリマーを、1つ以上のモノマーをホモ重合するか、または共重合することによって製造することができる。例えば、第1ポリマーを、モノマーを共重合して、光架橋可能な官能基および生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むコポリマーを形成することによって製造することができる。第1ポリマーは例えば、その全体が本明細書中参考として援用されるPCT特許出願(US指定)PCT/US04/04887(2004年2月20日出願)に記載されるような光架橋可能なポリマーでありうる。このPCT出願は、共重合を用いて、コポリマーおよび最終的なハイドロゲル前駆体中の光架橋可能な基の量および密度を制御することを記載する、これは最終的なハイドロゲル中の架橋密度を制御する。また、種々の生体分子アナライトを記載する。しかし本発明において、単一ポリマーまたはコポリマーを、種々の量の第2ポリマーと組み合わせて用いて、ハイドロゲル前駆体中の光架橋可能な基の量および密度ならびに最終的なハイドロゲル中の架橋密度を制御することができる。
【0046】
第1ポリマーをまた、PCT出願PCT/US04/04887に記載されるように、既存のポリマー(第1の予め官能化したポリマー)を光架橋可能な基を用いて修飾することによって(例えば、ポリマー鎖の側基に基を共有結合して光架橋可能な基を導入することによって)製造することができる。本実施形態は特に、デキストランハイドロゲルを含む非イオン性多糖ベースのハイドロゲルを製造することを目的とする。
【0047】
第1ポリマーは、生体分子アナライトと結合する官能基を含みうるが、それは必要ではない。むしろ、第2ポリマーが結合官能基を提供しうる。選択的結合基が第1ポリマー中に存在する場合、これらは第2ポリマーの選択的結合基と同一または異なるものでありうる。混合様式の操作を用いることができる。
【0048】
一般的に、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含むポリマーのハイドロゲル前駆体の構造型、ならびにポリマーの骨格の型は、特に限定されないが、直鎖状ポリマー、分鎖状ポリマー、またはさらに樹状ポリマーなどでありうる。好ましくは、直鎖状である。第1ポリマーおよび第2ポリマーを含むポリマーハイドロゲル前駆体は一般に、光架橋可能な条件下にてハイドロゲルに変化する前に架橋されていないが、それでも時として、単に水膨潤性であったり、水溶性で無かったりしうる。言い換えると、第1ポリマーおよび/または第2ポリマーを含むポリマーハイドロゲル前駆体は、水溶性または水膨潤性でありうる。当該分野で公知であるモノマーおよびプレポリマーを用いて、ハイドロゲルを提供することができる。好ましくは、ポリマーのハイドロゲル前駆体は直鎖状のポリマー骨格を含み、これは炭素からなり、光架橋可能な官能基を有する第1側基および、必要に応じて選択的結合官能基を有する第2側基を有する。
【0049】
第1ポリマーを含むポリマーハイドロゲル前駆体を、種々の合成方法(限定はしない)によって製造できる。合成に際して、ポリマーハイドロゲル前駆体は、ポリマーの骨格とこのポリマー骨格に共有結合している少なくと2種の官能基(光架橋可能な官能基および選択的に結合しうる官能基)を有するポリマー鎖でありうる。選択的結合官能基は、当該分野で公知である化学的相互作用(例えば、共有結合、非共有結合、静電結合、および本明細書中にさらに記載される他の様式などを含む)に基づいて標的を優先的に選択することができる。これらの官能基は、ポリマーの骨格に沿って規則的にまたは無作為に分布しうる。無作為の分布は、質量分光法(SELDIなど)の精度を補助しうるポリマー材料の一様性を改善することに役立ちうる。ハイドロゲルの架橋に際して、選択的結合官能基は、タンパク質ならびに他の生体分子アナライトおよび標的と選択的に反応しうる(共有結合反応および非共有結合反応を含む)。
【0050】
好ましい実施形態において、第1および第2ポリマーを含むポリマーハイドロゲル前駆体は、多糖(例えば、デキストランまたはポリオレフィン組成物など)である。好ましい実施形態において、第1および第2ポリマーを含むポリマーハイドロゲル前駆体は、以下のモノマーサブユニット:
-(CH2-CHR1)- および -(CH2-CHR2)-、-[CH2-C(CH3)R1]- および -[CH2-C(CH3)R2]-
[式中R1およびR2は、光架橋可能な官能基および選択的に結合する官能基をそれぞれ含む]によって表される直鎖状の炭素骨格を含む。一般に、モノマーは、光架橋可能な官能基または選択的結合官能基のいずれかを提供する。しかし、別のモノマーが、同様にポリマーハイドロゲル前駆体に存在しうる。これらのモノマーが存在することによって、ポリマー組成物中の所望の結合官能基の密度を制御することができる。モノマーを好適に選択することによって、得られるポリマーハイドロゲル前駆体に、改善された水溶性、生体適合性、および低減された非特異的吸収を提供できる。好ましいモノマーは、このような特性の最適な組合せを提供する。
【0051】
第1ポリマーの好ましい実施形態において、ポリマーハイドロゲル前駆体は、光架橋可能な官能基および選択的結合官能基を含む側基を有する線状コポリマー骨格から本質的になり、コポリマーの別の構造単位は、光架橋される能力、および架橋に際して、水性条件下にてタンパク質と選択的に反応する能力、を妨げない。一般に、コポリマー構造は、タンパク質と選択的に結合し、タンパク質を寄せ付けるように設計される。
【0052】
光架橋可能な官能基を含む第1のモノマーサブユニットは特に限定されない。これらの第1モノマーサブユニットは、光架橋可能なポリマー組成物中で光開始剤として機能しうる。言い換えれば、これらモノマーサブユニットのために、光開始剤は必要ではなく、また好ましくは、光架橋のために組成物に付加されていない。例えば、光架橋可能な官能基は、紫外線硬化性官能基でありうる。光架橋可能な官能基は光子に対して十分に感応性であり、光架橋可能な条件に曝した場合高反応性となり、その結果光開始剤は光架橋を起こすために必要ではない。例えば、光架橋可能な官能基は、光架橋可能な条件に曝した場合、水素引き抜き反応を可能としうる。光架橋可能な官能基の例としては、ベンゾフェノン、ジアゾエステル、アリールアジド、およびジアジリン(それらの誘導体(例えばベンゾフェノン誘導体など)を含む)が挙げられる。ベンゾフェノン型化合物についての水素引き抜き化学が、米国特許第5,856,066号などに開示されている。さらなる光架橋可能な官能基、またはいわゆる「潜在性反応基」が米国特許第5,002,582号などに記載されている。
【0053】
好ましい実施形態において、光架橋可能な官能基は、ケトン官能基または有機カルボニル官能基(例えば芳香族ケトン官能基(置換ベンゾフェノンなど)およびそれらの誘導体を含む)である。カルボニル炭素は、それに結合している少なくとも一つの置換または非置換の芳香族環を有しうる。好ましい実施形態において、光架橋可能なビニルモノマーを用いることができる。アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミドの系が好ましい実施形態である。例えば、ヒドロキシルとカルボン酸、またはアミノ基とカルボン酸との間の伝統的な結合反応を用いて、光架橋可能な基を有するモノマー、ならびに選択的結合基およびエネルギー吸収部分を含む、本明細書中に記載される別の基を形成することが可能である。
【0054】
ベンゾフェノンおよびその誘導体が好ましい。なぜならばこれらは、化学的安定性、タンパク質の損傷を避ける例えば350〜360 nmの波長にて活性化すること、水および大量の求核剤の存在下においてさえも非反応性C-H結合と優先的に反応すること、を含む複数の利点を有するためである。この基はまた、それ自身のポリマー鎖または別のポリマー鎖と、別の光架橋可能な基だけではなく、鎖上の多数の位置で反応できる。
【0055】
第1ポリマーは好ましくは、光架橋により架橋している。架橋の別の方法(例えば熱架橋または化学架橋など)を用いることができる。例えば、互いに反応する複数のポリマーを一緒にブレンドすることができる。ポリマー間の反応が誘導される前に、まず高品質フィルムが形成されるように反応を制御することができる。また、ブレンドポリマーフィルムを膨潤することが可能であり、その膨潤マトリックス中に架橋剤を導入して架橋を行うことができる。
【0056】
III. 第2ポリマー:官能基ポリマー
本発明はまた、第1ポリマーとブレンドするための第2ポリマーを提供する。好ましい実施形態において、第2ポリマーは生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むことができ、第1ポリマーおよび第2ポリマー中の生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基は、同一または異なるものでありうる。例えば、第2ポリマーは選択的結合官能基と結合でき、そして選択的結合官能基は第2モノマー単位の一部でありうる。この結合は第2ポリマーが、第1ポリマーと混合される前後に生じうる。一般に、第2ポリマーは光架橋可能な基を有することを必要としないが、官能基(C-H結合など)または、第1ポリマーの光架橋可能な官能基と反応可能である第2ポリマー鎖に沿って分布する別の反応基を有するべきである。有用なクロマトグラフィー吸収剤である選択的結合のための官能基はまた、本明細書中に記載されるコーティングバイオチップ用途に用いることができる。
【0057】
生体分子アナライト(特にタンパク質)を結合するための選択的結合官能基を含む第2モノマーサブユニットを特に限定せず、そしていくつかの例は既に、第1ポリマーに関して上記している。選択的結合および反応は共有または非共有相互作用に基づくものでありえ、そして結合部分は共有結合部分または非共有結合部分でありうる。例えば、種々の選択的結合官能基は、上で引用した米国特許公開2002/0060290 A1およびWO 00/66265に記載されている。この‘290号特許公開公報はアナライトと選択的に結合する種々の吸着剤を開示する(段落70以降)。これら吸着剤としては、塩促進性相互作用に基づく吸着剤(段落73)、親水性相互作用吸着剤(段落80)、静電相互作用吸着剤(段落84)、配位共有結合相互作用吸着剤(段落93)、酵素活性部位相互作用吸着剤(段落98)、可逆的共有結合相互作用吸着剤(段落100)、糖タンパク質相互作用吸着剤(段落102)、および生体特異的相互作用吸着剤(段落104)が挙げられる。別の相互作用としては、疎水的相互作用が挙げられる。相互作用の組合せを用いることができる。
【0058】
さらに、WO 00/66265は、一連の選択的結合官能基または結合官能基(13〜15頁に列挙されるものを含む)を開示する。
【0059】
あるいは、第2ポリマーはそれ自体が選択的結合官能基として作用する生体分子と結合するための反応性官能基を含むことができる。
【0060】
あるいは、第2ポリマーは、レーザー脱離/イオン化法において、アナライトの気相への脱離/イオン化を促進するエネルギー吸収部分を含むことができる。
【0061】
官能基
結合官能基およびEAM官能基をさらに記載する。
【0062】
1. 結合官能基
結合官能基は一般に、以下の2種類:
標的と共有結合を形成できる反応性官能基、および標的と非共有結合を形成できる吸着官能基、を含む複数の種類に入れることができる。
【0063】
a. 反応性官能基
反応性官能基は、他の分子をハイドロゲルに結合するために有用である。例えば、ハイドロゲルに生体分子(例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質など)を結合したい場合がありうる。例示的な反応性官能基としては:
(a)カルボキシル誘導体(例えば、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、N-ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルなど);
(b)ハロアルキル基(ここで、そのハロゲン化物が後に求核性基(例えばブロモアセチル基など)と置換されうる);
(C)アルデヒド基またはケトン基(その後の誘導体化が、カルボニル誘導体(例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンもしくはオキシムなど)の形成によって、またはGrignard付加もしくはアルキルリチウム付加のような機構によって可能となるようなもの);
(d)その後のアミンとの反応(例えばスルホンアミドを形成するなど)のためのハロゲン化スルホニル基;
(e)反応性チオール基(タンパク質のジスルフィド(2-メルカプトピリジンおよびオルトピジニルジスルフィドを含む)と反応しうる);
(f)スルフヒドリル基(例えば、アシル化またはアルキル化されうる);
(g)アルケン(Michael付加などを受けうる:例えばマレインイミド);
(h)求核剤(例えばアミンおよびヒドロキシル化合物など)と反応しうるエポキシド;
(i)糖および糖タンパク質と反応するヒドラジン基;
(j)ビニルスルホン;
(k)活性化カルボニル基、
が挙げられる。
【0064】
反応性官能基が関与することが意図されない反応に、反応性官能基が関与せず、また反応を妨げないないように、反応性官能基を選択しうる。あるいは、反応性官能基を、保護基の存在によって、反応に関与することから保護しうる。当業者は、どのようにして特定の官能基を一組の選択した反応条件による干渉から保護するのかを理解するであろう。有用な保護基の例については、Greeneら、Protective Groups In Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照のこと。
【0065】
本明細書中で考察される反応性官能基が、本発明のチップを組み立てることに有用である一部の官能基のみを表していることを、当業者は理解する。
【0066】
例示的な反応性官能基モノマーは、イミダゾール、フェニルカルボキシエタノール、N-ヒドロキコハク酸イミド、N-ヒドロキシマレイミド、シスタミン/DTT、グリシドール、p-ニトロフェニルメチロールカーボネート、ベンゾトリアゾイルメチロールカーボネート、MeSCH2CH2OH、Ellman試薬(4-ニトロ-3-カルボン酸)ジスルフィドおよびO-ピリジニル-ジスルフィドである。
【0067】
b. 吸着官能基
結合官能基(これはまた反応性官能基によって結合されうる)は、試料からアナライトを更なる分析のために捕捉することに有用である。結合官能基を2種類(生体分子特異的結合基とクロマトグラフィー結合基)に分類できる。
【0068】
結合官能基は、クロマトグラフィー結合官能基または生体特異的結合官能基でありうる。クロマトグラフィー結合官能基は、電荷-電荷相互作用、親水性-親水性相互作用、疎水性-疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用およびそれらの組合せを介して物質に結合する。
【0069】
生体特異的結合官能基は一般に、1つ以上の上記相互作用を含む相補的な3次元構造を含む。生体特異的な相互作用の組合せの例としては、抗原と対応する抗体分子、核酸配列とその相補配列、作動体分子と受容体分子、酵素と阻害剤、糖鎖含有化合物とレクチン、抗体分子とその抗体に特異的な別の抗体分子、受容体分子と対応する抗体分子およびその様なものの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。特異的結合物質の別の例としては、化学的ビオチン修飾抗体分子またはポリヌクレオチドとアビジン、アビジン結合抗体分子とビオチン、およびそのようなものの組合せが挙げられる。生体特異的官能基は一般に、上記のような、反応性部分によって生体特異的部分と結合することによって作製される。
【0070】
例示的な実施形態において、結合官能基モノマーとしては、正に荷電した部分、負に荷電した部分、アニオン交換部分、カチオン交換部分、金属イオン錯体部分、金属錯体、極性部分、疎水性部分からなる群から選択される結合官能基が挙げられる。さらなる例示的な結合官能基としては、アミノ酸、色素、炭水化物、核酸、ポリペプチド、脂質(例えばホスファチジルコリンなど)および糖が挙げられる。
【0071】
本発明のポリマーにおける結合官能基として用いるイオン交換部分は、ジエチルアミノエチル、トリエチルアミン、スルホン酸(sufonate)、テトラアルキルアンモニウム塩およびカルボン酸(carboxylate)などである。
【0072】
例示的な実施形態において、結合官能基はポリアミノカルボン酸キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチエントリアミン五酢酸(DTPA)など)であり、これは基板上のアミン、またはスペーサーアームに、市販の二無水物(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)を用いて結合している。金属イオンと錯体する場合、金属キレート剤はタグを付けた種(ポリヒスチジルタグ付きタンパク質など)に結合し、標的種を認識および結合するために用いることができる。あるいは、金属イオン自体または、金属イオン錯体種が標的でありうる。
【0073】
金属イオン錯体部分としては、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミノ-三酢酸(NTA)、N,N-ビス(カルボキシメチル)-L-リシン、イミノ二酢酸、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8-ヒドロキシ-キノリン、N,N,N’-トリス(カルボキシトリメチル)エタノールアミン、およびN-(2-ピリジルメチル)アミノアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。金属イオン錯化剤は、有用な金属イオン(銅、鉄、ニッケル、コバルト、ガリウムおよび亜鉛など)を錯体化しうる。
【0074】
有機官能基は、分析分子を特異的に認識する能力を有する小有機分子の成分でありうる。例示的な小有機分子としては、アミノ酸、ヘパリン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、炭水化物、グルタチオン、ヌクレオチドおよび核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
別の例示的な実施形態において、結合官能基は、生体分子(天然または合成のペプチド、抗体、核酸、糖類、レクチン、受容体/リガンド結合対のメンバー、抗原、細胞またはそれらの組合せなど)である。従って、例示的な実施形態において、結合官能基は標的または、標的と構造的に類似している種に対して生じた抗体である。別の例示的な実施形態において、結合官能基は、標的のビオチニル化類似体に結合するアビジンまたはその誘導体である。さらに別の例示的な実施形態において、結合官能基は、結合官能基と配列相補性を有する一本鎖または二本鎖の核酸標的に結合する核酸である。
【0076】
別の例示的な実施形態において、本発明のチップは、アレイの各アドレス可能な位置における結合官能基が、特定のヌクレオチド配列を有する核酸を含むオリゴヌクレオチドアレイである。特に、アレイはオリゴヌクレオチドを含みうる。例えば、オリゴヌクレオチドは、目的の特定遺伝子の配列に及ぶように選択しうる。あるいは、アレイは発現プロファイリングに有用なcDNAまたはEST配列を含みうる。
【0077】
さらなる実施形態において、結合官能基を特定の標的を認識する核酸種(例えばアプタマーおよびアプタザイム)から選択する。
【0078】
別の例示的な実施形態において、結合官能基は薬物部分または薬物部分に由来するファルマコフォアである。薬物部分は、臨床使用が既に許容されている薬剤であるか、あるいはその用途が実験的なものであるか、またはその活性もしくは作用機構が研究中のものである薬物でありうる。薬物部分は、所与の疾患状態において証明された作用を有するか、または所与の疾患状態において望ましい作用を示すことが仮定されるのみでありうる。好ましい実施形態において、薬物部分は、選択した標的と相互作用するそれらの能力についてスクリーニングされている化合物である。このように、本発明を実行するのに有用である薬物部分は、種々の薬理活性を有する広範な薬物種に由来する薬物を含む。
【0079】
a.例示的な疎水性吸着剤官能モノマーとしては、CH3(CH2)17OH、1-オクタデカノール、1-ドコサノール、過フッ素化ポリエチレングリコール(Sovay, USA)が挙げられる。
【0080】
例示的な親水性吸着剤官能モノマーとしては、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0081】
例示的なアニオン交換吸着剤官能モノマーとしては、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよび2-ヒドロエチル-N-メチルピリジウムクロリドが挙げられる。
【0082】
例示的なカチオン交換吸着剤官能モノマーとしては、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸、3,5-ジメチロールベンゼンスルホン酸、ジヒドロキシ安息香酸およびジメチロール酢酸が挙げられる。
【0083】
例示的な金属キレート吸着剤官能モノマーとしては、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミノ-三酢酸(NTA)、N,N-ビス(カルボキシメチル)-L-リシン、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8-ヒドロキシ-キノリン、N,N,N’-トリス(カルボキシトリメチル)エタノールアミン、およびN-(2-ピリジルメチル)アミノアセテートが挙げられる。金属イオン(例えば銅、ニッケル、亜鉛、鉄およびガリウムなど)の溶液を付加することによって、ゲルを官能化する。
【0084】
2. EAM官能基
いくつかの実施形態において、EAM(エネルギー吸収分子)官能基は、レーザー脱離/イオン化プロセスの間に、アナライトの気相への脱離およびイオン化を促すのに有用でありうる。EAMモノマーは、官能基として光反応性部分を含む。光反応性部分は好ましくは、レーザー源からの光放射を特異的に吸収する核または補欠基(prosthetic group)を含む。光反応基は高フルエンス源からエネルギーを吸収し、熱エネルギーを発生し、そしてその熱エネルギーを移動し、ゲルとの操作的接触においてアナライトの脱離およびイオン化を促す。紫外線レーザー脱離の場合、EAMモノマーは好ましくは、紫外線光照射を電気的に吸収するアリール核を含む。IRレーザー脱離の場合、EAMモノマーは好ましくは、直接的な振動共鳴によって、またはわずかなオフ共鳴方法でIR放射線を好ましくは吸収するアリール核または補欠基を含む。紫外線光反応性部分を、安息香酸(例えば2,5ジ-ヒドロキシ安息香酸など)、ケイ皮酸(例えばα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)、アセトフェノン、キノン、バニリン酸、カフェ酸、ニコチン酸、シナピン酸ピリジン、フェルラ酸(ferrulic acid)、3-アミノ-キノリンおよびそれらの誘導体から選択しうる。IR光反応性部分を、安息香酸(例えば2,5 ジ-ヒドロキシ安息香酸など)、ケイ皮酸(例えばα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)、アセトフェノン(例えば2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンおよび2,6-ジヒドロキシアセトフェノンなど)カフェ酸、フェルラ酸(ferrulic acid)、シナピン酸 3-アミノ-キノリンおよびそれらの誘導体から選択されうる。
【0085】
IV. ブレンド条件
ブレンド(混合)条件を特に限定することなく、当業者に公知であるように、所望の結果が得られるように機能的に制御しうる。ポリマーのブレンドについては、「Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」 Ed. J.I.Kroschwitz(Wiley), 1990, 「Polymer Blends」、830〜835頁、およびD. R. Paulら、「Polymer Blends」Vol.IおよびII, Academic Press, New York, 1978などを含む文献に引用されている参考文献に記載されている。一般に、溶液ブレンドおよびフィルムキャスティング方法は、所望の厚さのフィルムおよび層を提供することが好ましい。例えば、溶液を濾過し、質を改良しうる。乾燥速度を制御しうる。当業者は試薬を添加する順序、保護基の使用、および当該分野で公知である官能基を保護するための別の方法を目的に合わせることができ、その結果所望の官能基を最終ハイドロゲルブレンド中に得る。
【0086】
第1および第2ポリマーの量、ならびに光架橋可能な官能基および生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基の量は、ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、それぞれハイドロゲルに光架橋する能力、および生体分子アナライトに選択的に結合するハイドロゲルの能力を与える。例えば、第1ポリマーは、光架橋可能な官能基を含む約0.5モル%〜約15モル%モノマーサブユニットを含み、より具体的には約1モル%〜約7モル%モノマーサブユニットを含むことが可能である。第1ポリマーの重量パーセント濃度は、例えば、約5重量%〜約60重量%、より具体的には、約15重量%〜約45重量%でありうる。第2ポリマーの重量パーセント濃度は、例えば、約40重量%〜約95重量%、より具体的には、約55重量%〜約85重量%でありうる。しかし、例えば第1および第2ポリマーが希釈ポリマー(未修飾デキストランなど)と一緒に用いられる場合、第2ポリマーの重量パーセント濃度は、例えば、約25重量%〜約80重量%、より具体的には、約40重量%〜約60重量%でありうる。特定の実施例を以下に記載し、そして第1および第2ポリマーの量、光架橋可能な官能基の量、および選択的に結合するための官能基の量を、特定用途のためにさらに制御しうる。
【0087】
分子量は、溶液粘度および高品質のコーティング形成能を含む所望のブレンド特性を得るために制御されうる別のパラメータである。例えば、第1ポリマーおよび第2ポリマーはそれぞれ、約1,000〜約10,000,000、より具体的には、約10,000〜約1,000,000、より具体的には、約20,000〜約100,000の平均分子量を有しうる。
【0088】
第1および第2ポリマーに加えて、ブレンド化剤(蛍光修飾したポリマーまたは、蛍光基で修飾したポリマー(図1に関して上記)などを含む)を用いうる。一般に、ポリマー修飾ブレンド化剤は、第1および第2ポリマーと同一のポリマー骨格を有することが好ましい。例えば、デキストランベースの第1および第2ポリマーについては、蛍光修飾したデキストラン(例えばフルオレセインデキストランなど)を用いることができる。デキストランを蛍光指示薬(例えばフルオロフォア、色素など)を用いて修飾するか、または蛍光指示薬とコンジュゲートすることが可能であり、そしてこのような生成物は商業的に入手可能であるか、またはオーダーメイドで合成することが可能である。光架橋可能な基と相容性である蛍光基を選択することが可能である。例えば、スペクトルの吸収および発光を用いて、好適な蛍光ポリマーを選択することが可能である。
【0089】
別の型のブレンド化剤はポリマーを用いるためのものであり、これは第1および第2ポリマーと同一のポリマー骨格を有するが、生体分子アナライトに選択的に結合するか、または光架橋可能である官能基を有するように修飾されていない。これらのブレンド化剤は官能基の希釈剤であり、架橋および結合密度のより良い制御を与えることができる。
【0090】
V.表面の官能化および基板を製造するための方法論
本発明によるハイドロゲルブレンドを用いて表面を官能化するために、4工程のアプローチを用いることができる。一工程において、基板表面を必要に応じてプライマー層を用いて製造しうる。別の工程において、ポリマーハイドロゲルブレンド前駆体を大量に製造できる。さらに別の工程において、大量のポリマーハイドロゲルブレンド前駆体を、均一なポリマーコーティングとして表面基板に物理的に結合することが可能である。最終的に、光架橋可能な条件(紫外線光に曝すなど)を適用し、ハイドロゲル表面コーティングを形成し、表面結合および/または固定を誘導し、そしてポリマー網状構造(polymer networking)を作製することが可能である。
【0091】
ハイドロゲルを用いて表面を官能化するために、まず、ポリマーハイドロゲル前駆体を単一または混合溶媒系に溶解または懸濁することができる。この溶媒系は水性溶媒または有機溶媒でありうる。溶媒系を、光架橋可能な条件を用いる前に、部分的にまたは完全に取り除くことが可能である。その後、ポリマーハイドロゲル前駆体を、表面と接触させ、表面上に層を形成することが可能である。
【0092】
基板表面上にポリマーハイドロゲル前駆体フィルムを層にするおよび形成する方法は特に限定しない。均一な層形成を達成するために、スピンコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、スプレー、スクリーンプリント、インクジェットプリント、化学蒸気堆積、および他の公知のコーティング方法などを含む方法を用いることができる。コーティング処理を個々のチップ基板に適用することができる。あるいは、大きな表面積の固定具に個々のチップ基板を集め、それに対してコーティング処理を適用することが可能である。別の実施形態において、慣習的な半導体製法を用いることができる。すなわち、コーティング溶液を大きい平らな表面に塗布し、均一なコーティングを形成することができ、そして次にコートしたウェーハを適切な大きさを有する多数の小片に切断することが可能である。さいの目に切断した小片を、直接的にチップとして用いるか、またはチップ保有基板に移し取り付けることが可能である。ウェーハ材料は、例えばプラスチック、ガラス、シリコン、金属または金属酸化物などでありうる。ハイドロゲル表面コーティングの均一性によって、プローブ表面に吸収されている全てのアナライトが気相イオン分光器のエネルギー源から等距離にあるので、試料のより正確な飛行時間分析を提供することができる。堆積、in situ 重合、および架橋に用いられるモノマー溶液と比べて、コポリマーのハイドロゲル前駆体は十分な粘度のものであり、これは確立されたコーティングプロセスとより適合性がある堆積ハイドロゲル層を作製し、均一で一貫性のあるハイドロゲル表面の形成を容易にする。
【0093】
ポリマーハイドロゲル前駆体を、非連続的な離散したスポットまたは連続的な層のいずれかの形態で表面にコーティングすることができる。光リソグラフィーおよびマスクを含む公知のパターニング方法を用いることが可能である。
【0094】
当該分野で公知であるように、光重合を光マスクを用いて局部的に制御し、パターンを作製することができる。光に曝されていない領域は、架橋したハイドロゲルを残しながら洗浄することが可能である。これらはスポットの形状でありうる。例えば、側面の大きさが約100 nm〜約3 mm、より具体的には、約500 nm〜約500ミクロンであるスポットを作製しうる。
【0095】
基板は一般にWO 00/66265、15〜17頁に記載されている。基板を、ハイドロゲル材料を支持することが可能である好適な材料で作製することが可能である。基板は様々な特性(多孔性または非多孔性、強固または屈曲性を含む)を有しうる。基板表面は平面を含む任意の形状でありうる。しかし、平面状表面を有する基板は、均一なポリマーコーティングをより良く提供する。
【0096】
複合性のまたは多成分性の基板(2成分性基板など)を用いることができる。2成分性基板において、例えば、シリコンまたはガラスの固形小片をアルミニウムフレームホルダーに挿入しうる。長いストリップをアルミニウム基板から機械により作製し、ガラススライドまたはシリコンウェーハインサートを収容することが可能である。接着剤を結合に用いることができる。
【0097】
アルミニウム基板へのコーティングが特に好ましい実施形態である。
【0098】
基板表面を物理的にまたは化学的に改質して、基板へのハイドロゲルブレンドの接着を改善しうる。化学的改質において、例えば、基板表面は支持層によって支持されているプライマー層の表面でありうる。プライマー層は特に限定しないが、疎水性プライマー層などでありうる。また、不動態化層として機能し、基板表面を水溶液から保護しうるので、疎水性プライマー層が好ましい。シランプライマー層、炭化水素シランプライマー層、フッ素化シランプライマー層、混合フッ素化/炭化水素シランプライマー層、またはポリマープライマー層などでありうる。酸化物基板が用いられる場合、アルコキシシランおよびクロロシラン化学を用いて、プライマー層を形成することができる。貴金属基板(例えば金および銀など)を用いた場合、アルカンチオールまたはジスルフィドを用いて、プライマー層を形成することができる。
【0099】
基板表面の物理的改質の例としては、表面を粗面、微小多孔性、または多孔性にする条件が挙げられる。
【0100】
プライマー層の厚さは特に限定しないが、約4オングストローム〜約10ミクロン、より具体的には、約5 nm〜約10ミクロン、より具体的には、約10 nm〜約10ミクロンなどでありうる。
【0101】
支持層のタイプは特に限定しないが、有機物または無機物でありうる。例えば、アルミニウム、シリコン、ガラス、金属酸化物、金属、ポリマーまたは複合体でありうる。ハイドロゲルがSELDIプローブとして用いられた場合、伝導性の基板を用いることができる。プラスチック材料を基板として用いることができる。プラスチック材料の特徴は、別の型のポリマーと一緒に組み合わせるかまたは混合することによって、および他の材料を加えることによってさらに変化しうる。例えば、粒状充填物(例えば炭素粉末、シリカ、セラミック、および粉状金属など)を取り込み、複合体のモジュラスおよび電気伝導率を調整することができる。別の添加物を用いて、化学耐性および熱安定性を改善することができる。
【0102】
基板表面(前処理していようと、なかろうとも)を光架橋可能な官能基を用いて仕立て、ハイドロゲルコーティングの光化学固定を可能としうる。例えば、光架橋可能な官能基のベンゾフェノン型はC-H基と結合しうる。基板表面は光反応性官能基を含み、光架橋の間ハイドロゲルとの結合を容易にすることができる。
【0103】
光架橋は選択的なものでありえ、その結果いくつかのポリマーハイドロゲル前駆体は光架橋されるが、いくつかのポリマーハイドロゲル前駆体は架橋されなかった。架橋したハイドロゲルの目立たないスポットが形成されうる。残りのものは、例えば水中で洗浄することによって除去することが可能である。パターン形成された表面が結果として生じる。光マスクを含む従来の光リソグラフィー方法を用いることができる。基板表面が疎水性である場合、親水性ハイドロゲル間の領域は疎水性でありうる。従って、水溶液の液滴を特定のスポットに保持することが可能である。
【0104】
好ましい実施形態において、架橋されたポリマーハイドロゲル前駆体は、基板表面上の実質的に均一な層であり、平均約5nm〜約50ミクロン、より具体的には、約5nm〜約10ミクロン、より具体的には、約10nm〜約10ミクロン、より具体的には、約100nm〜約10 ミクロン、より具体的には、約100nm〜約2ミクロンの層の厚さを有する。
【0105】
これらハイドロゲルコーティングの厚さは、本発明のひとつの重要な態様でありうる。ハイドロゲルコーティングの厚さは一般に、反射計(reflectometry)および反射FTIRの混合測定などを用いた当該分野で公知の方法によって評価される。厚さは、約1ミクロン〜約10ミクロン、より具体的には、約2ミクロン〜約5ミクロンなどでありうる。
【0106】
本発明を理論によって拘束されないが、相対的に厚いハイドロゲルコーティングはプローブ表面に、試料を捕捉するのに利用することができるより大きな表面積およびより多数の結合官能基を与えることができる。従って、より高い結合能が推定される。しかし、SELDIの処理において、結合タンパク質が、レーザー励起によって脱離およびイオン化される前に、ハイドロゲル層より抽出され、EAMを用いて共結晶化することが重要である。厚いハイドロゲルが単一の抽出工程で捕捉したアナライトを完全に放出することは困難でありえ、そして薄いハイドロゲル層はより効率的に、捕捉したアナライトの抽出および使用を可能とする。
【0107】
従って、ハイドロゲルコーティングの厚さは、結合能に影響を及ぼすだけではなく、抽出効率にも影響する。最適な厚さは、結合能と抽出効率とのバランスによって得られる。
【0108】
基板はバイオチップ用の基板でありうる。この点に関して、ハイドロゲルを基板表面に共有結合することができる。
【0109】
VI. ブレンドしたハイドロゲルの使用:
1つ以上のキットを、本発明によるハイドロゲルブレンドを用いるために製造しうる。例えば、1つの実施形態において、ハイドロゲルコーティングキットを提供する。このキットは、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含みかつ光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーを含む第1組成物、および(b)(i)第1ポリマーおよび第2ポリマーにおいて生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基が同一であってもよいしまたは異なるものであってもよい、該生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基、または(ii)1つ以上のエネルギー吸収部分を含む第2ポリマーを含む第2組成物、を含む。2つの成分を、別々の容器に包装し、また、キットの内容物および、ある量の成分を含む成分を混合することに関する指示書などに関する説明書と共に販売することができる。説明書はさらに、組成物が選択的に結合できる生体分子アナライトのタイプを記載することができる。所望の場合には、質量スペクトル分析用の基板を含むキットと共に基板を提供することができる。キットを用いて、バイオチップを製造できる。
【0110】
別のキットにおいて、ハイドロゲルコーティングキットは、(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含みかつ光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーを含む第1組成物、および(b)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾されうる第2ポリマーを含む第2組成物、を含む。生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように第2ポリマーを合成的に修飾するために、さらなる試薬を提供することができる。さらに、説明書を提供することができる。
【0111】
本発明のブレンドしたハイドロゲルでコートされているバイオチップを用いて、ゲルにアプライされたアナライトを当該分野で公知である任意の方法によって検出するために用いることができる。ハイドロゲルを結合基を用いて官能化した場合、チップは特定の基に結合する表面アナライトを捕捉する。非結合材料は洗い落とすことができる。アナライトを好適な方法(気相イオン分光法、光学的方法、電気化学的方法、原子間力顕微鏡法および高周波法を含む)によって検出することができる。気相イオン分光法としては、質量分光法、イオン移動性分光法および全イオン電流測定などが挙げられる。光学的方法としては、光学顕微鏡法(共焦点および非共焦点の両方)、造影法および非造影法が挙げられる。光学的検出には、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率検出を含みうる(例えば表面プラスモン共鳴法(「SPR」)、エリプソメトリー、水晶振動子マイクロバランス法、共鳴鏡法、格子カプラー導波路法(波長計測光学システム(wavelength interrogated optical system:「WIOS」)およびインターフェロメトリ)など)。電気化学的方法としては、ボルタンメトリーおよび電流分析法などが挙げられる。高周波法としては、多極性共鳴分光法などが挙げられる。これら方法のいくつかは、アナライトと捕捉分子とのリアルタイムの結合事象を検出することができる。他の方法(レーザー脱離質量分光法など)は、アナライトが捕捉される基板表面との直接的な物理的伝達を必要とする表面ベースの分析用ツール(SBAT)を含む。
【0112】
試料は特に限定しないが、唾液、痰、血液、血清、尿、リンパ液、前立腺液、精液、乳汁、細胞抽出物、細胞培養培地およびそれらの誘導体などの流体から選択される生物学的流体を含むことができる。いくつかの実施形態において、試料を吸着表面と接触する前に、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーによって、予め分画することができる。
【0113】
試料をプローブ基板上のハイドロゲル吸着剤と接触させることができる。この時点の処理は検出方法によって決まる。例えばSELDIの場合、試料をハイドロゲル吸着剤上で乾燥させることができる。これによって、ハイドロゲル吸着剤に結合していないアナライトを洗い落とすことなく、ハイドロゲル吸着剤による試料中のアナライトの特異的および非特異的な吸着を生じうる。一般的に、約1マイクロリットル〜約500マイクロリットル中に数アトモル〜100ピコモルのアナライトを含む試料の量は、ハイドロゲル吸着剤に結合するのに十分である。
【0114】
特定の実施形態において、液体試料を取り除いた後、エネルギー吸収材料をプローブに適用することができる。エネルギー吸収材料の例としては、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸、およびジヒドロキシ安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
アナライトをプローブに適用して乾燥した後、気相イオン分光法を用いて検出する。プローブ上の吸着剤に結合しているアナライトまたは他の物質を気相イオン分光器を用いて分析できる。アナライトの量および特徴を気相イオン分光法を用いて決定できる。目的のアナライトに加えて別の物質もまた、気相イオン分光法(例えばレーザー脱離イオン化質量分光法など)によって検出できる。
【0116】
気相イオン分光検出法:
質量分光法のデータ作成を、イオン検出器によってイオンを検出することより開始する。例示的なレーザー脱離質量分析器は337.1nmの窒素レーザーを使用できる。有用なパルス幅は約4ナノ秒である。一般的に、約1〜25μJの出力を用いる。検出器をたたくイオンは、アナログ信号をデジタル的に捕らえる高速時間アレイ記録装置によってデジタル化された電位を生じる。これを達成するためにCiphergenのProteinChip(登録商標)システムは、アナログからデジタルへの変換器(ADC)を用いる。ADCは、規則的な時間間隔で時間依存的なビン(bin)へ検出器の出力を統合する。一般的な時間間隔は1〜4ナノ秒の長さである。さらに、最終的に分析された飛行時間スペクトルは一般に、試料に対するイオン化エネルギーの単一パルスに由来するシグナルを示さないが、複数のパルスに由来するシグナルの合計を表す。これによって、ノイズを減少し、かつダイナミックレンジを増加させる。その後、この飛行時間データをデータ処理に付す。CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアにおいて、データ処理は一般に、TOFからM/Zへの変換、ベースラインの減算、高周波ノイズのフィルタリングを含む。
【0117】
TOFからM/Zへの変換は、飛行時間を質量対電荷比(M/Z)に変換するアルゴリズムを適用することを含む。この工程において、信号を時間ドメインから質量ドメインに変換する。すなわち、各飛行時間を質量対電荷比(すなわちM/Z)に変換する。検量を内部的または外部的に行いうる。内部検量において、分析される試料は既知のM/Zを有する1つ以上のアナライトを含む。これらひとかたまりのアナライトを表す飛行時間のシグナルピークに既知のM/Zを割り当てる。これらの割り当てたM/Z比に基づいて、飛行時間からM/Zへ変換する数学的関数についてパラメータを算出する。外部検量において、飛行時間をM/Zに変換する関数(前記の内部検量によって作成されたようなもの)を、内部検量を用いることなく、飛行時間スペクトルに適用する。
【0118】
ベースラインの減算は、スペクトルを乱す、人為的な、再現性のある装置のオフセットを除去することによって、データの定量化を改善する。ピーク幅などのパラメータを取り込むアルゴリズムを用いてスペクトルのベースラインを算出し、その後そのベースラインを質量スペクトルから減算することを含む。
【0119】
高周波ノイズ信号を、滑らかな関数を適用することによって除去する。一般的な滑らかな関数を、移動平均関数を各時間依存的なビンに適用する。改善されたバージョンにおいて、移動平均フィルタは可変幅のデジタルフィルタであり、そのフィルタのバンド幅は、例えばピークバンド幅の関数として変化し、一般に飛行時間が増加するにつれてより広くなる。例えば、WO 00/70648、2000年11月23日(Gavinら、「Variable Width Digital Filter for Time-of-flight Mass Spectrometry」)。
【0120】
コンピューターは、得られたスペクトルを表示するために様々なフォーマットに変換することができる。「スペクトル図またはレテンテートマップ(retentate map)」と称される1つのフォーマットにおいて、標準的なスペクトル図が表示されうる。この図は、検出器に到達したアナライトの量を各特定の分子量にて表示する。「ピークマップ」と称される別のフォーマットにおいて、ピークの高さと質量情報のみがスペクトル図から保持され、よりきれいな像を生じ、ほとんど同一の分子量を有するアナライトをより容易に見ることが可能となる。「ゲル図」と称されるさらに別のフォーマットにおいて、ピーク図からの各質量を各ピークの高さに基づくグレイスケール像に変換でき、電気泳動ゲル上のバンドと類似した外見を生じる。「3Dオーバーレイ」と称されるさらに別のフォーマットにおいて、数個のスペクトルを重ね、相対的なピークの高さにおけるわずかな変化を調べることができる。「差異マップ図(difference map view)」と称されるさらに別のフォーマットにおいて、2つ以上のスペクトルを比較でき、特有のアナライト、および試料間でアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされるアナライトを都合よく強調することができる。
【0121】
一般に分析は、アナライトからのシグナルを表すスペクトルのピークを同定することを含む。ピークの選択は、当然ながら眼で行うことができる。しかし、ソフトウェアを、ピークの検出を自動で行うことができるCiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアの一部として利用することができる。一般に、このソフトウェアは、選択した閾値を越えるシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定し、ピークシグナルの中心点におけるピークの質量を標識することによって機能する。1つの有用な使用において、多数のスペクトルを比較し、いくつか選択したパーセンテージの質量スペクトルに存在する同一のピークを同定する。1つのバージョンのこのソフトウェアは、所定の質量範囲内の様々なスペクトルに現れる全てのピークを群集化し、質量(M/Z)クラスターの中間点付近にある全てのピークに質量(M/Z)を割り当てる。
【0122】
1つ以上のスペクトルに由来するピークデータを、さらなる分析(例えば、各列が特定の質量スペクトルを表し、各カラムが質量によって規定されるスペクトルのピークを表し、そして各セルが特定のスペクトルのピークの強度を含むスプレッドシートを作成することによる)に付すことができる。様々な統計学的またはパターン認識アプローチを、データに適用することができる。
【0123】
本発明の実施形態で生じるスペクトルを、分類モデルを用いるパターン認識方法を用いて分類できる。一般に、スペクトルは、分類アルゴリズムが必要とする少なくとも2つの異なる群に由来する試料を表す。例えば、この群は、病理学的対非病理学的(癌対非癌など)、薬物レスポンダー対薬物非レスポンダー、毒物反応対非毒物反応、疾患部位へのプログレッサー対疾患部位への非プログレッサー、表現型状態の提示あり対表現型状態の提示なし、でありうる。
【0124】
いくつかの実施形態において、「公知試料」などの試料を用いて生じたスペクトル(質量スペクトルまたは飛行時間スペクトルなど)に由来するデータを次に、「訓練」分類モデルに用いることができる。「公知の試料」は予め分類されている試料である。スペクトルに由来し、分類モデルを形成するために用いられるデータを、「訓練データセット」と称することができる。一度訓練されると、分類モデルは未知試料を用いて生じたスペクトルに由来するデータのパターンを認識することができる。次に分類モデルを用いて、未知試料をクラスに分類することができる。これは、特定の生物学的試料が、特定の生物学的状態(疾患対非疾患)に関連するか否かを予測することなどに有用でありうる。
【0125】
分類モデルを形成するために用いられる訓練データセットは、生データまたは予め処理したデータを含みうる。いくつかの実施形態において、生データは、飛行時間スペクトルまたは質量スペクトルから直接的に得ることができ、その後、必要に応じて上記のように「予め処理する」ことができる。
【0126】
分類モデルは、データの主要部をデータに存在する客観的なパラメータに基づくクラスへ分離することを試みる任意の好適な統計学的分類(または「学習」)方法を用いて形成することができる。分類方法は、教師ありまたは教師なしのいずれかでありうる。教師ありおよび教師なしの分類プロセスの例は、Jain, 「Statistical Pattern Recognition:A Review」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, 2000年1月に記載されている。
【0127】
教師付き分類において、公知のカテゴリーの例を含む訓練データを学習メカニズムに提示する。学習メカニズムは、各公知クラスを規定する関係の1つ以上のセットを学習する。次に新しいデータを学習メカニズムに適用し、これがその後、学習した関係を用いて新しいデータを分類する。教師付き分類法の例としては、線形回帰法(多線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰および主成分回帰(PCR))、バイナリ決定樹(例えばCART分類および回帰樹などの帰納的分割法)、バックプロパゲーションネットワークのような人工神経ネットワーク、判別分析(例えばBayesian分類またはFischer分析など)、ロジスティック分類、およびサポートベクター分類(サポートベクターマシン)が挙げられる。
【0128】
好ましい教師付き分類法は、帰納的分割法である。帰納的分割法は、帰納的分割樹を用いて未知試料に由来するスペクトルを分類する。帰納的分割法についてのさらなる詳細は、米国特許第6,675,104号にある。
【0129】
別の実施形態において、作成された分類モデルは、教師なし学習法を用いて形成されうる。教師なし分類は、訓練データセットが導かれたスペクトルを予め分類することなく、訓練データセットの類似性に基づく分類を学習することを試みる。教師なし学習法としては、クラスター分析が挙げられる。クラスター分析は、データを「クラスター」または群に分割することを試みる。これらは、理想的には互いに非常に類似しており、他のクラスターのメンバーと非常に似ていないメンバーを有する。次に、類似性を、距離関数を用いて測定する。これはデータアイテム、および互いに近接したデータアイテムを伴うクラスター間の距離を測定する。クラスター形成技術としては、MacQueenのK-平均アルゴリズムおよびKohonenのSelf-Organizing Mapアルゴリズムが挙げられる。
【0130】
分類モデルは、任意の好適なデジタルコンピューターにて、形成および用いることができる。好適なデジタルコンピューターとしては、標準的なまたは特定の操作システム(Unix、WindowsTMまたはLinuxTMベースの操作システムなど)を用いた、超小型、小型、または大型のコンピューターが挙げられる。用いられるデジタルコンピューターは、目的のスペクトルを作成するために用いられる質量分析器から物理的に離れていてもよいし、質量分析器に連結していてもよい。
【0131】
本発明の実施形態の訓練データセットおよび分類モデルは、デジタルコンピューターによって実行または用いられるコンピューターコードによって具体化することができる。コンピューターコードは、好適なコンピューター読み取り可能な媒体(光学的または磁気的ディスク、スティック、テープなどを含む)に保存でき、好適なコンピュータープログラム言語(C、C++、ビジュアル・ベーシックなどを含む)で書くことができる。
【0132】
最後に、本発明はさらに、上記ポリマーハイドロゲル前駆体およびハイドロゲルを含む粒子およびビーズを含む。粒子の平均直径および大きさは、例えば、約0.01ミクロン〜約1,000ミクロン、より具体的には、約0.1ミクロン〜約100ミクロン、そしてより具体的には、約1ミクロン〜約10ミクロンでありうる。一貫した質量分解能および強度を与えるために、粒子は好ましくは均一な大きさまたは直径である。例えば、粒子は約5%未満、好ましくは約3%未満、より好ましくは約1%未満の直径変化の係数を有しうる。1つの実施形態において、粒子をハイドロゲルで作製することができ、そしてこの粒子は実質的に非ハイドロゲル材料を有さない。別の実施形態において、非ハイドロゲル粒子上にハイドロゲルをコーティングして粒子を作製することもできる。
【実施例】
【0133】
本発明を以下の非限定的な実施例を用いてさらに説明する。
【0134】
1. 光架橋可能なSaxコポリマーブレンド
【0135】
実施例1
要約
最初の一連の実験において、一連の光架橋可能なSAXコポリマーブレンドを、10 mol.%のベンゾフェノン(BP)修飾ポリ(3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマーと、ポリ(3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド)ホモポリマーとをブレンドすることによって製造した。ブレンドコポリマーは、1〜10 mol.%まで変動するBPモル分率を有する。さらに、3 mol.%のベンゾフェノン修飾SAXコポリマーをまた、共重合法によって製造し、そして比較研究のためのハイドロゲルコーティングを作製するために用いた。
【0136】
実験1:
[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミドモノマー(光架橋可能なモノマー)の製造
図2に従って、132 mLのトルエン/アセトン(5:1、v/v)を、15.45グラムの4-(ブロモメチル)ベンゾフェノン(Aldrich)を入れた、マグネチックスターラを備えた乾燥した250 mL丸底フラスコに加えた。この溶液に、20 mlのトルエン中10.59グラムのメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを室温にて滴加した。2時間後、沈殿物を濾過し、アセトンを用いて4回洗浄した。次に生成物粉末を真空乾燥した。収率は約90%である。1H NMRによって、所望の生成物の形成を確認した。
【0137】
実験2:
3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(SAX)モノマーと[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミドモノマーとからなるコポリマーの製造
10 mol.%の[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミドを有するSAX光架橋可能なコポリマーを製造した。図3に示すように、44.0グラムの3-(メタクリロイルアミノ)プロピル-トリメチルアンモニウムクロリド溶液(Aldrich, 水中50重量%)を、60グラムの蒸留水、続いて4.79グラムの[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド、および0.36グラムのV-50(Wako Chemical)(水溶性、カチオン性アゾ-開始剤)と混合した。溶液を、アルゴン流を用いて5分間パージした。容器を密封し、そして58℃にて40時間加熱した。この溶液は重合後非常に粘稠性となった。このポリマー溶液をDI水で希釈し、真空凍結乾燥して、白色固体の生成物を得た。
【0138】
実験3:
3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(SAX)からなるホモポリマーの製造
180.0グラムの3-(メタクリロイルアミノ)プロピル-トリメチルアンモニウムクロリド溶液(Aldrich、水中50重量%)を、400グラムの蒸留水、続いて0.17グラムのV-50(Wako Chemical)(水溶性、カチオン性アゾ-開始剤)と混合した。この溶液を、5分間アルゴン流を用いてパージした。この容器を密封し、そして58℃で40時間加熱した。この溶液は重合後、非常に粘稠性となった。このポリマー溶液をDI水で希釈し、真空凍結乾燥して白色固体の生成物を得た。
【0139】
実験4:
ブレンドすることによる3 mol.%BP修飾SAXコポリマーの製造
1.665グラムの10 mol.%ベンゾフェノン修飾SAXコポリマーを、37 mLのDI H2O/イソプロパノール(7/3、w/w)中3.886グラムのSAXホモポリマーと混合し、透明な溶液を得た。この溶液を濾過し、コーティング実験に用いた。同じ手順を、1 mol.%BP修飾SAXコポリマーを有するブレンドコポリマーを製造するために適用した。
【0140】
実験5:
共重合による3 mol.%BP修飾SAXコポリマーの製造
3 mol.%BP修飾SAXコポリマーをまた、比較研究のために共重合によって製造した。
【0141】
70グラムの3-(メタクリロイルアミノ)プロピル-トリメチルアンモニウムクロリド溶液(Aldrich、水中50重量%)を、93グラムの蒸留水、続いて2.04グラムの[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミドおよび0. 30グラムのV-50(Wako Chemical)(水溶性、カチオン性アゾ-開始剤)と混合した。この溶液を5分間、アルゴン流でパージした。この容器を密封し、そして58℃で40時間加熱した。この溶液は重合後、非常に粘稠性となった。このポリマー溶液をDI水で希釈し、真空凍結乾燥して、白色固体の生成物を得た。
【0142】
実験6:
SiO2コーティングアルミニウム基板上のSAXハイドロゲルコーティングの製造
3 mol.%の光架橋可能な基を有するブレンドコポリマー溶液をメタクリレートコーティングアルミニウム基板の表面に分配した。次に基板を3,000 RPMにて1分間、スピンコーティング処理に付した。そしてポリマーコーティングチップを、およそ360 nmの波長の紫外線光(水銀ショートアークランプ、365 nmにて20 mW/cm2)に20分間曝した。FTIRの結果によって、アルミニウム基板表面上のSAXハイドロゲルコーティングの形成を確認した。
【0143】
比較研究のために、共重合によって製造した3 mol.%BP修飾SAXコポリマーをまた、ハイドロゲル形成に用いた。
【0144】
アルミニウム基板表面上のSAXハイドロゲルコーティングの安定性を調べるために、SAXポリマーハイドロゲルコーティングチップをDI水に浸漬し、表面反射FTIRを用いて、その後本実験を行った。全ての場合において、FTIRスペクトルは、数時間の水浸漬後において、ハイドロゲルコーティングのIRピーク強度が減少しなかったことを示した。この結果は、ブレンドコポリマーより製造されたハイドロゲルコーティングが、共重合により製造されたものと同様に安定であることを示した。従って、ブレンドする方法は、最適なBP含有量を調べるために各特定のコポリマーを作製するための別個の重合を行う必要のない平均BP含有量を調整するための手段を提供する。
【0145】
SELDI分析との関連において、さらに、ブレンド方法および共重合方法によって製造されたSAXチップは、本質的に同一の特性を有する。共に、50 mM pH 9.0 Tris-HCl緩衝溶液中において、ミルクタンパク質試料に強固に結合した。ProteinChipを用いるプロトコルについては、WO 00/66265(Richら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」2000年11月9日)を参照のこと。図4は、低分子量および高分子量におけるブレンド方法によって製造したSAXチップのタンパク質認識プロフィールの複合質量スペクトルを示す。このプロフィールはSAXプローブに保持されているタンパク質を示す。
【0146】
2. デキストランベースの材料
【0147】
実験7:
4-ベンゾイル安息香酸を用いたデキストランの誘導体化
図5に示されるように、4-ベンゾイル安息香酸を、結合試薬としての1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をデキストランと反応させ、BP修飾デキストランを製造する。合成方法は以下のとおりである:
300 mLのDMSOを、17.54グラムのデキストラン(MW約70,000、Sigma;使用する前に100℃で一晩真空乾燥した)、8.57グラムの4-ベンゾイル安息香酸、11.72グラムの1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および6.94グラムのジメチルアミノピリジンを入れた、マグネチックスターラを備え、乾燥した500 mLの丸底フラスコに加えた。溶液を氷浴で1時間撹拌して冷却した。氷浴を取り除き、そして溶液を室温にて一晩撹拌した。その後、沈殿した副産物を濾過し、濾液をアセトンに注ぎ、ポリマーを沈殿した。ポリマー沈殿物をDI水中に再溶解し、そして溶液混合物を継ぎ目のないセルロースチューブ(カットオフ分子量、12,000)に入れ、それを通してDI水に対して透析した。透析したポリマー溶液を真空凍結乾燥して、白色固体の生成物を得た。1H NMRによって、所望の生成物の形成を確認した。修飾度は約5 mol.%である(すなわち、20個の糖単位のうちの1つがBP単位で修飾された)。
【0148】
4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンを用いたデキストランの誘導体化
BP修飾デキストランへの代替的なアプローチは、4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンとデキストランとを反応させることによるものである。
【0149】
実験8:
4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンの合成
図6に図示するように、100 mLの乾燥アセトンを、15.05グラムの4-ヒドロキシベンゾフェノン、32.1グラムのエピクロロヒドリン、および6.2グラムの炭酸カリウムを入れた、マグネチックスターラを備え、乾燥した250 mLの丸底フラスコに加えた。この溶液を加熱し6時間還流して、その後室温まで冷却した。沈殿した塩化カリウムを濾過し、そしてこの溶液を蒸発して、過剰のエピクロロヒドリンを除去した。粗製生成物をメタノールから再結晶化した。1H NMRデータによって、所望の生成物の形成を確認した。
【0150】
実験9:
デキストランと4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンとの反応
図7に従って、100 mLのDMSOを、23.85グラムのデキストラン(MW 約70,000, Sigma;使用する前に100℃で一晩真空乾燥した)、6.04グラムの4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノン、および3.96グラムの1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(DBU)を入れた、マグネチックスターラを備え、乾燥した250 mLの丸底フラスコに加えた。この溶液を室温にて一晩撹拌した。その後、この溶液をアセトンに注ぎ、ポリマーを沈殿した。ポリマー沈殿物をDI水に再溶解し、そして溶液混合物を、継ぎ目のないセルロースチューブ(カットオフ分子量、12,000)を通してDI水に対して透析した。透析したポリマー溶液を真空凍結乾燥して、白色固体の生成物を得た。1H NMRによって、所望の生成物の形成を確認した。修飾度は約3 mol.%である。
【0151】
実験10:
1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)で予め活性化したデキストランチップの製造
ブレンドによるBP修飾デキストラン溶液の製造。
【0152】
5 mol.%BP修飾デキストラン1部を、未変性デキストラン(MW約70,000、Sigma)1部とDI水/イソプロパノール溶媒混合液中にて混合し、2.5 mol.%BP修飾ブレンドデキストラン溶液を得る。
【0153】
1 mol.%BP修飾ブレンドデキストラン溶液をまた、 5 mol.%BP修飾デキストラン1部と未変性デキストラン(MW 約70,000、Sigma)4部をDI水/イソプロパノール溶媒混合液中で混合することによって製造した。
【0154】
BPの濃度は、ハイドロゲルコーティングの膨潤特性に相関し、重要なパラメータ(例えば、構造、力学的特性、および表面結合網状構造体の透過率など)に影響する。
【0155】
実験11:
Al表面上のデキストランハイドロゲルコーティングの製造
2.5 mol.%BP含有ブレンドデキストラン溶液を、メタクリル酸塩コーティングアルミニウム基板の表面に分配し、基板を3,000 RPMにて1分間、スピンコーティング処理に付した。その後、ポリマーコーティングチップを、およそ360 nmの波長の紫外線光(水銀ショートアークランプ、365nmにて20mW/cm2)に20分間曝した。反射FTIRの結果(図8(a)参照)より、アルミニウム基板表面上のデキストランハイドロゲルコーティングの形成を確認した。得られたコーティングは、24時間の水浸漬に対して安定であった。
【0156】
デキストランコーティングチップを1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI, Aldrich)と反応させ、予め活性化した表面を製造した。合成手順は以下のとおりであった:
デキストランコーティングチップを、DMSO中5重量%のカルボニルジイミダゾール(CDI)溶液に1時間浸漬した。次にチップを溶液から取り出し、DMSO、続いてアセトンを用いて洗浄し、窒素流で乾燥した。反射FTIRスペクトル(図8(b)参照)によって、ヒドロキシルピーク(3500〜3300cm-1)のほぼ完全な消失および、1771cm-1における強いカルボニルピークの形成によって示されるように、ヒドロキシル基のイミダゾールカルボキシエステルへのほとんど定量的転換を確認した。
【0157】
これらCDI活性化チップは、遊離第一級アミン基と共有結合するように設計される。一般的な用途としては、免疫アッセイ、受容体−リガンド結合の研究および転写因子の分析が挙げられる。ProteinChipの使用に関するプロトコルについては、WO00/66265(Richら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」2000年11月9日)を参照のこと。図9は、一般的な抗体−抗原認識プロファイルのSELDIスペクトルを示す。SELDIによって、CDI-デキストランチップが、良好な特異的結合および低レベルの非特異的な結合を与えることを示した。
【0158】
実験12:
ジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)チップの製造
ブレンドによるBP修飾DEAEデキストラン溶液の製造
38.4 mgのDEAEデキストラン(MW > 500,000、Aldrich)を9.6 mgの5 mol.%BP修飾デキストランと混合して、1 mol.%BP DEAEデキストランブレンド溶液を得る。
【0159】
DEAEハイドロゲルコーティングを製造するために、3重量%の上記溶液をメタクリレートコーティングアルミニウム基板の表面に分配し、乾燥した後、ポリマーコーティングチップを波長およそ360nmの紫外線光に20分間曝した(水銀ショートアークランプ、365 nmにて20mW/cm2)。反射FTIRの結果によって、アルミニウム基板表面上のDEAEデキストランハイドロゲルコーティングの形成を確認した。
【0160】
ハイドロゲルコーティングの化学的安定性を評価するために、DEAEチップを様々な溶媒系に浸漬し、次に反射FTIRを用いて、表面上の化学の保持について調べた。4種類の溶媒条件を用いた:DI水、0.2M NaCl緩衝液、アセトニトリル、およびDMSO。チップを2〜20時間室温で溶媒に浸漬した。反射FTIRを用いて、溶媒浸漬の前および後に化学変化を調べた。IRの結果によって、DEAEハイドロゲルを0.2MNaCl緩衝液、アセトニトリル、およびDMSOに20時間まで浸漬しても安定であることを示した。ハイドロゲルはまた、DI水に4時間まで浸漬しても安定である。
【0161】
SELDI分析に関連して、さらに、DEAEデキストランチップは、50 mM pH 7.5 Tris-HCl緩衝溶液中、アルブミン枯渇ヒト血清と強固に結合した。ProteinChipの使用に関するプロトコルについては、例えばWO00/66265(Richら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」2000年11月9日)を参照のこと。図10は、アルブミン枯渇ヒト血清タンパク質認識プロファイルの低分子量および高分子量における複合質量スペクトルを示す。プロファイルは、DEAEデキストランプローブに保持された血清タンパク質を示す。
【0162】
実験13:
デキストラン硫酸チップの製造
デキストラン硫酸ナトリウム塩は、デキストランのポリアニオン誘導体である。
【0163】
ブレンドによるBP修飾デキストラン硫酸溶液の製造
12.8 mgのデキストラン硫酸(MW > 500,000、Aldrich)、25.6 mgの未変性デキストラン(MW 500,000、Aldrich)を、9.6 mgの5 mol.%BP修飾デキストランと混合し、1 mol.%のBPブレンドデキストラン硫酸水溶液を得る。未変性デキストランを希釈剤として用いて、結合官能基の密度を調整した。
【0164】
デキストラン硫酸ハイドロゲルコーティングを製造するために、3重量%の上記溶液をメタクリレートコーティングアルミニウム基板の表面に分配し、乾燥した後、ポリマーコーティングチップを波長およそ360 nmの紫外線光(水銀ショートアークランプ、365nmにて20mW/cm2)に20分間曝した。反射FTIRの研究によって、アルミニウム基板表面上のデキストラン硫酸ハイドロゲルコーティングの形成を確認した。
【0165】
実験14:
MEP/MBIチップアレイを製造するためのプロトコル
−基板の製造:
○平面アルミニウム基板を、二酸化ケイ素、次にメタアクリルオキシプロピル-トリメトキシシランを用いて、CVD(化学蒸気堆積法)によってコーティングした。
【0166】
−ベンゾフェノン修飾デキストラン:実験7を参照のこと。
【0167】
−デキストラン修飾:MEP
○アリル化、続くMEP修飾。
【0168】
・アリル化
・20gのデキストラン(Sigma、MW 約70,000)を、100mlのDI水に溶解した。
【0169】
・200mgの水素化ホウ素ナトリウムを加え、酸化を防いだ。
【0170】
・次に12.5mlの水酸化ナトリウムを加えた。
【0171】
・5分後、2mlの臭化アリルを加えた。
【0172】
・撹拌しながら16時間後、生成物(アリル‐デキストラン)を、200mlのアセトンを用いて沈殿した。
【0173】
・精製するために、その固体を100mlの水に再溶解し、次いで200 mLのアセトンを注いだ。これをもう一度繰り返す。
【0174】
・最終的に、その固体を200mlのDI水に再溶解し、そして凍結乾燥した。
【0175】
・MEP修飾
・このアリル化デキストラン(2g)を20mlのDI水に溶解した。
【0176】
・この溶液に、1.0gのメルカプトエチルピリジン-HCl(Biosepra)と20mgのAZAP(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロリド)を連続的に加えた。
【0177】
・次にこの溶液をアルゴンを用いてパージし、その後キャップをした。
【0178】
・溶液を85℃にて2時間撹拌しながら保持した。
【0179】
・生成物を50 mlのアセトンを用いて沈殿し、20 mlのDI水に再溶解した。
【0180】
・生成物をさらにMWCO 5000セルロース膜を用いて透析して精製し、そして凍結乾燥した。
【0181】
−デキストラン修飾:MBI
○アリル化、ブロム化、そしてMBI修飾
・アリル化
・10gのデキストラン(Sigma、MW 約70,000)を 50mlのDI水に溶解した。
【0182】
・100mgの水素化ホウ素ナトリウムを加えて、酸化を防いだ。
【0183】
・そのあと12.5mlの水酸化ナトリウムを加えた。
【0184】
・5分後、3mlの臭化アリルを加えた。
【0185】
・撹拌しながら16時間後、生成物(アリル-デキストラン)を100mlのアセトンを用いて沈殿した。
【0186】
・精製するために、固体を50mlの水に再溶解し、そして100mlのアセトンを注いだ。これをもう一度繰り返す。
【0187】
・最終的に、この固体を200 mlのDI水に再溶解し、そして凍結乾燥した。
【0188】
・ブロム化
・このアリル化デキストラン(5g)を100 mlのDI水に溶解した。
【0189】
・この溶液に、1.5gのN-ブロモコハク酸イミド(Aldrich)と2.5gの臭化カリウムを連続的に加えた。
【0190】
・そのあとリン酸(DI水で1/3に希釈したもの)を用いてpHを3.7〜3.9に調整した。
【0191】
・この溶液を1時間室温にて、(臭素が発生するため)フード下で撹拌した。
【0192】
・MBI修飾
・この溶液に、2.7 gのメルカプトベンズイミダゾールスルホン酸(Aldrich)を加えた。
【0193】
・10M NaOHを用いてpHを11〜11.5に調整した。
【0194】
・pHを1時間チェックし、必要な場合には調整した。
【0195】
・16時間後、この溶液に200 mlのアセトンを加えて、生成物を沈殿した。
【0196】
・生成物を100 mlの水を用いて溶解し、そしてMWCO 5,000 セルロース透析バッグを用いて透析した。
【0197】
・凍結乾燥した後、生成物(MBI-デキストラン)を白色の粉末として得た。
【0198】
○ベンゾフェノン修飾デキストラン:実験7を参照のこと
−基板へのMEP/MBIポリマーのコーティング:
○2%の修飾デキストラン溶液をDI水を用いて作製した。
【0199】
○実施溶液の作製
・MEPについて
・900μlの2%MEP-デキストラン、100μlの2%ベンゾフェノン-デキストラン、400μlの10%グリセロール、および100μlのDI水を、4ml アンバーバイアルに加えた。
【0200】
・MBIアレイについて
・900μlの2%MBI-デキストランと100μlの2%ベンゾフェノン-デキストランを、4ml アンバーバイアルに加えた。
【0201】
○1μlの上記デキストラン溶液と1μlのエタノールを、シラン処理した(silanated)基板に連続的に分配した。
【0202】
○表面をオーブン内で乾燥し、近紫外線に20分間曝し、硬化した。
【0203】
○照射の後、表面をDI水を用いて洗浄し、乾燥した。
【0204】
以下の実施例は、米国特許出願第10/660,738号(2003年9月12日出願)に既に記載されており、実施形態Aの説明において上述した。
【0205】
実験15:MBISAバイオチップアレイの製造
基板の製造
平面のアルミニウム基板(「チップ」)を、二酸化ケイ素を用いたスパッタリングによってコーティングした。疎水性ポリマー(Cytonix, Beltsville, MD)を用いて、チップ上にアドレス可能な位置を作製した。この方法で製造したチップを、プラズマクリーナー中できれいにし、化学蒸気堆積(CVD)用オーブンに導入した。メタアクリルオキシプロピル-トリメトキシシランをCVDによって、チップ上に堆積し、真空を適用して、そしてコーティングチップを60℃にて硬化した。
【0206】
デキストラン修飾
アリル化
10gのデキストラン(Sigma, MW 約75,000)を、50mlの脱イオン化水に100mgの水素化ホウ素ナトリウムと一緒に溶解し、酸化を防いだ。このデキストラン混合物に水酸化ナトリウム溶液(12.5ml)を加え、続いて5分後に臭化アリル(3 mL)を加えた。撹拌しながら16時間後、生成物(アリル-デキストラン)を、100 mLのアセトンを添加することによって沈殿した。アリル化ブドウ糖を、アセトン(100 mL)を付加することによって水溶液(50 mL)から粗製生成物を2回沈殿することによって精製した。最終的に、精製した生成物を、200mlのDI水に再溶解し、そして凍結乾燥した。
【0207】
ブロム化およびメルカプトベンズイミダゾールスルホン酸修飾
アリル化デキストラン(5g)水溶液(100 mL)を1.5gのN-ブロモコハク酸イミド(Aldrich)と2.5gの臭化カリウムを用いて連続的に処理した。次に、リン酸(DI水で1/3に希釈したもの)を用いてpHを、3.7〜3.9に調整した。得られた溶液を室温で1時間(臭素が発生するために有害ガスフード下で)撹拌した。
【0208】
この溶液に2.7gのメルカプトベンズイミダゾールスルホン酸(Aldrich)を加えた。10M NaOH(水溶液)を用いてpHを11〜11.5に調整し、1時間チェックし、そして必要な場合には調整した。16時間後、この溶液に200mLのアセトンを加え、粗製生成物を沈殿した。この粗製生成物を次に、100mLの水に再溶解して、MWCO 5,000 セルロース透析バッグを用いて透析した。凍結乾燥した後、得られた生成物(MBI-デキストラン)を白色の粉末として得た。
【0209】
ベンゾフェノンデキストラン
250mlの丸底フラスコに、2.26gの4-ベンゾイル安息香酸(Aldrich, ベンゾフェノン 4-カルボン酸)、2.26gのジシクロヘキシルカルボジイミド(Aldrich, DCC)および50mLの乾燥DMSOを加えた。
【0210】
8.1gのデキストラン(Sigma, MW 約75,000)と0.12gのジメチルアミノピリジン(DMAP)の100ml DMSO溶液を、さらに滴下漏斗を通して、撹拌したベンゾフェノン溶液に滴加した。16時間の撹拌の後、得られた沈殿物を濾過し、そして濾液から溶媒を、回転式エバポレーターで取り除いた。場合によっては、粗製生成物をさらに、再結晶によって精製することができる。
【0211】
基板上へのMBIポリマーのコーティング
1.35gのMBIデキストランおよび0.15gのベンゾフェノンデキストラン(上記のように製造したもの)を100 mLのDI水に溶解した。1μlのこのデキストラン溶液と1μlのエタノールを、シラン処理したチップ上に連続的に堆積した。コーティングチップを、オーブン中で乾燥し、20分間近紫外線照射して硬化した。照射した後、チップをDI水で洗浄し、そして乾燥した。
【0212】
本発明は、好ましい実施形態およびそれらの好ましい用途に関して説明および例示されたが、それらに限定されない。なぜなら、変形および変更が、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明の全範囲内にあるようになしうるためである。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】ポリマーブレンド手法の概要。
【図2】[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](4-ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミドモノマーの合成。
【図3】SAXモノマーと光架橋可能なモノマーからなるコポリマーの製造。
【図4】ブレンドによって製造されたSAX チップの血清プロファイリング。
【図5】4-ベンゾイル安息香酸とデキストランとの反応。
【図6】4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンの合成。
【図7】4-(グリシジルオキシ)ベンゾフェノンとデキストランとの反応。
【図8】Alチップ上の、(a)デキストランハイドロゲル;(b)CDI活性化デキストランハイドロゲルの反射FTIRスペクトル。
【図9】抗体-抗原認識研究に用いられるCDI-デキストランチップのSELDIスペクトル。
【図10】ブレンドにより製造されたDEAEデキストランチップの血清プロファイリング。
【図11】Ponceau Sで染色したMEP。
【図12】MEP上のIgGの選択的結合/洗浄。
【図13】アルブミン枯渇血清のプロファイリング。
【図14】アルブミン枯渇血清のプロファイリング。
【図15】アルブミン枯渇血清のプロファイリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物であって、該組成物は、
a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマー、および、
b)生体分子アナライトと選択的に結合する官能基を含む第2ポリマーを含み、ここで、該第1ポリマーおよび該第2ポリマーにおける生体分子アナライトと選択的に結合するための該官能基は同一であってもよいし、または異なっていてもよい、ならびに、
該第1および第2ポリマーの量ならびに光架橋性官能基と生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基の量は、該ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルに光架橋する能力および生体分子アナライトに選択的に結合するハイドロゲルの能力をそれぞれ与える量である、上記組成物。
【請求項2】
前記第1ポリマーが、1つ以上のモノマーをホモ重合するかまたは共重合することによって製造されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1ポリマーが、モノマーを共重合して、光架橋可能な官能基および生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むコポリマーを形成することによって製造されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1ポリマーが、予め官能化した第1ポリマーを合成的に修飾して、前記光架橋可能な官能基を導入することによって製造されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1ポリマー、前記第2ポリマーまたはその両方が、水溶性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1ポリマーが光架橋可能な官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、前記第2ポリマーが生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1ポリマーが、光架橋可能な官能基を含む約0.5モル%〜約15モル%のモノマーサブユニットを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーの各々が、約1,000〜約10,000,000の平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記光架橋可能な官能基が紫外線硬化性官能基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記光架橋可能な官能基が、少なくとも1つのベンゾフェノン、ジアゾエステル、アリールアジド、およびジアジリン、またはそれらの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記光架橋可能な官能基が、ベンゾフェノン基またはその誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記選択的に結合するための官能基が、前記生体分子アナライトと共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記選択的に結合するための官能基が、前記生体分子アナライトと非共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ハイドロゲル組成物がさらに、エネルギー吸収部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記選択的に結合するための官能基が、クロマトグラフィー結合官能基または生体特異的結合官能基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ハイドロゲル組成物が、光開始剤を実質的に含まず、かつ蛍光基をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1ポリマーが、光架橋可能な官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、前記第2ポリマーが、選択的に結合するための官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、該第1および第2ポリマーが水溶性ポリマーである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1および第2ポリマーが水溶性多糖ポリマーであり、そして該第1ポリマーが、予め官能化した第1ポリマーを合成的に修飾して前記光架橋可能な官能基を導入することによって製造されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋が光架橋である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記架橋が熱架橋である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ハイドロゲルポリマーブレンド組成物であって、
A)i)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、
ii)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾され、それによって架橋されたハイドロゲルを形成しうる第2ポリマーとを含むハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋し;
B)生体分子アナライトに選択的に結合するための官能基を含むように該架橋されたハイドロゲルを合成的に修飾する、
ことによって製造されたものであり、
ここで、該第1および第2ポリマーの量、ならびに該光架橋可能な官能基および該選択的に結合するための官能基の量が、該ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンドに、ハイドロゲルに光架橋する能力、および生体分子アナライトに選択的に結合するハイドロゲルを与える量である、上記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項22】
前記架橋が光架橋である、請求項21に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項23】
前記架橋が熱架橋である、請求項21に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項24】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1ポリマー、前記第2ポリマー、またはその両方が、水溶性または水膨潤性のポリマーである、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1ポリマーが、1つ以上のモノマーをホモ重合するか、または共重合することによって製造されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記第1ポリマーが、モノマーを共重合して、光架橋可能な官能基および生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むコポリマーを形成することによって製造されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1ポリマーが、予め官能化した第1ポリマーを合成的に修飾して前記光架橋可能な官能基を導入することによって製造されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1ポリマーが光架橋可能な官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、および、前記第2ポリマーが選択的に結合するための官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1ポリマーが光架橋可能な官能基を含む約0.5モル%〜約15モル%のモノマーサブユニットを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーの各々が、約1,000〜約10,000,000の平均分子量を有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーがそれぞれ水溶性である、請求項21に記載の組成物。
【請求項33】
前記光架橋可能な官能基が紫外線硬化性官能基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項34】
前記光架橋可能な官能基が、少なくとも1つのベンゾフェノン、ジアゾエステル、アリールアジド、およびジアジリン、またはそれらの誘導体である、請求項21に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が蛍光基をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物がエネルギー吸収部分をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項37】
前記選択的に結合するための官能基が生体分子アナライトと共有結合するためのものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項38】
前記選択的に結合するための官能基が、前記生体分子アナライトと非共有結合するためのものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項39】
前記選択的に結合するための官能基が、生体特異的結合基またはクロマトグラフィー結合基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項40】
前記選択的に結合するための官能基が吸着基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項41】
前記第1ポリマーが光架橋可能な官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、前記第2ポリマーが選択的に結合するための官能基を含む側基を有する直鎖状ポリマー骨格を含み、ならびに、該第1および第2ポリマーが水溶性ポリマーである、請求項21に記載の組成物。
【請求項42】
前記第1および第2ポリマーが水溶性ポリマーであり、ならびに、該第1ポリマーが予め官能化した第1ポリマーを合成的に修飾して、第一モノマーサブユニットの光架橋可能な官能基を導入することによって製造されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項43】
前記第1および第2ポリマーがヒドロキシル基を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項44】
前記第1および第2ポリマーが多糖である、請求項21に記載の組成物。
【請求項45】
前記第1および第2ポリマーがヒドロキシル基を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項46】
前記第1および第2ポリマーが多糖である、請求項21に記載の組成物。
【請求項47】
前記第1および第2ポリマーが修飾デキストランである、請求項21に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
基板表面と該表面上のハイドロゲルポリマーブレンド組成物とを含んでなる基板であって、該組成物が(i)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、架橋した官能基を含む第1ポリマー、および、(ii)該第1ポリマーの生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基と同一または異なるものでありうる生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含む第2ポリマーを含む、上記基板。
【請求項52】
前記基板表面がプライマー層の表面である、請求項51に記載の基板。
【請求項53】
前記基板表面が平面である、請求項51に記載の基板。
【請求項54】
前記基板表面がプライマー層の表面であり、および、前記ハイドロゲルが均一な層である、請求項53に記載の基板。
【請求項55】
前記基板表面がプライマー層の表面であり、および、前記ハイドロゲルが目立たないスポットの形態である、請求項53に記載の基板。
【請求項56】
前記ハイドロゲルが前記基板表面に共有結合している、請求項53に記載の基板。
【請求項57】
前記第1および第2ポリマーが多糖を含み、および、前記第1ポリマーが架橋したベンゾフェノン官能基を含む、請求項51に記載の基板。
【請求項58】
前記ハイドロゲルが光開始剤を実質的に含まない、請求項51に記載の基板。
【請求項59】
前記ハイドロゲルが光開始剤を実質的に含まない、請求項52に記載の基板。
【請求項60】
前記ハイドロゲルが光開始剤を実質的に含まない、請求項56に記載の基板。
【請求項61】
前記生体分子アナライトの選択的に結合するための官能基が、生体分子アナライトが共有結合するためのものである、請求項51に記載の基板。
【請求項62】
前記生体分子アナライトの選択的に結合するための官能基が、生体分子アナライトが非共有結合するためのものである、請求項51に記載の基板。
【請求項63】
前記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物が約1ミクロン〜約10ミクロンのフィルム厚さを有するフィルムである、請求項51に記載の基板。
【請求項64】
前記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物が蛍光ポリマーをさらに含む、請求項51に記載の基板。
【請求項65】
前記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物が蛍光基をさらに含む、請求項51に記載の基板。
【請求項66】
前記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物がエネルギー吸収部分をさらに含む、請求項51に記載の基板。
【請求項67】
前記基板がバイオチップである、請求項51に記載の基板。
【請求項68】
前記生体分子アナライトがタンパク質である、請求項51に記載の基板。
【請求項69】
前記基板がバイオチップであり、前記生体分子アナライトがタンパク質であり、ならびに、前記ハイドロゲルポリマーブレンド組成物が約1ミクロン〜約10ミクロンのフィルム厚さを有するフィルムである、請求項51に記載の基板。
【請求項70】
前記基板表面がプライマー層の表面である、請求項69に記載の基板。
【請求項71】
ハイドロゲル組成物を用いて表面を官能化するための方法であって、該方法が、
(A)(i)表面を提示する基板、および(ii)請求項75または76に記載の組成物を用意すること、(B)該基板に請求項85または86に記載の組成物を接触させ、該表面上に組成物の層を形成すること、
(C)該表面上の少なくともいくつかの組成物を架橋し、該表面と接触しているハイドロゲルを形成すること、を含む上記方法。
【請求項72】
前記基板表面が支持層によって支持されているプライマー層の表面である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記架橋が光架橋であり、ならびに、いくらかの組成物が架橋されかついくらかの組成物は架橋されないように選択する、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記選択的な光架橋が、光架橋したハイドロゲルの目立たないスポットを与える、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
架橋されている前記組成物が、前記基板表面上の実質的に均一な層であり、平均約5nm〜約10ミクロンの厚さの層を有する、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記基板がバイオチップの基板である、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まない、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記組成物が光開始剤を実質的に含まず、前記基板がバイオチップの基板である、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記第1および第2ポリマーを混合し、前記ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンドを形成するステップを含む、請求項85または86に記載の組成物を作製するための方法。
【請求項82】
請求項1または21に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物を含む粒子。
【請求項83】
生体分子アナライトを検出するための方法であって、(i)請求項51に記載の基板と生体分子アナライトを含む試料とを接触させること、次いで(ii)選択的に結合するための官能基と生体分子アナライトとの結合によって該生体分子アナライトを検出すること、を含む上記方法。
【請求項84】
1つ以上の架橋基で置換されている第1多糖と第2多糖とから成る架橋ブレンド。
【請求項85】
ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物であって、
a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマー、および、
b)(i)第1ポリマーおよび該第2ポリマーにおける生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基が同一であってもよいしまたは異なるものであってもよい、該生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基、あるいは(ii)1つ以上エネルギー吸収部分、を含む第2ポリマー、
を含み、ここで、該第1および第2ポリマーの量、ならびに該光架橋可能な官能基および該生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基の量は、該ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、ハイドロゲルに光架橋する能力、および該生体分子アナライトに選択的に結合する該ハイドロゲルの能力をそれぞれ与える、上記組成物
【請求項86】
ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物であって、
a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマー、および、
b)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾されうる第2ポリマー、を含み、
ここで、該第1および第2ポリマーの量、ならびに該光架橋可能な官能基の量が、該ハイドロゲル前駆体ポリマー混合物にハイドロゲルに光架橋する能力を与える、上記組成物。
【請求項87】
ハイドロゲルポリマーブレンド組成物であって、
a)光架橋した官能基を含む第1ポリマーと、
b)(i)生体分子アナライトと非共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基、(ii)生体分子アナライトと共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基、もしくは(iii)1つ以上エネルギー吸収部分、またはそれらの組合せを含む第2ポリマーとを含む、上記組成物。
【請求項88】
前記第2ポリマーが、(i)生体分子アナライトと非共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基を含む、請求項87に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項89】
前記第2ポリマーが、(ii)生体分子アナライトと共有結合によって選択的に結合するための1つ以上の官能基を含む、請求項87に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項90】
前記第2ポリマーが(iii)1つ以上のエネルギー吸収部分を含む、請求項87に記載のハイドロゲルポリマーブレンド組成物。
【請求項91】
ハイドロゲルコーティングキットであって、
(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、かつ光架橋可能な官能基を含む、第1ポリマーを含む第1組成物と、
(b)(i)第1ポリマーおよび該第2ポリマーにおいて生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基が同一であってもよいしまたは異なっていてもよい、該生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基、あるいは、(ii)1つ以上のエネルギー吸収部分を含む第2ポリマーを含む第2組成物とを含む、上記キット。
【請求項92】
ハイドロゲルコーティングキットであって、
(a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、かつ光架橋可能な官能基を含む、第1ポリマーを含む第1組成物と、
(b)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基を含むように合成的に修飾されうる第2ポリマーを含む第2組成物とを含む、上記キット。
【請求項93】
ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物であって、
a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、
b)エネルギー吸収官能基を含む第2ポリマーとを含み、
ここで、該第1および第2ポリマーの量ならびに該光架橋可能な官能基および該エネルギー吸収官能基の量は、該ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、該ハイドロゲルに光架橋する能力、およびレーザーのような高エネルギー源による被照射時に、結合したアナライトを気相に脱離することを促すハイドロゲルの能力を、それぞれ与える、上記組成物。
【請求項94】
ハイドロゲルポリマーブレンド前駆体組成物を架橋することによって製造されたハイドロゲルポリマーブレンド組成物であって、
a)生体分子アナライトと選択的に結合するための官能基も場合により含む、光架橋可能な官能基を含む第1ポリマーと、
b)第2ポリマーとを含み、
ここで、該ハイドロゲルが生体分子と共有結合を形成することができる反応基をさらに含み、ならびに、
該第1および第2ポリマーの量、ならびに該光架橋可能な官能基および該エネルギー吸収官能基の量が、該ハイドロゲル前駆体ポリマーブレンド組成物に、該ハイドロゲルへ光架橋する能力を与える、上記組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−531801(P2007−531801A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503883(P2007−503883)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/008210
【国際公開番号】WO2005/095507
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(504121623)バイオ−ラッド・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】