説明

光沢インクジェット記録用紙および光沢インクジェット記録用紙の製造方法

【課題】
光沢インクジェット記録用紙に関し、詳しくはインク吸収性、光沢性等の光沢インクジェット記録用紙としての適性に優れ、かつキャスト加工に関して長時間操業しても生産性を落とすことのない、光沢インクジェット記録用紙およびインクジェット記録用紙の製造方法を提案する。
【解決手段】
支持体上に少なくとも1層以上の記録層を有する光沢インクジェット記録用紙において、該記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子と、親水性接着剤と、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有し、キャスト加工された層を設けることによって、これらの問題が解決される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吸収性、印字濃度、光沢性等の優れた光沢インクジェット記録用紙およびその製造方法であり、かつキャスト加工よる生産性の良好な光沢インクジェット記録用紙およびその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
ノズルから射出した、微細なインク液滴を記録用紙表面に付着させて画像を形成させるインクジェット記録方式は、他の印刷方法に較べ比較的安価にフルカラー記録物が得られること、記録印字時の騒音が少なく、高速記録印字が可能であることなどの理由から、端末プリンタ、大型プリンタ、ファクシミリ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
近年、インクジェットプリンタはデジタルカメラ等による撮影画像の出力などを目的として一般家庭ユーザへの普及とともに、一層の、高精細化・高速化が進んでいる。また、出力した記録画像の品質を銀塩方式の写真に近づけるために、インクジェット記録用紙には、用紙や記録物の光沢性が優れたものであるとともに、高い発色性や色の深みなど、高度な記録品質が求められるようになりつつある。
【0003】
表面光沢の高いインクジェット用紙を得る方法として、塗工層に中空のプラスチックピグメントや板状または微細粒子の無機顔料を含有させ、スーパーキャレンダー等の手段を用いて表面を処理することにより、表面平滑を高めたり、成膜性に優れたインク吸収性の合成樹脂を表面に塗したりする方法が知られてきたが、湿潤状態の塗工層を、鏡面を有する高温のロール(鏡面ロール)に圧着させて乾燥し、鏡面であるロール面を塗工層表面に写し取るキャスト加工法は、とりわけ高い表面光沢と平滑性が得られ、優れた印刷適性が得られる理由から、よりハイグレードな用紙の製造方法として利用されている。
【0004】
キャスト加工法としては、例えば下記を挙げることができる。
(イ)基材上に最表塗工層用塗工液を塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に高温の鏡面ロールに圧接、乾燥する方法(ウェットキャスト法)、
(ロ)基材上に最表塗工層を塗工後、最表塗工層を、再湿潤処理液を用いて再湿潤(リウェット)させた後、高温の鏡面ロールに圧接、乾燥する方法(リウェットキャスト法)、
(ハ)基材上に最表塗工層用塗工液を塗工した後、該塗工液をゲル化させてゲル状態の塗工層とした後、高温の鏡面ロールに圧接、乾燥する方法(ゲル化キャスト法)、
(ニ)鏡面ロールに最表塗工層用塗工液を塗工し、加熱、乾燥させて、鏡面ロール上に最表塗工層を形成した後、これに基材を圧接し、鏡面ロール上の最表塗工層を基材に転移させる方法(プレキャスト法)。
【0005】
上記に例示したキャスト加工法は、当業者間では、それぞれ別個の技術として認知されている。しかしながら、いずれも、湿潤可塑状態にある塗工層を、鏡面ロールに圧接、加熱、乾燥させ、最終的に、鏡面ロールから離型してロールの鏡面を塗工層表面に写し取る点は共通である。これらのキャスト加工法は、鏡面ロール上で乾燥させた用紙を鏡面ロールから離型させる適性、すなわち、離型性と呼ばれる適性の課題がある。離型性が劣ると、離型の際に最表層表面がダメージを受け、外観や光沢を損ね、甚だしい場合には紙基材が破断するなど、品質のみならず、生産性にも大きな影響を与えるなどの問題を生じる。
【0006】
上記のような問題が発生する原因は、必ずしも明らかではないが、例えば、高温の鏡面ロールと塗工層間に介在する離型剤が、操業の継続とともに塗工層によって運び去られる等によって、離型に介在する離型剤の量が不足して、ピックと呼ばれる離型不良の塗料の鏡面ロール上への付着が発生し易くなるものと考えられる。
操業の継続に伴う離型性低下を防止する方法としては、(1)鏡面ロール表面に離型剤を逐次付与する方法、(2)キャスト塗工層用塗工液、再湿潤液、ゲル化液などに離型剤を含有する方法等が採用される。
【0007】
例えば、特許文献1に開示されるように、鏡面ロール表面に直接、飽和脂肪酸および/またはその金属塩を塗布した後、ブレードで掻き取って、鏡面ロールの表面に離型剤の薄膜を形成する、上記(1)の方法が提案されている。また、特許文献2には、光沢ロールと接する層に離型剤を含有させる、上記(2)の方法が提案されている。このような離型性として、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸やその塩、パラフィンワックス類のサスペンジョン、ポリエチレンエマルジョン等が例示されている。
【0008】
インクジェット記録に用いる記録用紙には、インク中の染料及び/又は顔料の色材を定着するために、カチオン性化合物がインク定着剤として使用される。特にインク受容層にインク定着剤としてカチオン樹脂を含有する事により、インクの発色性を高め、深みのある記録画像を得ることが出来る。
インク中の色材が記録用紙の表面付近で定着されると、記録濃度が向上し、深みのある美しい画像を得易いため、特許文献3等では、最表層がカチオン性材料を含有することが提案されている。
【0009】
高い光沢を有するインクジェット記録用紙において、優れた記録品質を両立するためには、最表のキャスト層がカチオン性化合物を含有することが好ましい。
キャスト加工法において、最表のキャスト層がカチオン性化合物を含有するためには、キャスト加工を施される最表塗工層形成用塗工液、或いは再湿潤液などのキャスト加工に介在する処理液をカチオン性とする必要がある。
しかしながら、キャスト加工法で賞用される、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸やその塩、パラフィンワックス類のサスペンジョン、ポリエチレンエマルジョン等の離型剤の多くは、アニオン性の水溶性化合物、或いはアニオン性の水性分散物であり、カチオン性の処理液に含有することは出来ない。このため、カチオン性の処理液に含有させてキャスト加工の離型性を改善出来る離型剤を見出す必要がある。
【0010】
特許文献4〜8には、キャスト加工法に用いる、カチオン性の塗工液或いは処理液に添加することが出来る離型剤が各種例示されている。即ち、特許文献4〜6は、高級アルキルアミンまたはそれらの塩、高級アルキル第4級アンモニウム塩、高級カルボン酸またはそれらの塩、高級アルコール、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、シリコーン油など、多数のカチオン性若しくはノニオン性の水溶性化合物、或いは水性分散物が例示されている。しかしながら、これらに例示される雑多な材料は、カチオン性の塗工液或いは処理液を用いたキャスト加工法(カチオン系キャスト加工法)に使用したとしても、夫々、性状が異なり、例えば、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、シリコーン油を使用した場合、疎水性が強すぎて制御が難しく、インクの吸収を阻害するなどの問題を生じ易く、必ずしもインクジェット記録用紙の最表層に含有させて、高い光沢性と優れたインクジェット記録特性が得られるものではないのが実情である。
特許文献7、特許文献8には、操業時の離型性が良好な光沢インクジェット記録用紙および製造方法として、微細顔料を有する光沢層に、離型剤にアルキルあるいはアルケニルアンモニウム塩を含有することが開示されている。しかしながら、これらに開示されたアミン構造の離型剤を使用しても、鏡面ロール上で乾燥された光沢インクジェット用紙を剥離する際の離型性については必ずしも充分ではなかった。
さらに、組成物がどのような特性を発揮するか記載されておらず、本発明が組成物の構造に着目して新しく発見した知見とは異なるものである。
【0011】
以上のように、光沢インクジェット記録用紙に関し、詳しくはインク吸収性、光沢性等の光沢インクジェット記録用紙としての適性に優れ、かつキャスト加工に関して長時間操業しても生産性を落とすことのない光沢インクジェット記録用紙を得られるものはなく、またそのインクジェット記録用紙の製造方法も無かった。
【特許文献1】特開平11−279987号公報
【特許文献2】特開2002−337446号公報
【特許文献3】特開2004−114459号公報
【特許文献4】特開2006−321111号公報
【特許文献5】特開2007−118469号公報
【特許文献6】特開2008−114389号公報
【特許文献7】特開2005−014288号公報
【特許文献8】特開2006−205481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、光沢インクジェット記録用紙に関し、詳しくはインク吸収性、光沢性等の光沢インクジェット記録用紙としての適性に優れ、かつキャスト加工に関して長時間操業しても生産性を落とすことのない、光沢インクジェット記録用紙およびインクジェット記録用紙の製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は鋭意検討を重ねた結果、支持体上に少なくとも1層以上の記録層を有する光沢インクジェット記録用紙において、該記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子と、親水性接着剤と、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有し、キャスト加工された層を設けることによって、これらの問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は下記様態を含む。
〔1〕支持体上に1層以上の記録層を有し、該記録層の最表層表面に、キャスト加工が施されたインクジェット記録用紙において、
該記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子、親水性接着剤並びに、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を含有することを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
〔2〕高級脂肪族第1級アミンの炭素数が12乃至30であることを特徴とする〔1〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔3〕高級脂肪族第1級アミンの炭化水素基が直鎖飽和結合であることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔4〕高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩が、自己乳化型であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔5〕親水性接着剤が、水溶性接着剤、自己乳化型接着剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする〔1〕乃至〔4〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔6〕親水性接着剤が、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロースから選ばれる1種以上の水溶性接着剤である〔1〕乃至〔5〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔7〕親水性接着剤が、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂から選ばれる1種以上の自己乳化型接着剤であることを特徴とする〔1〕乃至〔5〕記載の光沢インクジェット記録用紙。
〔8〕支持体上に少なくとも1層以上の記録層を有する光沢インクジェット記録用紙の製造方法において、記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子と、親水性接着剤と、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有する、表面が湿潤状態の塗工層を、キャスト加工して形成することを特徴とする光沢インクジェット記録用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、インク吸収性、印字濃度、光沢性等の優れた光沢インクジェット記録用紙およびその製造方法であり、かつキャスト加工に関して長時間操業しても生産性を落とすことのない、生産性の良好な光沢インクジェット記録用紙およびその製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<支持体>
本実施の形態の光沢インクジェット記録用紙に用いられる支持体は、透気性の基材であれば特に限定されず、紙基材、透気性を有する樹脂フィルムまたはシート材を使用することが好ましい。とりわけ、優れた透気性、記録用紙としての取り扱い易さ、および廃棄の容易さ等の面から紙基材を使用することが好ましい。上記紙基材としては、通常使用される公知の紙基材を用いることができ、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙が挙げられる。また、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、中性紙等とも、適宜用いることが出来る。
【0017】
〔紙基材〕
これら紙基材の概要を説明する。紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等が添加されている。木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。特に、針葉樹および広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKPと称す)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKPと称す)が好ましい。また、パルプの漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプ、例えば、パルプ漂白に塩素化合物は使用するが塩素そのものを使用しないECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、パルプ漂白に塩素元素を一切使用しないTCF(Total Chlorine Free)パルプ等を用いた紙基材も好ましく使用することが出来る。
【0018】
これらのパルプは、叩解機により叩解されて用いられ、叩解度(フリーネス(c.s.f:Canadian Standard Freeness))を調節することによって、紙力、抄紙適性等を調節することが出来る。本発明においては、叩解度は特に限定しないが、250乃至550ml(JIS−P8121)が好ましい。
【0019】
紙基材は填料を含有することが出来る。該填料としては、たとえば、形質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルク等が好ましく用いられる。中でも軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライトは多孔質のため、インクジェット記録において打ち込まれたインク中の溶媒を吸収する能力に優れているために好ましく、特に焼成カオリン、軽質炭酸カルシウムを使用すると白色度の高い紙支持体が得られ、インクジェット記録体の光沢感も高まるので好ましい。
平滑度、透気度、紙力や剛性のバランスがとれ、光沢度や写像性、剛性のバランスに優れたインクジェット記録体が得られやすくなるという利点から、紙基材中の填料の含有率(灰分)は、20質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
また、紙基材には、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等の公知のサイズ剤、該サイズ剤の定着剤として硫酸バンド、紙力増強剤、カチオン化剤、変性澱粉等の歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等が助剤として適宜添加される。
【0021】
紙基材のサイズ度の調節、紙力の増強、平滑化等の目的のため、紙基材にはサイズプレスなどによる表面処理も適宜施すことが出来る。表面処理の方法としては、サイズプレスが好ましく用いられるが、その他ゲートロールやフイルムプレスなど各種公知の方法を適宜用いることが出来る。また、表面処理の材料は、澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等、公知公用の材料から、その目的に応じて1種若しくは2種以上を適宜組み合わせ、サイズプレス処理液などに含有して、用いることが出来る。
紙基材のステキヒトサイズ度(JIS−P8122)としては1乃至300秒程度が好ましく、4乃至200秒がより好ましい。該サイズ度を1秒以上とすることにより、塗工時に皺が発生する等、操業上の問題が生じ難くなり、300秒以下とすることによりインク吸収性の低下や、印字後のカールやコックリング(吸収ジワ)が悪化する問題は生じ難くなり、好ましい。
【0022】
紙基材の坪量は、特に限定するものではないが、20乃至400g/m程度が好ましい。
紙基材の王研式透気度(JapanTAPPI No.5)は10乃至1000秒が好ましく、10乃至200秒がより好ましく、さらに好ましくは20乃至100秒である。該透気度が10秒未満であると、記録層用塗工液が紙基材からなる支持体に過剰に浸透する虞があり、350秒を超えると、キャスト光沢ロールに圧接仕上げする際に、操業性が低下する虞があり、好ましくない。紙基材は、長網抄紙機などにより製造され、その厚さも、特に限定するものではないが、用途に応じて20μm〜500μmの範囲で適宜選択される。
【0023】
<記録層>
本発明は、上記、支持体上に少なくとも1層以上の記録層を有し、該記録層の最表層表面がキャスト加工されてなる。
記録層が1層の場合は、該記録層はキャスト加工のなされた最表層である。記録層が2層以上の場合には、支持体から最も離れた記録層がキャスト加工のなされた最表層である。この場合、支持体に近い記録層のインク定着性を高め、最表層は塗工量を小さくし、インク定着性よりも光沢発現性を重視した層(以下、光沢発現層とも言う)とすることも出来る。
また、支持体と記録層との間に、インク溶媒を吸収する、或いは、インク溶媒を支持体に浸透させない1層以上の下塗層を設けた構成とすることも出来る。
【0024】
本発明の記録層は、顔料と、これを保持する接着剤を含む。さらにインク中の染料や顔料をよりよく定着させるためにカチオン性のインク定着剤を含有することが好ましい。
【0025】
(顔料)
本発明の記録層に好適な顔料としては、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれ、粒子径が10nm乃至3μmの微細2次粒子顔料が好ましく用いられる。これらの顔料のなかでは、シリカが特に好ましく、1次粒子径5nm乃至50nm、2次粒子径10nm乃至300nmの気相法シリカがより好ましい。
顔料に使用するシリカとしては、シリカとカチオン性化合物とを混合して得られるシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子が好ましく、粉砕、分散して、粒子径10nm乃至2μmの凝集体微粒子として用いられる。このカチオン性化合物およびシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子は、インク定着剤としての機能を有しており、詳しくは、インク定着剤の項で説明する。
上記、シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の粒子径は30乃至500nmの範囲が最も好ましい。即ち、凝集体微粒子の粒子径が10nm未満では、インク吸収性が低下するおそれがあり、1μmを超えると、塗膜の透明性が劣ることによって印字濃度が低下し、また、平滑性が低く光沢性が劣るという問題がある。
【0026】
本発明の記録層に用いる顔料の粒子径は、動的光散乱法に基づく装置を使用して測定される有効径による、個数基準粒子径分布より求められるメジアン(中位)粒子径である。本発明者らは「動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500型(株式会社堀場製作所製)」を使用したが、測定原理が同じであれば、装置のモデルが異なっても、ほぼ同等の粒子径の値が得られる。
【0027】
本発明の記録層には、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ(含コロイダルシリカ)、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等の微粒子などの一種以上より適宜選択される、その他公知の顔料を、上記、本発明の記録層に好適な顔料に費用することが出来る。このような、公知の顔料は、本発明の効果を損なわない範囲で使用される。
【0028】
(接着剤)
本発明の記録層に使用することの出来る接着剤としては、乳化型接着剤と水溶性接着剤がある。
乳化型接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などよりなる共役ジエン系高分子化合物、アクリル系高分子化合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体化合物等のビニル系共重合体化合物等の乳化物よりなる接着剤が挙げられる。とりわけ、得られる塗膜のインク吸収性および透明性の面で、アクリル系高分子化合物およびウレタン系高分子化合物が特に好ましく使用される。また、水溶性接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の変性澱粉よりなる澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等の多糖類、ポリビニルアルコール及び、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールよりなるポリビニルアルコール類、水溶性ポリウレタン系高分子化合物、水溶性ポリエステル系高分子化合物などを挙げることが出来る。これらの乳化型接着剤、及び/又は水溶性接着剤は夫々単独、又は2種以上を併用して用いることが出来る。
【0029】
得られる記録層、及びインクジェット記録用紙の表面強度が優れているため、上記の各種接着剤の中でも、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールよりなるポリビニルアルコール類を用いることが好ましく、本発明においては、ポリビニルアルコールがとりわけ好ましく用いられる。
【0030】
ポリビニルアルコールは、鹸化度および重合度により性状が異なるため、ポリビニルアルコールの鹸化度および重合度は、目的に応じて選択される。高鹸化度のポリビニルアルコールは、大きな塗工層強度が得られるとともに、塗工液が泡立ちにくい特徴があり、製造時の作業性が良好であるため、鹸化度95%以上のポリビニルアルコールが好ましく、さらに好ましくは鹸化度98%以上の所謂、完全鹸化型ポリビニルアルコールが選択される。一方、鹸化度が75乃至90%程度の所謂、部分鹸化(不完全鹸化とも云う)型ポリビニルアルコールは、塗工層の可撓性が良好で、塗工層が強く曲げられた時に塗工層が割れて記録印字物の外観や記録品質を損なう問題(折り割れ)を防止する効果があるため好ましく用いられる。
また、本発明の記録層に用いられるポリビニルアルコールの好ましい重合度の範囲は、3500乃至5000である。重合度が3500未満であると、記録層の強度が弱く、塗工層を乾燥する際にひび割れが発生しやすく、また、断裁時に紙粉が発生する虞がある。一方、重合度が5000を超えると、インク吸収性が低下し、また、記録層塗工液の粘度が高くなり、記録品質のみならず塗工液調整の作業性や塗工適性が劣る虞がある。
ポリビニルアルコールは、その目的に応じて、好ましい鹸化度および重合度の材料を単独で用いても、異なる鹸化度および/または重合度のポリビニルアルコールを2種以上併用しても良い。
【0031】
接着剤の記録層中の配合量は、顔料100質量部当り7乃至50質量部の範囲であることが好ましい。接着剤の配合量が、7質量部未満であると塗膜強度が不充分である虞があり、50質量部を超えるとインクの吸収性を損なう虞がある。接着剤配合量の、より好ましい範囲としては、顔料100質量部当り10乃至40質量部である。
【0032】
(インク定着剤)
本発明の記録層には、インクジェット記録用インク中の色材染料を定着するためのインク定着剤を含有することが出来る。このインク定着剤により記録印字画像に耐水性を付与することが出来る。
上記、インク定着剤としては、カチオン性樹脂やカチオン性界面活性剤等のカチオン性化合物が用いられる。カチオン性樹脂は、印字濃度が優れているため、特に好ましく用いられ、一般にインクジェット記録用シートで用いられる各種公知のカチオン性樹脂を使用することが出来る。
【0033】
上記、カチオン性樹脂としては、(イ)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、(ロ)第2級または第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、またはそれらのアクリルアミドの共重合体、(ハ)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、(ニ)ジシアンジアミド−ホルムアルデヒド縮合体に代表されるグアニジン系カチオン性化合物、(ホ)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン縮合体に代表されるグアニジン系カチオン性化合物、(ヘ)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合体、(ト)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(チ)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(リ)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(ヌ)アリルアミン塩の共重合体、(ル)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート第4級塩共重合体、(オ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(ワ)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等を例示することが出来る。
本発明の実施の形態では、これらの定着剤を、記録層中に単独で使用、または2種以上を併用することが出来る。
【0034】
(シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子)
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の製造方法の概略を説明する。
例えば、インク定着剤に使用されるカチオン性化合物を気相法シリカ微粒子の分散液中に混合する、或いは、カチオン性化合物水溶液中に気相法シリカ微粒子を分散するなどの方法で、カチオン性化合物と気相法シリカ微粒子とが共存する混合液とすることにより、カチオン性化合物と気相法シリカとが凝集し、シリカ−カチオン性化合物凝集体が形成される。また、その結果、増粘することもある。
本発明に使用されるシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を形成するためには、平均粒子径が3乃至40nmの1次粒子よりなる気相法シリカが使用される。また、カチオン性化合物の添加量としては、気相法シリカ100質量部に対して、1乃至30質量部、好ましくは5乃至20質量部の範囲で調節される。
該シリカ−カチオン性化合物凝集体は、粉砕・分散して、実質的に前記1次粒子が凝集した2次粒子の構造を持った、平均粒子径0.01乃至1μmのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子とされ、記録層用塗工液に用いられる。
シリカ−カチオン性化合物凝集体を粉砕、微粒子化して分散する方法としては、機械的手段で凝集体に強い力を与えるブレーキング・ダウン法が採られる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー、ナノマイザー(商品名)、ホモミキサー等を用いることが出来る。
【0035】
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、インクジェット記録用インク中の色材染料を定着する機能を有し、顔料およびインク定着剤として本発明の記録層中に好ましく用いることが出来る。シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を用いることによって、記録層の透明性、表面強度、平滑性ならびにインクの吸収性、発色性、耐候性、耐水性等を向上させることができる。
【0036】
本発明においては、シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、単独または2種以上を併用、或いは、他のカチオン性化合物と併用して、さらにインクの定着性を高め、耐水性を向上させることが出来る。ここで使用されるカチオン性化合物としては、上記シリカ−カチオン性化合物凝集体の調製に用いたカチオン性化合物などを例示することが出来るが、水溶性カチオン性樹脂あるいはカチオン性エマルジョンが好ましく用いられる。特にカチオン性樹脂は、接着剤としての役割も併せて担うことが出来る。
【0037】
記録層には、さらに、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また、記録層中に、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0038】
(記録層の形成方法)
記録層を形成するためには、例えば、記録層用塗工液を塗布すると同時に、または、記録層用塗工液を塗布した塗工液層の乾燥途中に、該塗工液層が減率乾燥速度を示す前に、塗工液を増粘または架橋させて成膜して製造することが有効である。
具体的には、下記(A)〜(C)に挙げる方法が例示でき、適宜採用できるがこれらの方法に限るものではない。
【0039】
例えば、
(A)電子線照射によりハイドロゲルを形成する親水性樹脂を含有し、塗工の直後に、または、塗工された塗工液層の乾燥途中であって、該塗工液層が減率乾燥速度を示す前に、電子線照射して塗工液層を増粘(ハイドロゲルを形成)させる方法、
(B)記録層が接着剤を含有する塗工液であり、塗工の直後に、または、塗工された塗工液層の乾燥途中であって、該塗工液層が減率乾燥速度を示す前に、接着剤との架橋性を有する化合物で塗料を増粘、架橋させる方法、
(C)例えば接着剤として感温性高分子化合物(特開2003−40916号公報に記載された1定温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す)を含有させ、塗工の直後に塗工液層温度を低下させることによって塗工液層を増粘させる方法、
等が例示できる。
上記(A)及び(B)の方法で塗工層を形成する場合、接着剤としては、上記の、インクジェット記録用紙用として使用される公知の接着剤が使用できる。
【0040】
接着剤との架橋性を有する化合物としては、各種公知の架橋剤、ゲル化剤などが使用できる。上述の如く、本発明において使用される接着剤としてはポリビニルアルコールが好ましく用いられるが、該ポリビニルアルコールとの架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、ホウ酸およびホウ砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる。とりわけ、ホウ素含有化合物は、速やかに接着剤との架橋性が発現し、塗料を増粘またはゲル化することが出来るので好ましい。
【0041】
本発明に用いられるホウ素含有化合物としては、ホウ素の酸素酸であるホウ酸及びその脱水縮合物並びにそれらを塩基とする塩類であり、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、4ホウ酸、5ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。中でも、オルトホウ酸と4ホウ酸2ナトリウムは、塗料を増粘させる適度な効果があるために特に好ましく用いられる。
【0042】
ホウ素化合物の使用量は、使用するホウ素化合物とポリビニルアルコールの種類により異なるが。基材の片面当たりに使用されるホウ素化合物の使用量としては、0.01乃至2.0g/mの範囲が好ましい。ホウ素化合物の使用量が2.0g/m以下であれば、親水性バインダとの架橋密度が高くなりすぎて塗膜のひび割れを招くことなく、良好な塗工層強度を得ることができる。一方、使用量を0.01g/m以上とすることにより、ポリビニルアルコールとの架橋が充分であり、塗料のゲル化を促進して塗膜がひび割れしにくいものとなる。
【0043】
記録層に架橋剤を作用させる方法としては、例えば、予め基材上に架橋剤を含有する処理液を塗布または含浸させておき、その上に記録層用塗工液を塗布して記録層を形成する、記録層用塗工液中に架橋剤を配合しておき、該記録層用と液を塗布して記録層を形成する、若しくは、記録層用塗工液を塗布後、架橋剤を含有する処理液を塗布して記録層を形成する等の方法を用いることが出来る。記録層塗工液を均一に増粘またはゲル化することができるため、予め基材上に架橋剤を塗布または含浸させておく方法が好ましい。
【0044】
本発明のインクジェット記録用紙の記録層は顔料およびこれを保持する接着剤を含む1層以上の塗工層として設けられる。また、該記録層中には2種類以上の顔料を併用および/または2種以上の接着剤を併用することも出来る。記録層を2層以上設ける場合、夫々の塗工層を構成する顔料や接着剤は、同じでも異なっていても良く、複数の、組成の異なる又は同一の、塗工層を組み合わせて用いることが出来る。
【0045】
記録層を形成するための塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、スライドビードコーター、カーテンコーターおよびダイコーター等の各種既知の塗工手段を使用することが出来る。
上記塗工手段のうち、例えばスライドビードコーター、カーテンコーター或いはダイコーターなどを使用して、2層以上の記録層を同時に塗工することもできる。また、2層以上の記録層を塗工する方法として、下層の記録層用塗工液を塗布し下層記録層が未乾燥のうちに上層の記録層塗工液を該下層の上に塗工する方法、すなわち、Wet on Wet法を用いることが好ましい。
また、電子線照射を施す方法を用いる場合には、(1)塗工、電子線照射、乾燥を繰り返してもよいし、(2)塗工し電子線照射後に次の層を塗工して乾燥してもよく、或いは、(3)多層を同時に塗工した後、電子線照射を行ってもよい。
【0046】
記録層の乾燥塗工量は特に制限するものではないが、一般に2乃至100g/mであることが好ましく、5乃至50g/mであることがより好ましい。塗工量が2g/m以上であることにより、高精細・高速のプリンタにおいてもインク吸収性は充分であり、塗工量が50g/m以下であれば、塗膜のひび割れは起こり難く、良好な塗工面を得ることが出来る。
形成された記録層には、必要に応じて、スーパーカレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施こすことも出来る。
【0047】
〔最表層〕
本実施の形態の記録用紙は、記録層が1層の場合は、最表層は該記録層であり、キャスト加工がなされた層である。記録層が2層以上である場合には、最表層は支持体から最も離れた記録層であり、キャスト加工がなされた記録層である。また、1層以上の記録層を設けた上に、最表層として光沢発現を重視した記録層(光沢発現層)をキャスト加工により形成することも出来る。
本発明の最表層は、炭素数12乃至30の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有し、カチオン性コロイド状粒子と、親水性接着剤とを主成分として、該記録用紙の最表部をなし、キャスト加工による光沢化処理が施された層である。特に、記録層が2層以上である場合、キャスト加工される最表の記録層の乾燥塗工量が0.1乃至5g/mであると、本発明の目的である、良好なインク吸収性、光沢性等のインクジェット記録用紙としての優れた適性を有し、キャスト加工に於いて長時間操業しても生産性を落とすことがないのみならず、キャスト加工自体の生産性も高くすることが出来るので好ましい。
【0048】
(キャスト加工)
本発明の記録用紙は、最表層が設けられ、種々の光沢化処理を適宜施すことが出来る。光沢化処理としては、スーパーカレンダー或いはブラシ掛け等の平滑化処理などを用いてある程度の光沢の付与を行うこともできるが、より高い光沢を付与するために、本発明に於いては、キャスト加工により光沢を付与する方法が用いられる。
【0049】
キャスト加工とは、ロール面が鏡面仕上げされた光沢ロール(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等の光沢ロール)、鏡面仕上げされた金属板、プラスチックシートやフィルム、ガラス板等の鏡面を使用し、該記録層の最表層表面が湿潤状態にあるうちに、加熱された光沢ロールなどの鏡面に圧接・乾燥して光沢発現層を形成する処理方法であり、記録用紙の製造においては、光沢化処理を連続的に行うことによる利便性や表面平滑性に優れる傾向があり、かつ生産性やコストの点で有利であることから、ロール面が鏡面仕上げされた光沢ロールを用いる方法が好ましく採用されている。
本発明において使用することの出来る、光沢ロールを使用するキャスト加工方法としては、記録層用の塗工液を直接光沢ロールに塗布し、該記録層を乾燥させると共に支持体上に転移させて、記録層の最表層に光沢面を写し取った表面を有する記録用紙とする方法や、支持体上に記録層用の塗工液を塗布し、該塗工液の層が乾燥する前の半乾燥状態或いは湿潤状態にある塗工液の層、あるいは該塗工液の層を乾燥して形成した記録層の表面に処理液を塗布し、再湿潤して湿潤状態にある記録層、を該ロール面に圧接して乾燥させ、該鏡面を写し取った塗工層表面を有する記録用紙を得る方法を挙げることができる。
【0050】
即ち、本発明には、以下のようなキャスト加工方法を用いることが出来る。
(イ)最表塗工層用塗工液を支持体上に塗工し、該塗工液の層が湿潤状態にある間に加熱された光沢ロールに圧接、乾燥して光沢ロール面を写し取った塗工層表面を形成する方法(ウェットキャスト法)、
(ロ)最表塗工層用塗工液を支持体上に塗工、乾燥して最表塗工層を形成した後、該最表塗工層にリウェット液を付与して該最表塗工層表面を再湿潤させ、加熱された光沢ロールに圧接、乾燥して光沢ロール面を写し取った塗工層表面を形成する方法(リウェットキャスト法)、
(ハ)最表塗工層用塗工液を支持体上に塗工し、該塗工液の層をゲル化してゲル状塗工層とする。該ゲル状塗工層が湿潤状態にある間に加熱された光沢ロールに圧接、乾燥して光沢ロール面を写し取った塗工層表面を形成する方法(ゲル化キャスト法)、
(ニ)加熱された光沢ロール面上に最表塗工層用塗工液を塗工し、乾燥させて光沢ロール面を最表塗工層面に写し取ると共に、該最表塗工層が塗布された光沢ロール上に支持体を圧接し、最表塗工層を支持体上に転移させて支持体上に光沢ロール面を写し取った塗工層表面を形成する方法。(プレキャスト法)
また、加熱された光沢ロールと支持体巻取りから順次繰り出される用紙(ウェブ)がプレスロールで圧接される部分に、最表層用塗工液の液溜り(ポンド)が形成、保持されるようにしながら、最表層用塗工液を支持体上に付着させることも出来る。
特に、透気度の高い支持体を用いる場合には、支持体上に塗工された最表塗工層が湿潤状態又は半乾燥状態にあるうちに、最表層用塗工液の付着した支持体を光沢ロールから離型して、湿潤状態又は半乾燥状態にある光沢ロール面を写し取った最表層塗工面が形成された支持体を、後続する乾燥ゾーンで乾燥させる方法が有効であり、適宜実施することが出来る。
以上のようなキャスト加工方法において使用される、加熱された光沢ロールの温度は、必ずしも限定するものではないが、50乃至150℃、好ましくは70乃至120℃の範囲である。
【0051】
キャスト加工方法として、以下のようなフィルム転写法を採用することもできる。
(イ)上記の最表塗工層用塗工液を基材上に塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に平滑なフィルムやシートを重ね、乾燥した後、平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法、
(ロ)平滑なフィルムやシート上に最表塗工層用塗工液を塗工して、貼り合せようとする基材面をある程度湿潤状態にした状態で、その基材面に圧接し、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法
【0052】
本発明においては、キャスト加工としては、上記いずれの方法を用いることも出来るが、均一な塗工層が形成されやすく、印字濃度が高く、光沢の優れた最表層が得られ易いという利点から、ウェットキャスト法を用いることが好ましい。
【0053】
キャスト加工に使用する光沢ロールは、総炭素数16〜22の脂肪酸で処理することが好ましい。総炭素数16〜18を構成する脂肪酸としては、ヘキサデカン酸(慣用名パルミチン酸、数値表現16:0)、9−ヘキサデセン酸(パルミトイル酸、16:1)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸、17:0)、オクタデカン酸(ステアリン酸、18:0)、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸、18:1(9))、11オクタデセン酸(バクセン酸、18:1(11))、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸、18:2(9,12))、9,12,15−オクタデカトリエン酸((9,12,15)リノレン酸、18:3(9,12,15))、6,9,12−オクタデカトリエン酸((6,9,12)リノレン酸、18:3(6,9,12,))、9,11,13−オクタデカトリエン酸((9,11,13)リノレン酸、18:3(9,11,13))等が例示される。これらの内ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、cis−9−オクタデセン酸が好ましく、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸が更に好ましく、オクタデカン酸が最も好ましい。この理由は定かではないが、分子中に2重結合を持たない飽和脂肪酸の方が分子が直線状になりやすく、そのために、光沢ロール表面に密に配列しやすくなるものと推測される。
【0054】
処理の方法としては、光沢ロール表面に上記の脂肪酸を塗布するだけではなく、塗布して、更にバフを掛けるのが良い。また、バフ掛け時には酸化第2鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、炭化珪素、窒化硼素、珪藻土、炭酸カルシウム等の微粉末の研磨材を脂肪酸と混合し、処理するのが、更に効果的である。クロムメッキした光沢ロールを表面処理する場合、炭化珪素や窒化硼素は硬すぎてクロムメッキ面の磨耗が強く、珪藻土は粗大な粒子径のものを含んでいる場合があり傷がつく可能性があり、炭酸カルシウムは柔らかいために研磨の効果が小さすぎる。酸化クロムは3価であり安全とされているが、可能であれば代替物を使用するのが好ましい。したがって、酸化第2鉄、酸化アルミニウムの微粉末が特に好ましい。酸化アルミニウムは各種粒子径のものがあり、最も好ましい。
研磨剤と脂肪酸を混合してバフ処理した場合にその効果が大きい理由は定かではないが、上記の研磨材と脂肪酸を混合してバフ処理することにより、光沢ロール表面に付着した汚れや酸化皮膜が除去され、活性なクロム表面が現れた瞬間に、脂肪酸の親水基が活性なクロム表面に吸着し、脂肪酸基の多層分子膜が光沢ロール表面に形成されるためと推測している。
【0055】
上記各キャスト加工において、最表層用塗工液を塗工する場合には、各種公知の塗工方法を、例えば、ブレード、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター等の塗工装置のいずれかを使用して塗工する塗工方法を用いることができる。
【0056】
(融点30℃乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩)
本発明の光沢インクジェット記録用紙は、最表層表面に、融点30℃乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有する。高級脂肪族第1級アミンの働きは、アミン基が光沢ロール表面上に吸着し、親油基部分が表面に向けて均一に配向し光沢ロール表面を覆い尽くすように層状に分布されることで、光沢ロールが油状成分で満たされ、インクジェット記録用紙と光沢ロールが油状物質の存在により、連続的に離型する事にある。
融点が30℃以下の高級脂肪族第1級アミンであると、常温で液体として存在することから、インクジェット記録紙の空隙を塞ぎ易く成るため、吸収性が低下する。また、融点が30℃以下の脂肪族アミンは、比較的炭素数が短いものが多く、光沢ロール表面上の油状物質の配向形成が低下しているため、離型性が劣る。親油基である炭素数が長ければ、光沢ロール表面上に吸着した高級脂肪族アミンの疎水性が上がる為、離型性も向上する事から好ましいが、第1級アミンであっても、融点が100℃を越える場合、光沢ロール表面で溶融しにくくなるため、離型効果が小さくなる。
【0057】
高級脂肪族第1級アミンの炭素数は12乃至30であるものが好ましい。高級脂肪族第1級アミンは、親水基と親油基のバランスおよび配合量に応じた高級脂肪族第1級アミンを含有させることで、界面となる光沢ロール表面上、あるいは、後述する光沢ロール表面上の脂肪酸に高級脂肪族第1級アミンを吸着させることで、光沢ロール表面を常に油状成分で満たす。高級脂肪族第1級アミンのアミン基は、親水基の中でも特に水との親和性が高く、また、光沢ロール表面に吸着し易い。
【0058】
本発明で用いられる高級脂肪族第1級アミンを構成する炭化水素鎖は、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和の高級脂肪族残基である。また、炭化水素鎖は植物(例えばヤシ)由来、動物(例えば牛脂)等の天然物由来のものであっても良い。本発明で用いられる高級脂肪族第1級アミンは、硫酸塩、塩酸塩、リン酸、酢酸塩、乳酸塩等の水溶性塩として用いることが、印字濃度の低下も無く、優れたインクジェット記録適性となる為に好ましい。本発明ではこれらを1種あるいは2種以上を用いる。
【0059】
高級脂肪族第1級アミンは、第1級アミンの直鎖の飽和結合である事が好ましい。親油基が直鎖の飽和結合である場合、光沢ロール表面上の親水基の占有面積が許す限り光沢ロール上界面で密に配向し、離型性が向上する。その為、親水基は占有面積が最も小さい1級アミンあるいは、その塩である。また、特に親油基に不飽和結合が導入されると、光沢ロール界面で高級脂肪族第1級アミンが粗に配向される(特にシス体)ことになり、光沢ロール表面上の油状物質の形成が低下するため、離型性が低下する。また、同様の理由から、親油基が直鎖である方が、光沢ロール表面上で密に配向され易い事から好ましい。
【0060】
記録層に含有される、上記、高級脂肪族第1級アミンの配合量は必ずしも限定するものでは無いが、光沢ロールに接触する最表の記録層用塗工液中のコロイド状粒子100質量部当たり、2乃至30質量部が好ましく、特に好ましくは、3乃至15質量部である。
光沢ロールに接触する最表の記録層中に高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を含有するためには、該記録層用塗工液中に配合することが出来る。また特に、リウェットキャスト法或いはゲル化キャスト法において、記録層用塗工液を塗工した塗工液層上にリウェット液或いはゲル化処理液を付与する方法を用いる場合には、該リウェット液或いはゲル化処理液中に高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を配合することが出来る。この場合には、記録層用塗工液、若しくはリウェット液或いはゲル化処理液のいずれかのみに配合することも、記録層用塗工液とリウェット液或いはゲル化処理液の両方に配合することも適宜行うことが出来る。
また、最表の記録層用塗工液中に高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を配合する場合、その下層の記録層にも高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を配合することも好ましい。即ち、最表の塗工液を塗工する基材面の凹凸の影響により、高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を配合した最表の記録層の塗工量が局所的に小さくなった微小領域を生じたとしても、該微小領域において光沢ロールから離型する効果が充分に得難くなることを防止することが出来る。
【0061】
(カチオン性コロイド状粒子)
コロイド状粒子とは、水中に懸濁分散してコロイド状をなしている無機粒子或いは有機粒子を指し、コロイド状粒子を含有することにより、均一で高い光沢性を得ることが出来る。
カチオン性コロイド状粒子は、上述のコロイド状粒子の内、該粒子表面が正に帯電した粒子を指す。無機粒子としては、例えば、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナゾルやコロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物の微粒子、特に好ましくは、カチオン化されたコロイド状シリカ微粒子よりなるカチオン性コロイド状無機粒子を例示することが出来、有機粒子としては、カチオン変性されたコロイド状のポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリエステル、ウレタン、とりわけ透明性の高いポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのカチオン変性微粒子が好ましく例示される。
これらのカチオン性コロイド状粒子は、2種以上を併用することも出来る。
【0062】
本発明に使用することの出来るカチオン性コロイド状粒子としては、カチオン化されたシリカのコロイド状粒子が好ましく、これにし用意されるシリカとしては、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、メソポーラスシリカ、気相法シリカの微粒子や、コロイダルシリカ等が挙げられる。とりわけ、コロイダルシリカは、高い光沢性と印字濃度が得られるために、好ましく使用される。コロイダルシリカ粒子の形状としては単独の1次粒子が分散した真球状のものと複数個の1次粒子か連結した数珠状の粒子が分散したものなどが知られている。
最表層のカチオン性コロイド状粒子に、カチオン化されたコロイダルシリカを使用する場合には、真球状のものを使用すると、表面の光沢性の高いインクジェット記録用紙が得られる。一方、数珠状につながった非球状コロイダルシリカを使用するとインク吸収性に優れる。このため、目的に応じてこれらを適宜選択することができる。また、形状・の異なる複数種のコロイダルシリカを組み合わせて使用することもできる。
【0063】
上記のようなコロイド状シリカ粒子は、通常はアニオン性を呈する。このようなアニオン性のコロイド状シリカ粒子は、粒子表面をアルミナで被覆したり、粒子表面にアルミニウム等の多価金属化合物を反応させ、または、粒子表面にアンモニウム基などのカチオン性残基を含有するシランカップリング剤を付加するなどの手段によってカチオン性シリカ粒子とすることが出来る。また、アニオン性のシリカ粒子とカチオン性化合物とを水性媒体中で混合し、得られた複合体の粒子を粉砕、分散し、カチオン性化合物−シリカ複合体微粒子とすることも出来る。
【0064】
アニオン性シリカ表面に反応させてカチオン性とするための、多価金属イオンとしては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンなどの金属イオンを挙げることができる。
これらは、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、蟻酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、蟻酸マンガン2水和物、硫酸マンガンアンモニウム6水和物、塩化第2銅、塩化アンモニウム銅(II)2水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル6水和物、塩化ニッケル6水和物、酢酸ニッケル4水和物、硫酸ニッケルアンモニウム6水和物、アミド硫酸ニッケル4水和物、フェノールスルフォン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム9水和物、塩化アルミニウム6水和物、臭化第1鉄、塩化第1鉄、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛6水和物、硫酸亜鉛、フェノールスルフォン酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム8水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム6水和物、クエン酸マグネシウム9水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物などに例示される水溶性金属塩を用いることが出来る。
【0065】
水溶性金属塩の水溶液にはpHが低い場合もあるが、不適当な場合は、適宜pHを調節して用いることができる。本発明においては水溶性塩として、常温常圧下で水に1質量%以上の濃度で溶解することが好ましい。
コロイダルシリカをカチオン化する場合、コロイダルシリカ粒子100質量部/カチオン性化合物質量部数で表わす比率として、100/2乃至100/20が好ましく、100/5乃至100/15がより好ましい。
【0066】
コロイド状シリカにカチオン性残基を含有するシランカップリング剤を添加して、カチオン化コロイド状シリカ粒子を得ることもできる。
具体的な添加方法としては、例えば、コロイド状シリカを好ましくは40〜95℃、特に70℃程度に加熱し、これにカップリング剤を連続滴下させる方法、コロイド状シリカとカップリング剤を室温で仕込み、混合した後、上記温度に加熱して反応する方法、カップリング剤と触媒とを同時にコロイド状シリカの分散液に滴下混合する方法、溶媒に溶解させたカップリング剤溶液をコロイド状シリカを含む反応系に供給する方法、乳化剤を用いて乳化させたカップリング剤乳化液をコロイド状シリカを含む反応系に供給する方法が挙げられる。
【0067】
カチオン性シランカップリング剤処理コロイド状シリカを得るために用いることのできるシランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤を利用することが好ましい。
該シランカップリング剤としては、例えばN−(ベータ−アミノエチル)−ガマ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(ベータ−アミノエチル)−ガマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ベータ−アミノエチル)−ガマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガマ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0068】
コロイド状シリカをカップリング剤で処理する場合、コロイダルシリカ粒子100質量部/カップリング剤質量部数で表わす比率として、100/0.01乃至100/20が好ましく、100/0.05乃至100/10がより好ましい。
【0069】
アニオン性コロイド状シリカ粒子と水性媒体中で混合し、複合体を形成するカチオン性化合物としては、必ずしも限定するものでは無いが、以下のようなものが挙げられる。即ち、1)ポリエチレンポリアミンおよびポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、およびそれらの誘導体類、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基、および/または第4級アンモニウム基を有するアクリル系樹脂、3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、4)例えばジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物などのジシアン系カチオン樹脂、5)例えばジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物などのポリアミン系カチオン樹脂、6)エポクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、7)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、8)ジアリルアミン−SO2共重合物、9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、10)アリルアミン塩の重合物、11)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート第4級アンモニウム塩重合物、12)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、13)ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム、およびポリ乳酸アルミニウムなどのポリアルミニウム塩、が例示される。
以上に例示されるカチオン性化合物のうち、とりわけ、5員環アミジン類、ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム、ポリ乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩は、好ましく用いられる。このようなカチオン性化合物の配合量は、アニオン性のコロイド状シリカ(固形分)100質量部に対して、1乃至30質量部であることが好ましく、2乃至15質量部であることがより好ましい。
また、カチオンポリマーを使用する場合、好ましい分子量としては、1000乃至10万程度である。本方法により、アニオン性コロイド状シリカとカチオン性化合物とを混合して形成せしめた、シリカ−カチオン性化合物複合体よりカチオン性コロイド状粒子を得る方法は、上述のシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の調製方法に準じる。
【0070】
シリカ−カチオン性化合物複合体を形成するために、コロイド状シリカ粒子と混合される、前記、1)乃至13)に例示されるような、カチオン性ポリマーまたは水溶性多価金属化合物などのカチオン性化合物の混合比は、コロイド状シリカ粒子固形100部/カチオン性化合物固形部数で表わす比率として、100/2乃至100/20が好ましく、100/5乃至100/15がより好ましい。
【0071】
本発明では、上記のような種々の方法によってカチオン化された、カチオン性シリカ微粒子のコロイド状粒子を使用することができる。
カチオン性コロイド状シリカの1次粒子径は10乃至100nmであることが好ましく、更に好ましくは20〜50nmである。10nmより小さいと吸収性が悪化し、100nmよりも大きいと印字濃度が低下する虞がある。
1次粒子の大きさを示す方法としては、1次粒子を電子顕微鏡(TEM,SEM)で観察して調べ、三軸平均粒子径、定方向径、若しくは相当径など、種々の粒子径が提案されている。本発明で使用するカチオン性コロイド状粒子を構成する1次粒子は、顔料の種類によって様々の形状があるが、例えば、視野の定方向に平行な、粒子の輪郭で囲まれた面積を二等分する線分の長さで与えられるマーチン径などの定方向径は、無作為の方向に配置する個々の粒子について計測することよって、粒子の各軸方向の形状を統計的に示すことが出来るため好ましく用いられる。
本発明に使用されるカチオン性コロイド状シリカ粒子を構成する1次粒子の大きさとしては、平均マーチン径として10nm乃至100nm程度が好ましい。
【0072】
(親水性接着剤)
本発明の最表層中には、コロイド状粒子を記録層上に固着させる目的で、親水性接着剤を含有する。該親水性接着剤は、上記、記録層に用いる接着剤として例示した材料から、適宜、1種を単独で使用または2種以上を選択し併用することが出来る。
最表層中のコロイド状粒子がカチオン性である為に、カチオン変性した接着剤、もしくはノニオン性接着剤を使用することが好ましい。
特に好ましいのは、水溶性接着剤、自己乳化型接着剤である。水溶性接着剤や自己乳化型接着剤は水分散性に優れることから、少量の接着剤でコロイド状粒子を最表層に固着することができ、インク吸収性を阻害しない為に優れる。
【0073】
水溶性接着剤の中では、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、ゼラチン、変性ゼラチンのゼラチン類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等のセルロース類が、また、自己乳化型接着剤としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂は、少量でコロイド状粒子を最表層に固着できるため、インク吸収性を阻害する事がなく好ましい。
【0074】
本発明においてポリビニルアルコールを使用する場合、ケン化度98%以上のものを含有することが好ましい。ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用すると、光沢ロールからの離型が特に容易であり、優れた生産性を得ることができる。
ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用することで光沢ロールからの離型性が良好となる理由は定かではないが、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは部分ケン化と称されるケン化度98%未満のポリビニルアルコールより水酸基の量が多いため、水との親和性が強く、分子同士の相互作用も強い。そのため、1旦水に溶解したポリビニルアルコールを乾燥し、熱処理した場合、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは結晶化して水に溶解しなくなるが、部分ケン化のポリビニルアルコールは結晶化せず分子は屈曲性を保ったままである。このことが、高温の光沢ロールとの接着性の違いに影響し、乾燥されて水分を失った場合に、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは光沢ロールに対する接着力が落ちやすいのに対し、部分ケン化ポリビニルアルコールは光沢ロールへの接着力が落ちにくく、結果として、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールの方が光沢ロールから剥離しやすくなるものと推測される。
【0075】
親水性接着剤の配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲で調節される。
親水性接着剤の配合量が1質量部より少ないと、最表層の固着力が弱くなり、塗工層の欠落が発生する虞があり、200質量部を越えると、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる虞がある。
【0076】
(その他添加剤)
また、この最表層には、必要に応じてインク定着剤、分散剤、架橋剤、増粘剤(流動変性剤)、消泡剤、耐水化剤(印刷適性向上剤)、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、および着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。各種添加剤は、最表層用塗工液中に固形分濃度として0.05〜10部、好ましくは、0.1〜5部の範囲で添加される。
【0077】
さらに、最表層用塗工液には、その他の添加剤として、アルミナ、コロイダルシリカ、微細シリカ、クレーや炭酸カルシウム等の公知の白色顔料を添加することもできる。
なお、後述するリウェット処理を行う場合は、上記添加剤中の、分散剤、消泡剤、着色剤、蛍光染料、帯電防止剤、防腐剤等は、リウェット処理に用いるリウェット液(湿潤液)に添加しても良い。
【0078】
(乾燥塗工量)
本発明では、平均粒子径5μm以下、好ましくは0.01〜1マイクロmの顔料を記録層中に含有することにより、最表層の乾燥塗工量は、0.1〜5g/m、好ましくは0.3〜2g/mという少ない塗工量で、高い光沢性を得ることが可能である。乾燥塗工量が0.1g/m未満であると、光沢性や印字濃度が劣り、乾燥塗工量が5g/mより多いと、インク吸収性悪化による画像鮮明性の低下、乾燥負荷の増大による生産性の悪化等の問題が生じる。
【0079】
<裏面層>
本発明では、上記の最表層等を設けていない基材のもう1方の面側である裏面に、写真の風合いやインクジェット記録用紙のカール防止及び搬送性などの改良のために、裏面層を設けてもよい。裏面層には、特に限定するものではないが、顔料とバインダ系(例えば、コロイダルシリカとアクリル系エマルション型バインダ等)、有機エマルジョン系(例えば、シリコン系エマルジョン型バインダ、アクリル系エマルジョン型バインダ等)、親水性・疎水性の接着剤系(例えば、澱粉やポリビニルアルコールの塗膜)、ラミネート(例えば、ポリエチレン等)等からなるものが挙げられる。
【0080】
さらに、裏面にインクジェット記録用紙や他の記録用紙を貼り合わせて両面記録用紙としたり、裏面に粘着剤層を形成してラベルとしたり、磁気カードやICカードの表面に貼り合わせてカードとしたりなど、公知の手段を施すことができる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
また、以下に示す実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ水を除く固形分の「質量部」および「質量%」を示す。
【0082】
[紙基材]
濾水度c.s.f400mlの木材パルプ(LBKP)固形分100質量部あたり、焼成カオリン(商品名:アンシレックス)5質量部、市販サイズ剤0.05質量部、硫酸バンド1.5質量部、湿潤紙力剤0.5質量部、澱粉0.75質量部を添加した製紙原料を用いて、長網抄紙機にて坪量180g/mの紙基材を製造した。
【0083】
[下塗層塗工液]
分散剤(東亞合成(株)製、商品名:アロンSD−10)を0.5部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ1407K)を0.05部、カチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を添加した水に、平均粒子径7μmの無定形シリカ顔料(グレースジャパン(株)製、商品名:サイロジェットP407)100部を添加、攪拌し、分散した。これに水に加熱・溶解した変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:R−1130)10部、蛍光染料(住友化学(株)製、商品名:ホワイテックスBP−S)2部、紫着色剤(大日精化(株)製、商品名:DC−Violet XRN)0.1部、青着色剤(大日精化(株)製、商品名:DC−Blue XB)0.05部を添加し、固形分濃度20%の下塗層塗工液を調製した。
【0084】
[記録層塗工液I]
(シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の調製)
平均粒子径1.0マイクロmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA300、平均一次粒子径 約8nm)を、ホモミキサーを用いて水中に分散し、高速流衝突型ホモジナイザーを用いて平均粒子径が50nmになるまでで粉砕分散を繰り返し、10質量%のシリカ水分散液を調製した。
該10質量%シリカ水分散液に、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M、分子量30万)を、該シリカ100質量部当たり10質量部となるように添加し、シリカ−カチオン性化合物凝集体を生成させた。該シリカ−カチオン性化合物凝集体の粒子を、高速流衝突型ホモジナイザーを用いて更に分散を進め、平均粒子径が0.10マイクロmのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の10質量%水分散液を調製した。
【0085】
(記録層塗工液Iの調製)
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子100部に、接着剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500、ケン化度99%)10部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1部を混合・攪拌し、固形分濃度12%の記録層塗工液Iを調製した。
【0086】
[架橋剤処理液]
記録層塗工液に使用したポリビニルアルコールの架橋剤として、硼砂(シオノギ製薬(株)製、商品名:硼砂)100部と濡れ剤(ライオン(株)製、商品名:レオックス2160C)0.05部を水に溶解、攪拌、混合し、固形分濃度4%の架橋剤処理液を調製した。
[最表層塗工液]
水にコロイド状粒子としてコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスAK−L、平均粒子径:45nm、1次粒子)100部、接着剤として完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA−124、ケン化度=98%)10部、アクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)5部、染料定着剤としてカチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を含有する組成液を混合し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ライオン(株)製、商品名:レオックス2008C)5部を添加・混合し、塩酸をPHが6以下となるように添加した後、ステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン、融点51.4℃)3部を添加後攪拌し、固形分濃度15%の最表層用塗工液を調製した。
【0087】
実施例1
[光沢インクジェット記録用紙の作製]
紙基材の一方の面側に、下塗層塗工液を乾燥後の塗工量が8g/mになるように塗工・乾燥した後、架橋剤処理液を乾燥後の塗工量が1g/mとなるように塗工・乾燥した。この表面に記録層塗工液を乾燥後の重量が8g/mとなるように塗工・乾燥し記録層を形成した。
該記録層上に最表層塗工液を塗工し、直ちに表面温度95℃の鏡面光沢ロールを圧接して乾燥し、剥離させて光沢インクジェット記録用紙を作製した。このときの最表層の乾燥塗工量は1g/mであった。
なお、該表面温度95℃の鏡面光沢ロールは、予めオクタデカン酸および酸化アルミニウム微粉末を用いてバフ掛け処理したものを使用した。
【0088】
実施例2
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミンに代えて、オレイルアミン(炭素数18、不飽和脂肪酸第1級アミン、融点15℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0089】
実施例3
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミンに代えて、n-トリアコンタイルアミン(炭素数30、飽和脂肪酸第1級アミン、融点80℃)3部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0090】
実施例4
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミンに代えて、ラウリルアミン(炭素数12、飽和脂肪酸第1級アミン、融点25℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0091】
実施例5
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミンに代えて、ステアリルアミン塩酸塩(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン塩酸塩、融点51.5℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0092】
実施例6
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミンに代えて、ステアリルアミン酢酸塩(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン酢酸塩、融点84.5℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0093】
実施例7
実施例6において、最表層塗工液のステアリルアミン酢酸塩3部をステアリルアミン酢酸塩15部に変更した以外は、実施例6と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0094】
実施例8
紙基材の一方の面側に、下塗層塗工液を乾燥後の塗工量が8g/mになるように塗工・乾燥した後、架橋剤処理液を乾燥後の塗工量が1g/mとなるように塗工・乾燥した。その上に、下記、記録層塗工液IIを乾燥後の重量が8g/mとなるように塗工・乾燥し、記録層を形成した。該記録層表面に水を付与して再湿潤化し、直ちに表面温度95℃の鏡面光沢ロールを圧接して乾燥し、剥離させて光沢インクジェット記録用紙を作製した。
なお、該表面温度95℃の鏡面光沢ロールは、予めオクタデカン酸および酸化アルミニウム微粉末を用いてバフ掛け処理したものを使用した。
[記録層塗工液II]
(記録層塗工液IIの調製)
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子100部に、接着剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500、ケン化度99%)10部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1部、ステアリルアミン酢酸塩(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン酢酸塩、融点84.5℃)1部を混合・攪拌し、固形分濃度12%の記録層塗工液IIを調製した。
【0095】
実施例9
紙基材の一方の面側に、下塗層塗工液を乾燥後の塗工量が8g/mになるように塗工・乾燥した。その上に、下記、記録層塗工液IIを乾燥後の重量が8g/mとなるように塗工し、記録層塗工液層上に架橋剤処理液を付与して記録層塗工液層をゲル化した。直ちに表面温度95℃の鏡面光沢ロールを圧接して乾燥し、剥離させて光沢インクジェット記録用紙を作製した。
なお、該表面温度95℃の鏡面光沢ロールは、予めオクタデカン酸および酸化アルミニウム微粉末を用いてバフ掛け処理したものを使用した。
【0096】
比較例1
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪族第1級アミン、融点51.4℃)3部に代えて、オクチルアミン(炭素数8、飽和脂肪族第1級アミン、融点−1℃)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0097】
比較例2
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン、融点51.4℃)3部に代えて、ステアリン酸アミド(炭素数18、飽和脂肪酸アミド、102.5℃)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0098】
比較例3
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪酸第1級アミン、融点51.4℃)3部に代えて、ポリエチレンワックスエマルション(近代化学工業(株)製、商品名:ペルトールN−856)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0099】
比較例4
実施例1において、最表層塗工液のステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪酸1級アミン、融点51.4℃)3部に代えて、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(炭素数18、飽和脂肪酸4級アミン塩酸塩、融点−5℃)3部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0100】
比較例5
実施例1において、最表層塗工液原液のステアリルアミン(炭素数18、飽和脂肪酸1級アミン、融点51.4℃)3部に代えて、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(炭素数18、飽和脂肪酸4級アミン塩酸塩、融点34℃)3部を使用した以外は、実施例1と同様にして光沢インクジェット記録用紙を得た。
【0101】
<評価方法>
光沢インクジェット記録用紙のインク吸収性、記録画像の鮮明性、光沢度、及び生産性について、下記に示す方法で評価し、その結果を表1に示した。
なお、記録画像の鮮明性の評価は、記録画像の色濃度を測定することにより行った。
インクジェットプリンターには、CANON社製、商標:iP−4500、印字モード:光沢紙、きれいモードを用いた。
【0102】
「インク吸収性(印字斑)」
インクジェット記録用紙にグリーン色インクをベタ印字し、ベタ印字画像中に印字斑があるかどうかを目視で観察し、下記の5段階にて評価した。
なお、印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録用紙の塗工層に完全に吸収されないうちに、次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなると、顕著に現れるものである。
5:印字斑は全く見られない。
4:印字斑は少し見られるが、実用上問題ないレベル。
3:印字斑やや多いが、実用上問題ないレベル。
2:印字斑が多く、実用上問題のあるレベル。
1:印字斑が非常に多く、実用不可。
【0103】
「記録画像の鮮明性(印字濃度)」
光沢インクジェット記録用紙に黒色インクでベタ印字し、その色濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Macbeth RD−19、Gretag−Macbeth社製)で測定した。尚、色濃度を測定する場合のみ、印字モードを光沢紙、きれいモード、マッチングしないに設定した。
「光沢度」
20度鏡面光沢度の評価は、記録用紙表面を、JIS−P8741に準拠して、村上色彩技術研究所製デジタル光沢計(GM−26D)を用い、入反射角度20度で測定した。
【0104】
「生産性」
光沢インクジェット記録用紙のキャスト加工において、加熱した鏡面光沢ロールに圧着した記録用紙を剥がし、記録用紙の最表層が剥離された後の光沢ロール表面の鏡面を観察し、光沢インクジェット記録用紙の塗工層の残留による汚れを下記の基準で評価した。
5:光沢ロール表面に残留は全く無く、離型性に非常に優れ、生産性が極めて高い。
4:光沢ロール表面に残留はほとんど無く、離型性に優れ、生産性が高い。
3:光沢ロール表面に残留がややみられるが通常に生産できる。
2:光沢ロール表面に残留が多く見られ、記録用紙の塗工層の1部欠落も視認でき、離型性に劣り、生産性が低い。
1:光沢ロール表面に塗工層が付着し、記録用紙の塗工層が欠落し、離型性に非常に劣り、生産性が極めて悪い。
【0105】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0106】
表1から明らかなように、本発明実施例1乃至9のインクジェット記録用紙は、インク吸収性、光沢性等の光沢インクジェット記録用紙としての適性に優れるのみならず、比較例1乃至5に比べて、キャスト加工に関して、離型性に優れ、光沢ロール表面が汚れ難く、生産性に優れた光沢インクジェット記録用紙である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に1層以上の記録層を有し、該記録層の最表層表面に、キャスト加工が施された光沢インクジェット記録用紙において、
該記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子、親水性接着剤並びに、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンおよび/またはその塩を含有することを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
【請求項2】
高級脂肪族第1級アミンの炭素数が12乃至30であることを特徴とする請求項1記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項3】
高級脂肪族第1級アミンの炭化水素基が直鎖飽和結合であることを特徴とする請求項1または2記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項4】
高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩が、自己乳化型であることを特徴とする請求項1乃至3記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項5】
親水性接着剤が、水溶性接着剤、自己乳化型接着剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項6】
親水性接着剤が、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロースから選ばれる1種以上の水溶性接着剤である請求項1乃至5記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項7】
親水性接着剤が、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂から選ばれる1種以上の自己乳化型接着剤であることを特徴とする請求項1乃至5記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項8】
支持体上に1層以上の記録層を有する光沢インクジェット記録用紙の製造方法において、記録層の最表層が、カチオン性コロイド状粒子と、親水性接着剤と、融点が30乃至100℃の高級脂肪族第1級アミンあるいはその塩を含有する、表面が湿潤状態の塗工層を、キャスト加工して形成することを特徴とする光沢インクジェット記録用紙の製造方法。

【公開番号】特開2011−131479(P2011−131479A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292446(P2009−292446)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】