説明

光源ユニット及びそれを用いた画像表示装置

【課題】出射光強度を高くすることができる、指向性の高い光源ユニットを提供する。
【解決手段】光源ユニットは、光を出射する面型発光デバイス1と、面型発光デバイス1の出射側に設けられた角度制御部3と、面型発光デバイス1と角度制御部3との間に設けられた角度変換部2とを有する。角度制御部3は、面型発光デバイス1側から入射した光のうち、第1の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第1の入射角度範囲以外の角度で入射した光を反射する。角度変換部2は、面型発光デバイス1側および角度制御部3側のそれぞれの側から光が入射し、入射した光のうち、第2の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折または散乱し、残りの光を透過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などに代表される面型発光デバイスを備える光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタやフラットパネルディスプレイに代表される画像表示装置では、指向性の高い光源ユニットが求められている。
【0003】
例えば、プロジェクタは、光源からの光を表示素子に照射し、表示素子で形成された画像を投射光学系によって投射するものであるが、出射光の発散角が大きな光源を用いた場合、光源からの光の一部が投射光として利用されず、光利用効率が低下する場合がある。このため、出射光の発散角が小さな光源、すなわち、指向性の高い光源が求められている。
【0004】
特許文献1には、指向性の高い面光源装置が記載されている。この面光源装置は、バックライトと、バックライトの出射面からの光が入射する光学素子と、を有する。
【0005】
光学素子は、拡散板およびバンドパスフィルターを含む。バンドパスフィルターは、特定ピーク波長の光に対して、所定の入射角度範囲内の角度で入射した光は透過させ、それ以外の角度で入射した光は反射する。
【0006】
光学素子では、バックライトからの光は、拡散板で拡散された後、バンドパスフィルターに入射する。バンドパスフィルターでは、拡散板からの拡散光のうち、所定の入射角度範囲内の角度で入射した光のみが透過し、それ以外の角度で入射した光は、バックライト側の方向に反射される。
【0007】
バンドパスフィルターからの反射光は、拡散板で拡散された後、バックライトに入射する。バックライトは、拡散板からの拡散光を光学素子側の方向に向けて反射するが、その反射時に、拡散光の一部がバックライトで吸収される。バックライトからの反射光は、拡散板で拡散された後、バンドパスフィルターに入射する。
【0008】
上記の面光源装置によれば、バンドパスフィルターの所定の入射角度範囲に応じた出射角度範囲内で出射光を得られる。
【0009】
また、バンドパスフィルターで反射された光は、バンドパスフィルターとバックライトの間で繰り返し反射される。この反射の過程において、反射光が拡散板で拡散されて、その拡散光の一部がバンドパスフィルターを透過する。このように、バンドパスフィルターで反射された光の一部を出射光として取り出すことができるので、バックライトから出射された光の利用効率が向上し、面光源装置の出射光強度を増大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−337337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の面光源装置において、バンドパスフィルターで反射された光は、拡散板を介してバックライトに入射し、その入射した光の一部がバックライトで吸収される。このバックライトでの光吸収のために、光学素子から出射される光の強度が低下する。
【0012】
光学素子の出射光強度を高めるには、バックライトでの光吸収を抑制する必要がある。例えば、バックライトから出射された光のうち、所定の入射角度範囲内の角度でバンドパスフィルターへの入射が可能な光を、バンドパスフィルターでの反射なしに、光学素子から出射させることで、バックライトでの光吸収が抑制されて、光学素子の出射光強度が増大する。
【0013】
しかし、特許文献1に記載の面光源装置では、バックライトから出射された光は全て拡散板にて拡散され、その拡散光の一部はバンドパスフィルターで反射されるため、上記のようなバックライトでの光吸収を抑制することは困難である。
【0014】
なお、拡散板を除去することで、バックライトから出射された光のうち、所定の入射角度範囲内の角度でバンドパスフィルターへの入射が可能な光を、バンドパスフィルターでの反射なしに、光学素子から出射させることができる。しかし、この場合は、バンドパスフィルターで反射された光は、拡散されずに、バンドパスフィルターとバックライトの間で繰り返し反射されることになるため、その反射光を出射光として利用することができない。
【0015】
本発明の目的は、出射光強度を高くすることができる、指向性の高い光源ユニット、およびそれを用いた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の光源ユニットは、
光を出射する発光部と、
前記発光部の出射側に設けられ、前記発光部側から入射した光のうち、第1の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第1の入射角度範囲以外の角度で入射した光を前記発光部側の方向へ反射する角度制御部と、
前記発光部と前記角度制御部との間に設けられ、前記発光部側および前記角度制御部側のそれぞれの側から光が入射し、該入射した光のうち、第2の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折または散乱し、残りの光を透過させる角度変換部と、を有する。
【0017】
本発明の画像表示装置は、
上記の光源ユニットと、
前記光源ユニットから出射された光を映像信号に応じて変調して、当該映像信号に応じた画像を表示する表示部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光部から出射された光のうち、角度変換部への入射角が第2の入射角度範囲内である光は、回折または散乱されることなく、そのまま角度変換部および角度制御部を透過する。このように、発光部から出射された光の一部を、そのまま出射光として取り出すことができるので、発光部での光吸収を抑制することができ、出射光強度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す光源ユニットの面型発光デバイスの断面構造を示す模式図である。
【図3】回折格子の一例を説明するための図である。
【図4A】波長が460nmの光を図3に示す回折格子に入射した場合の入射角と格子周期と+1次回折光の回折角との関係を説明するための図である。
【図4B】波長が460nmの光を図3に示す回折格子に入射した場合の入射角と格子周期と−1次回折光の回折角との関係を説明するための図である。
【図5】格子周期が300nm、入射光の波長が460nmである場合の、入射角度に対する回折角度の変化を説明するための図である。
【図6A】比較例である光源ユニットの構成を示す模式図である。
【図6B】図1に示す光源ユニットの動作を説明するための模式図である。
【図7】図1に示す光源ユニットの角度変換部の一例を示す模式図である。
【図8】図1に示す光源ユニットの角度変換部の別の例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【図10】図9に示す光源ユニットの動作を説明するための模式図である。
【図11A】図6Aに示す比較例の光源ユニットの出射光強度と出射角度の関係を説明するための図である。
【図11B】図9に示す光源ユニットの出射光強度と出射角度の関係を説明するための図である。
【図12A】図9に示す光源ユニットの角度変換部の一例を示す模式図である。
【図12B】図9に示す光源ユニットの角度変換部の別の例を示す模式図である。
【図12C】図9に示す光源ユニットの角度変換部のさらに別の例を示す模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【図14】本発明の光源ユニットを備える画像表示装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【0022】
図1を参照すると、光源ユニットは、プロジェクタやフラットパネルディスプレイに代表される画像表示装置に用いられるものであって、面型発光デバイス1、角度変換部2および角度制御部3を有する。図1において、実線で示した矢印は0次光を示し、破線で示した矢印は回折光を示す。
【0023】
面型発光デバイス1は、LEDや面発光レーザなどの面発光型の固体光源または光源と導光板からなる面発光デバイスであって、所望の色(例えば、赤、緑、青など)の波長帯域にピーク波長を有する特定の波長範囲の光を出射する。以下では、ピーク波長を面型発光デバイス1の発光波長とする。
【0024】
図2に、光源ユニットの面型発光デバイス1の断面構造を模式的に示す。
【0025】
図2に示すように、面型発光デバイス1は、基板10上に実装されており、反射層11と、発光部12と、電極パッド15および16とを含む。
【0026】
反射層11は、基板10の上に実装されている。発光部12が反射層11の一部の領域上に形成され、電極パッド15が反射層11の別の領域上に形成されている。電極パッド16が、発光部12の一部の領域上に形成されている。電極パッド15および16は、不図示の外部電極と電気的に接続されている。
【0027】
発光部12は、p型半導体層12Aと、活性層12Bと、n型半導体層12Cとを有する。活性層12Bは、p型半導体層12Aおよびn型半導体層12Cの間に設けられている。より具体的には、p型半導体層12A、活性層12Bおよびn型半導体層12Cは、この順番で、反射層11上に積層されている。
【0028】
反射層11は、発光部12側から基板1側へ向かう光を発光部12側に反射する。
【0029】
発光部12には、外部電源から電極パッド15および16を介して電流が供給され、その電流に応じて、発光部12から光が発生する。より具体的には、外部電源から電極パッド15および16を介して、p型半導体層12Aとn型半導体層12Cとの間に電圧が印加され、それらの間に電流が流れると、活性層12Bにて光が発生する。すなわち活性層12Bは光を発生させる発光層として機能する。
【0030】
角度制御部3は、面型発光デバイス1の出射側(n型半導体層12C側)に設けられており、面型発光デバイス1側から入射した特定の波長の光のうち、第1の入射角度範囲内で入射した光を透過させ、該第1の入射角度範囲以外の角度で入射した光を面型発光デバイス1側の方向に反射する。
【0031】
具体的には、角度制御部3は、誘電体多層膜よりなる。誘電体多層膜は、例えば、屈折率が異なる第1および第2の誘電体層を交互に積層したものであって、その積層方向において、屈折率が異なる領域が周期的に配置された構造を有する。誘電体材料としては、SiO2、Nb25、ZnO、TiO2、MgF2、Al23、SrO、CaO、BaO、Bi23などがある。
【0032】
このような誘電体多層膜は、所定の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、所定の入射角度範囲以外の角度で入射した光を反射するといった特性を有する。所定の入射角度範囲は、誘電体層の屈折率および周期(間隔)によって決定される。
【0033】
第1の入射角度範囲は、本実施形態の光源ユニットの出射光の発散角に対応し、誘電体層の屈折率および周期(間隔)を調整することで任意に設定することができる。
【0034】
例えば、本実施形態の光源ユニットをプロジェクタに適用した場合は、第1の入射角度範囲は、光源の光出射断面積と出射光の発散角とで決まるエテンデューと呼ばれる制約を考慮して設定する。エテンデューによれば、光源の光出射断面積と出射光の発散角との積の値を、表示素子の表示面積と投射光学系のFナンバーで決まる取り込み角(立体角)との積の値以下にすることで、光源から出射した光の全てを投射光として利用することができる。第1の入射角度範囲は、そのような条件を満たすような出射光の発散角を得られるように設定される。
【0035】
角度変換部2は、面型発光デバイス1と角度制御部3との間に設けられ、面型発光デバイス1側から入射した特定の波長の光のうち、第2の入射角度範囲内で入射した光を透過させ、該第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折し、残りの光を0次光として透過させる。
【0036】
具体的には、角度変換部2は、一層の回折格子よりなる。回折格子は、例えば、ガラス板の一方の面に、凸部または凹部をアレイ状に形成した凹凸構造を有する。回折が生じる入射角度範囲は、凹凸のピッチ(格子周期)により決まる。凹凸構造としては、一方向に延伸した溝部(凹部)が一定の間隔で設けられたものや、円錐、四角錐、円柱、四角柱などの凸部が周期的に2次元に配置されたものなどがある。
【0037】
図3に示すように、通常、格子周期Pを有する回折格子300では、光が入射角θ1で入射した場合、0次光の他に、回折角θ2の1次回折光が生じる。入射角θ1と回折角θ2は、数式1の関係を満たす。
Psinθ1−Psinθ2=mλ ・・・(数式1)
ここで、λは入射光の波長、mは0以外の正負の整数である。mは回折光の回折次数を表しており、例えば、m=+1の時に数式1を満たす回折角θ2の回折光を+1次回折光、m=−1の時に数式1を満たす回折角θ2の回折光を−1次回折光と呼ぶ。
【0038】
図4Aに、波長が460nmの光を回折格子300に入射した場合の入射角θ1と格子周期Pと+1次回折光の出射角(回折角θ2)との関係を示す。図4Bに、波長が460nmの光を回折格子300に入射した場合の入射角θ1と格子周期Pと−1次回折光の出射角(回折角θ2)との関係を示す。図4Aおよび図4Bにおいて、縦軸は入射角θ1を示し、横軸は格子周期Pを示す。また、図中の右側に示したスケールは、1次回折光の出射角(回折角θ2)を濃度で表わしたものである。
【0039】
図4Aおよび図4Bから分かるように、0次光のみが生じる第1の入射角度範囲(等高線が無い領域)と、+1次回折光または−1次回折光と0次光とが生じる第2の入射角度範囲(等高線が有る領域)との境界によって示される入射角度の閾値は、格子周期Pに応じて変化する。
【0040】
角度変換部2の第2の入射角度範囲は、入射角度の閾値によって決まる。格子周期Pを調整することにより、入射角度の閾値を所望の入射角度に設定することができる。ただし、格子周期Pは、λ/2<P<λの範囲である。図4Aおよび図4Bの例では、λ=460nmである。
【0041】
図5に、格子周期Pが300nm、入射光の波長が460nmである場合の、入射角度に対する回折角度の変化を示す。図5において、黒丸により示された曲線は、+1次回折光の入射角度に対する回折角度の変化を示し、白丸により示された曲線は、−1次回折光の入射角度に対する回折角度の変化を示す。
【0042】
+1次回折光に対する入射角度の閾値は−30°であり、−1次回折光に対する入射角度の閾値は30°である。入射角度が30°以下、−30°以上の角度範囲A1では、0次光のみが生じ、回折光は生じない。入射角度が30°を超える角度範囲A2では、0次光および−1次回折光が生じる。入射角度が−30°を下回る角度範囲A3では、0次光および+1次回折光が生じる。
【0043】
角度範囲A1は、角度変換部2の第2の入射角度範囲に対応する。図5に示した例では、回折格子は、波長460nmの入射光のうち、角度範囲A1内の角度で入射した光を透過させる。また、回折格子は、角度範囲A1以外の角度で入射した光の一部を回折する。
【0044】
次に、本実施形態の光源ユニットの動作について説明する。ここでは、角度変換部2と角度制御部3は略平行に配置され、角度変換部2の第2の入射角度範囲は、角度制御部3の第1の入射角度範囲よりも小さくなるように設定されている。
【0045】
面型発光デバイス1から出射された光は、角度変換部2に入射する。角度変換部2は、入射光のうち、第2の入射角度範囲内の角度で入射した光をそのまま透過させ、第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折する。
【0046】
角度変換部2を透過した第2の入射角度範囲内の第1の透過光(0次光のみ)は、角度制御部3に入射する。第1の透過光の角度制御部3への入射角度は、第1の入射角度範囲内であるので、第1の透過光は、角度制御部3をそのまま透過する。
【0047】
一方、角度変換部2を透過した第2の入射角度範囲以外の第2の透過光(0次光および1次回折光)も、角度制御部3に入射する。第2の透過光に含まれている光のうち、角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲内にあるものは角度制御部3を透過し、角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲外にあるものは角度制御部3の入射面で、角度変換部2側の方向へ反射される。
【0048】
第2の透過光には、角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲以外である第1の1次回折光を含むものや、角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲内である第2の1次回折光を含むものがある。第1の1次回折光は、角度制御部3の入射面で、角度変換部2側の方向へ反射されるが、第2の1次回折光は、角度制御部3をそのまま透過する。
【0049】
角度制御部3の入射面で反射された反射光は、角度制御部3と面型発光デバイス1の間で繰り返し反射される。この多重反射の過程において、面型発光デバイス1に入射した光の一部が面型発光デバイス1で吸収される。
【0050】
加えて、多重反射の過程において、反射光の一部は、角度変換部2にて回折され、その角度制御部3への入射角度が変化する。この回折を通じて、反射光の一部の光の角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲内となる。角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲内となった反射光は、角度制御部3をそのまま透過する。このように、多重反射による反射光の再利用が可能である。
【0051】
以下、比較例を上げて、本実施形態の光源ユニットによる出射光強度の低下の抑制効果について説明する。
【0052】
図6Aに、比較例である光源ユニットの構成を示す。比較例の光源ユニットは、図1に示した光源ユニットの角度変換部2に代えて拡散板200を設けたものである。面発光デバイス1および角度制御部3は、図1に示したものと同じである。
【0053】
比較例の光源ユニットにおいては、図6Aに示すように、面発光デバイス1側から角度制御部3側に向かう光は全て、拡散板200で拡散される。拡散光は、拡散板200の両面(角度制御部3側の面および面型発光デバイス1側の面)から出射される。
【0054】
拡散板200の角度制御部3側の面から出射された拡散光は、角度制御部3に入射する。角度制御部3は、拡散板200からの拡散光のうち、第1の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、残りの光は拡散板200側の方向に反射する。角度制御部3からの反射光は、拡散板200にて拡散される。
【0055】
拡散板200の面型発光デバイス1側の面から出射された拡散光は、面発光デバイス1に入射する。面発光デバイス1では、入射した光の一部が吸収される。
【0056】
このように、比較例の光源ユニットでは、面発光デバイス1から出射された光は、必ず、拡散板200にて拡散されて、その一部が面発光デバイス1で吸収されるので、出射光の強度が低下する。
【0057】
これに対して、本実施形態の光源ユニットによれば、図6Bに示すように、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部2への入射角が第2の入射角度範囲内である光1aは、回折されることなく、そのまま角度変換部2および角度制御部3を透過する。
【0058】
このように、面型発光デバイス1から出射された光の一部を、そのまま出射光として取り出すことができるので、図6Aに示した光源ユニットと比較して、面型発光デバイス1での光吸収による出射光強度の低下を抑制することができる。
【0059】
また、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部2への入射角が第2の入射角度範囲以外の光には、角度変換部2で生じる1次回折光の角度制御部3への入射角が第1の入射角度範囲内となる光1bも含まれている。この光1bについては、一部の光が角度変換部2にて回折され、その1次回折光の一部は角度制御部3を透過する。これによっても、面型発光デバイス1での光吸収による出射光強度の低下を抑制することができる。
【0060】
以上説明した本実施形態の光源ユニットは、本発明の一例であり、その構成は図示したものに限定されない。
【0061】
例えば、角度変換部2の格子周期Pは、一定であっても、ランダムであってもよい。ただし、格子周期Pは、λ/2<P<λの条件を満たす必要がある。
【0062】
図7に、格子周期Pがランダムである角度変換部2の一例を示す。
【0063】
図7を参照すると、角度変換部2は、ガラスなどの基板20と、基板20上に形成された複数の凸部21を有する。各凸部21は、直方体形状のものであり、不等間隔で一方向に平行に形成されている。
【0064】
凸部21の間隔(格子周期P)を不等間隔とすることで、角度変換部2にて回折された光の回折角に広がりが生じる。すなわち、角度変換部2に入射した光は、凸部21の間隔の変動幅(周期変動幅)に応じた角度内で散乱される。また、発光部12と角度制御部3の間で多重反射および回折を繰り返す際に、角度変換部2への入射位置によって回折角度が変化する。これにより、角度変換部2による拡散効果が増大し、反射光の再利用効率が向上する。ただし、この場合は、入射角度の閾値は、凸部21の間隔の変動幅(周期変動幅)に応じた変動幅を持つ。
【0065】
図8に、格子周期Pがランダムである角度変換部2の別の例を示す。
【0066】
図8を参照すると、角度変換部2は、ガラスなどの基板20と、基板20上に形成された複数の凸部22を有する。凸部22は、直方体形状のものであり、不等間隔で2次元に形成されている。第1の方向に並ぶ凸部22の間隔および第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ凸部22の間隔はいずれも不等間隔である。
【0067】
図8に示す角度変換部2によっても、拡散効果が増大し、反射光の再利用効率が向上する。
【0068】
図7および図8に示した角度変換部2において、高さ(厚さ)や幅が異なる複数の凸部を設けてもよい。
【0069】
また、図7に示した角度変換部2において、凸部21の断面形状は四角形に限定されず、三角形状など他の形状であってもよい。図8に示した角度変換部2においても、凸部22の形状は、直方体に限定されず、円錐、四角錐、円柱などの形状であってもよい。
【0070】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【0071】
図9に示す光源ユニットは、角度変換部2に代えて角度変換部4を設けた点で、第1の実施形態のものと異なる。面型発光デバイス1および角度制御部3は、第1の実施形態で説明したものと同じであるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0072】
角度変換部4は、多層回折格子であって、屈折率が異なる誘電体層4a、4bを交互に積層した誘電体多層膜よりなる。誘電体多層膜の面型発光デバイス1側の面と誘電体層4a、4bの界面とには、凹凸部が周期的に形成されている。誘電体層4a、4bとしては、SiO2、Nb25、ZnO、TiO2、MgF2、Al23、SrO、CaO、BaO、Bi23などがある。
【0073】
第1の実施形態で説明した角度変換部2と同様、角度変換部4の各回折格子は、面型発光デバイス1側から入射した特定の波長の光のうち、第2の入射角度範囲内で入射した光を透過させ、該第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折(または散乱)する。ここで、第2の入射角度範囲は、第1の実施形態で説明した角度変換部2の第2の入射角度範囲と同じように定義することができる。
【0074】
また、角度変換部4では、第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光は多重回折(散乱)される。この多層回折を利用して、面型発光デバイス1から出射された光を効率良く第1の入射角度範囲内の角度で角度制御部3に入射させることができる。
【0075】
以下、角度変換部4の動作を具体的に説明する。ここでは、角度制御部3および角度変換部4は略平行に配置され、角度変換部4の第2の入射角度範囲が、角度制御部3の第1の入射角度範囲よりも小さくなるように設定されている。
【0076】
図10に示すように、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部4への入射角が第2の入射角度範囲内である光1aは、回折または散乱されることなく、そのまま角度変換部4および角度制御部3を透過する。
【0077】
また、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部4への入射角が第2の入射角度範囲内である光1bに関して、各回折格子において、0次光として入射した光の一部が回折される。図10中、実線で示した矢印は0次光を示し、破線で示した矢印は1次回折光を示す。
【0078】
また、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部4を0次光として透過または回折された光1bに関して、光の角度制御部3への入射角が第1の入射角度範囲内にあるものは角度制御部3を透過する。
【0079】
一方、光1bのうち、角度制御部3への入射角度が第1の入射角度範囲外にあるものは角度制御部3の入射面で、角度変換部2側の方向へ反射される。
【0080】
第1の実施形態では、角度変換部2は1層の回折格子よりなるため、面型発光デバイス1から出射された光1bについて、その回折格子を透過した0次光のうち、第1の入射角度範囲外の光は、角度制御部3で面型発光デバイス1側の方向に反射される。
【0081】
これに対して、本実施形態では、角度変換部4は多層の回折格子よりなるため、面型発光デバイス1から出射された光1bについて、1層目の回折格子を透過した0次光は、2層目以降の回折格子にて、その一部が回折され、1次回折光が生じる。各回折格子で生じた1次回折光の一部は、角度制御部3を透過する。
【0082】
このように、光1bについて、角度制御部3に入射する0次光の割合を減らすことができるので、第1の実施形態のものと比較して、面型発光デバイス1での光吸収による出射光強度の低下をさらに抑制することができる。よって、出射光強度がさらに高い、指向性に優れた光源ユニットを提供することができる。
【0083】
図11Aに、図6Aに示した比較例の光源ユニットの出射光強度と出射角度の関係を示し、図11Bに、本実施形態の光源ユニットの出射光強度と出射角度の関係を示す。図11Aおよび図11Bにおいて、点線で示した曲線は、面型発光デバイス1の出射光を示し、実線で示した曲線は光源ユニットの出射光を示す。これらの例は、面型発光デバイス1と角度制御部3との間での反射回数を1回とした場合の出射光強度をシミュレーションにより求めたものである。
【0084】
比較例の光源ユニットでは、面型発光デバイス1と角度制御部3との間の反射の過程で、拡散板200にて反射光を拡散させることで、出射光強度を増大することができる。図11Aに示す例では、出射角度45°以下において、明るさが、面型発光デバイス1の出射光強度に対して約30%向上している。
【0085】
一方、本実施形態の光源ユニットでは、面型発光デバイス1からの出射光の一部を、角度制御部3で反射することなく、直接、出射光として取り出すことで、出射光強度を増大することができる。図11Bに示す例では、出射角度45°以下において、明るさが、面型発光デバイス1の出射光強度に対して約70%向上している。
【0086】
このように、本実施形態の光源ユニットによれば、出射光強度の高い、指向性に優れた光源ユニットを提供することができる。
【0087】
以上説明した本実施形態の光源ユニットは、本発明の一例であり、その構成は図示したものに限定されない。例えば、多層の回折格子を形成することができるのであれば、角度変換部4の誘電体層数はいくつに設定されてもよい。
【0088】
また、角度変換部4は、3種類以上の誘電体層を繰り返し積層した構成であってもよい。
【0089】
また、角度変換部4の回折格子の格子形状(凹凸形状)は、直方体、円錐、四角錐、円柱などの種々の形状を適用することができる。
【0090】
図12Aに、角度変換部4の一例を示す。
【0091】
図12Aに示す角度変換部4は、誘電体層4a、4bを交互に積層した積層構造を有する。誘電体層4a、4bの界面には、直方体形状の凸部が周期的に2次元に形成された回折格子が形成されている。積層構造の一方の面(誘電体層b側の面)にも、同様の回折格子が形成されている。
【0092】
図12Bに、角度変換部4の別の例を示す。
【0093】
図12Bに示す角度変換部4は、誘電体層4a、4bを交互に積層した積層構造を有する。誘電体層4a、4bの界面には、第1の方向に延伸した断面形状が四角形の凸部が第1の方向と直交する第2の方向に周期的に形成された回折格子が形成されている。積層構造の一方の面(誘電体層b側の面)にも、同様の回折格子が形成されている。
【0094】
図12Cに、角度変換部4のさらに別の例を示す。
【0095】
図12Cに示す角度変換部4は、誘電体層4a、4bを交互に積層した積層構造を有する。誘電体層4a、4bの界面には、第1の方向に延伸した断面形状が三角形の凸部が第1の方向と直交する第2の方向に周期的に形成された回折格子が形成されている。積層構造の一方の面(誘電体層b側の面)にも、同様の回折格子が形成されている。
【0096】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態の光源ユニットの構成を示す模式図である。
【0097】
図13に示す光源ユニットは、角度変換部4の各回折格子の面内方向における格子周期を不等間隔とした点で、第2の実施形態のものと異なる。面型発光デバイス1および角度制御部3は、第1または第2の実施形態で説明したものと同じであるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0098】
図13に示すように、面型発光デバイス1から出射された光のうち、角度変換部4への入射角が第2の入射角度範囲内である光1aは、回折または散乱されることなく、そのまま角度変換部4および角度制御部3を透過する。
【0099】
また、面型発光デバイス1から出射された光のうち、第2の入射角度範囲以外の角度で角度変換部4に入射した光1bについては、その一部が角度変換部4にて回折または散乱され、残りの光は0次光として角度変換部4を透過する。すなわち、光1bについては、角度変換部4の各回折格子において1次回折光と0次光とが生じる。図13中、実線で示した矢印は0次光を示し、破線で示した矢印は1次回折光を示す。
【0100】
1次回折光の回折角は、回折周期に依存し、回折周期が大きいほど回折角は小さくなる。角度変換部4の各回折格子の面内方向における回折周期は不等間隔であるので、1次回折光の回折角は、面内における光が入射する位置によって異なる。
【0101】
本実施形態の光源ユニットによれば、光1bについては、各回折格子にて生じる1次回折光が異なる方向に出射されるため、第1および第2の実施形態の光源ユニットと比較して、角度変換部4による拡散効果が増大し、反射光の再利用効率が向上する。
【0102】
ただし、本実施形態の場合は、入射角度の閾値は、角度変換部4の各回折格子の周期変動幅に応じた変動幅を持つ。
【0103】
上述した第1乃至第3の実施形態によれば、出射光強度の改善効果に加えて、面型発光デバイス1から放出される熱の他の部材への影響の問題も解決することができる。
【0104】
例えば、特許文献1に記載のものや図6Aに示した比較例の光源ユニットにおいて、バックライトや面型発光デバイス1として高出力の光源を用いた場合、その光源からの熱によって拡散板の樹脂が変性し、その結果、光拡散効果の減少や透過率の低下などの問題が生じる。
【0105】
これに対して、第1の実施形態の光源ユニットによれば、角度変換部2は、ガラス等の耐熱性に優れた光学材料により構成されているので、面型発光デバイス1として高出力の光源を用いても、熱によって角度変換部2が変性することはない。
【0106】
また、第2および第3の実施形態の光源ユニットにおいては、角度変換部4は、耐熱性に優れた誘電体材料により構成されている。よって、この場合も、熱によって角度変換部4が変性することはない。
【0107】
このように、第1乃至第3の実施形態によれば、面型発光デバイス1として高出力の光源を用いることができるので、出射光強度の高い光源ユニットを提供することができる。
【0108】
以上説明した各実施形態の光源ユニットは、本発明の一例であり、その構成は図示したものに限定されるものではない。
【0109】
例えば、角度変換部の回折格子が形成された面は、面型発光デバイス1側および角度制御部3側のいずれの側に向いていてもよい。
【0110】
また、角度変換部は、3次元フォトニック結晶により形成されてもよい。フォトニック結晶は、光の波長程度の周期的な屈折率分布を有するナノ構造体であって、周期に対応する光の進入が禁止される特性を有する。3次元フォトニック結晶は、ナノ構造体が3次元に形成されたものである。
【0111】
また、各実施形態では、面型発光デバイスと角度変換部の間および角度変換部と角度制御部の間は空隙を有するが、これに限定されない。面型発光デバイスと角度変換部および角度変換部と角度制御部は密着して形成されてもよい。
【0112】
以上説明した本発明の光源ユニットは、プロジェクタやフラットパネルディスプレイに代表される画像表示装置全般に適用することができる。
【0113】
図14に、本発明の光源ユニットが適用された画像表示装置の一例を示す。
【0114】
図14において、画像表示装置は、プロジェクタであり、光源ユニット50と、表示部51とを有する。
【0115】
光源ユニット50は、前述した第1乃至第3の実施形態の光源ユニットのいずれかである。
【0116】
表示部51は、光源ユニット50からの光を映像信号に応じて変調して、当該映像信号に応じた画像を表示するものである。より具体的には、表示部2は、空間光変調部52と、投射光学系54とを含む。
【0117】
空間光変調部52は、例えば、液晶LV(light valve:ライトバルブ)などの空間変調素子であり、光源ユニット50からの光を映像信号に応じて変調する。投射光学系53は、例えば、レンズなどの光学系であり、空間光変調部52からの出射光(変調光)をスクリーン54に投射する。これにより、映像信号に応じた画像がスクリーン54上に表示される。
【符号の説明】
【0118】
1 面型発光デバイス
2 角度変換部
3 角度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光部と、
前記発光部の出射側に設けられ、前記発光部側から入射した光のうち、第1の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第1の入射角度範囲以外の角度で入射した光を前記発光部側の方向へ反射する角度制御部と、
前記発光部と前記角度制御部との間に設けられ、前記発光部側および前記角度制御部側のそれぞれの側から光が入射し、該入射した光のうち、第2の入射角度範囲内の角度で入射した光を透過させ、該第2の入射角度範囲以外の角度で入射した光については、一部の光を回折または散乱し、残りの光を透過させる角度変換部と、を有する、光源ユニット。
【請求項2】
前記第2の入射角度範囲は、前記第1の入射角度範囲より小さい、請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記角度変換部は、少なくとも1つの回折格子よりなり、該回折格子の格子周期は、前記発光部の発光波長より小さく、かつ、該発光波長の半分の波長より大きい、請求項1または2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記回折格子の格子周期は一定である、請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記回折格子の格子周期は不定である、請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記角度変換部は、屈折率が異なる第1および第2の誘電体層が交互に積層された誘電体多層膜よりなり、前記第1および第2の誘電体層の界面に、前記回折格子が形成されている、請求項3から5のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記角度変換部は、周期的な屈折率分布を有するナノ構造体が3次元に形成された3次元フォトニック結晶よりなる、請求項3から5のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の光源ユニットと、
前記光源ユニットから出射された光を映像信号に応じて変調して、当該映像信号に応じた画像を表示する表示部と、を含む画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図14】
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【図4A】
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【図4B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234717(P2012−234717A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102762(P2011−102762)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】