説明

光源ユニット及び紙葉類の読取装置

【課題】導光体の端面から入射される光を、効率よく集めて、一方向に出射することができる光源ユニットを提供する。
【解決手段】長手方向Lに延びる透明な導光体1と、導光体1の端面に配置された光源部と、導光体1を覆うカバー部材2とを有し、カバー部材2は、平面状の第一の内面2aと、第一の内面2aと交差する平面状の第二の内面2bとを有し、カバー部材2が導光体1を覆った状態で、第一の内面2aと第二の内面2bとが交差してできる交差直線Cは、光拡散パターンPが形成された導光体の側面(光拡散パターン形成面1e)に垂直な方向から見て、光拡散パターンPと重複している。
【効果】交差直線Cが光拡散パターンPの垂直上方にあるので、第一の内面2a及び/又は第二の内面2bで反射された光は光拡散パターン形成面1eに再入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源ユニットに関するものである。この光源ユニットは、例えば、紙幣や有価証券などの紙葉類を透過又は反射した光を受光することにより当該紙葉類を読み取る紙葉類の読取装置に用いられる。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の読取装置は、紙葉類の印刷機器や鑑別装置などにおいて、紙葉類の形状・模様などの認識に用いられる装置である。この紙葉類の読取装置は、紙葉類(「原稿」ということがある)を照明するための棒状の光源ユニットと、その光源ユニットから出射され原稿を透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えている。光源ユニットは、その長軸方向が原稿面と平行になるように、配置されている。
【0003】
先行技術にかかる光源ユニットの構成を、図11に例示する。光源ユニット100は、透明な長手状に延びる導光体101と、この導光体101の端面に配置された光源部103とを有する。導光体101の延びる方向をz方向とし、原稿面を向いた方向をy方向としている。導光体101の一側面には、光源部103から導光体101の端面に入射され導光体に沿ってz方向に進む光を拡散・屈折させて、ほぼ直角方向、すなわちy方向に出射させるための光拡散パターンPが形成されている。
【0004】
その光拡散パターンPは、導光体101の一側面上に長手方向(z方向)に沿って、かつ一直線状に形成されている。
この先行技術にかかる光源ユニットによれば、光源部から導光体101に入射された光は、光拡散パターンにより拡散・屈折されて、その一部は導光体101から原稿面に向けて照射される。この光拡散パターンの微細形状を工夫することにより、原稿面への照射光の長手方向に沿う光量のばらつきを抑制しながら、原稿面に照射することができる。よって、安定した読み取りが可能となり、紙葉類の形状・模様などを正確に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-39996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の光源ユニットの断面図を図12に示す。光源部から導光体101に入射された光は紙面に垂直に進みながら、導光体101の一側面に形成された光拡散パターンPで拡散・屈折され、図示のように全方位に出射するため、原稿面に向けて照射される光量、つまり図示のy方向に照射される光量は全体の一部でしかない。
原稿面に向けて照射される光量の割合を増加させることができれば、光源部の輝度を下げることができ、消費電力を低減することができ、また光源部の寿命も延ばすことができる。
【0007】
そこで、この発明の目的は、導光体の端面から入射される光を、効率よく集めて、一方向に出射することができる光源ユニット、及びそれを用いた紙葉類の読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の光源ユニットは、長手方向に延びる透明な導光体と、導光体の端面に配置された光源部と、導光体を覆うカバー部材と、導光体の少なくとも1つの側面に形成され、光源部から導光体の端面に入射され導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを備えるものである。カバー部材は、平面状の第一の内面と、第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、カバー部材が導光体を覆った状態で、第一の内面と第二の内面とが交差してできる交差直線は、光拡散パターンが形成された導光体の側面(以下「光拡散パターン形成面」という)に垂直な方向から見て、光拡散パターンと重複していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、光源部から導光体の端面に入射され導光体の長手方向に沿って進む光は、光拡散パターンで拡散されたときに、一部光拡散パターンを素通りして、導光体の外部に出てしまうことがある。この漏れた光は従来技術の構成では再利用できなかったが、本発明によれば、カバー部材の第一の内面及び/又は第二の内面に到達して一回〜複数回反射され、再び導光体の内部に入ることができる。
【0010】
特に第一の内面と第二の内面とが交差してできる交差直線が光拡散パターンの垂直上方にあるので、第一の内面及び/又は第二の内面で反射された光は、光拡散パターン形成面に直接入射しやすいという特徴がある。
交差直線と光拡散パターンとは所定距離隔てられ、その間に空間が存在することが好ましい。この空間はどのような物質で満たされていても良いが、通常、空気のような導光体よりも屈折率の低い物質で満たされていることが、空間に入った光を導光体の内部に再入射させるためには望ましい。
【0011】
光拡散パターン形成面の長手方向に沿った端辺は、カバー部材の第一の内面に接し、光拡散パターン形成面の他の端辺は、カバー部材の第二の内面に接している構成であれば、空間を隙間のない閉空間とすることが出来、この空間に集められた光が隙間から逃げるのを防ぐことが出来る。
カバー部材の第一の内面の長手方向に沿った端辺は、光拡散パターン形成面に接し、カバー部材の第二の内面の長手方向に沿った他の端辺は、光拡散パターン形成面に接している場合も同様に、空間を隙間のない閉空間とすることが出来、この空間に集められた光が隙間か逃げるのを防ぐことが出来る。
【0012】
第一の内面と、第二の内面と、光拡散パターン形成面とによって形成される空間は、断面三角形の閉空間であってもよい。
導光体は、光拡散パターン形成面以外の第二の側面を有し、その第二の側面が曲面であれば、レンズの働きをするので、この第二の側面により、導光体から出射する光を集光して、原稿に照度の高い照明領域を形成することが出来る。
【0013】
カバー部材が半透明又は不透明な材質で形成されているものであれば、空間との界面が反射面になり、漏れた光を戻しやすくなる。
第一の内面及び第二の内面に光反射処理がなされている場合も同様に、漏れた光を反射させて戻すことが容易にできる。
光拡散パターンの形状は限定されないが、例えば複数の断面三角形状の溝により構成され、かつその溝の方向は、導光体の長手方向と直交する方向であってもよい。
【0014】
また本発明の光源ユニットは、長手方向に延びる透明な導光体と、導光体の端面に配置された光源部と、導光体を覆うカバー部材と、導光体の少なくとも1つの側面に形成され、光源部から導光体の端面に入射され導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを備え、カバー部材は、平面状の第一の内面と、第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、光拡散パターンが形成された導光体の側面(以下「光拡散パターン形成面」という)の長手方向に沿った一端辺は、カバー部材の第一の内面に接し、光拡散パターン形成面の長手方向に沿った他の端辺は、カバー部材の第二の内面に接しているものである。
【0015】
この構成により、カバー部材が導光体を覆った状態で、第一の内面と第二の内面と光拡散パターン形成面とによって、導光体の長手方向に沿う方向から見て、閉じた断面形状を有する空間を形成することができる。よって、光源部から導光体の端面に入射され導光体の長手方向に沿って進む光は、光拡散パターンで拡散されたときに、カバー部材の第一の内面及び/又は第二の内面に到達して一回〜複数回反射され、再び導光体の内部に入ることができる。すなわち、この空間に集められた光が隙間から逃げるのを防ぐことが出来る。
【0016】
また本発明の紙葉類の読取装置は、紙葉類からなる原稿を照明するための光源ユニットと、その光源ユニットから出射され原稿を透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備えるものであって、光源ユニットは、本発明の光源ユニットの構成を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、導光体の端面から入射される光が導光体から出てしまっても、その光をもう一度集めて利用することが出来るので、効率の良い光源ユニットを提供することができる。
また、光源ユニットを紙葉類の読取装置に用いれば、光源部から照射される光のうち、原稿面に向けて照射される光量の割合を増加させることができるので、光源部の輝度を下げることができ、消費電力を低減することができ、光源部の寿命も延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における紙葉類の読取装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示される紙葉類の読取装置における光源ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】光源ユニットの導光体の形状を概略的に示す斜視図である。
【図4】導光体に形成される光拡散パターンの矢印VI−VI線に沿う概略断面図である。
【図5】導光体をカバー部材で覆った状態を示す断面図である。
【図6】導光体をカバー部材で覆った状態を示す透視斜視図である。
【図7】導光体とカバー部材との間に形成される空間の断面形状と光路を示す拡大図である。
【図8】本発明の他の実施の形態における導光体をカバー部材で覆った状態を示す断面図である。
【図9】導光体とカバー部材との間に形成される空間の断面形状を示す拡大図である。
【図10】導光体とカバー部材との間に形成される空間の断面形状を示す拡大図である。上面1aと右側面1bとの間に、角度の異なる2つの斜め側面1e,1e′が形成されている。
【図11】従来の紙葉類の読取装置における光源ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
【図12】従来のカバー部材で覆われ導光体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
<読取装置>
図1は、本発明の一実施の形態における紙葉類の読取装置の構成を示す概略断面図である。
この紙葉類の読取装置は、原稿を照明するための光源ユニット10と、その光源ユニット10から原稿に向けて出射され、原稿を反射した光を導くためのレンズアレイ11と、基板に実装されそのレンズアレイ11により導かれた透過光を受光する受光素子12とを備えている。
【0020】
これらの光源ユニット10、受光素子12、レンズアレイ11は、一次元方向、すなわち紙面の垂直方向に延びていて、図1はその断面を示している。
光源ユニット10は、焦点面20に載置される原稿に向けて光を出射するものである。
光源ユニット10から出射された光は、保護ガラス14を透過して焦点面20に集光される。保護ガラス14は、必ずしも本発明に必要ではなく省略することもできるが、使用中のごみの飛散や傷つきから光源ユニット10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。保護ガラス14の材質はガラスにこだわらず、例えばアクリルやポリカーボネートといった透明の樹脂に必要に応じて表面にハードコートを施した部材であってもよい。
【0021】
レンズアレイ11は、原稿面で反射・散乱された光を受光素子12に結像するものであり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイをレンズアレイ11として用いることができる。
受光素子12は基板13に実装され、透過光を受けて光電変換により光出力として画像を読み取るものである。受光素子12の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコン、CdS、CdSeなどを用いたフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したものであっても良い。またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光素子12として、フォトダイオードやフォトトランジスタ、駆動回路及び増幅回路を一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。また、必要に応じて基板13上に駆動回路及び増幅回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに基板13上にA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号として外部に取り出すこともできる。
【0022】
なお、前述した読取装置は、光源ユニット10から原稿に向けて出射され原稿を反射した光を受光する、反射型の読取装置であったが、光源ユニット10を、原稿に関して上下反対の位置に置いて、光源ユニット10から原稿に向けて出射され原稿を透過した光を受光する、透過型の読取装置であってもよい。この場合、光源ユニット10の位置が焦点面20の下側になるところが図1の配置と異なるのみで、光源ユニット10、受光素子12、レンズアレイ11自体の構造は、今まで説明したものと異なるところはない。
【0023】
<光源ユニット>
図2は、図1に示される紙葉類の読取装置における光源ユニット10の構成を概略的に示す斜視図である。光源ユニット10は、長手方向Lに沿って延びる透明な導光体1と、長手方向Lの一方の端面付近に設けられた光源部3と、導光体1の側面(上側面及び左右側面)を保持するためのカバー部材2と、導光体1の所定の側面に形成され、光源部3から導光体1の端面に入射され導光体1の長手方向Lに沿って進む光を拡散・屈折させて、導光体1から出射させるための光拡散パターンP(図3参照)とを有している。
【0024】
光源部3には、例えば近赤外、赤、緑の各波長の光を発する3種のLED(Light Emitting Diode)が用いられている。各LEDは、光源駆動基板(図示せず)に実装されるための端子3aを持っていて、この端子3aを光源駆動基板に差込み、半田付けなどで接合することにより、光源駆動基板に電気的に接続される。
なお、光源部3は導光体1の一方端部のみに設置してもよいが、必要に応じて両方の端部に設置することもできる。この場合、2つの光源部3は同一のものであってもよいし、別のものであってもよい。例えば一方の光源部3と他方の光源部3とで異なる波長の光源を実装しておけば、多数の波長を同時にあるいは切り替えて使用することができる。
【0025】
導光体1は、アクリルやポリカーボネートなどの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成される。特に光源部として紫外波長を用いる場合には導光体1としてフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい。
この導光体1の全体形状を図3に示す。導光体1は、細長い柱状であり、その長手方向Lに直交する断面は、長手方向Lのどの切り口においても、実質的に同じ形状、同じ寸法をしている。
【0026】
当該断面の周囲面は、上面1a、左右側面1b,1c、底面1d及び上面1aと左右いずれかの側面1b,1c(この実施形態では右側面1bとする)との間に形成された斜め側面1eの5つの側面からなる。上面1a、左右側面1b,1c及び斜め側面1eは平面形状であり、底面1dはレンズの集光効果を持たせるために滑らかな凸状に形成されている。しかし底面1dは必ずしも凸状に形成されていなくてもよく、平面形状であってもよい。この場合、底面1dの下側に導光体1から下向きに出射した光を集光するレンズアレイを配置するとよい。
【0027】
上面1aと左側面1cとはほぼ直角で交差し、上面1aと右側面1bとは斜め側面1eを無視すればほぼ直角で交差している。したがって、左側面1cと右側面1bとは、互いにほぼ平行な一対の対向面を作る。
上面1aと右側面1bとの境界部に形成されている斜め側面1eは、当該斜め側面1eに垂直な方向(図5に「視方向D」と図示)から見れば、斜め側面1eと上面1a,右側面1bとの境界線である各長辺21,22と、それと直角な短辺とで構成される長方形に見える。本実施の形態では、斜め側面1eは上面1aと例えば約135度の角度をなし、右側面1bとも例えば約135度の角度をなしている。そしてこの斜め側面1eには光拡散パターンPが加工・形成されている。
【0028】
この光拡散パターンPは、図3に示すように一定の幅を維持して、導光体1の長手方向Lに沿って一直線状に延びている。この光拡散パターンPの長手方向Lに沿った寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光素子12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
この光拡散パターンPは、図4にそのIV−IV断面図を示すように、導光体1の斜め側面1eに彫刻された複数のV字状の溝31により構成されている。この意味で、斜め側面1eを、以下「光拡散パターン形成面1e」という。
【0029】
この複数のV字状の溝31の各々は、導光体1の長手方向Lに直交する方向(図4の紙面に垂直な方向)に延びるよう形成されており、互いに同じ長さを有している。複数のV字状の溝31の各々の一方端は、光拡散パターン形成面1eと上面1aとの境界線21上又はその境界線21から一定距離手前に存在する仮想的な直線上に位置しており、他方端は光拡散パターン形成面1eと右側面1bとの境界線22上又はその境界線22から一定距離手前に存在する仮想的な直線上に位置している。これにより、複数のV字状の溝31より構成される光拡散パターンPは、上述したように一定の幅を維持して導光体1の長手方向Lに一直線状に延びるよう構成されている。
【0030】
複数のV字状の溝31は、図4に示すように、断面が例えば二等辺三角形状を有している。V字状の溝31の溝の深さdは、導光体1の長手方向Lの端部にいくほど深くなっていることが好ましい。この場合、複数のV字状の溝31の各開口幅wは同じであるため、複数のV字状の溝31の各頂角の角度は導光体1の端部側ほど小さくなっている。
この光拡散パターンPにより、導光体1の端面1fから入射された光を、長手方向Lに沿ってほぼ一様の明るさで底面1dから照射することができる。これにより、導光体1の長手方向Lの全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができるため、照度むらを無くすことができる。
【0031】
なお、光拡散パターンPの溝31のV字形状は一例であり、照度むらが特に顕著にならない限り、V字形に代えてU字形にするなど任意に変更することができる。光拡散パターンPの幅も一定の幅を維持する必要はなく、導光体1の長手方向Lに沿って幅が変化するものであっても良い。溝の深さdや溝の開口幅wについても、適宜変更することができる。
【0032】
図5は、導光体1をカバー部材2で覆った状態を示す断面図であり、図6はその斜視図である。なお図6においてカバー部材2を透明なものとして描いている。しかし実際は透明なカバーに限定されず、半透明、又は不透明なものであってもよい。カバー部材2は導光体1の光出射面以外の側面より漏れ出した光を再び導光体1内に反射させるため、光反射率の高い白色樹脂若しくは白色塗料を塗布した樹脂の成形品、又はステンレスやアルミニウムなどの金属板で形成するのが好ましい。
【0033】
カバー部材2は、導光体1の長手方向Lに沿った細長い形状であり、導光体1の上面1a及び左右側面1b,1cを覆うことができるように、導光体1の上面1aに対向する天井面2a、導光体1の右側面1bに対向する右内側面2b、及び導光体1の左側面に対向する左内側面2cを有している。天井面2aが「第一の内面」に相当し、右内側面2bが「第二の内面に相当する。これらの3つの内面はそれぞれ平面をなしており、これらの3つの内面で断面がほぼ「コ」の字状の凹部を形成するので、導光体1をこの凹部の中に挿入することができる。このため、カバー部材2で導光体1を保護することができる。
【0034】
この覆った状態で、カバー部材2の天井面2aが導光体1の上面1aに密着し、カバー部材2の右内側面2bが導光体1の右側面1bに密着し、左内側面2bが導光体1の左側面1cに密着している。
カバー部材2の天井面2aと右内側面2bとはほぼ直角で交差し、天井面2aと左内側面2bとはほぼ直角で交差している。一方、前述したように、導光体1の上面1aと右側面1bとの境界部には、光拡散パターン形成面1eが斜めに形成されているので、導光体1をカバー部材2で覆った状態で、この光拡散パターン形成面1eと天井面2aと右内側面2bとによって囲まれた空間Sが形成される。
【0035】
この空間Sは、本発明の実施形態では空気で満たされているが、空気に限らず、空気以外の気体、あるいは液体若しくはゲル状の物体で満たされていても良い。または、空間Sの中に透明な三角柱状の固体が介在しても良い。ただし、この空間Sに満たされる物質の屈折率は、導光体1やカバー部材2を構成する物質の屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0036】
この空間Sの断面形状は、光拡散パターン形成面1eを底辺とする三角形であり、空間Sは、その断面形状を保ったまま長手方向Lに沿って伸びている。すなわち、空間Sの三次元的な形状は三角柱となる。天井面2aと右内側面2bとが交差する直線を「交差直線C」という。交差直線Cから、光拡散パターン形成面1eまでの距離を、図7に示すように、“A”と書く。
【0037】
導光体1の光拡散パターン形成面1eには、前述したように光拡散パターンPが形成されているので、カバー部材2が導光体1を覆った状態で、天井面2aと右内側面2bとが交差してできる交差直線Cは、光拡散パターン形成面1eに垂直な方向(図5の「視方向D」)から見て、光拡散パターンPと重複することになる。
この重複状態は、斜視図である図6にも示されている。すなわち、カバー部材2の天井面2aと右内側面2bとが交差してできる交差直線Cは、導光体1の長手方向Lにわたって、光拡散パターン形成面1eに形成された光拡散パターンPの上方に存在している。
【0038】
この配置に基づく作用・効果を、図5及びその拡大図である図7を用いて説明する。導光体1の内部を長手方向Lである紙面に垂直な方向に伝搬する光は、光拡散パターンPに当たって反射、屈折され、任意の方向に拡散される。この場合、拡散される光の方向が導光体1の内部に向かう方向であれば、その光は原稿面の照射に利用され得るが、光拡散パターンPに当たって拡散された光が、光拡散パターン形成面1eを透過して、導光体1の外部に出てしまうことがある。
【0039】
この導光体1の外部に出る光は、図7に示すように、断面三角形の空間Sに侵入する。そして、カバー部材2の天井面2a又は右内側面2bで反射され、再び光拡散パターン形成面1eを通過して導光体1の中に入る。したがって、導光体1の内部に戻った光を、原稿面の照射に再利用することが出来る。
この場合、カバー部材2が導光体1を覆った状態で、カバー部材2の天井面2aが導光体1の上面1aに密着せず、カバー部材2の右内側面2bが導光体1の右側面1bに密着していなければ、空間S内の光がカバー部材2の天井面2aと導光体1の上面1aとの隙間、又はカバー部材2の右内側面2bと導光体1と右側面1bの隙間を通って逃げてしまい、迷光となる恐れがあるので、カバー部材2の天井面2aは導光体1の上面1aに密着し、カバー部材2の右内側面2bは導光体1の右側面1bに密着していることが好ましい。
【0040】
なお、この空間S内に存在する物質の屈折率が、導光体1やカバー部材2を構成する物質の屈折率よりも小さいほうが、空間S内に光が閉じ込められにくく、空間Sから出て行きやすいという意味で望ましい。
このようにして本実施の形態によれば、導光体1の外部にいったん出て断面三角形の空間Sに侵入した光を導光体1の内部に戻すことができるので、光量が無駄に失われることを防止できる。
【0041】
なお導光体1の底面1dは、レンズの集光効果を持たせるために滑らかに加工してあり、光拡散パターンPから拡散された光を、効率よく原稿面に集光することが出来る。よって、原稿面の照度を高くして、原稿の正確な認識に寄与することができる。
なお、今までの説明では、カバー部材2は半透明又は不透明な材質で形成されているとしたが、カバー部材2の材質にかかわらず、天井面2a及び/又は右内側面2bに、光反射処理をしてもよい。光反射処理には、アルミニウムや銅などの金属を蒸着する、屈折率の異なる物質で薄膜を塗布する、などが挙げられる。このように光反射処理をすることにより、空間S内に入った光を天井面2a及び/又は右内側面2bで効率よく反射させて、原稿面の照射に利用することが出来る。
【0042】
また、光拡散パターンPと空間S(この変更例では空間S′という)を導光体1のいかなる部分に配置するかに関して、次のような変更例もある。図8は、導光体1をカバー部材2で覆った状態を示す断面図であり、図9は空間S′の周辺を示す部分拡大断面図である。
この構成では、光拡散パターンPは、導光体1の上面1aの中央部に、長手方向L(紙面に垂直な方向)に沿って、一定の幅を維持して一直線状に形成されている。カバー部材2の、導光体1の上面1aに対向する天井面には、断面三角形状の空間S′が長手方向Lに沿って形成されている。この三角形の左側面2dが「第一の内面」に相当し、三角形の右側面2eが「第二の内面」に相当し、導光体1の上面1aと、三角形の左側面2dと右側面2eとにより、断面三角形の空間S′が形成されている。
【0043】
この実施例においても、光拡散パターンPに当たって反射、屈折され、導光体1の外部方向に拡散された光は、断面三角形の空間S′に侵入し、カバー部材2の第一の内面2d又は第二の内面2eで反射され、再び光拡散パターン形成面1eを通って導光体1の中に入る。したがって、導光体1の内部に戻った光を、原稿面の照射に利用することが出来る。
【0044】
図5の実施例と同様、カバー部材2が導光体1の上面1aに密着している。これによりカバー部材2の第一の内面2dと第二の内面2eと導光体1の上面1aとで断面三角形の空間S′を形成することができる。また、第一の内面2dと第二の内面2eとに反射処理をすることも好ましい。
この図8、図9の変更例では、カバー部材2の天井面の中央部に溝状の空間S′を形成することになる。光拡散パターンPが導光体1の上面1aの中央部に形成されるので、光拡散パターンPで拡散された光を光源ユニットの垂直下方に集めることができる。
【0045】
また、次のような変更例もある。図10は、上面1aと左右いずれかの側面1b,1c(この実施形態では右側面1bとする)との間に、角度の異なる2つの斜め側面1e,1e′を形成し、両斜め側面1e,1e′に光拡散パターンPを形成した例を示す。両斜め側面1e,1e′を合わせて「光拡散パターン形成面」という。この構成においても、いままでの実施形態と同様、光拡散パターンPが形成された導光体の側面1e,1e′のうち、側面1eの長手方向Lに沿った一端辺は、カバー部材2の上面1aに接し、側面1e′の光拡散パターン形成面の長手方向Lに沿った他の端辺は、カバー部材2の右側面1bに接している。
【0046】
このように、カバー部材2の天井面2aは導光体1の上面1aに密着し、カバー部材2の右内側面2bは導光体1の右側面1bに密着しているので、これらの間に、断面四角形の空間S″ができる。光拡散パターンPを拡散して、導光体1の外部にいったん出て断面四角形の空間S″に侵入した光は、導光体1の内部に戻されるので、光量が無駄に失われることを防止できる。
【0047】
なお、この空間S″内に存在する物質の屈折率が、導光体1やカバー部材2を構成する物質の屈折率よりも小さいほうが、空間S″に光が閉じ込められにくく、空間S″から出て行きやすいという意味で望ましい。また、前述の例と同様、カバー部材2の天井面2a及び/又は右内側面2bに、光反射処理をしてもよい。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば本発明では、光拡散パターンPの形成面及びその上の空間S,S′,S″を、導光体1の光出射面を除く任意の面に配置することができる。例えば導光体1の上面1aと左側面1cの間に斜め側面を作ってここに形成しても良く、導光体1の右側面1bに形成しても良く、導光体1の左側面1cに形成しても良い。また、複数の光拡散パターンP及びその上の空間S,S′,S″を導光体1の複数の面にそれぞれ配置してもよい。その他本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 導光体
2 カバー部材
3 光源部
1a 導光体の上面
1b,1c 左右側面
1d 底面
1e 斜め側面(光拡散パターン形成面)
21,22 境界線
2a カバー部材の天井面
2b 右内側面
2c 左内側面
2d 三角形の左側面
2e 右側面
31 V字状の溝
10 光源ユニット
11 レンズアレイ
12 受光素子
C 交差直線
D 視方向
L 長手方向
P 光拡散パターン
S,S′,S″ 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の読取装置の照明光源として用いられる光源ユニットであって、
長手方向に延びる透明な導光体と、
前記導光体の端面に配置された光源部と、
前記導光体を覆うカバー部材と、
前記導光体の少なくとも1つの側面に形成され、前記光源部から前記導光体の端面に入射され前記導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを有し、
前記カバー部材は、平面状の第一の内面と、前記第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、
前記カバー部材が前記導光体を覆った状態で、前記第一の内面と前記第二の内面とが交差してできる交差直線は、前記光拡散パターンが形成された前記導光体の側面(以下「光拡散パターン形成面」という)に垂直な方向から見て、前記光拡散パターンと重複している、光源ユニット。
【請求項2】
前記交差直線と前記光拡散パターン形成面とが所定距離隔てられ、その間に空間が存在する請求項1記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記光拡散パターン形成面の長手方向に沿った一端辺は、前記カバー部材の第一の内面に接し、前記光拡散パターン形成面の長手方向に沿った他の端辺は、前記カバー部材の第二の内面に接している請求項2記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記カバー部材の第一の長手方向に沿った内面の端辺は、前記光拡散パターン形成面に接し、前記カバー部材の第二の内面の長手方向に沿った他の端辺は、前記光拡散パターン形成面に接している請求項2記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記第一の内面と、前記第二の内面と、前記光拡散パターン形成面とによって、前記導光体の長手方向に沿った方向から見て、断面三角形の空間が形成されている請求項3又は請求項4記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記導光体は、前記光拡散パターン形成面以外の第二の側面を有し、その第二の側面が曲面である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記カバー部材は半透明又は不透明な材質で形成されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記第一の内面及び/又は前記第二の内面に、光反射処理がなされている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項9】
前記光拡散パターンは、複数の断面三角形状の溝により構成され、かつその溝の方向は、前記導光体の長手方向と直交する方向である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項10】
紙葉類の読取装置の照明光源として用いられる光源ユニットであって、
長手方向に延びる透明な導光体と、
前記導光体の端面に配置された光源部と、
前記導光体を覆うカバー部材と、
前記導光体の少なくとも1つの側面に形成され、前記光源部から前記導光体の端面に入射され前記導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを有し、
前記カバー部材は、平面状の第一の内面と、前記第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、
前記カバー部材が前記導光体を覆った状態で、前記光拡散パターンが形成された前記導光体の側面(以下「光拡散パターン形成面」という)の長手方向に沿った一端辺は、前記カバー部材の第一の内面に接し、前記光拡散パターン形成面の長手方向に沿った他の端辺は、前記カバー部材の第二の内面に接している、光源ユニット。
【請求項11】
前記カバー部材が前記導光体を覆った状態で、前記第一の内面と前記第二の内面と前記光拡散パターン形成面とによって、前記導光体の長手方向に沿った方向から見て、閉じた断面形状を有する空間を形成している請求項10記載の光源ユニット。
【請求項12】
紙葉類からなる原稿を照明するための光源ユニットと、その光源ユニットから出射され前記原稿を反射又は透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備える紙葉類の読取装置であって、
前記光源ユニットは、長手方向に延びる透明な導光体と、前記導光体の端面に配置された光源部と、前記導光体の側面を覆うカバー部材と、前記導光体の一側面に形成され、前記光源部から前記導光体の端面に入射され前記導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを有し、
前記カバー部材は、平面状の第一の内面と、前記第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、
前記カバー部材が前記導光体を覆った状態で、前記第一の内面と前記第二の内面とが交差してできる交差直線は、前記光拡散パターンが形成された前記導光体の一側面(「光拡散パターン形成面」という)に垂直な方向から見て、前記光拡散パターンと重複しているものである、紙葉類の読取装置。
【請求項13】
紙葉類からなる原稿を照明するための光源ユニットと、その光源ユニットから出射され前記原稿を反射又は透過した光を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた透過光を受光する受光素子とを備える紙葉類の読取装置であって、
前記光源ユニットは、長手方向に延びる透明な導光体と、前記導光体の端面に配置された光源部と、前記導光体の側面を覆うカバー部材と、前記導光体の一側面に形成され、前記光源部から前記導光体の端面に入射され前記導光体の長手方向に沿って進む光を拡散・屈折させて出射させるための光拡散パターンとを有し、
前記カバー部材は、平面状の第一の内面と、前記第一の内面と交差する平面状の第二の内面とを有し、
前記カバー部材が前記導光体を覆った状態で、前記光拡散パターンが形成された前記導光体の側面(以下「光拡散パターン形成面」という)の長手方向に沿った一端辺は、前記カバー部材の第一の内面に接し、前記光拡散パターン形成面の長手方向に沿った他の端辺は、前記カバー部材の第二の内面に接しているものである、紙葉類の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−8952(P2011−8952A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148778(P2009−148778)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】