説明

光源ユニット

【課題】通気用開口を有する凹面反射鏡において、その内部の放電ランプが万一破裂等の破損をした場合に、その破片が飛び散らない構造を簡単な手段によって提供することである。
【解決手段】両端に封止部(12)が形成された石英ガラスよりなる発光部(11)放電容器に一対の電極を対向配置した高圧水銀ランプ(10)と、この高圧水銀ランプ(10)を覆う凹面反射鏡(20)と、高圧水銀ランプ(10)の一端を保持するとともに凹面反射鏡(20)の首部外面で固定されるベース部材(30)と、凹面反射鏡(20)の前面開口を概略気密に塞ぐ前面ガラス(60)よりなる光源ユニットにおいて、前記ベース部材(30)と前記凹面反射鏡(20)の首部の間には、当該反射鏡(20)内部と空間的につながった冷却風用開口部(23)を形成し、この開口部(23)に発光管を形成する破片用の防護網部材(60)を取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は光源ユニットに関し、特に、液晶プロジェクタやDLP(デジタルライトプロセッサ)用のバックライトに使用される光源ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】プロジェクタ装置は、矩形状のスクリーンに対して均一に、しかも十分な輝度、効率、及び演色性をもって画像を投射させることが要求される。このため、光源として、水銀や金属ハロゲン化物を封入させたメタルハライドランプが使われる。最近ではより一層の小型化、点光源化が進められ、電極間距離の極めて小さいランプが実用化されている。
【0003】このような背景のもと、最近では、メタルハライドランプに代わって、点灯時の水銀蒸気圧が百数十気圧以上にもなる高圧な水銀ランプが提案されている。これは、点灯開始時の水銀蒸気圧をより高くすることで、アークの広がりを抑える(絞り込む)とともに、より一層の光出力の向上を図るというものであり、例えば、特開平2−148561号公報、特開平6−52830号公報に開示されている。
【0004】図2はこのような放電ランプ10と凹面反射鏡20を使った光源ユニットを示す。両端封止型の放電ランプ10を取り囲むように凹面反射鏡20がある。凹面反射鏡20の首部21にはべース部材30が取付けられる。ベース部材30はランプ保持部31とミラー固定部32よりなる2段円筒形状をしている。放電ランプ10の一端はランプ保持部31に接着剤41で固定保持されるとともに、ミラー固定部32が凹面反射鏡20の首部21で接着剤42で固定される。凹面反射鏡20の前面開口には光透過性の前面ガラス50が取り付けられる。この前面ガラス50は放電ランプ10が破裂などしたときにその破片が飛び散らないようにするものである。これは放電ランプ10がメタルハライドランプや前記した高圧水銀ランプの場合に、点灯時に発光管内圧が20〜150気圧程度まで上昇し、長時間放電ランプを点灯させた後において発光管が劣化等することにより生じるものである。このような凹面反射鏡20の前面開口をガラス60で密閉したものは、例えば、特開平5−251054号に開示されている。
【0005】ところで、このような光源ユニットは小型化の要請が著しい。特に、プロジェクタ装置用の光源ユニットは、プロジェクタ装置自体が例えばB5サイズまで小型化されつつあるのでその影響は大きく受ける。反射鏡の一例をあげると、前面開口部寸法50×60mm、前面開口から首部先端までの距離60mm、放電ランプの一例をあげると、放電容器内容積250mm3、電極間距離1.5mmというレベルで小型化が強く要請される。
【0006】その一方で、放電ランプからは高い光出力が要請されるので、放電容器外表面や凹面反射鏡内面はきわめて高温になる。このため、放電容器外表面や凹面反射鏡内面を効果的に冷却するために冷却風を流す必要がでてくる。つまり、光源ユニットには、上記理由により前面ガラスを設ける必要があるが、その一方で凹面反射鏡内を完全に密閉するわけにはいかず、このため反射鏡内に冷却風を流すための冷却用開口を設けることが必要になる。つまり、流路は、図2に示すように凹面反射鏡20の前面近傍の開口部22から反射鏡内20に吸引されて反射鏡内部を流れて反射鏡首部21に形成された開口部23から排風されるか、あるいは、その逆であって、反射鏡の首部から吸引されて反射鏡内部を通過して前面開口近傍から排風する構造である。このため、図に示すように前面開口、及び凹面反射鏡の首部には通気孔22,23が必要になる。
【0007】このような構造により光源ユニットは反射鏡20内部の放電ランプ10を十分に冷却するための機構を備えてはいるが、万一、放電ランプ100が破裂した場合にその破片が通気孔22,23から排出してしまうという不具合を生ずる。特に、プロジェクタ装置の中に組み込まれた光源ユニットは、前記のように装置の小型化とも相俟って破片の処理が極めて困難である。反射鏡20の前面開口側の通気孔22に対してはその周囲スペース等との関係で比較的対処が容易であるが、反射鏡20の首部側通気孔23は構造的に複雑であり、破片が通気孔から排出するとその後処理も困難になるというのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しようとする課題は、通気孔を有する凹面反射鏡において、その内部の放電ランプが万一破裂等の破損をした場合に、その破片が飛び散らない構造を簡単な手段によって提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、両端に封止部が形成された石英ガラスよりなる発光部に一対の電極を対向配置した高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを覆う凹面反射鏡と、高圧水銀ランプの一端を保持するとともに凹面反射鏡の首部外面で固定されるベース部材と、凹面反射鏡の前面開口を概略気密に塞ぐ前面ガラスよりなる光源ユニットにおいて、前記ベース部材と前記凹面反射鏡の首部の間には、当該反射鏡内部と空間的につながった冷却風用開口部を形成し、この開口部に発光管を形成する破片用の防護網部材を取り付けたことを特徴とする。
【0010】さらに、前記防護網部材は断面C字状の板状部材よりなり前記ベース部材に密着できることを特徴とする。さらに、前記防護網部材は前記ベース部材からの脱着方向に伸びる舌状固定片を有することを特徴とする。さらに、前記舌状固定片は前記ベース部材に設けられた接着剤充填用開口に固定されることを特徴とする。さらに、前記高圧水銀ランプは0.15mg/mm3以上の水銀が封入されたことを特徴とする。
【作用】
【0011】上記構成によれば、高圧放電ランプを良好に冷却することができるとともに、万一破裂等の破損をした場合であっても、防護用網部材が良好に発光管の破片を確保することができる。また、防護網部材を断面C字状の板状部材で構成することにより、防護網部材を簡単な構造で簡単な作業で装着、脱着させることが可能になり、また、この防護網部材をベース部材に密着させることができる。さらに、防護網部材はベース部材からの脱着方向に伸びる舌状固定片を有することにより、この固定片をベースに設けた穴、凹部に係止させることができ、挿入する作業は容易ではあるが脱着は困難となり、光源ユニットを使用している段階で不所望に網部材が移動することを防止できる。さらに、舌状固定片はベース部材に設けられた接着剤充填用開口に固定、係止させることで専用の凹部を特に設ける必要がなくなる。さらに、高圧水銀ランプは0.15mg/mm3以上の水銀が封入されたものとすることにより、高出力、高演色性の特性を得ることができるとともに、高い水銀蒸気圧にも関わらずランプの効果的な冷却と万一の破損の場合も良好に対処することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明の光源ユニットを示す。光源ユニットはショートアーク型高圧水銀ランプ10と凹面反射光20を有し、ランプ10は発光部11と両端の封止部12よりなる。発光部11の内部には一対の電極を有するとともに、水銀と希ガスが封入されている。封止部12の内部には電極と溶接された金属箔が埋設されている。なお、放電ランプは直流点灯型であってもよく、交流点灯型であってもよい。
【0013】水銀ランプ10の一例をあげると、封入水銀量は0.16mg/mm3であり、希ガスとしてアルゴンガスが10KPaの圧力で封入されている。また、電極間距離1.5mm。放電容器内容積260mm3であり、定格電圧82V、定格消費電力200Wである。数値例はこれらに限定されるものではないことは当然ではあるが、ショートアーク型高圧水銀ランプをプロジェクタ装置用の光源ランプとして使用するには、水銀は0.15mg/mm3以上封入することが好ましい。
【0014】凹面反射鏡20は、ガラス、例えば硼硅酸ガラスからなり、その前面開口の内径は120mm程度である。凹面反射鏡20の反射面は回転曲面であり、その表面には反射特性の優れたチタニアーシリカなどの蒸着膜が形成されている。凹面反射鏡20の頂点には首部21が形成されており、放電ランプ10の一方の封止部12bが挿入されている。そして、封止部12bの先端はベース部材30のランプ保持部31に接着剤41で固定される。ベース部材30のミラー固定部32は反射鏡20の首部21で同様に接着剤42で固定される。そして、放電ランプ10の軸線は、凹面反射鏡20の光軸と一致し、且つ点灯時に形成された電極間に形成されたアーク輝点が凹面反射鏡20の第一焦点に位置した状態になるようにベース部材30と固定されている。
【0015】凹面反射鏡20の前面開口は、放電ランプ10が万一破裂した場合に、その破片が前方開口より飛散しないように、例えば硼硅酸ガラスよりなるガラス板60で覆われている。ベース部材30については、後述する図4、図5に示すような形状をしており、ランプ保持部31は円筒形状をしており、その内部に放電ランプ10の封止部12、あるいは封止部に装着された口金が挿入して、前述のように接着剤で固定される。ミラー固定部32は円筒形状を一部切り欠いた形状をしており、反射鏡20の接着されたときに切り欠き部分33が後述する冷却風用の開口となる。ベース部材30は、例えば、アルミナ等のセラミックスよりなる。
【0016】凹面反射鏡20の前方近傍には、反射鏡内部を冷却するための冷却風用開口22が設けられる。また、図2で示したように反射鏡20の首部側にも冷却風用開口(23)が設けられている。これら2つの開口によって冷却風が一方の開口より流入し、他方の開口より排出することで、冷却風が反射鏡20の内部を良好に流れて放電ランプ10や反射鏡20の内面を冷却することができる。なお、開口22は反射鏡に設ける場合に限定されるものではなく、反射鏡20の前方開口縁と前面ガラス50の間の隙間として設けても良く、また、前面ガラス50の開口を設けてもよい。
【0017】ここで、本発明の光源ユニットは冷却風用開口23に防護網部材60を設けたことを特徴とする。防護網部材60は、図6〜図10に詳述するように、ベース部材30のランプ固定部31に接触して装着されるベースリング部61と、冷却風用開口23を塞ぐように設けられた網部分62より形成される。防護網部材60は例えばステンレス鋼板よりなり、面積4mm2程度の開口が設けらている。なお、網部分62の開口は図6に示すような格子状、図7に示すような丸穴状、図8に示すような網形状であってもかまわない。また、開口面積などは放電ランプの破片を十分に捕獲できるものであれば足りる。さらには、開口面積はランプの冷却を阻害するものであってはならず、開口全体の総面積をしてはある程度はなければならない。つまり、一つの開口面積は小さいほうが好ましいが、開口全体の総面積はある程度必要になるというわけである。一つの開口面積は格子状の開口の場合は対角線で2.8mm以下、丸穴状の開口の場合はΦ2.8mm以下、網目状の開口の場合は対角線で2.8mm以下が必要となる。これは、本発明者が鋭意検討の末、このようなプロジェクタ装置に使用する光源ユニットにおいてはΦ3.0mm程度の場合が多く、これより小さい場合には実用上問題ないことを見出したことにもとづく。また、開口の総面積は、60mm2以上は必要である。これも本発明者が鋭意検討の末、放電ランプの冷却との関係で見出したものである。
【0018】このように冷却用開口23を塞ぐように防護網部材60を設けることで、放電ランプ10が万一破裂等してもその破片が当該開口23から飛散排出して、プロジェクタ装置内部に飛び散るという被害を良好に防止することができる。その一方で、光源ユニットに冷却機構を設けたということで、光源ユニットの小型化と放電ランプの光出力の向上をともに可能なものとする。
【0019】図3は、図1に示す光源ユニットのA−A’断面を矢印方向に見た図を示す。ベース部材30と冷却風用開口23が交互に形成される。開口23には防護網部材60の網部分62が存在する。封止部12bの周囲には反射鏡20と繋がった空間70が形成されている。そして、防護網部材60からは図矢印で示すような冷却風が流れる。
【0020】防護網部材60のベースリング部61は、図6〜8に示すような円形でなくてもよく、図9に示すような一部に切り欠きを有するC字状の板状部材であってもよい。この場合、防護網部材60をベース部材30へ密着させることができる、網部分62の冷却用開口との位置関係を確実なものとすることができるとともに、防護網部材60の装着、脱着作業も容易に行えるという利点を有する。なお、ベースリング部61の形状を円形やC字形状以外に他の構造、例えば、図9に示すように切り欠いてはいるが、両端が重なるような構造であってもかまわない。
【0021】ここで、図6〜9に示すように、防護網部材60はベースリング部61に舌状固定片63を設けている。この舌状固定片63は、防護網部材60のベース部材30への脱着方向に伸びるものであり、例えば、ベース部材30との装着時には、ベース部材30に設けた穴34に係止させることができる。つまり、防護網部材60をベース部材30に挿着させるときは容易に行えるが、一度、固定片63が穴34に係止すると防護網部材60は強固に固定されて、例えばプロジェクタ装置等を移動させてもそれに応じて動くようなことはなくなる。なお、固定片63は内方に若干折り曲げておくことが望ましい。
【0022】さらには、舌状固定片60の構造としては、図6〜9に示すようにベースリング部61から突出した形状に限定されるものではなく、図10に示すようにリング部61の一部を折り曲げて形成することも可能である。舌状固定片60が係合するベース部材30の穴は図5に示すように溝のような形状のものでもよく、凹部として係合できる構造であれば足りる。
【0023】なお、ベース部材30とランプ封止部は接着剤で固定するが、ベース部材30には接着剤を充填するための充填用開口を設けることがある。具体的には、ベース部材30のランプ固定部31にランプ封止部を挿入したあと、この充填用開口から接着剤を充填して両者を接着するものである。そして、舌状固定片60をこの充填用開口を利用することで、ベース部材30に専用の穴や凹部を設ける必要はなくなる。
【0024】
【発明の効果】請求項1に記載の発明は、両端に封止部が形成された石英ガラスよりなる放電容器に一対の電極を対向配置した高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを覆う凹面反射鏡と、高圧水銀ランプの一端を保持するとともに凹面反射鏡の首部外面で固定されるベース部材と、凹面反射鏡の前面開口を概略気密に塞ぐ前面ガラスよりなる光源ユニットにおいて、前記ベース部材と前記凹面反射鏡の首部の間には、当該反射鏡内部と空間的につながった冷却風用開口部を形成し、この開口部に発光管を形成する破片用の防護網部材を取り付けたことを特徴とする。このような構成により、高圧放電ランプを良好に冷却することができるとともに、万一破裂等の破損をした場合であっても、防護用網部材が良好に発光管の破片を確保することができる。
【0025】さらに、前記防護網部材は断面C字状の板状部材とすることで、防護網部材を簡単な構造で簡単な作業で装着、脱着させることが可能になり、また、この防護網部材をベース部材に密着させることができる。さらに、前記防護網部材は前記ベース部材からの脱着方向に伸びる舌状固定片を有することで、この固定片をベースに設けた穴、凹部に係止させることができ、挿入する作業は容易ではあるが脱着は困難となり、光源ユニットを使用している段階で不所望に網部材が移動することを防止できる。さらに、舌状固定片は前記ベース部材に設けられた接着剤充填用開口に固定されることで専用の凹部を特に設ける必要がなくなる。さらに、前記高圧水銀ランプは0.15mg/mm3以上の水銀が封入することで、高出力、高演色性の特性を得ることができるとともに、高い水銀蒸気圧にも関わらずランプの効果的な冷却と万一の破損の場合も良好に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光源ユニットを示す。
【図2】従来の光源ユニットを示す。
【図3】本発明の光源ユニットの断面図を示す。
【図4】本発明のベース部材を示す。
【図5】本発明のベース部材を示す。
【図6】本発明の防護網部材を示す。
【図7】本発明の防護網部材を示す。
【図8】本発明の防護網部材を示す。
【図9】本発明の防護網部材を示す。
【図10】本発明の防護網部材を示す。
【符号の説明】
10 放電ランプ
20 凹面反射鏡
30 ベース部材
50 前面ガラス
60 防護網部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】両端に封止部が形成された石英ガラスよりなる発光部に一対の電極を対向配置させた高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを覆う凹面反射鏡と、高圧水銀ランプの一端を保持するとともに凹面反射鏡の首部外面で固定されるベース部材と、凹面反射鏡の前面開口を概略気密に塞ぐ前面ガラスよりなる光源ユニットにおいて、前記ベース部材と前記凹面反射鏡の首部の間には、当該反射鏡内部と空間的につながった冷却風用開口部を形成し、この開口部に発光管を形成する破片用の防護網部材を取り付けたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】前記防護網部材は、断面C字状の板状部材よりなり前記ベース部材に密着できることを特徴とする請求項1の光源ユニット。
【請求項3】前記防護網部材は、前記ベース部材からの脱着方向に伸びる舌状固定片を有することを特徴とする請求項1の光源ユニット。
【請求項4】前記舌状固定片は、前記ベース部材に設けられた接着剤充填用開口に固定されることを特徴とする請求項3の光源ユニット。
【請求項5】前記高圧水銀ランプは、0.15mg/mm3以上の水銀が封入されたことを特徴とする請求項1の光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2001−307535(P2001−307535A)
【公開日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−125332(P2000−125332)
【出願日】平成12年4月26日(2000.4.26)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】