説明

光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクター

【課題】放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持し、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを提供すること。
【解決手段】光源装置1は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極610、710を有する放電灯500と、前記1対の電極610、710に電流を供給する駆動装置200と、放電灯500の電極間距離を検出する電極間距離検出部と、を有し、前記駆動装置200は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、かつ当該交流電流の振幅または周波数を経時的に変化させて前記1対の電極610、710に供給可能に構成され、前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電灯(放電ランプ)が使用されている。
このような放電灯は、例えば、高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法により駆動される(例えば、特許文献1参照)。この駆動方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる。
【0003】
しかしながら、放電灯が点灯している際は、1対の電極間にアーク放電が生じており、その電極が高温になっているので、電極が溶融し、電極間が広がってくる。例えば、プロジェクターの用途では、光の利用効率を向上させるために、電極間が狭い状態を維持し、発光の大きさを小さくすることが好ましく、点灯中に電極間が広がることは、光の利用効率を低下させることになり、好ましくない。また、電極間の変化は、その電極間におけるインピーダンスを変化させ、このため、点灯初期では効率良く放電灯を点灯することができていても、時間が経過すると、インピーダンス不整合を生じ、無効電力が増加し、効率が低下するという問題がある。
【0004】
一方、低周波数で、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として供給する駆動方法もある。この駆動方法によれば、放電灯が点灯している際、1対の電極の先端部に突起が形成され、これにより、点灯後、所定の期間は、電極間が狭い状態を維持することができる。
しかしながら、放電灯本体の黒化や失透等が生じ、放電灯の寿命が低下するという問題がある。また、点灯後、所定の期間を超えると、電極の先端部に形成された突起が小さくなり、電極間が広がるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持し、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、
前記放電灯の電極間距離を検出する電極間距離検出部と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、かつ当該交流電流の振幅または周波数を経時的に変化させて前記1対の電極に供給可能に構成され、
前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させることを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持し、放電灯を駆動することができる。
【0008】
本発明の光源装置では、前記電極間距離検出部は、前記放電灯への投入電力に対する反射電力を検出するものであることが好ましい。
これにより、駆動電流の周波数が比較的高い場合、例えば、1MHz以上の場合に、電極間距離を間接的に検出することができる。
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数の一方を経時的に変化させた電流を供給する第1の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも小さくするかまたは前記交流電流の振幅および周波数を一定にする第2の駆動条件と、のいずれかを選択して前記1対の電極に供給することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
【0009】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記放電灯の駆動開始時に前記第1の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記放電灯への投入電力に対する前記反射電力の比率または前記反射電力の値が所定の値よりも大きい場合に、前記第2の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
【0010】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記放電灯への投入電力に対する前記反射電力の比率または前記反射電力の値が前記所定の値より小さく設定された基準値になった場合に、前記第1の条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
本発明の光源装置では、前記電極間距離検出部は、前記放電灯の1対の電極間の電圧を検出するものであることが好ましい。
これにより、駆動電流の周波数が比較的低い場合、例えば、1MHz未満の場合に、電極間距離を間接的に検出することができる。
【0011】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数の一方を経時的に変化させた電流を供給する第1の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも小さくするかまたは前記交流電流の振幅および周波数を一定にする第2の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも大きくする第3の駆動条件と、のいずれかを選択して前記1対の電極に供給することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
【0012】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記放電灯の駆動開始時に前記第1の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記電極間の電圧が第1の値よりも小さい場合に、前記第2の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
【0013】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記電極間の電圧が前記第1の値より大きい第2の値よりも大きい場合に、前記第3の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記電極間の電圧が第1の値よりも小さい場合に、前記第2の駆動条件を選択し、前記電極間の電圧が前記第1の値より大きい第2の値よりも大きい場合に、前記第3の駆動条件を選択し、前記電極間の電圧が前記第1の値と前記第2の値の間の値の場合に、前記第1の駆動条件を選択することが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離を一定の距離に保持することができる。
【0014】
本発明の光源装置では、前記交流電流の周波数は、1kHz以上20kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましい。
これにより、音響共鳴効果によって放電が不安定になることを防止することができる。
本発明の光源装置では、前記電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記1対の電極の温度が変動し、前記1対の電極の先端部に突起が形成されることが好ましい。
これにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0015】
本発明の放電灯の駆動方法は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯の駆動方法であって、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、
前記放電灯の電極間距離を検出し、
前記電極間距離の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させて前記放電灯の駆動電流を生成し、
前記駆動電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持し、放電灯を駆動することができる。
【0016】
本発明のプロジェクターは、光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、を有し、
前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、
前記放電灯の電極間距離を検出する電極間距離検出部と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、かつ当該交流電流の振幅または周波数を経時的に変化させて前記1対の電極に供給可能に構成され、
前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させることを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持し、放電灯を駆動することができ、これによって、消費電力を低減でき、また、安定した良好な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光源装置の第1実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)である。
【図2】図1に示す光源装置の放電灯を示す断面図である。
【図3】図1に示す光源装置を示すブロック図である。
【図4】図1に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される交流電流および駆動電流を示す図である。
【図5】図1に示す光源装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の光源装置の第2実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の光源装置の第3実施形態を示すブロック図である。
【図8】図7に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される交流電流および駆動電流を示す図である。
【図9】本発明のプロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
【図10】図1に示す光源装置における電極間距離と定在波比との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の光源装置の第2実施形態における電極間距離と電極間電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光源装置の第1実施形態>
図1は、本発明の光源装置の第1実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)、図2は、図1に示す光源装置の放電灯を示す断面図、図3は、図1に示す光源装置を示すブロック図、図4は、図1に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される交流電流および駆動電流を示す図、図5は、図1に示す光源装置の制御動作を示すフローチャート、図10は、図1に示す光源装置における電極間距離と定在波比との関係を示すグラフである。なお、図2では、副反射鏡の図示は省略されている。また、図10のグラフは、厳密なものではなく、電極間距離に対する定在波比の増減の傾向を示している。
図1に示すように、光源装置1は、放電灯500を有する光源ユニット110と、放電灯500を駆動する放電灯駆動装置(駆動装置)200と、検出器(電極間距離検出部)35とを備えている。放電灯500は、放電灯駆動装置200から電力の供給を受けて放電し、光を放射する。
【0019】
光源ユニット110は、放電灯500と、凹状の反射面を有する主反射鏡112と、出射光をほぼ平行光にする平行化レンズ114とを備えている。主反射鏡112と放電灯500とは、無機接着剤116により接着されている。また、主反射鏡112は、放電灯500側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成では、回転楕円面をなしている。
なお、主反射鏡112の反射面の形状は、前記の形状には限定されず、その他、例えば、回転放物面等が挙げられる。また、主反射鏡112の反射面が回転放物面である場合は、放電灯500の発光部を回転放物面のいわゆる焦点に配置すれば、平行化レンズ114を省略することができる。
【0020】
放電灯500は、放電灯本体510と、凹状の反射面を有する副反射鏡520とを備えている。放電灯本体510と副反射鏡520とは、無機接着剤522により接着されている。また、副反射鏡520は、放電灯500側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成では、球面をなしている。
放電灯本体510の中央部には、後述の放電媒質が封入され、気密的に密閉された放電空間(空洞部)512を含む発光容器が形成されている。この放電灯本体510の少なくとも放電空間512に対応する部位は、光透過性を有している。放電灯本体510の構成材料としては、例えば、石英ガラス等のガラス、光透過性セラミックス等が挙げられる。
【0021】
この放電灯本体510には、1対の電極610、710と、1対の導電性を有する接続部材620、720と、1対の電極端子630、730とが設けられている。電極610と電極端子630とは、接続部材620により電気的に接続されている。同様に、電極710と電極端子730とは、接続部材720により電気的に接続されている。
各電極610、710は、放電空間512に収納されている。すなわち、各電極610、710は、その先端部が放電灯本体510の放電空間512において、互いに所定距離離間し、互いに対向するように配置されている。
電極610と電極710との間の最短距離である電極間距離は、1μm以上5mm以下であることが好ましく、500μm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
【0022】
図2に示すように、前記電極610は、芯棒612と、コイル部614と、本体部616とを有している。この電極610は、放電灯本体510内への封入前の段階において、芯棒612に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けてコイル部614を形成し、形成されたコイル部614を加熱・溶融することにより形成される。これにより、電極610の先端側には、熱容量が大きい本体部616が形成される。電極710も前記電極610と同様に、芯棒712と、コイル部714と、本体部716とを有しており、電極610と同様に形成される。
【0023】
放電灯500を1度も点灯させていない状態では、本体部616、716には、突起618、718は形成されていないが、後述する条件で放電灯500を1度でも点灯させると、本体部616、716の先端部に、それぞれ突起618、718が形成される。この突起618、718は、放電灯500の点灯中、維持され、また、消灯後も維持される。
なお、各電極610、710の構成材料としては、例えば、タングステン等の高融点金属材料等が挙げられる。
【0024】
また、放電空間512には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、例えば、放電開始用ガス、発光に寄与するガス等を含んでいる。また、放電媒体には、その他のガスが含まれていてもよい。
放電開始用ガスとしては、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げられる。また、発光に寄与するガスとしては、例えば、水銀、ハロゲン化金属の気化物等が挙げられる。また、その他のガスとしては、例えば、黒化を防止する機能を有するガス等が挙げられる。黒化を防止する機能を有するガスとしては、例えば、ハロゲン(例えば、臭素等)、ハロゲン化合物(例えば、臭化水素等)、またはこれらの気化物等が挙げられる。
また、点灯時の放電灯本体510内の気圧は、0.1atm以上300atm以下であることが好ましく、50atm以上300atm以下であることがより好ましい。
【0025】
放電灯500の電極端子630、730は、それぞれ放電灯駆動装置200の出力端子側に接続されている。そして、放電灯駆動装置200は、放電灯500に高周波数の交流電流(交流電力)を含む駆動電流(駆動電力)を供給する。すなわち、放電灯駆動装置200は、電極端子630、730を介して電極610、710に上記の駆動電流を供給することにより放電灯500に電力を供給する。電極610、710に上記の駆動電流が供給されると、放電空間512内の1対の電極610、710の先端部の間でアーク放電(アークAR)が生じる。アーク放電により発生した光(放電光)は、そのアークARの発生位置(放電位置)から全方向に向かって放射される。副反射鏡520は、一方の電極710の方向に放射される光を、主反射鏡112に向かって反射する。このように、電極710の方向に放射される光を主反射鏡112に向かって反射することにより、電極710の方向に放射される光を有効に利用することができる。なお、本実施形態において、放電灯500は副反射鏡520を備えているが、放電灯500は副反射鏡520を備えていない構成であっても良い。
【0026】
次に、放電灯駆動装置200および検出器35について説明する。
図3に示すように、放電灯駆動装置200は、高周波数の交流電流を発生する高周波電流発生器31と、振幅変調器(振幅変調部)32と、増幅率が可変の増幅器33と、制御部34とを備えており、振幅変調した交流電流を駆動電流として放電灯500の1対の電極610、710に供給する装置である。制御部34は、高周波電流発生器31、振幅変調器32および増幅器33等、放電灯駆動装置200全体の作動を制御する。また、放電灯駆動装置200の出力側(放電灯500と放電灯駆動装置200との間)に別途設けられた後述の検出器(電極間距離検出部)35の検出結果が、制御部34に入力される。なお、本実施形態では、検出器35は放電灯駆動装置200と別に設けられているが、放電灯駆動装置200に組み込まれる構成であっても良い。
【0027】
検出器35としては、本実施形態では、SWR(Standing Wave Ratio:定在波比)計を用いる。そして、この検出器35により、放電灯駆動装置200から放電灯500へ投入される投入電力と、放電灯500側から放電灯駆動装置200側へ反射される反射電力と、を検出し、投入電力に対する反射電力の比率(定在波比)を求める。そして後述するように、検出された定在波比を放電灯500の駆動制御に利用する。なお、定在波比に代えて、反射電力の値を放電灯500の駆動制御に利用するようにしてもよい。ここで、定在波比は、電極間距離に対応する値である。したがって、前記定在波比を求めることにより、電極間距離を間接的に求めたこととなる。
【0028】
図10に示すように、電極間距離が所定の基準値において反射電力は投入電力と同じになり、定在波比は1.0となる。電極間距離がこの基準値から増大すると、反射電力は増大し、定在波比は1.0よりも増大する。同様に、電極間距離が基準値から減少しても、反射電力は増大し、定在波比は1.0よりも増大する。
なお、SWR計での測定では、電極間距離が基準値よりも大きいのか、または小さいのか、すなわち、突起618、718が大きくなっているのか、または小さくなっているのかが不明である。しかし、本実施形態では、放電灯500の駆動条件の調整において、放電灯500の駆動条件の第1の条件(第1の駆動条件)として、後述の突起618、718が延びるような駆動条件を設定し、放電灯500の駆動条件の初期値(放電灯500の駆動開始時の駆動条件)をその第1の条件に設定し、電極間距離をその基準値以下の範囲で制御するので、定在波比が増大する変化は、電極間距離が基準値より小さくなる方向に変化したことを意味することとなる。
【0029】
また、本実施形態では、SWR計で反射電力を測定するので、駆動電流の周波数が、1MHz以上の場合に適用することが好ましい。
この放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図4(a)に示す交流電流を、図4(b)に示すように振幅変調器32で振幅変調する。すなわち、振幅変調器32により、高周波電流発生器31で発生した交流電流の振幅を経時的に変化させる。そして、その交流電流を増幅器33で増幅して放電灯駆動用の駆動電流を生成し、出力する。放電灯駆動装置200から出力された駆動電流は、放電灯500の1対の電極610、710に供給される。なお、図示の構成では、交流電流の振幅は、1波長毎に交互に大小となるように変化している。また、交流電流の1波長毎に、振幅が大きい方の区間を第1の区間41、振幅が小さい方の区間を第2の区間42とする。
【0030】
これにより、前述したように、1対の電極610、710の先端部の間でアーク放電が生じ、放電灯500が点灯する。
また、駆動電流に含まれる交流電流の振幅が経時的に変化しているので、放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、その変動により、電極610、710の先端部に、それぞれ突起618、718が形成され、その突起618、718を維持することができる。
【0031】
すなわち、まず、図4に示す駆動電流の第1の区間41では、電極610、710の温度が高くなることで、電極610、710の先端部の一部が、溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610、710の先端部に集まる。一方、第2の区間42では、電極610、710の温度が低くなることで、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610、710の先端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618、718の成長が起こる。そして、後述するような放電灯500の駆動制御を行うことにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、電極間が狭い状態を維持することができる。これにより、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0032】
なお、突起618、718は、光源装置1の出荷前に予め形成しておいてもよく、また、光源装置1の出荷の際は形成されておらず、その後、放電灯500を点灯した際に形成されるようになっていてもよい。
また、高周波数の駆動電流を用いるので、放電灯500の黒化を抑制でき、長寿命化を図ることができる。
【0033】
なお、図4(b)に示す交流電流の振幅の変化パターンは、一例であり、交流電流の振幅が大きい第1の区間41と交流電流の振幅が小さい第2の区間42が含まれていれば、これに限定されるものではない。
ここで、放電灯500の定格電力は、用途等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、10W以上5kW以下であることが好ましく、100W以上500W以下であることがより好ましい。
【0034】
また、交流電流の周波数は、1kHz以上10GHz以下であり、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましく、1kHz以上20kHz以下、または、3MHz以上3GHz以下であることがより好ましい。
電極610、710が陽極として動作するときは、それぞれ、陰極として動作するときに比べて電極温度が高くなるが、交流電流の周波数を前記下限値以上に設定することにより、その交流電流の1周期内における電極温度の変動を防止することができる。
【0035】
しかし、交流電流の周波数が前記下限値よりも小さいと、その交流電流の1周期毎に、電極610、710の温度が変動し、これにより突起の形成や維持ができなくなり、また、黒化が生じる場合がある。また、前記上限値よりも大きいものはコストが高くなる。
また、交流電流の周波数が20kHzよりも大きく、3MHzよりも小さいと、他の条件によっては、音響共鳴効果により放電が不安定となる。
【0036】
また、図4(b)に示すように、第1の区間41における交流電流の振幅をa、第2の区間42における交流電流の振幅をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、0以上90%以下であることが好ましく、0以上50%以下であることがより好ましく、0以上30%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
b/aが前記上限値よりも大きいと、他の条件によっては、突起618、718が形成されない。なお、b/aが小さい程、突起618、718が延び、b/aが0の場合が突起618、718が最も延びる。また、b/aが小さい程、交流電流の振幅の変化が大きいものとし、b/aが0の場合が交流電流の振幅の変化が最も大きい。
なお、b/aが0、すなわち、交流電流が間欠的に電極610、710に供給されるように構成されていてもよいが、交流電流を連続的に電極610、710に供給する場合は、b/aは、1%以上50%以下であることが好ましく、1%以上30%以下であることがより好ましい。
【0038】
さて、この光源装置1では、検出器35により、反射電力および投入電力を検出し、投入電力に対する反射電力の比率(定在波比)を求め、その検出された定在波比は、制御部34に送出される。制御部34は、検出器35の検出結果、すなわち、検出された定在波比に応じて、放電灯500の駆動条件を調整する。この場合、駆動電流に含まれる交流電流の振幅の変化パターン(振幅の大小の程度、等)を調整するかまたは交流電流の振幅を変化させない(一定にする)ようにする。なお、交流電流の周波数は、一定とする。
【0039】
制御部34は、検出器35が検出した定在波比が入力されると、その検出された定在波比に応じて、放電灯500の駆動条件として、上述のように交流電流の振幅を経時的に変化させた駆動電流にて駆動する第1の条件(第1の駆動条件)と、交流電流の振幅の変化を第1の条件よりも小さくするかまたは交流電流の振幅を変化させない(一定にする)第2の条件(第2の駆動条件)とのいずれかを選択する。第1の条件は、突起618、718が延びる条件(突起が大きくなっていく条件、すなわち電極間距離が小さくなる条件)であり、第2の条件は、突起618、718が延びない条件(突起小さくなっていく条件、すなわち電極間距離が大きくなる条件)である。
【0040】
ここで、第1の条件は、b/aが0%よりも大きく90%以下である。また、第2の条件は、b/aが90%よりも大きいかまたは交流電流の振幅を変化させない(一定にする)。
前記放電灯500の駆動条件の調整においては、まず、放電灯500の駆動条件の初期値(放電灯500の駆動開始時の駆動条件)を上述の第1の条件に設定する。そして、図10中の「第1の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が延びてゆき、定在波比が予め設定された許容範囲から外れる(所定の上限値よりも大きくなる)と、放電灯500の駆動条件を第2の条件に設定する。
図10中の「第2の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が小さくなってゆき、次に、定在波比が前記許容範囲内の(前記所定の上限値よりも小さい)予め設定された基準値になると、放電灯500の駆動条件を第1の条件に再度設定する。
【0041】
次に、図5に基づいて、光源装置1の放電灯駆動装置200の制御動作について説明する。
まず、放電灯500駆動条件の初期値を第1の条件(突起が延びる条件、すなわち電極間距離が小さくなる条件)に設定し、駆動電流を1対の電極610、710に供給し、放電灯500を点灯する(ステップS101)。従って、突起618、718は、大きくなってゆく。
【0042】
次いで、反射電力および投入電力を検出し、投入電力に対する反射電力の比率である定在波比を求める(ステップS102)。なお、定在波比は、検出器35において求めるが、これに限らず、例えば、制御部34において求めるようになっていてもよい。
次いで、検出された定在波比が許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS103)。ここで、定在波比の許容範囲は、検出された定在波比が前記許容範囲から若干外れても、電極間距離が許容範囲内となるように設定される。この定在波比の許容範囲の上限値としては、1.5以上1.9以下の範囲内の所定値、例えば、1.7に設定されることが好ましく、1.2以上1.25以下の範囲内の所定値、例えば、1.22に設定されることがより好ましい。なお、電極間距離が基準値から増大してもまた減少しても定在波比は1.0から増大するので、定在波比の許容範囲の下限値は1.0となる。
【0043】
定在波比が許容範囲内である場合には、ステップS102に戻り、再度、ステップS102以降を実行する。また、定在波比が許容範囲内ではない場合、すなわち、定在波比の許容範囲の上限値よりも大きい場合は、駆動条件を第2の条件(突起が小さくなる条件、すなわち電極間距離が大きくなる条件)に変更する(ステップS104)。これにより、突起618、718が小さくなってゆく。
【0044】
次いで、反射電力および投入電力を検出し、定在波比を求める(ステップS105)。
次いで、検出された定在波比が基準値か否かを判断する(ステップS106)。ここで、定在波比の基準値としては、例えば、1.0以上1.1以下の範囲内の所定値に設定されることが好ましく、1.0以上1.05以下の範囲内の所定値に設定されることがより好ましい。
【0045】
定在波比が基準値ではない場合、すなわち、定在波比が基準値より大きい場合には、駆動条件として第2の条件を継続し(ステップS107)、ステップS105に戻り、再度、ステップS105以降を実行する。また、定在波比が基準値である場合には、駆動条件を第1の条件に変更し(ステップS108)、ステップS102に戻り、再度、ステップS102以降を実行する。これにより、電極間距離は、許容範囲内に保持される。
以上説明したように、この光源装置1によれば、放電灯500の黒化を抑制し、長寿命化を図ることができる。また、電極610、710に突起618、718が形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、放電灯500の駆動条件の初期値を電極間距離が小さくなる駆動条件に設定し、定在波比から電極間距離が小さくなり過ぎた場合を検知し、電極間距離が大きくなる駆動条件に変更する。そして、定在波比から電極間距離が所定の距離まで広がったことを検知し、再度電極間距離が小さくなる駆動条件に戻している。一方で、後述する変形例のように、この制御とは逆の制御により電極間距離の伸縮を制御することも可能である。すなわち、まず、放電灯500の駆動条件の初期値を電極間距離が大きくなる駆動条件に設定し、定在波比から電極間距離が大きくなり過ぎた場合を検知して、電極間距離が小さくなる駆動条件に変更する。その後、定在波比から電極間距離が所定の距離まで縮まったことを検知し、再度電極間距離が大きくなる駆動条件に戻す。このような制御によっても、電極間距離を許容範囲内に保持することが可能である。
【0047】
<光源装置の第1実施形態の変形例>
以下、第1実施形態の変形例について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
この光源装置1では、放電灯500の駆動条件の調整においては、まず、放電灯500の駆動条件の初期値(放電灯500の駆動開始時の駆動条件)を上述の第2の条件(第2の駆動条件)に設定する。そして、電極間距離をその基準値以上の範囲で制御する。このため、定在波比が増大する変化は、電極間距離が基準値より大きくなる方向に変化したことを意味することとなる。
【0048】
そして、突起618、718が小さくなってゆき、定在波比が予め設定された許容範囲から外れる(所定の上限値よりも大きくなる)と、放電灯500の駆動条件を上述の第1の条件(第2の駆動条件)に設定する。
突起618、718が延びてゆき、次に、定在波比が前記許容範囲内の(前記所定の上限値よりも小さい)予め設定された基準値になると、放電灯500の駆動条件を第2の条件に再度設定する。
なお、この光源装置1における図5に対応するフローチャートの図示および説明は、省略するが、この光源装置1では、図5において、ステップS101の第1の条件を第2の条件とし、ステップS104の第2の条件を第1の条件とし、ステップS107の第2の条件を第1の条件とし、ステップS108の第1の条件を第2の条件とすればよい。
【0049】
<光源装置の第2実施形態>
図6は、本発明の光源装置の第2実施形態における制御動作を示すフローチャート、図11は、本発明の光源装置の第2実施形態における電極間距離と電極間電圧との関係を示すグラフである。なお、図11のグラフは、厳密なものではなく、電極間距離に対する電極間電圧の増減の傾向を示している。
【0050】
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の光源装置1では、検出器35として、電圧計を用いる。そして、その検出器35により、放電灯500の1対の電極間電圧を検出する。この電極間電圧は、電極間距離に対応する値である。したがって、前記電極間電圧を求めることにより、電極間距離を間接的に求めたこととなる。なお、図11に示すように、電極間電圧が大きいほど、電極間距離が長い。
また、本実施形態では、電圧計で電極間電圧を測定するので、駆動電流の周波数が、1MHz未満の場合に適用することが好ましい。
【0051】
この光源装置1では、制御部34は、検出器35が検出した電圧値が入力されると、その検出された電圧値に応じて、放電灯500の駆動条件として、交流電流の振幅を経時的に変化させた駆動電流にて駆動する第1の条件(第1の駆動条件)と、交流電流の振幅の変化を第1の条件よりも小さくするかまたは交流電流の振幅を変化させない(一定にする)第2の条件(第2の駆動条件)と、交流電流の振幅の変化を第1の条件よりも大きくする第3の条件(第3の駆動条件)とのいずれかを選択する。第1の条件は、突起618、718がほどよく延び、好適な大きさを維持する条件であり、第2の条件は、突起618、718が延びない条件(突起が小さくなっていく条件、すなわち電極間距離が大きくなる条件)であり、第3の条件は、突起618、718が第1の条件よりもさらに延びる条件(突起が大きくなっていく条件、すなわち電極間距離が小さくなる条件)である。なお、突起618、718がほどよく延びる条件に設定しても、結果として、突起618、718が大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりする場合もある。
【0052】
ここで、第1の条件は、b/aが0%よりも大きく90%以下である。また、第2の条件は、b/aが90%よりも大きいかまたは交流電流の振幅を変化させない(一定にする)。また、第3の条件は、b/aが第1の条件よりも小さい。
前記放電灯500の駆動条件の調整においては、まず、放電灯500の駆動条件の初期値(放電灯500の駆動開始時の駆動条件)を第1の条件に設定する。そして、図11中の「第1の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が延びてゆき、電極間電圧が予め設定された許容範囲の下限値(第1の値)よりも小さくなると、放電灯500の駆動条件を第2の条件に設定する。また、図11中の「第1の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が小さくなってゆき、電極間電圧が予め設定された許容範囲の上限値(第2の値)よりも大きくなると、放電灯500の駆動条件を第3の条件に設定する。
【0053】
図11中の「第2の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が小さくなってゆき、または、「第3の条件」と記載した矢印で示すように、突起618、718が延びてゆき、次に、電極間電圧が前記許容範囲内(前記第1の値と前記第2の値の間)の予め設定された基準値になると、放電灯500の駆動条件を第1の条件に設定する。
次に、図6に基づいて、光源装置1の放電灯駆動装置200の制御動作について説明する。
【0054】
なお、ここでは、代表的に、放電灯500の駆動条件の初期値を第1の条件に設定する場合について説明する。
まず、放電灯500駆動条件の初期値を第1の条件に設定し、駆動電流を1対の電極610、710に供給し、放電灯500を点灯する(ステップS201)。なお、突起618、718は、ほどよく延び、好適な大きさを維持するように設定しているが、大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりする場合がある。
【0055】
次いで、電極間電圧を検出し、電極間電圧の変動率を求める(ステップS202)。この電極間電圧の変動率は、検出された電極間電圧をV、電極間電圧の基準値(例えば、制御目標となる電極間距離に対応する電圧値)をVとしたとき、下記(1)式により求める。なお、電極間電圧の変動率は、制御部34において求める。
(V−V)/V×100 ・・・(1)
【0056】
次いで、検出された電極間電圧の変動率が許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS203)。ここで、電極間電圧の変動率の許容範囲は、検出された電極間電圧の変動率が前記許容範囲から若干外れても、電極間距離が許容範囲内となるように設定される。この電極間電圧の変動率の許容範囲の上限値としては、5%以上15%以下の範囲内の所定値(例えば、10%)に設定されることが好ましく、3%以上12%以下の範囲内の所定値(例えば、5%)に設定されることがより好ましく、1%に設定されることがさらに好ましい。また、電極間電圧の変動率の許容範囲の下限値としては、−15%以上−5%以下の範囲内の所定値(例えば、−10%)に設定されることが好ましく、−12%以上−3%以下の範囲内の所定値(例えば、−5%)に設定されることがより好ましく、−1%に設定されることがさらに好ましい。
【0057】
電極間電圧の変動率が許容範囲内である場合には、ステップS202に戻り、再度、ステップS202以降を実行する。また、電極間電圧の変動率が許容範囲内ではない場合には、電極間電圧の変動率が正であるか否かを判断する(ステップS204)。
電極間電圧の変動率が負である場合、すなわち、電極間電圧の変動率の許容範囲の下限値よりも小さい場合は、駆動条件を第2の条件に変更する(ステップS205)。これにより、突起618、718が小さくなってゆく。
また、電極間電圧の変動率が正である場合、すなわち、電極間電圧の変動率の許容範囲の上限値よりも大きい場合は、駆動条件を第3の条件に変更する(ステップS206)。これにより、突起618、718が延びてゆく。
【0058】
次いで、電極間電圧を検出し、電極間電圧の変動率を求める(ステップS207)。
次いで、検出された電極間電圧の変動率が基準値か否かを判断する(ステップS208)。ここで、本実施形態では、制御目標となる電極間距離に対応する電圧値がVであるので、電極間電圧の変動率の基準値は、0%である。但し、電極間電圧の変動率の基準値は、0%に限定されるものではなく、例えば、±1%の範囲内の所定値に設定されることが好ましく、±0.5%の範囲内の所定値に設定されることがより好ましい。
【0059】
電極間電圧の変動率が基準値ではない場合には、駆動条件を変更することなく、ステップS207に戻り、再度、ステップS207以降を実行する。また、電極間電圧の変動率が基準値である場合には、駆動条件を第1の条件に変更し(ステップS209)、ステップS202に戻り、再度、ステップS202以降を実行する。これにより、電極間距離は、許容範囲内に保持される。
この光源装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態では、検出した電極間電圧からその電極間電圧の変動率を求め、電極間電圧の変動率を用いて各判断を行っているが、これに限らず、検出した電極間電圧を用いて各判断を行うように構成してもよい。
【0060】
<光源装置の第3実施形態>
図7は、本発明の光源装置の第3実施形態を示すブロック図、図8は、図7に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される交流電流および駆動電流を示す図である。
以下、第3実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0061】
図7に示すように、第3実施形態の光源装置1の放電灯駆動装置200は、高周波数の交流電流を発生する高周波電流発生器31と、周波数変調器(周波数変調部)36と、増幅率が可変の増幅器33と、制御部34とを備えている。
放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図8(a)に示す交流電流を、図8(b)に示すように周波数変調器36で周波数変調する。すなわち、周波数変調器36により、高周波電流発生器31で発生した交流電流の周波数を経時的に変化させる。そして、その交流電流を増幅器33で増幅して放電灯駆動用の駆動電流を生成し、出力する。放電灯駆動装置200から出力された駆動電流は、放電灯500の1対の電極610、710に供給される。なお、図示の構成では、交流電流の周波数は、1波長毎に交互に大小となるように変化している。また、交流電流の1波長毎に、周波数が小さい方の区間を第1の区間41、周波数が大きい方の区間を第2の区間42とする。
【0062】
これにより、前述したように、1対の電極610、710の先端部の間でアーク放電が生じ、放電灯500が点灯する。
また、駆動電流に含まれる交流電流の周波数が経時的に変化しているので、放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、その変動により、電極610、710の先端部に、それぞれ突起618、718が形成され、その突起618、718を維持することができる。
【0063】
すなわち、まず、図8に示す駆動電流の第1の区間41では、電極610、710の温度が高くなることで、電極610、710の先端部の一部が、溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610、710の先端部に集まる。一方、第2の区間42では、電極610、710の温度が低くなることで、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610、710の先端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618、718の成長が起こる。そして、後述するような放電灯500の駆動制御を行うことにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、電極間が狭い状態を維持することができる。これにより、放電灯500を効率良く駆動することができる。
なお、図8(b)に示す交流電流の周波数の変化パターンは、一例であり、交流電流の周波数が小さい第1の区間41と交流電流の周波数が大きい第2の区間42が含まれていれば、これに限定されるものではない。
【0064】
また、図8に示すように、第1の区間41と第2の区間42の合計の期間をA、第1の区間41の期間をBとしたとき、その期間Aと期間Bの比B/Aは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、10%以上90%以下であることが好ましく、25%以上75%以下であることがより好ましく、45%以上55%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
B/Aが前記下限値よりも小さい場合や、前記上限値よりも大きいは、他の条件によっては、突起618、718が形成されない。なお、B/Aが50%に近い程、突起618、718が延び、B/Aが50%の場合が、突起618、718が最も延びる。また、B/Aが50%に近い程、交流電流の周波数の変化が大きいものとし、50%が50%の場合が交流電流の周波数の変化が最も大きい。
【0066】
この光源装置1では、検出器35により、反射電力および投入電力を検出し、投入電力に対する反射電力の比率(定在波比)を求め、その検出された定在波比は、制御部34に送出される。制御部34は、検出器35の検出結果、すなわち、検出された定在波比に応じて、放電灯500の駆動条件を調整する。この場合、駆動電流に含まれる交流電流の周波数の変化パターン(周波数の大小の程度、等)を調整するかまたは交流電流の周波数を変化させない(一定にする)ようにする。なお、駆動電流の振幅は、一定とする。
【0067】
制御部34は、検出器35が検出した定在波比が入力されると、その検出された定在波比に応じて、放電灯500の駆動条件として、交流電流の周波数を経時的に変化させた駆動電流にて駆動する第1の条件と、交流電流の周波数の変化を第1の条件よりも小さくするかまたは交流電流の周波数を変化させない(一定にする)第2の条件とのいずれかを選択する。第1の条件は、突起618、718が延びる条件(突起が大きくなっていく条件、すなわち電極間距離が小さくなる条件)であり、第2の条件は、突起618、718が延びない条件(突起が小さくなっていく条件、すなわち電極間距離が大きくなる条件)である。
ここで、第1の条件は、B/Aが10%以上90%以下である。また、第2の条件は、B/Aが10%よりも小さいかまたはB/Aが90%よりも大きいかまたは交流電流の周波数を変化させない(一定にする)。
【0068】
前記放電灯500の駆動条件の調整においては、まず、放電灯500の駆動条件の初期値を上述の第1の条件に設定する。そして、突起618、718が延びてゆき、定在波比が予め設定された許容範囲から外れる(所定の上限値よりも大きくなる)と、放電灯500の駆動条件を第2の条件に設定する。そして、定在波比が前記許容範囲内の(前記所定の上限値よりも小さい)予め設定された基準値になると、放電灯500の駆動条件を第1の条件に再度設定する。
この光源装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
なお、この第3実施形態は、前述した第2実施形態にも適用することができる。第3実施形態を第2実施形態に適用した場合、制御部34は、検出器35が検出した電圧値が入力されると、その検出された電圧値に応じて、放電灯500の駆動条件として、交流電流の周波数を経時的に変化させた駆動電流にて駆動する第1の条件と、交流電流の周波数の変化を第1の条件よりも小さくするかまたは交流電流の周波数を変化させない(一定にする)第2の条件と、交流電流の周波数の変化を第1の条件よりも大きくする第3の条件とのいずれかを選択する。
【0070】
第1の条件は、B/Aが10%以上90%以下である。また、第2の条件は、B/Aが10%よりも小さいかまたはB/Aが90%よりも大きいかまたは交流電流の周波数を変化させない。また、第3の条件は、B/Aが第1の条件よりも50%に近い。
また、この第3実施形態は、前述した第1実施形態の変形例にも適用することができる。
【0071】
以上、本発明の光源装置および放電灯の駆動方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
なお、前記実施形態では、電極間距離検出部として、電極間距離を間接的に検出するものを用いたが、本発明では、これに限定されず、電極間距離を直接検出するものを用いてもよい。電極間距離を直接検出する電極間距離検出部としては、例えば、レーザー光を用いて電極間距離を測定する装置等、電極間距離を光学的に検出するもの等が挙げられる。
【0072】
<プロジェクター>
図9は、本発明のプロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
図9に示すプロジェクター300は、前述した光源装置1と、インテグレータレンズ302および303を有する照明光学系と、色分離光学系(導光光学系)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ84と、緑色に対応した(緑色用の)液晶ライトバルブ85と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ86と、赤色光のみを反射するダイクロイックミラー面811および青色光のみを反射するダイクロイックミラー面812が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)81と、投射レンズ(投射光学系)82とを備えている。
色分離光学系は、ミラー304、306、309、青色光および緑色光を反射する(赤色光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイックミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー308、集光レンズ310、311、312、313および314を有している。
【0073】
液晶ライトバルブ85は、液晶パネル16と、液晶パネル16の入射面側に接合された第1の偏光板(図示せず)と、液晶パネル16の出射面側に接合された第2の偏光板(図示せず)とを有している。液晶ライトバルブ84および86も、液晶ライトバルブ85と同様の構成をなしている。これら液晶ライトバルブ84、85および86の各液晶パネル16は、それぞれ、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、このプロジェクター300では、液晶ライトバルブ84、85、86および駆動回路により、光源装置1から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置の主要部が構成され、投射レンズ82により、その変調装置により変調された光を投射する投射装置の主要部が構成される。
【0074】
次に、プロジェクター300の作用を説明する。
まず、光源装置1から出射した白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302および303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302および303により均一化される。
インテグレータレンズ302および303を透過した白色光は、ミラー304で図9中左側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)および緑色光(G)は、それぞれダイクロイックミラー305で図9中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305を透過する。
【0075】
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図9中下側に反射し、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ84に入射する。
ダイクロイックミラー305で反射した青色光および緑色光のうちの緑色光は、ダイクロイックミラー307で図9中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透過する。
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、緑色用の液晶ライトバルブ85に入射する。
【0076】
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー308で図9中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図9中上側に反射する。前記青色光は、集光レンズ312、313および314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ86に入射する。
このように、光源装置1から出射した白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色および青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブ84、85および86に導かれ、入射する。
【0077】
この際、液晶ライトバルブ84の液晶パネル16の各画素は、赤色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御(オン/オフ)され、また、液晶ライトバルブ85の液晶パネル16の各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御され、また、液晶ライトバルブ86の液晶パネル16の各画素は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御される。
【0078】
これにより、赤色光、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ84、85および86で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像および青色用の画像がそれぞれ形成される。
前記液晶ライトバルブ84により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ84からの赤色光は、入射面813からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面811で図9中左側に反射し、ダイクロイックミラー面812を透過して、出射面816から出射する。
【0079】
また、前記液晶ライトバルブ85により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ85からの緑色光は、入射面814からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面811および812をそれぞれ透過して、出射面816から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ86により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ86からの青色光は、入射面815からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面812で図9中左側に反射し、ダイクロイックミラー面811を透過して、出射面816から出射する。
【0080】
このように、前記液晶ライトバルブ84、85および86からの各色の光、すなわち液晶ライトバルブ84、85および86により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム81により合成され、これによりカラー画像が形成される。この画像は、投射レンズ82により、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
以上説明したように、このプロジェクター300によれば、前述した光源装置1を有しているので、消費電力を低減でき、また、安定した良好な画像を表示することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…光源装置 31…高周波電流発生器 32…振幅変調器 33…増幅器 34…制御部 35…検出器 36…周波数変調器 41…第1の区間 42…第2の区間 110…光源ユニット 112…主反射鏡 114…平行化レンズ 116…無機接着剤 200…放電灯駆動装置 500…放電灯 510…放電灯本体 512…放電空間 520…副反射鏡 522…無機接着剤 610、710…電極 612、712…芯棒 614、714…コイル部 616、716…本体部 618、718…突起 620、720…接続部材 630、730…電極端子 16…液晶パネル 81…ダイクロイックプリズム 811、812…ダイクロイックミラー面 813〜815…入射面 816…出射面 82…投射レンズ 84〜86…液晶ライトバルブ 300…プロジェクター 302、303…インテグレータレンズ 304、306、309…ミラー 305、307、308…ダイクロイックミラー 310〜314…集光レンズ 320…スクリーン S101〜S108…ステップ S201〜S209…ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、
前記放電灯の電極間距離を検出する電極間距離検出部と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、かつ当該交流電流の振幅または周波数を経時的に変化させて前記1対の電極に供給可能に構成され、
前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記電極間距離検出部は、前記放電灯への投入電力に対する反射電力を検出するものである請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数の一方を経時的に変化させた電流を供給する第1の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも小さくするかまたは前記交流電流の振幅および周波数を一定にする第2の駆動条件と、のいずれかを選択して前記1対の電極に供給する請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記放電灯の駆動開始時に前記第1の駆動条件を選択する請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記放電灯への投入電力に対する前記反射電力の比率または前記反射電力の値が所定の値よりも大きい場合に、前記第2の駆動条件を選択する請求項3または4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記放電灯への投入電力に対する前記反射電力の比率または前記反射電力の値が前記所定の値より小さく設定された基準値になった場合に、前記第1の条件を選択する請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記電極間距離検出部は、前記放電灯の1対の電極間の電圧を検出するものである請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数の一方を経時的に変化させた電流を供給する第1の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも小さくするかまたは前記交流電流の振幅および周波数を一定にする第2の駆動条件と、前記交流電流の振幅または周波数の変化を前記第1の駆動条件よりも大きくする第3の駆動条件と、のいずれかを選択して前記1対の電極に供給する請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記駆動装置は、前記放電灯の駆動開始時に前記第1の駆動条件を選択する請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記駆動装置は、前記電極間の電圧が第1の値よりも小さい場合に、前記第2の駆動条件を選択する請求項8または9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記電極間の電圧が前記第1の値より大きい第2の値よりも大きい場合に、前記第3の駆動条件を選択する請求項8ないし10のいずれかに記載の光源装置。
【請求項12】
前記駆動装置は、前記電極間の電圧が第1の値よりも小さい場合に、前記第2の駆動条件を選択し、前記電極間の電圧が前記第1の値より大きい第2の値よりも大きい場合に、前記第3の駆動条件を選択し、前記電極間の電圧が前記第1の値と前記第2の値の間の値の場合に、前記第1の駆動条件を選択する請求項8または9に記載の光源装置。
【請求項13】
前記交流電流の周波数は、1kHz以上20kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の光源装置。
【請求項14】
前記電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記1対の電極の温度が変動し、前記1対の電極の先端部に突起が形成される請求項1ないし13のいずれかに記載の光源装置。
【請求項15】
放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯の駆動方法であって、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、
前記放電灯の電極間距離を検出し、
前記電極間距離の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させて前記放電灯の駆動電流を生成し、
前記駆動電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする放電灯の駆動方法。
【請求項16】
光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、を有し、
前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、
前記放電灯の電極間距離を検出する電極間距離検出部と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を生成し、かつ当該交流電流の振幅または周波数を経時的に変化させて前記1対の電極に供給可能に構成され、
前記電極間距離検出部の検出結果に応じて、前記交流電流の振幅と周波数のうちいずれか一方を変化させることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30299(P2013−30299A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164023(P2011−164023)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】