説明

光源装置、放電灯の駆動方法及びプロジェクター

【課題】放電灯の黒化を抑制すると共に、電極間距離が広がることを抑制して、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法及びプロジェクターを提供すること。
【解決手段】光源装置1は、放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電極としての電極610及び第2の電極としての電極710を有する放電灯500と、電極610及び電極710に駆動電圧を供給する放電灯駆動装置200と、を備え、電極610及び電極710を介して放電媒体に駆動電圧を印加することにより放電媒体は発光し、放電灯駆動装置200は、電極610の電極710に対する相対的な電位を複数の周波数で変化させ、複数の周波数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、第1の周波数は1kHzよりも大であり、第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、放電灯の駆動方法及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電灯(放
電ランプ)が使用されている。このような放電灯の駆動方法としては、例えば、高周波数
の交流電流を駆動電流として放電灯本体内のアンテナに供給する方法が挙げられる(特許
文献1参照)。この放電灯の駆動方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒
化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の放電灯の駆動方法を用いて、例えば、放電媒体が封入
された放電灯本体内に対向配置された1対の電極に高周波数の交流電流を供給して当該放
電灯を点灯させた場合には、1対の電極間にアーク放電が生じることにより、その電極が
高温になるので、電極の一部が溶融し、電極間が広がってくる。
例えば、プロジェクターの用途では、光の利用効率を向上させるために、電極間が狭い
状態を維持し、発光の大きさを小さくすることが好ましい。点灯中に電極間が広がること
は、光の利用効率を低下させることになり、好ましくない。また、電極間の変化は、その
電極間におけるインピーダンスを変化させる。このため、点灯初期では効率良く放電灯を
点灯することができていても、時間が経過すると、インピーダンス不整合を生じる。その
結果、無効電力が増加し、効率が低下するという問題がある。
【0004】
一方、低周波数で、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として1
対の電極に供給する駆動方法もある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の放電灯の
駆動方法によれば、1対の電極の先端部に形成された突起が放電により一時的に溶融して
も、放電中に再び突起が形成されるので、電極間が狭い状態を維持することができる。
しかしながら、上記特許文献2の放電灯の駆動方法では、放電灯本体の黒化や失透等が
生じ易く、放電灯の寿命が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【特許文献2】特開2010−114064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、放電灯の黒化を抑制すると共に、電極間距離が広がることを抑制して
、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法及びプロジェクターを提供
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光源装置は、放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電極
及び第2の電極を有する放電灯と、前記第1の電極及び前記第2の電極に駆動電圧を供給
する駆動装置と、を備え、前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記放電媒体に前
記駆動電圧を印加することにより前記放電媒体は発光し、前記駆動装置は、前記第1の電
極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の周波数で変化させ、前記複数の周波数
は第1の周波数及び第2の周波数を含み、前記第1の周波数は1kHzよりも大であり、
前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であること、を特徴とする。
【0008】
この発明では、駆動装置が第1の電極の第2の電極に対する相対的な電位を1kHzよ
りも大きい第1の周波数で変化させる期間では、1kHz又は1kHzより小さい第2の
周波数で変化させる期間に比べて、第1の電極または第2の電極の極性が陽極として動作
して電極温度が上昇する期間が短くなる。したがって、電極温度の上昇により電極の一部
が溶融して気化し放電灯本体あるいは放電媒体と反応することに起因する放電灯の黒化を
抑制することができる。また、駆動装置が第1の電極の第2の電極に対する相対的な電位
を1kHz又は1kHzより小さい第2の周波数で変化させる期間で放電灯が黒化しても
、その黒化を回復させることができる。
一方、駆動装置が第1の電極の第2の電極に対する相対的な電位を1kHz又は1kH
zより小さい第2の周波数で変化させる期間では、第1の周波数で変化させる期間に比べ
て第1の電極または第2の電極の極性が陽極として動作して電極温度が上昇する期間が長
くなる。電極温度が上昇して電極の一部が溶融すると、溶融した電極材が先端部に集まる
。第1の電極または第2の電極が陰極として動作すると、電極温度が低下して電極の先端
部に集まった溶融した電極材が固化して電極の先端部に突起が形成され、その突起が大き
くなる。つまり一旦広がった電極間距離を狭くすることができる。
このように第1の電極の第2の電極に対する相対的な電位を複数の周波数で変化させる
ことにより、放電灯の黒化を抑制することや、電極間距離が広がることを抑制することが
可能となる。ゆえに、放電灯の寿命を確保しつつ安定した発光状態が得られる光源装置を
提供することができる。
【0009】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電
位を前記第1の周波数で相対的に変化させる第1の期間と、前記第1の電極の前記第2の
電極に対する電位を前記第2の周波数で相対的に変化させる第2の期間とを交互に繰り返
して前記放電媒体を発光させること、を特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制しつつ、電極間距離が広がることを抑制して、より安
定した発光状態を実現することができる。
【0010】
本発明の光源装置では、前記第1の期間の長さは、前記第2の期間の長さよりも長いこ
とが好ましい。
これにより、より確実に、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離が広がることを抑制する
ことができる。
【0011】
本発明の光源装置では、前記第1の期間をAとし、前記第2の期間をBとするとき、A
/Bが2以上に設定されていることが好ましい。
これにより、より確実に、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離が広がることを抑制する
ことができる。
【0012】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記第1の期間において、前記第1の電極の
前記第2の電極に対する電位を相対的に変化させたときの振幅を変化させることを特徴と
する。
これにより、放電灯の駆動によって電極間距離が変動することに起因する光量の変動を
抑制することができる。
【0013】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記第1の期間において、前記第1の電極の
前記第2の電極に対する電位を相対的に変化させたときの前記振幅を経時的に減少させる
ことが好ましい。
第1の電極の第2の電極に対する電位を第1の周波数で且つ一定の振幅で変化させると
、それぞれの電極温度が上昇し、電極の一部が溶融して電極間距離が広がると電極間電位
が大きくなり光量が増大するおそれがある。
本発明によれば、第1の電極の第2の電極に対する電位を第1の周波数で変化させると
共に経時的に振幅を減少させるので、それぞれの電極の溶融が抑えられ、電極間電位の増
大を抑えて光量を安定化させることができる。つまり、電極間電位の変動に起因する光量
の変動を抑制することができる。
【0014】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記第2の期間において、前記第1の電極の
前記第2の電極に対する電位を相対的に変化させたときの振幅を変化させることを特徴と
する。
これにより、放電灯の駆動によって電極間距離が変動することに起因する光量の変動を
抑制することができる。
【0015】
本発明の光源装置では、前記駆動装置は、前記第2の期間において、前記第1の電極の
前記第2の電極に対する電位を相対的に変化させたときの前記振幅を経時的に増大させる
ことが好ましい。
第1の電極の第2の電極に対する電位を第2の周波数で且つ一定の振幅で変化させると
、それぞれの電極温度が下がって突起の成長が進み易い、つまりは電極間距離が狭まって
電極間電位が小さくなり光量が減少するおそれがある。
本発明によれば、第1の電極の第2の電極に対する電位を第2の周波数で変化させると
共に経時的に振幅を増大させるので、それぞれの電極の先端部の突起の成長が進み難くな
り、電極間電位の低下を抑えて光量を安定化させることができる。つまり、電極間電位の
変動に起因する光量の変動を抑制することができる。
【0016】
本発明の光源装置では、前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に
対する電位を相対的に変化させたときの波形は、矩形状をなしていることが好ましい。
これにより、より確実に、放電灯の黒化を抑制することができる。
【0017】
本発明の光源装置では、前記第2の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に
対する電位を相対的に変化させたときの波形は、矩形状をなしていることが好ましい。
これにより、より確実に、電極間距離が広がることを抑制することができる。
【0018】
本発明の光源装置では、前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に
対する電位を相対的に変化させたときの振幅の平均値と、前記第2の期間において、前記
第1の電極の前記第2の電極に対する電位を相対的に変化させたときの振幅の平均値とは
、同じであることが好ましい。
これにより、電極間距離が拡大傾向にあるときの光量と、電極間距離が縮小傾向にある
ときの光量とを同じにすることができる。つまり、電極間距離の変動に起因する光量の変
動を確実に抑制することができる。
【0019】
本発明の光源装置では、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記駆動
電圧の上限値及び下限値が設定されており、前記上限値と前記下限値との差は、15V以
下であることが好ましい。
これにより、光量の変動を抑制することができる。
【0020】
本発明の放電灯の駆動方法は、放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第
1の電極及び第2の電極を有する放電灯の駆動方法であって、前記第1の電極及び前記第
2の電極を介して前記放電媒体に駆動電圧を印加することにより前記放電媒体は発光し、
前記駆動電圧における前記第1の電極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の周
波数で変化させ、前記複数の周波数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、前記第1の
周波数は1kHzよりも大であり、前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であ
ること、を特徴とする。
この方法によれば、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離が広がることを抑制して、放電
灯を駆動することができる。つまり、放電灯の寿命を確保しつつ、安定した光量の発光が
得られる放電灯の駆動方法を提供することができる。
【0021】
本発明の放電灯の駆動方法では、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記
第1の周波数で相対的に変化させる第1の期間と、前記第1の電極の前記第2の電極に対
する電位を前記第2の周波数で相対的に変化させる第2の期間とを交互に繰り返して前記
放電媒体を発光させることが好ましい。
この方法によれば、より確実に放電灯の黒化を抑制しつつ、電極間距離が広がることを
抑制して、放電灯を駆動することができる。
【0022】
本発明の放電灯の駆動方法では、前記第1の期間の長さは、前記第2の期間の長さより
も長いことが好ましい。
この方法によれば、より確実に放電灯の黒化を抑制し、電極間距離が広がることを抑制
して、放電灯を駆動することができる。
【0023】
本発明のプロジェクターは、光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に
基づいて変調する変調装置と、前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、
を有し、前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電
極及び第2の電極を有する放電灯と、前記第1の電極及び前記第2の電極に駆動電圧を供
給する駆動装置と、を備え、前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記放電媒体に
前記駆動電圧を印加することにより前記放電媒体は発光し、前記駆動装置は、前記第1の
電極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の周波数で変化させ、前記複数の周波
数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、前記第1の周波数は1kHzよりも大であり
、前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であること、を特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制すると共に、電極間距離が広がることを抑制して、放
電灯を駆動することができ、これによって、消費電力を低減でき、また、安定した良好な
画像を表示することが可能なプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の光源装置の実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)である。
【図2】図1に示す光源装置の放電灯を示す断面図である。
【図3】図1に示す光源装置を示すブロック図である。
【図4】図1に示す光源装置の駆動電流を示す図である。
【図5】図1に示す光源装置の電極間電圧の絶対値を示す図である。
【図6】図1に示す光源装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明のプロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の光源装置、放電灯の駆動方法及びプロジェクターを添付図面に示す好適
な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光源装置>
図1は本発明の光源装置の実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)、図2は図
1に示す光源装置の放電灯を示す断面図、図3は図1に示す光源装置を示すブロック図、
図4は図1に示す光源装置の駆動電流を示す図、図5は図1に示す光源装置の電極間電圧
の絶対値を示す図、図6は図1に示す光源装置の制御動作を示すフローチャートである。
なお、図2では、副反射鏡の図示は省略されている。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の光源装置1は、放電灯500を有する光源ユニット1
10と、放電灯500を駆動する放電灯駆動装置(駆動装置)200と、検出器(電極間
距離検出部)35(図3参照)とを備えている。放電灯500は、放電灯駆動装置200
から電力の供給を受けて放電し、光を放射する。
光源ユニット110は、放電灯500と、凹状の反射面を有する主反射鏡112と、出
射光をほぼ平行光にする平行化レンズ114とを備えている。主反射鏡112と放電灯5
00とは、無機接着剤116により接着されている。また、主反射鏡112は、放電灯5
00側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成では、回転楕円面
をなしている。
なお、主反射鏡112の反射面の形状は、前記の形状には限定されず、その他、例えば
、回転放物面等が挙げられる。また、主反射鏡112の反射面が回転放物面である場合は
、放電灯500の発光部を回転放物面のいわゆる焦点に配置すれば、平行化レンズ114
を省略することができる。
【0027】
放電灯500は、放電灯本体510と、凹状の反射面を有する副反射鏡520とを備え
ている。放電灯本体510と副反射鏡520とは、副反射鏡520が主反射鏡112に向
かい合って配置されると共に、上記凹状の反射面が放電灯本体510との間に所定の間隔
をおいて配置されるように無機接着剤522により接着されている。また、副反射鏡52
0は、放電灯500側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成で
は、球面をなしている。
【0028】
放電灯本体510は、中央部に後述の放電媒体が封入され、気密的に密閉された放電空
間(空洞部)512を有しており、放電空間(空洞部)512を含む発光容器が形成され
ている。この放電灯本体510の少なくとも放電空間512に対応する部位は、光透過性
を有している。放電灯本体510の構成材料としては、例えば、石英ガラス等のガラス、
光透過性セラミックス等が挙げられる。
【0029】
この放電灯本体510には、1対の電極610,710と、1対の導電性を有する接続
部材620,720と、1対の電極端子630,730とが設けられている。電極(第1
の電極)610と電極端子630とは、接続部材620により電気的に接続されている。
同様に、電極(第2の電極)710と電極端子730とは、接続部材720により電気的
に接続されている。
各電極610,710は、放電空間512に収納されている。すなわち、各電極610
,710は、その先端部が放電灯本体510の放電空間512において、互いに所定距離
離間し、互いに対向するように配置されている。
電極610と電極710との間の最短距離である電極間距離は、後述するプロジェクタ
ーの光源としての利用を考慮すると、点光源に近い発光が得られることが望ましく、1μ
m以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であることがよ
り好ましい。
【0030】
図2に示すように、前記電極610は、芯棒612と、コイル部614と、本体部61
6とを有している。この電極610は、放電灯本体510内への封入前の段階において、
芯棒612に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けてコイル部614を形成し、形
成されたコイル部614を加熱・溶融することにより形成される。これにより、電極61
0の先端側には、熱容量が大きい本体部616が形成される。電極710も前記電極61
0と同様に、芯棒712と、コイル部714と、本体部716とを有しており、電極61
0と同様に形成される。
【0031】
放電灯500を1度も点灯させていない状態では、本体部616,716には、突起6
18,718は形成されていないが、後述する条件で放電灯500を1度でも点灯させる
と、本体部616,716の先端部に、それぞれ突起618,718が形成される。この
突起618,718は、放電灯500の点灯中、維持され、また、消灯後も維持される。
なお、各電極610,710の構成材料としては、例えば、タングステン等の高融点金
属材料等が挙げられる。
【0032】
また、放電空間512には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、例えば、放電開
始用ガス、発光に寄与するガス等を含んでいる。また、放電媒体には、その他のガスが含
まれていてもよい。
放電開始用ガスとしては、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げら
れる。また、発光に寄与するガスとしては、例えば、水銀、ハロゲン化金属の気化物等が
挙げられる。また、その他のガスとしては、例えば、黒化を防止する機能を有するガス等
が挙げられる。黒化を防止する機能を有するガスとしては、例えば、ハロゲン(例えば、
臭素等)、ハロゲン化合物(例えば、臭化水素等)、またはこれらの気化物等が挙げられ
る。
また、放電灯点灯時の放電灯本体510内の気圧は、すみやかに放電が開始され安定し
た放電状態が得られること考慮して、0.1atm以上300atm以下であることが好
ましく、50atm以上300atm以下であることがより好ましい。
【0033】
放電灯500の電極端子630,730は、それぞれ放電灯駆動装置200の出力端子
に接続されている。そして、放電灯駆動装置200は、放電灯500に複数の周波数の交
流電流(交流電力)を含む駆動電流(駆動電力)を供給する。具体的には、放電灯駆動装
置200は、電極端子630,730を介して電極610,710に所定の駆動電圧を印
加する。該所定の駆動電圧は電極610及び電極710の極性が交互に陽極と陰極とに切
り替わるように与えられる。これにより、電極610と電極710との間に上記の駆動電
流が流れ放電灯500に電力が供給される。電極610,710に上記の駆動電流が供給
されると、放電空間512内の1対の電極610,710の先端部の間でアーク放電(ア
ークAR)が生じ、放電媒体が発光する。アーク放電により発生した光(放電光)は、そ
のアークARの発生位置(放電位置)から全方向に向かって放射される。副反射鏡520
は、一方の電極710の方向に放射される光を、主反射鏡112に向かって反射する。こ
のように、電極710の方向に放射される光を主反射鏡112に向かって反射することに
より、電極710の方向に放射される光を有効に利用することができる。なお、本実施形
態において、放電灯500は副反射鏡520を備えているが、放電灯500は副反射鏡5
20を備えていない構成であってもよい。
【0034】
次に、放電灯駆動装置200及び検出器35について図3を参照して説明する。
図3に示すように、放電灯駆動装置200は、直流電流を発生する直流電流発生器31
と、直流電流発生器31から出力された直流電流の正負の極性を切り替える極性切替器3
2と、制御部33とを備えており、極性切替器32により直流電流の極性を切り替えて所
定の周波数の交流電流(直流交番電流)を生成し、その交流電流を駆動電流として放電灯
500の1対の電極610,710に供給する装置である。
なお、直流電流発生器31、極性切替器32及び制御部33により、第1の交流電流供
給部及び第2の交流電流供給部が構成される。
【0035】
制御部33は、直流電流発生器31及び極性切替器32等、放電灯駆動装置200全体
の作動を制御する。直流電流発生器31は、その出力である電流値を調整し得るものであ
り、制御部33の制御により、直流電流発生器31の電流値が調整される。また、制御部
33の制御により、極性切替器32における直流電流の極性の切り替えのタイミングが調
整される。
【0036】
また、放電灯駆動装置200の出力側(放電灯500と放電灯駆動装置200との間)
に別途設けられた後述の検出器(電極間距離検出部)35の検出結果が、制御部33に入
力される。なお、本実施形態では、検出器35は、放電灯駆動装置200と別に設けられ
ているが、放電灯駆動装置200に組み込まれる構成であってもよい。また、図示しない
増幅器が、例えば、極性切替器32の後段、すなわち極性切替器32と検出器35との間
等に設けられていてもよい。
【0037】
本実施形態では、放電灯駆動装置200は、直流電流発生器31により直流電流を発生
するとしたが、直流電流発生器31は直流電圧発生器に置き換えることができ、極性切替
器32は直流電圧の基準電位に対する正負の極性を切り替える構成とすることができる。
したがって、制御部33は、極性切替器32により直流電圧の極性を切り替えて所定の周
波数の交流電圧を生成させる。放電灯駆動装置100は、その交流電圧を駆動電圧として
放電灯500の1対の電極610,710に印加する。これにより、1対の電極610,7
10の間に交流電流が流れ電力が供給される。交流電圧は、言い換えれば電極610の電
極710に対する相対的な電位が基準電位に対して正と負とに周期的に切り替わっている
ことを指す。本実施形態では、基準電位は例えば0Vであり、電極電位が基準電位に対し
て正の場合に当該電極は陽極として機能し、電極電位が基準電位に対して負の場合に当該
電極は陰極として機能する。
【0038】
図4及び図5に示すように、この放電灯駆動装置200では、第1の交流電流(高周波
数の交流電流)を生成して1対の電極610,710に供給する第1の交流電流供給区間
41と、第1の交流電流よりも周波数の低い第2の交流電流(低周波数の交流電流)を生
成して1対の電極610,710に供給する第2の交流電流供給区間42とが交互に繰り
返されるように、直流電流発生器31で発生した直流電流の極性を極性切替器32で切り
替える。すなわち、第1の交流電流供給区間41と第2の交流電流供給区間42とを交互
に繰り返してなる放電灯駆動用の駆動電流である交流電流を生成し、出力する。放電灯駆
動装置200から出力された駆動電流は、放電灯500の1対の電極610,710に供
給される。
これにより、前述したように、1対の電極610,710の先端部の間でアーク放電が
生じ、放電灯500が点灯する。
なお、前述したように、第1の交流電流(高周波数の交流電流)は、第1の交流電圧(
高周波数の交流電圧)に置き換えることができる。同様に、第2の交流電流(低周波数の
交流電流)は、第2の交流電圧(低周波数の交流電圧)に置き換えることができる。した
がって、第1の交流電流供給区間41は高周波数である第1の周波数で交流電圧を電極6
10,710に印加する第1の期間に置き換えることができ、第2の交流電流供給区間4
2は低周波数である第2の周波数で交流電圧を電極610,710に印加する第2の期間
に置き換えることができる。
【0039】
ここで、この光源装置1では、後述する条件の駆動電流(駆動電圧)を用いて放電灯5
00を点灯するので、その放電灯500が点灯している際、電極610,710の温度が
変動し、その変動により、電極610,710の先端部に、それぞれ突起618,718
が形成され、その突起618,718を維持することができ、また、放電灯500の黒化
を抑制でき、長寿命化を図ることができる。
【0040】
すなわち、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42では、後述する第2の交流電流
(第2の交流電圧)を電極610,710に供給(印加)するので、電極610,710
の先端部に突起618,718が形成され、その突起618,718が大きくなり、これ
により、後述する第1の交流電流供給区間(第1の期間)41において広がった1対の電
極610,710の電極間距離を狭くする(減少させる)ことができる。言い換えれば、
1対の電極610,710の電極間距離が広がることを抑制することができる。
【0041】
具体的には、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42において、まず、第2の交流
電流(第2の交流電圧)の極性が正の区間(図4の期間b2で示された区間44)では、
それぞれ、電極610,710の温度が高くなることで、電極610,710の先端部の
一部が溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610,710の先端部に集
まる。一方、第2の交流電流(第2の交流電圧)の極性が負の区間(図4の期間a1のう
ち期間b1を除いた区間)では、それぞれ、電極610,710の温度が低くなることで
、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610,710の先
端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618
,718の成長が起こる。
【0042】
そして、後述するように、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41と第2の交流電
流供給区間(第2の期間)42とを切り替えて、電極間距離が広がることを抑制すること
ができ、電極間が狭い状態を維持することができる。これにより、放電灯500を効率良
く駆動することができる。
但し、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42では、電極610,710の先端部
の一部が溶融し、溶融した電極材が気化して放電灯本体510あるいは放電媒体と反応し
て、放電灯500が黒化するおそれがある。
【0043】
一方、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41では、後述する第1の交流電流(第
1の交流電圧)を電極610,710に供給(印加)するので、放電灯500の黒化を抑
制し、また、第2の交流電流供給区間42において黒化した放電灯500のその黒化を回
復させることができる。
但し、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41では、第2の交流電流供給区間(第
2の期間)42において電極610,710の先端部に形成された突起618,718が
小さくなり、これにより電極間距離が広がってゆくおそれがある。
このような第1の交流電流供給区間(第1の期間)41と第2の交流電流供給区間(第
2の期間)42とを交互に繰り返すことにより、放電灯500の黒化を抑制し、電極間距
離が広がることを抑制し、放電灯500を駆動することができる。
【0044】
ここで、放電灯500の定格電力は、用途等に応じて適宜設定され、特に限定されない
が、10W以上5kW以下であることが好ましく、100W以上500W以下であること
がより好ましい。
また、第1の交流電流(第1の交流電圧)の周波数(第1の周波数)は、1kHzより
も大きい。そして、第1の交流電流(第1の交流電圧)の周波数(第1の周波数)は、1
kHzよりも大きく10GHz以下であることが好ましく、1kHzよりも大きく100
kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることがより好ましく、3kHz
以上100kHz以下、または、3MHz以上3GHz以下であることがさらに好ましく
、5kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上3GHz以下であることが特に
好ましい。そして、さらに言えば、第1の交流電流(第1の交流電圧)の周波数(第1の
周波数)は、3kHz以上100kHz以下であることが好ましく、5kHz以上100
kHz以下であることがより好ましい。
【0045】
電極610,710が陽極として動作するときは、それぞれ、陰極として動作するとき
に比べて電極温度が高くなるが、第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数を1
kHzよりも大きく設定することにより、その第1の交流電流(第1の交流電圧)の1周
期内における電極温度の変動を防止することができ、放電灯500の黒化を抑制し、また
、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42において黒化した放電灯500のその黒化
を回復させることができる。
しかし、第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数が1kHz以下であると、
その第1の交流電流(第1の交流電圧)の1周期毎に、電極610,710の温度が変動
し、放電灯500が黒化する。
また、第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数が10GHzよりも大きいも
のは、コストが高くなる。
また、第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数が100kHzよりも大きく
、3MHzよりも小さいと、他の条件によっては、音響共鳴効果により放電が不安定とな
る。
【0046】
第2の交流電流(第2の交流電圧)の第2の周波数は、1kHz又は1kHzよりも小
さい。そして、第2の交流電流(第2の交流電圧)の第2の周波数は、500Hz以下で
あることが好ましく、10Hz以上500Hz以下であることがより好ましく、30Hz
以上300Hz以下であることがさらに好ましい。
第2の交流電流(第2の交流電圧)の第2の周波数が前記上限値を超えると、突起61
8,718が形成されない。また、第2の交流電流(第2の交流電圧)の第2の周波数が
前記下限値よりも小さいと、他の条件によっては、突起618,718が溶融して潰れて
しまい、また、黒化がより生じ易くなる。
【0047】
また、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41の長さは、第2の交流電流供給区間
(第2の期間)42の長さよりも長いことが好ましい。この場合、第1の交流電流供給区
間(第1の期間)41の長さをA、第2の交流電流供給区間(第2の交流電圧印加区間)
42の長さをBとしたとき、A/Bは、1より大きく設定されていることが好ましい。さ
らに、A/Bは、1より大きく50以下に設定されていることが好ましく、2以上50以
下に設定されていることがより好ましく、2以上5以下に設定されていることがさらに好
ましい。
これにより、放電灯500の黒化の抑制と、電極間距離が広がることを抑制することの
両立を図ることができる。
【0048】
なお、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42の長さBが第1の交流電流供給区間
(第1の期間)41の長さAよりも長くてもよく、また、第1の交流電流供給区間(第1
の期間)41の長さAと第2の交流電流供給区間(第2の期間)42の長さBとが同じで
あってもよい。
また、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41の長さAは、10分以上3時間以下
であることが好ましく、10分以上1時間以下であることがより好ましい。これにより、
より確実に、放電灯500の黒化を抑制し、第2の交流電流供給区間42において黒化し
た放電灯500のその黒化を回復させることができる。
また、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42の長さBは、1分以上60分以下で
あることが好ましく、1分以上10分以下であることがより好ましい。これにより、より
確実に、電極間距離が広がることを抑制することができる。
【0049】
また、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41においては、第1の交流電流(第1
の交流電圧)の振幅を経時的に漸次減少させる。すなわち、第1の交流電流供給区間(第
1の期間)41では、突起618,718が小さくなり、電極間距離が増大して、電極間
電圧(電極間電圧の絶対値)が経時的に漸次増大するので、放電灯500に供給する電力
が一定になるように、第1の交流電流(第1の交流電圧)の振幅を経時的に漸次減少させ
る。これにより、光量を一定にすることができる。
【0050】
逆に、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42においては、第2の交流電流(第2
の交流電圧)の振幅を経時的に漸次増大させる。すなわち、第2の交流電流供給区間(第
2の期間)42では、突起618,718が大きくなり、電極間距離が減少して、電極間
電圧(電極間電圧の絶対値)が経時的に漸次減少するので、放電灯500に供給する電力
が一定になるように、第2の交流電流(第2の交流電圧)の振幅を経時的に漸次増大させ
る。これにより、光量を一定にすることができる。
なお、本実施形態では、交流電流(交流電圧)の振幅とは、基準電位に対して極性が正
に振れた電流(電位)の幅の絶対値と極性が負に振れた電流(電位)の幅の絶対値の和で
示される。
【0051】
また、第1の交流電流(第1の交流電圧)及び第2の交流電流(第2の交流電圧)の波
形は、それぞれ、矩形状(矩形波)をなしている。これにより、より確実に、放電灯50
0の黒化を抑制することができる。
なお、第1の交流電流(第1の交流電圧)及び第2の交流電流(第2の交流電圧)の波
形は、それぞれ、矩形状に限定されず、例えば、波状等であってもよい。
【0052】
また、第1の交流電流(第1の交流電圧)の周期をa1、区間43の期間をb1したと
き、その周期a1と期間b1の比b1/a1(デューティー比)は、10%以上90%以
下であることが好ましく、20%以上80%以下であることがより好ましく、50%であ
ることがさらに好ましい。
また、第2の交流電流(第2の交流電圧)の周期をa2、区間44の期間をb2したと
き、その周期a2と期間b2の比b2/a2(デューティー比)は、10%以上90%以
下であることが好ましく、20%以上80%以下であることがより好ましく、50%であ
ることがさらに好ましい。これにより、電極610,710に、互いに対称に突起618
,718を形成することができる。
【0053】
また、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41における光量と、第2の交流電流供
給区間(第2の期間)42における光量とを同じにする場合は、第1の交流電流供給区間
(第1の期間)41での第1の交流電流(第1の交流電圧)の大きさ(上記振幅)の平均
値と、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42での第2の交流電流(第2の交流電圧
)の大きさ(上記振幅)の平均値とは、同じ値に設定される。
【0054】
また、光源装置1の検出器35としては、本実施形態では、電圧計を用いる。そして、
その検出器35により、放電灯500の1対の電極610,710の電極間電圧を検出し
、後述するように、検出された電極間電圧を放電灯500の駆動制御に利用する。この電
極間電圧は、電極間距離に対応する値である。したがって、前記電極間電圧を検出するこ
とにより、電極間距離を間接的に求めたこととなる。なお、電極間電圧が大きいほど、電
極間距離が長い。また、本実施形態では、電圧計で電極間電圧を測定するので、駆動電流
(駆動電圧)の周波数、すなわち、第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数が
、1MHz未満の場合に適用することが好ましい。
【0055】
この光源装置1では、前記検出器35により、1対の電極610,710の電極間電圧
を検出し、その検出された電極間電圧は、制御部33に送出される。図5に示すように、
制御部33は、検出器35の検出結果、すなわち、検出された電極間電圧に応じて、第1
の交流電流供給区間(第1の期間)41と、第2の交流電流供給区間(第2の期間)42
とを切り替える。すなわち、電極間電圧の絶対値が許容範囲の上限値になると、第1の交
流電流供給区間(第1の期間)41から第2の交流電流供給区間(第2の期間)42に変
更し、電極間電圧の絶対値が許容範囲の下限値になると、第2の交流電流供給区間(第2
の期間)42から第1の交流電流供給区間(第1の期間)41に変更する。これにより、
電極間距離を所定の許容範囲内に制限することができる。
【0056】
また、電極間電圧の絶対値の許容範囲の上限値及び下限値は、特に限定されず、諸条件
に応じて適宜設定されるが、その上限値と下限値との差は、15V以下であることが好ま
しく、1V以上10V以下であることがより好ましく、1V以上5V以下であることがさ
らに好ましい。これにより、光量を一定にすることができる。
また、電極間電圧の絶対値の許容範囲の上限値及び下限値は、それぞれ、放電灯500
の点灯時間に応じて調整することが好ましい。すなわち、放電灯500の点灯時間が長い
ほど、突起618,718が延び難くなるので、放電灯500の点灯時間が長いほど、電
極間電圧の絶対値の許容範囲の上限値及び下限値をそれぞれ増大させる。これにより、よ
り確実に、電極間距離が広がることを抑制することができる。
【0057】
次に、図6を参照して、光源装置1の放電灯駆動装置200の制御動作について説明す
る。
まず、第1の交流電流供給区間(第1の期間)41から開始し、第1の交流電流(第1
の交流電圧)を1対の電極610,710に供給(印加)し、放電灯500を点灯する(
ステップS101)。従って、突起618,718は溶融して小さくなってゆき、電極間
電圧は漸増する。なお、前述したように、放電灯500に供給される電力が一定になるよ
うに第1の交流電流(第1の交流電圧)の大きさ(振幅)を漸減させる。
【0058】
次いで、電極間電圧を検出し(ステップS102)、検出された電極間電圧の絶対値が
許容範囲の上限値に達したか否かを判定する(ステップS103)。
ステップS103において、電極間電圧の絶対値が上限値よりも小さい場合には、ステ
ップS102に戻り、再度、ステップS102以降を実行する。
また、ステップS103において、電極間電圧の絶対値が上限値に達した場合は、第1
の交流電流供給区間(第1の期間)41から第2の交流電流供給区間(第2の期間)42
となり、第2の交流電流(第2の交流電圧)を1対の電極610,710に供給(印加)
する(ステップS104)。従って、突起618,718は大きくなってゆき、電極間電
圧は漸減する。なお、前述したように、放電灯500に供給される電力が一定になるよう
に第2の交流電流(第2の交流電圧)の大きさ(振幅)を漸増させる。
【0059】
次いで、電極間電圧を検出し(ステップS105)、検出された電極間電圧の絶対値が
許容範囲の下限値に達したか否かを判定する(ステップS106)。
ステップS106において、電極間電圧の絶対値が下限値よりも大きい場合には、ステ
ップS105に戻り、再度、ステップS105以降を実行する。
また、ステップS106において、電極間電圧の絶対値が下限値に達した場合は、ステ
ップS101に戻り、再度、ステップS101以降を実行する。これにより、電極間電圧
の絶対値が許容範囲内に保持され、電極間距離は、許容範囲内に保持される。
【0060】
以上説明したように、この光源装置1によれば、放電灯500の黒化を抑制し、長寿命
化を図ることができる。また、電極610,710に突起618,718が形成され、電
極間距離が広がることを抑制することができ、放電灯500を効率良く駆動することがで
きる。
【0061】
以上、本発明の光源装置及び放電灯の駆動方法を、図示の実施形態に基づいて説明した
が、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の
構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されてい
てもよい。
【0062】
<プロジェクター>
次に本実施形態のプロジェクターについて図7を参照して説明する。図7は、本発明の
プロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
図7に示すように、本実施形態のプロジェクター300は、前述した光源装置1と、イ
ンテグレータレンズ302及び303を有する照明光学系と、色分離光学系(導光光学系
)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ84と、緑色に対応した(緑色用の
)液晶ライトバルブ85と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ86と、赤色
光のみを反射するダイクロイックミラー面811及び青色光のみを反射するダイクロイッ
クミラー面812が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)81と、投射レ
ンズ(投射光学系)82とを備えている。
【0063】
色分離光学系は、ミラー304,306,309、青色光及び緑色光を反射する(赤色
光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイック
ミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー308、集光レンズ310,
311,312,313,314を有している。
液晶ライトバルブ85は、液晶パネル16と、液晶パネル16の入射面側に接合された
第1の偏光板(図示せず)と、液晶パネル16の出射面側に接合された第2の偏光板(図
示せず)とを有している。液晶ライトバルブ84,86も、液晶ライトバルブ85と同様
の構成をなしている。これら液晶ライトバルブ84,85,86の各液晶パネル16は、
それぞれ、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、このプロジェクター300では、液晶ライトバルブ84,85,86及び駆動回
路により、光源装置1から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置の主要部が
構成され、投射レンズ82により、その変調装置により変調された光を投射する投射装置
の主要部が構成される。
【0064】
次に、プロジェクター300の作用を説明する。
まず、光源装置1から出射した白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302及
び303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302
及び303により均一化される。
インテグレータレンズ302及び303を透過した白色光は、ミラー304で図7中左
側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)及び緑色光(G)は、それぞれダイクロイ
ックミラー305で図7中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305
を透過する。
【0065】
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図7中下側に反射し
、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ84に入
射する。
ダイクロイックミラー305で反射した青色光及び緑色光のうちの緑色光は、ダイクロ
イックミラー307で図7中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透
過する。
【0066】
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、
緑色用の液晶ライトバルブ85に入射する。
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー308
で図7中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図7中上側に反射する。前記青色
光は、集光レンズ312,313,314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ8
6に入射する。
【0067】
このように、光源装置1から出射した白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色及び
青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブ84,85,86に導
かれ、入射する。
この際、液晶ライトバルブ84の液晶パネル16の各画素は、赤色用の画像信号に基づ
いて作動する駆動回路により、スイッチング制御(オン/オフ)され、また、液晶ライト
バルブ85の液晶パネル16の各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路
により、スイッチング制御され、また、液晶ライトバルブ86の液晶パネル16の各画素
は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御される。
これにより、赤色光、緑色光及び青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ84,85,
86で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像及び青色用の画像がそれぞれ形成される。
【0068】
前記液晶ライトバルブ84により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ
84からの赤色光は、入射面813からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロ
イックミラー面811で図7中左側に反射し、ダイクロイックミラー面812を透過して
、出射面816から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ85により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライト
バルブ85からの緑色光は、入射面814からダイクロイックプリズム81に入射し、ダ
イクロイックミラー面811及び812をそれぞれ透過して、出射面816から出射する

また、前記液晶ライトバルブ86により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライト
バルブ86からの青色光は、入射面815からダイクロイックプリズム81に入射し、ダ
イクロイックミラー面812で図7中左側に反射し、ダイクロイックミラー面811を透
過して、出射面816から出射する。
【0069】
このように、前記液晶ライトバルブ84,85,86からの各色の光、すなわち液晶ラ
イトバルブ84,85,86により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム81に
より合成され、これによりカラー画像が形成される。この画像は、投射レンズ82により
、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
以上説明したように、このプロジェクター300によれば、前述した光源装置1を有し
ているので、消費電力を低減でき、また、安定した良好な画像を表示することができる。
【0070】
次に、本発明の具体的実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
図1に示され、下記の構成の光源装置1を作成した。
放電灯本体510の構成材料:石英ガラス
放電灯本体510内の封入物:アルゴン、水銀、臭素メチル
放電灯本体510内の点灯時の気圧:200atm
電極610,710の構成材料:タングステン
電極間距離:1.1mm
定格電力:200W
第1の交流電流(第1の交流電圧)の第1の周波数:5kHz
第1の交流電流(第1の交流電圧)のデューティー比(b1/a1):50%
第1の交流電流(第1の交流電圧)の波形:矩形状
第2の交流電流(第2の交流電圧)の第2の周波数:135Hz
第2の交流電流(第2の交流電圧)のデューティー比(b2/a2):50%
第2の交流電流(第2の交流電圧)の波形:矩形状
駆動電流:電力が200Wになるように電流(電極610の電極710に対する相対的
な電位)を制御
電極間電圧の絶対値の下限値:66.5V
電極間電圧の絶対値の上限値:71.5V(上限値と下限値との差は15V)
【0071】
(比較例1)
比較例1は、駆動電流(駆動電圧)として、周波数が150Hz、デューティー比が5
0%であり、波形が矩形状をなす交流電流(交流電圧)を用いた以外は、前記実施例1と
同様の光源装置を作成した。
【0072】
(比較例2)
比較例2は、駆動電流(駆動電圧)として、周波数が5kHz、デューティー比が50
%であり、波形が矩形状をなす交流電流(交流電圧)を用いた以外は、前記実施例1と同
様の光源装置を作成した。
【0073】
(比較例3)
比較例3は、第2の交流電流(第2の交流電圧)の周波数を1.1kHzとした以外は
、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
【0074】
(比較例4)
比較例4は、第1の交流電流(第1の交流電圧)の周波数を900Hzとした以外は、
前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
【0075】
[評価]
実施例1、比較例1〜4に対し、それぞれ、下記のようにして各評価を行った。その結
果は、下記表1に示す通りである。
(突起(電極間距離))の評価については、放電灯を点灯させ、点灯開始から500時
間まで、1対の電極の電極間距離の変動を観察した。
評価基準は、点灯開始時の電極間距離に対して、電極間距離の変動がまったくない場合
を「○」、電極間距離の変動が10%以内の場合を「△」、電極間距離の変動が10%を
超える場合を「×」とした。
【0076】
(耐黒化性)の評価については、放電灯を点灯させ、点灯開始から500時間後に電源
をoffし、そのときの放電灯の赤熱状態を観察した。
評価基準は、放電灯に赤熱がない場合を「○」、放電灯に赤熱がある場合を「×」とし
た。
【0077】
【表1】

【0078】
上記表1から明らかなように、実施例1では、電極610,710の先端部に確実に突
起618,718が形成され、電極間距離の変動がまったくなく、また、黒化は発生せず
、良好な結果が得られた。
これに対し、比較例1〜4では、満足な結果は得られなかった。
【符号の説明】
【0079】
1…光源装置、31…直流電流発生器、32…極性切替器、33…制御部、35…検出
器、41…第1の期間としての第1の交流電流供給区間、42…第2の期間としての第2
の交流電流供給区間、43、44…区間、110…光源ユニット、112…主反射鏡、1
14…平行化レンズ、116…無機接着剤、200…駆動装置としての放電灯駆動装置、
500…放電灯、510…放電灯本体、512…空洞部としての放電空間、520…副反
射鏡、522…無機接着剤、610,710…電極、612,712…芯棒、614,7
14…コイル部、616,716…本体部、618,718…突起、620,720…接
続部材、630,730…電極端子、16…液晶パネル、81…ダイクロイックプリズム
、811,812…ダイクロイックミラー面、813〜815…入射面、816…出射面
、82…投射レンズ、84〜86…液晶ライトバルブ、300…プロジェクター、302
,303…インテグレータレンズ、304,306,309…ミラー、305,307,
308…ダイクロイックミラー、310〜314…集光レンズ、320…スクリーン、S
101〜S106…ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電極及び第2の電極を有す
る放電灯と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に駆動電圧を供給する駆動装置と、を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記放電媒体に前記駆動電圧を印加するこ
とにより前記放電媒体は発光し、
前記駆動装置は、前記第1の電極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の周波
数で変化させ、
前記複数の周波数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、
前記第1の周波数は1kHzよりも大であり、
前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であること、
を特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記駆動装置は、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記第1の周波数で
相対的に変化させる第1の期間と、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記
第2の周波数で相対的に変化させる第2の期間とを交互に繰り返して前記放電媒体を発光
させること、
を特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光源装置において、
前記第1の期間の長さは、前記第2の期間の長さよりも長いこと、
を特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置において、
前記第1の期間をAとし、前記第2の期間をBとするとき、A/Bが2以上に設定され
ていることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記駆動装置は、前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する
電位を相対的に変化させたときの振幅を変化させること、
を特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光源装置において、
前記駆動装置は、前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する
電位を相対的に変化させたときの前記振幅を経時的に減少させること、
を特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記駆動装置は、前記第2の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する
電位を相対的に変化させたときの振幅を変化させること、
を特徴とする光源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光源装置において、
前記駆動装置は、前記第2の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する
電位を相対的に変化させたときの前記振幅を経時的に増大させること、
を特徴とする光源装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を相対的に変
化させたときの波形は、矩形状をなしていることを特徴とする光源装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第2の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を相対的に変
化させたときの波形は、矩形状をなしていることを特徴とする光源装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第1の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を相対的に変
化させたときの振幅の平均値と、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記第
2の周波数で相対的に変化させる第2の期間において、前記第1の電極の前記第2の電極
に対する電位を相対的に変化させたときの振幅の平均値とは、同じであることを特徴とす
る光源装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記駆動電圧の上限値及び下限値
が設定されており、前記上限値と前記下限値との差は、15V以下であることを特徴とす
る光源装置。
【請求項13】
放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電極及び第2の電極を有す
る放電灯の駆動方法であって、
前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記放電媒体に駆動電圧を印加することに
より前記放電媒体は発光し、
前記駆動電圧における前記第1の電極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の
周波数で変化させ、
前記複数の周波数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、
前記第1の周波数は1kHzよりも大であり、
前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であること、
を特徴とする放電灯の駆動方法。
【請求項14】
請求項13に記載の放電灯の駆動方法において、
前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記第1の周波数で相対的に変化させ
る第1の期間と、前記第1の電極の前記第2の電極に対する電位を前記第2の周波数で相
対的に変化させる第2の期間とを交互に繰り返して前記放電媒体を発光させること、
を特徴とする放電灯の駆動方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の放電灯の駆動方法において、
前記第1の期間の長さは、前記前記2の期間の長さよりも長いこと、
を特徴とする放電灯の駆動方法。
【請求項16】
光源装置と、
前記光源装置から射出された光を画像情報に基づいて変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、を有し、
前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部内で対向して配置された第1の電極及び
第2の電極を有する放電灯と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に駆動電圧を供給する駆動装置と、を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記放電媒体に前記駆動電圧を印加するこ
とにより前記放電媒体は発光し、
前記駆動装置は、前記第1の電極の前記第2の電極に対する相対的な電位を複数の周波
数で変化させ、
前記複数の周波数は第1の周波数及び第2の周波数を含み、
前記第1の周波数は1kHzよりも大であり、
前記第2の周波数は1kHz又は1kHzより小であること、
を特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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