説明

光源装置および投射型表示装置

【課題】発光体を配置する姿勢や位置等が限定されず、マイクロ波の外部漏洩を抑制することも可能な光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置1は、マイクロ波を生成するマイクロ波電源2と、マイクロ波を放射する中心導体3と、マイクロ波により発光する発光体である放電ランプ5と、を備え、中心導体3と放電ランプ5とが離間して配置されていて、放電ランプ5を自在な姿勢で配置することが可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波の照射により発光する発光体を有する光源装置およびこの光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置は、例えば特許文献1に示すように、マイクロ波を生成するマイクロ波発生部と、マイクロ波発生部に設けられマイクロ波を放射する中心導体(特許文献1におけるアンテナ)と、中心導体に接続されマイクロ波による給電により発光する発光体(放電ランプ)と、発光体の発する光束を所定方向へ反射させるリフレクターと、リフレクターと一体に設けられマイクロ波を反射するチャンバーと、マイクロ波の外部漏洩を遮断する光源ケースと、を備えている。このような構成の光源装置では、放射されたマイクロ波が、チャンバーで反射されて発光体に収束することにより、発光体を効率的に発光させている。そして、この光源装置を投射型表示装置であるプロジェクターに備えれば、光利用効率の高い高輝度のものを提供することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−192392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、発光体が中心導体と接続されている構成であるため、発光体を配置する姿勢や位置等がほぼ限定されてしまい調整等が困難である、という課題があった。また、マイクロ波の外部漏洩を遮断するために、発光体やリフレクターを覆う光源ケースが必要であり、部品点数が多くなる、という課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る光源装置は、マイクロ波を生成するマイクロ波電源と、前記マイクロ波を放射する中心導体と、前記マイクロ波により発光する発光体と、を備え、前記中心導体と前記発光体とが離間して配置されていることを特徴とする。
【0007】
この光源装置によれば、発光体は、マイクロ波電源で生成され中心導体から放射されるマイクロ波による給電によって、発光することが可能な構成になっている。さらに、発光体は、その端部等が、中心導体に対し直接または他部材を介して間接的に接続されている状態ではなく、中心導体から離間している状態で配置されている。このように中心導体から離間していることにより、発光体は、中心導体に対して、平行な方向、直交方向または斜め方向等のさまざまな方向を向く設定にも容易に対応することができ、柔軟な配置が可能である。つまり、光源装置において、発光体がマイクロ波を効率良く受信して、十分な給電効果を得られるように、発光体を自在な姿勢に配置することが容易に行える。これにより、発光体は、十分な給電を得て、効率的な発光をすることが可能である。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る光源装置において、前記発光体は、前記マイクロ波により発光する発光部材を封入した封止部と、少なくとも1本の導体と、を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、導体は、中心導体から放射されたマイクロ波を集中させて、効率よい給電を行うために設けられていて、これにより、導体の端部には、局所的な強電界が生じることになる。発光体は、封止部の発光部材が導体に生じた強電界に励起されて発光することによって、より強力な発光が行える。即ち、導体を有する発光体は、マイクロ波が集中して、効率の良い発光をすることが可能である。発光体は、少なくとも1本の導体を有していれば良いが、封止部に対して、バランス良く複数の導体を有していれば、より好ましい。また、例えば、マイクロ波の振幅方向と同方向に導体が延在するように、発光体を配置すれば、発光体がマイクロ波をより効率良く受信して発光することが可能である。このような形態および姿勢で発光体を配置すること等を含め、中心導体と発光体とが離間していることによって、発光体を容易に配置することが可能である。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る光源装置において、前記発光体は、前記導体が前記封止部の外部側に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、発光体の有する導体は、封止部の外部側に設けられていて、封止部の内部には挿入されていない。従って、導体は、発光部材等との反応等が回避され、さらに劣化が抑制されることにより、長期の使用に耐えることが可能となる。即ち、発光体の長寿命化が図れる。これに伴い、発光体を備える光源装置は、発光体の交換までの期間が延び、交換の煩わしさの軽減、および経済的負担の軽減を図ることが可能である。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る光源装置は、前記発光体を内設し、一方の端に開口を有して少なくとも一部が導電性材で形成され、前記発光体から射出される光束を前記開口へ向けて反射するリフレクターを備え、前記導体の少なくとも1本が前記リフレクターと電気的に導通していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、光源装置は、リフレクターによって発光体の発する光束を反射して、光束の利用効率を高めて、開口から射出する構成である。このリフレクターは、光束の反射に加え、マイクロ波を遮断および反射することが可能な導電性材で形成されているため、マイクロ波の外部漏洩を防ぎ発光体への給電効果を高める役目も果たしている。従って、マイクロ波の外部漏洩を防ぐために、光源ケース等の他の遮断部材が不必要である。また、光源装置は、導体とリフレクターとが電気的に導通している構成により、マイクロ波によって発光体が発光する際に生じる、電磁波をグランドへ導くことができ、外部への電磁波漏洩をより効果的に防止することが可能である。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る光源装置は、前記発光体から射出される光束の光軸上に光を集光または偏向する光学部材をさらに備え、前記光学部材が前記開口に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、光学部材として、例えば、各種の光学レンズ等を用いることにより、光束を平行光にしたり集光または偏向することや、発光体から光学部材までの導光距離を短くするなどして、光束の利用効率を向上させることが可能である。光源装置は、光学部材を備えることにより、射出する光束を制御でき、光学設計における自由度を増すことが可能である。
【0016】
[適用例6]本適用例に係る投射型表示装置は、マイクロ波を生成するマイクロ波電源と、前記マイクロ波を放射する中心導体と、前記マイクロ波により発光する発光体と、を有し、前記中心導体と前記発光体とが離間して配置されている構成の光源装置を備えていることを特徴とする。
【0017】
この投射型表示装置によれば、搭載している光源装置の発光体は、マイクロ波電源で生成され中心導体から放射されるマイクロ波による給電によって、発光することが可能な構成のものである。さらに、発光体は、その端部等が中心導体に対し、直接または他部材を介して間接的に、接続されている状態ではなく、中心導体から離間している状態で配置されている。このように中心導体から離間していることにより、発光体は、中心導体に対して、平行な方向、直交方向または斜め方向等のさまざまな方向を向く設定に対応することができ、柔軟な配置が可能である。つまり、光源装置において、発光体がマイクロ波を効率良く受信して、十分な給電効果を得られるように、発光体を自在に配置することが容易に行える。これにより、発光体は、十分な給電を得て、効率的な発光をすることが可能であり、この発光体を有する光源装置を備えた投射型表示装置は、発光体が効率的に発光して、高輝度な映像を投射することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1における光源装置の構成を示す断面図。
【図2】(a)実施形態1における放電ランプの構成を示す断面図、(b)光源装置の筒状部の設定を示す断面図。
【図3】実施形態2における光源装置の構成を示す断面図。
【図4】実施形態2における放電ランプの構成を示す断面図。
【図5】光源装置を搭載したプロジェクターの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の光源装置および投射型表示装置の実施形態について説明する。実施形態では、マイクロ波による給電で発光する発光体である放電ランプを有する光源装置と、この光源装置を搭載した投射型表示装置であるプロジェクターを一例にして説明する。
(実施形態1)
【0020】
図1は、実施形態1における光源装置の構成を示す断面図である。図1に示すように、光源装置1は、マイクロ波を生成するマイクロ波電源2と、マイクロ波電源2内から延出しマイクロ波電源2で生成したマイクロ波を放射するための中心導体3と、中心導体3を内導体として内装する同軸管4と、中心導体3に対してマイクロ波電源2と反対側に位置し中心導体3から放射されるマイクロ波によって給電されることにより発光する放電ランプ(発光体)5と、一方の端に開口部(開口)62aを有し内設した放電ランプ5の発光により射出された光束を開口部62aの方向へ反射するリフレクター6と、放電ランプ5をリフレクター6に保持するための保持部材7と、を備えている。これらマイクロ波電源2、中心導体3および放電ランプ5は、光束が外部へ導出される方向である光軸8に沿って順に配置されている。
【0021】
同軸管4および同軸管4に内装された中心導体3は、この場合、共に銅(Cu)で形成されていて、両者が短絡しないように、且つ、同軸管4が中心導体3から等距離となるように、フッ素系樹脂の絶縁部材が両者の間に設けられている。中心導体3は、円柱状に形成されていて、マイクロ波電源2内から光軸8の方向に沿って延出している。延出した中心導体3の先端部は、放電ランプ5と対向していて、マイクロ波電源2で生成したマイクロ波を放射する。
【0022】
ここで、光源装置1におけるマイクロ波は、いわゆるTEM(Transverse Electro Magnetic)モードの高周波であって、波の伝搬方向に電界の成分と磁界の成分がゼロであるため、中心導体3から放電ランプ5へ放射する際の損失が少なく、効率的な放射が可能なものである。そして、この場合、マイクロ波は、周波数が2.45GHzのものを用いていて、その波長λが12.2cmである。
【0023】
続いて、中心導体3と対向して位置する放電ランプ5について説明する。図2(a)は、放電ランプの構成を示す断面図である。図2(a)に示すように、放電ランプ5は、マイクロ波により発光する発光物質53を内部に封入するための封止部51aと、封止部51aの両側へそれぞれ延びた中空軸部51bと、を有し、封止部51aおよび中空軸部51bが石英ガラスで形成された透明の発光管51と、中空軸部51bの中空部にそれぞれ配置され、封止部51a内に挿入された端部である先端電極52aが対向して配置されている導体52と、を有している。この放電ランプ5は、発光管51が長手方向を形成していて、封止部51aを中央にして封止部51aの両側に中空軸部51bが一直線状をなしている。また、発光物質53が封入されている封止部51aの内部と、中空軸部51bの中空部と、は封止されていて、封止部51aの内部には、発光物質53として、この場合水銀および希ガスのアルゴンが封入状態になっている。
【0024】
そして、導体52は、熱膨張係数が小さく高融点材料であるタングステン(W)で形成されている。導体52は、中心導体3から放射されたマイクロ波の電界成分を集中させるために設けてあるものであり、マイクロ波の電界成分を先端電極52aに集中すれば、封止部51aにおける発光物質53である水銀およびアルゴンの発光効率を高めることができる。このような放電ランプ5は、封止部51aをいわゆる点光源として発光する。
【0025】
また、放電ランプ5は、保持部材7(図1)によってリフレクター6(図1)とは絶縁された状態で保持されている。保持されている放電ランプ5の姿勢は、放電ランプ5の長手方向が中心導体3の延出方向に対して直交する方向、つまり光軸8と直交するように配置されている。このような姿勢で保持された放電ランプ5は、導体52がマイクロ波の振幅方向と同じ向きになっていて、導体52によってマイクロ波をより効率良く受信し、効率的に給電されることになる。さらに、放電ランプ5の封止部51aは、中心導体3と直接接続した状態ではなく、保持部材7および中空軸部51bによって、中心導体3から離間している状態となっていて、光軸8と直交する位置において、中心導体3と対向するように配置されている。放電ランプ5が中心導体3と離間している構成であれば、放電ランプ5において、封止部51aおよび導体52を自在な配置にすることが容易にできるため、マイクロ波をより効率良く受信することが可能となる。
【0026】
図1に戻って、光源装置1は、放電ランプ5の周りを囲むように、リフレクター6を備えている。リフレクター6は、同軸管4を挿入する孔部61aが設けられ略半球形状をなしている曲面状部61と、曲面状部61における略半球の開口側から円筒状に延出している筒状部62と、を有している。このリフレクター6は、曲面状部61の孔部61aを介して同軸管4へ固定されており、筒状部62の曲面状部61と反対側に、放電ランプ5からの光束を外部へ射出するための開口部62aを有している。
【0027】
リフレクター6は、アルミニウム(Al)で形成されていて、曲面状部61は、光学的に光束が平行光となる形状または焦点を結ぶ形状である放物面をなしていて、この放物面の焦点の位置に放電ランプ5の封止部51aを配置すれば、封止部51aから射出された光束を放物面で反射して、平行光として開口部62aの方向へ導出することができる。また、曲面状部61の放電ランプ5に面する側は、光束の反射率を向上させるように鏡面仕上げされていて、反射時の光学ロスを低減して放電ランプ5からの光束を効率良く反射することができるようになっている。
【0028】
そして、リフレクター6は、アルミニウム(Al)で形成されているため、放電ランプ5の発光により高温状態になっても、変形や反射率の低下等が発生しにくく、光束の反射を安定して維持することができる。さらに、リフレクター6は、アルミニウム(Al)の高熱伝導性により、放電ランプ5の発する熱を効率良く放散させる機能も有している。また、リフレクター6は、アルミニウム(Al)により、マイクロ波を反射または遮断することができ、マイクロ波が光源装置1の開口部62a以外から外部へ漏洩することを防止すると共に、マイクロ波を反射して、そのエネルギーを、放電ランプ5の発光のために、より効果的に供給することができる。
【0029】
ここで、リフレクター6は、アルミニウム(Al)の材料そのものの導電特性によるマイクロ波遮断機能に加え、マイクロ波が筒状の形状を通過しにくいという特性を利用して、開口部62aからのマイクロ波漏洩を抑制する機能も有している。図2(b)は、光源装置の筒状部の設定を示す断面図である。図2(b)に示すように、筒状部62は、円筒状の内径Dと、放電ランプ5の光軸8方向の端から開口部62aまでの距離Lと、によって規定される形状である。
【0030】
このような筒状部62において、内径Dとマイクロ波の波長λとの関係は、理論上、D=λ/2のときには、マイクロ波は、リフレクター6の開口部62aにて波の節になって共振し、大部分が反射してリフレクター6内にとどまることになる。また、D<λ/2のときは、マイクロ波は、リフレクター6の開口部62aでは共振部分がなく、大部分が外部に出て行くことができない状態となる。従って、D≦λ/2とすることで、光源装置1からのマイクロ波の漏洩を抑制することが可能である、という知見が得られた。
【0031】
一方、筒状部62の開口部62aからのマイクロ波漏洩については、D≦λ/2を前提にして、距離Lと内径Dとの関係から実験により求めることができ、発明者である筆者らにより実験結果が開示されている。開示によれば、L/Dの値を変えたときのマイクロ波は、L/Dの値が大きくなるに従い、マイクロ波の減衰効果が大きくなる。つまり、マイクロ波の漏洩が少なくなる。例えば、およそL/D=3.6の設定で、50dBの減衰効果を得られ、L/D≧0.8の設定では、20dB以上のマイクロ波漏洩減衰効果が得られている。光源装置1において、20dBの減衰効果があれば、漏洩したマイクロ波の量は、規定した規格を満足するため、いわゆる不要輻射を防止できることが確認されている。このことから、20dB以上のマイクロ波漏洩減衰効果を得るには、D≦λ/2およびL/D≧0.8の関係を満足すれば良いことが導かれる。
【0032】
以下、実施形態1における光源装置1の主要な効果をまとめて記載する。
【0033】
(1)光源装置1は、放電ランプ5が保持部材7でリフレクター6に保持され中心導体3から離間している状態であって、放電ランプ5を自在な姿勢で配置することが可能である。そのため、放電ランプ5は、この場合、中心導体3の延出方向に対して直交方向に導体52を配置することが容易に行える。これにより、光源装置1は、放電ランプ5がマイクロ波を効率良く受信し十分な給電効果を得て、効率的な発光をすることができる。
【0034】
(2)放電ランプ5は、導体52がマイクロ波の振幅方向と同方向に延在するように配置されており、マイクロ波をより効率良く受信できるため、強力な発光が可能である。このような姿勢で放電ランプ5を配置することも、中心導体3と放電ランプ5とが離間していることにより、容易に行うことができる。
【0035】
(3)リフレクター6は、アルミニウム(Al)製であるため、マイクロ波の外部漏洩を抑制することができる。また、アルミニウム(Al)は、熱伝導性が良好であるため、リフレクター6は、放電ランプ5が発する熱をすばやく放散することができ、光源装置1の過熱を防止する役割を果たすこともできる。
【0036】
(4)光源装置1は、マイクロ波による給電により放電ランプ5を発光させているため、給電開始と共に、より迅速に、高輝度の発光を行うことができる。
(実施形態2)
【0037】
次に、光源装置の他の形態である実施形態2について説明する。図3は、実施形態2における光源装置の構成を示す断面図である。また、図4は、実施形態2における放電ランプの構成を示す断面図である。実施形態2の光源装置10では、図3に示す保持部材15による放電ランプ9の保持構成と、図4に示す封止部91aにおける導体92の配置形態と、が実施形態1の光源装置1と異なっているだけである。従って、光源装置10の放電ランプ9および保持部材15以外の構成部材は、実施形態1と同様の形態であり、図3および図4では実施形態1と同符号を付してある。また、光源装置10において、放電ランプ9は、リフレクター6に対して、実施形態1の放電ランプ5と同姿勢で配置されている。
【0038】
まず、光源装置10の放電ランプ9について先に説明する。図4に示すように、放電ランプ9は、マイクロ波により発光する発光物質53を内部に封入するための封止部91aと、封止部91aの両側へそれぞれ延びた中空軸部91bと、を有し、封止部91aおよび中空軸部91bが石英ガラスで形成された透明の発光管91と、中空軸部91bの中空部にそれぞれ配置され、封止部91a側の端部が封止部91aの内部へは挿入されておらず、封止部91aの外側部に位置するように配置されている導体92と、を有している。
【0039】
この場合、導体92の一方は、封止部91aと反対側の端部が中空軸部91bから突出した接続部92aとなっている。この放電ランプ9は、発光管91が長手方向を形成していて、封止部91aを中央にして封止部91aの両側に中空軸部91bが一直線状をなしている。また、封止部91aの内部には、発光物質53として、この場合水銀および希ガスのアルゴンが封入状態になっている。
【0040】
そして、導体92は、熱膨張係数が小さく高融点材料であるタングステン(W)で形成され、中心導体3から放射されたマイクロ波の電界成分を集中させるために設けてある。マイクロ波の電界成分を集中させれば、封止部91aの水銀およびアルゴンの発光効率をより高めることができる。導体92は、実施形態1の導体52の場合とは異なり、その端部が封止部91aに封入されている水銀およびアルゴンと直接接触しない構成となっているが、この構成であっても、マイクロ波の電界成分を集中させて、実施形態1の導体52の場合とほぼ同等に近い発光をすることができる。なお、この放電ランプ9は、封止部91aをいわゆる点光源として発光するタイプに属する。
【0041】
また、放電ランプ9は、図3に示すように、保持部材15によってリフレクター6に保持されている。保持部材15には、一方の導体92が有する接続部92aが保持部材15を貫通して挿入されていて、保持部材15を貫通した接続部92aは、リフレクター6と電気的に導通状態となっている。導体92の接続部92aとリフレクター6とが電気的に導通していることにより、マイクロ波によって封止部91aの水銀およびアルゴンが発光する際に生じる電磁波を補足してリフレクター6へ導き、外部への電磁波漏洩を抑制することができる。このように、放電ランプ9の封止部91aが、保持部材15および中空軸部91bによって保持され、中心導体3と離間している構成であれば、放電ランプ9の導体92をリフレクター6と導通させる構成であっても、放電ランプ9を容易に配置することが可能である。
【0042】
以下、実施形態2における光源装置10の主要な効果をまとめて記載する。
【0043】
(1)光源装置10において、放電ランプ9の有する導体92は、封止部91aの外部側に設けられていて、封止部91aの内部側へ挿入されていない。そのため、導体92は、発光部材である水銀およびアルゴンの発光による高温および反応から回避でき、劣化も抑制されて、長期の使用に耐えられる。これにより、放電ランプ9は、より長寿命なものになる。
【0044】
(2)光源装置10は、一方の導体92とリフレクター6とが、接続部92aによって、電気的に導通している構成である。これにより、マイクロ波によって発光する際に生じる電磁波を、いわゆるグランドとしてのリフレクター6へ導いて、外部への電磁波漏洩をより効果的に抑制することができる。
【0045】
次に、光源装置1または光源装置10を備えた投射型表示装置の例として、プロジェクターについて説明する。図5は、光源装置を搭載したプロジェクターの構成を示す模式図である。図5に示すように、プロジェクター20は、この場合、光源装置1を備えたものであって、インテグレーター照明部21と、色分離部22と、リレー光学部23と、3つの液晶パネル部242R,242G,242Bを光学変調素子として有する光学変調部24と、を備えている。そして、光学変調部24は、投射部25と接続されている。なお、液晶パネル部242R,242G,242Bは、液晶パネルおよび偏向フィルター等を含んでいる。
【0046】
インテグレーター照明部21は、光源装置1から光束を射出し、光学変調部24において、光束が、赤、緑、青の色光にそれぞれ対応して設けられている3つの液晶パネル部242R,242G,242Bの画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系である。そのために、光源装置1の先端部には、光学部材211としてのレンズ群が設けられている。この場合、光学部材211のレンズ群は、光源装置1の側から、第1レンズアレイ、第2レンズアレイ、偏向変換素子、重畳レンズを有している。なお、光源装置1は、図1を参照して既述したように、放電ランプ5が中心導体3から離間し、光束の射出方向である光軸8に対して直交した姿勢で配置されている。
【0047】
そして、色分離部22は、2枚のダイクロイックミラー221,222と、反射ミラー223とを備え、ダイクロイックミラー221,222によりインテグレーター照明部21から射出された複数の部分光束を赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。この時、色分離部22のダイクロイックミラー221では、インテグレーター照明部21から射出された光束の赤色光成分と緑色光成分とが透過し、青色光成分が反射する。ダイクロイックミラー221によって反射した青色光は、反射ミラー223で反射し、青色用の液晶パネル部242Bに到達する。ダイクロイックミラー221を透過した緑色光は、ダイクロイックミラー222によって反射し、緑色用の液晶パネル部242Gに到達する。一方、ダイクロイックミラー221,222を透過した赤色光は、リレー光学部23へ進む。
【0048】
リレー光学部23は、入射側レンズ231と、反射ミラー232と、リレーレンズ233と、反射ミラー234とを順に備え、色分離部22で分離された色光の内、液晶パネル部242Rまでの経路の長い色光を導く機能を有する光学系であり、ここでは、赤色光を導いている。
【0049】
次の光学変調部24は、3つの液晶パネル部242R,242G,242Bによって、それぞれの色光を画像情報に応じて変調することにより光学像を形成し、さらに、クロスダイクロイックプリズム241によって、色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するための光学系である。このようにして形成されたカラー画像は、投射部25の投射レンズによって拡大して投射され、スクリーン等に映像として映し出される。
【0050】
このような光源装置1を備えたプロジェクター20は、以下のような効果を有する。
【0051】
(1)プロジェクター20において、光源装置1は、放電ランプ5を自在な姿勢で配置することが可能であって、導体52を中心導体3から離間して、中心導体3に対して直交方向に配置することが容易に行える。これにより、プロジェクター20は、光源装置1の放電ランプ5がマイクロ波を効率良く受信して十分な給電効果を得て、効率的な発光をするため、高輝度のより明るい映像を投射することができる。
【0052】
(2)プロジェクター20は、光源装置1における放電ランプ5の発光をより迅速に開始できるため、映像投射までの待ち時間を短縮することができる。
【0053】
また、光源装置1,10および投射型表示装置であるプロジェクター20は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0054】
(変形例1)光源装置1において、放電ランプ5の導体52は、それぞれの端部が封止部51aに挿入され、且つ、リフレクター6と絶縁状態である。しかし、この構成に限定されるものではなく、放電ランプ5の導体52は、その一方または両方がリフレクター6と導通状態であっても良い。また、放電ランプ5の導体52は、封止部51aの両側にそれぞれ配置された構成に限定されず、いずれか一方にのみ配置され、リフレクター6と絶縁状態である構成であっても良い。さらに、いずれか一方にのみ配置された導体52がリフレクター6と導通状態であっても良い。これにより、光源装置1は、マイクロ波の種類、リフレクター6の形状、放電ランプ5の発光物質53等に応じて、選択肢を広げられ、最適な構成とすることが可能である。
【0055】
(変形例2)同様に、光源装置10において、放電ランプ9の導体92は、それぞれの端部が封止部91aの外部側に設けられ、且つ、一方の導体92がリフレクター6と導通状態であるが、この構成に限定されるものではなく、変形例1における光源装置1に準じて、構成の選択肢を広げても良い。
【0056】
(変形例3)光源装置1,10において、放電ランプ5,9の導体52,92をなくし、放電ランプ5,9を完全な無電極のランプとしても良い。導体52,92がなくても、封止部51a,91aの発光物質53は、低輝度となるがマイクロ波により発光することが可能である。
【0057】
(変形例4)放電ランプ5,9の導体52,92は、高融点材であれば、タングステン(W)以外のモリブデン(Mo)、ステンレス合金等を用いても良い。
【0058】
(変形例5)光源装置1,10のマイクロ波電源2で生成されるマイクロ波は、周波数が2.45GHz、波長λが12.2cmのTEMモードの高周波であるが、これ以外の周波数および波長のマイクロ波であっても良い。
【0059】
(変形例6)放電ランプ5,9において、封止部51a,91a内に封止する発光物質53は、水銀およびアルゴンを用いているが、これ以外のナトリウム等の金属ハロゲン化合物やネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスを用いても良い。
【0060】
(変形例7)リフレクター6は、アルミニウム(Al)で形成され、曲面状部61の放電ランプ5に面する側を鏡面仕上げして光束の反射率を高めているが、曲面状部61の放電ランプ5に面の表面に酸化チタンや酸化ケイ素等の誘電体多層膜を形成し、光束をより高率で反射させるようにした構成であっても良い。
【0061】
(変形例8)プロジェクター20は、光源装置1を備えているが、光源装置10を備えれば、放電ランプ9の有する導体92がより長寿命となるため、放電ランプ9の交換までの期間を長くすることができ、交換の煩わしさを軽減できる。これにより、プロジェクター20の経済的効果を向上させることが可能である。
【0062】
(変形例9)プロジェクター20は、光学変調素子として液晶パネルを用いているが、液晶パネル以外のマイクロミラーアレイデバイス等を用いた方式のものであっても良い。これにより、種々の光学変調素子を有するプロジェクターに光源装置1,10を搭載することができ、いずれの場合においても、プロジェクターの高輝度化、マイクロ波の漏洩抑制等に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の光源装置1,10は、マイクロ波で発光する放電ランプ5,9を、効率的な給電ができるように、中心導体3から離間させて自在に配置が可能な構成であるため、高輝度な発光を得られる。また、マイクロ波の外部漏洩を抑制することもできる。これにより、プロジェクター20への適用のほか、露光用や洗浄用の光源、大型広告板や案内板の照明光源、自動車のヘッドライト等に広く応用することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…光源装置、2…マイクロ波電源、3…中心導体、5…発光体としての放電ランプ、6…リフレクター、7…保持部材、9…発光体としての放電ランプ、10…光源装置、20…投射型表示装置としてのプロジェクター、51…発光管、52…導体、53…発光物質、61…曲面状部、62…筒状部、62a…開口としての開口部、91…発光管、92…導体、92a…接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を生成するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波を放射する中心導体と、
前記マイクロ波により発光する発光体と、を備え、
前記中心導体と前記発光体とが離間して配置されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記発光体は、前記マイクロ波により発光する発光部材を封入した封止部と、少なくとも1本の導体と、を有していることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光源装置において、
前記発光体は、前記導体が前記封止部の外部側に設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光源装置において、
前記発光体を内設し、一方の端に開口を有して少なくとも一部が導電性材で形成され、前記発光体から射出される光束を前記開口へ向けて反射するリフレクターを備え、
前記導体の少なくとも1本が前記リフレクターと電気的に導通していることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置において、
前記発光体から射出される光束の光軸上に光を集光または偏向する光学部材をさらに備え、前記光学部材が前記開口に設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
マイクロ波を生成するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波を放射する中心導体と、
前記マイクロ波により発光する発光体と、を有し、
前記中心導体と前記発光体とが離間して配置されている構成の光源装置を備えていることを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−175748(P2011−175748A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36942(P2010−36942)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】