説明

光源装置

【課題】マイクロ波の漏洩を低減するとともに、光源装置全体を小型化することが可能な構造を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置1は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、マイクロ波の入力を受けて発光する発光物質が充填される発光空間Kを有した発光管10と、発光空間Kを挟んで発光管10の一方の側に設けられ、マイクロ波電源に電気的に接続された第1電極11aと、発光空間Kを挟んで発光管10の他方の側に設けられた第2電極11bと、第2電極11bの発光管10に設けられた側と反対の側の端部に電気的に接続され、マイクロ波によって発生する電界の一部を打ち消すように配置された補助線30と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターに用いられる光源装置として、マイクロ波放電方式を用いた無電極放電ランプの開発が盛んに行われている。無電極放電ランプは、従来の白熱灯や高圧水銀ランプ等の電極放電式ランプと異なり発光管内部に放電用の電極を有していないため、フィラメントや電極の消耗が抑制され、長寿命光源として期待されている。
【0003】
このような無電極放電ランプとしては、マイクロ波にアンテナの原理を利用した共振をさせて、ランプの発光部にマイクロ波のエネルギーを供給して発光させる構造がある。例えば、特許文献1及び2では、内部に発光物質が封入された発光管に一対の電極を突出させ、所定の間隔を有して対向配置させることにより、発光管の中心の発光部に高インピーダンス部を形成している。そして、一対の電極の一方にマイクロ波発生用の電源を接続し、発光管内部の高インピーダンス部にマイクロ波を供給することにより、強い電界を発生して発光部から光を射出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【特許文献2】特開2007−115547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、アンテナの原理を利用して発光させる構造であるため、発光部から光を射出させるとともに、供給するマイクロ波が外部へ漏洩してしまい、他の電子機器、さらには人体に悪影響を与えてしまう場合がある。また、従来の光源装置は、ランプの全長がマイクロ波の波長に応じた長さとなるため、装置全体を小型化することが困難な場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、マイクロ波の漏洩を低減するとともに、光源装置全体を小型化することが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の光源装置は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の入力を受けて発光する発光物質が充填される発光空間を有した発光管と、前記発光空間を挟んで前記発光管の一方の側に設けられ、前記マイクロ波電源に電気的に接続された第1電極と、前記発光空間を挟んで前記発光管の他方の側に設けられた第2電極と、前記第2電極の前記発光管に設けられた側と反対の側の端部に電気的に接続され、前記マイクロ波によって発生する電界の一部を打ち消すように配置された補助線と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、補助線を設けることで、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発光管の周辺に発生する電界の一部が打ち消されるので、漏洩電波を低減させることができる。本願発明者は、所定の条件の下、マイクロ波の周波数を1.5〜4.0GHzの範囲で、発光管の支持部の長さと補助線の長さとを所定の長さに調整して本発明に係る光源装置の入力端のインピーダンス整合のシミュレーションを行った。その結果、本願発明者は、本発明に係る光源装置に使用する周波数2.4GHzで従来に比較して入力端のインピーダンスの整合がとれることを確認し、このときの支持部の長さと補助線の長さとの関係を見出した。これにより、補助線の長さを所定の長さにすることで、従来の光源装置よりも支持部の長さを短くし、結果としてランプの全長を短くすることができる。また、本願発明者は、上記シミュレーションを行い、補助線を設けることによって、漏洩電波の放射性能が低下することを見出した。したがって、漏洩電波を低減させるとともに、光源装置全体を小型化することが可能な構造が提供できる。
【0008】
本発明においては、前記補助線は、前記発光管の長手方向に対して垂直な立ち上がり部と、前記立ち上がり部に接続され前記発光管の長手方向に対して平行な本線部と、を有していることが望ましい。
この構成によれば、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発生する電界の方向と平行な本線部を備えるので、マイクロ波によって発生する電界の方向に対して逆方向の電界によって電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。
【0009】
本発明においては、前記補助線は、前記立ち上がり部と前記本線部とが折り返された屈曲部を複数有していることが望ましい。
この構成によれば、補助線が複数回折り返されるので、電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。また、補助線の本線部の長さが1回のみ折り返す場合の本線部の長さに対して短くでき、結果として光源装置全体を小型化することが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記本線部の長手方向の距離が、前記発光管の長手方向の距離より長いことが望ましい。
この構成によれば、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発生する電界の方向と平行な本線部が長いので、電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。
【0011】
本発明においては、前記補助線が、細線形状からなることが望ましい。
この構成によれば、発光部から射出される光のブロッキングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の光源装置の概略構成を示した模式図である。
【図2】第1実施形態の光源装置のスミスチャートである。
【図3】第1実施形態の光源装置の支持部の長さと補助線の長さの関係図である。
【図4】第2実施形態の光源装置の概略構成を示した模式図である。
【図5】従来の光源装置の概略構成断面図である。
【図6】従来の光源装置のスミスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0014】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る光源装置の概略を示す模式図である。図1(a)は、図1(b)のB−B線に沿った断面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A線に沿った断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態の光源装置1は、マイクロ波励起ランプ15と、マイクロ波励起ランプ15の一方の側に接続された補助線30と、マイクロ波励起ランプ15の他方の側に接続された同軸ケーブル20とを備えている。同軸ケーブル20のマイクロ波励起ランプ15の接続された側と反対の側には、マイクロ波を出力するマイクロ波電源(図示略)が接続されている。このマイクロ波電源から同軸ケーブル20を介して入力されるマイクロ波によってマイクロ波励起ランプ15が発光する。
【0015】
マイクロ波励起ランプ15は、発光管10と、発光管10内に配置される一対の電極11a(第1電極)、11b(第2電極)とを備えている。発光管10は、中央部分が球状に膨出した発光部10aと、発光部10aの両側に延在する細管状の支持部10b,10cとを有して構成されている。発光管10は、例えば石英ガラス等の絶縁材料から形成されている。
【0016】
発光部10a内に形成された発光空間Kには、マイクロ波の入力を受けて発光する発光物質が充填されている。発光物質としては、例えば水銀、希ガス、ハロゲン化合物を用いることができる。なお、発光物質を超高圧に封入することで、マイクロ波の励起によって十分な輝度を得ることができる。
【0017】
第1電極11aは、支持部10b内に挿入され、同軸ケーブル20を介してマイクロ波電源と電気的に接続されている。一方、第2電極11bは、支持部10c内に挿入されている。電極11a,11bは発光部10aの発光空間K内において互いの先端部を対向させて、所定の間隔(以下、ギャップという。)を有して配置されている。なお、電極11a,11bの先端部のギャップは、なるべく小さくするのがよい。これにより、点光源に近い高輝度発光を得ることができる。電極11a,11bの形成材料は、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い導電性材料、例えばタングステンを用いることができる。
【0018】
補助線30は、第2電極11bの支持部10に設けられた側と反対の側の端部に接続されている。補助線30は、補助線30の形状が維持できる程度の細線形状からなっている。これにより、発光部10aから射出される光のブロッキングを抑制することができる。補助線30の形成材料は、例えば金属等の導電性材料を用いることができる。補助線30の接続方法としては、例えば溶接、カシメが挙げられる。
【0019】
また、補助線30は、発光管10の長手方向に対して垂直な立ち上がり部30aと、立ち上がり部30aに接続され発光管10の長手方向に対して平行な本線部30bと、立ち上がり部30aと本線部30bとが折り返された屈曲部30cと、を有している。これにより、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発生する電界の方向に対して逆方向の電界によって電界の一部を効果的に打ち消すことができる。
【0020】
同軸ケーブル20は、内部導体21と、内部導体21を覆う外部導体22と、内部導体21と外部導体22との間に介在する誘電体23とから構成されている。内部導体21及び外部導体22の形成材料は、例えば銅が用いられる。誘電体23の形成材料は、例えばマイクロ波に対して誘電体損失の少ないPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。
【0021】
次に、図1(a)及び図1(b)に示すそれぞれの寸法について説明する。寸法Hは、マイクロ波励起ランプ15の長手方向の距離(発光管の長手方向の距離、以下、ランプの全長という。)である。寸法Lは、支持部10b,10cの長手方向の距離(以下、支持部の長さという。)である。寸法Mは、寸法M1と寸法M2とを足し合わせた長さ(以下、補助線の長さという。)である。寸法M1は、補助線30の立ち上がり部30aの中心軸の長さ(以下、立ち上がり部の長さという。)である。寸法M2は、補助線30の本線部30bの中心軸の長さ(以下、本線部の長さという。)である。なお、本線部の長さM2は、ランプの全長Hより長くなっている(ランプの長さH<本線部の長さM2)。これにより、電界の一部を効果的に打ち消すことができる。
【0022】
ここで、支持部の長さLのうち、寸法L1は支持部10bの長さであり、寸法L2は支持部10cの長さである。なお、支持部の長さL1,L2は略同じ長さになっている。これにより、発光管10の左右の向きがどちらでもよくなるので、発光管10の左右の向きを合わせる必要がなく、製造効率を向上させることができる。
【0023】
そして、本願発明者は、所定の条件の下、マイクロ波の周波数を1.5〜4.0GHzの範囲で、発光管10の支持部の長さLと補助線の長さMとを所定の長さに調整して本発明に係る光源装置1の入力端のインピーダンス整合のシミュレーションを行った。その結果、本願発明者は、本実施の形態である光源装置1に使用する周波数が2.4GHzで従来に比較して入力端のインピーダンスの整合がとれることを確認し、このときの支持部の長さLと補助線の長さMとの関係を見出した。これにより、補助線の長さMを所定の長さにすることで、従来の光源装置1000(図5)よりも支持部の長さLを短くし、結果としてランプの全長Hを短くすることができる。
【0024】
ここで、従来の光源装置について説明する。図5は、従来の光源装置1000の概略構成を示す模式図である。本図は、図1(a)に対応した、従来の光源装置1000の断面構成を表した図である。図1(a)と同様の要素には同一の記号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】
図5に示すように、光源装置1000は、マイクロ波励起ランプ1015と、マイクロ波励起ランプ1015の一方の側に接続された同軸ケーブル1020とを有して構成されている。符号1010は発光管、符号1010aは発光部、符号1010b,1010cは支持部、符号1011a,1011bは電極、符号1021は内部導体、符号1022は外部導体、符号1023は誘電体である。寸法Hはマイクロ波励起ランプ1015の全長、寸法Lは支持部1010b,1010cのそれぞれの長さである。従来の光源装置1000は、補助線30を有していない点で本実施形態の光源装置1と異なる。
【0026】
光源装置1000は、発光空間Kに一対の電極1011a,1011bを突出させ、所定の間隔を有して対向配置させることにより、アンテナの原理を利用して発光部1010aに高インピーダンス部を形成している。また、光源装置1000のランプの全長Hは、マイクロ波の実効波長の略1/2の長さとなっている。つまり、マイクロ波の実効波長をλとすると、ランプの全長Hが「H=nλ/2、ここでnは奇数」を満たしている。このため、光源装置1000はプロジェクター等の光学機器への実装において占有体積が大きくなってしまい、小型化することが困難な場合があった。
【0027】
次に、従来の光源装置1000について本願発明者が行った光源装置1000の入力端のインピーダンス整合のシミュレーションの結果を説明する。図6は、従来の光源装置1000のスミスチャート(インピーダンスチャート)を示した図である。なお、シミュレーションの条件(各種パラメータ)は、比誘電率:80+30j、シミュレーション方法:有限積分法、シミュレーション空間の境界条件:完全吸収境界、周波数:1.5〜4.0GHz、信号入力:50Ω同軸線路による入力、である。なお、周波数は1.5〜4.0GHzの範囲である。また、ランプの全長Hは42.6mm、支持部の長さLは18mmに設定している。
【0028】
光源装置の入力端のインピーダンスはR±jX(実数+虚数)で表される。図6のスミスチャート上にプロットされるインピーダンスの座標が、中心の正規化インピーダンス1Ωに近づくにつれて、光源装置の入力端のインピーダンス整合が向上される(インピーダンスマッチングが行われる)。一方、図6中の外周円側(周囲側)では不整合となり光源装置にマイクロ波が入力されること無く反射される。
【0029】
図6中の記号○は、周波数1.5GHzにおける光源装置1000の入力端のインピーダンスの座標(1.40,−56.37)を示している。この場合は基準が50ΩなのでRパートの1.40を基準の50で割って正規化すると0.03、jパートの56.37を同様に正規化すると1.13となり、それぞれの座標が求まる。よって、横軸の0.03とマイナス側(横軸の下側)の1.13の交点が、周波数1.5GHzにおける光源装置1000の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0030】
また、図6中の記号△は、光源装置1000で使用する周波数2.4GHzにおける入力端のインピーダンスの座標(18.28,−32.41)を示している。正規化すると、Rパートの座標は0.37、jパートの座標は0.65となる。よって、横軸の0.37とマイナス側(横軸の下側)の0.65の交点が、周波数2.4GHzにおける光源装置1000の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0031】
また、図6中の記号□は、周波数4.0GHzにおける光源装置1000の入力端のインピーダンスの座標(5.81,13.57)を示している。正規化すると、Rパートの座標は0.12、jパートの座標は0.27となる。よって、横軸の0.12とプラス側(横軸の上側)の0.27の交点が、周波数4.0GHzにおける光源装置1000の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0032】
図6中の実線は、周波数範囲1.5〜4.0GHzにおける光源装置1000の入力端のインピーダンスの軌跡を示している。図6に示すように、周波数1.5〜2.4GHzの範囲では、周波数が大きくなるにつれ、容量性から誘導性に変化し、円の中心の1Ωへ向かってシフトしている(図6中○→△)。一方、周波数2.4〜4.0GHzの範囲では、周波数が大きくなるにつれ、円の中心から離れ、途中から円の外周に沿って移動している(図6中△→□)。
【0033】
しかしながら、スミスチャートの円の中心から光源装置1000で使用する周波数2.4GHzにおける座標(図6中△)を見ると、それほど近くにはない(光源装置1000の入力端のインピーダンス整合が向上しているとはいえない)ことが確認される。
【0034】
そこで、本願発明者は、従来技術の光源装置1000のマイクロ波励起ランプ1015の一方の側に補助線30を設けることで、光源装置全体を小型化し、入力端のインピーダンス整合をとれる条件となる支持部の長さLと補助線の長さMの関係を見出した。
【0035】
次に、本実施形態の光源装置1について本願発明者が行った入力端のインピーダンス整合のシミュレーションの結果を説明する。図2は、図6に対応した、光源装置1のスミスチャート(インピーダンスチャート)を示した図である。図6と同様の要素には同一の記号を付し、詳細な説明を省略する。なお、本シミュレーションにおいて、ランプの全長Hは16.6mm、支持部の長さLは5.5mm、補助線の長さMは26mmに設定している。
【0036】
図2中の記号○は、周波数1.5GHzにおける光源装置1の入力端のインピーダンスの座標(2.17,−46.94)を示している。正規化すると、Rパートの座標は0.04、jパートの座標は0.94となる。よって、横軸の0.04とマイナス側(横軸の下側)の0.94の交点が、周波数1.5GHzにおける光源装置1の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0037】
また、図2中の記号△は、本実施形態の光源装置1で使用する周波数2.4GHzにおける入力端のインピーダンスの座標(46.50,16.07)を示している。正規化すると、Rパートの座標は0.93、jパートの座標は0.32となる。よって、横軸の0.93とプラス側(横軸の上側)の0.32の交点が、周波数2.4GHzにおける光源装置1の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0038】
また、図2中の記号□は、周波数4.0GHzにおける光源装置1の入力端のインピーダンスの座標(7.87,12.85)を示している。正規化すると、Rパートの座標は0.16、jパートの座標は0.26となる。よって、横軸の0.16とプラス側(横軸の上側)の0.26の交点が、周波数4.0GHzにおける光源装置1の入力端の正規化インピーダンスの座標となる。
【0039】
図2中の実線は、周波数範囲1.5〜4.0GHzにおける光源装置1の入力端のインピーダンスの軌跡を示している。図2に示すように、周波数1.5〜2.4GHzの範囲では、周波数が大きくなるにつれ、容量性から誘導性に変化し、円の中心の1Ωへ向かってシフトしている(図2中○→△)。一方、周波数2.4〜4.0GHzの範囲では、周波数が大きくなるにつれ、円の中心から離れ、途中から円の外周に沿って移動している(図2中△→□)。
【0040】
図2と図6(従来の光源装置のスミスチャート)とを比較すると、図2のほうが、周波数2.4GHzにおける座標(図2中△)が円の中心の1Ωに近くなっている。すなわち、スミスチャートの円の中心から周波数2.4GHzにおける座標(図2中△)を見ると、従来に比較してjパートを減少させるとともにRパートを50Ω(1Ω)に近づけることができる(入力端のインピーダンス整合が向上している)ことが確認される。したがって、スミスチャートからも、本実施形態の光源装置1は従来の光源装置1000より、2.4GHzにおける入力端のインピーダンス整合が向上していることが確認される。
【0041】
次に、本実施形態の光源装置1について、周波数2.4GHzで入力端のインピーダンスを整合させた際の支持部の長さLと補助線の長さMの関係について説明する。図3は、支持部の長さLと補助線の長さMの関係を示した図である。図3中の横軸が支持部の長さL(mm)、縦軸が補助線の長さM(mm)を表している。なお、支持部の長さLは支持部10b,10cの一方の長さ、言い換えると、支持部の長さL1,L2の一方を示している。本実施形態では、支持部の長さL1,L2は略同じ長さになっている。
【0042】
図3中の実線は、補助線無し(従来の光源装置)を起点とし、補助線30を設けて補助線の長さMを長くさせ、且つ前述のように本発明に係る光源装置のインピーダンス整合が得られるように光源装置の支持部の長さLを変化させた時の状況を示している。図3に示すように、補助線無しから補助線の長さMが26mmの範囲では、補助線の長さMが長くなるにつれ、支持部の長さLが短くなる状況を示している。補助線の長さMが26mmのとき、支持部の長さLは5.5mmとなっている。
【0043】
また、本実施形態の光源装置1のランプの全長Hは16.6mmであり、従来の光源装置1000のランプの全長Hが42.6mmであるのに対して約40%の長さに短縮されている。したがって、本実施形態の光源装置1と従来の光源装置1000のランプの全長の関係からも、本実施形態の光源装置1は従来の光源装置1000より光源装置全体を小型化できることが確認される。
【0044】
なお、本願発明者は、上記シミュレーションを行い、補助線30を設けることによって、漏洩電波の放射性能が低下することを見出した。本実施形態の光源装置1の漏洩電波の放射性能は、従来の光源装置1000の漏洩電波の放射性能に対して約18%となっていることが確認された。したがって、本実施形態の光源装置1は従来の光源装置1000より漏洩電波を格段に低減することができる。
【0045】
本実施形態の光源装置1によれば、補助線30を設けることで、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発光管10の周辺に発生する電界の一部が打ち消されるので、漏洩電波を低減させることができる。本願発明者は、所定の条件の下、マイクロ波の周波数を1.5〜4.0GHzの範囲で、発光管10の支持部の長さLと補助線の長さMとを所定の長さに調整して本発明に係る光源装置1の入力端のインピーダンス整合のシミュレーションを行った。その結果、本願発明者は、本発明に係る光源装置1に使用する周波数が2.4GHzで従来に比較して光源装置1の入力端のインピーダンスの整合がとれることを確認し、このときの支持部の長さLと補助線の長さMとの関係を見出した。これにより、補助線の長さMを所定の長さにすることで、従来の光源装置1000よりも支持部の長さLを短くし、結果としてランプの全長Hを短くすることができる。また、本願発明者は、上記シミュレーションを行い、補助線30を設けることによって、漏洩電波の放射性能が低下することを見出した。したがって、漏洩電波を低減させるとともに、光源装置全体を小型化することが可能な構造が提供できる。
【0046】
また、この構成によれば、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発生する電界の方向と平行な本線部30bを備えるので、マイクロ波によって発生する電界の方向に対して逆方向の電界によって電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。
【0047】
また、この構成によれば、マイクロ波電源から出力されたマイクロ波によって発生する電界の方向と平行な本線部30が長い(ランプの長さH<本線部の長さM2)ので、電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。
【0048】
また、この構成によれば、補助線30が細線形状からなるので、発光部10aから射出される光のブロッキングを抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態の光源装置1は、補助線30が立ち上がり部30aと、本線部30bとを有する構造であるが、これに限らない。例えば、補助線30が立ち上がり部30aのみを有する構造でもよい。発光管10の長手方向に垂直な成分の立ち上がり部30aを設けることにより、発光管10の長手方向に平行な成分の本線部30bを設けなくても漏洩電波を低減させることができると本願発明者は推測している。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光源装置について、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。図4(a)は、図4(b)のD−D線に沿った断面図である。図4(b)は、図4(a)のC−C線に沿った断面図である。なお、図4(a)は、図1(a)に対応した、光源装置2の概略構成を示す断面図である。また、図4(b)は、図1(b)に対応した、光源装置2の概略構成を示す断面図である。本実施形態では、補助線31が、屈曲部31g,31h,31i,31j,31kを複数有している点で上述の第1実施形態で説明した光源装置1と異なっている。その他の点は第1実施形態と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図4(a)及び図4(b)に示すように、光源装置2は第1実施形態の光源装置1と異なり、補助線31が複数の屈曲部31g,31h,31i,31j,31kを有している。具体的には、補助線31は、発光管10の長手方向に対して垂直な立ち上がり部31a,31b,31cと、発光管10の長手方向に対して平行な本線部31d,31e,31fと、を有している。そして、立ち上がり部31a,31b,31cと本線部31d,31e,31fとがそれぞれ折り返された屈曲部31g,31h,31i,31j,31kを有している。すなわち、光源装置2は補助線31が5つの屈曲部31g,31h,31i,31j,31kで折り返されている。
【0052】
次に、図4(a)及び図4(b)に示すそれぞれの寸法について説明する。寸法Nは、寸法N1,N2,N3,N4,N5,N6を足し合わせた長さ(以下、補助線の長さという。)である。寸法N1,N2,N3は、それぞれ立ち上がり部31a,31b,31cの中心軸の長さ(以下、立ち上がり部の長さという。)である。寸法N4,N5,N6は、それぞれ本線部31d,31e,31fの中心軸の長さ(以下、本線部の長さという。)である。
【0053】
なお、本線部の長さN4,N5,N6は、それぞれランプの全長Hより短くなっている。また、本線部の長さN4,N5,N6はそれぞれランプの全長Hの範囲内で任意の長さに適宜設定することができる。また、立ち上がり部の長さN1,N2,N3は、それぞれ任意の長さに適宜設定することができる。
【0054】
本実施形態の光源装置2によれば、補助線31が複数回折り返されるので、電界の一部を効果的に打ち消すことができる。その結果、漏洩電波を格段に低減させることが可能な構造が提供できる。また、補助線の本線部の長さN4,N5,N6が、第1実施形態で示した1回のみ折り返す場合の本線部の長さM2に対してそれぞれ短くでき、結果として光源装置全体を小型化することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の光源装置2は、補助線31が5つの屈曲部31g,31h,31i,31j,31kを有しているが、これに限らない。例えば、補助線31が2つの屈曲部、3つの屈曲部を有していてもよい。すなわち、補助線31が屈曲部を複数有してさえいればよく、任意の数に適宜設定することができる。
【0056】
なお、本発明の光源装置は、補助線を1本のみ備えているが、これに限らず、例えば2本、3本、4本等、複数の補助線を備えていてもよい。このように、複数の補助線をバランスよく配置することで、補助線が1本のみの場合より漏洩電波を格段に低減させることができると本願発明者は推測している。
【0057】
なお、本発明の光源装置は、発光管10の形成材料として石英ガラスを用いる例を示したが、これに限らない。例えば、発光管10の形成材料としては、透明セラミックスや透明サファイアを用いてもよい。これにより、発光管10の光透過率や耐熱性を向上させることができる。
【0058】
なお、本発明の光源装置は、電極11a,11bの形成材料としてタングステンを用いる例を示したが、これに限らない。例えば、電極11a,11bのうち、支持部10b,10c内に配置される部分を箔状としてもよい。このとき、電極11a,11bにモリブデン製の金属箔を接続するのがよい。これにより、発光管10の形成材料の石英ガラスとの熱膨張率差を打ち消すことができ、発光空間K内の気密性を維持することが可能になる。
【0059】
なお、本発明の光源装置は、発光管の支持部の長さL1,L2が略同じ長さになっているが、これに限らない。例えば、支持部の長さL1,L2のうち、いずれか一方を短くしてもよい。
【0060】
なお、本発明の光源装置は、電極11a,11bが支持部10b,10c内にそれぞれ挿入され、発光部10aの発光空間K内において互いの先端部を対向させて、ギャップを有して配置されているが、これに限らない。例えば、電極11a,11bの互いの先端部をコイル状の連結部材で連結することにより配置してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,2…光源装置、10…発光管、11a…第1電極、11b…第2電極、30,31…補助線、30a,31a,31b,31c…立ち上がり部、30b,31d,31e,31f…本線部、30c,31g,31h,31i,31j,31k…屈曲部、H…ランプの全長(発光管の長手方向の距離)、K…発光空間、M2,N4,N5,N6…本線部の長さ(本線部の長手方向の距離)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の入力を受けて発光する発光物質が充填される発光空間を有した発光管と、
前記発光空間を挟んで前記発光管の一方の側に設けられ、前記マイクロ波電源に電気的に接続された第1電極と、
前記発光空間を挟んで前記発光管の他方の側に設けられた第2電極と、
前記第2電極の前記発光管に設けられた側と反対の側の端部に電気的に接続され、前記マイクロ波によって発生する電界の一部を打ち消すように配置された補助線と、を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記補助線は、前記発光管の長手方向に対して垂直な立ち上がり部と、前記立ち上がり部に接続され前記発光管の長手方向に対して平行な本線部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記補助線は、前記立ち上がり部と前記本線部とが折り返された屈曲部を複数有していることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記本線部の長手方向の距離が、前記発光管の長手方向の距離より長いことを特徴とする請求項2または3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記補助線が、細線形状からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−177011(P2010−177011A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17705(P2009−17705)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】