説明

光源装置

【課題】安価な構成とすることができ高効率にSC光を発生することができる光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置1は、ファイバレーザ光源10,光ファイバ20および光フィルタ30を備える。ファイバレーザ光源10は、波長1.55μm帯でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を種光として出力する。光ファイバ20は、ITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバである。光ファイバ20は、ファイバレーザ光源10の種光出力端と直接に又は光ファイバ光学系により接続されている。光ファイバ20は、ファイバレーザ光源10から出力された種光を第1端に入力して導光し、その種光の導光の際に発現する非線形光学現象により帯域を拡大された光を第2端から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバにおいて発現する非線形光学現象を利用して広帯域光を発生する光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高いパワーの光が光ファイバを導波する間に該光ファイバにおいて非線形光学現象が発現し、この非線形光学現象に因り帯域が拡大された広帯域光(スーパーコンティニューム光、以下「SC光」という。)が発生することが知られている。このようなSC光を発生する光源装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された光源装置で用いられる光ファイバは、波長分散が正常分散であると共にフラットな分散であるフォトニック結晶ファイバである。一般にフォトニック結晶ファイバは非線形効果が高い。そして、波長1μm帯でパルス幅10ps程度のパルスレーザ光がフォトニック結晶ファイバの第1端に入力されて、そのパルスレーザ光が導波する間に発現する非線形光学現象に因り帯域が拡大されたSC光が第2端から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−64940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載された光源装置は、非線形効果が高い特殊な光ファイバを用いるものであることから、この光ファイバと他の光学素子との光学的接続の際の損失が大きく、伝送損失も大きく、また、高価である。さらに、引用文献1に記載された光源装置は、パルス幅10ps程度の超短パルスレーザ光を種光として出力する種光源を必要とすることから、この点でも高価である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、安価な構成とすることができ高効率にSC光を発生することができる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光源装置は、(1) 波長1.55μm帯でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を種光として出力するファイバレーザ光源と、(2) ファイバレーザ光源の種光出力端と直接に又は光ファイバ光学系により接続され、ファイバレーザ光源から出力された種光を第1端に入力して導光し、その種光の導光の際に発現する非線形光学現象により帯域を拡大された光を第2端から出力するITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の光源装置は、シングルモード光ファイバの長さが0.1m〜5mであるのが好適である。本発明の光源装置は、シングルモード光ファイバの第2端から出力される光のうち種光を遮断する光フィルタを更に備えるのが好適であり、また、シングルモード光ファイバの第2端から出力される光のうち特定波長帯域の光を選択的に透過させる光フィルタを更に備えるのも好適である。本発明の光源装置は、ファイバレーザ光源の種光出力端とシングルモード光ファイバの第1端とが互いに融着接続されているのが好適である。また、本発明の光源装置は、シングルモード光ファイバのうち第2端から長さ2mまでの範囲で曲率半径が50mm以上であるのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光源装置は、安価な構成とすることができ、高効率にSC光を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の光源装置1の構成図である。
【図2】本実施形態の光源装置1の光ファイバ20から出力されるSC光のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態の光源装置1の構成図である。この図に示される光源装置1は、ファイバレーザ光源10,光ファイバ20および光フィルタ30を備える。
【0013】
ファイバレーザ光源10は、波長1.55μm帯(波長1.54μm〜1.55μmを含む帯域)でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を種光として出力する。ファイバレーザ光源10は、Er元素などの希土類元素をコアに添加された光ファイバを光増幅媒体として備え、波長0.98μm帯または波長1.48μm帯などの励起光を光増幅媒体に供給することで、波長1.55μm帯のレーザ光を出力することができる。
【0014】
光ファイバ20は、ITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバであり、波長1.55μm帯での波長分散が16〜17ps/nm/km程度である。光ファイバ20は、ファイバレーザ光源10の種光出力端と直接に又は光ファイバ光学系により接続されている。ファイバレーザ光源10の種光出力端と光ファイバ20の第1端とは、互いに直接に融着接続されている。或いは、ファイバレーザ光源10の種光出力端が他の光ファイバの一端と融着接続され、光ファイバ20の第1端が当該他の光ファイバの他端と融着接続されている。
【0015】
光ファイバ20は、ファイバレーザ光源10から出力された種光を第1端に入力して導光し、その種光の導光の際に発現する非線形光学現象により帯域を拡大されたSC光を第2端から出力する。光ファイバ20の第2端から出力されるSC光は、近赤外領域の広帯域(例えば1.6μm〜2.0μm)に亘ってなだらかなスペクトル形状を有する。
【0016】
光フィルタ30は、光ファイバ20の第2端から出力される光を入力し、その入力した光のうち種光を遮断し、また、その入力した光のうち特定波長帯域の光を選択的に透過させる。ここで、特定波長帯域とは、光ファイバ20で発生したSC光の帯域以外の帯域であり、或いは、SC光の帯域に含まれる部分帯域である。光フィルタ30により種光を遮断することにより、これ以降の光学系における非線形光学現象の発現が抑制され得る。また、光源装置1の用途に応じて選択される特定波長帯域の光を光フィルタ30により選択的に透過させることにより、SC光を有効利用することができる。
【0017】
本実施形態の光源装置1は、波長1.55μm帯でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を出力するファイバレーザ光源10およびITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバ20を備えるものであるから、安価に構成され得る。また、ITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバ20は、波長1.55μm帯で伝送損失が小さく、また、他の光ファイバとの光学的接続の際の損失が小さい。また、光ファイバ20と他の光ファイバとを互いに融着接続することで、接続損失が小さくなり、また、外部環境の変化(振動や温度)の影響が低減され安定性が高くなる。したがって、この光源装置1は、SC光を高効率に発生することができる。
【0018】
本実施形態の光源装置1のファイバレーザ光源10は、波長1.55μm帯でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を出力するものであり、パルス幅がpsオーダまたはfsオーダのパルスレーザ光を出力する光源と比べて分散の影響が小さい。このことにより、分散が大きいシングルモード光ファイバ20内でも非線形光学現象を発現させることが容易である。また、パルス幅がpsオーダまたはfsオーダのパルスレーザ光を出力する光源と比べて、パルス幅がnsオーダのパルスレーザ光を出力するファイバレーザ光源10は、外部環境の変化(振動や温度)に対する影響が小さく、扱いが容易なので、安定性が高い。
【0019】
高強度の種光を空間から光ファイバ20に集光させる場合、光ファイバ20の光入射端面に埃や汚れがあると、端面焼け(端面が熱で溶ける)が起こり、不可逆的にSC光出力が低下する。コネクタ付きの光ファイバ同士で接続を行う場合でも、コネクタの勘合状態が悪いと端面焼けが起こる。融着接続の場合は接続部分に空間がないので端面焼けを完全に防止することができる。
【0020】
光ファイバ20の長さが0.1m〜5mであるのが好適であり、これにより、帯域1.6μm〜2.0μmのSC光の強度を選択的に強めることが可能となる。帯域1.6μm〜2.0μmのSC光を利用すれば、水分やアルコール分をはじめとするOH基を含む物質に対して非常に高感度な分析が可能である。
【0021】
また、光ファイバ20のうち第2端から長さ2mまでの範囲で曲率半径が50mm以上であるのが好適である。光ファイバ20をコンパクトに収納する場合には、光ファイバ20を巻回して筐体内に収納する必要があるが、その際に光ファイバ20の曲率半径が小さいと、光ファイバ20の外側に漏れる光が増える。また、光ファイバ20の光出射端付近で光ファイバ20を曲げることで光が外に漏れると、光ファイバ20の端面の埃や汚れやコネクタ部品に使われる接着剤が原因で、光ファイバ20の端面焼けが起こりやすくなる可能性がある。そこで、光ファイバ20の第2端付近での曲げを制限することによって、端面焼けを防止することができる。
【0022】
図2は、本実施形態の光源装置1の光ファイバ20から出力されるSC光のスペクトルを示す図である。ここでは、ファイバレーザ光源10から出力されるパルスレーザ光の強度を一定とし、光ファイバ20の長さを180m,200m,230mおよび630mの4とおりとした。光ファイバ20から出力されたSC光を、減衰率10dBの光減衰器により減衰させた後に、スペクトルアナライザにより測定した。同図は、光減衰器による減衰分の補正を行った後のスペクトルを示す。
【0023】
この図から判るように、光ファイバ20の長さを変えることによって、SC光の強度及び波長帯域を調節することができる。例えば、狭帯域1.6μm〜1.8μmで高強度のSC光を得たい場合には、光ファイバ20の長さを2m程度にすればよい。また、広帯域1.6μm〜2.3μmのSC光を得たい場合には、光ファイバ20の長さを6m程度にすればよい。
【符号の説明】
【0024】
1…光源装置、10…ファイバレーザ光源、20…シングルモード光ファイバ、30…光フィルタ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長1.55μm帯でパルス幅0.1ns〜10nsのパルスレーザ光を種光として出力するファイバレーザ光源と、
前記ファイバレーザ光源の種光出力端と直接に又は光ファイバ光学系により接続され、前記ファイバレーザ光源から出力された種光を第1端に入力して導光し、その種光の導光の際に発現する非線形光学現象により帯域を拡大された光を第2端から出力するITU-TG.652準拠のシングルモード光ファイバと、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記シングルモード光ファイバの長さが0.1m〜5mであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記シングルモード光ファイバの前記第2端から出力される光のうち前記種光を遮断する光フィルタを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記シングルモード光ファイバの前記第2端から出力される光のうち特定波長帯域の光を選択的に透過させる光フィルタを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記ファイバレーザ光源の前記種光出力端と前記シングルモード光ファイバの前記第1端とが互いに融着接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記シングルモード光ファイバのうち前記第2端から長さ2mまでの範囲で曲率半径が50mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。


【図1】
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【図2】
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