説明

光源装置

【課題】励起光を当該励起光より波長の長い長波長光に変換して放射する光源装置において、所要の波長の光を高い効率で放射することができる光源装置を提供する。
【解決手段】励起光(L1)を放射する励起光源(10)と、この励起光源(10)からの励起光(L1)を受けて当該励起光(L1)より長い波長の長波長光(L2)を放射する波長変換層(21)が透光板(22)上に形成されてなり、その一面に前記励起光源(10)からの励起光(L1)が入射される波長変換部材(20)と、この波長変換部材(20)における前記励起光(L1)が入射される一面側に設けられた、当該励起光(L1)を透過する励起光透過窓(31)を有する光反射部材(30)と、前記波長変換部材(20)の他面側に設けられた、前記励起光(L1)を反射しかつ前記長波長光(L2)を透過するフィルター部材(40)とを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクター装置の光源として好適に用いることができる光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター装置の光源としては、ショートアーク型の高圧放電ランプが用いられている。而して、近年、発光ダイオードやレーザーダイオードなどの固体発光素子を光源として用いたプロジェクター装置が提案されている(特許文献1参照。)。このような固体発光素子を用いたプロジェクター装置は、高電圧電源が不要であること、光源である固体発光素子の使用寿命が長いこと、耐衝撃性が優れていることなどの点で、高圧放電ランプを用いたプロジェクター装置と比較して有利である。
然るに、上記のプロジェクター装置においては、それぞれ赤色、緑色および青色の光を発する3種類の固体発光素子を用いることが必要となるため、低コスト化を図ることが困難となり、しかも、安価で発光量の高い緑色光を放射する固体発光素子がないため、プロジェクター装置として十分な発光量が得られない、という問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、励起光を放射する励起光源と、この励起光源からの励起光を可視光に変換する蛍光体よりなる波長変換層がガラス板上に形成されてなる波長変換部材とを備えてなる光源装置が提案されている(特許文献2参照。)
このような光源装置によれば、波長変換層を構成する蛍光体の種類を選択することにより、励起光源からの励起光を、赤色、緑色、青色の可視光に変換することができるので、3種類の固体発光素子を用いることが不要であり、また、発光量の高い緑色光を得ることができる。
【0004】
しかしながら、このような光源装置においては、以下のような問題がある。
波長変換部材における波長変換層は、(1)バインダーおよび蛍光体を含有してなる混合液をガラス板の表面に塗布して乾燥した後、例えば650〜700℃の温度で焼結する方法、(2)金属アルコキシドおよび蛍光体を含有するゾルをガラス板の表面に塗布した後、加水分解・重縮合反応を行うことによりゲル膜を形成し、このゲル膜を焼成するゾルゲル法、(3)蛍光体をガラス板の表面に蒸着する蒸着法、(4)シリコーン樹脂等の透明樹脂中に蛍光体が含有されてなる波長変換層用の成形体を作製し、この成形体をガラス板に接着する方法、などによって形成される。
【0005】
然るに、上記(1)乃至(3)のいずれかの方法によって波長変換層を形成する場合には、得られる波長変換層はその厚みが小さいものであるため、励起光源からの励起光の一部が波長変換層を透過してしまい、その結果、高い効率で所要の波長の光を放射することが困難である。
一方、上記(4)の方法によって波長変換層を形成する場合には、厚みの大きい波長変換層を得ることは可能であるが、波長変換層を形成する透明樹脂は、励起光を受けることによってまたは励起光による熱によって、分解若しくは劣化が生じやすいものであるため、より高い発光量が必要とされるプロジェクター装置の光源装置に用いられる波長変換層としては不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−268140号公報
【特許文献2】特開2004−341105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、励起光を当該励起光より波長の長い長波長光に変換して放射する光源装置において、所要の波長の光を高い効率で放射することができる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光源装置は、励起光を放射する励起光源と、
この励起光源からの励起光を受けて当該励起光より長い波長の長波長光を放射する波長変換層が透光板上に形成されてなり、その一面に前記励起光源からの励起光が入射される波長変換部材と、
この波長変換部材における前記励起光が入射される一面側に設けられた、当該励起光を透過する励起光透過窓を有する光反射部材と、
前記波長変換部材の他面側に設けられた、前記励起光を反射しかつ前記長波長光を透過するフィルター部材と
を備えてなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の光源装置は、励起光を放射する励起光源と、
この励起光源からの励起光を受けて当該励起光より長い波長の長波長光を放射する波長変換層が透光板上に形成されてなり、その一面に前記励起光源からの励起光が入射される波長変換部材と、
この波長変換部材における前記励起光が入射される一面側に設けられた、当該励起光を透過する励起光透過窓を有する、当該励起光を反射しかつ前記長波長光を透過するフィルター部材と、
前記波長変換部材の他面側に設けられた光反射部材と
を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の光源装置においては、前記波長変換層は、前記励起光を受けて放射される長波長光が緑色光のものであることが好ましい。
また、前記波長変換層は、ゾルケル法または蒸着法によって形成されてなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光源装置によれば、励起光源から放射された励起光の一部が波長変換層を透過しても、当該励起光がフィルター部材または光反射部材によって反射されることにより、波長変換層に再度入射されるので、励起光源からの励起光を高い効率で長波長光に変換することができ、従って、所要の波長の光を高い効率で放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。
【図2】光反射部材の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る光源装置における励起光および長波長光の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。
【図5】第2の実施の形態に係る光源装置における励起光および長波長光の状態を示す説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。
【図7】第1の実施の形態に係る光源装置の変形例の構成を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係る光源装置の変形例の構成を示す説明図である。
【図9】その他の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。
【図10】実施例に係る光源装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光源装置の実施の形態について説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。この光源装置は、励起光L1を放射する励起光源10を有し、この励起光源10の前方には、その一面(図において左面)に励起光源10からの励起光L1が入射される板状の波長変換部材20が設けられている。この例においては、励起光源10は、当該励起光源10から波長変換部材20に入射される励起光L1の光軸の方向が当該波長変換部材20の一面に対して垂直となるよう配置されている。
【0014】
この波長変換部材20は、透光板22上に、励起光源10からの励起光L1を受けて当該励起光L1より波長の長い長波長光L2を放射する蛍光体よりなる波長変換層21が形成されて構成されている。この波長変換層21の表面には、例えばガラスよりなる保護層(図示省略)が設けられていてもよい。また、図示の例では、波長変換部材20は、波長変換層21が励起光源10側とは反対側を向くよう配置されており、これにより、波長変換層21が形成されていない透光板22の表面が、当該波長変換部材20における励起光源10からの励起光L1が入射される一面とされている。
【0015】
波長変換部材20における励起光源10からの励起光L1が入射される一面側には、励起光源10からの励起光L1を透過する励起光透過窓31を有する板状若しくは膜状の光反射部材30が設けられている。一方、波長変換部材20の他面側には、板状若しくは膜状のフィルター部材40が設けられている。
また、図示の例では、励起光源10と光反射部材30との間には、励起光源10から放射された励起光L1を集束するコリメータレンズ15が設けられている。
【0016】
励起光源10としては、発光ダイオード、レーザーダイオードなどの固体発光素子を用いることができ、例えば青色レーザーダイオードを好適に用いることができる
【0017】
波長変換部材20における波長変換層21から放射される長波長光L2は、赤色光、緑色光および青色光のいずれであってもよいが、緑色光が好ましい。
波長変換層21を構成する蛍光体としては、励起光源10から放射される励起光L1の波長および当該波長変換層21から放射される光の波長に応じて適宜選択することができるが、例えば青色発光ダイオードよりなる励起光源10からの励起光L1を受けて緑色光を放射する波長変換層21を形成する場合には、化学的・熱的安定性が高く、湿度環境や温環境が変化しても、蛍光特性の変化が小さく、劣化しにくい点で、βサイアロン緑色蛍光体などを用いることが好ましい。
【0018】
また、波長変換層21の厚みは、50〜100μmであることが好ましい。この厚みが過小である場合には、励起光源10が波長変換層21を通過するとき、吸収・波長変換される確率が低くなり、励起光L1がフィルター部材40と光反射部材30との間で相互反射を繰り返すため、波長変換層21からの放射領域が拡がってしまい、光源としての輝度が低下してしまい、プロジェクター装置として十分な光量が得られなくなってしまう。一方、この厚みが過大である場合には、波長変換部材20が励起光L1による熱履歴を受けたときに、透光板22を構成する材料と波長変換層21を構成する材料との熱膨張率の差による応力が生じることにより、波長変換層21にクラックが発生し、このクラックによって波長変換層21が吸水して発光特性が低下するおそれがある。また、図1に示すような透過型の構成である場合には、波長変換部材20を透過する光が少なくなるため、波長変換層21から放射される長波長光L2は光反射部材30と波長変換部材20との間で相互反射を繰り返す量が多くなり、光反射部材30や波長変換部材20での吸収量が多くなり、やはり光源としての輝度が低下してしまう。
【0019】
波長変換層21を形成する方法としては、バインダーおよび蛍光体を含有してなる混合液を透光板22の表面に塗布して乾燥した後、例えば650〜700℃の温度で焼結する方法が一般的であるが、蛍光体粒子が表面に露出しており凹凸な散乱面となる。また、シリコン樹脂などに分散させる方法も光学的に平坦な表面を得ることは難しい。このため、波長変換層21を形成する方法としては、金属アルコキシドおよび蛍光体を含有するゾルを透光板22の表面に塗布した後、加水分解・重縮合反応を行うことによりゲル膜を形成し、このゲル膜を焼成するゾルゲル法、蛍光体を透光板22の表面に蒸着する蒸着法などが好適である。これらの方法によって形成された波長変換層21は、光学的に平坦な表面を有し、その表面上に直接、フィルター部材40を形成することができるので好ましい。これにより、厚みが均一な波長変換層21が得られると共に、当該波長変換層21上に他の光学層を形成することが可能となる。
【0020】
透光板22としては、励起光源10から放射される励起光L1および波長変換層21から放射される長波長光L2の両方を透過するもの、例えば石英ガラスなどのガラスよりなるものを用いることができる。
また、透光板22の厚みは、サイズにもよるが、例えば0.6〜1.5mmである。基本的には、励起光L1および長波長光L2の相互反射による光の広がりを抑えるためには、透光板22の厚みは、薄い方が好ましい。
【0021】
光反射部材30としては、励起光源10から放射される励起光L1および波長変換層21から放射される長波長光L2の両方を反射するものであれば、特に限定されず、銀、アルミニウムなどの高光反射性金属よりなるものを用いることができるが、励起光源10として青色レーザーダイオードを用い、波長変換層21として緑色光を放射する蛍光体を用いる場合には、図2に示すように、TiO2 およびSiO2 により構成された、例えば420〜470nmの波長域の青色光を反射する誘電体多層膜30aと、TiO2 およびSiO2 により構成された、例えば490〜560nmの波長域の緑色光を反射する誘電体多層膜30bとの積層体よりなるものを用いることができる。
このような光反射部材30は、例えば蒸着法によって形成することができる。
また、光反射部材30は、波長変換部材20に一体的に設けられていても、波長変換部材20とは別体に設けられていてもよい。
【0022】
光反射部材30の励起光透過窓31は、励起光L1を透過するものであれば特に限定されず、例えば開口によって形成されていても、励起光L1を透過する材料によって形成されていてもよいが、波長変換層21から放射される長波長光L2を反射するものであることが好ましい。具体的な例を挙げると、例えば光反射部材30を、前述の青色光を反射する誘電体多層膜30aと緑色光を反射する誘電体多層膜30bとの積層体により構成する場合には、図2に示すように、青色光を反射する誘電体多層膜30aに励起光透過窓用の開口Kを形成すると共に、緑色光を反射する誘電体多層膜30bとして青色光を透過するものを用いればよい。このような構成によれば波長変換層21から放射される長波長光L2が、励起光透過窓31における誘電体多層膜30bによって反射されるため、当該長波長光L2が励起光透過窓31から漏れることが防止され、従って、波長変換層21から放射される長波長光L2について一層高い発光効率が得られる。
【0023】
フィルター部材40は、励起光源10から放射される励起光L1を反射しかつ波長変換層21から放射される長波長光L2を透過するものである。
このフィルター部材40としては、TiO2 およびSiO2 により構成された誘電体多層膜よりなるものを用いることができる。
このようなフィルター部材40は、例えば蒸着法によって形成することができる。 また、フィルター部材40は、波長変換部材20に一体的に設けられていても、波長変換部材20とは別体に設けられていてもよい。
【0024】
上記の光源装置においては、励起光源10から放射された励起光L1は、コリメータレンズ15に集束された後、図3(a)に示すように、光反射部材30の励起光透過窓31を介して、波長変換部材20の一面(図示の例では透光板22の一面)に入射される。 そして、励起光L1が波長変換部材20における波長変換層21に入射されることにより、当該波長変換層21から励起光L1より波長が長い長波長光L2が放射される。この長波長光L2のうち、フィルター部材40に向かって進む光は、当該フィルター部材40を介して外部に放射され、光反射部材30に向かって進む光は、当該光反射部材30によって反射された後、波長変換部材20およびフィルター部材40を介して外部に放射される。
一方、波長変換層21を透過した励起光L1は、図3(b)に示すように、フィルター部材40によって反射された後、波長変換層21に入射され、これにより、当該波長変換層21から長波長光が放射され、更に、波長変換層21を透過した励起光L1は、光反射部材30によって反射された後、波長変換層21に入射され、これにより、当該波長変換層21から長波長光が放射される。
【0025】
このような光源装置によれば、励起光源10から放射された励起光L1の一部が波長変換層21を透過しても、当該励起光L1がフィルター部材40または光反射部材30によって反射されることにより、波長変換層21に再度入射されるので、励起光L1を高い効率で長波長光L2に変換することができ、従って、所要の波長の光を高い効率で放射することができる。
【0026】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。この光源装置は、励起光L1を放射する励起光源10を有し、この励起光源10の前方には、その一面(図において左面)に励起光源10からの励起光L1が入射される板状の波長変換部材20が設けられている。励起光源10は、当該励起光源10から波長変換部材20に入射される励起光L1の光軸の方向が当該波長変換部材20の一面に対して垂直となるよう配置されている。
【0027】
この波長変換部材20は、透光板22上に、励起光源10からの励起光L1を受けて当該励起光L1より波長の長い長波長光L2を放射する蛍光体よりなる波長変換層21が形成されて構成されている。この波長変換層21の表面には、例えばガラスよりなる保護層(図示省略)が設けられていてもよい。また、図示の例では、波長変換部材20は、波長変換層21が、励起光源10側とは反対側を向くよう配置されており、これにより、波長変換層21が形成されていない透光板22の表面が、当該波長変換部材20における励起光源10からの励起光L1が入射される一面とされている。
【0028】
波長変換部材20における励起光源10からの励起光L1が入射される一面側には、励起光源10からの励起光L1を透過する励起光透過窓41を有する、励起光源10から放射される励起光L1を反射しかつ波長変換層21から放射される長波長光L2を透過する板状若しくは膜状のフィルター部材40が設けられている。一方、波長変換部材20の他面側には、板状若しくは膜状の光反射部材30が設けられている。
また、図示の例では、励起光源10とフィルター部材40との間には、励起光源10から放射された励起光L1を集束するコリメータレンズ15が設けられ、更に、このコリメータレンズ15とフィルター部材40との間には、励起光源10からの励起光L1を透過しかつ波長変換層21から放射される長波長光L2を反射する板状の波長選択性ミラー45が、波長変換部材20に対して例えば45度に傾斜した状態で配置されている。
【0029】
励起光源10および波長変換部材20としては、第1の実施の形態に係る光源装置と同様の構成のものを用いることができる。また、光反射部材30およびフィルター部材40を構成する材料としては、第1の実施の形態に係る光源装置と同様のものを用いることができる。
フィルター部材40の励起光透過窓41は、励起光L1を透過するものであれば特に限定されないが、波長変換層21から放射される長波長光L2を透過するものを用いることが好ましく、具体的には、例えば開口によって、または、励起光L1および長波長光L2の両方を透過する材料によって形成することができる。
波長選択性ミラー45は、TiO2 およびSiO2 により構成された誘電体多層膜よりなるものを用いることができる。
【0030】
上記の光源装置においては、励起光源10から放射された励起光L1は、コリメータレンズ15に集束され、更に波長選択性ミラー45を透過した後、図5(a)に示すように、フィルター部材40の励起光透過窓41を介して、波長変換部材20の一面(図示の例では透光板22の一面)に入射される。
そして、励起光L1が波長変換部材20における波長変換層21に入射されることにより、当該波長変換層21から励起光L1より波長が長い長波長光L2が放射される。この長波長光L2のうち、フィルター部材40に向かって進む光は、当該フィルター部材40を透過し、更に、波長選択性ミラー45によって反射されることによって外部に放射され、光反射部材30に向かって進む光は、当該光反射部材30によって反射された後、波長変換部材20およびフィルター部材40を透過し、更に、波長選択性ミラー45によって反射されることによって外部に放射される。
一方、波長変換層21を透過した励起光L1は、図5(b)に示すように、光反射部材30によって反射された後、波長変換層21に入射され、これにより、当該波長変換層21から長波長光が放射され、更に、波長変換層21を透過した励起光L1は、フィルター部材40によって反射された後、波長変換層21に入射され、これにより、当該波長変換層21から長波長光が放射される。
【0031】
このような光源装置によれば、励起光源10から放射された励起光L1の一部が波長変換層21を透過しても、当該励起光L1が光反射部材30またはフィルター部材40によって反射されることにより、波長変換層21に再度入射されるので、励起光源10からの励起光L1を高い効率で長波長光L2に変換することができ、従って、所要の波長の光を高い効率で放射することができる。
【0032】
〔第3の実施の形態〕
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示す説明図である。この光源装置においては、励起光源10からの励起光L1の光軸が波長変換部材20の一面の法線方向に対して傾斜した方向から当該波長変換部材20の一面に入射されるよう、励起光源10が配置されており、それ以外については、第3の実施の形態に係る光源装置は第1の実施の形態に係る光源装置と同様の構成である。
このような構成の光源装置においては、波長変換部材20の一面に入射される励起光L1の光軸と、波長変換部材20の一面の法線とのなす角は、3〜10°であることが好ましい。
【0033】
このような光源装置によれば、第1の実施の形態に係る光源装置と同様の効果が得られると共に、以下の効果が得られる。
すなわち、光反射部材30の励起光透過窓31を通過した励起光L1が、その光軸が波長変換部材20の一面の法線方向に対して傾斜した方向から当該波長変換部材20の一面に入射されることにより、波長変換層21を透過した励起光L1は、フィルター部材40によって反射されたときにはその反射角が0°より大きいものとなるため、フィルター部材40によって反射された励起光L1が再度波長変換層21を透過したときに、光反射部材30の励起光透過窓31から漏れることが防止または抑制されるので、一層高い発光効率が得られる。
【0034】
〔その他の実施の形態〕
以上、本発明の第1の実施の形態乃至第3の実施の形態に係る光学装置について説明したが、本発明においては、これらの実施の形態に限定されず、以下のような種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、波長変換部材20は、図7および図8に示すように、波長変換部材20は、波長変換層21が励起光源10側を向くよう配置され、これにより、当該波長変換層21の表面が励起光源からの励起光L1が入射される一面とされていてもよい。
【0035】
また、第2の実施の形態において、励起光源10は、当該励起光源10からの励起光L1の光軸が波長変換部材20の一面の法線方向に対して傾斜した方向から当該波長変換部材20の一面に入射されるよう配置されていてもよい。
このような構成によれば、第3の実施の形態に係る光源装置と同様の効果、すなわち、波長変換層21を透過した励起光L1は、光反射部材30によって反射されたときにはその反射角が0°より大きいものとなるため、光反射部材30によって反射された励起光L1が再度波長変換層21を透過したときに、フィルター部材40の励起光透過窓41から漏れることが防止または抑制されるので、一層高い発光効率が得られる。
【0036】
また、図9に示すように、本発明の光源装置においては、複数の励起光源10が設けられていてもよく、また、励起光源10が、当該励起光源10から放射される励起光源L1の光軸が波長変換部材20の一面の法線方向と例えば90°に交差するよう配置されると共に、励起光源10から波長変換層20までの励起光L1の光路上に、励起光源10から放射された励起光L1を波長変換部材20に向かって反射する光反射板16および当該光反射板16によって反射された励起光L1を集束する集束レンズ17が設けられていてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
〈実施例1〉
図10に示す構成に従い、下記の条件により光源装置を作製した。
励起光源(10):
励起光源(10)として、1W級青色レーザーダイオード(ピーク波長が445nmのもの)を合計で12個配置した。
波長変換部材(20):
蛍光体としてメディアン径D50が18μmのβサイアロン粒子が分散されてなるゾルを用い、ゾルゲル法によって、厚みが0.8mmの石英ガラスよりなる透光板(22)上に厚みが55μmの波長変換層(21)を形成した後、当該波長変換層(21)の表面に対して鏡面研磨を行うことにより、波長変換部材(20)を作製した。
光反射部材(30):
波長変換部材(20)における波長変換層(21)が形成されていない一面に、銀を蒸着することにより、直径が1mmの円形の開口よりなる励起光透過窓(31)を有する厚みが1μmの光反射部材(30)を形成した。
フィルター部材(40):
波長変換部材(20)における波長変換層(21)の表面に、蒸着法によって、TiO2 およびSiO2 により構成された数十層の誘電体多層膜よりなる厚みが2μmのフィルター部材(40)を形成した。このフィルター部材(40)は、当該フィルター部材(40)によって反射される光の波長領域が420〜480nmのものである。
【0039】
〈実施例2〉
波長変換層(21)の厚みを95μmとしたこと以外は実施例1に係る光源装置と同様の構成の光源装置を作製した。
【0040】
〈比較例1〉
フィルター部材(40)を形成しなかったこと以外は実施例1に係る光源装置と同様の構成の光源装置を作製した。
【0041】
〈比較例2〉
フィルター部材(40)を形成しなかったこと以外は実施例2に係る光源装置と同様の構成の光源装置を作製した。
【0042】
[光源装置の照度測定]
実施例1〜2および比較例1〜2に係る光源装置の各々について、図10に示すように、光源装置の正面に照度計(P)を配置して、当該光源装置から出射される光の照度を測定した。ここで、波長変換部材(20)から照度計までの距離は30cmである。以上の結果を、比較例1に係る光源装置による照度を100としたときの相対照度として下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から明らかなように、実施例1および実施例2に係る光源装置によれば、比較例1および比較例2に係る光源装置に比べて、励起光を高い効率で長波長光に変換することができ、所要の波長の光を高い効率で放射することができることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
10 励起光源
15 コリメータレンズ
16 光反射板
17 集束レンズ
20 波長変換部材
21 波長変換層
22 透光板
30 光反射部材
30a,30b 誘電体多層膜
31 励起光透過窓
40 フィルター部材
41 励起光透過窓
45 波長選択性ミラー
K 開口
L1 励起光
L2 長波長光
P 照度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を放射する励起光源と、
この励起光源からの励起光を受けて当該励起光より長い波長の長波長光を放射する波長変換層が透光板上に形成されてなり、その一面に前記励起光源からの励起光が入射される波長変換部材と、
この波長変換部材における前記励起光が入射される一面側に設けられた、当該励起光を透過する励起光透過窓を有する光反射部材と、
前記波長変換部材の他面側に設けられた、前記励起光を反射しかつ前記長波長光を透過するフィルター部材と
を備えてなることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
励起光を放射する励起光源と、
この励起光源からの励起光を受けて当該励起光より長い波長の長波長光を放射する波長変換層が透光板上に形成されてなり、その一面に前記励起光源からの励起光が入射される波長変換部材と、
この波長変換部材における前記励起光が入射される一面側に設けられた、当該励起光を透過する励起光透過窓を有する、当該励起光を反射しかつ前記長波長光を透過するフィルター部材と、
前記波長変換部材の他面側に設けられた光反射部材と
を備えてなることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
前記波長変換層は、前記励起光を受けて放射される長波長光が緑色光のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記波長変換層は、ゾルゲル法または蒸着法によって形成されてなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92796(P2013−92796A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287183(P2012−287183)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2010−175158(P2010−175158)の分割
【原出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】