説明

光演出装置および光演出システム

【課題】簡単な操作によって照明領域、色彩、輝度の変更等を行え、背景画像や人工的な
自然現象等の投射も行うことが出来る、新規な光演出技術を提供する。
【解決手段】光演出装置Aと、シナリオ供給装置Bとを、USBケーブルCを介して相互
に接続する。光演出装置Aは、光源1と、光源からの光を変調する画像変調装置2と、画
像変調装置2により変調された光を投射する投射部3と、画像変調装置2を駆動する駆動
手段4と、駆動手段4に演出情報を提供すると共にその演出情報を時系列で切り替えるシ
ナリオ再生手段5を有する。シナリオ供給装置Bは、演出情報を時系列で切り替えるシナ
リオデータファイルDを光演出装置Aに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種の催し、イベント等で用いる光演出装置と光演出システムに関す
る。
【背景技術】
【0002】
例えば、イベント会場、劇場、コンサートホール、屋外スタジアム、アミューズメント
施設等といった、披露宴、演劇、音楽会、大規模コンサート、その他の各種催し、イベン
ト、発表会等が行われる空間においては、スポットライト等の照明器具が光演出のために
通常用いられる。また、大規模なホール等には、例えば特許文献1に開示されるような大
掛かりな装置が舞台照明として設置され、複数の照明器具等が装備される。また、例えば
特許文献2、3に開示されるような、特殊な演出効果装置も提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−294584号公報
【特許文献2】特開平5−274903号公報
【特許文献3】特開平5−309180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の光演出技術では、スポットライト等を手動で操作する為に熟練が必要と
される。しかも、通常は複数のスポットライトが離れた箇所に設置されるので、各スポッ
トライトをシナリオに沿って操作する者同士の連携を取ることが難しく、入念なリハーサ
ルが必要となる。また、スポットライト等は色彩、輝度、投光領域等の変更はできるが、
背景画像の投射や人工的な自然現象画像等の投射までは出来ず、特許文献2,3等に開示
される特殊な演出効果装置が別途必要になる。
【0005】
本発明はこのような従来事情に鑑み、照明の領域、色彩、輝度等の変更、或いは、背景
画像や人工的な自然現象画像等の投射といった、各種の光演出を簡単に行うことが出来る
、新規な光演出技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明は、光源と、該光源からの光を変調する画像変調装
置と、該画像変調装置により変調された光を投射する投射部と、前記画像変調装置を駆動
する駆動手段と、該駆動手段に演出情報を提供すると共に前記演出情報を時系列で切り替
えるシナリオ再生手段と、を有する光演出装置であることを特徴とする。
【0007】
前記演出情報として、例えば、前記画像変調装置により変調される光の投射領域情報、
色彩情報、輝度情報等をあげることができる。
また、前記画像変調装置により変調される画像情報をあげることができる。
前記演出情報として、音声情報をあげることもできる。この場合、該音声情報に基づき
音声を発生する音声発生装置をさらに備えると良い。
【0008】
これら各種の演出情報は、例えば、コンピュータ等のシナリオ作成装置と、シナリオデ
ータファイル作成ソフト(例えば、Microsoft社のPowerPoint(同社
商標)等を用いることも出来る)により、ページ毎に任意に書き込まれ、各ページを任意
の順番に時系列で切り替えるシナリオデータと共に、シナリオデータファイルに格納され
る。
【0009】
このような構成によれば、照明としての光の投射領域やその色彩および輝度等を、熟練
者が操作する必要なく、光演出装置により半自動的または全自動的に、容易に行うことが
出来るようになる。さらに、背景画像や人工的な自然現象画像等の投射といった、通常の
照明器具では不可能な特殊な光演出も、同一の光演出装置により、簡単に行うことが出来
るようになる。
【0010】
前記シナリオ再生手段による前記演出情報の切り替えは、シナリオデータファイルによ
り予め設定され自動的に切り替わるよう構成することもできるし、シナリオ供給装置(例
えば、前記シナリオ作成装置を兼用するコンピュータ等)、または光演出装置自身や、そ
れらのリモートコントローラ等での操作により、任意に切り替わるよう構成することもで
きる。
【0011】
また、本発明の光演出装置は、前記投射部より投射される光の被投射領域で発生する、
予め設定された現象を検出するタイミング検出手段をさらに備え、前記タイミング検出手
段からの検出信号に基づき、前記シナリオ再生手段による前記演出情報の切り替えを行う
よう構成すると良い。
タイミング検出手段としては、例えば、予め定められた音声を検出する音声検出センサ
ー、予め定められた色彩や動作等を検出する画像認識装置やCCDカメラ等をあげること
が出来る。
【0012】
前述の構成とした場合、前記被投射領域内で発生する予め定められた現象をきっかけに
して、前記演出情報の切り替えを自動的に行えるようになる。
【0013】
前記画像変調装置としては、例えば、液晶パネルを備えた液晶ライトバルブ等をあげる
ことが出来る。液晶パネルを用いた場合、画像変調を容易かつ微細に行える等、本発明の
目的を達成する上で好ましい。
前記投射部より投射される光は、前述したように、演出効果用照明や演出効果用画像等
として好適に用いることができる。
【0014】
本発明に係る光演出装置は、前記画像変調装置、投射部、駆動手段、およびシナリオ再
生手段を複数系統備え、各系統相互の同期を取りつつ又は個々に駆動するよう制御して、
複数個所への投射を可能に構成すると良い。この場合、複数の被投射領域への投射が可能
になり、各投射光、画像光に関連性を持たせる等して、大掛かりな舞台、ステージでの使
用や、被投射箇所を複数に分割してより複雑、繊細な光演出が可能になる等、多くの利点
がある。
【0015】
また、本発明の光演出装置は、前記した各種の演出情報をページ毎に記憶すると共に、
それら各ページを時系列で切り替えるシナリオデータを格納したシナリオデータファイル
の記録媒体読み取り装置を備えると良い。記録媒体としては、例えば、コンピュータ等の
シナリオ作成装置により作成されたシナリオデータファイルを記憶可能なUSBメモリ、
CD−ROM、DVD、ICカード、メモリカード等の各種記録媒体をあげることができ
る。
【0016】
そして、本発明の光演出システムは、前述したシナリオ供給装置と、本発明の光演出装
置とを接続したことを特徴とする。接続する手段としては、例えば、有線LAN、無線L
AN、WAN等のネットワークやUSBケーブル等で、光演出装置とシナリオ供給装置を
相互に接続する手段をあげることができる。この場合、前述した光演出装置による演出効
果を、簡単なシステム構成で実現できる等、多くの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。
本例の光演出システムは、図1に示すように、光演出装置Aと、シナリオ供給装置Bと
を、USBケーブルCで相互に接続してなる。
【0018】
光演出装置Aは、図2に示すように、少なくとも光源1と、光源1からの光を変調する
液晶ライトバルブからなる画像変調装置2と、画像変調装置2により変調された光を投射
するレンズ等の投射部3と、画像変調装置2を駆動する駆動手段4と、駆動手段4に演出
情報を提供すると共にその演出情報を時系列で切り替えるシナリオ再生手段5を備えた投
射型表示装置で構成されている。そして、シナリオデータファイルDに従って、各ページ
毎に書き込まれた演出情報を順次、被投射領域Eに投射するようになっている。また、図
示は省略するが、音声発生装置としてのスピーカとその駆動制御手段を内蔵している。
シナリオ供給装置Bは、図3に示すように、シナリオ作成装置としての機能およびシナ
リオ供給装置としての機能を有するパーソナルコンピュータで構成されている。
【0019】
図2に、光演出装置Aの概略構成を示す。光演出装置Aは、前述の構成要素に加え、C
PU10、ROMやRAM等の記憶装置11、リモコンFからの赤外線指令信号を受信し
て所定の処理を行うためのリモコン信号処理手段12、メモリカードGに格納されたデー
タファイル等を読み取るメモリカード読み取り手段13、予め定められた現象を検出する
手段Hからの検出信号等を受けて所定の処理を行うためのタイミング処理手段14、US
Bインタフェース手段15等を備えている。
【0020】
画像変調装置2は、光源1によってほぼ均一に照明されており、液晶ライトバルブ(不
図示)において形成された投射光や画像光等は、投射部3によって、舞台、ステージ、そ
の他各種の被投射領域Eに投射される。被投射領域Eには、前記投射光や画像光の投射面
となるスクリーンが配設される。
【0021】
画像変調装置駆動手段4は、シナリオ再生手段5から供給されたデータに応じて投射デ
ータを生成し、画像変調装置2の液晶ライトバルブの駆動を制御する。液晶ライトバルブ
は前記投射データによって光源1からの光を変調し、投射光や画像光を形成する。
【0022】
タイミング処理手段14は、被投射領域Eで発生する、予め設定された現象を検出する
タイミング検出手段Hからの検出信号に基づき、シナリオ再生手段5による演出情報が切
り替わるよう処理を行う。本例では、タイミング検出手段Hとして、予め定められた音声
を検出する音声検出センサーHを用いているが、予め定められた色彩や動作等を検出する
画像認識装置やCCDカメラ等で構成することも出来る。
【0023】
USBインタフェース手段15は、シナリオ供給装置Bから供給されるシナリオデータ
ファイルDを受け取り、バスを介して記憶装置11に供給する機能を有している。
【0024】
記憶装置11は、シナリオデータファイルDを再生するためのシナリオ再生手段5と、
供給されたシナリオデータファイルDを格納するシナリオ記憶領域16を備えている。シ
ナリオ再生手段5は、シナリオデータファイルDに従ってシナリオデータを読み出し、ペ
ージ毎のデータ(演出情報)を画像変調装置駆動手段4に供給する。
【0025】
本例では、USBインタフェース手段15から供給されたシナリオデータファイルDは
、記憶装置11内のシナリオ記憶領域16に格納されるが、メモリカード読み取り手段1
3に装着されたメモリカードGや、外部記憶装置等に格納されるようにしてもよい。また
、USBインタフェース手段15を用いずに、シナリオ供給装置Bにおいて、シナリオデ
ータファイルDをメモリカードGに書き込むようにしてもよい。この場合、メモリカード
Gをメモリカード読み取り手段13に装着し、メモリカードGからシナリオデータファイ
ルDを読み出すようにする。
【0026】
図3に、図1のシナリオ供給装置Bの概略構成を示す。シナリオ供給装置Bは、CPU
30、記憶装置31、ROM32、RAM33、表示部34、マウスやキーボード等の入
力手段(不図示)、USBインタフェース部35等を備えたコンピュータで構成されてい
る。
【0027】
RAM33内には、シナリオ作成部36の機能を実現するシナリオ作成プログラムが格
納されている。シナリオ作成部36は、任意の演出情報が書き込まれた複数のページと、
各ページを任意の順番に時系列で切り替えるシナリオデータを格納するためのシナリオデ
ータファイルDを作成する機能を有している。また、シナリオ作成部36は、作成された
シナリオデータファイルDを、USBインタフェース部35を介して光演出装置Aに供給
する機能を有している。すなわち、シナリオ作成部36とUSBインタフェース部35は
、シナリオデータファイルDを光演出装置Aに供給するシナリオ供給手段としての機能を
有している。
【0028】
なお、上記のシナリオ作成部36の機能を実現するコンピュータプログラムは、例えば
「PowerPoint(Microsoft社の商標)」等のソフトウエアであって、
フレキシブルディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録
された形態で提供される。コンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを
読み取って記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してコンピュータにコンピュー
タプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時
には、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッ
サによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュ
ータが読み取って実行するようにしてもよい。
【0029】
シナリオデータファイルDは、前記したように、各種の演出情報が書き込まれる複数の
ページと、各ページを順次切り替えるシナリオデータを有する。詳しくは、図4に示すよ
うに、文字情報が書き込まれたページ101、画像光を生成するための情報(画像情報)
が書き込まれたページ102、投射光の色彩や輝度を指定するための情報(色彩情報、輝
度情報)が書き込まれたページ103、投射光の投射領域をスポット光等として指定する
ための明部と暗部に区画するための情報(前記色彩情報、輝度情報等を利用した投射領域
情報)が書き込まれたページ104、音声を再生するための情報(音声情報)が書き込ま
れたページ105等を有する。画像情報、音声情報等は、例えばコンピュータに格納され
た各種データ等を利用することができる。
【0030】
以上のように構成された本例の光演出システムによれば、照明光の投射領域、色彩、輝
度等を、熟練者が操作する必要なく、光演出装置Aにより半自動または全自動的に、容易
に行うことが出来る。また、背景画像や人工的な自然現象画像等の投射といった、スポッ
トライト等では不可能な特殊な光演出も、同一の光演出装置Aにより簡単に行うことが出
来る。
【0031】
次に、前述した実施形態の変形例を、図5〜図7を参照して説明する。それぞれの図に
は、前述の光演出装置Aが、前記した画像変調装置2、投射部3、画像変調装置駆動手段
4、シナリオ再生手段5などを二系統備え、二個所への投射を可能に構成した例を示す。
この場合、二つの画像変調装置駆動手段4相互の同期を取る又は個々に駆動するよう制御
する制御手段をさらに備え、二つの投射光、画像光に関連性を持たせたり、独立性を持た
せることが出来る。
【0032】
詳しくは、図5では、被投射領域Eが90度の角度をもって異なる位置に存在する場合
に対応可能なよう、二つの投射部3が、光演出装置A1における前面側と側面側の二箇所
に90度の角度をもって配置された構成例を示す。
図6では、被投射領域Eが左右二箇所に並行して存在する場合に対応可能なよう、二つ
の投射部3が、光演出装置A2における前面側の二箇所に並列状に配置された構成例を示
す。
図7では、被投射領域Eが相対向する二箇所に存在する場合に対応可能なよう、二つの
投射部3が、光演出装置A3における前面側と後面側の二箇所、または左右両側面の二箇
所に配置された構成例を示す。
【0033】
以上、複数の実施形態例を図面に基づき説明したが、本発明はこれら図示例に限られる
ものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、種々の態様で実
施することが可能である。
例えば、上記例では、光演出装置(投射型表示装置)Aが液晶ライトバルブを備えてい
るが、これに代えて、マイクロミラー型光変調装置やCRT等を備えるようにしてもよい
。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバ
イス)(TI社の商標)を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す模式図。
【図2】光演出装置の内部構造を簡略して示す模式図。
【図3】シナリオ供給装置の内部構造を簡略して示す模式図。
【図4】シナリオデータファイルを簡略して示す概念図。
【図5】光演出装置の他の実施形態例を示す簡略図。
【図6】光演出装置の他の実施形態例を示す簡略図。
【図7】光演出装置の他の実施形態例を示す簡略図。
【符号の説明】
【0035】
A:光演出装置、1:光源、2:画像変調装置、3:投射部、4:画像変調装置駆動手
段、5:シナリオ再生手段、B:シナリオ供給装置、C:USBケーブル、D:シナリオ
データファイル、101〜105:ページ、H:センサー(タイミング検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
該光源からの光を変調する画像変調装置と、
該画像変調装置により変調された光を投射する投射部と、
前記画像変調装置を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に演出情報を提供すると共に前記演出情報を時系列で切り替えるシナリオ
再生手段と、を有することを特徴とする光演出装置。
【請求項2】
前記演出情報は、前記画像変調装置により変調される光の投射領域情報、色彩情報、輝
度情報のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の光演出装置。
【請求項3】
前記演出情報は、前記画像変調装置により変調される画像情報を含むことを特徴とする
請求項1または2記載の光演出装置。
【請求項4】
前記演出情報は音声情報を含むと共に、該音声情報に基づき音声を発生する音声発生装
置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光演出装置。
【請求項5】
被投射領域で発生する予め設定された現象を検出するタイミング検出手段をさらに備え
、前記タイミング検出手段からの検出信号に基づき、前記シナリオ再生手段による前記演
出情報の切り替えを行うよう構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の光
演出装置。
【請求項6】
前記画像変調装置が液晶パネルを備えたものであることを特徴とする請求項1〜5のい
ずれか記載の光演出装置。
【請求項7】
前記投射部より投射される光が、演出効果用照明または演出効果用画像であることを特
徴とする請求項1〜6のいずれか記載の光演出装置。
【請求項8】
前記画像変調装置、投射部、駆動手段、およびシナリオ再生手段を複数系統備え、複数
個所への投射を可能に構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の光演出装
置。
【請求項9】
前記演出情報を時系列で切り替えるシナリオデータファイルを格納した記録媒体の読み
取り装置を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の光演出装置。
【請求項10】
前記演出情報を時系列で切り替えるシナリオデータファイルを供給するシナリオ供給装
置と、請求項1〜9のいずれか記載の光演出装置とを接続したことを特徴とする光演出シ
ステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−146798(P2009−146798A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324329(P2007−324329)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】