説明

光照射レンズを用いた光触媒装置

【課題】光触媒は、光源が照射された部分でしか有害物質の分解、除去が行われない欠点と反応速度が遅い欠点があるため、実用的な性能の装置は実現が出来ていない。又、多くの細菌は菌の増殖速度が早いため、反応速度が遅い光触媒の作用と殺菌作用を両立させた装置は、更に実現が困難である。
【解決手段】円筒状の光源の外側に、円筒状の光触媒槽を儲け、ボール状の光触媒と光源の光通路、光照射レンズを多段に重ね合わせ、光触媒槽内に密封する。光通路と光拡散レンズは、光触媒の周囲を効率良く照射し、触媒が作用する面積を増大させる事、及び、光通路と光照射レンズは、浄化対象物が触媒の作用部位を包み込むように接触しながら通過する形状に設定する事で、光触媒の効果を飛躍的に向上させた。又、光源の光が浄化対象物に常に照射される事になるので、充分な殺菌効果を同時に得る事ができた。浄化対象物は、触媒槽の上部層から下部層へ通過する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水などの液体、及び、空気、ガスなどの気体に含まれる有害ガスや有害物質を光触媒の作用で分解、除去する光触媒装置と、紫外線による殺菌作用を併用して行う光触媒殺菌装置。
【背景技術】
【0002】
空気や水などを浄化するために、殺菌用として紫外線が有効である事と有害物質の除去に光触媒が有効である事が知られており、飲料水の浄化器や空気清浄機、エアコンなどに採用されています。
しかし従来技術の実情は、有害物質の除去性能が高いとされる空気清浄機を始めいずれの機器に於いても、「煙草の有害物質の殆ど(一酸化炭素、ニコチン、ダイオキシン等)は空気清浄機では除去できないガス組成分である(労働調査会)」や、「煙草の粒子は取り除くが、有害物質の約97%が排気口から周囲に撒き散らしている(厚生労働省)」などの報告もあり実用的な性能は不充分です。
又、日本電気工業会からも「現状の空気清浄機などでは、煙草の有害物質の殆どは除去できない。」と報告されるなど、「空気清浄機などを設置した密閉式の喫煙室は、有害ガスを蓄積する為、危険であり、換気を行うか、分煙方法が正しい喫煙対策」である等との考えが広まっています。
空気清浄機メーカーやエアーコンデショナー機器メーカーなどの最新機器では、カタログや取り扱い説明書に「煙草などの有害物質は除去できない。」と明記したり、「空気清浄」の文語を削除し、「清浄方式」を「集塵方式」に改めるなど、修正や変更が急速に進められています。
【0003】
従来技術の光触媒機器が上記の例のように充分な性能が得られていないのは、光触媒の反応速度が遅い欠点と構造上の難解な点が解決されていない事によります。
【0004】
従来の光触媒機器の多くは、構造、製造上の理由から、フイルター状の光触媒を用いる方法が多く採用されていますが、有害物質の殆どは、化学分子レベルの超微細であり、光触媒フイルター網目の隙間を通過してしまいます。
仮に、光触媒フイルターに捕捉された有害物質も光触媒の反応速度が遅いため、分解するまでの長時間、滞留するに至らず、分解が不充分なまま、流れ出し、通過してしまうのが実情です。
【0005】
フイルターの網目を微細にし多段に重ね合わせる方法は、2段目以降のフイルターでは、前段のフイルターに光が遮断され、光源光の照射量が激減する欠点があります。もとより面積の広いフイルタ全面に光を照射する事は実用的な構造上からは困難で、光源の光が照射されない光触媒では、有害物質の分解、除去が行われません。
又、光の照射不足と供に殺菌効果も大幅に低下しますが、被浄化対象物の通過速度が遅くなるため、菌の増殖速度を越え、菌が増殖てしまう問題が発生します。
更に、網目を微細にしたフイルターを多段に重ね合せる事から、通過量も減少し通過速度が遅くなる事から処理能力が大幅に落ちてしまう欠点も発生します。
【0006】
ボール状の光触媒を用いた方法は、光源の表面円周上の位置にある光触媒以外では、表面位置にある光触媒の影に隠れて光が照射されす、触媒の作用が得られません。そのため、触媒作用の有効な部位に接触しながら通過する被浄化対象物の量は、フイルター方式より減少し、触媒作用の無効な部位と光源の影に隠れて光が照射されない無効な触媒の周囲を通過する量が遥かに多くなる欠点があり、触媒の効果は向上できませんでした。
【0007】
このように、従来技術では、光触媒の作用を有効に発揮させるには、構造上の問題が多く残されおり、有害物質の除去が可能な構造は相当に複雑、困難となり、各調査機関の報告の通り、殺菌と両立できる構造の物は、更に複雑で、実用化や製造が困難でした。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光触媒の光源が照射された部位以外では、有害物質の分解、除去が行われない欠点と反応速度が遅い欠点、及び、被浄化対象物が触媒の作用部位に接触する事なく通過してしまう等の従来技術の欠点を解決する構造とする。
又、増殖速度が早い多くの細菌を殺菌するため、光触媒の作用と殺菌作用を同時に行わせ、有害物質の分解、除去作用と殺菌作用を両立させる。
シンプルな構造で、信頼性が高く、製造や保守も容易で、社会に普及し易い装置とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光触媒の有害物質の分解、除去作用は、照射面積に比例して増大するが、光源光の照射強度は、ある値があれば充分である事に着目して、単一の光源の採用でも、広範囲の光触媒の面に、光源の光が照射できるようにする。
【0010】
光源の光を通過させる光通路2と光を拡散し照射させる光照射レンズ3を設け、光触媒の周囲の広い面積を照射する事で、光触媒が作用する面積を増大させ、触媒の効率を大幅に向上させる。
【0011】
被浄化対象物がボール状の光触媒の作用面積を包み込むように接触しながら通過し、触媒の作用部位に被浄化対象物が接触している時間を大幅に増加させるように、光触媒槽の内径と光触媒ボールの直径、配置数、及び、光通路と光照射レンズの形状を設定する事で、反応速度の遅い光触媒の欠点を解決する。
又、平板状のフイルター形光触媒を採用した場合の従来技術の問題点も解決する。
【0012】
光源の光が照射される事で触媒が作用している部位に、被浄化対象物が接触している時間が大幅に増加する事は、換言すれば、被浄化対象物に殺菌作用も有する光源の光が照射されている時間が大幅に増加している事で、殺菌作用は大幅に増加させる。
【0013】
更に、光触媒、及び、光通路と光照射レンズを一つの層とし、その層を多段に積層する事によって、被浄化対象物が触媒の作用部位に接触しないで通過してしまう従来の欠点を解決し、殺菌作用も連続して行う事が出来ようにする。
尚、実施の形態の図10(C)の説明例の通り、本発明では、触媒を多段に積層しても、被浄化対象物の通過量が減少したり、処理速度が低下する事は無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1のように円筒状の光源1の外側に、円筒状の光触媒槽7を儲け、光源とボール状の光触媒6の間に、光が通過する石英ガラス管などの材料で光源の光を通過させる光通路2と光を拡散し照射させる光照射レンズ3、又は、光通路と光照射レンズの機能を一体化した光照射レンズ4を設け、光触媒を挟み込んだそれらを、図2や図7(C)、図8(Cのように積層する。
【0015】
図5(A)と図8(A)の光通路に相当する部分に設けられた角穴3bは、角穴とボール状の円形光触媒の間に出来る隙間が、被浄化対象物の通過口となり、ボール状の光触媒の全面を包み込むように被浄化対象物を通過させる大切な機能であると同時に、ガラス内部を光が通過する際には、ガラス表面からでも光は照射されますが、切り口や断面などからは、より多く光が放出される性質を利用している角穴式光照射部3bとしての機能を持ち、この2つの機能は、本発明の重要な要素であります。図10は、その様子を説明するものです。
【0016】
図10の(A)と(B)は、光触媒槽の内径と光触媒ボールの直径、配置数、及び、光通路と光照射レンズの形状を適切に設定する事で、光通路と光照射レンズは、光触媒の周囲の広い面積を照射させ、触媒が有効な作用する面積を増大させ、光触媒の効率を大幅に向上させる様子を説明したものです。
又、図10(C)は、被浄化対象物がボール状の光触媒の作用面積を包み込むように接触しながら通過し、触媒の作用部位に被浄化対象物が接触している時間を大幅に増加させる様子を説明し、反応速度の遅い光触媒の欠点を解決する様子を説明したものです。
【0017】
以上の図10(B)の説明のように、光源の光が照射されてる触媒の作用部に被浄化対象物の接触時間が大幅に増加する事は、殺菌作用も有する光源の光が被浄化対象物にも常に照射され、照射時間が大幅に増加している事でもあるので、充分な殺菌効果が得られ、有害物質の分解、除去作用と殺菌作用を同時に得る事を実現します。
【0018】
図2や図7(C)、図8(C)のように、光通路や光照射レンズ、光触媒を組み合わせた槽を、更に多段に重ね合わせ、円筒状の光触媒槽内に密封し、被浄化対象物10を、光触媒槽の上部層から下部層へ通過させる事で、被浄化対象物が触媒の作用部位に接触しないで通過してしまう従来の欠点を解決させます。
尚、ボール状である光触媒と光通路と光照射レンズは、光源光の充分な通過や照射のために、個々を密着させておらず、光源光の照射と被浄化対象物が通過する間隙も充分であり、前記、図10(C)で説明したように被浄化対象物が通過するよう、寸法化、構造化されているので、多段に積層しても、被浄化対象物の通過量が減少したり、処理速度が低下する事は無視できる範囲内にあります。
【0019】
図5と図7や図8の実施例は、光源の光を通過させる機能と光源の光が拡散し照射させる機能を一体化した光照射レンズ4を設ける例です。
図8(A)の例で作用を分解して説明すれば、石英ガラス等の光源光が通過する材料で作られた光を伝播する光通路2と、照射レンズを埋め込んだレンズ式光照射部3aと角穴式光照射部3bに分けられます。
角穴式光照射部3bは、実施の形態の冒頭と図10で説明した通り、被浄化対象物がボール状の光触媒の全面を包み込むように通過させる大切な機能と同時に、ガラス内部などを通過する光は、切り口や断面などから多く放出される性質を利用している角穴式光照射部としての機能も持ち、本発明の重要な2つの機能を併せ持ちます。
【0020】
図4の実施例は、請求項1の光触媒槽7に、光源1の周囲に、光源の光が通過する石英ガラス管などの材料で、殺菌槽8を追加した光触媒殺菌装置です。
【0021】
図5の実施例は、フィルター状の平板型光触媒6bを、光源の光を通過させる機能と光源の光が拡散し照射させる機能を一体化した光照射レンズ4で挟み込んだものを、多段に積層した例です。
平板型のフィルターを一枚毎に積層しても、従来技術のフィルター式光触媒装置の結果と異なって、本発明の光照射レンズ4を用いる事で、平板型光触媒の全面に、充分に光が照射できると同時に、被浄化対象物が通過するのに充分な間隙も確保できるようになったものです。
【0022】
図6の実施例は、請求項1、又は請求項2、又は請求項3の光触媒槽に、被浄化対象物10を還流、循環させる還流機能9を付随させた光触媒装置です。
【0023】
図9(A)は、本発明を直列に連結した例で、有害物質の分解、除去能力を連結数に比例して高める事が可能であり、殺菌能力は維持したままです。
図9(B)は、本発明を並列に連結した例で、処理する量や処理速度を連結数に比例して高める事が可能であり、有害物質の除去能力と殺菌能力は維持されたままでです。
【発明の効果】
【0024】
光触媒の光源が照射された部分でしか有害物質の分解、除去が行われない欠点と反応速度が遅い欠点を克服し、有害物質の分解、除去できる充分な性能の装置が実現出来た。
又、殺菌作用が常に得られるため、増殖速度が早い雑菌などに対しても充分な殺菌が行われ、光触媒の有害物質の分解、除去作用と殺菌作用の両立が実現できた。
【0025】
本発明の光触媒殺菌槽は、シンプルな構造の単一槽であり、循環機能の付加は容易である。本発明は、小型の単一槽の物でも、従来技術では不可能であった煙草の有害物質の殆ど(一酸化炭素、ニコチン、ダイオキシン等)を短時間で充分に取り除く性能を有しているが、更に高性能が要求される場合は、図9(A)、図9(B)の説明のように、複数の連結接続が容易であり、目的や用途に応じて、充分な性能が容易に得られる。
シンプルで信頼性が高く、製造や保守も容易で、低コストで、各種装置に組み込みも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、光照射レンズ3、及び、光通路と光照射一体形レンズ4の実施例の上面図である。
【図2】は、光照射レンズの実施例と光触媒を積層する概念の側断面図である。
【図3】は、光通路2と光照射レンズ3の実施例の明細図である。
【図4】は、光触媒槽7に殺菌槽8を追加した光触媒殺菌槽の実施例である。図4(A)は、該当、実施例の上面図である。図4(B)は、該当、実施例の側断面図である。
【図5】の実施例は、光通路と光照射一体形レンズ4の例で、3aは、埋込み型光照射レンズであり、3bは角穴式光照射レンズであると同時に、被浄化対象物の通過口も兼用する。図5(A)は、該当、実施例の上面図である。図5(B)は、該当、実施例の側面図である。図5(C)は、フィルター状の平板型光触媒6bの側面図である。図5(D)は、該当、実施例と光触媒を積層した光触媒槽7の側断面図である。
【図6】は、光触媒殺菌槽に、還流機能9を付随させた実施例である。
【図7】は、光通路と光照射一体形レンズ4の実施例である。図7(A)は、該当、実施例の明細図であり、3aは、埋込み型光照射レンズある。図7(B)は、該当、実施例の光触媒の上面図である。図7(C)は、該当、実施例と光触媒を積層した光触媒槽の側断面図である。
【図8】の実施例は、光通路と光照射一体形レンズ4の例であり、3aは、埋込み型光照射レンズであり、3bは角穴式光照射レンズであると同時に、被浄化対象物の通過口も兼用する。図8(A)は、該当、実施例の上面図である。図8(B)は、該当、実施例の側面図である。図8(C)は、該当、実施例と光触媒を積層した光触媒槽の側断面図である。
【図9】(A)は、本発明を直列に連結し、有害物質の分解、除去能力を高めた例である。図9(B)は、本発明を並列に連結し、処理する量や処理速度を高めた例である。
【図10】は、光通路と光照射一体形レンズ4の動作を図8の例を用いて、光通路の光伝播と光を拡散し照射する例の様子、及び、被浄化物の流れの様子を説明した図である。図10(A)は、光通路の光伝播と光拡散照射の例である。図10(B)は、光通路の光伝播と光触媒に光拡散照の例である。図10(C)は、被浄化物の流れの様子例である。
【符号の説明】
1 光源
2 光通路
3 光照射レンズ
3a 埋込み型光照射レンズ
3b 角穴式光照射レンズと被浄化対象物の通過口を兼用
4 光通路と光照射一体形レンズ
5 光反射板
6 光触媒
6b 平板型フィルター状光触媒
7 光触媒槽
8 殺菌槽
9 還流機能
10 被浄化対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1のように、光触媒用の光源1の周囲に光触媒6を配置するが、光源1と光触媒6の間に、光が通過する石英ガラス管などの材料で光源の光を通過させる光通路2と光通路を通過した光源の光を拡散し照射させる光照射レンズ3を設ける方法、又は、図1及び、図7、図8のように光通路と光照射レンズの機能を一体化した光照射レンズ4を設ける方法、又は、光の反射板5を設ける方法、又は、以上の方法を組み合わせた方法で、光触媒6へ光源1の照射面積を増大させた光触媒槽7を有する光触媒装置。
【請求項2】
図4のように、光触媒用と殺菌用を兼用する紫外線などの光源1の周囲に、光源の光が通過する石英ガラス管などの材料で、殺菌槽8を設け、その殺菌槽8の周囲に、請求項1の光触媒槽7を設けた光触媒殺菌装置。
【請求項3】
図5のように、平板型フィルター状の光触媒を、請求項1の光照射レンズ4で挟み込んだものを多段に積層した光触媒装置。
【請求項4】
図6のように、請求項1、又は請求項2、又は請求項3の光触媒装置に、被浄化対象物10を還流、循環させる還流機能9を付随させた光触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−307542(P2007−307542A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168060(P2006−168060)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(506030169)
【Fターム(参考)】