説明

光照射微生物培養装置、並びに、光照射微生物培養試験方法

【課題】光の波長や強度等の条件を同一条件とする培養領域を広範囲に確保しながらも、可視光を照射しても温度上昇を防止することができ、可視光による影響を正確に確認することが可能な光照射微生物培養装置等を提供する。
【解決手段】本発明の光照射微生物培養装置1は、微生物培養装置であって、(1)微生物の培養が可能な培養空間10と、(2)培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発し且つ各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源11と、(3)培養空間10に配置され且つ光源11から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域を有する培養棚65とを有し、強制的な空気循環手段12により培養空間の温度を制御可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養空間に光を照射することが可能な光照射微生物培養装置、並びに、光照射微生物培養試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可視光に反応する触媒の開発に伴い、可視光によって活性化された触媒の生体、特に細胞への影響評価が重要となってきている。この生体、特に細胞への影響として、例えば、可視光照射突然変異誘発性等がある。
そして、このような、生体、特に細胞への影響を評価する方法として、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物に触媒を接触させ、光を照射して行うことが考えられる。
【0003】
従来、光を照射しながら植物等の生物を育成することができる生物育成装置は知られている。このような生物育成装置は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に記載されている。
【0004】
【特許文献1】実開平2−134840
【特許文献2】実開平6−41449
【特許文献3】特開平5−26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に記載されている従来の生物育成装置を代用しても、上記のような試験を行うことができなかった。なぜならば従来の生物育成装置には、可視光を発する複数の光源は存在しており、当該光源を各々独立してON/OFF制御したり(即ち、「間引き点灯」)、インバータ制御により全光源を同時にしかも無段階調光することにより光源全体としての照射出力された照射量の制御は可能であったが、このような光源から照射出力された照射量は、光源から照射出力された照射量が均一(植物育成上での均一性における「均一」)となる植物の育成領域を有する立体的な育成空間を確保することは可能であるが、光源から照射出力された照射量が実質的に精度良く均一(アミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養上での精度の高い均一性における「均一」)となる微生物の培養領域を有する培養棚(即ち、広い範囲の平面空間)を確保することが困難なためであった。
即ち、当該生物育成装置における、植物等の生物が育成される育成空間内では、光の波長や強度等の条件を同一条件とする微生物の培養領域を広範囲に確保することが不可能であった。
【0006】
また、紫外線をアミノ酸要求性変異微生物等の微生物に照射する試験に関して、当該試験は従来から行われているが、このような試験は、紫外線がアミノ酸要求性変異微生物等の微生物に与える影響が大きいために、可視光の試験に比べて照射時間が短いので、試験時間も短く、しかも、試験を行う紫外線を発する光源は、可視光を発する光源に比べて発熱量が小さい。よって、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物を培養することができる従来の微生物培養装置(通常は、培養空間には光源が備わっておらず、外部からの光を完全に遮断したものである。)を利用しても、光の波長や強度等の条件を同一条件とする培養領域を比較的広範囲に確保し易く、また小規模の試験を多数回実施することが可能であり、さらに培養空間の温度条件を一定にしながら試験を行うことが容易にできたが、可視光の試験においては、「可視光を発する光源は発熱するため、この熱によって培養空間の温度が上昇してしまうが、外部からの光を遮断する関係上、培養空間は壁等で覆われた空間となるので、特に温度上昇しやすい。そして、このような試験では、培養空間の温度条件を一定にする必要がある。」というような課題が存在しているために、紫外線を照射する装置において紫外線を可視光に変更しただけの装置を用いても可視光の試験装置として利用することもできなかった。
【0007】
そこで本発明は、光の波長や強度等の条件を同一条件とする培養領域を広範囲に確保しながらも、可視光を照射しても温度上昇を防止することができ、可視光による影響を正確に確認することが可能な光照射微生物培養装置、並びに、光照射微生物培養試験方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、上記した目的を達成するための請求項1記載の発明は、微生物培養装置であって、(1)微生物の培養が可能な培養空間と、(2)培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発し且つ各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源と、(3)培養空間に配置され且つ光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域を有する培養棚とを有し、強制的な空気循環手段により培養空間の温度を制御可能とすることを特徴とする光照射微生物培養装置(以下、本発明光照射微生物培養装置と記すこともある。)である。
【0009】
請求項1に記載される発明によれば、微生物の培養が可能な培養空間と、培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発し且つ各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源と、培養空間に配置され且つ光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域を有する培養棚とを有し、培養空間に培養される微生物に可視光を照射することができる。また、強制的な空気循環手段により培養空間の温度を制御可能とする。
【0010】
請求項2に記載される発明では、光源及び培養空間は、外部光を遮断する部材によって全面を覆われていることを特徴とする請求項1記載の光照射微生物培養装置である。
【0011】
請求項2に記載される発明によれば、光源及び培養空間は、外部光を遮断する部材によって全面を覆われているので、培養空間で培養される微生物に対し、外部からの光による影響を防止し、光源の光だけを照射することができる。
【0012】
請求項3に記載される発明では、培養棚は、上部が開放され、且つ、底面及び側面に、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有する部材が設置されてなる箱型形状であることを特徴とする請求項2記載の光照射微生物培養装置である。
【0013】
請求項3に記載される発明によれば、培養棚が箱型形状になるように、その底面及びその側面に設置される部材が、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有しているので、前記可視光をより均一に分散照射することができる。
【0014】
請求項4に記載される発明では、光源として、複数の波長においてエネルギー極大値を有する分光分布を有する可視光を含む光を発する蛍光灯が用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0015】
請求項4に記載される発明によれば、光源は、複数の波長においてエネルギー極大値を有する分光分布を有する可視光を含む光を発する蛍光灯が用いられているので、前記可視光による影響を確認することができる。
【0016】
請求項5に記載される発明では、光源は、照度を調節可能な蛍光灯が用いられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0017】
請求項5に記載される発明によれば、光源は照度を調節可能な蛍光灯が用いられているので、試験条件を変えて試験することができる。
【0018】
請求項6に記載される発明では、光源は、蛍光灯の表面には紫外線を吸収するフィルターによって覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0019】
請求項6に記載される発明によれば、光源は、蛍光灯の表面には紫外線を吸収するフィルターによって覆われているので、微生物に対して紫外線の影響がなく、正確な試験を行うことができる。
【0020】
光源の照度(ここで「光源の照度」とは、正確には、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚において測定される照度を示すものである。)を1000ルクス〜6000ルクスの範囲にすることができる(請求項7)。
【0021】
請求項8に記載される発明では、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±10%の範囲に含まれる照射量となることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0022】
請求項8に記載される発明によれば、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±10%の範囲に含まれる照射量となるので、より正確な試験を行うことができる。
【0023】
請求項9に記載される発明では、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±3%の範囲に含まれる照射量となることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0024】
請求項9に記載される発明によれば、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±3%の範囲に含まれる照射量となるので、より一層正確な試験を行うことができる。
【0025】
請求項10に記載される発明では、光源の消灯時間を制御するための手段を具備することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0026】
請求項10に記載される発明によれば、光源の消灯時間を制御するための手段を具備するによって、光照射の時間を自動的に制御可能とする。これにより、光源から照射出力されたトータル照射量(光照射の時間量に応じた積算光照射量)を容易に且つ自動的に制御することができる。
【0027】
請求項11に記載される発明では、外部から供給される電気の電圧を一定に維持するための手段を内的若しくは外的に備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0028】
請求項11に記載される発明によれば、外部から供給される電気の電圧に日内変動を生じさせることなく、安定した電圧を光照射微生物培養装置(特に光源)に対して与えることが可能となる。これにより、光源から照射出力された照射量を精度良く一定に維持することになるので、より正確な試験を行うことができる。
【0029】
請求項12に記載される発明では、その空間内に培養槽内の温度を測定するための温度センサーが配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0030】
請求項12に記載される発明によれば、その空間内に培養槽内の温度を測定するための温度センサーが配置されているので、培養空間の温度がより確実に確認することが可能となる。
【0031】
請求項13に記載される発明では、強制的な空気循環手段は、培養空間の温度を制御可能とし、当該手段により微生物を37℃で培養可能することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の光照射微生物培養装置である。
【0032】
請求項13に記載される発明によれば、光源を使用して、強制的な空気循環手段により培養空間の温度を制御可能とし、空気循環を連続的に行った場合には、微生物を37℃で培養可能するので、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養を行える温度とすることができる。
【0033】
また、請求項1〜13のいずれか光照射微生物培養装置を用いて、微生物に可視光を照射して光照射培養試験を行うことができる(請求項14)。
【発明の効果】
【0034】
本発明の光照射微生物培養装置によれば、光の波長や強度等の条件を同一条件とする培養領域を広範囲に確保しながらも、可視光を照射しても培養空間の温度上昇を防止することができ、可視光による影響を正確に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
本発明の第1の実施形態における光照射微生物培養装置は、微生物の培養が可能な培養空間を有し、当該培養空間内の空気の温度を制御するための空気加熱・冷却方式が採用された微生物培養装置であり、各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源を備えて、且つ、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域を有する培養棚(即ち、広い範囲の平面空間)を有し、さらにまた強制的な空気循環手段を有し、培養空間の温度の(自動)制御により、一様で安定したアミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養環境を提供可能とするものである。
【0036】
複数の光源は、培養空間の上部に設置し、光照射微生物培養装置の外部に備えられた据え置き型の光照射制御ユニット(光照射ON-OFFスイッチ、消灯デジタルタイマー、ライトコントローラ、調光制御のための電気回路、電源部及び漏電遮断器を含む)で制御されている。運転のための全ての操作は、前面にある操作パネルから行うことができ、当該操作パネルのパネル表示部には複数の光源における各々の光源から照射出力される照射量を制御するための出力量の設定値(無段階調光)の他、消灯デジタルタイマーを使用する場合における設定時間及び消灯までの残り時間、装置の異常、各種センサー等の異常)を知らせる警報も表示させる。また、照度表示計8(微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚の表面上に配置されている照度センサー71により測定された光照射面照度を表示する照度表示計)を外的に備えている。
このような光照射微生物培養装置は、市販の微生物培養装置に本発明の各構成要件を満たすように改良を加えることで製造してもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態における光照射微生物培養装置の斜視図(前面扉部非開放時の状態)である。図2は、図1に示す光照射微生物培養装置の正面図(前面扉部非開放時の状態)である。図3は、図1に示す光照射微生物培養装置の光源に係る電気系を示す配線図である。図4は、図1に示す光照射微生物培養装置の斜視図(前面扉部開放時の状態、培養棚の設置の状態)である。図5は、図1に示す光照射微生物培養装置の斜視図(前面扉部開放時の状態、光源棚及び培養棚の非設置の状態、強制的な空気の流れを含む。)である。図6は、図1に示す光照射微生物培養装置の外部に備えられた据え置き型の光照射制御ユニットの斜視図である。図7は、培養棚の取り付け部を示す斜視図である。図8は、光源が取り付けられてなる光源棚を示す斜視図(培養棚の非設置の状態)である。図9は、図1に示す光照射微生物培養装置の内部に配置される培養棚の斜視図である。図10は、強制的な空気の流れを含む空気循環手段を示した説明のための模式図である。
【0037】
本発明の第1の実施形態における光照射微生物培養装置1は、図1、図2、図4及び図7に示されるように、箱状の装置であり、内部に培養空間10が設けられている。そして、この培養空間10内に、微生物を有する培養容器を入れて培養することができるものである。
また、図1に示されるように、光照射微生物培養装置1は、外部に光照射制御ユニット6(光照射ON-OFFスイッチ、消灯デジタルタイマー、ライトコントローラ調光制御のための電気回路、電源部及び漏電遮断器を含む。例えば、図2及び図6参照)を備えている。また、照度表示計8(微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚の表面上に配置されている照度センサー71により測定された光照射面照度を表示する照度表示計、図7参照)を外的に備えている。勿論当該手段を内的に備えていてもよい。
【0038】
図4に示されるように、前面扉部20は片開きとなるように、培養空間10に対して開閉することができる。また図1に示されるように、前面扉部20の外側には、取っ手21が設けられており、取っ手21を握って前面扉部20を開閉することができる。
【0039】
光照射微生物培養装置1の内部の構造は、図4、図5、図6、図7、図8及び図9に示されている。
図4、図5及び図7に示すように、光照射微生物培養装置1は培養空間10の全面を覆う外部光を遮断する部材を有している。そして、培養空間10及び光源11は、前面扉部20、背面板67、天井面板68、底面板69及び側面板70によって全面が囲まれている。また、これらの部材は、ステンレス等の外部光及び光源が発する可視光を含む光を透過させない、光を遮断する材質のものが用いられている。
培養空間10に配置される培養棚65は、図9に示されるように、上部が開放され、且つ、底面及び側面に、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有する部材が設置されてなる箱型形状である。培養棚が箱型形状になるように、その底面及びその側面に設置される部材が、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有しているので、前記可視光をより均一に分散照射することができる。
このような培養棚を採用することにより、具体的には例えば、光源から照射出力された照射量が実質的に精度良く均一となる培養領域は、設定された照射量の±10%の好ましい範囲、±3%のより好ましい範囲等の範囲に含まれる照射量となるようにできるので、光源から照射出力された照射量が実質的に精度良く均一(アミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養上での精度の高い均一性における「均一」)となる微生物の培養領域を有する培養棚(即ち、広い範囲の平面空間)を確保することが要求されるような試験においても正確な試験を行うことができる。
【0040】
培養空間10の上部には、図4及び図8に示すように、培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発する複数の光源11が設置されている。光源として、例えば、複数の波長においてエネルギー極大値を有する分光分布を有する可視光を含む光を発する蛍光灯が用いられる。そしてこのような光源としては、照度を調節可能な蛍光灯を用いることができる。光照射微生物培養装置1では、20W(AC100V, 60Hz)の通常市販されている白色蛍光灯が任意の間隔(等間隔、又は中央部の間隔がより広くかつ手前および奥の間隔がより狭い間隔)に5本以上(図8中では5本)並べて設置されている。また、棒状である光源11の向きは、夫々の白色蛍光灯の両端が左右とになるように、5本以上(図8中では5本)の白色蛍光灯が手前から奥に並んでいる。そして、光照射微生物培養装置1に使用される複数の光源11は全て同じものが用いられている。
各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源は、各々独立して、銅鉄式制御によって調光されるように構成されている。ここで「銅鉄式制御」とは、例えば、銅鉄式と呼ばれる安定器を使用するものであって、当該安定器(電流を安定させる点灯回路を有するもの)は、鉄心(ケイ素銅鉄)に巻線(コイル)を施した構造で、安定器のコイルの巻数及びインピーダンスを増加させることによりランプ電流が制限され、当該安定器から光源に出力される実質的なランプ電流が変化し、光源を無段階に調光させるような制御をいう。尚、このようなタイプの安定器には、例えば、始動時の補助をするグロー球が付いたグロー式安定器や、グロー球の代わりにコンデンサーが内蔵され点灯補助をするラッピト式安定器が存在している。因みに、ラッピト式安定器は、グロー式安定器に比べて発熱量が低いという利点が存在している。
銅鉄式制御では、高周波(交流電源の電圧波形は基本的に正弦波であるが、これを電気機器に接続した時に流れる電流は必ずしも正弦波とならず、歪んだ波形となる。この歪波形は、基本周波数(50ヘルツ又は60ヘルツ)と基本周波数の整数倍の周波数の波とに分けられ、この整数倍の波のことを高調波(電流)という。特にインバータ制御では発生しやすい。)の発生が少なく、電子機器や電気設備に悪影響を及ぼすことがない。
他の制御方式として、光源は、各々独立して、高周波の発生を抑えたインバータ制御によって調光されるように構成されていてもよい。ここで「インバータ制御」とは、例えば、インバータ回路(直流を高周波に変換する回路であり、例えば、定電流ブッシュプル回路、一石式回路、ハーフブリッジ回路等が挙げられる。)に、プログラム回路に記録された調光パターンの信号が伝達され、当該インバータ回路から光源に出力される実質的な電力供給時間が変化し、光源を無段階に調光させるような制御をいう。
【0041】
このような「培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発し且つ各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源」を採用することにより、複数の光源全体としての滑らかな光照射量の変化が実現でき、その結果、具体的には例えば、光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±10%の好ましい範囲、±3%のより好ましい範囲等の範囲に含まれる照射量となるようにできるので、正確な試験を行うことができる。
尚、光源を点灯させた状態でその照射量を変化させるような制御であれば、調光に際して光源にかかる負担が少なく、その寿命が長くなるとともに、高周波点灯により光源自身の効率も向上し、経済的にも有利な光照射微生物培養装置となる。
【0042】
光源11は、可視光を含む光を有する光を発することができるものである。特に、本実施形態における光源11が発する可視光の波長は、400nm〜800nmである。
【0043】
そして、光源11が発する照度は、培養空間10に配置される微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚65の表面上で1000ルクス以上である。また、光源11の照度(ここで「光源11の照度」とは、正確には、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚において測定される照度を示すものである。)は、100ルクス以上であり、より好ましくは500ルクスから10000ルクス間での範囲であり、特に好ましくは1000ルクスから6000ルクスまでの範囲である。この照度の調節は、上述の如く、各々の光源毎に独立して照射出力を制御可能であり、当該調節は図2、図3及び図6に示される調節手段によって行うことができる。また、培養棚65の配置の位置を垂直方向に移動させることによっても可能である。さらに、このような調節手段にタイマー機能(例えば、消灯デジタルタイマー)を付加することによって光源11の消灯時間等の稼動時間の調節も行うことができる。
【0044】
光源11は、例えば、複数の波長においてエネルギー極大値を有する分光分布を有する可視光を含む光を有する蛍光灯であり、具体的には家庭用一般の白色蛍光灯であり、その表面は紫外線を吸収して可視光を通過させることができるフィルターによって覆われている。そのため、光源11から発して培養空間10へ照射される光(即ち、青色領域(400nm付近)、緑色領域(550nm付近)及び桃色領域(650nm付近)においてエネルギー極大値を有する可視光を含む光)には紫外線がほとんど含まれない。そのため、光照射微生物培養装置1を用いて光照射培養試験を行う際に、紫外線の影響を低減させることができる。
【0045】
光照射微生物培養装置1は、外部から供給される電気の電圧を一定に維持するための手段を外的に備えていてもよい。勿論当該手段を内的に備えていてもよい。これは、光源11から照射出力された照射量が、光源11に外部から供給される電気の電圧変動(例えば、電圧の日内変動等)により影響を受けるためであり、これを防止するために、外部から供給される電気の電圧を一定に維持するための手段を内的若しくは外的に備えることが好ましい。このような「外部から供給される電気の電圧を一定に維持するための手段」を採用することにより、安定した電圧を光照射微生物培養装置(特に光源)に対して与えることが可能となる。そして、光源から照射出力された照射量を精度良く一定に維持することになるので、より正確な試験を行うことができる。
【0046】
また培養空間10には、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚65が配置されている。培養棚65の位置は、例えば、培養空間10の上部に設置された光源11の下から2センチ以上離れた位置であり、より好ましくは5センチから90センチまでの間での範囲に含まれる位置であり、特に好ましくは5センチから30センチまでの範囲に含まれる位置である。
図7に示されるように、光照射微生物培養装置1の培養空間10の側面板70には、棚押さえクリップ(又はガイドレール)設置用の支柱34が設けられている。各々の支柱34は、一定間隔に開けられた穴が設けられている。また支柱34は、側面板の手前及び奥に一対ものが設けられ、反対側の側面板にも同じく一対のものが設けられており、4本の支柱の穴は互いに垂直方向に同じ高さとなるように配置されている。4本の支柱34の同じ高さの穴にそれぞれ棚押さえクリップ32(又はガイドレール31)を差し込み、当該4個の棚押さえクリップ32(又はガイドレール31)の上にスノコ状培養棚板65aの4角又は2辺を引っ掛けることにより、培養空間10の天井面及び底面に並行に、スノコ状培養棚板65aを設置することができる。
【0047】
スノコ状培養棚板65aを支柱34の最上部に設置し、このスノコ状培養棚板の下に前記配置の通り、例えば、蛍光灯等の光源11を取り付けることにより、光源11を培養空間10に配置することができる。さらに、別のスノコ状培養棚板65aを培養空間10に設置し、その棚板の上に、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚65(尚、図4中では、培養棚65の上部に光源棚11aが組み合わされたユニットとして配置されている。)を設置することにより、培養空間10に培養棚65を配置することができる。
光源棚11a及び培養棚65の位置が決まると、培養棚65の表面上の照度が実質的に均一となるよう、各々の光源から照射出力される照射量を制御するための出力量を設定することができる。培養棚65の表面上の照度を実質的に均一とする効率的な方法としては、まず照度表示計8の照度センサー71を培養棚65の表面上の中央部に置き、複数の光源全てを点灯させ、その出力量に係る目盛りが略同じ値で、且つ、照度表示計8の測定値が希望する照度付近を示すように、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を決める。次に照度センサー71を培養棚65の表面上最も奥の光源11の下部における左端方向に移動させ、最も奥の光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量に係る目盛りのみを変化させて、照度表示計8の測定値が希望する照度付近を示すように、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を調整する。さらに、照度センサー71を最も奥から2番目の光源11の下部における水平方向に移動させ、当該光源から照射出力される照射量を制御するための出力量に係る目盛りのみを変化させて、照度表示計8の測定値が希望する照度付近を示すように、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を調整する。同様にして最も手前の光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を調整した後、照度センサー71を培養棚65の表面上の右奥角付近に移動させ、前述の通り、奥から順に光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を微調整する。最後に、照度センサー71を培養棚65の表面上の中央奥に移動させ、同様に、奥から順に、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を微調整する。尚、微調整において光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を最小にしたい場合には消灯してもよい。上記一連の出力量の微調整を1回以上繰り返すことが好ましい。これにより、培養領域は、設定された照度の±10%の範囲に含まれる照度、より好ましくは±3%の範囲に含まれる照度とすることが可能となる。
光源として蛍光灯を使用する場合には、通常、蛍光灯の寿命(性能が一定に保持される期間)は長期間であるため、一度設定した蛍光灯から照射出力される照射量を制御するための出力量に係る目盛りは、光源棚11a又は培養棚65を移動させない限り、設定された照度を再現性良く再現することができる。しかしながら当該照度の精度を高水準で維持させるためには、定期的に上述の通り、前記出力量の微調整を行なうことが望ましい。尚、実質的に均一な照度が実現された場合の前記出力量は、中央部付近をより低く、且つ、手前及び奥付近をより高くなるように調整することが好ましい。
【0048】
光照射微生物培養装置1に用いられる、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚65は、図9で示されるように、上部が開放され、且つ、底面及び側面に、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有する部材が設置されてなる箱型形状であるものであって、表面上に微生物を有する培養容器9が配置できるものである。従って、当該培養棚65の表面上に配置された培養容器9が有する微生物に光源11から発せられる光をより均一に分散照射することができる。
また、培養棚65を希望の位置(即ち、照度を調節するために、培養棚65の配置を垂直方向に移動させる位置)で培養空間10に配置するには、培養棚65が設置されたスノコ状培養棚板65aが引っ掛けられた4個の棚押さえクリップ34(又はガイドレール31)を同じ穴の数だけ移動させ、その上にスノコ状培養棚板65aを設置し、これに培養棚65を設置すればよい。他の手段として、光源11が設置されている光源棚11aを同様に移動させてもよい。
【0049】
また培養空間10には、微生物を有する培養容器を培養可能な培養棚65(図4中では、上部に光源棚11aが組み合わされたユニットとして配置されている。)を複数配置することができる。培養棚65の設置数としては、1つ以上であり、より好ましくは2つ以上を挙げることができる。
複数の培養棚65を設置する場合には、培養棚毎に異なる照度を設定することもできる。勿論、複数の培養棚の照度を同一に設定することもできる。
複数の培養棚で希望する照度に設定する場合において、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を効率的に設定するには、例えば、上部の培養棚65における光が下段の培養棚65に洩れることを考慮し、まず最上段の培養棚65について前述の通り、光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を設定し、次に一つ下段の培養棚65について光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を同様に設定し、さらに当該操作を繰り返して最下段の培養棚65について光源11から照射出力される照射量を制御するための出力量を設定すればよい。
上記一連の出力量の微調整を1回以上繰り返すことが好ましい。これにより、全培養領域は、設定された照度の±10%の範囲に含まれる照度、より好ましくは±3%の範囲に含まれる照度とすることが可能となる。
光源として蛍光灯を使用する場合には、通常、蛍光灯の寿命(性能が一定に保持される期間)は長期間であるため、一度設定した蛍光灯の出力量に係る目盛りは、光源棚11a又は培養棚65を移動させない限り、設定された照度を再現性良く再現することができる。しかしながら当該照度の精度を高水準で維持させるためには、定期的に上述の通り、前記出力量の微調整を行なうことが望ましい。尚、実質的に均一な照度が実現された場合の前記出力量は、中央部付近をより低く、且つ、手前及び奥付近をより高くなるように調整することが好ましい。
【0050】
さらに光照射微生物培養装置1に用いられる、微生物を有する培養容器9を培養可能な培養棚65は、図5に示されるように、その表面上に照度センサー71が配置されている。例えば、照度センサー71からの電気信号に応じて、照度の測定値、装置の異常、各種センサー等の異常等を知らせる警報を操作パネルのパネル表示部に表示させることができる。
【0051】
さらに光照射微生物培養装置1に用いられる、微生物を有する培養容器9を培養可能な培養棚65は、その表面上に温度センサー66を配置してもよい。例えば、温度センサー66からの電気信号に応じて強制的な空気循環手段により、前記培養棚の表面上の温度を制御可能とする。このような手段により、前記培養棚の表面上に置かれた培養容器の内での微生物の培養の温度を、より精密に制御することができる。
【0052】
光照射微生物培養装置1は、図10で説明されるような、強制的な空気循環手段12を備えている。これは、培養空間10の温度を制御可能とし、当該手段により微生物を、例えば37℃等で培養可能するためである。このような強制的な空気循環手段12を採用することにより、光源11を使用しても培養空間10の温度を制御可能とし、当該空気循環を連続的に行った場合にも、微生物を、例えば、37℃で培養可能するので、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養を行える温度とすることができる。尚、必要に応じて、培養空間10の湿度を制御可能とする手段(図示していない)を有していてもよい。培養空間10の湿度を制御可能とする簡便な手段としては、培養空間10に導入される空気のバブリング等の強制加湿方式による方法等を挙げることができる。簡単な方法としては、例えば、空気循環路17内に無菌水が保持されたサーバーを設置し、空気循環路17内の空気が、培養空間10へ導かれる前に当該サーバーに保持された無菌水の中を通るような方法等が挙げられる。このような手段を採用することにより、寒天培地の乾燥や液体培地の蒸発を防ぐことが可能となり、高い温度や長期間の培養時間等の試験条件下での精度の高い試験を行うことができる。
【0053】
当該空気循環手段12は、送風手段16(具体的には、軸流ファン等の送風機16a)と、空気温度制御手段13と、これらの手段が連結されてなる空気循環路17とを有する。ここで「空気温度制御手段13」は、例えば、冷却手段14(具体的には、ホットガスバイパス方式の除霜機能を有する空冷全密閉冷凍機等の空気冷却機14a)と加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)とから構成されている。また、当該空気循環手段の作動と光源11の作動とを連動するようにして、強制的な空気循環手段が故障等により停止した場合には、光源11を停止するようにして、培養空間10の温度上昇を防止するようにすることもできる。
【0054】
当該空気循環路17は、その内部に空気が流れるものであり、当該空気循環路17に必要に応じて設置された殺菌灯による紫外線の照射により清浄となった空気を送風手段16により空気冷却手段14及び空気加熱手段15に送り、適温となった空気を培養空間10内に空気循環口18を介して循環させることにより培養空間10の温度を制御可能とする。ここで、「殺菌灯による紫外線の照射」を採用することにより、雑菌等のコンタミネーションを効果的に防止することが可能となる。
本実施形態では、空気循環手段12が、送風手段(具体的には、送風機16a)、次いで空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)、次いで空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)、次いで送風手段(具体的には、送風機16a)の順に空気循環路17により連結されている。
空気の流れは、例えば、光源11を連続的に使用して培養を行った場合には、まず、可視光を発する光源の発熱により温度が上昇した培養空間内の空気を培養空間10の外部に排出させるために、当該空気が空気循環口18を介して、後述の送風手段16により生じる圧力差によって、空気循環路17に導かれる。次いで、空気循環路17に設置された送風手段16(具体的には、送風機16a)により、空気に対して空気循環路17を循環可能とする流速が与えられ、送風手段16(具体的には、送風機16a)から空気循環路17を通って空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)に導かれる。次いで、当該空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)により、空気が一定水準の温度まで一旦降下させられる。空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)によって冷却された空気は、空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)から空気循環路17を通って空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)に導かれる。このようにして温度が降下した空気を微生物の培養に適する水準の温度まで空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)によって加熱することで、空気の温度を適正値に微調整しながら、当該空気を培養空間の側面(背面部)に設置された送風手段16(具体的には、送風機16a)により、空気に対して培養空間10内に均一に対流可能とする流速が与えられ、図5に示されるように、送風手段16(具体的には、送風機16a)から培養空間10内に導かれることにより、培養空間10内の均一な温度分布を可能にできるので、結果として培養空間10の温度を制御可能とする。尚、このような空気の温度制御は、実際には、前記空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)の連続運転(空気冷却電源スイッチ14bのON状態)による連続的な冷却効果と、前記空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)による断続的な加熱効果とが同時に発生することで均衡状態を精度良く維持することが可能となるが、必ずしも上記の如く時系列的になされるようなものではなく、これは簡易的な説明のためのものである。
さらにまた、光照射量が多いために可視光を発する光源の発熱が大きく、そのために培養空間の温度の上昇が大きいと予想される場合には、冷却能力を高める手段を有してもよい。空気冷却能力切換スイッチ14cを操作することにより、空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)の冷却能力を高めることが可能である。
【0055】
空気循環路17には、その循環路内に空気の温度を測定するための温度センサー19が配置されている。空気循環路17には、その循環路内に空気の温度を測定するための温度センサー19が配置されているので、空気循環路内を流れる空気の温度がより確実に確認することが可能となる。さらに、例えば、当該温度センサー19からの電気信号に応じて空気温度制御手段13が有する空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)と空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)とにより、空気の温度を制御可能とする。
培養空間10には、その空間内の温度を測定するための温度センサー73が配置されている。培養空間10には、その空間内の温度を測定するための温度センサー73が配置されているので、培養空間の温度がより確実に確認することが可能となる。さらに、例えば、当該温度センサー73からの電気信号に応じて強制的な空気循環手段により、培養空間10の温度を制御可能とする。
光源11を使用して、強制的な空気循環手段により培養空間10の温度を制御可能とし、空気循環を連続的に行った場合には、微生物を37℃で培養可能するので、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物の培養を行える温度とすることができる。
【0056】
上記の光照射微生物培養装置1を用いて、光照射培養試験を行う方法について説明する。
まず、光照射培養試験を行うための微生物を準備する。この微生物は、特に限定されるものではないが、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物を用いることができる。そして、微生物に薬剤を接触させる。尚、この薬剤の接触は任意であり、薬剤を接触させないで試験することもできる。
【0057】
そして、上記の微生物を有する培養容器9を、前面扉部20を開けて培養棚65上の微生物収容空間に入れ、光照射微生物培養装置1の培養空間10に配置する。微生物を有する培養容器9の配置後、前面扉部20を閉める。
【0058】
光照射微生物培養装置1における温度制御は、上述の如くの仕組みで行なわれるが、例えば、次のように操作すればよい。
まず、空気冷却手段14(具体的には、空気冷却機14a)を稼動された後、複数の光源11(即ち、蛍光灯)を点灯することなく無灯状態下において低めに設定された設定温度で、空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)によって培養空間10の温度を安定させる。当該温度が安定した後、光源11を点灯させる。ここで培養空間10の温度が安定していれば、光源11を点灯させた状態で、設定温度を変更しても何ら問題ないが、培養空間10の温度が安定する前に光源11を点灯させると、予想以上に当該温度が上昇してしまう場合があるので、避けることが好ましい。また試験条件や光照射微生物培養装置の周辺温度が変化すると、培養空間10の温度上昇率も変わる場合があるので、できるだけ一定条件下の環境において光照射微生物培養装置1を稼動させることが好ましい。
次いで、設定温度を若干変更することで、空気加熱手段15(具体的には、空気加熱機15a)によって空気の温度を適正値に微調整することができるので、結果として培養空間10の温度を希望温度に制御可能となる。
尚、本実施形態の光照射微生物培養装置1で培養空間10の温度を測定したところ、37℃であり、微生物培養温度の適温である37℃である。また、アミノ酸要求性変異微生物等の微生物を光源の照度として1000ルクスで且つ上記条件下で24時間連続で培養し、培養後の当該微生物を照射無しのものと微生物を検査して比較したところ、一般性状等について顕著な差は認められなかった。
【0059】
また、微生物に行う薬剤の接触を、試験開始時又は試験途中に行う等により、単回又は複数回行うことができる。
例えば、光源の照度として1000ルクスの照射を1日24時間〜2時間以内、或いは、6000ルクスの照射を1日2時間以内の条件下、毎日、薬剤の接触を行い、これを繰り返し行う方法が挙げられる。
【0060】
そして、光照射培養試験の終了後、微生物を有する培養容器9を培養可能な培養棚65から取り出して、取り出された微生物について異常が無いかどうかを確認して、評価を行う。
この評価の方法として、評価対象の薬剤とは別に、例えば、ポジティブコントロールとなり得る化合物についても同様の試験を行い、当該化合物における結果と比較する方法を用いることができる。
【0061】
このように、本発明の光照射微生物培養装置1を用いて光照射培養試験を行うことにより、光の波長や強度等の条件を同一条件とする培養領域を広範囲に確保しながらも、光源11から発生する熱による、培養空間10内の温度上昇を防止しながら可視光による影響を正確に確認するための試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態における光照射微生物培養装置(前面扉部非開放時の状態)の斜視図である。
【図2】図1に示す光照射微生物培養装置(前面扉部開放時の状態)の正面図である。
【図3】図1に示す光照射微生物培養装置の光源に係る電気系を示す配線図である。
【図4】図1に示す光照射微生物培養装置の斜視図(前面扉部開放時の状態、培養棚の設置の状態)である。
【図5】図1に示す光照射微生物培養装置の斜視図(前面扉部開放時の状態、光源棚及び培養棚の非設置の状態、強制的な空気の流れを含む。)である。
【図6】図1に示す光照射微生物培養装置の外部に備えられた据え置き型の光照射制御ユニットの斜視図である。
【図7】培養棚の取り付け部を示す斜視図である。
【図8】光源が取り付けられてなる光源棚を示す斜視図(培養棚の非設置の状態)である。
【図9】図1に示す光照射微生物培養装置の内部に配置される培養棚の斜視図である。
【図10】強制的な空気の流れを含む空気循環手段を示した説明のための模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 光照射微生物培養装置
2 操作パネル
3 シェード
4 水平アジャスタ
6 光照射制御ユニット
7 温度表示計
8 照度表示計
9 微生物を有する培養容器
10 培養空間
11 光源
11a 光源棚
12 空気循環手段
13 空気温度制御手段
14 空気冷却手段
14a 空気冷却機
14b 空気冷却電源スイッチ
14c 空気冷却能力切換スイッチ
15 空気加熱手段
15a 空気加熱機
16 送風手段
16a 送風機
17 空気循環路
18 空気循環口
19 温度センサー(空気循環路用)
20 前面扉部
21 取っ手
22 前面小扉部(観察窓)
23 前面扉スイッチ
24 内扉
31 ガイドレール
31a ガイドレール34の下板部
31b ガイドレール34の内部
32 棚押さえクリップ
32a 棚押さえクリップの下板部
32b 棚押さえクリップの側面板部
33 培養棚65の両側端部
34 支柱
65 培養棚(箱型形状の培養棚)
65a スノコ状培養棚板
66 温度センサー(培養棚用)
66a 精密水銀温度計
67 背面板
68 天井面板
69 底面板
70 側面板
71 照度センサー(培養棚用)
73 温度センサー(培養空間用)
74 測定孔
81 霜覗き窓
82 器内清掃用排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物培養装置であって、(1)微生物の培養が可能な培養空間と、(2)培養空間に照射可能であって可視光を含む光を発し且つ各々独立して照射出力を制御可能な複数の光源と、(3)培養空間に配置され且つ光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域を有する培養棚とを有し、強制的な空気循環手段により培養空間の温度を制御可能とすることを特徴とする光照射微生物培養装置。
【請求項2】
光源及び培養空間は、外部光を遮断する部材によって全面を覆われていることを特徴とする請求項1記載の光照射微生物培養装置。
【請求項3】
培養棚は、上部が開放され、且つ、底面及び側面に、光源が発する可視光を含む光を乱反射する色調を有する部材が設置されてなる箱型形状であることを特徴とする請求項2記載の光照射微生物培養装置。
【請求項4】
光源として、複数の波長においてエネルギー極大値を有する分光分布を有する可視光を含む光を発する蛍光灯が用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項5】
光源は、照度を調節可能な蛍光灯が用いられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項6】
光源は、蛍光灯の表面には紫外線を吸収するフィルターによって覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項7】
光源の照度は、1000ルクス〜6000ルクスの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項8】
光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±10%の範囲に含まれる照射量となることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項9】
光源から照射出力された照射量が実質的に均一となる培養領域は、設定された照射量の±3%の範囲に含まれる照射量となることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項10】
光源の消灯時間を制御するための手段を具備することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項11】
外部から供給される電気の電圧を一定に維持するための手段を内的若しくは外的に備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項12】
培養空間には、その空間内の温度を測定するための温度センサーが配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項13】
強制的な空気循環手段は、培養空間の温度を制御可能とし、当該手段により微生物を37℃で培養可能することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の光照射微生物培養装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか光照射微生物培養装置を用いて、微生物に可視光を照射することを特徴とする光照射培養試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−222089(P2007−222089A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48037(P2006−48037)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】