光照射装置及び毛の処理方法
【課題】低出力光の照射で皮膚に負担をかけることなく毛の白色化が可能な光照射装置を提供する。
【解決手段】400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源9と、この光源9から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させるレンズ5と、を備える光照射装置1を用い、この装置から付与された光のパルスを脱毛後の肌にあてることにより毛を白色化する。
【解決手段】400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源9と、この光源9から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させるレンズ5と、を備える光照射装置1を用い、この装置から付与された光のパルスを脱毛後の肌にあてることにより毛を白色化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射によって毛の白色化を行う光照射装置及び毛の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、毛の色を抜く脱色(毛の白色化)は、脱色剤等によって毛に含まれるメラニン色素を分解することにより行われる。例えば、過酸化水素を含有する脱色剤を使って毛を脱色する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−51856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脱色剤を使用する方法では、皮膚に負担がかかったり、手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る光照射装置は、400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源部と、この光源部から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる導光部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る毛の処理方法は、本発明に係る光照射装置の出射面から付与された光のパルスを毛周期が成長期にある体毛に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低出力光の照射で皮膚に負担をかけることなく、容易に毛の白色化が可能な光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る光照射装置の外観を示す正面図である。(b)本発明の実施の形態に係る光照射装置の外観を示す側面図である。
【図2】光照射装置の配光制御手段とフレームの脱離状態での光照射装置の斜視図である。
【図3】照射ユニットの分解斜視図である。
【図4】(a)照射ユニットを示す正面図である。(b)図4(a)のA−A断面図である。
【図5】照射ユニットのフレームブロックの斜視図である。
【図6】本体及び配光制御手段内に配設された制御回路のブロック図である。
【図7】照射された光の発光の波長分布を示す図である。
【図8】レンズのレンズ幅方向における光量分布を示す図である。
【図9】毛の毛周期を示す説明図である。
【図10】(a)光を照射していない部位のマウスの皮膚のHE染色の結果を示す顕微鏡写真である。(b)光を照射した部位のマウスの皮膚のHE染色の結果を示す顕微鏡写真である。(c)光を照射していない部位のマウスの皮膚の抗ssDNA抗体を用いた結果を示す顕微鏡写真である。(d)光を照射した部位のマウスの皮膚の抗ssDNA抗体を用いた結果を示す顕微鏡写真である。
【図11】(a)光を照射していない部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である。(b)照射72時間後の光を照射した部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である。(c)11Bを拡大した結果を示す顕微鏡写真である。
【図12】(a)実施例1の照射前の結果を示す図である。(b)実施例1の照射後3日の結果を示す図である。(c)実施例1の照射後7日の結果を示す図である。(d)実施例2の照射前の結果を示す図である。(e)実施例2の照射後3日の結果を示す図である。(f)実施例2の照射後7日の結果を示す図である。(g)実施例3の照射前の結果を示す図である。(h)実施例3の照射後3日の結果を示す図である。(i)実施例3の照射後6日の結果を示す図である。(j)実施例3の照射後8日の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る光照射装置について添付図面に示す実施の形態に基づいて説明する。図1(a)は本発明の実施の形態に係る光照射装置1の外観を示す正面図、図1(b)は側面図である。図2は、図1に示す光照射装置1の配光制御手段6とフレーム7の脱離状態での光照射装置1の斜視図である。図3は照射ユニット4の分解斜視図、図4(a)は照射ユニットを示す正面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。図5は、照射ユニット4のフレームブロックの斜視図である。図6は、本体2及び配光制御手段6内に配設された制御回路のブロック図である。
【0010】
本発明の実施の形態に係る光照射装置1は、自然にあるいは脱毛等の人為的な誘導により毛周期が成長期になった体毛がある生体表面、特に皮膚表面に光照射を行うことにより毛の白色化を行う。本発明の実施の形態に係る光照射装置1は、片手で把持可能な本体2と、本体2の一端に着脱自在に取り付けられ、上部にレンズ5、内部に光源9を有する光照射手段である照射ユニット4と、照射ユニット4の周囲を覆い、かつ照射ユニット4から照射された光を調節する配光制御手段6と、配光制御手段6を保持し、かつ本体2に着脱自在の本体カバー3を備える。
【0011】
本体2は、光照射を制御する制御手段及び内臓電源とを内部に備えると共に、外装に、本体2の電源のオンオフを行う電源スイッチ2bと、本体カバー3の着脱を操作する着脱操作部2aを備える。本体2の照射ユニット4が取り付けられる側の端部には、照射ユニット4を着脱自在とするユニット装着部3aと、着脱操作部2aにより操作され本体カバー3を着脱自在に係止する本体側係止部と、照射ユニット4の光源9を発光させる図示しない発光スイッチとを備える。
【0012】
本体カバー3は、配光制御手段6をスライド自在で保持する配光制御手段6用の開口を有し、照射ユニット4を覆うカバー部材で形成されている。本体カバー3は、本体2と図示しない係止手段によって保持されている。
【0013】
照射ユニット4は、光が照射される略長方形状の照射口を一端に有する、前後に2つ割りしたランプケーシング8とその内部に光源9を備え、光照射口に蓋としてレンズ5が嵌め込まれている。照射ユニット4の長手方向の両外側、詳しくはレンズ5の長手方向における両端にユニット装着部3aに係脱自在な取付用突起8aが延設されており、照射ユニット4は取付用突起8aとユニット装着部3aとが係合することで本体2に着脱自在に取り付けられる。光源9として、例えばキセノン管を用いることができる。更に、照射ユニット4は、光源9からの光を反射して照射口に嵌め込んだレンズ5に向けるリフレクタ10と、リフレクタ10を保持する基台16と、発光スイッチからの信号を受けて光源9を発光させるトリガトランスである回路ユニット11を備える。回路ユニット11は、コネクタ12を搭載した回路P板13を有する。リフレクタ10は、照射口側に照射口と略同じ大きさの開口を有し、かつ反射面を内側に備えた略U字のカップ形状である。リフレクタ10の開口と逆の位置であるカップ形状の底部の内側には光源9が位置する。リフレクタ10とレンズ5は、光源9からの光を均一化する。詳しくは、リフレクタ10は光源9の発光により生じた光の向きを照射口に直行する向きに揃えると共に、照射口から照射される光量の分布を略一定に揃える。照射ユニット4の光源9は、キセノン管に限られず、一つ又は複数のダイオードとしても良い。光源9はリフレクタ10と点接触しており、両極にゴムプレート14を通し、フィクスチャ15で保持されている。
【0014】
配光制御手段6は、照射ユニット4と皮膚表面との間に介在し、図5に示すように、光を透過しない不透明部材で筒形状に形成された遮光部6bと、遮光部6bの筒形状に略長方形状で開口した一端に、光学的部材として、例えばレンズを設けた放出部6aとを備える。遮光部6bは、照射ユニット4の側面を覆い、かつ照射ユニット4が光を照射口から皮膚表面に照射する光照射方向に向かって照射ユニット4を覆う面を延設した筒形状であり、筒の開口と照射ユニット4の照射口とに対向して配置される。延設した側に位置する開口が照射ユニット4からの光を外部に放出する放出口となっており、放出口を形成する遮光部6bの端部が光照射の際に皮膚表面に当接する。光照射方向とは、照射口の開口面に直行する方向であり、リフレクタ10とレンズ5によって光量が均一化されて照射口から光が照射される。なお、光学的部材は、照射ユニット4から入射された光に対して集光する等して光の強度や向きを変化させることなく光量を均一化する形状に形成したものであり、例えば、本発明の実施の形態のように嵌合位置の光量に合わせて格子状に形成したレンズ等があげられる。また、放出部6aは放出口より光照射方向側に突出しない、詳しくは放出口を形成する遮光部6bの内部空間への入り込みを抑制して、皮膚表面が照射ユニット4、特にレンズ5に接触することを防止する。
【0015】
遮光部6bの左右両側にはフック部6b1が設けられ、本体カバー3に嵌合させることで保持されている。遮光部6bの開口の長手方向を形成する端辺を有する側面には、開口に直行する光照射方向に沿ってスライドガイド6b2、6b4がそれぞれ設けられている。スライドガイド6b2、6b4は光照射装置1を組み立てた際に配光制御手段6を光照射方向と平行にスライド自在とする。遮光部6bの側面のうち、一方の面の放出口と反対側の開口を形成する端辺の略中央には、スイッチ用突起6b3が面に平行して突設されており、スイッチ用突起6b3はスライドガイド6b2、6b4により配光制御手段6がスライドした際に発光スイッチを作動させる。電源スイッチ2bがオンの状態で、放出口を形成する部位を生体表面に密着させて光照射方向に押す又は皮膚表面に押し当てることで、光照射方向と反対の方向に配光制御手段6がスライドされる。スライドに伴い、スイッチ用突起6b3が発光スイッチを押圧し、押圧された発光スイッチはユニット回路を介して光源9を発光させる。そして、光照射後に配光制御手段6が光照射方向にスライドすることで、スイッチ用突起6b3が発光スイッチから離れて発光スイッチの押圧が解除される。この光照射動作は一例であり、生体表面に押し当てて発光スイッチを作動させた状態で電源スイッチ2bをオンにすることで光照射するのはもちろん、更に他の照射スイッチを備えたものでもかまわない。
【0016】
配光制御手段6は、図6に示すように本体2及び配光制御手段6内に配設された制御回路によって制御される。制御回路は、マイクロプロセッサユニット(MPU)21と、アダプタ付きLiイオンセルとその保護ICとを備えた充電制御部22と、ストロボコンデンサとその電圧制御ICとを備えるコンデンサチャージ部23と、光源9のトリガ制御を行うフラッシュ制御部24と、周辺回路部25とを備える。制御回路が行う光照射の制御として、例えば、照射ユニット4の連続光照射回数・通算光照射回数の記憶及び回数に応じた光源9の発光量の調節等の長期使用における光量の制御や、照射ユニット4の温度検知あるいは本体カバー3・照射ユニット4の有無検知等の安全管理等を行うことは、適宜設計変更可能である。
【0017】
例えば、光源9としてキセノンフラッシュランプを用いた場合に、キセノン管両端に600V印加(管陰極に−300V印加)し、次にキセノン管表面に5kV印加して、トリガートランスにより300Vを昇圧し、キセノン管内がイオン化され、電流通過(約110A、1ms)により発光させる。図7に、この条件で皮膚表面に照射された光の発光の波長分布(スペクトル分布)7Xを示す。図7に示すように、スペクトル分布7Xは、波長400〜500(nm)に第1の高エネルギー部7X1を、波長800〜1000(nm)に第2の高エネルギー部7X2を有する。レンズ5から照射された光は、配光制御手段6を介して、出射面であるレンズ5の前面から5mmの位置に、図8に示す光量分布8Xを有するように光学設計されている。光量分布8Xは、図3に示すレンズ5のレンズ幅方向(矢印5Xの方向)における光量分布を示しており、極大値8X1、8X2、8X3を有する。
【0018】
配光制御手段6により、光源9から照射した光を皮膚表面に直接接触させることがなくなる。また、光源9を覆う遮光部6bにより照射された光が漏れることを防止すると共に、光学的部材を配置した放出部6aにより、皮膚表面が光照射装置1に入り込むことを抑えて、光照射手段である光源9に皮膚表面が接触して火傷等が生じるおそれを防止する。更に、放出部6aが照射した光量を均一化して照射するため、皮膚表面に安定した光量で光を照射することができる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る光照射装置1では、上記した構成により、400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスを、レンズ5の前面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる。この光は低出力光であるため、皮膚表面に照射しても、皮膚に火傷、シミ等を起こすことがなく、皮膚への負担が小さい。
【0020】
光照射装置1の出射面から付与された光のパルスを、例えばワックス脱毛等を行った、脱毛後の肌にあてる。毛の毛周期を図9に示す。脱毛を行うことにより、毛周期を休止期から成長期に誘導する。ここで、成長期に入った毛に対して本発明の実施の形態に係る光照射装置1により光を照射すると、この光は毛包のメラノサイトに吸収される。メラノサイトは、毛の色を決定するメラニンを毛に供給する。光の照射により毛包のメラノサイトに光が作用すると、メラノサイトがアポトーシスを起こしてメラニンの合成が低下する。毛の色は、成長期に毛にメラノサイトで生成され供給されるメラニン量で決定するため、成長期にメラニン色素の供給が無ければ白色の毛が成長する。このため、毛周期が成長期にある体毛に光を照射すると、毛が白色化すると考えられる。また、この光照射の効果は、1毛周期の期間のみ持続し、可逆性もあり、再現性も高い。なお、本実施の形態では脱毛により毛周期が成長期にある体毛に光を照射したが、脱毛以外の方法、例えば自然に成長期になった体毛に対して照射しても同様の効果が得られる。
【0021】
このように、本発明の実施の形態に係る光照射装置1を脱毛後の毛周期が成長期にある体毛に照射することにより、低出力光の照射で皮膚に負担をかけることなく、家庭で容易に毛の白色化が可能となる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明の実施の形態に係る光照射装置について更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施の形態に係る光照射装置による毛の白色化の効果を確認するために、次に説明する評価試験を行った。
【0024】
C57BL/6マウスの毛包が成長期ではなく休止期のマウスの背部皮膚にワックス脱毛して毛の成長期を休止期から成長期に誘導した。脱毛後5日、つまり、成長開始後5日目のマウスの背部について、実施例1ではマウスの頭に向かって左側に1回、右側に10回光を照射した。実施例2では、マウスの頭に向かって左側に5回照射、右側に10回照射した。実施例3では、マウスの頭に向かって左側に1回照射、右側に10回照射を5日間連続で実施した。照射する光は、照射時間が1msで照射エネルギーが0.3J/cm2、波長が400〜1200nmである。
【0025】
各実施例で背部に光を照射したマウスに対し、経過観察又は皮膚のサンプリングを行った。皮膚のサンプリングは、照射10時間後、照射72時間後に行った。
【0026】
<組織切片の作製方法>
1.採皮するマウスを頚椎脱臼した。
【0027】
2.マウスの背部皮膚に70%エタノールをかけ、キムワイプ又はティッシュで拭いて、皮膚表面の皮脂を取り除いた。
【0028】
3.照射領域にあわせて皮膚を切った。本実験では、照射領域を1×3cmと設定したため、確実に照射されていると考えられる0.7×2cmくらいの領域を切り取った。照射しないコントロールも同様に行った。
【0029】
4.切り取った皮膚を1×PBS(−)につけた。
【0030】
5.皮膚をさらに0.2×0.5cmの大きさに必要量をメスで切った。
【0031】
6.必要に応じて皮膚を平らに固定するためにメッシュに挟んだ。
【0032】
7.リン酸緩衝中性ホルマリンで3時間、又は組織用迅速固定液(KURABO)で1時間固定した。
【0033】
8.1×PBS(−)で10分×3回洗った。
【0034】
9.70%エタノールにつけた。このまま4℃で数日は保存可能であり、すぐに次のステップに進む場合には室温で30分ゆっくり振とうさせながら置いた。
【0035】
10.このあとは以下の通りに液交換をし、パラフィンに包埋した。
【0036】
99.5%エタノール 30分×2回
100%エタノール 30分×2回
キシレン 30分×3回
キシレン/パラフィン(45℃) 30分×1回
パラフィン(60℃) 30分×3回
11.包埋ブロックを滑走式ミクロトームで4〜5μmの切片にした。
【0037】
<免疫染色の方法>
組織切片を貼り付けたスライドガラスを以下の手順で液につけ、脱パラフィンした。
【0038】
キシレン 10分×3回
99.5%エタノール 5分×4回
1×PBS(−) 5分程度
サンプルが乾かないようにDAKOペン(DAKO)でサンプルの周りを囲んだ。
【0039】
1×PBS(−)をのせた。
【0040】
<ssDNA染色>
1.0.4〜0.8mg/ml proKをサンプルにのせ、室温で15分反応させた。
【0041】
2.1×PBS(−)で洗浄した。
【0042】
3.1%BSAをサンプルにのせ、室温で30分間ブロッキングした。
【0043】
4.anti−ssDNA抗体(DAKO社)を1:100で希釈し、サンプルにのせた。
【0044】
5.4℃で一晩、または室温で2時間反応させた。
【0045】
6.1×PBS(−)で5分×3回洗浄した。
【0046】
7.二次抗体を反応させた。これは、使用抗体:donkey anti−rabbit IgG Alexa Flour 488(インビトロジェン) 1:1000〜2000 室温で30分行った。
【0047】
8.1×PBS(−)で5分×3回洗浄した。
【0048】
9.0.5mg/ml DAPIを1000倍希釈したものをサンプルに1滴たらした後封入した。
【0049】
<顕微鏡観察>
顕微鏡としてOLYMPUS BX−50を使用した。対物レンズは10倍とし、使用フィルターは、WU(DAPI染色)、WIY(Alexa594)、NIBA(Alexa488)とした。デジタルカメラは、Pixera penguin 150CLMを用いた。
【0050】
<観察結果>
図10に照射10時間後の顕微鏡による観察結果を示す。図10(a)、(c)は光を照射していない部位のマウスの皮膚を観察したものであり、図10(a)は皮膚組織切片をHE染色した結果を、図10(c)は抗ssDNA抗体を用いた結果を示す。図10(b)、(d)は光を照射した部位のマウスの皮膚を観察したものであり、図10(b)はHE染色の結果を、図10(d)は抗ssDNA抗体を用いた結果を示す。図10(a)、(b)に示すHE染色の結果より、10a、10bで示すように、皮膚の組織上は特に目立った変化は起きていない。アポトーシスの状態を抗ssDNA抗体を用いて検討した結果では、図10(d)において10dで示すように、光を照射した方ではssDNA陽性の部分が存在しており、細胞死(アポトーシス)が起きている可能性が示された。
【0051】
図11に照射72時間(3日)後の顕微鏡による観察結果を示す。図11(a)は光を照射していない部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を、図11(b)は光を照射した部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を、図11(c)は図11(b)の11Bを拡大した結果を示す。図11(a)において、メラニン11a2は毛乳頭11a1の付近に存在する。これに対し、光を照射した部位では、図11(b)、(c)に示すように毛乳頭11b1の周囲に存在する毛母細胞の毛母サイズが小さくなっている。また、メラニンは本来毛母付近に存在するものであるが、光を照射した場合にはメラニン11b2、11cは毛包(毛根)上方に移動していることがわかる。小さくなった毛母ではアポトーシスを逃れたケラチノサイトが増殖し、毛を成長させようとするが、メラニンを産生するメラノサイトが無くなっているため、メラニンを含まない白い毛が生えてくると考えられる。このように、各実施例において光を照射すると、メラニンを含むメラノサイトやケラチノサイトがアポトーシスを起こし、数日後に対外に排出されるという現象を誘導して毛の白色化が起きると考えられる。
【0052】
次に、ワックス脱毛後、照射条件の相違による毛の白色化の例を図12に示す。図12(a)〜(c)は実施例1を、図12(d)〜(f)は実施例2を、図12(g)〜(j)は実施例3の結果を示す。
【0053】
実施例1では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(a)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12a1には光を当てずに、右側部12a2に10回、左側12a3に1回光を照射した。照射後3日後には、図12(b)に示すように、中心部12b1では黒い毛が生えてきているが、右側部12b2及び左側部12b3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後7日後には、図12(c)に示すように、中心部12c1では黒い毛が生えてきているが、右側部12c2及び左側部12c3は白い毛が生えた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12c2の方が多かった。
【0054】
実施例2では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(d)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12d1には光を当てずに、右側部12d2に10回、左側部12d3に5回光を照射した。照射後3日後には、図12(e)に示すように、中心部12e1では黒い毛が生えてきているが、右側部12e2及び左側部12e3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後7日後には、図12(f)に示すように、中心部12f1では黒い毛が生えてきているが、右側部12f2及び左側部12f3は白い毛が生えた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12f2の方が多かった。
【0055】
実施例3では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(g)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12g1には光を当てずに、右側部12g2に10回、左側部12g3に1回、5日間連続で光を照射した。照射後3日後には、図12(h)に示すように、中心部12h1では黒い毛が生えてきているが、右側部12h2及び左側部12h3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後6日後には、図12(i)に示すように、中心部12i1では黒い毛が生えてきているが、右側部12i2及び左側部12i3は白い毛が生えた。また、照射後8日後には、図12(j)に示すように、中心部12j1では黒い毛が伸びており、右側部12j2及び左側部12j3は白い毛が伸びていた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12j2の方が多かった。
【0056】
このように、実施例1〜実施例3のいずれの場合も照射部分では毛の白色化が起きており、また、その程度が照射エネルギーの総量に依存していることがわかった。なお、これらの効果はワックス脱毛後4〜8日目に照射を行っても同様の効果が得られ、また0.1〜1J/cm2のエネルギー強度であれば同様に効果が得られる。
【0057】
以上、本実施の形態について説明したが、上記実施の形態の開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0058】
1…光照射装置
2…本体
2a…着脱操作部
2b…電源スイッチ
3…本体カバー
3a…ユニット装着部
4…照射ユニット
5…レンズ
6…配光制御手段
6a…放出部
6b…遮光部
7…フレーム
8…ランプケーシング
8a…取付用突起
9…光源
10…リフレクタ
11…回路ユニット
22…充電制御部
23…コンデンサチャージ部
24…フラッシュ制御部
25…周辺回路部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射によって毛の白色化を行う光照射装置及び毛の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、毛の色を抜く脱色(毛の白色化)は、脱色剤等によって毛に含まれるメラニン色素を分解することにより行われる。例えば、過酸化水素を含有する脱色剤を使って毛を脱色する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−51856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脱色剤を使用する方法では、皮膚に負担がかかったり、手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る光照射装置は、400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源部と、この光源部から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる導光部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る毛の処理方法は、本発明に係る光照射装置の出射面から付与された光のパルスを毛周期が成長期にある体毛に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低出力光の照射で皮膚に負担をかけることなく、容易に毛の白色化が可能な光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る光照射装置の外観を示す正面図である。(b)本発明の実施の形態に係る光照射装置の外観を示す側面図である。
【図2】光照射装置の配光制御手段とフレームの脱離状態での光照射装置の斜視図である。
【図3】照射ユニットの分解斜視図である。
【図4】(a)照射ユニットを示す正面図である。(b)図4(a)のA−A断面図である。
【図5】照射ユニットのフレームブロックの斜視図である。
【図6】本体及び配光制御手段内に配設された制御回路のブロック図である。
【図7】照射された光の発光の波長分布を示す図である。
【図8】レンズのレンズ幅方向における光量分布を示す図である。
【図9】毛の毛周期を示す説明図である。
【図10】(a)光を照射していない部位のマウスの皮膚のHE染色の結果を示す顕微鏡写真である。(b)光を照射した部位のマウスの皮膚のHE染色の結果を示す顕微鏡写真である。(c)光を照射していない部位のマウスの皮膚の抗ssDNA抗体を用いた結果を示す顕微鏡写真である。(d)光を照射した部位のマウスの皮膚の抗ssDNA抗体を用いた結果を示す顕微鏡写真である。
【図11】(a)光を照射していない部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である。(b)照射72時間後の光を照射した部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である。(c)11Bを拡大した結果を示す顕微鏡写真である。
【図12】(a)実施例1の照射前の結果を示す図である。(b)実施例1の照射後3日の結果を示す図である。(c)実施例1の照射後7日の結果を示す図である。(d)実施例2の照射前の結果を示す図である。(e)実施例2の照射後3日の結果を示す図である。(f)実施例2の照射後7日の結果を示す図である。(g)実施例3の照射前の結果を示す図である。(h)実施例3の照射後3日の結果を示す図である。(i)実施例3の照射後6日の結果を示す図である。(j)実施例3の照射後8日の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る光照射装置について添付図面に示す実施の形態に基づいて説明する。図1(a)は本発明の実施の形態に係る光照射装置1の外観を示す正面図、図1(b)は側面図である。図2は、図1に示す光照射装置1の配光制御手段6とフレーム7の脱離状態での光照射装置1の斜視図である。図3は照射ユニット4の分解斜視図、図4(a)は照射ユニットを示す正面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。図5は、照射ユニット4のフレームブロックの斜視図である。図6は、本体2及び配光制御手段6内に配設された制御回路のブロック図である。
【0010】
本発明の実施の形態に係る光照射装置1は、自然にあるいは脱毛等の人為的な誘導により毛周期が成長期になった体毛がある生体表面、特に皮膚表面に光照射を行うことにより毛の白色化を行う。本発明の実施の形態に係る光照射装置1は、片手で把持可能な本体2と、本体2の一端に着脱自在に取り付けられ、上部にレンズ5、内部に光源9を有する光照射手段である照射ユニット4と、照射ユニット4の周囲を覆い、かつ照射ユニット4から照射された光を調節する配光制御手段6と、配光制御手段6を保持し、かつ本体2に着脱自在の本体カバー3を備える。
【0011】
本体2は、光照射を制御する制御手段及び内臓電源とを内部に備えると共に、外装に、本体2の電源のオンオフを行う電源スイッチ2bと、本体カバー3の着脱を操作する着脱操作部2aを備える。本体2の照射ユニット4が取り付けられる側の端部には、照射ユニット4を着脱自在とするユニット装着部3aと、着脱操作部2aにより操作され本体カバー3を着脱自在に係止する本体側係止部と、照射ユニット4の光源9を発光させる図示しない発光スイッチとを備える。
【0012】
本体カバー3は、配光制御手段6をスライド自在で保持する配光制御手段6用の開口を有し、照射ユニット4を覆うカバー部材で形成されている。本体カバー3は、本体2と図示しない係止手段によって保持されている。
【0013】
照射ユニット4は、光が照射される略長方形状の照射口を一端に有する、前後に2つ割りしたランプケーシング8とその内部に光源9を備え、光照射口に蓋としてレンズ5が嵌め込まれている。照射ユニット4の長手方向の両外側、詳しくはレンズ5の長手方向における両端にユニット装着部3aに係脱自在な取付用突起8aが延設されており、照射ユニット4は取付用突起8aとユニット装着部3aとが係合することで本体2に着脱自在に取り付けられる。光源9として、例えばキセノン管を用いることができる。更に、照射ユニット4は、光源9からの光を反射して照射口に嵌め込んだレンズ5に向けるリフレクタ10と、リフレクタ10を保持する基台16と、発光スイッチからの信号を受けて光源9を発光させるトリガトランスである回路ユニット11を備える。回路ユニット11は、コネクタ12を搭載した回路P板13を有する。リフレクタ10は、照射口側に照射口と略同じ大きさの開口を有し、かつ反射面を内側に備えた略U字のカップ形状である。リフレクタ10の開口と逆の位置であるカップ形状の底部の内側には光源9が位置する。リフレクタ10とレンズ5は、光源9からの光を均一化する。詳しくは、リフレクタ10は光源9の発光により生じた光の向きを照射口に直行する向きに揃えると共に、照射口から照射される光量の分布を略一定に揃える。照射ユニット4の光源9は、キセノン管に限られず、一つ又は複数のダイオードとしても良い。光源9はリフレクタ10と点接触しており、両極にゴムプレート14を通し、フィクスチャ15で保持されている。
【0014】
配光制御手段6は、照射ユニット4と皮膚表面との間に介在し、図5に示すように、光を透過しない不透明部材で筒形状に形成された遮光部6bと、遮光部6bの筒形状に略長方形状で開口した一端に、光学的部材として、例えばレンズを設けた放出部6aとを備える。遮光部6bは、照射ユニット4の側面を覆い、かつ照射ユニット4が光を照射口から皮膚表面に照射する光照射方向に向かって照射ユニット4を覆う面を延設した筒形状であり、筒の開口と照射ユニット4の照射口とに対向して配置される。延設した側に位置する開口が照射ユニット4からの光を外部に放出する放出口となっており、放出口を形成する遮光部6bの端部が光照射の際に皮膚表面に当接する。光照射方向とは、照射口の開口面に直行する方向であり、リフレクタ10とレンズ5によって光量が均一化されて照射口から光が照射される。なお、光学的部材は、照射ユニット4から入射された光に対して集光する等して光の強度や向きを変化させることなく光量を均一化する形状に形成したものであり、例えば、本発明の実施の形態のように嵌合位置の光量に合わせて格子状に形成したレンズ等があげられる。また、放出部6aは放出口より光照射方向側に突出しない、詳しくは放出口を形成する遮光部6bの内部空間への入り込みを抑制して、皮膚表面が照射ユニット4、特にレンズ5に接触することを防止する。
【0015】
遮光部6bの左右両側にはフック部6b1が設けられ、本体カバー3に嵌合させることで保持されている。遮光部6bの開口の長手方向を形成する端辺を有する側面には、開口に直行する光照射方向に沿ってスライドガイド6b2、6b4がそれぞれ設けられている。スライドガイド6b2、6b4は光照射装置1を組み立てた際に配光制御手段6を光照射方向と平行にスライド自在とする。遮光部6bの側面のうち、一方の面の放出口と反対側の開口を形成する端辺の略中央には、スイッチ用突起6b3が面に平行して突設されており、スイッチ用突起6b3はスライドガイド6b2、6b4により配光制御手段6がスライドした際に発光スイッチを作動させる。電源スイッチ2bがオンの状態で、放出口を形成する部位を生体表面に密着させて光照射方向に押す又は皮膚表面に押し当てることで、光照射方向と反対の方向に配光制御手段6がスライドされる。スライドに伴い、スイッチ用突起6b3が発光スイッチを押圧し、押圧された発光スイッチはユニット回路を介して光源9を発光させる。そして、光照射後に配光制御手段6が光照射方向にスライドすることで、スイッチ用突起6b3が発光スイッチから離れて発光スイッチの押圧が解除される。この光照射動作は一例であり、生体表面に押し当てて発光スイッチを作動させた状態で電源スイッチ2bをオンにすることで光照射するのはもちろん、更に他の照射スイッチを備えたものでもかまわない。
【0016】
配光制御手段6は、図6に示すように本体2及び配光制御手段6内に配設された制御回路によって制御される。制御回路は、マイクロプロセッサユニット(MPU)21と、アダプタ付きLiイオンセルとその保護ICとを備えた充電制御部22と、ストロボコンデンサとその電圧制御ICとを備えるコンデンサチャージ部23と、光源9のトリガ制御を行うフラッシュ制御部24と、周辺回路部25とを備える。制御回路が行う光照射の制御として、例えば、照射ユニット4の連続光照射回数・通算光照射回数の記憶及び回数に応じた光源9の発光量の調節等の長期使用における光量の制御や、照射ユニット4の温度検知あるいは本体カバー3・照射ユニット4の有無検知等の安全管理等を行うことは、適宜設計変更可能である。
【0017】
例えば、光源9としてキセノンフラッシュランプを用いた場合に、キセノン管両端に600V印加(管陰極に−300V印加)し、次にキセノン管表面に5kV印加して、トリガートランスにより300Vを昇圧し、キセノン管内がイオン化され、電流通過(約110A、1ms)により発光させる。図7に、この条件で皮膚表面に照射された光の発光の波長分布(スペクトル分布)7Xを示す。図7に示すように、スペクトル分布7Xは、波長400〜500(nm)に第1の高エネルギー部7X1を、波長800〜1000(nm)に第2の高エネルギー部7X2を有する。レンズ5から照射された光は、配光制御手段6を介して、出射面であるレンズ5の前面から5mmの位置に、図8に示す光量分布8Xを有するように光学設計されている。光量分布8Xは、図3に示すレンズ5のレンズ幅方向(矢印5Xの方向)における光量分布を示しており、極大値8X1、8X2、8X3を有する。
【0018】
配光制御手段6により、光源9から照射した光を皮膚表面に直接接触させることがなくなる。また、光源9を覆う遮光部6bにより照射された光が漏れることを防止すると共に、光学的部材を配置した放出部6aにより、皮膚表面が光照射装置1に入り込むことを抑えて、光照射手段である光源9に皮膚表面が接触して火傷等が生じるおそれを防止する。更に、放出部6aが照射した光量を均一化して照射するため、皮膚表面に安定した光量で光を照射することができる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る光照射装置1では、上記した構成により、400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスを、レンズ5の前面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる。この光は低出力光であるため、皮膚表面に照射しても、皮膚に火傷、シミ等を起こすことがなく、皮膚への負担が小さい。
【0020】
光照射装置1の出射面から付与された光のパルスを、例えばワックス脱毛等を行った、脱毛後の肌にあてる。毛の毛周期を図9に示す。脱毛を行うことにより、毛周期を休止期から成長期に誘導する。ここで、成長期に入った毛に対して本発明の実施の形態に係る光照射装置1により光を照射すると、この光は毛包のメラノサイトに吸収される。メラノサイトは、毛の色を決定するメラニンを毛に供給する。光の照射により毛包のメラノサイトに光が作用すると、メラノサイトがアポトーシスを起こしてメラニンの合成が低下する。毛の色は、成長期に毛にメラノサイトで生成され供給されるメラニン量で決定するため、成長期にメラニン色素の供給が無ければ白色の毛が成長する。このため、毛周期が成長期にある体毛に光を照射すると、毛が白色化すると考えられる。また、この光照射の効果は、1毛周期の期間のみ持続し、可逆性もあり、再現性も高い。なお、本実施の形態では脱毛により毛周期が成長期にある体毛に光を照射したが、脱毛以外の方法、例えば自然に成長期になった体毛に対して照射しても同様の効果が得られる。
【0021】
このように、本発明の実施の形態に係る光照射装置1を脱毛後の毛周期が成長期にある体毛に照射することにより、低出力光の照射で皮膚に負担をかけることなく、家庭で容易に毛の白色化が可能となる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明の実施の形態に係る光照射装置について更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施の形態に係る光照射装置による毛の白色化の効果を確認するために、次に説明する評価試験を行った。
【0024】
C57BL/6マウスの毛包が成長期ではなく休止期のマウスの背部皮膚にワックス脱毛して毛の成長期を休止期から成長期に誘導した。脱毛後5日、つまり、成長開始後5日目のマウスの背部について、実施例1ではマウスの頭に向かって左側に1回、右側に10回光を照射した。実施例2では、マウスの頭に向かって左側に5回照射、右側に10回照射した。実施例3では、マウスの頭に向かって左側に1回照射、右側に10回照射を5日間連続で実施した。照射する光は、照射時間が1msで照射エネルギーが0.3J/cm2、波長が400〜1200nmである。
【0025】
各実施例で背部に光を照射したマウスに対し、経過観察又は皮膚のサンプリングを行った。皮膚のサンプリングは、照射10時間後、照射72時間後に行った。
【0026】
<組織切片の作製方法>
1.採皮するマウスを頚椎脱臼した。
【0027】
2.マウスの背部皮膚に70%エタノールをかけ、キムワイプ又はティッシュで拭いて、皮膚表面の皮脂を取り除いた。
【0028】
3.照射領域にあわせて皮膚を切った。本実験では、照射領域を1×3cmと設定したため、確実に照射されていると考えられる0.7×2cmくらいの領域を切り取った。照射しないコントロールも同様に行った。
【0029】
4.切り取った皮膚を1×PBS(−)につけた。
【0030】
5.皮膚をさらに0.2×0.5cmの大きさに必要量をメスで切った。
【0031】
6.必要に応じて皮膚を平らに固定するためにメッシュに挟んだ。
【0032】
7.リン酸緩衝中性ホルマリンで3時間、又は組織用迅速固定液(KURABO)で1時間固定した。
【0033】
8.1×PBS(−)で10分×3回洗った。
【0034】
9.70%エタノールにつけた。このまま4℃で数日は保存可能であり、すぐに次のステップに進む場合には室温で30分ゆっくり振とうさせながら置いた。
【0035】
10.このあとは以下の通りに液交換をし、パラフィンに包埋した。
【0036】
99.5%エタノール 30分×2回
100%エタノール 30分×2回
キシレン 30分×3回
キシレン/パラフィン(45℃) 30分×1回
パラフィン(60℃) 30分×3回
11.包埋ブロックを滑走式ミクロトームで4〜5μmの切片にした。
【0037】
<免疫染色の方法>
組織切片を貼り付けたスライドガラスを以下の手順で液につけ、脱パラフィンした。
【0038】
キシレン 10分×3回
99.5%エタノール 5分×4回
1×PBS(−) 5分程度
サンプルが乾かないようにDAKOペン(DAKO)でサンプルの周りを囲んだ。
【0039】
1×PBS(−)をのせた。
【0040】
<ssDNA染色>
1.0.4〜0.8mg/ml proKをサンプルにのせ、室温で15分反応させた。
【0041】
2.1×PBS(−)で洗浄した。
【0042】
3.1%BSAをサンプルにのせ、室温で30分間ブロッキングした。
【0043】
4.anti−ssDNA抗体(DAKO社)を1:100で希釈し、サンプルにのせた。
【0044】
5.4℃で一晩、または室温で2時間反応させた。
【0045】
6.1×PBS(−)で5分×3回洗浄した。
【0046】
7.二次抗体を反応させた。これは、使用抗体:donkey anti−rabbit IgG Alexa Flour 488(インビトロジェン) 1:1000〜2000 室温で30分行った。
【0047】
8.1×PBS(−)で5分×3回洗浄した。
【0048】
9.0.5mg/ml DAPIを1000倍希釈したものをサンプルに1滴たらした後封入した。
【0049】
<顕微鏡観察>
顕微鏡としてOLYMPUS BX−50を使用した。対物レンズは10倍とし、使用フィルターは、WU(DAPI染色)、WIY(Alexa594)、NIBA(Alexa488)とした。デジタルカメラは、Pixera penguin 150CLMを用いた。
【0050】
<観察結果>
図10に照射10時間後の顕微鏡による観察結果を示す。図10(a)、(c)は光を照射していない部位のマウスの皮膚を観察したものであり、図10(a)は皮膚組織切片をHE染色した結果を、図10(c)は抗ssDNA抗体を用いた結果を示す。図10(b)、(d)は光を照射した部位のマウスの皮膚を観察したものであり、図10(b)はHE染色の結果を、図10(d)は抗ssDNA抗体を用いた結果を示す。図10(a)、(b)に示すHE染色の結果より、10a、10bで示すように、皮膚の組織上は特に目立った変化は起きていない。アポトーシスの状態を抗ssDNA抗体を用いて検討した結果では、図10(d)において10dで示すように、光を照射した方ではssDNA陽性の部分が存在しており、細胞死(アポトーシス)が起きている可能性が示された。
【0051】
図11に照射72時間(3日)後の顕微鏡による観察結果を示す。図11(a)は光を照射していない部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を、図11(b)は光を照射した部位のマウスの皮膚をHE染色した結果を、図11(c)は図11(b)の11Bを拡大した結果を示す。図11(a)において、メラニン11a2は毛乳頭11a1の付近に存在する。これに対し、光を照射した部位では、図11(b)、(c)に示すように毛乳頭11b1の周囲に存在する毛母細胞の毛母サイズが小さくなっている。また、メラニンは本来毛母付近に存在するものであるが、光を照射した場合にはメラニン11b2、11cは毛包(毛根)上方に移動していることがわかる。小さくなった毛母ではアポトーシスを逃れたケラチノサイトが増殖し、毛を成長させようとするが、メラニンを産生するメラノサイトが無くなっているため、メラニンを含まない白い毛が生えてくると考えられる。このように、各実施例において光を照射すると、メラニンを含むメラノサイトやケラチノサイトがアポトーシスを起こし、数日後に対外に排出されるという現象を誘導して毛の白色化が起きると考えられる。
【0052】
次に、ワックス脱毛後、照射条件の相違による毛の白色化の例を図12に示す。図12(a)〜(c)は実施例1を、図12(d)〜(f)は実施例2を、図12(g)〜(j)は実施例3の結果を示す。
【0053】
実施例1では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(a)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12a1には光を当てずに、右側部12a2に10回、左側12a3に1回光を照射した。照射後3日後には、図12(b)に示すように、中心部12b1では黒い毛が生えてきているが、右側部12b2及び左側部12b3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後7日後には、図12(c)に示すように、中心部12c1では黒い毛が生えてきているが、右側部12c2及び左側部12c3は白い毛が生えた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12c2の方が多かった。
【0054】
実施例2では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(d)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12d1には光を当てずに、右側部12d2に10回、左側部12d3に5回光を照射した。照射後3日後には、図12(e)に示すように、中心部12e1では黒い毛が生えてきているが、右側部12e2及び左側部12e3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後7日後には、図12(f)に示すように、中心部12f1では黒い毛が生えてきているが、右側部12f2及び左側部12f3は白い毛が生えた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12f2の方が多かった。
【0055】
実施例3では、成長開始後5日目のマウスの背部について、図12(g)に示すようにマウスの頭に向かって中心部12g1には光を当てずに、右側部12g2に10回、左側部12g3に1回、5日間連続で光を照射した。照射後3日後には、図12(h)に示すように、中心部12h1では黒い毛が生えてきているが、右側部12h2及び左側部12h3は抑毛はされているが、毛は生えていなかった。照射後6日後には、図12(i)に示すように、中心部12i1では黒い毛が生えてきているが、右側部12i2及び左側部12i3は白い毛が生えた。また、照射後8日後には、図12(j)に示すように、中心部12j1では黒い毛が伸びており、右側部12j2及び左側部12j3は白い毛が伸びていた。白い毛の量は、照射回数の多い右側部12j2の方が多かった。
【0056】
このように、実施例1〜実施例3のいずれの場合も照射部分では毛の白色化が起きており、また、その程度が照射エネルギーの総量に依存していることがわかった。なお、これらの効果はワックス脱毛後4〜8日目に照射を行っても同様の効果が得られ、また0.1〜1J/cm2のエネルギー強度であれば同様に効果が得られる。
【0057】
以上、本実施の形態について説明したが、上記実施の形態の開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0058】
1…光照射装置
2…本体
2a…着脱操作部
2b…電源スイッチ
3…本体カバー
3a…ユニット装着部
4…照射ユニット
5…レンズ
6…配光制御手段
6a…放出部
6b…遮光部
7…フレーム
8…ランプケーシング
8a…取付用突起
9…光源
10…リフレクタ
11…回路ユニット
22…充電制御部
23…コンデンサチャージ部
24…フラッシュ制御部
25…周辺回路部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源部と、
前記光源部から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる導光部と、
を備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光源部から付与された光のパルスは、毛周期が成長期にある毛包のメラノサイトに作用して毛を白色化することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光照射装置の出射面から付与された光のパルスを、毛周期が成長期にある体毛に照射することを特徴とする毛の処理方法。
【請求項4】
前記光のパルスを、肌の脱毛後に照射することを特徴とする請求項3に記載の毛の処理方法。
【請求項1】
400〜1200nmの波長の光を、半値幅が600μsのパルスとして付与する光源部と、
前記光源部から付与された光のパルスを、出射面から5mmの距離に0.1〜1J/cm2のエネルギー強度で分布させる導光部と、
を備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光源部から付与された光のパルスは、毛周期が成長期にある毛包のメラノサイトに作用して毛を白色化することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光照射装置の出射面から付与された光のパルスを、毛周期が成長期にある体毛に照射することを特徴とする毛の処理方法。
【請求項4】
前記光のパルスを、肌の脱毛後に照射することを特徴とする請求項3に記載の毛の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−246760(P2010−246760A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99990(P2009−99990)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】
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