説明

光硬化インクジェットインク組成物

【課題】低粘度かつ高反応性でありながら、膜特性、特に柔軟性に優れた印字物を提供できる光硬化型インクジェットインクを提供する。
【解決手段】下記一般式(A1):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(A1)
(式中、R1は−Hまたは−CH3、R2は炭素数2〜20の有機残基、R3は炭素数1〜11の有機残基。)で表されるモノマーAを40質量%以上75質量%以下と、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを1質量%以上20質量%以下と、光重合開始剤と、を含有する光硬化インクジェットインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載されているように、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを65質量%以上含有することで、光硬化性、膜特性、耐候性にすぐれた光硬化型液状樹脂組成物が得られることが知られている。しかしながら、インクジェットインクとして利用するには粘度が高すぎるという問題があった。
また、光硬化型インクジェットインクとして利用するには、低粘度かつ高反応性が求められ、これは、VEEAなどの低粘度かつ高反応性のモノマーを含有することで満たすことができるが(特許文献2)、印字された膜の柔軟性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−60631号公報
【特許文献2】特許第3461501号公報
【特許文献3】特許第3544658号公報
【特許文献4】特許第3619778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低粘度かつ高反応性でありながら、膜特性、特に柔軟性に優れた印字物を提供できる光硬化型インクジェットインクを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、一般式 CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3
(式中、R1は−Hまたは−CH3、R2は炭素数2〜20の有機残基、R3は炭素数1〜11の有機残基。)で表されるモノマーをベースとするインクジェットインクに、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
[適用例1]下記一般式(A1):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(A1)
(式中、R1は−Hまたは−CH3、R2は炭素数2〜20の有機残基、R3は炭素数1〜11の有機残基。)で表されるモノマーAを40質量%以上75質量%以下と、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを1質量%以上20質量%以下と、光重合開始剤と、を含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【0007】
本適用例によれば、上記一般式で表されるモノマーにより、たとえばフェノキシエチルアクリレートのみ用いる場合よりも高反応性かつ低粘度となり、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを1〜20質量%含有することにより、柔軟性に優れた印字物を提供することができる。
【0008】
[適用例2]適用例1の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリル官能基数が、2以上4以下である光硬化インクジェットインク組成物。
【0009】
本適用例によれば、多官能のオリゴマーを用いることにより、インク中のアクリル基数が増え、それにより、適用例1の一般式で表されるモノマー中のビニルエーテルの反応性が増し、その結果硬化速度が増す。官能基数が多いほど、反応性が増すが、柔軟性が低下するため、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0010】
[適用例3]適用例2のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである光硬化インクジェットインク組成物。
【0011】
本適用例によれば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、印字物に高い柔軟性を付与することができ、柔軟性が要求される印刷物において特に有利となる。
【0012】
[適用例4]適用例1〜3の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物に、さらにフェノキシエチル(メタ)アクリレートを7質量%以上40質量%以下含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【0013】
本適用例によれば、量溶媒でもあるモノマーPEAを含有することにより、開始剤やオリゴマーの溶解性が増す。それにより、非含有のインクに比べ、多くの開始剤やオリゴマーを含有することができ、したがって、硬化性、膜特性に優れたインクを提供することができる。
【0014】
[適用例5]適用例1〜4の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物の、一般式(A1)で表されるモノマーAが、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである光硬化インクジェットインク組成物。
【0015】
2−(ビニロキシエトキシ)エチル基を有するモノマーのうち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル(以下、VEEA)を用いた場合に特に反応性は高くなる。
【0016】
[適用例6]適用例1〜5の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物に、さらに色材を含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【0017】
色材を含有することで、光がインク膜全体に届きにくくなるため、含有しない場合に比べ光硬化性が低下することが考えられるが、本適用例によれば、色材を含有しても、十分な光硬化性を得ることができる。
【0018】
[適用例7]適用例1〜6の何れか一例に記載のインクの光重合開始剤が、アシルフォスフィン系化合物と、チオキサントン化合物である光硬化インクジェットインク組成物。
【0019】
UVランプの波長でラジカルを発生するアシルフォスフィン系化合物と、チオキサントン化合物の増感作用により、高い光硬化性を付与することができる、
【0020】
[適用例8]適用例1〜7の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物の光重合開始剤の含有量が、アシルフォスフィン系化合物7.0質量%以上15質量%以下、チオキサントン化合物0.5質量%以上5.0質量%以下である光硬化インクジェットインク組成物。
【0021】
本適用例によれば、効率的にラジカルを発生することのできるアシルフォスフィン量の最低量は7.0質量%で、溶解量を考えると15質量%まで添加可能である。
また、チオキサントン化合物量0.5質量%以上で増感効果が見られる。多量に添加することにより、色安定性が悪化するが、5.0質量%以下であれば添加可能である。
【0022】
[適用例9]LEDのピーク波長が365〜405nmの範囲内にある300mJ/cm2未満の照射エネルギーの光で硬化可能な適用例1〜8の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物。
【0023】
ピーク波長が365〜405nmにある光で硬化することにより、チオキサントン化合物やアシルフォスフィン系化合物の効果が最大となる。また、少ない照射エネルギーで硬化が可能である。
【0024】
[適用例10]1〜3μmの膜厚で硬化可能な適用例1〜9の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物。
【0025】
本適用例によれば、発明したインクジェットインクは、1〜3μmで硬化可能であった。
【0026】
[適用例11]適用例1〜10の何れか一例に記載の光硬化インクジェットインク組成物であって、前記一般式(A1)で表されるモノマーAを、45質量%以上75質量%以下含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【0027】
本適用例によれば、低粘度化、硬化性、伸びをより優れるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0029】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0030】
本明細書において、「硬化性」とは、光の照射により、光重合開始剤の存在下又は不存在下で重合硬化する性質をいう。「保存安定性」とは、インクを60℃で7日間保存したときの、保存前後における粘度が変化しにくい性質をいう。
【0031】
[紫外線硬化型インクジェット用インク組成物]
本発明の一実施形態は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に係る。当該紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、下記一般式(A1):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(A1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(以下、「モノマーA」という。)と、(メタ)アクリル化アミン化合物と、前記(メタ)アクリル化アミン化合物以外のヒンダードアミン化合物と、光重合開始剤と、を含む。
以下、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
【0032】
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0033】
(モノマーA)
本実施形態において必須の重合性化合物であるモノマーAは、上記一般式(A1)で示される。
【0034】
インク組成物がモノマーAを含有することにより、インクの硬化性を良好なものとすることができる。
【0035】
上記の一般式(A1)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0036】
上記の一般式(A1)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0037】
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0038】
上記の一般式(A1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0039】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0040】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0041】
モノマーAの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、40〜75質量%であり、好ましくは45〜75%であり、さらに好ましくは50〜75質量%であり、特に好ましくは55〜70質量%である。含有量が上記範囲内であると、特にインクの硬化性を良好にすることができる。特に45質量%以上のほうが45質量%未満の場合よりも、インクの低粘度化、硬化性、伸びの点で好ましい。
モノマーAの含有量は40質量%未満では、粘度が高くなり、なおかつ硬化性や伸びも低下する。逆に、75質量%を超えると、相対的に他の成分の含有量が少なくなり好ましくない。例えば、重合開始剤にとって良溶媒となるフェノキシエチルアクリレートを添加できる量が少なくなり、それに伴い、含有する重合開始剤の量を減らす必要があり、硬化性が低下する場合が有る。
【0042】
上記一般式(A1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0044】
(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明のインク組成物は更にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールとポリイソシアネートとの付加反応により得られるウレタン基(ウレタン結合)を複数有する主骨格(上記の複数のウレタン基とそれらより連結された部分)を有し、さらに、末端及びあるいは側鎖に(メタ)アクリル基が導入された化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーはインク組成物中に1〜20質量%含有し、2〜15質量%含有することが好ましい。この含有量であると柔軟性に優れた印字物とすることができる。1%に満たない場合、硬化性が劣り、また、塗膜に十分な柔軟性を付与することができない。また、20%を越えるとインクの粘度が高くなるため、インクジェットヘッドで吐出するには好ましくない。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの中でも特に、導入された(メタ)アクリル基が2〜4個である2〜4官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。2〜4官能のオリゴマーを用いることにより、インク中のアクリル基数が増え、それにより、一般式で表されるモノマーA中のビニルエーテルの反応性が増し、その結果硬化速度が増す。官能基数が多いほど、反応性が増すが、柔軟性が低下するため、2官能以上4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0046】
さらに、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、その主骨格にアルキル基を有し芳香環を有さない脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。アルキル基は、線状のアルキル基でも環状の脂環式アルキル基でもよい。主骨格においてアルキル基以外の元素が含まれていても良い。脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、印字物に高い柔軟性を付与することができ、柔軟性が要求される印刷物において特に有利となる。アルキル基部分は、分岐が少なく直鎖状であるほど、なおかつ炭素数が多いほど柔軟性を付与できる。
【0047】
上記適用例に記載のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、次に挙げる化合物が好ましいEBECRYL 230, EBECRYL 244, EBECRYL 245, EBECRYL 264, EBECRYL 265, EBECRYL 270, EBECRYL 280/15 IB, EBECRYL 284, EBECRYL 285, EBECRYL 294/25 HD, EBECRYL 401, EBECRYL 402, EBECRYL 1259, EBECRYL 4820, EBECRYL 4858, EBECRYL 8200, EBECRYL 8201, EBECRYL 8210, EBECRYL 8307, EBECRYL 8402, EBECRYL 8405, EBECRYL8407, EBECRYL 8411, EBECRYL 8800−20R, EBECRYL 8804, EBECRYL 8807, EBECRYL 9260, EBECRYL 9270, KRM7735, KRM8296 (以上、ダイセル・サイテック製)CN929, CN940, CN944B85, CN959, CN961, CN961E75, CN961H81, CN962, CN963, CN963A80, CN963B80, CN963E75, CN963E80, CN963J75, CN964, CN964A85, CN964E75, CN965, CN965A80, CN966, CN966A80, CN966B85, CN966H90, CN966J75, CN966R60, CN980, CN981, CN981A75, CN981B88, CN982A75, CN982B88, CN982E75, CN982P90, CN983, CN985B88, CN989, CN991, CN996, CN9001, CN9002, CN9004, CN9005, CN9007, CN9008, CN9009, CN9011, CN9178, CN9788, CN9893(以上、サートマー製)GENOMER 4215, GENOMER 4269/M22, GENOMER 4297, GENOMER 4312, GENOMER 4316(以上、Rahn AG製)
【0048】
(上記以外の重合性化合物)
上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
【0050】
その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0052】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0054】
これらの中でも、その他の重合性化合物は単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この場合、インク組成物が低粘度となり、光重合開始剤その他の添加剤の溶解性に優れ、かつ、インクジェット記録時の吐出安定性が得られやすい。さらに塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性が増すため、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0055】
さらに、上記単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格、及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有することが好ましい。上記その他の重合性化合物が上記骨格を有する単官能(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させることができる。
【0056】
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、粘度及び臭気を低下させるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0058】
上述したモノマーA及びウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを除くその他の重合性化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは5〜55質量%である。特に、インク組成物が上記のフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む場合、フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、7〜40質量%が好ましく、特に7〜35%が好ましい。フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量がこの範囲であると、インクの開始剤等の溶解性等の点で優れる。
【0059】
フェノキシエチル(メタ)アクリレートを8%以上含有することにより、開始剤やオリゴマーの溶解性が増す。それにより、非含有のインクに比べ、多くの開始剤やオリゴマーを含有することができ、したがって、硬化性、膜特性に優れたインクを提供することができる。フェノキシエチル(メタ)アクリレートとして特にフェノキシエチルアクリレート(PEA)が好ましい。
【0060】
上記のその他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0062】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物がより好ましい。
【0064】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0065】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0066】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
光重合開始剤は、紫外線硬化速度を十分に発揮させ、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%であることが好ましい。特に、上記のとおり、インク組成物に含まれる光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物である場合、前記アシルホスフィンオキサイド化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは7質量%以上、より好ましくは7〜15質量%含まれる。加えて、前記チオキサントン化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.5質量%以上含まれ、より好ましくは0.5〜5質量%含まれる。この場合、特にインクの硬化性を良好にすることができる。
【0068】
アシルフォスフィン系化合物としては、次に挙げる化合物が好ましい。
Chiba IRGACURE 819, IRGACURE 1800, IRGACURE 1870, DAROCUR TPO, DAROCUR 4265, Lambson Speedcure TPO
【0069】
チオキサントン化合物としては、次に挙げる化合物が好ましい。
日本化薬 KAYAKURE DETX, Lambson Speedcure DETX, Speedcure ITX, Speedcure CTX, Speedcure CPTX
【0070】
なお、前述の重合性化合物として光重合性の化合物を用いることで、光重合開始剤の添加を省略することが可能であるが、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0071】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0072】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0073】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0074】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0075】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0076】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6、18、21が挙げられる。
【0077】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント イエロー 1、C.I.ピグメント イエロー 2、C.I.ピグメント イエロー 3、C.I.ピグメントイエロー 4、C.I.ピグメント イエロー 5、C.I.ピグメント イエロー 6、C.I.ピグメント イエロー 7、C.I.ピグメント イエロー 10、C.I.ピグメント イエロー 11、C.I.ピグメント イエロー 12、C.I.ピグメントイエロー 13、C.I.ピグメント イエロー 14、C.I.ピグメント イエロー 16、C.I.ピグメント イエロー 17、C.I.ピグメント イエロー 24、C.I.ピグメント イエロー 34、C.I.ピグメント イエロー 35、C.I.ピグメント イエロー 37、C.I.ピグメント イエロー 53、C.I.ピグメント イエロー 55、C.I.ピグメント イエロー 65、C.I.ピグメント イエロー 73、C.I.ピグメント イエロー 74、C.I.ピグメント イエロー 75、C.I.ピグメント イエロー 81、C.I.ピグメント イエロー 83、C.I.ピグメントイエロー 93、C.I.ピグメント イエロー 94、C.I.ピグメント イエロー 95、C.I.ピグメント イエロー 97、C.I.ピグメント イエロー 98、C.I.ピグメント イエロー 99、C.I.ピグメント イエロー 108、C.I.ピグメント イエロー 109、C.I.ピグメント イエロー 110、C.I.ピグメント イエロー 113、C.I.ピグメント イエロー 114、C.I.ピグメント イエロー 117、C.I.ピグメント イエロー 120、C.I.ピグメント イエロー 124、C.I.ピグメント イエロー 128、C.I.ピグメント イエロー 129、C.I.ピグメント イエロー 133、C.I.ピグメント イエロー 138、C.I.ピグメント イエロー 139、C.I.ピグメント イエロー 147、C.I.ピグメント イエロー 151、C.I.ピグメント イエロー 153、C.I.ピグメント イエロー 154、C.I.ピグメント イエロー 167、C.I.ピグメントイエロー 172、C.I.ピグメント イエロー 180が挙げられる。
【0078】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント レッド 1、C.I.ピグメント レッド 2、C.I.ピグメント レッド 3、C.I.ピグメント レッド 4、C.I.ピグメント レッド 5、C.I.ピグメント レッド 6、C.I.ピグメント レッド 7、C.I.ピグメント レッド 8、C.I.ピグメント レッド 9、C.I.ピグメント レッド 10、C.I.ピグメント レッド 11、C.I.ピグメント レッド 12、C.I.ピグメント レッド 14、C.I.ピグメント レッド 15、C.I.ピグメント レッド 16、C.I.ピグメント レッド 17、C.I.ピグメント レッド 18、C.I.ピグメント レッド 19、C.I.ピグメントレッド 21、C.I.ピグメント レッド 22、C.I.ピグメント レッド 23、C.I.ピグメント レッド 30、C.I.ピグメント レッド 31、C.I.ピグメント レッド 32、C.I.ピグメント レッド 37、C.I.ピグメント レッド 38、C.I.ピグメント レッド 40、C.I.ピグメント レッド 41、C.I.ピグメント レッド 42、C.I.ピグメント レッド 48(Ca)、C.I.ピグメント レッド 48(Mn)、C.I.ピグメント レッド 57(Ca)、C.I.ピグメント レッド 57:1、C.I.ピグメント レッド 88、C.I.ピグメントレッド 112、C.I.ピグメント レッド 114、C.I.ピグメント レッド 122、C.I.ピグメント レッド 123、C.I.ピグメント レッド 144、C.I.ピグメント レッド 146、C.I.ピグメント レッド 149、C.I.ピグメント レッド 150、C.I.ピグメント レッド 166、C.I.ピグメント レッド 168、C.I.ピグメント レッド 170、C.I.ピグメント レッド 171、C.I.ピグメント レッド 175、C.I.ピグメント レッド 176、C.I.ピグメント レッド 177、C.I.ピグメント レッド 178、C.I.ピグメントレッド 179、C.I.ピグメント レッド 184、C.I.ピグメント レッド 185、C.I.ピグメント レッド 187、C.I.ピグメント レッド 202、C.I.ピグメント レッド 209、C.I.ピグメント レッド 219、C.I.ピグメント レッド 224、C.I.ピグメント レッド 245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、C.I.ピグメント ヴァイオレット 23、C.I.ピグメント ヴァイオレット 32、C.I.ピグメント ヴァイオレット 33、C.I.ピグメント ヴァイオレット 36、C.I.ピグメント ヴァイオレット 38、C.I.ピグメント ヴァイオレット 43、C.I.ピグメント ヴァイオレット 50が挙げられる。
【0079】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント ブルー 1、C.I.ピグメント ブルー 2、C.I.ピグメント ブルー 3、C.I.ピグメント ブルー 15、C.I.ピグメント ブルー 15:1、C.I.ピグメント ブルー 15:2、C.I.ピグメント ブルー 15:3、C.I.ピグメント ブルー 15:34、C.I.ピグメント ブルー 15:4、C.I.ピグメント ブルー 16、C.I.ピグメント ブルー 18、C.I.ピグメント ブルー 22、C.I.ピグメント ブルー 25、C.I.ピグメント ブルー 60、C.I.ピグメント ブルー 65、C.I.ピグメント ブルー 66、C.I.バット ブルー 4、C.I.バットブルー 60が挙げられる。
【0080】
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、C.I.ピグメント グリーン 10、C.I.ピグメント ブラウン 3、C.I.ピグメント ブラウン 5、C.I.ピグメント ブラウン 25、C.I.ピグメント ブラウン 26、C.I.ピグメント オレンジ 1、C.I.ピグメントオレンジ 2、C.I.ピグメント オレンジ 5、C.I.ピグメント オレンジ 7、C.I.ピグメント オレンジ 13、C.I.ピグメント オレンジ 14、C.I.ピグメント オレンジ 15、C.I.ピグメント オレンジ 16、C.I.ピグメントオレンジ 24、C.I.ピグメント オレンジ 34、C.I.ピグメント オレンジ 36、C.I.ピグメント オレンジ 38、C.I.ピグメント オレンジ 40、C.I.ピグメント オレンジ 43、C.I.ピグメント オレンジ 63が挙げられる。
【0081】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0083】
〔染料〕
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0084】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
色材の含有量は優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インク組成物の総質量に対して、1〜20質量%が好ましい。
【0086】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ、アベシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズが挙げられる。
【0087】
〔スリップ剤〕
本実施形態のインク組成物は、高い耐擦性が得られるという有利な効果が得られるため、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
【0088】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0089】
[被記録媒体]
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。本実施形態のインクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水溶性インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0090】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0091】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
【0092】
[インクジェット記録方法]
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、インクジェット記録方法に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
【0093】
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。
インク組成物の吐出の際は、インク組成物の粘度を、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは5〜20mPa・sとすることが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
【0094】
本実施形態の放射線硬化型インク組成物は、通常のインクジェット記録用インクで使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0095】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(光)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、光重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、光重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0096】
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0097】
ここで、発光ピーク波長が、好ましくは350〜420nmの範囲、より好ましくは365〜405nmの範囲にある紫外線を、好ましくは300mJ/cm2未満、より好ましくは250mJ/cm2未満、さらに好ましくは200mJ/cm2未満、特に好ましくは150mJ/cm2未満の照射エネルギーで照射することにより、硬化可能であるような紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を用いることが好ましい。この場合、本実施形態におけるインク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射時間を短縮することができ、その場合、印刷速度が増大する。他方、本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射強度を減少させることもでき、その場合、装置の小型化やコストの低下が実現する。その際の紫外線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインク組成物は、上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤、及び/又は、上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物を含むことにより得られる。なお、発光ピーク波長は、上記の波長範囲内に1つあってもよいし複数あってもよい。複数ある場合であっても上記発光ピーク波長を有する紫外線の全体の照射エネルギーを上記の照射エネルギーとする。
【0098】
また、メディアに着弾したインク滴のドット高が1〜3μmとなる状態で硬化可能であるような紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を用いることが好ましい。
この場合、本実施形態におけるインク組成物の組成に起因して薄膜で画像形成が可能となり、塗膜の盛り上がり感が少なくなるという有利な効果が得られる。
かかるインク組成物は、前述した各種方法により得られる。
【0099】
このように、本実施形態によれば、硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供することができる。
【実施例】
【0100】
表1に実施例および比較例を示す。なお、表中の配合量の単位は、特に断りのない限り、質量%であるものとする。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示す組成物を調製し、下記の方法でインク、および硬化薄膜の評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0103】
[粘度]
レオメーターを用いて、温度20℃、Shear Rate 200s-1における粘度を測定した。評価の指標は以下のとおりである。
◎=20mPa・s未満
○=20mPa・s以上30mPa・s未満
△=30mPa・s以上40mPa・s未満
×=40mPa・s以上
【0104】
[硬化性]
PETフィルム(ルミラー125E20(商品名;パナック社製))上に、バーコーター(第一理化社製)で厚さ2〜3μmの塗膜を成形し、UV照射LED(RX−Firefly(商品名;Phoseon社製))を用いて、ピーク波長395nmの光を1w/cm2の照射強度で照射し、硬化(タックフリー)に必要なエネルギーを測定した。光照射した塗膜を、綿棒(ジョンソン綿棒(商品名;Johnson&Johnson社製))で荷重100gで擦り、擦った跡が残らない状態をタックフリー状態とした。
◎=150mJ/cm2未満
○=150mJ/cm2以上200mJ/cm2未満
△=200mJ/cm2以上300mJ/cm2未満
×=300mJ/cm2以上
【0105】
[伸び]
バーコーターで厚さ10μmの薄膜を成形し、メタルハライドランプを用いて、400mJ/cm2のエネルギーで効果した膜を、引っ張り試験機で引っ張り、クラックが発生した時点での伸び率を測定した。
◎=50%以上
○=30%以上50%未満
△=20%以上30%未満
×=20%未満
【0106】
表1中の略称について説明する。
PEA:フェノキシエチルアクリレート (大阪有機化学社製)
VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製)
MEHQ:p−メトキシフェノール
UAO:ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー (前記参照)
BLUE GLVO: 顔料 (BASF社製)
【0107】
[インク組成]
実施例1〜4および5〜8は、本発明において最も好ましいとされる、官能基数2以上5未満の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの、添加量による効果を検討したものである。実施例1および5のように、2質量%未満では硬化性、柔軟性ともに、最も好ましい添加量の場合に比べ劣る。逆に、実施例4および8のように、15質量%を超える添加量となると、柔軟性や硬化性は良くなるが、粘度が高くなる。しかし、比較例2や4は、インクジェットで吐出するのが非常に難しいが、実施例4や8では、吐出可能である程度の粘度である。
【0108】
実施例9および10は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、上記以外の種類のものを添加したことによる効果を検討したものである。脂肪族6官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加したものは、硬化性に富むが、脂肪族3官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加したものに比べ、硬化膜の柔軟性に欠ける(実施例9)。芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加したものは、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加したものと比べると、柔軟性の面でやや劣る(実施例10)。しかし、いずれも、比較例1や3に比べると、柔軟性はいくぶん付与されている。
【0109】
実施例11〜14は、VEEAの添加量を検討したものである。VEEA添加量が多くなると、インクの粘度が低く、また、2官能モノマーであるため硬化性が高くなる傾向にあるが、実施例14のように、VEEAの添加量70質量%を超える場合は、重合開始剤に対して良溶媒であるPEAの量が少なくなり、溶解可能な重合開始剤の量も少なくなるため、好ましくない。しかし、75質量%を超えると、溶解可能な重合開始材量は大幅に減少し、硬化性が著しく低下する。また、VEEAが50質量%未満では、すぐれた硬化性は得られない(実施例11)が、比較例5と比べると、いくらか硬化性は上がっている。
【0110】
実施例11〜14は、PEAの添加量を検討したものである。PEA量が8質量%未満では、溶解可能な開始剤量が不十分で、必要な硬化性が得られない(実施例14)。逆に、30質量%以上では、2官能モノマーであるVEEAに対して単官能モノマーであるPEAの量が多く、硬化性がやや劣る(実施例11)。
【0111】
(発明の効果)
【0112】
以上述べたように、表1に示した実施例1〜15によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、VEEAをベースモノマーとするインクに、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを1質量%以上20質量%以下添加することで、アクリル基の濃度が高くなり、VEEAのビニル基の反応性が上がることにより、低粘度でありながら高反応性となるインクを提供することができた。また、官能基数2以上5以下の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとすることで、硬化膜に柔軟性も持たせることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・・(A1)
(式中、R1は−Hまたは−CH3、R2は炭素数2〜20の有機残基、R3は炭素数1〜11の有機残基。)で表されるモノマーAを40質量%以上75質量%以下と、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを1質量%以上20質量%以下と、光重合開始剤と、を含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項2】
請求項1の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリル官能基数が、2以上4以下である光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項2のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物に、さらにフェノキシエチル(メタ)アクリレートを7質量%以上40質量%以下含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物の、一般式(A1)で表されるモノマーAが、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物に、さらに色材を含有する光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のインクの光重合開始剤が、アシルフォスフィン系化合物と、チオキサントン化合物である光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物の光重合開始剤の含有量が、アシルフォスフィン系化合物7.0質量%以上15質量%以下、チオキサントン化合物0.5質量%以上5.0質量%以下である光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項9】
LEDのピーク波長が365〜405nmの範囲内にある300mJ/cm2未満の照射エネルギーの光で硬化可能な請求項1〜8の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項10】
1〜3μmの膜厚で硬化可能な請求項1〜9の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の光硬化インクジェットインク組成物であって、前記一般式(A1)で表されるモノマーAを、45質量%以上75質量%以下含有する光硬化インクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2012−162688(P2012−162688A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25921(P2011−25921)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】