説明

光硬化型親水性組成物

【課題】経時安定性が高く、耐傷性、保存安定性、面状に優れた親水性部材が得られる光硬化型の親水性組成物の提供を目的とする。
【解決手段】1分子内に加水分解性シリル基を1つ以上有する親水性ポリマー(A)、及び、活性エネルギー線の作用によりブレンステッド酸或いはルイス酸を発生する光酸発生剤(B)を含有する光硬化性親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化型親水性組成物に関わる。とくに、加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーと触媒としての光酸発生剤を組み合わせた、良好な耐傷性、防曇性を有する親水性部材を製造できる、保存安定性に優れた光硬化型親水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基板の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基板の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基板の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組み合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照)、基板表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基板との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層を形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩耗性を有することが見出されている(例えば、特許文献6参照)。このような架橋構造を有する親水性表面層は反応性基を末端に有する特定の親水性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られる。
【0008】
一方、加水分解性シリル基を有するポリマーは硬化性良好な皮膜を得るために高温で長時間にわたって加熱処理をする必要があり、生産性が低かったり、或いは適応基材の種類が限られるという問題が見られた。また、この種のポリマーは保存安定性に劣るため、主剤と硬化剤とからなる二液性タイプとすることが行われているが、取り扱いが煩雑であるという問題点も有していた。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開2002−361800号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーを含有する硬化性組成物において、経時安定性の高い光硬化型の親水性組成物を提供することにある。
また本発明の別の目的は、太陽光があたらない場所でも各種物品表面に優れた親水性を付与し、かつ、耐傷性、保存安定性、面状に優れた親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、親水膜のコーティング組成物として、特定の加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーと、光酸発生剤とを組み合わせた親水性組成物を用いることによって上述した問題を解決できることを見出した。すなわち、液の安定性が良好で、光硬化させることで太陽光が無くとも高い親水性を示し、かつ高い耐傷性を有する親水性部材が得られる親水性組成物を見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下のとおりである。
【0011】
(1)1分子内に加水分解性シリル基を1つ以上有する親水性ポリマー(A)、及び、活性エネルギー線の作用によりブレンステッド酸或いはルイス酸を発生する光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする光硬化性親水性組成物。
(2)親水性ポリマー(A)100質量部に対して光酸発生剤(B)を0.1〜20質量部含有することを特徴とする上記(1)に記載の光硬化性親水性組成物。
【0012】
(3)親水性ポリマー(A)が下記一般式(I)で表されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の光硬化性親水性組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。xは1〜50であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO
)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0015】
(4)さらにSi、Ti、Zr、Alから選択される元素の金属アルコキシド化合物(C)を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光硬化性親水性組成物。
(5)さらに増感剤(D)を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光硬化性親水性組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化型親水性組成物は、加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーと触媒として光酸発生剤を組み合わせたことにより、経時で凝集やゲル化を起こすことなく、飛躍的に保存安定性を向上させることができた。
また、本発明の親水性組成物によれば、太陽光があたらない場所でも各種物品表面に優れた親水性を付与でき、かつ、耐傷性、防曇性に優れた親水性部材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
〔(A)親水性ポリマー〕
親水性ポリマーとしては、側鎖に加水分解性シリル基有するポリマー、および、主鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーを使用できる。
本発明で使用できる側鎖に加水分解性シリル基有するポリマーとしては、下記一般式(I−a)及び(I−b)で示される構造単位を有する親水性ポリマー(特定親水性ポリマーとも呼ぶ)が好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。xは1〜50であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(
)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0021】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0022】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0023】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0024】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、
1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0025】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0026】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0027】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0028】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒
素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0031】
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0032】
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0033】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0034】
x及びyは、側鎖に加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーにおける、一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の重合モル比を表し、xおよびyは100〜0であり、x+y=100となる数である。重合モル比x:yは、
99:1〜10:90の範囲であることが好ましく、99:1〜50:50の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の重合モル比が上記範囲であることが好ましい。
【0035】
一般式(I)で表される親水性ポリマーの質量平均分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0036】
以下に、一般式(I)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(1)〜(50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
本発明では、加水分解性シリル基を1つ以上有する親水性ポリマーとして、上記ように側鎖に加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーの他に、主鎖に加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーを用いることもできる。主鎖に加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーとしては、以下の化合物を例示することができる。
【0043】
【化9】

【0044】
上述の特定親水性ポリマー(A)を合成する原料化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
特定親水性ポリマー(A)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0045】
また、上記特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0046】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0047】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0048】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルア
ミド等が挙げられる。
【0049】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0051】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(A)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(A)特定親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0052】
〔(B)光酸発生剤〕
本発明において触媒として用いる、活性エネルギー線の作用によってブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生する光酸発生剤は、カチオン重合開始能を有する従来公知の化合物であって、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合系に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ)。本発明に用いられる光酸発生剤としては、オニウムカチオン化合物、スルホン酸を発生するスルホン化化合物を挙げることができるが、特に、強酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましい。好適な化合物を例示すれば以下のとおりである。
【0053】
即ち、イオン性光酸発生剤としては、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、フェロセニウムなどのオニウムカチオンの、Cl、Br、I、ZnCl、HSO、BF、PF、AsF、SbF、CHSO、CFSO、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、カンファースルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、シクロヘキシルアミノスルホネート、(C、(Cなどの塩を挙げることができる。
【0054】
前記オニウムカチオンの具体的な例として、フェニルジアゾニウム、p−メトキシジアゾニウム、α−ナフチルジアゾニウム、ビフェニルジアゾニウム、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウム、3−メトキシジフェニルアミン−4−ジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−メトキシベンゾイルアミドフェニルジアゾニウム、2,5−ジプロポキシ−4−(4−トリル)チオフェニルジアゾニウム、4−メトキシジフェニルアミン−4−ジアゾ
ニウム、4−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物、1−メトキシキノリニウム、1−エトキシイソキノリニウム、1−フェナシルピリジニウム、1−ベンジル−4−ベンゾイルピリジニウム、1−ベンジルキノリニウム、N−置換ベンゾチアゾリウム等が挙げられる。
【0055】
さらに、ベンジルトリフェニルスルホニウム、p−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(p−メトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウム、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム、ベンジルテトラメチレンスルホニウム、フェナシルテトラメチレンスルホニウム、フェナシルジメチルスルホニウム、p−メトキシフェニルジエチルスルホニウム、ナフチルジアルキルスルホニウム、(2−ナフチルカルボニルメチル)テトラメチレンスルホニウム、(p−ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、(4−ヒドロキシナフチル)−ジメチルスルホニウム、(4,7−ジヒドロキシナフチル)−1−ジメチルスルホニウム、(4,8−ジヒドロキシナフチル)−1−ジメチルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、フェニル{4−(tert−ブチル)フェニル}ヨードニウム、4−ビス{4−(tert−ブチル)フェニル}ヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、(4−メトキシフェニル)(4−オクチルオキシフェニル)ヨードニウム、フェナシルトリフェニルホスホニウム、シアノメチルトリフェニルホスホニウム等が挙げられる。
【0056】
スルホン酸を発生する光酸発生剤としては、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート、1−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルエタンニトリル、1−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルエタンニトリル、ベンゾインp−トルエンスルホネート、2−p−トルエンスルホニルオキシ−2−ベンゾイルプロパン、p−ニトロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシジフェニルマレイミド、N−p−トルエンスルホニルオキシサクシンイミド、N−カンファースルホニルオキシサクシンイミド、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシサクシンイミド、N−パーフルオロブタンスルホニルオキシサクシンイミド、N−p−トルエンスルホニルオキシフタルイミド、N−カンファースルホニルオキシフタルイミド、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシフタルイミド、N−パーフルオロブタンスルホニルオキシフタルイミド、N−p−トルエンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−カンファースルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−パーフルオロブタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、ビス(フェニルスルホン)、ビス(フェニルスルホニル)メタン、などを挙げることができる。
【0057】
次に、光硬化性組成物に使用される光酸発生剤の添加量(含有割合)について説明する。かかる光酸発生剤の添加量は特に制限されるものではないが、(A)成分100質量部に対して、通常0.1〜20質量部の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、光酸発生剤の添加量が0.1質量部未満となると、光硬化性が低下し、十分な耐傷性と耐摩耗性が得られない場合があり、一方、光酸発生剤の添加量が20質量部を超えると、得られる硬化物の親水性が低下する場合があるためである。したがって、光硬化性と得られる硬化物の耐候性等とのバランスがより良好な観点から、光酸発生剤の添加量を、(A)成分100質量部に対して1〜20質量部の範囲内の値とすることがより好ましい。また、さらに良好な耐傷性、耐摩耗性と親水性を両立させるためには3〜15質量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
〔(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〕
本発明では、上記(A)親水性ポリマー及び(B)光酸発生剤の他に、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(特定アルコキシドとも呼ぶ)を添加することができる。これらの特定アルコキシドは、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、(A)親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜となる。
(C)特定アルコキシドは、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(A)特定親水性ポリマー、(B)一般式(II)で表される特定アルコキシドを混合して支持体表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0059】
【化10】

【0060】
一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R10はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R及びR10がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0061】
以下に、(B)一般式(II)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0062】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0063】
本発明に係る(C)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(C)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0064】
〔(D)増感剤〕
前述の光酸発生剤は、単独で活性エネルギー線の作用により対応するブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生するが、本発明においては、従来公知の各種の増感剤を共存させることができる。上記に例示した光酸発生剤が電子受容体として機能することから、本発明に用いられる増感剤としては、特開昭54−151024号公報、特開昭58−40302号公報、特開昭60−76740号公報、特開昭60−78443号公報、特開昭60−88005号公報、特開昭60−112802号公報、特開昭61−97650号公報、特開昭61−180359号公報、特開昭62−161820号公報、特開昭63−243102号公報などに記載されているように、電子供与性化合物であることが望ましい。このような特性を持つ本発明に好適な増感剤としては、芳香族多環化合物、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、ポリメチン色素化合物、メロシアニン化合物、クマリン化合物、チオピリリウム化合物、ピリリウム化合物、p−ジアルキルアミノスチリル化合物、チオキサンテン化合物等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの多くは、大河、平嶋、松岡、北尾編集、「色素ハンドブック」(講談社)、社団法人色材協会編集、「色材工学ハンドブック」、朝倉書店(1989年発行)、林原生物化学研究所感光色素研究所「Dye Catalogue」などに掲載されている。
【0065】
(D)増感剤として用いられる芳香族多環化合物としては、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピセン、コロネン、ヘキサセン、オバレン等の炭化水素からなる基本骨格を有するものを挙げることができる。また、酸素原子、窒素原子、イオウ原子を構成原子とするベンゾフラン、ジベンゾフラン、インドール、カルバゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、等の芳香族複素5員環多環化合物も挙げることができる。芳香族複素6員環多環化合物の基本骨格としては、α−ベンゾピロン、β−ベンゾピロン、α−チアベンゾピロン、β−チアベンゾピロン、フラボン、キサントン、チオキサントン、フェノキサジン、フェノチアジン、などを挙げることができる。さらに、これらの基本骨格は、少なくとも一つのアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基などの電子供与性基で置換されていてもよい。置換された芳香族多環化合物からなる増感剤を例示すれば、1−メトキシナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレン、9,10−ジメチルフェナントレン、9−メチルアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、1,8−ジメチル−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、1−メチルピレン等を挙げることができる。多環複素環化合物の置換体としては、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、等をあげることができる。
【0066】
ポルフィリン化合物としては、テトラフェニルポルフィン、オクタエチルポルフィン、メソポルフィリン、プロトポルフィリン、ヘマトポルフィリン、クロリン、テトラベンゾポルフィン、フェニル置換テトラベンゾポルフィン等の基本骨格からなる化合物及びこれらのマグネシウム錯体、亜鉛錯体、さらには、クロロフィルを挙げることができる。
【0067】
フタロシアニン化合物としては、ナフトシアニン化合物をも含むものであって、それら
の基本骨格に少なくとも一つのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン基等の置換基が導入されていてもよい。さらに、中心金属として、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウムが特に好ましい。
【0068】
ポリメチン色素化合物は、窒素原子、酸素原子、イオウ原子などを含む複素環がポリメチンによって連結された構造を持つシアニン系あるいはメロシアニン系などを用いることができる。たとえば、大河原信、北尾悌次郎、平岡恒亮、松岡賢編、「色素ハンドブック」、講談社サイエンティフィク(1986年)、382〜417ページに記載の色素化合物を挙げることができる。具体的には、キノリン環からなるシアニン系、インドール環からなるインドシアニン系、ベンゾチアゾール環からなるチオシアニン系、イミノシクロヘキサジエン環からなるポリメチン系のほかに、ベンゾオキサゾール系、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系などを例示することができる。
【0069】
クマリン化合物としては、大河原信、北尾悌次郎、平岡恒亮、松岡賢編、「色素ハンドブック」、講談社サイエンティフィク(1986年)、432〜438ページに記載のモノクマリン化合物および3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−〔1〕ベンゾピラノ〔6,7,8−ij〕キノリジン−11−オン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)などを挙げることができる。
【0070】
p−ジアルキルアミノスチリル化合物としては、4−ジエチルアミノベンジリデンアセトフェノン、4−ジエチルアミノベンジリデン(p−メトキシ)アセトフェノン、4−ジエチルアミノベンジリデンマロンジニトリル、4−ジメチルアミノベンジリデンアセト酢酸エチルエステル、4−ジメチルアミノベンジリデンマロン酸ジエチルエステル、4−ジメチルアミノベンジリデン−α−シアノアセトフェノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、4−ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、4−ジメチルアミノシンナミリデンマロンジニトリル、4−ジメチルアミノシンナミリデンシアノ酢酸エチルエステル、4−ジメチルアミノシンナミリデンマロン酸ジエチルエステル、4−ジメチルアミノシンナミリデン−α−シアノアセトフェノン、4−ジメチルアミノシンナミリデン−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、などを挙げることができる。
【0071】
これらのスペクトル増感剤の吸収波長は、紫外線から赤外線に至る幅広い領域にわたるものであり、これらを単独のみならず、二つ以上の増感剤を混合して広範囲の波長領域の光を効率よく吸収して、酸を発生させることができる。
【0072】
本発明の親水性組成物には、前記必須成分である(A)及び(B)成分、及び、所望により併用される(C)及び(D)成分に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
【0073】
〔界面活性剤〕
本発明においては、前記親水性組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0074】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0075】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0076】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0077】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0079】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0081】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0082】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0083】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0084】
(親水膜の形成方法)
親水性組成物から親水膜を形成する場合、コーティングする方法をとることが好ましい。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法またはインクジェット法などの方法を用いることができる。
【0085】
(硬化方法)
また、親水性組成物を光硬化する手段も特に制限されるものではないが、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ等の光源を用いて、波長150〜500nmの光を照射することが好ましい。また、レーザ光、或いはレンズ、ミラーなどを用いて得られた収束光などを走査させながら親水性組成物に光照射することも好ましい。更に、所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を組成物に光照射したり、或いは、多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して光照射することも好ましい。
【0086】
(厚さ)
親水膜の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、0.01〜100μmの範囲内の値であることが好ましい。この理由は、厚さが0.01μm未満となると、機械的特性や親水性が低下したり、或いは基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが100μmを越えると、光硬化することが困難となる場合があるためである。従って、親水膜の厚さを0.05〜50μmの範囲内とするのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内とするのが更に好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0088】
[親水ポリマー(1)の合成]
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.32g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った。得られたポリマーのGPC(ポリエチレンオキシド標準)で求めた質量平均分子量は15000であった。
親水ポリマー(1)の構造は下記のとおりである。
【0089】
【化11】

【0090】
[親水ポリマー(2)の合成]
500ml三口フラスコにアクリルアミド11.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル11.6g、及び1−メトキシ−2−プロパノール280gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル1.8gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水ポリマー(2)を得た。乾燥後の質量は22.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)で求めた質量平均分子量は22800であった。
親水ポリマー(3)、(4)、(5)は上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。実施例に使用した親水ポリマー(2)、(3)、(4)、(5)の構造を以下に示す。
【0091】
【化12】

【0092】
[塗布液の調製]
親水性ポリマー(1)〜(5)の水溶液(実施例1〜11)、及び、親水性ポリマー(1)〜(4)と金属アルコキシドの水溶液(実施例12〜21)を攪拌しながら、触媒で
ある光酸発生剤を添加して光硬化性水性組成物を得た。こうして調製した実施例1〜21に用いた光硬化性水性組成物の組成を表1にまとめた。ここで用いた化合物は以下のとおりである。
光酸発生剤としては、ユニオンカーバイド社製スルホニウム塩系光酸発生剤(UVI−6690)、日本曹達社製ヨードニウム塩系(CI−5102)を使用し、増感剤には、日本化薬製イソプロピルチオキサントン(ITX)、川崎化成製9,10−ジブトキシアントラセン(DBA)を使用した。
界面活性剤は、以下の構造のアニオン系界面活性剤の5質量%水溶液を用いた。
【0093】
【化13】

【0094】
[親水性部材の作製]
上記で調製した塗布液を10分UV/O3処理により親水化したフロート板ガラスに塗布し、25℃で15分間乾燥した後、1KW高圧水銀灯(ウシオ電機(株)社製)で30cmの距離から10分間照射し、照射後塗布量3.0g/mの親水膜(実施例1〜21)
を形成した。
【0095】
〔比較例1〜4〕
[塗布液の調製]
下記表1に示した組成の塗布液を調製した。成分の混合に際し、塩酸を加えるときには、親水性ポリマー(1)の水溶液(比較例1及び2の場合)、あるいは、親水性ポリマー(1)と金属アルコキシドの水溶液(比較例3の場合)をよく攪拌しながら、和光純薬(株)社製1規定塩酸を添加するようにした。
【0096】
[親水性部材の作製]
フロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、塗布用基板とした。表1に示した組成の塗布液を25℃で2時間攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、150℃、30分乾燥して、乾燥塗布量3.0g/m2の親水膜を形成した。
【0097】
〔比較例5〜7〕
比較親水性ポリマー(1)と金属アルコキシドの水溶液を攪拌しながら、光酸発生剤を添加して塗布液を得た。但し、比較例5では親水性ポリマーを使用していない。こうして調製した塗布液の組成を表1に示した。親水性部材の作製は実施例と同様の方法で行った。ここで用いた化合物は以下の通りである。
比較親水性ポリマー(1)にはクラレ(株)社製ポリビニルアルコールK−217(重合度=1700、けん化度=88%)、比較親水性ポリマー(2)には和光純薬製ポリアクリルアミドM.W.600000〜1000000を用いた。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
[親水性部材の評価]
(親水性)
空中水滴接触角を測定した(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)。
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に準じ、試験(安田精機製作所製鉛筆引っ掻き硬度試験機553−
Mで試験)を行った。
(磨耗試験)
不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で往復摩耗試験機(HEIDON TYPE
30)を用いて200回こすり、その後の接触角測定を行った。こすり後も水滴接触角が低い値を示す場合、耐久性が良好。
(防曇性)
磨耗試験後の親水性部材に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により3段階で官能評価した。
◎:曇りが観察されない
○:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
[塗布液の評価]
(液安定性)
塗布液を暗室下40℃で1ヶ月間放置し、塗布液の状態、塗布面の状態を目視で評価し
た。
◎:塗布ムラなし
○:塗布ムラあり
×:塗布液がゲル化
【0101】
上記親水性、耐傷性、磨耗試験、防曇性、液安定性の評価結果を下記表2に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
表2に明らかなように、本発明の光硬化型親水性組成物を用いて形成した親水膜は、親水性、耐傷性、耐摩耗性に優れ、液保存安定性が良好であった。また、実施例1〜11と実施例12〜21との対比において、親水性膜の形成時に、金属アルコキシドを添加することで親水性、耐傷性に一層の改良が見られることがわかる。
他方、本発明の範囲外の触媒を含有する親水性組成物を用いて形成した比較例1、2、3、4の親水性部材は、耐傷性、耐摩耗性、防曇性、液保存安定性が不十分であり、実用上問題のあるレベルであった。また、親水性ポリマーを含有しない場合(比較例5)、あるいは、本発明の範囲外の親水性ポリマーを含有する光硬化型親水性組成物を用いて形成した比較例6、7の親水性部材は、親水性、防曇性が低く実用上問題あるレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子内に加水分解性シリル基を1つ以上有する親水性ポリマー(A)、及び、活性エネルギー線の作用によりブレンステッド酸或いはルイス酸を発生する光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする光硬化性親水性組成物。
【請求項2】
親水性ポリマー(A)100質量部に対して光酸発生剤(B)を0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性親水性組成物。
【請求項3】
親水性ポリマー(A)が下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の光硬化性親水性組成物。
【化1】


一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。xおよびyは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、
−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項4】
さらにSi、Ti、Zr、Alから選択される元素の金属アルコキシド化合物(C)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性親水性組成物。
【請求項5】
さらに増感剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性親水性組成物。

【公開番号】特開2009−62463(P2009−62463A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231908(P2007−231908)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】