説明

光線治療器

【課題】 本発明は太陽光と同じの治癒効果を発揮し、天候や時刻に左右されずに手軽に任意の時間に使用することができ、しかも皮膚に悪影響を与えることがない、新規の、褥瘡等の治療に適した光線治療器を提供することを目的とする。
【解決手段】 太陽光線に近い波長分布の光を発するカラー発光型液晶面状体2を正面に有する治療ヘッド部3と当該治療ヘッド部3を制御するコントロールボックス4とを接続コード5により接続することによって構成され、前記カラー発光型液晶面状体2には、EL(Electoro Luminescence)タイプのカラー発光型液晶が用いられ、多層膜コーティング式分光補正フィルタが分光分布制御手段として備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褥瘡等の治療に好適な光線治療器に関し、具体的にはカラー発光型液晶を利用した光線治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
長期に亘って臥床を強いられる患者の仙骨部、大転子部、踵等は、持続的に圧迫されるため血行が局所的に途絶し、褥瘡になりやすい。この褥瘡は組織が壊死した状態になるために非常に治りにくい病気とされている。
【0003】
昔から、褥瘡に太陽光を当てると治りが早いことは知られている。しかし、太陽光は、天候に左右され、時刻によって変化し、且つ室内に採り入れることが困難であるために、これを実際の治療に利用する場合にはいくつかの不都合があった。
【0004】
本発明者は、前記不都合を解決すべく研究を行っているときに、太陽光線に含む光線の中で、殺菌作用がある紫外線及び温熱効果作用がある赤外線が、褥瘡の治癒に特に有効に機能していることが判った。
【0005】
また、褥瘡の治療には、皮膚に悪影響を及ぼす280nm以下の有害な紫外線が好ましくないこと、近赤外線が必要以上の熱を発生するので長時間続けて照射することが好ましくないこと、及び輝線スペクトルが好ましくないことも知ることができた。
【0006】
そこで、本発明者は、さらに研究を続け、殺菌作用がある紫外線及び温熱効果作用がある赤外線を発する発光型カラー液晶に着目し、本発明に係る光線治療器、すなわち前記不都合及び好ましくないことを一挙に解消する光線治療器を完成した。
【0007】
【特許文献1】 また、本出願人は、液晶を利用した光線治療器について、先行技術文献を調査したが、これらに関連する先行技術文献は、見付け出すことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、太陽光と同じの治癒効果を発揮し、天候や時刻に左右されずに手軽に任意の時間に使用することができ、しかも皮膚に悪影響を与えることがない、新規の、褥瘡等の治療に適した光線治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る光線治療器は、太陽光線に近い波長分布の光を治療面に照射するためのカラー発光型液晶面状体を備えたことを特徴とする。
【0010】
この請求項1に係る光線治療器は、主に、カラー発光型液晶面状体を患者の身体に医療用テープ等を用いて固定する等して用いる。この場合、当該カラー発光型液晶面状体は患部に対面させて固定することが望ましい。このように使用した場合には、太陽光に近似する光線による治癒効果すなわち殺菌作用がある紫外線及び温熱効果作用がある赤外線を含む光線が、カラー発光型液晶面状体から放射され、患部は治療される。
【0011】
請求項2に係る光線治療器は、280nm以下の紫外線をカットもしくは低減し、近赤外線はカットもしくは低減し、輝線スペクトルは抑制する分光特性を有する分光分布制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
したがって、請求項2に係る光線治療器は、カラー発光型液晶面状体から放射される光線に含まれている280nm以下の有害な紫外線を分光分布制御手段によりカットもしくは低減することができる。その結果、280nm以下の紫外線によって生じていた強い殺菌作用は皆無にでき、皮膚への悪影響は回避できる。また近赤外線はカットもしくは低減できるので、カラー発光型液晶面状体から放射される光線により発生する熱は、必要以上にならないように抑制でき、熱傷を防止できる。
【0013】
請求項3に係る光線治療器は、基準太陽光の相対エネルギー分布に対するカラー発光型液晶面状体から放射される光の相対エネルギー分布の比であるスペクトル合致度が100±30%にされたことを特徴とする。
【0014】
したがって、請求項3に係る光線治療器によるときには、カラー発光型液晶面状体から太陽光に非常に近似した光線が放射されることに伴って発生する熱は、必要以上にならないように抑制でき、しかも好ましくない輝線スペクトルは抑制でき、紫外線による紅斑等の副作用を避けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光線治療器は、太陽光がもつ医学的な効能を得るための代替光照射器として治療に使用でき、天候や時刻に左右されることなくいつでも任意の時間に治療に使用することができ、室内で手軽に治療に使用することができる。
【0016】
また、本発明に係る光線治療器によれば、カラー発光型液晶面状体から放射される光の分光特性を前記のようにすることにより、有害な紫外線が除去され且つ過剰の輝線スペクトルが低減された光線による光線治療ができる。すなわち、太陽光と同様に、紫外線が表在性の菌を殺菌し、可視光線と赤外線が組織の深層まで浸透して細胞機能を賦活し、すべての波長帯が相乗的に作用して表皮再生を促進し、肉芽細胞と新生血管の形成を助ける等の機能を果たす光線によって褥瘡治療等光線治療ができる。この場合、カラー発光型液晶面状体の照射光は、280nm以下の紫外線を含有していないので、強い殺菌作用や細胞に対する影響を与えることがない状態で治療ができる。
【0017】
さらに、本発明に係る光線治療器は、これを用いてカラー発光型液晶面状体の照射エネルギーにより褥瘡の治療を行うときには、輻射熱による熱傷、紫外線による紅斑等の副作用を避けることができる。
【0018】
そして、カラー発光型液晶面状体は、照射エネルギーの強弱をコントロールする構成にすることが可能であり、照射エネルギーを弱くして熱傷及び副作用を避けるようにしたい場合には簡単な構成で容易にできる。すなわち、じっくり長い時間をかけて安全に治療したい場合には治療時間のコントロールができて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態に係る光線治療器を図1に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態による光線治療器1を示す斜視図である。この図に示す光線治療器1は、太陽光線に近い波長分布の光を発するカラー発光型液晶面状体2を正面に有する治療ヘッド部3と当該治療ヘッド部3のコントロールボックス4とを接続コード5により接続することによって構成されたものである。
【0021】
なお、前記カラー発光型液晶面状体2には、EL (Electoro Luminescence)タイプが用いられ、多層膜コーティング式分光補正フィルタ(図示せず)が分光分布制御手段として備えられている。そして、本発明は、治療ヘッド部分をコントロールボックスに一体に組み込んだ接続コード無しの構成で実施することができる。また本発明は前記EL(Electoro Luminescence)タイプのカラー発光型液晶に替えて、PDP(Plasma Display Panel)タイプ、LED(Light Emitting Diode)タイプ、FED(Field Emission Display)タイプのカラー発光型液晶を採用して実施することができる。
【0022】
前記治療ヘッド部3は、全体が完全防水構造にされ、折り曲げ可能な構成にされている。なお、本発明は、折り曲げ可能なカラー発光型液晶面状体を用いて身体への接触面を所謂ソストになる構成にしたり、治療ヘッド部3を折り曲げができない構成にしたりすることで実施ができる。また、治療ヘッド部3は、防水構造にされていない構成にすることができる。
【0023】
また、前記コントロールボックス4は、その中に制御部6が内蔵され、正面には主電源スイッチ7、作動ランプ8、強弱調整用ボリュームの調整スイッチ9及び治療時間設定用のタイマー10が設けられ、背面には電源コード11が設けられている。前記接続コード5及び電源コード11は、使用しないときには外した状態にできるようにしてあることが望ましい。またコントロールボックスに電源装置を内蔵し電源コード無しの構成で実施することができる。さらには全体を持ち運び自在なハンディタイプにすることができる。この場合、バッテリー特に充電式バッテリーを電源装置とすることが望ましい。
【0024】
前記実施の形態に係る光線治療器1は、カラー発光型液晶面状体2を患部に対面させた状態にし、この状態で治療ヘッド部3を患者の身体に医療用テープ(図示せず)等により固定し、この固定状態において、主電源スイッチ7、調整スイッチ9及びタイマー10を適宜操作し、よって施療できるようにされたものである。
【0025】
前記分光補正フィルタは、カラー発光型液晶面状体2から出る光に含んでいる紫外線の280nmの波長以下のエネルギーを完全にカットする機能、及び280〜400nmの紫外線波長範囲、380〜780nmの可視光線波長範囲および780〜2500nmの赤外線波長範囲における、基準太陽光の相対エネルギー分布に対するカラー発光型液晶面状体2の光の相対エネルギー分布の比であるスペクトル合致度をそれぞれ100±30%にする機能を果たすようにされている。
【0026】
前記実施の態様に係る光線治療器1は、カラー発光型液晶面状体2から放射される光線中に含む280nm以下の有害な紫外線を、多層膜コーティング式分光補正フィルタによってカットできる。したがって、本発明による光線治療器によるときには、強過ぎる殺菌作用が回避されるので、皮膚に悪影響を及ぼすことがない。更に、スペクトル合致度は、前記波長帯のすべてにおいて100±30%にされたので、必要以上の、熱の発生が防止され且つ輝線スペクトルが抑制される。
【0027】
前記前記実施の形態に係る光線治療器1は、前記のとおりであるので、太陽光がもつ医学的な効能を得るための代替光照射器として使用できる。また、この使用にあっては、天候や時刻に左右されることなく、いつでも任意の時間に室内で手軽に用いて治療することができる。
【0028】
なお、本発明は、分光補正フィルタには、紫外域の300nm以下の透過率が低く、赤外域の800〜950nmの透過率が低く、可視域の透過率が高い分光特性を有するものを採用することができる。すなわち前記分光補正フィルタ等分光分布制御手段は、280nm以下の有害な紫外線をカットもしくは低減し、近赤外線はカットもしくは低減し、輝線スペクトルは抑制する分光特性を有するものであればよい。
【0029】
因みに、前記透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0030】
そこで、前記実施の形態に係る光線治療器1の場合について、前記分光光度計を採用して計測した。その結果、カラー発光型液晶面状体2から放射される照射光に含む280nmの波長以下の紫外線エネルギーがカットされていることが確認できた。また、280〜400nmの紫外線波長範囲、380〜780nmの可視光線波長範囲および780〜2500nmの赤外線波長範囲における、基準太陽光の相対エネルギー分布に対するカラー発光型液晶面状体2から放射される光線の相対エネルギー分布の比であるスペクトル合致度がそれぞれ100±30%になっているが確認できた。したがって、前記実施の形態に係る光線治療器1が前記した作用・効果を完全に発揮することは、理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る光線治療器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 本発明の実施の形態による光線治療器
2 カラー発光型液晶面状体
3 治療ヘッド部
4 コントロールボックス
5 接続コード
6 制御部
7 主電源スイッチ
8 作動ランプ
9 調整スイッチ
10 タイマー
11 電源コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光線に近い波長分布の光を治療面に照射するためのカラー発光型液晶面状体を備えたことを特徴とする光線治療器。
【請求項2】
280nm以下の紫外線をカットもしくは低減し、近赤外線はカットもしくは低減し、輝線スペクトルは抑制する分光特性を有する分光分布制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の光線治療器。
【請求項3】
基準太陽光の相対エネルギー分布に対するカラー発光型液晶面状体から放射される光の相対エネルギー分布の比であるスペクトル合致度が100±30%にされたことを特徴とする請求項1または2記載の光線治療器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−75549(P2006−75549A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294342(P2004−294342)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(399087307)
【Fターム(参考)】