説明

光触媒を含有する発泡材とその製造方法

【課題】光触媒活用法における中心的な活用法である表面処理とは異なり、焼成した材料において光触媒活性を安価で効率的に発現する。
【解決手段】光触媒と原料を予め混合し焼成して光触媒含有発泡材を製造する。この時の孔隙は連続気孔となることを特徴とし、光触媒の光誘起親水反応と発泡材の物理的性質による有機物の誘導能力を高め、水処理、脱臭処理、環境浄化等のさまざまな分野で活用できる機能性材料として提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を製品の中に含有する発泡材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒はこれまで抗菌作用やセルフクリーニング効果等の機能性を材料表面に付与する技術として1990年代より研究が行われ、応用開発が進められてきた。光触媒には光誘起分解反応と光誘起親水化反応との2種類の性質があり、これらの性質を利用した製品開発がなされ、特許も数多く公開されている。
【0003】
一方、光触媒による有機物分解においては、対象となる物質を効率的に光触媒に接触させなければ有機物が分解されないため、基本的には光触媒を立体構造にして活用するのではなくシート状に広げ、そこに対象となる有機物を接触させる工夫がされており、実用化の目処もつきつつある。
【0004】
光触媒は基本的に紫外線による励起エネルギーにより有機物を分解することを特徴とするが、可視光においても活用が可能な光触媒や薄膜化による高性能光触媒の開発が進められている。
【特許文献1】特許公開2001−335391
【非特許文献1】図解 光触媒のすべて.工業調査会.2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように光触媒の開発が進み、実用化が図られてきているが、光触媒の触媒活性を工業的に利用する場合、光触媒が表面付近に存在している必要があり、従来は表面コーティング技術、薄膜化といった研究開発が主である。
【0006】
一方、光触媒の中でも利用が多い酸化チタンは特徴としては高温に弱く、材料に混合して焼成すると結晶構造がアナターゼからルチル化し、その機能性を失う。さらに、混練して焼成するだけでは表面に露出せずに、内部に閉じ込められた光触媒は機能を発現しないという課題があり、基本的に後処理にのみ活用されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では光触媒と原料を混合し、焼成するだけで光触媒の機能性を発現する製造方法について提供する。さらに、請求項4に示すとおり、同製造方法を利用することで、他の機能性材料の効率的な活用を可能とする。
【0008】
詳細については実施例で示すため、以下概略について説明する。本発明品は請求項1の通り光触媒を製品内に含有することを特徴とする複合材である。製品内に含有するとは、請求項2に示すとおり原料の段階で予め混合して焼成してなることを意味し、後処理による表面コーティングは行わないで、触媒活性を発現させることが可能となる。具体的には耐火度の低い原料と原料よりも耐火度の高い光触媒と混合し焼成することで光触媒含有複合材を実現する。さらに原料混合時に発泡剤を添加し焼結することで、焼成中に製品が発泡し気孔が形成される。焼成温度については、原料とする材料が軟化する温度以上であり、光触媒は軟化・溶融しない温度以下とすることが重要である。また、製品の気孔を閉気孔としないためには、請求項3に示すとおり原料に予め連続気孔形成を促進する材料を添加することが望ましいといえる。
【0009】
発泡材の特徴としては孔隙が連続しているため表面積が広くなる。発泡材とすることで製品時の吸水性が高まり、有機物等の酸化対象物質を光触媒まで誘導するため、結果として光触媒の添加量を少なくしても触媒活性を十分発現することが可能となる。さらに光触媒の機能をあげるには、高温焼成条件下において機能性が落ちない光触媒とは異なる材料を原料として混合することで、多機能光触媒複合材を製造することができる。この時添加する機能性材料についても同様の原理で表面に露出してくるため、添加量を多くする必要はない。
【発明の効果】
【0010】
本発明品は光触媒の機能をこれまでの表面処理とは異なる手法で製造して実現することを目的とするため、本発明品の効果は光触媒の機能と一致する。そのため、本発明品が光触媒の機能を発現するための条件を満たすことが重要であり、ここでは本発明品の製造に到った経緯について説明する。
【0011】
光触媒を活用するために課題とされるのが、対象物に接触しやすい状況を作らなければならないことと、機能性を落とさない温度域で製品を加工することにある。この課題を克服するために、従来技術では常温での活用が中心である。しかし、視点を切り替えた場合、触媒活性を失わない温度、すなわち、光触媒の機能を失う温度条件でよりも1℃でも低く設定した条件で焼結して製品化した場合、理論的には光触媒活性を失わないことになる。
【0012】
まず、焼結した資材において光触媒と酸化対象となる有機物等を接触させるためには、光触媒を製品表面に露出させることが課題となるが、これは光触媒と混合する原料の耐火度を変えることで課題を克服することができる。詳述すると、光触媒の使用可能な上限温度が全ての製品に指定されており、その温度までは軟化せず、見た目上変化が起こらないことになる。見た目上変化が見られない点とはすなわち融点を指す。つまり、光触媒の融点より低い融点を持つ原料と光触媒を混合し焼成した場合、融点の低い原料が先に軟化し、焼成過程の途中で光触媒が表面に露出してくることになる。光触媒と他原料の融点の差が大きければ大きいほど、光触媒を表面に露出させるための焼成時間を短くすることができる。
【0013】
一方、前述の技術だけでは表面付近にある光触媒だけが露出してくるため、本発明の製造のように光触媒と原料を混合して焼成した場合は内部にある光触媒まで対象とはならない。そこで、本発明では発泡材の技術を応用することで上記課題を克服する。図1は発泡技術を用いて光触媒を表面に露出させるイメージを示したものである。まず始めに1の原料と2の光触媒、3の発泡剤を混合して均一に分散させることで基本となる混合材料となる。混合材料を加熱することで原料は軟化するが、光触媒は融解しない。発泡剤は焼成過程で発泡し、結果として4のようにガス化する。その結果、光触媒が露出した発泡材を得ることができる。
【0014】
以上のように、光触媒が活用されてきた表面処理とは異なる手法で触媒活性を発現することが可能となる。本発明品の特徴は、原料に予め混合するというところにあり、後工程で再処理する表面処理よりも容易に光触媒複合材を製品化することができる。また、後工程を省略することが可能であるということは製造の省力化につながり、コスト低減を実現する。さらに、本発明は原料を調整するだけで実現するため、発泡材の製造ラインを交換する必要がなく、総合的に低コストで実施することが可能である。
【0015】
また、本発明は光触媒の光誘起親水化反応と発泡材としての物理構造が組み合わさることで、分解の対象となる物質を水中から効率的に誘導することが可能となり、光触媒と発泡技術は機能面においても相性も良く、実用性の高い技術といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明による光触媒含有発泡材の製造方法について、実際上どのように具現化されるかの実施形態と触媒活性について評価した試験結果について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明品は、本出願人による特開2001−335391において提供されるガラス発泡資材の製造技術を用いることで容易に実現している。図2には本発明品を実現するための製品フローを示した。ガラス発泡資材の製造において、廃ガラスびんを破砕し、200ミクロン以下の粉末状にして発泡材の主な原料である廃ガラスびん粉末を得た。前記の廃ガラスびん粉末には発泡剤と共に光触媒を添加して混合した。本発明では、光触媒として耐熱性に優れるアパタイト被覆酸化チタンを選択し、太平化学産業製PHOTOHAP PCAP-100を使用した。なお、使用したアパタイト被覆酸化チタンの製品安全データシートに示されている融点は1670℃以上であった。光触媒は廃ガラスびん粉末に0.2%(w/w )となるように添加し、発泡剤には炭酸カルシウム等を使用し、添加量は1%以下とした。混合された原料を800℃以上で焼成し、放熱・分級後、製品とした。なお、焼成段階で使用する焼成炉は目的の温度が確保されるのであれば種類は問わない。
【0018】
一方、前述の焼成方法においても多孔質構造を形成し、十分な効果を発現することになるが、製品は閉気孔が多くなるため、光触媒を表面に露出させるために孔隙がより連続気孔となるように工夫を行った。連続気孔を高めるためには、請求項3に示す連続気孔形成を促進する材料を原料として添加することで達成した。連続気孔形成を促進する材料とは、添加する段階で既に気孔を保持する材料であり、素焼きの鉢等を粉砕したものでもかまわないが、前報で示したガラス発泡資材の製造段階で製品を分別する工程で製品が磨耗して発生する粉末を再利用することが資源循環的活用法といえる。この連続気孔を促進する材料の添加量は比重の調整もかねて行うため、1 〜50%の範囲内で良い。連続気孔を促進する材料を添加した場合の連続気孔形成イメージを図3に示したが、孔隙が存在する材料を原料に添加した場合、元の孔隙と発泡剤により形成される新しい孔隙が連結し、閉気孔を連続気孔へと改良することになる。
【0019】
以上により、光触媒含有発泡材を提供することが可能となるが、本発明は異なる発泡技術においても応用が可能であり、製造方法を本実施形態に固定するものではない。また、光触媒の添加量は多くてもかまわないが、1%以上混合する必要はなく、コスト的にも添加量は少ない方が良い。
【実施例2】
【0020】
次に、光触媒の効果を確認するために次のような試験を実施した。さらに効果を比較するために本発明品以外に、光触媒を添加しない製品と酸化チタンを添加した試作品を用意し、容器に10ppm に希釈したメチレンブルー溶液を適当量入れ、そこに本発明品とそれ以外の試作品を同量浸漬後、室内で乾燥し、15日以上、大気中に放置した結果を示したのが図4である。なお、室内では常時光を当てるのではなく、時として暗闇になることもあった。
【0021】
試験の結果、無添加の処理区は色素が若干消失した様子が確認されたが、酸化チタンに至っては、全く色素の変化が見られなかった。これに対して、本発明品は製造時の製品の色と同等まで色素が落ちており、本発明品に触媒活性が確認された。さらに、この結果は光触媒を薄膜化しなくとも触媒活性を発現するという新しい知見を示唆するものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明品は光触媒を活用している脱臭、水処理、環境浄化等のさまざまな分野においての活用が可能である。さらに、本発明において提供する製造技術は光触媒に限定するものではないため、発泡材を活用する他の分野や他製造技術においても応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明品における製造工程における光触媒の露出イメージを示した図である。
【図2】実施例1に示す光触媒含有発泡材の製造方法のフローチャートである。
【図3】実施例1 に示す光触媒含有発泡資材における閉気孔の連続気孔への改良方法について示した図である。
【図4】実施例2に示す光触媒活性を比較・評価した写真である。
【符号の説明】
【0024】
1.原料
2.発泡剤
3.光触媒
4.発泡剤のガス化した様子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を製品内部に含有することを特徴とする光触媒含有複合材。
【請求項2】
耐火度の高い光触媒と光触媒よりも耐火度の低い少なくとも一つ以上の原料及び発泡剤を混合し、光触媒の活性を失わず、原料が軟化する温度で焼成してなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒発泡材。
【請求項3】
請求項2に記載の原料に連続気孔形成を促進する材料を添加することで光触媒活性を発現することを特徴とする光触媒含有発泡材の製造方法。
【請求項4】
前記の製造方法により連続気孔とすることで吸水性を高め、光触媒と酸化対象物質の接触の機会を物理的に作り出すことを特徴とする光触媒含有発泡材。
【請求項5】
請求項1に記載の光触媒含有発泡材の製造段階で原料混合時に少なくとも一つ以上の機能性材料を混合してなることを特徴とする多機能光触媒複合材。
































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−117926(P2007−117926A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315443(P2005−315443)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(595030826)株式会社EM研究機構 (7)
【Fターム(参考)】