説明

光触媒を用いた空気浄化装置

【課題】 光触媒を用いて有害化学物質を分解して無害化などをする、特に粉塵を出すことが許されない環境に適した浄化装置に関し、光触媒ユニットを通過する流速が粉塵捕集フィルターの静圧の変化や流速に影響されないようにする。
【解決手段】 浄化室3内に光触媒ユニット21と浄化用送風機22とによる空気浄化ユニット20を設け、空気浄化ユニット20は浄化室3内の空気を取り入れて浄化室3内に排気し、浄化室3には空気取り込み口5から主送風機7への空気浄化ユニット20を経由しない連通路3aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いて有害化学物質を分解して無害化や脱臭を行ない、ウィルスなどを殺菌する空気浄化装置に関し、特にクリンルーム等の粉塵を出すことが許されない環境に適した浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンなどの光反応性半導体(以下光触媒という)に紫外線光源(ブラックライト、水銀灯など)を当てて励起させてOHラジカルを生成し、その活性化した光触媒に浄化すべき空気を通過させて汚染物質を分解し、無害化や脱臭あるいは殺菌をする空気浄化装置は知られている。
【0003】
そのような空気浄化装置には、例えば光触媒をセラミック質の多孔性基材に塗工し、乾燥凝固させた膜を焼成して微細孔性の膜を形成した光触媒担持体が用いられる。
【0004】
このような光触媒担持体を用いた空気浄化装置は、例えば特開2003−53194号公報の図4に示されるように、筐体に空気取り込み口と空気排出口を設け、空気取り込み口の直後に送風機(ファン)を設け、送風機の後に複数枚の板状の光触媒担持体(フィルター)を浄化すべき空気流に直交させて平行に配置し、その間に複数本の紫外線光源(ランプ)を配置したものである。
【0005】
この空気浄化装置では、浄化すべき空気を光触媒担持体と紫外線光源とからなる光触媒ユニットに対して押し込むようになっている。
【0006】
また、本発明の図4に示すような空気浄化装置30も知られている。この空気浄化装置30は、筐体に空気取り込み口31と空気排出口32を設け、空気排出口32の直前に送風機33を設け、複数枚の板状の光触媒担持体34を浄化すべき空気36流に直交させて平行に配置し、その間に複数本の蛍光管状の紫外線光源35を配置したものである。
【0007】
この空気浄化装置30では、浄化すべき空気36を光触媒担持体34と紫外線光源35とからなる光触媒ユニットに対して引き込むようになっている。
【0008】
この光触媒ユニットに対して浄化すべき空気を押し込むか引き込むかは、分解しようとする有害化学物質の種類や濃度により浄化効率が異なるためで、比較的層状流として光触媒ユニットを通過させた方が浄化効率が高くなる場合には光触媒ユニットに対して引き込むように、比較的乱流として光触媒ユニットを通過させた方が浄化効率が高くなる場合には光触媒ユニットに対して押し込むようにすると良いと考えられる。
【特許文献1】特開2003−53194号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような光触媒担持体では、その多孔性基材が焼成による熱衝撃で破損していたり、多孔性基材から光触媒が離脱していたりする。このような光触媒担持体を空気浄化装置にそのまま用いると、微細な粉塵が飛散することになる。そのため、クリンルーム等の粉塵を出すことが許されない環境では、光触媒担持体を通過した空気は粉塵捕集フィルターを通してから排出しなければならない。
【0010】
クリンルーム等に用いる粉塵捕集フィルターは微細な粉塵を捕集するもので、もともと静圧が高いものであるが、粉塵が捕集されるとともにさらに静圧が高くなり通過する流速が遅くなる。
【0011】
一方、光触媒担持体を通過する流速は、分解しようとする有害化学物質の種類や濃度により浄化効率の高い最適な流速が決められる。
【0012】
そのため、前記した特開2003−53194号公報の図4の装置や、本発明の図4に示す従来装置の空気排出口に粉塵捕集フィルターを用いると、光触媒担持体を通過する最適な流速が得られない。
【0013】
また、分解しようとする有害化学物質や臭気により、分解の精度を上げてから排出するために要する時間が異なる。つまり、光触媒との接触により部分的に結合が切断され、一旦中間物質が生成されるような難分解性の物質では、その中間物質に害や悪臭があると完全な浄化とは言えない。そのため、中間物質をできるだけ少なくして二酸化炭素と水というような完全な浄化に至るには、光触媒担持体と紫外線光源とからなる光触媒ユニットを浄化すべき空気が何回も通過するような多段にすることが一つの解決方法である。
【0014】
しかし、光触媒担持体と紫外線光源とからなる光触媒ユニットを多段にすると、つまり特開2003−53194号公報の図4の装置や本発明の図4に示す従来装置では、光触媒担持体が3列、紫外線光源が2列の光触媒ユニットとなっているが、その光触媒ユニットを複数段とすると、装置が大型になり、なおかつ高価となる。
【0015】
また、空気排出口に粉塵捕集フィルターを用いた場合、空気排出口の位置は変更不能であり、光触媒担持体と紫外線光源とからなる光触媒ユニットに対して浄化すべき空気を押し込むか引き込むかを送風機の送風方向を変更して行なうことはできず、光触媒ユニットを通過する空気流に対して送風機自体を前後に移動させなければならず、そのための余分な空間を必要とする。
【0016】
そこで本発明は、浄化すべき空気が光触媒担持体と紫外線光源とからなる光触媒ユニットを通過する流速が粉塵捕集フィルターの静圧の変化や流速に影響されず浄化効率の高い一定の流速となり、光触媒ユニットを多段とすることなく浄化すべき空気が光触媒ユニットを複数回通過して中間物質の排出を低減させ、光触媒ユニットに対して浄化すべき空気を押し込むか引き込むかを容易に変更可能とした、光触媒を用いた空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明による光触媒を用いた空気浄化装置は、浄化装置の筐体1を浄化室3と濾過室4に区画壁2で区画し、浄化室3に空気取り込み口5を設け、濾過室4の空気排出口6に粉塵捕集フィルター12を設け、区画壁2の浄化室3と濾過室4との連通孔に主送風機7を設け、浄化室3内に光触媒ユニット21と浄化用送風機22とによる空気浄化ユニット20を設け、光触媒ユニット21は光触媒を担持した光触媒担持体23,24と紫外線光源25とからなり、空気浄化ユニット20は浄化室3内の空気を取り入れて浄化室3内に排気し、浄化室3には空気取り込み口5から主送風機7への空気浄化ユニット20を経由しない連通路3aを設けたものである。
【0018】
請求項2の発明による光触媒を用いた空気浄化装置は、主送風機7の送風量を可変とし、空気浄化ユニット20を通過する風量V1より粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2を小とし、空気浄化ユニット20の排気が連通路3aを通って再び取り入れ口に向かうものである。
【0019】
請求項3の発明による光触媒を用いた空気浄化装置は、浄化室3の空気流に対する空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21と浄化用送風機22の配置を前後に変更可としたものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、浄化室3内に光触媒ユニット21と浄化用送風機22とによる空気浄化ユニット20を設け、空気浄化ユニット20は浄化室3内の空気を取り入れて浄化室3内に排気し、浄化室3には空気取り込み口5から主送風機7への空気浄化ユニット20を経由しない連通路3aを設け、浄化すべき空気が光触媒ユニット21を通過する流速が粉塵捕集フィルター12の静圧の変化や流速に影響されず浄化効率の高い一定の流速となるから、分解しようとする有害化学物質の浄化効率を高くできる。
【0021】
請求項2の発明によれば、主送風機7の送風量を可変とし、空気浄化ユニット20を通過する風量V1より粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2を小とし、空気浄化ユニット20の排気が連通路3aを通って再び取り入れ口に向かうから、光触媒ユニット21を浄化すべき空気が何回も通過するような多段とすることなく、浄化すべき空気が光触媒ユニット21を複数回通過して中間物質の排出を低減させることができる。また、装置が小型で安価に提供できる。
【0022】
請求項3の発明によれば、浄化室3の空気流に対する空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21と浄化用送風機22の配置を前後に変更可とし、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を押し込むか引き込むかを容易に変更可能としたから、分解しようとする有害化学物質の浄化効率を高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
浄化すべき空気が光触媒ユニット21を通過する流速を浄化効率の高い一定の流速とし、光触媒ユニット21を浄化すべき空気が何回も通過するような多段とすることなく中間物質の排出を低減させ、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を押し込むか引き込むかを容易に変更可能とするという目的を、浄化室3内に光触媒ユニット21と浄化用送風機22とによる空気浄化ユニット20を設け、空気浄化ユニット20は浄化室3内の空気を取り入れて浄化室3内に排気し、浄化室3には空気取り込み口5から主送風機7への空気浄化ユニット20を経由しない連通路3aを設け、主送風機7の送風量を可変とし、空気浄化ユニット20を通過する風量V1より粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2を小とし、空気浄化ユニット20の排気が連通路3aを通って再び取り入れ口に向かい、浄化室3の空気流に対する空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21と浄化用送風機22の配置を前後に変更可として実現した。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の一実施例に係る空気浄化装置の縦断面図であって、クリンルーム等の粉塵を出すことが許されない環境に適したものである。
【0025】
空気浄化装置の箱状の密閉された筐体1内で、筐体1を浄化室3と濾過室4に区画壁2で区画し、浄化室3の空気取り込み口5にプレフィルター11を設け、濾過室4の空気排出口6に粉塵捕集フィルター12を設ける。
【0026】
プレフィルター11は光触媒担持体23,24や粉塵捕集フィルター12に害を与える虞のある大きさの粉塵を捕集し、粉塵捕集フィルター12は微細な粉塵も捕集してクリンルーム等の環境に適した空気とするものである。プレフィルター11と粉塵捕集フィルター12の周囲は筐体1とシール材により密閉される。
【0027】
筐体1の浄化室3上面に開閉可能な蓋8を設け、蓋8と筐体1は通常は密閉される。筐体1下面の四隅には装置を支持する脚9を設ける。
【0028】
区画壁2の浄化室3と濾過室4との連通孔に主送風機7を設け、主送風機7はファンモーターのようなもので、インバータにより主送風機7の回転数を変えて送風量を可変とする。
【0029】
浄化室3内の蓋8の直下に光触媒ユニット21と浄化用送風機22とによる空気浄化ユニット20を設ける。空気浄化ユニット20を蓋8の直下に設けるのは、空気浄化ユニット20をメンテナンスしたり、配置を変更するときに、取り出せるようにするためである。
【0030】
浄化用送風機22はファンモーターのようなもので、インバータにより浄化用送風機22の回転数を変えて送風量を可変とし、分解しようとする有害化学物質の種類や濃度に対応して、光触媒担持体23,24を通過する最適な流速が得られるようにする。
【0031】
光触媒ユニット21は、光触媒を担持した光触媒担持体23,24と紫外線光源25とからなる。
【0032】
光触媒ユニット21には、3枚の光触媒担持体23と2枚の光触媒担持体24を平面視で「日」の字状に組み合わせ、保持枠26でその形状を保ちかつ流路を規制するように保持し、その光触媒担持体23,24に囲まれた空間に各1本の紫外線光源25を設ける。
【0033】
これら光触媒担持体23,24は、セラミックス質の多孔性基材の担持体に酸化チタンなどの光触媒(光反応性半導体)を担持させた、所定の厚みがあり硬質のものである。
【0034】
紫外線光源25は、「U」の字形状(ツイン型)のものを垂直方向に長く配置する。紫外線光源25と光触媒担持体23,24とは、それぞれ平行に接近させて配置し、光触媒担持体23,24で紫外線光源25を囲むようにする。実施例では、1個の光触媒ユニット10に2本の紫外線光源25を配置している。
【0035】
紫外線光源25は、光触媒担持体23,24の光触媒を励起させる波長の紫外光を発するもので、ブラックライトや水銀灯などである。
【0036】
図1に示すのは、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を引き込むように配置したれ例であり、空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21が空気取り込み口5側に、浄化用送風機22が主送風機7側としている。このため、浄化用送風機22が光触媒ユニット21の後側に位置し、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を引き込む。
【0037】
図2に示すのは、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を押し込むように配置したれ例であり、空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21が主送風機7側に、浄化用送風機22が空気取り込み口5側としている。このため、浄化用送風機22が光触媒ユニット21の前側に位置し、光触媒ユニット21に対して浄化すべき空気を押し込む。
【0038】
この配置の変更は、平面視で空気浄化ユニット20全体を180度回転させることと、浄化用送風機22を空気浄化ユニット20内の取付壁の表裏に付け替えることにより行なう。
【0039】
このことにより、空気取り込み口5から主送風機7への浄化室3の空気流に対する、空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21と浄化用送風機22の配置を前後に変更可としている。
【0040】
なおいずれの場合も、空気浄化ユニット20は浄化室3内の空気を取り入れて浄化室3内に排気するもので、空気浄化ユニット20を通過する風量V1と粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2に差が生じた場合のため、浄化室3には空気取り込み口5から主送風機7への空気浄化ユニット20を経由しない連通路3aを設ける。
【0041】
次に、運転方法を効果とともに説明する。
【0042】
空気浄化ユニット20の光触媒ユニット21と浄化用送風機22の前後の配置や、浄化用送風機22の回転数は、分解しようとする有害化学物質の種類や濃度に対応して設定する。
【0043】
また通常は、主送風機7の回転数は、空気浄化ユニット20を通過する風量V1と粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2が同一となるよう設定する。
【0044】
粉塵が捕集されるとともに粉塵捕集フィルター12の静圧が高くなり、通過する流速が遅くなっても、空気浄化ユニット20の排気が連通路3aを通って再び取り入れ口に向かう風量V3が発生する。
【0045】
また、浄化より粉塵の捕集を重視する場合には、主送風機7の回転数を上げて、空気浄化ユニット20を通過する風量V1より粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2を大とすると、空気取り込み口5から連通路3aを通り主送風機7へとの順方向の流れが発生する。
【0046】
このいずれの場合も、浄化すべき空気が光触媒ユニット21を通過する流速が粉塵捕集フィルター12の静圧の変化や流速に影響されず浄化効率の高い一定の流速となるから、分解しようとする有害化学物質の浄化効率を高くできる。
【0047】
また、難分解性の物質を分解するには、主送風機7の回転数を下げて、空気浄化ユニット20を通過する風量V1より粉塵捕集フィルター12を通過する風量V2を小とし、空気浄化ユニット20の排気が連通路3aを通って再び取り入れ口に向かう風量V3を発生させ、光触媒ユニット21を多段とすることなく浄化すべき空気が光触媒ユニット21を複数回通過して中間物質の排出を低減させることができる。
【0048】
以上の実施例では、光触媒担持体23,24としてセラミックス質の多孔性基材のものを示したが、アルミ繊維やガラス繊維基材のもの、その他の金属繊維基材(ステンレスなど)や植物繊維基材あるいは合成繊維基材などを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】光触媒を用いた空気浄化装置の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】その別な態様を示す図である。
【図3】光触媒ユニットの平面図である。
【図4】従来技術を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
2 区画壁
3 浄化室
3a 連通路
4 濾過室
5 空気取り込み口
6 空気排出口
7 主送風機
12 粉塵捕集フィルター
20 空気浄化ユニット
21 光触媒ユニット
22 浄化用送風機
23,24 光触媒担持体
25 紫外線光源
V1 風量
V2 風量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化装置の筐体を浄化室と濾過室に区画壁で区画し、浄化室に空気取り込み口を設け、濾過室の空気排出口に粉塵捕集フィルターを設け、区画壁の浄化室と濾過室との連通孔に主送風機を設け、浄化室内に光触媒ユニットと浄化用送風機とによる空気浄化ユニットを設け、光触媒ユニットは光触媒を担持した光触媒担持体と紫外線光源とからなり、空気浄化ユニットは浄化室内の空気を取り入れて浄化室内に排気し、浄化室には空気取り込み口から主送風機への空気浄化ユニットを経由しない連通路を設けた光触媒を用いた空気浄化装置。
【請求項2】
主送風機の送風量を可変とし、空気浄化ユニットを通過する風量より粉塵捕集フィルターを通過する風量を小とし、空気浄化ユニットの排気が連通路を通って再び取り入れ口に向かう請求項1記載の光触媒を用いた空気浄化装置。
【請求項3】
浄化室の空気流に対する空気浄化ユニットの光触媒ユニットと浄化用送風機の配置を前後に変更可とした請求項1記載の光触媒を用いた空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192338(P2006−192338A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4597(P2005−4597)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(304016516)有限会社関 (6)
【Fターム(参考)】