説明

光触媒アパタイト膜の形成方法

光触媒アパタイト膜の形成方法は、光触媒アパタイトを含むスパッタリング用のターゲットを作製するためのターゲット作製工程(S12)と、当該ターゲットを用いたスパッタリング法により基材に対して光触媒アパタイトを成膜するためのスパッタリング工程(S13)とを含む。スパッタリング工程(S13)より前に、光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための焼成工程(S11)が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光触媒機能を有する膜を形成する方法に関する。本発明は、特に、成膜手法としてスパッタリング法が採用される光触媒アパタイト膜形成方法に関する。
【背景技術】
ノートパソコンや携帯電話などの電子機器には、使用態様に応じて、手脂やタバコタール、および、これらを介して埃などが付着してしまう。また、電子機器に対する手脂の付着は、機器表面における雑菌などの繁殖を助長する傾向がある。手脂、タバコタール、雑菌などによるこのような汚染を放置しておくと、電子機器の外観が損われたり、ひいては清潔感が損われる場合がある。ノートパソコンや携帯電話などの電子機器においては、特に表示画面保護用の透明カバーや筐体について、このような不具合を回避する必要性は高い。加えて、生活環境における抗菌に対する関心が高まるにつれて、ノートパソコンや携帯電話などの電子機器においても、その筐体や操作キーなどに対して抗菌性が強く要求されるようになってきた。そのため、電子機器の分野では、手脂、タバコタール、雑菌などによる汚染に適切に対応するための抗菌・防汚技術の導入が望まれている。
近年、酸化チタン(TiO)などの一部の半導体物質の光触媒機能が注目を集めており、この光触媒機能に基づいて抗菌作用や防汚作用などが発揮され得ることが知られている。光触媒機能を有する半導体物質では、一般に、価電子帯と伝導帯のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を当該半導体物質が吸収することによって、価電子帯の電子が伝導帯に遷移し、この電子遷移により、価電子帯には正孔が生ずる。伝導帯の電子は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質に移動する性質を有し、これにより当該吸着物質は還元され得る。価電子帯の正孔は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質を有し、これにより当該吸着物質は酸化され得る。
光触媒機能を有する酸化チタン(TiO)においては、伝導帯に遷移した電子は、空気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O)を生成させる。これとともに、価電子帯に生じた正孔は、酸化チタン表面の吸着水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有している。そのため、光触媒性酸化チタンに対して例えば有機物が吸着すると、ヒドロキシラジカルが作用することによって、当該有機物は、水と二酸化炭素にまで分解される場合がある。有機物におけるこのような酸化分解反応を光触媒機能に基づいて促進することが可能な酸化チタンは、抗菌剤、殺菌剤、防汚剤、脱臭剤、環境浄化剤などにおいて、広く利用されている。
酸化チタン(TiO)は無色である。したがって、当該無色な酸化チタンは、デザイン性を損わずに例えば抗菌性を付与することを目的として、所定の部材の表面に対してスパッタリング法により薄く形成される場合がある。スパッタリング法により薄く形成された酸化チタン膜自体は、実質的に透明である。
しかしながら、酸化チタン薄膜がガラス表面に形成されている場合には、当該酸化チタン薄膜およびガラスを透過する透過光が干渉し合って干渉縞が生じ、当該ガラスの透明性が損われてしまうことが多い。酸化チタンの屈折率が、ガラスのそれの3倍程度に大きいためである。酸化チタン膜を薄くすることによって当該干渉縞の発生を低減することは可能であるが、膜厚が小さくなるほど当該酸化チタン膜の抗菌性は低下する。酸化チタン膜の膜厚が過度に小さくなると、ガラス表面において充分な抗菌性が得られない場合がある。
また、酸化チタン自体は、その表面に何らかの物質を吸着する能力に乏しい。したがって、光触媒機能に基づく酸化チタンの光触媒機能(酸化分解作用)ひいては抗菌作用や防汚作用などを充分に享受するためには、酸化分解されることとなる分解対象物と酸化チタンとの接触効率を向上させる必要がある。
分解対象物と酸化チタンとの接触効率を向上させるための技術は、例えば特開2000−327315号公報に開示されている。当該公報には、光触媒機能を有する例えば酸化チタンと、特にタンパク質などの有機物を吸着する能力に優れている例えばカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)とが原子レベルで複合化された光触媒アパタイトが開示されている。当該光触媒アパタイトは、具体的には、CaHAP(Ca10(PO(OH))を構成するCaの一部がTiに置換された結晶構造を有するチタン修飾カルシウムハイドロキシアパタイト(Ti−CaHAP)であり、当該Ti導入部位には、光触媒性酸化チタンの化学構造に近似する酸化チタン様部分構造が形成されている。有機物吸着性に優れたCaHAPの結晶構造中に、光触媒機能を発揮し得る酸化チタン様部分構造が内在しているため、有機物すなわち分解対象物と酸化チタン様部分構造との接触効率は効果的に向上している。したがって、当該酸化チタン様部分構造は、光触媒機能に基づいて、例えば手脂や細菌細胞膜などの有機物を効率良く酸化分解することが可能なのである。
特開2000−327315号公報によると、光触媒アパタイトは粉末の状態で得られる。当該光触媒アパタイト粉末から作製されたスパッタリング用ターゲットを用いて、スパッタリング法により、所定の基材の上に光触媒アパタイトを薄く成膜することができる。スパッタリング法によるアパタイト材料の成膜技術は、例えば、特開平10−72666号公報および特開平10−328292号公報に開示されている。光触媒アパタイトである例えばTi−CaHAPは、無色であり、ガラスと同程度の屈折率を有する。そのため、Ti−CaHAP膜がスパッタリングによりガラス表面に形成されている場合には、Ti−CaHAP膜およびガラスを透過する透過光は殆ど干渉せず、実質的に干渉縞は生じない。このように、スパッタリング法によりガラス表面にコーティングされた光触媒アパタイト膜によると、その膜厚を過度に小さくせずとも、ガラスの良好な透明性を維持することが可能な場合がある。
しかしながら、従来の技術によると、スパッタリング法により形成された光触媒アパタイト膜においては、成膜前の光触媒アパタイトに比べて相当な程度に光触媒活性が低下してしまうことが知られている。スパッタリング法においては、まず、スパッタリングガスとしての不活性ガスイオンが、加速されて、薄膜化を目的とする物質から作製されたターゲットに衝突される。これにより、ターゲット表面から当該物質が飛散する。飛散した物質は、ターゲットに対向して配置されている基材の上に堆積し、その結果、基材上に薄膜が形成される。成膜手法としてスパッタリング法が採用される従来の光触媒アパタイト膜形成技術によると、ターゲットから光触媒アパタイトが飛散する際に、当該アパタイトの光触媒機能が過度に低下してしまうほどに結晶構造が破壊されてしまうと推定される。したがって、従来、光触媒機能を呈する光触媒アパタイト膜を形成する際に、成膜手法としてスパッタリング法を採用するのは実用的でなかった。
【発明の開示】
本発明は、高い光触媒活性を有し且つ透明性に優れた光触媒アパタイト膜を形成するための方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の側面によると光触媒アパタイト膜の形成方法が提供される。この方法は、光触媒アパタイトを含むスパッタリング用のターゲットを作製するためのターゲット作製工程と、ターゲットを用いたスパッタリング法により基材に対して光触媒アパタイトを成膜するためのスパッタリング工程と、を含み、スパッタリング工程より前に、光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための焼成工程が行われる。
このような方法により形成される光触媒アパタイト膜は、高い光触媒活性を有する。本発明の第1の側面においては、光触媒アパタイトの成膜手法としてスパッタリングが行われ、当該スパッタリング工程より前に、スパッタリングに供される光触媒アパタイトは、その結晶性が向上するように焼成される。この焼成処理は、ターゲット作製工程の前、ターゲット作製工程において、または、ターゲット作製工程の後に行われる。本発明者らは、スパッタリング工程に供される光触媒アパタイトがスパッタリング工程より前にこのような焼成処理を経ることによって、当該光触媒アパタイトの光触媒活性は、スパッタリング工程を経ても相当程度に維持され得ることを見出した。
従来の光触媒アパタイト膜形成方法においては、スパッタリング法による光触媒アパタイトの成膜時に、イオン化されたスパッタリングガスが所定のエネルギーで衝突する光触媒アパタイトターゲットからは、アパタイトは、充分な光触媒活性を維持できないほどに結晶構造が破壊された状態、即ち原子や比較的小さなクラスターの状態で飛散していると、推定される。これに対し、本発明の第1の側面に係る光触媒アパタイト膜形成方法によると、スパッタリング法による成膜時に、焼成処理を経て結晶性が向上した光触媒アパタイトターゲットから、光触媒アパタイトは、光触媒活性を発揮し得る化学構造が維持されている比較的大きなクラスターの状態で飛散していると、推定される。光触媒活性を発揮し得る化学構造が維持されているクラスターが基材上に堆積することにより、高い光触媒活性を有する光触媒アパタイト膜が形成される。
また、本発明の第1の側面に係る方法により形成される光触媒アパタイト膜は、透明性に優れている。本発明においては、無色の光触媒アパタイトをスパッタリング法により薄く成膜することができるので、光触媒アパタイト膜自体を実質的に透明に形成することができる。
加えて、アパタイト結晶構造を有する光触媒アパタイトの屈折率は透明ガラスのそれと同程度な場合がある。第1の側面に係る方法により、透明ガラスと同程度の屈折率を有する光触媒アパタイト膜をガラス上に形成した場合には、酸化チタン膜をガラス上に形成した場合に生じ得るような干渉縞は生じない。
このように、本発明の第1の側面に係る方法により形成される光触媒アパタイト膜は、高い光触媒活性を有し且つ透明性に優れているのである。したがって、このような光触媒アパタイト膜が、例えば電子機器筐体の表面に形成されている場合には、当該筐体は、そのデザイン性が阻害されずに優れた抗菌性および防汚性などを有することとなる。また、このような光触媒アパタイト膜が、例えば電子機器の表示部保護用透明カバーの表面に形成されている場合には、当該カバーは、その透明性が阻害されずに優れた抗菌性および防汚性などを有することとなる。
本発明の第1の側面において、好ましくは、焼成工程は、ターゲット作製工程の前に、粉末状の光触媒アパタイトに対して行われる。或は、好ましくは、ターゲット作製工程では、光触媒アパタイトに対する焼結処理が行われ、当該焼結処理は焼成工程を含む。焼成工程およびターゲット作製工程は、共に、光触媒アパタイトに対する加熱処理を伴う。当該加熱処理における加熱温度および加熱時間について、焼成工程において光触媒アパタイトの結晶性を向上させるための条件と、ターゲット作製工程において光触媒アパタイトターゲットを作製するための条件とに応じて、焼成工程をターゲット作製工程の前に行うか、ターゲット作製工程において行うか、或は、ターゲット作製後に行うかを、選択することができる。
本発明の第1の側面において、好ましくは、スパッタリング工程の後に、基材に成膜された光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための、追加焼成工程を更に含む。当該追加焼成工程では、好ましくは、光触媒アパタイトは550℃以上で焼成される。スパッタリング工程の後に所定の焼成工程を行うことにより、光触媒アパタイト膜の光触媒活性は向上する傾向にある。
本発明の第2の側面によると別の光触媒アパタイト膜形成方法が提供される。この方法は、光触媒アパタイトを含むスパッタリング用のターゲットを作製するためのターゲット作製工程と、ターゲットを用いたスパッタリング法により基材に対して光触媒アパタイトを成膜するためのスパッタリング工程と、基材に成膜された光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための焼成工程とを含む。
本発明の第2の側面においては、光触媒アパタイトの成膜手法としてスパッタリングが行われ、当該スパッタリング工程を経て成膜された光触媒アパタイトは、その結晶性が向上するように焼成される。したがって、第2の側面に係る方法により形成される光触媒アパタイト膜は、高い光触媒活性を有する。また、本発明の第2の側面に係る方法により形成される光触媒アパタイト膜は、第1の側面に係る方法により形成される光触媒アパタイトと同様に、透明性に優れている。したがって、本発明の第2の側面によっても、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、焼成工程では、光触媒アパタイトは550℃以上で焼成される。焼成温度が550℃以上である場合において、光触媒アパタイトの結晶性向上は顕著となる傾向にある。
好ましくは、ターゲット作製工程では、光触媒アパタイトは100〜500℃で焼結される。このような焼結によると、光触媒アパタイトターゲットを適切に作製することができる。
好ましくは、スパッタリング工程では、ガス圧力が0.27〜3Paであり且つ基材温度が100℃以上である条件の下で、光触媒アパタイトは成膜される。好ましくは、スパッタリング工程では、スパッタリングガスとしてアルゴンガスが使用される。これらのようなスパッタリング条件によると、所定の膜厚を有する光触媒アパタイト膜を有意な速度で適切に形成することができる。
好ましくは、光触媒アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有するチタン修飾カルシウムハイドロキシアパタイト(Ti−CaHAP)である。
このようなTi−CaHAPは、光触媒機能を有する酸化チタンと、特にタンパク質などの有機物を吸着する能力に優れているカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)とが原子レベルで複合化されているので、CaHAPに基づく高吸着性およびTiに基づく光触媒活性の相乗効果により、上述のように、優れた光触媒物質として機能することができる。
好ましくは、チタン修飾カルシウムハイドロキシアパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である。このような比率は、優れた光触媒活性を達成するうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明で用いられる光触媒アパタイトの表面化学構造のモデルを表す。
図2は、本発明で用いられる光触媒アパタイトの製造方法のフローチャートである。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法のフローチャートである。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法のフローチャートである。
図5は、実施例1〜3および比較例における活性測定の結果を表すグラフである。
図6は、実施例4〜7における活性測定の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、成膜手法としてスパッタリング法が採用される光触媒アパタイト膜形成方法である。本発明における成膜対象である光触媒アパタイトは、光触媒機能を有する金属酸化物と、いわゆるアパタイトとを原子レベルで複合化したものである。光触媒アパタイトの基本骨格を構成するアパタイトは、次のような一般式によって表すことができる。
(BO ・・・・(1)
式(1)におけるAは、Ca,Co,Ni,Cu,Al,La,Cr,Mgなどの各種の金属原子を表す。Bは、P,Sなどの原子を表す。Xは、水酸基(−OH)やハロゲン原子(例えば、F,Cl)などである。より具体的には、光触媒アパタイトの基本骨格を構成するアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイトなどが挙げられる。本発明において好適に用いることのできるアパタイトは、上式におけるXが水酸基(−OH)であるハイドロキシアパタイトである。より好ましくは、上式におけるAがカルシウム(Ca)であって、Bがリン(P)であって、Xが水酸基(−OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)、即ちCa10(PO(OH)である。
CaHAPは、カチオンともアニオンともイオン交換しやすいため吸着性に富んでいるので、特にタンパク質などの有機物を吸着する能力に優れている。加えて、CaHAPは、カビや細菌などを強力に吸着することによって、それらの増殖を阻止ないし抑制し得ることが知られている。
光触媒アパタイトに含まれる光触媒性金属原子、すなわち、酸化物の状態で光触媒中心として機能し得る金属原子としては、例えば、Ti,Zn,W,Mn,Sn,In,Feなどが挙げられる。このような光触媒性金属原子が、上掲の一般式で表されるアパタイトの結晶構造を構成する金属原子Aの一部としてアパタイト結晶構造中に取り込まれることによって、アパタイト結晶構造内において光触媒機能を発揮し得る光触媒性部分構造が形成される。光触媒性部分構造とは、より具体的には、式(1)におけるAの一部に代わって取り込まれる光触媒性金属原子と、式(1)における酸素原子とからなり、光触媒機能を有する金属酸化物の構造に相当するものであると考えられる。
図1は、光触媒性金属としてTiを選択し、当該アパタイトとしてカルシウムハイドロキシアパタイトを選択してなるTi−CaHAPの表面化学構造のモデルを表す。
結晶性の高い理想的なTi−CaHAPにおいては、図1に示すようにTiが取り込まれることによって、CaHAP結晶構造中にTiを活性中心とした光触媒性部分構造が形成されている。このようなTi−CaHAPでは、光触媒性部分構造すなわち触媒サイトと、分解対象物である所定の有機物(図示せず)に対する吸着力が高い吸着サイトとが、同一結晶面上において、原子レベルのスケールで散在している。したがって、Ti−CaHAPは、高い吸着力と光触媒機能とを併有し、抗菌作用や防汚作用などを効率よく発揮することができる。
具体的には、光照射条件下においては、Ti−CaHAPにおける酸化チタン様の触媒サイトでは、酸化チタンと同様に吸着水からヒドロキシラジカル(・OH)が生成しており、吸着サイトには有機物が吸着される。吸着した有機物は、表面拡散によりTi−CaHAP表面を移動して、触媒サイトおよびその近傍にてヒドロキシラジカルによって酸化分解される。また、Ti−CaHAPの吸着サイトにより微生物が強力に吸着されると、当該微生物の増殖は阻止・抑制されるので、Ti−CaHAPが光照射条件下にないために触媒サイトが光触媒として機能しない場合であっても、当該Ti−CaHAPは抗菌性を有する。
本発明で用いられる光触媒アパタイトのアパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する光触媒性金属の存在比率は、光触媒アパタイトの吸着性および光触媒機能の両方を効果的に向上するという観点より、3〜11mol%の範囲が好ましい。すなわち、例えばTi−CaHAPでは、Ti/(Ti+Ca)の値が0.03〜0.11(モル比)であるのが好ましい。当該比率が11mol%を上回ると、結晶構造が乱れてしまう場合がある。当該比率が3mol%を下回ると、過剰な吸着サイトに吸着した物質が少ない触媒発現サイトでは充分に処理されない状態となり、光照射条件下においては触媒効果が充分に発揮されない場合がある。
図2は、本発明に係る光触媒アパタイト膜形成方法に用いられる光触媒アパタイトの製造におけるフローチャートである。光触媒アパタイトの製造においては、まず、原料混合工程S1において、光触媒アパタイトを構成するための原料を混合する。例えば、単一の水溶液系に対して、上掲のアパタイト一般式におけるA,BO,Xおよび光触媒性金属イオンに相当する化学種を、各々、所定の量を添加し、混合する。光触媒アパタイトとしてTi−CaHAPを形成する場合には、Ca供給剤としては、硝酸カルシウムなどを用いることができる。PO供給剤としては、リン酸などを用いることができる。水酸基は、後述のpH調節時に使用されるアンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液から供給される。光触媒性金属としてのTiの供給剤としては、塩化チタンや硫酸チタンを用いることができる。
アパタイト結晶構造に含まれる全金属原子における光触媒性金属の比率は、上述のように、3〜11mol%の範囲が好ましい。したがって、原料混合工程S1では、形成される光触媒アパタイトにおける光触媒性金属の比率が3〜11mol%となるように、各原料について供給量を決定し、供給すべき相対的な物質量を調整するのが好ましい。
次に、pH調節工程S2において、上述のようにして用意された原料溶液について、目的とする光触媒アパタイトの生成反応が開始するpHに調節する。このpHの調節には、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液および水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。光触媒アパタイトとして例えばTi−CaHAPを形成する場合には、原料溶液のpHは8〜10の範囲に調節するのが好ましい。
次に、生成工程S3において、光触媒アパタイトの生成を促進することによって、目的とする光触媒アパタイトの結晶性を高める。具体的には、例えば、アパタイト成分および光触媒性金属の一部を共沈させた原料液を、100℃で6時間にわたってエージングすることによって、結晶性の高い光触媒アパタイトが得られる。例えばTi−CaHAPを製造する場合には、本工程では、共沈に際してアパタイト結晶構造におけるCa位置にTiイオンが取り込まれ、Ti−CaHAPが成長する。
次に、乾燥工程S4において、前の工程で生成した光触媒アパタイトを乾燥する。具体的には、まず、生成工程S3にて析出した光触媒アパタイト粉末をろ過する。次に、ろ別した沈殿を純水で洗浄した後、この沈殿を乾燥する。乾燥温度は、100〜200℃が好ましい。本工程によって、原料溶液における液体成分が、光触媒アパタイトから除去される。このようにして、本発明で用いられる光触媒アパタイトを製造することができる。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法のフローチャートである。第1の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法では、まず、焼成工程S11において、例えば上述のようにして製造された粉末状の光触媒アパタイトを、その結晶性が向上するように焼成する。本焼成においては、加熱温度を500〜900℃とし、加熱時間を30分〜2時間とする。
本工程を経ることにより、粉末状の光触媒アパタイトの結晶性は高くなる。結晶性向上の程度は、加熱温度および加熱時間を変更することによって調整することが可能である。
次に、ターゲット作製工程S12において、スパッタリング用のターゲットを作製する。具体的には、上述の焼成工程S11を経た光触媒アパタイト粉末を圧粉および焼結することによって、ターゲットを作製する。本工程においては、加熱温度を100〜500℃とし、加熱時間を30分〜2時間とする。
次に、スパッタリング工程S13において、光触媒アパタイトを成膜する。具体的には、上述のターゲット作製工程S12にて得られた光触媒アパタイトターゲットを用いたスパッタリングにより、所定の基材に対して光触媒アパタイトを成膜する。本工程は、例えばRFマグネトロンスパッタリング装置を使用して行われる。本スパッタリングにおいては、スパッタリングガスとしてArガスを使用し、チャンバ内のガス圧力を0.27Pa〜3.0Paとし、基材の温度を100〜180℃とし、RF出力を100〜300Wとする。このようにして、基材上において、光触媒活性を有する光触媒アパタイト膜を形成することができる。
本工程では、上述の焼成工程S11を経て結晶性が向上した光触媒アパタイトからなるターゲットからは、光触媒アパタイトは、光触媒活性を発揮し得る化学構造が維持されている比較的大きなクラスターの状態で飛散していると、推定される。光触媒活性を発揮し得る化学構造が維持されているクラスターが基材上に堆積することにより、高い光触媒活性が維持された光触媒アパタイト膜が形成される。
また、本工程では、スパッタリングにより無色の光触媒アパタイトを薄く成膜することによって、光触媒アパタイト膜自体を実質的に透明に形成することができる。透明性の観点からは、光触媒アパタイト膜の膜厚は0.2〜0.4μmとするのが好ましい。
加えて、例えば、ガラスと同程度の屈折率を有するTi−CaHAPを光触媒アパタイトとして採用し、且つ、基材として透明なガラスを採用する場合、Ti−CaHAPおよび透明ガラスよりなる積層構造体においては、透明ガラスの3倍程度の屈折率を有する酸化チタン膜をガラス上に形成した場合に生じ得るような干渉縞は生じない。
以上の一連の工程を経て形成された光触媒アパタイト膜は、必要に応じて焼成工程S14に付される。焼成工程S14では、基材上に成膜された光触媒アパタイトを、その結晶性が向上するように再び焼成する。本焼成においては、加熱温度を500〜900℃とし、加熱時間を30分〜2時間とする。
本工程を経ることにより、膜を構成する光触媒アパタイトの結晶性を更に高くすることが可能な場合がある。結晶性の向上により、当該光触媒アパタイト膜の光触媒活性は向上する。結晶性向上の程度は、加熱温度および加熱時間を変更することによって調整することができる。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法のフローチャートである。第2の実施形態に係る光触媒アパタイト膜形成方法では、まず、ターゲット作製工程S21において、スパッタリング用のターゲットを作製する。具体的には、例えば上述のようにして製造された光触媒アパタイト粉末を、圧粉および焼結することによって、ターゲットを作製する。本工程の焼結においては、加熱温度を100〜500℃とし、加熱時間を30分〜2時間とする。
次に、スパッタリング工程S22において、光触媒アパタイトを成膜する。具体的には、上述のターゲット作製工程S21にて得られた光触媒アパタイトターゲットを用いたスパッタリングにより、所定の基材に対して光触媒アパタイトを成膜する。使用装置およびスパッタリング条件については、第1の実施形態に関して上述したのと同様である。
本工程では、焼成処理が施されていない光触媒アパタイトからなるターゲットからは、アパタイトは、充分な光触媒活性を維持できないほどに結晶構造が破壊された状態で飛散していると、推定される。本実施形態において本工程を経た光触媒アパタイトの光触媒活性は、相当程度に低下していることが確認されている。
また、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、本工程では、スパッタリングにより無色の光触媒アパタイトを薄く成膜することによって、光触媒アパタイト膜自体を実質的に透明に形成することができる。
加えて、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、光触媒アパタイトとしてTi−CaHAPを採用し、且つ、基材として透明なガラスを採用する場合、Ti−CaHAPおよび透明ガラスよりなる積層構造体においては、干渉縞は生じない。
次に、焼成工程S23において、基材上に成膜された光触媒アパタイトを、その結晶性が向上するように焼成する。本焼成においては、加熱温度を500〜900℃とし、加熱時間を30分〜2時間とする。
本工程を経ることにより、膜を構成する光触媒アパタイトの結晶性は向上する。結晶性の向上により、当該光触媒アパタイト膜の光触媒活性は向上する。結晶性向上の程度は、加熱温度および加熱時間を変更することによって調整することができる。
本発明に係る方法により形成される光触媒アパタイト膜は、上述したように、高い光触媒活性を有し且つ透明性に優れている。したがって、このような光触媒アパタイト膜を例えば電子機器筐体の表面に形成することによって、当該筐体に対して、そのデザイン性を阻害せずに優れた抗菌性および防汚性などを付与することが可能である。また、このような光触媒アパタイト膜を例えば電子機器の表示部保護用透明カバーの表面に形成することによって、当該カバーに対して、その透明性を阻害せずに優れた抗菌性および防汚性などを付与することが可能である。
【実施例1】
<光触媒アパタイト膜の形成>
図2に示すような工程を経ることによって製造した、光触媒アパタイトとしてのTi−CaHAP粉末(Ti比率10mol%)を、まず、600℃で1時間、マッフル炉にて焼成した。次に、当該Ti−CaHAP粉末を、圧粉しつつ200℃で焼結することによって、スパッタリング用ターゲット(直径3.5インチ、厚み5mm)を作製した。次に、このターゲットを用いて、RFマグネトロンスパッタリング装置(商品名:CFS−4EP−LL、芝浦メカトロニクス製)を使用して行うスパッタリング法により、ガラス板(100mm×100mm×1mm、パイレックスガラス、コーニング製)の片面の略全面にTi−CaHAPを成膜した。本スパッタリングにおいては、スパッタリングガスとしてArガスを使用し、チャンバ内のガス圧力を0.67Paとし、基板温度を200℃とし、RF出力を200Wとした。このようなスパッタリング工程により、ガラス板上において膜厚1000ÅのTi−CaHAP膜を形成した。次に、当該Ti−CaHAP膜付ガラス板を、600℃で1時間、マッフル炉にて再び焼成した。このようにして、本実施例の光触媒アパタイト膜を形成した。
<光触媒活性の測定>
上述のようにして形成された光触媒アパタイト膜の光触媒活性を調べた。具体的には、まず、上述のようにして光触媒アパタイト膜が形成されたガラス板を、当該光触媒アパタイト膜が露出するように密封デシケータ内に配置した。次に、当該デシケータ内に、気相濃度が約4000ppmになるまでアセトアルデヒド(CHCHO)を導入した。アセトアルデヒドの導入後、当該デシケータを1時間放置した。これにより、デシケータ内においてアセトアルデヒドを吸着平衡の状態に至らしめた。その後、光触媒アパタイト膜の全体に対してデシケータの上方から光量10mWの紫外線を照射し続けた。アセトアルデヒドの導入完了時および導入完了から所定時間経過時におけるデシケータ内のガスをサンプリングし、当該サンプリングガスに含まれる各ガス成分の濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。サンプリングは、アセトアルデヒド導入完了から4時間経過時まで1時間ごとに行った。本実施例における光触媒アパタイト膜はTi−CaHAPよりなり、Ti−CaHAPは、アセトアルデヒドの二酸化炭素および水への分解を光触媒することが知られている。したがって、本実施例の光触媒アパタイト膜がこのような光触媒活性を有する場合には、デシケータ内の二酸化炭素およびアセトアルデヒドの濃度は変化する。
本実施例における二酸化炭素およびアセトアルデヒドの濃度変化は、図5のグラフにて示す。図5のグラフでは、デシケータ内に残存するアセトアルデヒドおよびその分解により発生した二酸化炭素の濃度は縦軸で表され、且つ、経過時間は横軸で表されている。図5において、線51aは、本実施例における二酸化炭素濃度の時間変化を表し、線51bは、本実施例におけるアセトアルデヒド濃度の時間変化を表す。
【実施例2】
スパッタリング工程の後に、ガラス板上のTi−CaHAP膜を焼成しなかった以外は、実施例1と同様にして、本実施例の光触媒アパタイト膜を形成した。
また、本実施例の光触媒アパタイト膜について、実施例1と同様にして、光触媒活性を測定した。その結果は、図5のグラフにて示す。図5のグラフにおいて、線52aは、本実施例における二酸化炭素濃度の時間変化を表し、線52bは、本実施例におけるアセトアルデヒド濃度の時間変化を表す。
【実施例3】
図2に示すような工程を経ることによって製造した、光触媒アパタイトとしてのTi−CaHAP粉末(Ti比率10mol%)を、圧粉しつつ200℃で焼結することによって、スパッタリング用ターゲット(直径3.5インチ、厚み5mm)を作製した。これ以降は、実施例1と同様にして、スパッタリングおよびその後の焼成を行うことによって、本実施例の光触媒アパタイト膜を形成した。
また、本実施例の光触媒アパタイト膜について、実施例1と同様にして、光触媒活性を測定した。その結果は図5のグラフにて示す。図5のグラフにおいて、線53aは、本実施例における二酸化炭素濃度の時間変化を表し、線53bは、本実施例におけるアセトアルデヒド濃度の時間変化を表す。
【実施例4】
<光触媒アパタイト膜の形成>
図2に示すような工程を経ることによって製造した、光触媒アパタイトとしてのTi−CaHAP粉末(Ti比率10mol%)を、圧粉しつつ200℃で焼結することによって、スパッタリング用ターゲット(直径3.5インチ、厚み5mm)を作製した。次に、このターゲットを用いて、RFマグネトロンスパッタリング装置(商品名:CFS−4EP−LL、芝浦メカトロニクス製)を使用して行うスパッタリング法により、ガラス板(100mm×100mm×1mm、パイレックスガラス、コーニング製)の上にTi−CaHAPを成膜した。本スパッタリングにおいては、スパッタリングガスとしてArガスを使用し、チャンバ内のガス圧力を0.67Paとし、基板温度を200℃とし、RF出力を200Wとした。このようなスパッタリング工程により、ガラス板上において膜厚1000ÅのTi−CaHAP膜を形成した。次に、当該Ti−CaHAP膜付ガラス板を、500℃で1時間、マッフル炉にて焼成した。このようにして、本実施例の光触媒アパタイト膜を形成した。
<光触媒活性の測定>
上述のようにして形成された光触媒アパタイト膜の光触媒活性を調べた。具体的には、アセトアルデヒドの初期濃度を約4000ppmに代えて約6000ppmとし、且つ、紫外線照射量を10mWに代えて1mW/cmとした以外は、実施例1と同様にして、光触媒活性を測定した。その結果は図6のグラフにて表す。図6のグラフでは、デシケータ内に残存するアセトアルデヒドおよびその分解により発生した二酸化炭素の濃度は縦軸で表され、且つ、経過時間は横軸で表されている。図6において、線64は、本実施例における二酸化炭素濃度の時間変化を表す。
【実施例5〜7】
スパッタリング工程の後に行う焼成において、焼成温度を500℃に代えて、530℃(実施例5)、560℃(実施例6)、または600℃(実施例7)とした以外は、実施例4と同様にして、各実施例の光触媒アパタイト膜を形成した。
また、各実施例の光触媒アパタイト膜について、実施例4と同様にして、光触媒活性を測定した。これらの結果は図6のグラフにて示す。図6のグラフにおいて、線65、線66、および線67は、各々、実施例5、実施例6および実施例7における二酸化炭素濃度の時間変化を表す。
〔比較例〕
ターゲット作製工程の前の焼成、および、スパッタリング工程の後の焼成を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、本比較例のアパタイト膜を形成した。
また、本比較例のアパタイト膜について、実施例1と同様にして、光触媒活性を測定した。その結果は図5のグラフにて示す。図5のグラフにおいて、線54aは、本比較例におけるアセトアルデヒド濃度の時間変化を表し、線54bは、本比較例における二酸化炭素濃度の時間変化を表す。
〔評価〕
図5の線54a,54bに表れているように、比較例におけるTi−CaHAP膜は、アセトアルデヒドを分解して二酸化炭素を発生させる光触媒能力に乏しい。これは、スパッタリング工程において、ターゲットを構成する光触媒アパタイトとしてのTi−CaHAPが、イオン化されたスパッタリングガスの衝突によって、充分な光触媒活性を維持できないほどに結晶構造が破壊されるためであると、考えられる。
これに対し、図5の線51a,51b,52a,52b,53a,53b、および、図6の線64,65,66,67に表れているように、実施例1〜7におけるTi−CaHAP膜は、アセトアルデヒド分解反応において高い光触媒活性を有している。これは、スパッタリング工程より前、および/または、後に、焼成処理によってTi−CaHAPの結晶性が向上されているためである。実施例1〜3と実施例4〜7とでは、活性測定に付された光触媒アパタイト膜の面積と紫外線照射量とが異なるため、図5のグラフと図6のグラフとでは縦軸のスケールが異なるが、図5および図6の両グラフにおいては、光触媒活性は、二酸化炭素濃度の変化を表す線51a,52a,53a,64,65,66,67の傾きにより示唆されていることが理解できよう。
実施例2においては、スパッタリング工程より前に当該焼成処理が行われ、高い結晶性を有するTi−CaHAPターゲットを用いてスパッタリングが行われている。当該スパッタリング工程において、光触媒アパタイトは、光触媒活性を発揮し得る化学構造が維持されている比較的大きなクラスターの状態で、ターゲットから飛散していると、考えられる。実施例3〜7においては、スパッタリング工程の後に当該焼成処理が行われ、その結果、スパッタリング工程において低下したTi−CaHAPの結晶性が、向上されている。実施例1においては、スパッタリング前後に行われる合計2回の焼成処理による結晶性向上作用の寄与により、Ti−CaHAPの結晶性は最も向上し、従って、測定される光触媒活性は他の実施例よりも高い、と考えられる。
また、図6のグラフによると、焼成温度が550℃程度以上において、Ti−CaHAP膜の光触媒活性の向上の程度は相対的に大きいことが理解できよう。このような結果から、結晶性向上を目的とする焼成処理における加熱温度は550℃以上が好ましいことが理解できよう。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒アパタイトを含む、スパッタリング用のターゲットを作製するためのターゲット作製工程と、
前記ターゲットを用いたスパッタリング法により、基材に対して光触媒アパタイトを成膜するためのスパッタリング工程と、を含み、
前記スパッタリング工程より前に、前記光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための、焼成工程が行われる、光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項2】
前記焼成工程は、前記ターゲット作製工程の前に、粉末状の光触媒アパタイトに対して行われる、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項3】
前記ターゲット作製工程では、前記光触媒アパタイトに対する焼結処理が行われ、当該焼結処理は前記焼成工程を含む、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項4】
前記焼成工程では、前記光触媒アパタイトは550℃以上で焼成される、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項5】
前記スパッタリング工程の後に、前記基材に成膜された前記光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための、追加焼成工程を更に含む、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項6】
前記追加焼成工程では、前記光触媒アパタイトは550℃以上で焼成される、請求項5に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項7】
前記ターゲット作製工程では、前記光触媒アパタイトは100〜500℃で焼結される、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項8】
前記スパッタリング工程では、ガス圧力が0.27〜3Paであり且つ基材温度が100℃以上である条件の下で、前記光触媒アパタイトは成膜される、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項9】
前記スパッタリング工程では、スパッタリングガスとしてアルゴンガスが使用される、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項10】
前記光触媒アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項1に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項11】
前記光触媒アパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である、請求項10に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項12】
光触媒アパタイトを含む、スパッタリング用のターゲットを作製するためのターゲット作製工程と、
前記ターゲットを用いたスパッタリング法により、基材に対して光触媒アパタイトを成膜するためのスパッタリング工程と、
前記基材に成膜された前記光触媒アパタイトの結晶性が向上するように当該光触媒アパタイトを焼成するための焼成工程と、を含む、光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項13】
前記焼成工程では、前記光触媒アパタイトは550℃以上で焼成される、請求項12に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項14】
前記ターゲット作製工程では、前記光触媒アパタイトは、100〜500℃で焼結される、請求項12に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項15】
前記スパッタリング工程では、ガス圧力が0.27〜3.0Paであり且つ基材温度が100℃以上である条件の下で、前記光触媒アパタイトは成膜される、請求項12に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項16】
前記スパッタリング工程では、スパッタリングガスとしてアルゴンガスが使用される、請求項12に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項17】
前記光触媒アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項12に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。
【請求項18】
前記光触媒アパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である、請求項17に記載の光触媒アパタイト膜の形成方法。

【国際公開番号】WO2004/060560
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564458(P2004−564458)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013870
【国際出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】