説明

光触媒体層付製品

【課題】酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子から構成される光触媒体層は、青く着色するという問題があった。このため非黒色系製品の表面にこのような光触媒体層を形成と着色が目立ち、特に壁紙では特に意匠性を重視するため顕著な問題になった。
【解決手段】本発明は、非黒色系製品と、該非黒色系製品の表面に形成された下地層と、該下地層の表面に形成された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とを少なくとも有する光触媒体層とからなる光触媒体層付製品であって、前記下地層が鉄化合物を溶解させてなるプレコート液を塗布することにより得られることを特徴とする光触媒体層付製品を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒体層付製品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、価電子帯の電子が伝導体に励起され、価電子帯に正孔が生成する。このようにして生成した正孔は強い酸化力を有し、励起した電子は強い還元力を有することから、半導体に接触した物質に酸化還元作用を及ぼす。この酸化還元作用は光触媒作用と呼ばれており、かかる光触媒作用を示し得る半導体は光触媒体と呼ばれている。このような光触媒体としては、酸化チタン粒子や酸化タングステン粒子が挙げられ、それらを互いに接触させて使用することにより、光励起における相乗効果により、光触媒作用が向上することが知られている[特許文献1]。
【0003】
そこで酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子とからなる光触媒体分散液を室内で製品の表面に塗布することにより、光触媒体層を形成することができる。この光触媒体層が形成された製品を室内で使用すると悪臭防止が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-265954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子から構成される光触媒体層は、青く着色するという問題があった。このため非黒色系製品の表面にこのような光触媒体層を形成と着色が目立ち、特に壁紙では特に意匠性を重視するため顕著な問題になった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、非黒色系製品に光触媒体層を形成した場合の着色問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、非黒色系製品と、該非黒色系製品の表面に形成された下地層と、該下地層の表面に形成された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とを少なくとも有する光触媒体層とからなる光触媒体層付製品であって、前記下地層が鉄化合物を溶解させてなるプレコート液を塗布することにより得られることを特徴とする光触媒体層付製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉄化合物を含む光触媒体層の鉄化合物を溶解させてなる液を非黒色系製品の表面に塗布し、その表面に光触媒体層を塗布することにより、光触媒体が光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とから構成されるにもかかわらず、非黒色系製品が青く着色する問題が起こりにくい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(光触媒体層付製品)
本発明の光触媒体層付製品は、下地層と、光触媒体層とからなる光触媒体層付製品であって、プレコート液を非黒色系製品の表面に塗布することにより得られるものであることを特徴とするものである。
【0010】
(非黒色系製品)
本発明の光触媒層付製品を構成する非黒色系製品は、形成される下地層および光触媒体層が保持できる限り、特に制限はなく、例えば、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材等の自動車内装材、衣類やカーテン等の繊維製品が挙げられ、特に壁紙に好適に用いられる。
壁紙としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、アクリル樹脂等を含むものが挙げられる。
ここで本発明における非黒色系とは、色相や彩度はいずれでもよく、国際照明委員会(Commission International de l'Eclairage)が定めるL***表示系での明度(L)が20以上の色彩を意味する。本発明において非黒色製品は前記明度が50以上であることが好ましく、また特に前記明度が80以上である白色系(淡色系)であることがさらに好ましい。
【0011】
(下地層)
本発明の光触媒体層付製品を構成する下地層は、鉄化合物を溶解するプレコート液を非黒色製品の表面に塗布することにより得られるものである。プレコート液の塗布は、印刷法、シート形成法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、バーコート法等で行うことができる。プレコート液の塗布後の乾燥条件としては、乾燥圧力は、通常0.008〜0.12MPa、好ましくは0.009〜0.11MPaであり、乾燥温度は、通常0〜120℃、好ましくは60〜100℃であり、乾燥時間は、通常1〜20分である。
【0012】
(プレコート液)
本発明で用いられるプレコート液は、鉄化合物を溶解するための液であって、鉄化合物が溶媒に溶解されてなる。
鉄化合物としては、溶媒に溶解しうる鉄化合物であれば特に制限はされないが、例えば、硝酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、安息香酸鉄、酒石酸鉄、ステアリン酸鉄、炭酸鉄が挙げられる。なお、これらの化合物はそれぞれ単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
プレコート液の鉄化合物の含有量は、金属原子換算でプレコート液100重量部中、通常0.01〜0.1質量部、好ましくは0.03〜0.07質量部である。
溶媒としては、鉄化合物を溶解することが出来れば特に限定されない。プレコート液に用いられる溶媒としては、通常、水溶性有機溶媒、水、水と水溶性有機溶媒との混合媒体が用いられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの水溶性アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、水溶性有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、水溶性有機溶媒と水との混合媒体を使用する場合は、混合媒体中の水の含有量が水溶性有機溶媒に対して40重量%以下であることが好ましい。水溶性アルコールとしては、通常エタノールが使用される。
本発明で用いられるプレコート液は流動性のある液体状でもよいし、ゾル状やゲル状のいずれでもよい。
【0013】
プレコート液は、前記の鉄化合物以外に、例えば、溶媒と、ジルコニウム化合物と、下記式(1)で示される化合物および前記式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる1以上のシリコンアルコキシドとを含有するものを用いるのが好ましい。
鉄化合物を溶解させてなる液は塗布後、光触媒体層を形成するための下地層となる。
Si(OR)4・・・(1)
〔式中、4つRは互いに独立して、式(1−1)
CkH2k+1・・・(1−1)
(式中、kは自然数を示す。)
で示される置換基を示す。〕
で示される化合物および式(2)
R1nSi(OR2)4-n・・・(2)
〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立して式(2−1)
CmH2m+1・・・(2−1)
(式中、mは自然数を示す。)
で示される置換基を、nは1〜3の自然数をそれぞれ示す。〕
【0014】
(ジルコニウム化合物)
ジルコニウム化合物としては、具体的に蓚酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、燐酸ナトリウムジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、ジルコニウム金属アルコキシド等が挙げられる。また、水酸基、炭酸基、アルキルカルボキシ基の少なくとも1つを有するジルコニウムの錯体、錯塩、それらの高分子ジルコニウム化合物等が挙げられる。好ましくは、蓚酸ジルコニウムが用いられる。
本発明で好適に用いられる蓚酸ジルコニウムの製造方法としては、水酸化ジルコニウムを蓚酸/ジルコニウムのモル比が1.2〜3となるように蓚酸水溶液に分散して必要に応じて加熱することにより得ることができる。前記モル比が1.2未満の場合は、目的の蓚酸ジルコニウムが得にくく、3を超える場合は蓚酸水溶液の酸性度が強くなり、取り扱いが困難となる。
ジルコニウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ジルコニウム化合物の酸化物換算(ZrO2)の含有量が前記シリコンアルコキシドの酸化物換算(SiO2)の合計量100重量部中、5〜40重量部であることが好ましい。
【0015】
(シリコンアルコキシド)
シリコンアルコキシドとしては、前記式(1)で示される化合物および前記式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる1以上のシリコンアルコキシド等が挙げられる。
具体的には、前記式(1−1)におけるkは1又は2であるテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが挙げられ、特にテトラエトキシシランを用いるのが好ましい。
また、前記式(2−1)におけるmは1〜4であることが好ましく、特にジエトキシジメチルシランを用いるのが好ましい。
さらに、シリコンアルコキシドは前記式(1)で示される化合物と前記式(2)で示される化合物とを含有して使用されるのが好ましく、その含有量比は酸化物換算で100:0〜90:10、又は、75:25〜60:40であることが好適である。
【0016】
(プレコート液の調製)
本発明で用いられるプレコート液は、例えば、前記シリコンアルコキシドを前記プレコート液に用いられる溶媒に添加し、そこに前記鉄化合物と前記ジルコニウム化合物を添加することにより得ることが出来る。これらの工程は必要に応じて撹拌しながら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。
【0017】
(光触媒体層)
本発明の光触媒体層付製品を構成する光触媒体層は、下地層の表面に形成されたものであって、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とを少なくとも有するものである。下地層に光触媒分散液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0018】
(光触媒体分散液)
光触媒体分散液は、少なくとも粒子状の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子を含み、更に電子吸引性物質またはその前駆体を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で公知の各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
(光触媒酸化チタン粒子)
本発明における光触媒体層を構成する光触媒酸化チタン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化チタンであれば特に制限はされないが、例えばメタチタン酸粒子または二酸化チタン(TiO)であって、結晶型がアナターゼ型、ブルッカイト型もしくはルチル型のものが用いられる。なお、光触媒酸化チタン粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
メタチタン酸粒子は例えば、硫酸チタンの水溶液を加熱して加水分解させる方法により得ることができる。
【0021】
二酸化チタン粒子は、例えば(i)硫酸チタニルまたは塩化チタンの水溶液を加熱することなく、これに塩基を加えることにより沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(ii)チタンアルコキシドに酸性水溶液または塩基性水溶液を加えて沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(iii)メタチタン酸を焼成する方法によって得ることができる。これらの方法で得られる二酸化チタン粒子は、焼成する際の焼成温度や焼成時間を調整することにより、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型などの所望の結晶型にすることができる。
【0022】
本発明における光触媒体層を構成する光触媒酸化チタン粒子としては、前記のほかにも、特開2001−72419号公報、特開2001−190953号公報、特開2001−316116号公報、特開2001−322816号公報、特開2002−29749号公報、特開2002−97019号公報、WO01/10552パンフレット、特開2001−212457公報、特開2002−239395号公報)、WO03/080244パンフレット、WO02/053501パンフレット、特開2007−69093号公報、Chemistry Letters, Vol.32, No.2, P.196-197(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.4, P.364-365(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.8, P.772-773(2003)、Chem. Mater., 17, P.1548-1552(2005)等に記載の酸化チタン粒子を用いてもよい。また、特開2001−278625号公報、特開2001−278626号公報、特開2001−278627号公報、特開2001−302241号公報、特開2001−335321号公報、特開2001−354422号公報、特開2002−29750号公報、特開2002−47012号公報、特開2002−60221号公報、特開2002−193618号公報、特開2002−249319号公報などに記載の方法により得られる酸化チタン粒子を用いることもできる。
【0023】
前記酸化チタン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常20〜150nm、好ましくは40〜100nmである。
【0024】
前記酸化チタン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常100〜500m2/g、好ましくは300〜400m2/gである。
【0025】
(光触媒酸化タングステン粒子)
本発明における光触媒体層を構成する光触媒酸化タングステン粒子は光触媒作用を示す粒子状の酸化タングステンであって、タングステンの価数が6価であれば特に制限はされないが、例えば三酸化タングステン(WO)粒子が挙げられる。なお、光触媒酸化タングステン粒子は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
三酸化タングステン粒子は、例えば、(i)タングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法、(ii)メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法によって得ることができる。
前記酸化タングステン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
前記酸化タングステン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常5〜100m2/g、好ましくは20〜50m2/gである。
【0026】
(光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との比率)
光触媒体分散液において、前記光触媒酸化チタン粒子と前記光触媒酸化タングステン粒子との比率(光触媒酸化チタン粒子:光触媒酸化タングステン粒子)は、質量比で、通常1:4〜4:1、好ましくは2:3〜3:2である。
【0027】
(光触媒体分散媒)
光触媒体分散液を構成する光触媒体分散媒は、前記粒子状の光触媒体が分散できれば特に制限はなく、通常、水を主成分とする水性溶媒が用いられる。具体的には、水単独であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水と水溶性有機溶媒との混合媒体を用いる場合には、水の含有量が50重量%以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの水溶性アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、水溶性有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、公知の分散剤を含有してもよい。
【0028】
(分散剤)
光触媒体分散媒を構成する分散剤は、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸などのような他価カルボン酸、リン酸(塩)が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば蓚酸が、トリカルボン酸としては、例えばクエン酸が挙げられる。多価カルボン酸およびリン酸として遊離酸を用いてもよいし、塩を用いてもよい。塩としては、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。かかる分散剤として、好ましくは蓚酸、蓚酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムなどが挙げられる。
前記分散剤の使用量は、例えば、TiO換算の光触媒体酸化チタンに対して通常、0.001モル倍以上、好ましくは、0.02モル倍以上であり、経済性の点で通常、0.5モル倍以下、好ましくは0.3モル倍以下である。
【0029】
(光触媒体分散液の調製)
光触媒体分散液は、前記光触媒体を前記光触媒体分散媒に添加する。光触媒体分散媒の含有量は、光触媒体に対して通常、5〜200重量倍、好ましくは10〜100重量倍である。
光触媒体として、光触媒酸化チタンと光触媒酸化タングステンとを混合するに際し、光触媒酸化チタンを分散剤存在下で前記光触媒体分散媒中に分散させた後、さらに分散処理を施してから、別途同様に分散処理を施した光触媒酸化タングステンの分散液と混合してもよい。分散処理は、例えば、媒体撹拌式分散機を用いる通常の方法により行うことができる。
【0030】
(電子吸引性物質またはその前駆体)
光触媒体分散液を構成する電子吸引性物質とは、光触媒体の表面に担持されて電子吸引性を発揮しうる化合物であり、光触媒体分散液を構成する電子吸引性物質の前駆体とは、光触媒体の表面で電子吸引性物質に遷移しうる化合物(例えば光照射により電子吸引性物質に還元されうる化合物)である。電子吸引性物質またはその前駆体の添加は、前記酸化チタン分散液に対して行ってもよいし、両方の分散液を混合した後に行ってもよい。ここで高い光触媒作用を得る観点からは、前記酸化タングステン分散液に添加することが好ましい。電子吸引性物質が光触媒体の表面に担持されて存在すると光の照射により伝導体に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
【0031】
前記電子吸引性物質の前駆体を添加した場合には、添加後に光照射を行うことが好ましい。照射する光としては、光触媒体のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光であれば特に制限はない。光の照射を行うことにより、光励起によって生成した電子によって前駆体が還元されて電子吸引性物質となり光触媒体の表面に担持される。なお光の照射は、光触媒体分散液に対して行ってもよいが、光触媒層の形成後に行ってもよい。より好ましくは複数の光触媒体を混合する場合は、混合前におこなうのがよい。
さらに、より効率的に電子吸引性物質を担持する目的で光の照射前に犠牲剤としてメタノール、エタノール、蓚酸等を加えることもできる。
【0032】
前記電子吸引性物質またはその前駆体は、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、RhおよびCoからなる群より選ばれる1種以上の金属原子を含有してなるものであることが好ましい。より好ましくは、Cu、Pt、AuおよびPdのうちの1種以上の金属原子を含有してなるものである。例えば、前記電子吸引性物質としては、前記金属原子からなる金属、もしくは、これらの金属の酸化物や水酸化物等が挙げられ、電子吸引性物質の前駆体としては、前記金属原子からなる金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0033】
電子吸引性物質の好ましい具体例としては、Cu、Pt、Au、Pdの金属が挙げられる。また、電子吸引性物質の前駆体の好ましい具体例としては、Cuを含む前駆体として、硝酸銅〔Cu(NO3)2〕、硫酸銅〔CuSO4〕、塩化銅〔CuCl2、CuCl〕、臭化銅〔CuBr2、CuBr〕、沃化銅〔CuI〕、沃素酸銅〔CuI26〕、塩化アンモニウム銅〔Cu(NH4)2Cl4〕、オキシ塩化銅〔Cu2Cl(OH)3〕、酢酸銅〔CH3COOCu、(CH3COO)2Cu〕、蟻酸銅〔(HCOO)2Cu〕、炭酸銅〔CuCO3)、蓚酸銅〔CuC24〕、クエン酸銅〔Cu2647〕、リン酸銅〔CuPO4〕が;Ptを含む前駆体として、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C21446Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕、ジニトロジアミン白金〔(Pt(NH3)2 (NO2)2)〕が;Auを含む前駆体として、塩化金〔AuCl〕、臭化金〔AuBr〕、沃化金〔AuI〕、水酸化金〔Au(OH)2〕、テトラクロロ金酸〔HAuCl4〕、テトラクロロ金酸カリウム〔KAuCl4〕、テトラブロモ金酸カリウム〔KAuBr4〕、酸化金〔Au23〕が;Pdを含む前駆体として、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム塩化物〔Pd(NHCl〕、テトラアンミンパラジウム臭化物〔Pd(NHBr〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH(NO〕、テトラアンミンパラジウムテトラアンミンパラジウム酸テトラアンミンパラジウム塩化物〔(Pd(NH)(PdCl)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NHPdCl〕が;それぞれ挙げられる。なお、電子吸引性物質またはその前駆体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、1種以上の電子吸引性物質と1種以上の前駆体とを併用してもよいことは勿論である。
【0034】
前記電子吸引性物質またはその前駆体をも含有させる場合、その含有量は、金属原子換算で、酸化チタンおよび酸化タングステンの合計量100重量部に対して、通常0.005〜0.6重量部、好ましくは0.01〜0.4重量部である。電子吸引性物質またはその前駆体が0.005重量部未満であると、電子吸引性物質による光触媒活性の向上効果が充分に得られないおそれがあり、一方、0.6重量部を超えると、却って光触媒作用が低下するおそれがある。
【0035】
(添加剤)
光触媒体分散液を構成する添加剤としては、例えば、光触媒作用を向上させる目的で添加されるものが挙げられる。このような光触媒作用向上効果を目的とした添加剤としては、具体的には、非晶質シリカ、シリカゾル、水ガラス、オルガノポリシロキサンなどの珪素化合物;非晶質アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物;ゼオライト、カオリナイトのなどのアルミノ珪酸塩;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ度類金属水酸化物;リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、リン酸塩、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂;等が挙げられる。
さらに、前記添加剤としては、光触媒体分散液を基材表面に塗布した際に光触媒体(光触媒酸化チタンおよび光触媒酸化タングステン)をより強固に基材の表面に保持させるためのバインダー等を用いることもできる(例えば、特開平8−67835号公報、特開平9−25437号公報、特開平10−183061号公報、特開平10−183062号公報、特開平10−168349号公報、特開平10−225658号公報、特開平11−1620号公報、特開平11−1661号公報、特開2004−059686号公報、特開2004−107381号公報、特開2004−256590号公報、特開2004−359902号公報、特開2005−113028号公報、特開2005−230661号公報、特開2007−161824号公報参照)。
添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(光触媒体分散液の塗布および乾燥)
このようにして得られた光触媒体分散液を非黒色系製品に塗布し、乾燥する。塗布は、印刷法、シート形成法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、バーコート法等で行うことができる。乾燥の条件としては、乾燥圧力は通常、0.008〜0.12MPa、好ましくは0.009〜0.11MPaであり、乾燥温度は通常、0〜120℃、好ましくは60〜100℃であり、乾燥時間は通常、1〜20分である。
【0037】
(壁紙)
壁紙は、通常、基材シートからなり、その一方の面上に発泡処理がなされたカプセル発泡剤を含む樹脂層が形成されていてもよい。
基材シートは、壁紙用の難燃紙(パルプ主体のシート、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等の難燃剤で処理したシート)、水酸化アルミニウム紙、無機質紙等の一般紙である。
樹脂層は樹脂からなる層である。樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。樹脂層には、カプセル発泡剤が含まれていてもよい。カプセル発泡剤は低沸点有機溶剤を熱可塑性高分子有機材料の被膜で包み込んだ粒径10〜30μmの微小球である。被膜材料としては、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・アクリル系共重合体、ニトリル系共重合体等が使用され、低沸点有機溶剤としては、イソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等がある。ここで発泡処理は、カプセル発泡剤が発泡すればどのような方法でもよいが、通常、加熱することにより発泡させる。発泡処理の条件としては、温度は通常、100〜250℃、好ましくは120〜200℃であり、圧力は通常、0.008〜0.12MPa、好ましくは0.009〜0.11MPaであり、時間は通常、1〜300秒である。また壁紙は、必要に応じてエンボス加工を施してもよい。発泡処理後カプセル発泡剤は、粒径が30〜200μmの球状になる。
【0038】
このようにして得られた光触媒体層付製品は、発泡処理が施されているにもかかわらず、適宜光触媒体を選択することによって、蛍光灯やナトリウムランプのような可視光源からの光しか受けない屋内環境で、光照射によって高い触媒作用を示す。したがって、この壁紙を、例えば病院の天井材、タイル、ガラスなどに塗布して乾燥させると、屋内照明による光照射によって、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物、アルデヒド類、メルカプタン類、アンモニアなどの悪臭物質、窒素酸化物の濃度を低減させ、さらには黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌等を分解、除去することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
なお、実施例および比較例における各物性の測定およびその光触媒活性の評価については、以下の方法で行った。
【0041】
<結晶型>
X線回折装置(リガク社製「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶型を決定した。
【0042】
<BET比表面積>
比表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製「モノソーブ」)を用いて窒素吸着法により測定した。
【0043】
<平均分散粒子径>
サブミクロン粒度分布測定装置(コールター社製「N4Plus」)を用いて粒度分布を測定し、この装置に付属のソフトにより自動的に単分散モード解析して得られた結果を、平均分散粒子径(nm)とした。
【0044】
<光触媒体層付製品の明度評価>
色差計(商品名“Z−300A”、日本電色工業製)を用い、JIS Z−8729
1994に従って求めた。
【0045】
<光触媒体層付製品の作成>
明度(L*)が94.8のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる壁紙(7cm×15cm)に、プレコート液をバーコーター(3番)で塗布し、90℃で15分乾燥後、更にその表面に光触媒体分散液を同様にバーコーター(6番)で塗布して90℃で15分乾燥した。その後180℃で30秒乾燥することにより発泡処理して、光触媒体層付製品を作成した。
【0046】
<光触媒体層付製品の着色評価>
【0047】
にて作製した光触媒体層付製品を5cm×2.5cmに切り出し、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を照射し、光触媒体層付製品が青色に着色するかどうか肉眼で観察した。
【0048】
<光触媒活性の評価>
測定対象の光触媒体層付製品を5cm×10cmに切り出し、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用試料とした。
次に、この光触媒活性測定用試料をガスバッグ(内容積5L)の中に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス5Lを封入し、さらにその中に1容量%でアセトアルデヒドを含む窒素ガス10mLを封入して、暗所で室温下1時間保持した。これにより、封入したアセトアルデヒドの濃度は20ppmとなる。その後、ブラックライトを光源とし、測定用試料近傍での試料近傍の紫外光の強度は1mW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)となるようにガスバッグの外から紫外光を照射し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。ブラックライトの光照射を開始してから1.5時間毎にガスバッグ内のガスをサンプリングし、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC−14A」)にて測定した。
【0049】
(製造例1−蓚酸ジルコニウムの調製)
水酸化ジルコニウム100g(ZrO換算で31g )を水100gに添加しよく撹拌し分散液とした。次に、1回目の蓚酸添加として、該分散液へ蓚酸二水和物31.7g(蓚酸/Zrモル比=1.0)を添加し、90℃で15分間加熱した。次に、2回目の蓚酸添加として該分散液へ蓚酸二水和物15.8g(蓚酸/Zrモル比=0.5)を添加し、90℃で15分間加熱し蓚酸ジルコニウム分散液を得た。その後、水を添加してZrO換算での濃度を9.8重量%に調整した。
【0050】
(製造例2−酸化チタン粒子分散液の調製)
リン酸二水素アンモニウム(和光特級試薬)20.7gを水5.39kgに溶解させ、得られたリン酸二水素アンモニウム水溶液に、硫酸チタニルの加熱加水分解により得られたメタチタン酸の固形物(ケーキ)(TiO2として固形分濃度46.2質量%)1.49kgを混合した。このとき、リン酸二水素アンモニウムの量は、メタチタン酸1モルに対して0.02モルであった。得られた混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化チタン粒子分散液を得た。
媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ
処理温度:20℃
処理時間:約76分
回転数:3430rpm
流量:0.25L/min
【0051】
得られた酸化チタン粒子分散液中の酸化チタン粒子の平均分散粒子径は96nmであった。なお、分散処理前の混合物と分散処理後の分散液との一部を真空乾燥して固形分を得、各固形分のX線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はアナターゼ型であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0052】
(製造例3−酸化タングステン粒子分散液の調製)
イオン交換水4kgに、粒子状の酸化タングステン粉末(日本無機化学製)1kgを加えて混合して混合物を得た。この混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化タングステン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
合計処理時間:約50分
【0053】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は118nmであった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は40m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の分散液の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はWO3であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0054】
この酸化タングステン粒子分散液にヘキサクロロ白金酸(HPtCl)の水溶液をヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部(0.12質量%)になるように加え、原料分散液としてヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は、10質量部(固形分濃度10質量%)であった。
【0055】
次いで、水中殺菌灯[三共電気製「GLD15MQ」]を設置したガラス管(内径37mm、高さ360mm)からなる光照射装置で前記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液500gを毎分1Lの速度で循環させながら、ヘキサクロロ白金三含有酸化タングステン粒子分散液に光(紫外線)を1時間照射し、更にメタノールをその濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、循環させながら光(紫外線)を1時間照射して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
【0056】
(製造例4−光触媒体分散液の調製)
製造例2で得た酸化チタン粒子分散液と、製造例3で得た白金含有酸化タングステン粒
子分散液を、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となる
ように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で、酸化チタン
粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.06質量部(0.
06質量%)となった)、酸化チタン粒子分散液と白金含有酸化タングステン粒子分散液
の混合物を得た。また、この光触媒体分散液100重量部中に含まれる固形分(酸化チタンと酸化タングステンとの合計量)は5重量部(固形分濃度5重量%)であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0057】
実施例1
水 3.02gにエタノール6g添加し、高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)6.94gを添加した。そこに製造例1で得た蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:9.8重量%)4.04gを添加した。次に得られた液から5g取り、そこに硝酸鉄九水和物(Fe(NO・9HO)0.017gを添加してプレコート液を得た。酸化物換算でのケイ酸エチル100重量部に対する蓚酸ジルコニウムの含有量は20重量部で、プレコート液100重量部中、鉄の含有量は金属原子換算で0.047質量部であった。
【0058】
ここで得られたプレコート液を塗布して下地層を形成し、製造例4で得られた光触媒体分散液を塗布して光触媒体層を形成し、その後に発泡処理することにより光触媒体層付製品を作成した。この壁紙に、ブラックライトを光源とし、測定用試料近傍での試料近傍の紫外光の強度は2mW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)を20分照射したところ、肉眼で壁紙に変色は認められなかった。また、この壁紙の光触媒活性を測定したところ、ブラックライト1.5h照射後のアセトアルデヒドの濃度は0.1ppmであった。
【0059】
比較例1
実施例1で硝酸鉄を添加せずに液を得た。その後実施例1と同様にして光触媒体層付製品を作成した。この壁紙に、ブラックライトを光源とし、測定用試料近傍での試料近傍の紫外光の強度は2mW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)を20分照射したところ、肉眼で壁紙が青色に変色するのが認められた。また、この壁紙の光触媒活性を測定したところ、ブラックライト1.5h照射後のアセトアルデヒドの濃度は0.1ppmであった。
【0060】
実施例1のプレコート液を下地層形成に用いると、比較例1と比べて、光触媒活性を維持したまま、壁紙に着色を抑制できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非黒色系製品の表面に形成された下地層と、
該下地層の表面に形成された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とを少なくとも有する光触媒体層とからなる光触媒体層付製品であって、
前記下地層が鉄化合物を溶解するプレコート液を前記非黒色系製品の表面に塗布することにより得られるものであることを特徴とする光触媒体層付製品。
【請求項2】
前記プレコート液が、ジルコニウム化合物と、式(1)
Si(OR)4・・・(1)
〔式中、4つのRは互いに独立して、式(1−1)
CkH2k+1・・・(1−1)
(式中、kは自然数を示す。)
で示される置換基を示す。〕
で示される化合物および式(2)
R1nSi(OR2)4-n・・・(2)
〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立して式(2−1)
CmH2m+1・・・(2−1)
(式中、mは自然数を示す。)
で示される置換基を、nは1〜3の自然数をそれぞれ示す。〕
で示される化合物からなる群から選ばれる1以上のシリコンアルコキシドとを含有する請求項1に記載の光触媒体層付製品。
【請求項3】
前記非黒色系製品が壁紙である請求項1又は2に記載の光触媒体層付製品。

【公開番号】特開2010−270543(P2010−270543A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124972(P2009−124972)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】