説明

光触媒応用材料の評価試験方法

【課題】 光触媒応用材料の光触媒性能を現場において非破壊の状態で評価できる評価試験方法を提供する。
【解決手段】 光触媒応用材料の評価試験方法であって、ゼリー状物質又はゼリー状テープからなる粘着体3内にメチレンブルー4を混合させて指示薬2を構成し、この指示薬2を光触媒応用材料からなる評価対象物1の表面に粘着し、この指示薬2のメチレンブルー4の呈色の変化により評価対象物1の光触媒反応性を評価する。評価対象物1が多孔質のものであっても、吸水性が高いものであっても、傾斜していても、光触媒反応を評価することができる。評価対象物1の表面に指示薬2を粘着するだけでよいので、評価対象物1から試験体を切り取る必要がなく、非破壊状態で評価対象物1の光触媒性能を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒応用材料の評価試験方法に関し、特に、建築材料等として使用される光触媒応用材料を非破壊の状態で評価する光触媒応用材料の評価試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒酸化チタン等を応用した建築材料や商品(以下、「光触媒応用材料」という。)は、例えば、光触媒製品技術協議会で規定しているように、アセトアルデヒドガスの除去性能試験及びメチレンブルーの分解性能試験によって光触媒反応が有効に生じているかを判定することにより、光触媒性能の評価を行っている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】「光触媒製品技術協議会会則・諸規定おより試験法」、光触媒製品技術協議会、インターネット<http://www.photocatalysis.com>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような評価試験方法においては、試験体を適当な大きさに切断しなければ実施することができないため、現場で実際に使用されている光触媒応用材料をそのままの状態で光触媒反応が有効に生じているか否かを判定することができない。
【0004】
また、メチレンブルー法は、平滑な試験体の表面にメチレンブルー液を滴下し、その表面を透明なカバーフィルムで被覆し、カバーフィルムを介してメチレンブルーに紫外線を所定時間照射することにより、メチレンブルーの色の変化(分解性)を調べる試験法であるため、試験体を水平に置いて試験しなければならず、傾斜面での試験や微細孔を有する光触媒応用材料や吸水力の強い光触媒応用材料等では試験することができず、現場で実際に使用されている状態での評価が困難であった。
【0005】
さらに、どうしても現場での評価が必要な場合には、現場から試験体を切り取ったり、空間のガス濃度測定や浮遊菌濃度測定等によって光触媒性能を判定するしか方法がなく、このため、試験体を切り取った部分を補修したり、取り替えたりする作業が必要となり、また、空間のガスや浮遊菌濃度の測定に手間や時間がかかるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、実際に使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価できるとともに、光触媒応用材料が多孔質であっても吸水力が強くても光触媒性能を評価することができ、さらに、短時間で容易に光触媒性能(光触媒反応性)を評価することができる光触媒応用材料の評価試験方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、光触媒応用材料の評価試験方法であって、ゼリー状物質からなる粘着体内にメチレンブルー等の指示薬品を混合させて指示薬を構成し、この指示薬を光触媒応用材料からなる評価対象物の表面に粘着し、紫外線光照射による指示薬品の呈色の変化により評価対象物の光触媒性能を評価することを特徴とする。
【0009】
本発明による光触媒応用材料の評価試験方法によれば、指示薬を評価対象物の表面に粘着し、指示薬に紫外線を照射して指示薬品の呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒性能を評価することができる。従って、現場において使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光触媒応用材料の評価試験方法であって、前記粘着体は、紫外線透過性を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明による光触媒応用材料の評価試験方法によれば、指示薬を評価対象物の表面に粘着し、指示薬に紫外線を照射して指示薬品の呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒性能を評価することができる。従って、現場において使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価することができる。
【0012】
さらに、請求項3に係る発明は、光触媒応用材料の評価試験方法であって、ゼリー状テープからなる粘着体内にメチレンブルー等の指示薬品を混合させて指示薬を構成し、この指示薬を光触媒応用材料からなる評価対象物の表面に粘着し、紫外線光照射による指示薬品の呈色の変化により評価対象物の光触媒性能を評価することを特徴とする。
【0013】
本発明による光触媒応用材料の評価試験方法によれば、指示薬を評価対象物の表面に粘着し、指示薬に紫外線を照射して指示薬品の呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒性能を評価することができる。従って、現場において使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価することができる。
【0014】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の光触媒応用材料の評価試験方法であって、前記粘着体は、紫外線透過性を有していることを特徴とする。
【0015】
本発明による光触媒応用材料の評価試験方法によれば、指示薬を評価対象物の表面に粘着し、指示薬に紫外線を照射して指示薬品の呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒性能を評価することができる。従って、現場において使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明による光触媒応用材料の評価試験方法によれば、ゼリー状物質又はゼリー状テープからなる粘着体内にメチレンブルー等の指示薬品を混合して構成した指示薬を評価対象物の表面に粘着し、指示薬に紫外線を照射してメチレンブルー等の紫外線光照射による指示薬品の呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒反応性を評価することができる。
【0017】
従って、現場において実際に使用されている状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価できるので、光触媒性能の評価精度を高めることができる。また、光触媒応用材料からなる評価対象物が多孔質のものであっても、吸水力が強いものであっても、傾斜していても、指示薬を表面に粘着して光触媒性能を評価することができるので、応用範囲を大幅に広げることができる。さらに、指示薬を評価対象物の表面に粘着するだけで足りるので、光触媒応用材料の光触媒性能の評価を短時間で容易に行うことができる。さらに、評価対象物から試験体を切り取る必要がないので、評価試験後に評価対象物を補修、取替する必要がなく、これによっても評価試験を短時間で容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による光触媒応用材料の評価試験方法について説明する。
本発明による光触媒応用材料の評価試験方法は、光触媒酸化チタンを応用した建築材料や商品(以下、「光触媒応用材料」と言う。)の光触媒性能を、指示薬品の一例としてのメチレンブルーを用いて評価する試験方法であって、使用されているままの状態で光触媒応用材料の光触媒性能を非破壊の状態で評価する試験方法である。
【0019】
すなわち、ゼリー状物質からなる粘着体内にメチレンブルーを混合させて酸化還元指示薬(以下、「指示薬」という。)を構成し、この指示薬を建築材料等として使用されている光触媒応用材料からなる評価対象物の表面に粘着し、この指示薬のメチレンブルーの呈色の変化を観察することにより、評価対象物の光触媒性能を評価するものである。
【0020】
粘着体を構成するゼリー状物質は、安定した紫外線透過性を有するものとし、例えば、透明体である寒天、ゼラチン(ゲル化、ゾル化したものを含む)、菌倍地(各種のたんぱく質等)等が挙げられる。
【0021】
粘着体は、指示薬を評価対象物の表面に粘着したときに、評価対象物が傾斜していても評価対象物の表面から脱落しない粘度に調製する。このような粘度に調製することにより、評価対象物が傾斜していても評価対象物の表面の所定の位置に指示薬を保持することができ、指示薬に含まれるメチレンブルー(指示薬品)の紫外線光照射による呈色の変化を所定の時間に渡って観察することが可能となる。
【0022】
指示薬の大きさ、厚みは、評価対象物の種類等に応じて値に設定することができ、この実施の形態においては、大きさ;30±2mm角、厚み:0.5μm〜20μm(上限は1mmとすることもできる)としている。
【0023】
メチレンブルーは、日本工業規格及び日本薬局方に規定するものとし、この実施の形態においては、濃度を1ppm〜100ppmに調製したものを使用し、粘着体の全体に均一に分散されるように粘着体内に混合している。
【0024】
粘着体(ゼリー状物質)とメチレンブルーとの混合比(重量比)は、メチレンブルーの呈色の変化を目視できる比率であれば特に制限はなく、例えば、粘着体としてゼラチンを用いた場合、10%程度とすることができる。
【0025】
指示薬は、ゼリー状テープからなる粘着体内にメチレンブルーを混合して構成しても良い。ゼリー状テープからなる粘着体は、前述したゼリー状物質からなる粘着体と同様に、安定した紫外線透過性を有するものとし、例えば、寒天、ゼラチン(ゲル化、ゾル化したものを含む)、菌倍地(各種のたんぱく質等)等が挙げられる。
【0026】
ゼリー状テープからなる粘着体も、指示薬を評価対象物の表面に粘着したときに、評価対象物が傾斜していても評価対象物の表面から脱落しない粘度に調製する。このような粘度に調製することにより、評価対象物が傾斜していても評価対象物の表面の所定の位置に指示薬を保持することができ、指示薬に含まれるメチレンブルーの呈色の変化を所定の時間に渡って観察することが可能となる。
【0027】
この指示薬は、ロール状又は帯状とし、厚みは数十ミクロンとする。この指示薬は、前述したものと同様に、30±2mm角に切断して使用している。
【0028】
メチレンブルーは、日本工業規格及び日本薬局方に規定するものとし、前述した指示薬と同様に、濃度を10mg/lに調製したものを使用し、粘着体の全体に均一に分散されるように粘着体内に混合している。
【0029】
そして、上記のように構成した指示薬を用いて光触媒応用材料の評価を行うには、例えば、図1に示すように、評価対象物1の表面に粘着体4を粘着させることにより指示薬2を保持し、周囲の温度が20〜25℃になるようにエアーコンディショナー等により調整し、指示薬2に対して紫外線照射装置(図示せず)により紫外線5(紫外線強度;1.0mW/cm)を所定の時間(1時間)照射し、指示薬2内のメチレンブルー4の呈色の変化を観察する。このようにして、評価対象物1の光触媒性能の評価を行うことができる。
【0030】
上記のように構成したこの実施の形態による光触媒応用材料の評価試験方法にあっては、ゼリー状物質又はゼリー状テープからなる粘着体3にメチレンブルー4を混合して指示薬2を構成し、この指示薬2を評価対象物1の表面に粘着し、指示薬2に紫外線5を照射してメチレンブルー4の呈色の変化を観察することにより、評価対象物1の光触媒反応性を評価することができるので、現場において、実際に使用されている状態で光触媒応用材料からなる評価対象物1の光触媒性能を評価することができる。従って、光触媒性能の評価精度を高めることができる。
【0031】
また、光触媒応用材料からなる評価対象物1が多孔質のものであっても、吸水力が大きいものであっても、傾斜していても、指示薬2を表面に粘着して光触媒性能を評価することができるので、応用範囲を広げることができる。
【0032】
さらに、指示薬2を評価対象物1の表面に粘着するだけで足りるので、光触媒応用材料の光触媒性能の評価を短時間で容易に行うことができる。
【0033】
さらに、評価対象物1から試験体を切り取る必要がなく、評価対象物1を非破壊の状態で評価することができるので、評価試験後に評価対象物1を補修、取替える必要がなく、これによっても光触媒応用材料の評価試験を短時間で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による光触媒応用材料の評価試験の一実施の形態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 評価対象物
2 指示薬
3 粘着体
4 メチレンブルー(指示薬品)
5 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒応用材料の評価試験方法であって、ゼリー状物質からなる粘着体内にメチレンブルー等の指示薬品を混合させて指示薬を構成し、この指示薬を光触媒応用材料からなる評価対象物の表面に粘着し、紫外線光照射による指示薬品の呈色の変化により評価対象物の光触媒性能を評価することを特徴とする光触媒応用材料の評価試験方法。
【請求項2】
前記粘着体は、紫外線透過性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光触媒応用材料の評価試験方法。
【請求項3】
光触媒応用材料の評価試験方法であって、ゼリー状テープからなる粘着体内にメチレンブルー等の指示薬品を混合させて指示薬を構成し、この指示薬を光触媒応用材料からなる評価対象物の表面に粘着し、紫外線光照射による指示薬品の呈色の変化により評価対象物の光触媒性能を評価することを特徴とする光触媒応用材料の評価試験方法。
【請求項4】
前記粘着体は、紫外線透過性を有していることを特徴とする請求項3に記載の光触媒応用材料の評価試験方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−3105(P2006−3105A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176941(P2004−176941)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(598094056)株式会社光触媒研究所 (4)
【Fターム(参考)】