説明

光触媒担持体

【課題】 担持する光触媒の表面積を大きく確保することのできる光触媒担持体を実現する。
【解決手段】 連結部12を介して多数の凸部14が形成された透光性の第1のシート部材16と、透光性を有する平板な第2のシート部材18とを備え、上記第1のシート部材16の連結部12に、上記第2のシート部材18を接合することにより、上記凸部14の開口を第2のシート部材18で閉塞し、以て、第1のシート部材16の凸部14と第2のシート部材18間に空間20を形成して成る光触媒担持体10であって、上記第1のシート部材16及び第2のシート部材18を、光触媒28を担持して成る不織布22で構成し、また、上記空間20内に、透光性の多孔質吸着材30を多数配置すると共に、上記多孔質吸着材30の表面及び細孔内に光触媒を担持せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光触媒を担持して成る光触媒担持体に係り、特に、担持する光触媒の表面積を大きく確保することのできる光触媒担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)等の光触媒は、紫外線等の光の照射を受けると活性化して強力な酸化還元作用を生じ、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)等の有害化合物や汚濁物等を効果的に分解する作用を発揮するものであることから、基体に光触媒を担持させて成る光触媒担持体を用いて空気や水の浄化を行う試みが成されている。
ところで、上記光触媒による有害化合物や汚濁物等の分解は、これら有害化合物や汚濁物等が光触媒に接触することによって生じる作用である。従って、光触媒による空気や水の浄化能力を向上させるためには、光触媒の表面積をできるだけ拡大することが望ましい。
【0003】
そこで、本出願人は、先に、基体の表面に、表面を光触媒で被覆された多数の繊維状体を、上記基体表面に対して立設状態で被着して成る光触媒担持体を提案した(特開2003−205244号)。
図10に示すように、この光触媒担持体60は、ガラス、樹脂、金属等の適宜な材料より成る平板状の基体62の表面に、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)より成る光触媒64で被覆された多数の細長い繊維状体66が、接着剤68を介して、上記基体62表面に対して略垂直に立設状態で被着されている。この繊維状体66は、図11及び図12に示すように、ガラス繊維や樹脂繊維等の繊維70の表面に光触媒64をコーティングして構成されているものである。
【0004】
上記光触媒担持体60における繊維状体66表面の光触媒64に、図示しない紫外線ランプ等からの紫外線が照射されると、光触媒64が活性化して該光触媒64表面に接触した空気や水の浄化を行うことができるのである。
【特許文献1】特開2003−205244号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光触媒担持体60は、光触媒64で被覆された多数の繊維状体66を、基体62表面に対して略垂直に立設状態で被着したことから、基体62の表面積が、被着された多数の繊維状体66の表面積分増大することとなり、その結果、基体62表面に配置される光触媒64の表面積を拡大できるものであった。
しかしながら、光触媒による空気や水の浄化能力を向上させるためには光触媒の表面積をできるだけ拡大することが望ましいことから、基体に担持させる光触媒の表面積を、より一層大きく確保できる光触媒担持体の出現が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記要請に応えるためになされたものであり、その目的とするところは、担持する光触媒の表面積を大きく確保することのできる光触媒担持体の実現にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る光触媒担持体は、連結部を介して、内部が中空の凸部が多数形成された透光性の第1のシート部材と、第2のシート部材とを備え、上記第1のシート部材の凸部の開口を、上記第2のシート部材で閉塞することにより、第1のシート部材の凸部と第2のシート部材間に空間を形成して成る光触媒担持体であって、上記第1のシート部材を、光触媒を担持して成る繊維の集合体で構成し、また、上記空間内に、透光性の多孔質吸着材を多数配置すると共に、上記多孔質吸着材の表面及び細孔内に光触媒を担持せしめて成ることを特徴とする。
上記繊維の集合体としては、不織布が好ましく、この場合、不織布を構成する繊維に光触媒を担持させる。
【0008】
上記多孔質吸着材としては、シリカゲル又は多孔質ガラスが該当する。また、上記空間内に、多孔質吸着材と共に反射材を収納しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光触媒担持体にあっては、第1のシート部材を、単位体積当たりの繊維の表面積が大きい繊維の集合体で構成すると共に、該繊維の集合体に光触媒を担持させ、また、第1のシート部材の凸部と第2のシート部材間に形成した空間内に比表面積が極めて大きい多孔質吸着材を多数収納すると共に、これら多孔質吸着材の表面及び細孔内に光触媒を担持させたことから、担持する光触媒の表面積を大きく確保することができる。
【0010】
多数の繊維が立体的に絡み合って形成された不織布を、上記繊維の集合体として用い、
該不織布を構成する繊維に光触媒を担持させた場合には、単位体積当たりの繊維の表面積が極めて大きいことから、担持する光触媒の表面積を極めて大きく確保することができる。
【0011】
上記空間内に、多孔質吸着材と共に反射材を収納することにより、光触媒を活性化させる光を様々な方向に反射させて、多孔質吸着材に担持された光触媒への照射効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明に係る光触媒担持体の実施形態を説明する。
図1乃至図3は、本発明に係る光触媒担持体10を示すものであり、該光触媒担持体10は、平板シートに連結部12を介して、内部が中空と成された断面略波形の凸部14が、所定間隔でマトリックス状に多数形成された透光性を有する第1のシート部材16と、透光性を有する平板な第2のシート部材18とを備えている。そして、上記第1のシート部材16の連結部12に、第2のシート部材18を接着して接合することにより、上記凸部14の開口を第2のシート部材18で閉塞し、以て、第1のシート部材16の凸部14と第2のシート部材18間に空間20を形成して成る。
【0013】
上記第1のシート部材16及び第2のシート部材18は、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)等より成る光触媒を担持して成る繊維の集合体としての不織布で構成されている。
図4及び図5に示すように、不織布22は、多数の繊維24が立体的に絡み合って形成されるものであり、繊維24間には多数の空隙26(図5参照)が形成されており、また、多数の繊維24が立体的に絡み合っているため、単位体積当たりの繊維24の表面積が極めて大きいものである。
尚、不織布22を構成する繊維24の繊維密度や、不織布の厚さ、目付等を適宜調整することにより、不織布22を構成する繊維24の総表面積を任意に増減可能である。
不織布22を構成する繊維24の表面に、光触媒28は被着・担持されているものであり、図6に示すように、光触媒28は、繊維24の表面に緻密な膜状態で被着・担持される場合の他、繊維24表面の光触媒28の粒子間に微小な隙間が存在する状態で粗く被着・担持される場合もある(図示省略)。
【0014】
不織布22を構成する繊維24は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂繊維、レーヨン等のセルロース系の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維等の短繊維を用いることができ、その直径は5〜20μm、長さは0.5〜20mm程度である。尚、長さが50〜100mm程度の長繊維から成る繊維24を用いることも勿論可能である。
【0015】
不織布22を構成する繊維24の表面に光触媒28を担持させるには、例えば、光触媒28の分散樹脂液中に不織布22を浸漬した後乾燥させたり、不織布22の上方から、光触媒28の分散樹脂液を滴下した後乾燥させることにより行うことができる。
また、不織布22を加熱して、該不織布22を構成する繊維24の表面を溶融させた状態で光触媒28を吹き付けることにより、不織布22を構成する繊維24の表面に光触媒28を被着・担持させることもできる。
さらに、高温加熱した光触媒28を不織布22に吹きつけ、不織布22を構成する繊維24を一部溶融させることにより、不織布22を構成する繊維24の表面に光触媒28を被着・担持させても良い。
【0016】
尚、上記においては、不織布22を構成する繊維24の表面に光触媒28を担持せしめた場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース系の化学繊維であり、多数の孔を備えた多孔質構造を有するレーヨン繊維に粒子状の光触媒28を練り混むことにより、繊維24に光触媒28を担持させても良い。この場合、光触媒28は、レーヨン繊維で構成された繊維24の表面のみならず、レーヨン繊維中にも担持されることとなるが、上記の通り、レーヨン繊維は多孔質構造であるため、孔を介して、繊維24中に練り混まれた光触媒28にも光触媒活性化作用を有する波長の光を照射して活性化できると共に、空気や水と接触させて浄化を行うことができる。
【0017】
第1のシート部材16の凸部14と第2のシート部材18間に形成された空間20内には、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)等より成る光触媒(図示せず)を担持して成る透光性の多孔質吸着材30が多数収納されている。
上記透光性の多孔質吸着材30は、径が10nm〜50nm程度の細孔を多数有する直径0.1mm〜5mm程度のビーズ状のシリカゲルで構成されており、細孔の比表面積が50m/g〜300m/g程度と極めて大きいものである。光触媒は、上記多孔質吸着材30の表面のみならず、細孔内にも吸着担持されている。
上記多孔質吸着材30の表面及び細孔内に光触媒を担持させるには、例えば、粒径が多孔質吸着材30の細孔径より小さい光触媒微粒子の分散液中に、多孔質吸着材30を浸漬した後、乾燥・焼成させることにより行うことができる。
【0018】
上記多孔質吸着材30を空間20内に収納するには、第1のシート部材16の凸部14を下向きとした状態で、該凸部14内に多孔質吸着材30を収納し、その後、第1のシート部材16上に第2のシート部材18を積層して接着すれば良い。
尚、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する不織布を、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂より成る繊維で構成すれば、第1のシート部材16上に第2のシート部材18を積層・圧接した状態で加熱することにより、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する熱可塑性樹脂より成る繊維同士が溶着して、簡単に両シート部材12,18を接着することができる。
【0019】
図7は、本発明の光触媒担持体10の変形例を示すものであり、この光触媒担持体10の変形例は、多孔質吸着材30と共に複数のビーズ状の反射材32を、上記空間20内に収納した点に特徴を有するものである。
上記反射材32は、アルミニウム等の光反射率の高い材料で構成することができる。また、表面が光反射率の高い白色と成された部材で反射材32を構成しても良い。
このように、多孔質吸着材30と共に反射材32を配置することにより、光触媒を活性化させる光を様々な方向に反射させて、多孔質吸着材30に保持された光触媒への照射効率を向上させることができる。
【0020】
上記においては、第1のシート部材16に形成された多数の凸部14の開口を閉塞するため1枚の平板な第2のシート部材18を用いた場合を例に挙げたが、図8及び図9に示すように、複数枚の第2のシート部材18を用意し、斯かる複数枚の第2のシート部材18を、第1のシート部材16の連結部12に接着することにより、上記凸部14の開口を第2のシート部材18で閉塞し、以て、第1のシート部材16の凸部14と第2のシート部材18間に空間20を形成するようにしても良い。
【0021】
上記多孔質吸着材30は、シリカゲル以外に、バイコールガラス等のnm単位の多数の細孔を有する多孔質ガラスで構成しても良い。
【0022】
尚、本発明の光触媒担持体10を、空気等の気体の浄化用に使用する場合には、上記多孔質吸着材30の表面をシリコン樹脂や、テトラフルオロエチレンの重合体(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)であるテフロン(登録商標)等の撥水性のある気体透過性樹脂で被覆しても良い。
このように、多孔質吸着材30の表面を撥水性のある気体透過性樹脂で被覆すると、多孔質吸着材30が空気中の水分を細孔内に吸着することが抑制され、その結果、浄化対象の気体を効率よく細孔内に吸着して、細孔内の光触媒と接触させることができる。
【0023】
上記光触媒としては、上記の酸化チタン以外に、ZnO、SrTiO、BaTiO、Fe等、光触媒作用を有する他の金属酸化物を用いることができるが、アナターゼ型の酸化チタンが、光触媒活性に優れており最も好適に使用できる。
また、光触媒は、紫外線の照射を受けて活性化する光触媒だけでなく、可視光の照射を受けて活性化する可視光型光触媒を用いることもできる。
【0024】
而して、本発明の光触媒担持体10に、光触媒活性化作用を有する波長の光(紫外線や可視光)が照射されると、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する不織布22の繊維24表面に担持された光触媒28が活性化する。また、透光性を有する第1のシート部材16及び第2のシート部材18を透過した光が、上記空間20内の多孔質吸着材30に照射され、該多孔質吸着材30に担持された光触媒が活性化する。この結果、活性化した光触媒に接触した空気や水の浄化を行うことができるのである。
上記第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する不織布22は通気性、通水性に優れていることから、光触媒28と、空気や水との接触効率が良好である。
また、上記多孔質吸着材30は透光性を有していることから、細孔内に保持した光触媒にも光を十分に照射することが可能である。また、多数の細孔を有する多孔質吸着材30は、通気性、通水性に優れていることから、光触媒と、空気や水との接触効率が良好で
ある。
尚、上記の通り、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する不織布22は、繊維24間に多数の空隙26が形成されているため透光性に優れており、上記空隙26を介して、空間20内の多孔質吸着材30に光触媒活性化作用を有する波長の光を十分に照射することができる。透光性を一層向上させるため、不織布22を構成する繊維24を、透光性材料で構成するのが好ましい。
【0025】
本発明の光触媒担持体10にあっては、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を、単位体積当たりの繊維24の表面積が極めて大きい不織布22で構成し、該不織布22を構成する繊維24の表面に光触媒28を担持させると共に、比表面積が極めて大きい多孔質吸着材30を上記空間20内に多数収納し、これら多孔質吸着材30の表面及び細孔内に光触媒を担持させたことから、担持する光触媒の表面積を極めて大きく確保することができる。
【0026】
尚、上記の通り、多数の凸部14は、連結部12を介して第1のシート部材16に形成されているので、該第1のシート部材16の連結部12の箇所で、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を切断すれば、適宜な大きさ、形状の光触媒担持体10を得ることができる。
【0027】
上記においては、第2のシート部材18も、第1のシート部材16と同様に、透光性を有し、光触媒28を担持した不織布22で構成した場合について説明したが、第2のシート部材18については、不透光性材料で構成したり、或いは、光触媒28を担持していない適宜な材料で構成しても良い。
【0028】
また、上記においては、第1のシート部材16及び第2のシート部材18を構成する繊維の集合体として、不織布22を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多数の繊維を織り込んで形成した織布を用い、該織布を構成する繊維に光触媒28を担持させても良い。この織布も、不織布22には及ばないものの、単位体積当たりの繊維の表面積が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る光触媒担持体を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のA−A部分拡大断面図である。
【図3】図1のB−B部分拡大断面図である。
【図4】光触媒を担持した不織布を模式的に示す部分拡大図である。
【図5】不織布を構成する繊維を模式的に示す拡大図である。
【図6】不織布を構成する繊維を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に係る光触媒担持体の変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図8】第2のシート部材の変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図9】第2のシート部材の変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図10】従来の光触媒担持体を示す断面図である。
【図11】従来の光触媒担持体における繊維状体の拡大縦断面図である。
【図12】従来の光触媒担持体における繊維状体の拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 光触媒担持体
12 連結部
14 凸部
16 第1のシート部材
18 第2のシート部材
20 空間
22 不織布
24 繊維
26 空隙
28 光触媒
30 多孔質吸着材
32 反射材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部を介して、内部が中空の凸部が多数形成された透光性の第1のシート部材と、第2のシート部材とを備え、上記第1のシート部材の凸部の開口を、上記第2のシート部材で閉塞することにより、第1のシート部材の凸部と第2のシート部材間に空間を形成して成る光触媒担持体であって、上記第1のシート部材を、光触媒を担持して成る繊維の集合体で構成し、また、上記空間内に、透光性の多孔質吸着材を多数配置すると共に、上記多孔質吸着材の表面及び細孔内に光触媒を担持せしめて成ることを特徴とする光触媒担持体。
【請求項2】
上記繊維の集合体が不織布であり、該不織布を構成する繊維に光触媒を担持させたことを特徴とする請求項1に記載の光触媒担持体。
【請求項3】
上記多孔質吸着材が、シリカゲル又は多孔質ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒担持体。
【請求項4】
上記空間内に、多孔質吸着材と共に反射材を収納したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光触媒担持体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−181514(P2006−181514A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379358(P2004−379358)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】