説明

光触媒集合体および光反応装置

【課題】光触媒を用いて、水や有機溶剤から水素を取り出す方法が種々提案されている。窒化物半導体に電極を設けた例では、水素の収率は高くなるが、半導体自身が酸化される問題がある。また、可視光の利用も不十分である。光触媒を粉末状にした場合には、酸素と水素が混合気体として取り出されるのでその分離が問題となる。
【解決手段】窒化ガリウム(GaN)を含む結晶の外表面に、少なくとも1種以上の浮島状の助触媒を付加した光触媒を、複数個まとめて可視光吸収性のあるバインダで互いに接合固定して、光触媒集合体を構成する。該光触媒集合体を、水または有機溶剤に接触させながら光エネルギを与え、発生する酸素と水素の混合気体を取り出し、酸素と水素を分離する分離手段を通すことによって、水素のみを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物光触媒に関し、特に光エネルギ利用効率の高い光触媒集合体とその応用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水や有機溶剤は、それらの分子の中に水素原子を有している。この水素原子を水や有機溶剤から取り出し、水素ガスを得ることができればクリーンエネルギとして利用することができる。窒化物光触媒は光エネルギを吸収し、生じた電子と正孔をそれぞれ還元反応と酸化反応に利用し、水や有機溶媒から水素をガスとして取り出すものである。
【0003】
窒化物光触媒を用いて有効に水素ガスを取り出す装置が実用化可能なレベルで提案されている(例えば、特許文献1 参照。)。この装置によれば、窒化物半導体に金属性電極を一つ付けたものが用いられている。半導体がn型である場合、窒化物半導体表面で酸化反応が起きる。溶液を酸化する場合は触媒反応である。しかし、半導体自身が酸化する場合がある。この場合は半導体自身が腐食するため、耐久性に問題を生ずる。形状が薄膜型の場合はオーム性電極を形成し、電子を取り出すための電極を設置することが容易である。しかし、その電極から比較的離れた半導体表面で吸収された光から生じた電子にとっては、その距離は抵抗を大きくする原因となる。大きな抵抗は光誘起電流を妨げるものであり、光触媒としての効率を低下するものである。
【0004】
このような問題に関連した例として、酸化チタンを光触媒として用い、光触媒の粒子の表面に複数の微細な電極粒子(助触媒と呼んでいる)を付着させて、電子の発生位置と電極との距離を小さくした例が報告されている(例えば、非特許文献1 参照。)。
光触媒を粉末状にして、光エネルギを受けながら直接水と接触させることで水を酸素ガスと水素ガスに分解して取り出す装置が提案されている(例えば、特許文献2 参照。)。この構成では酸素ガスと水素ガスは混合気体として取り出される。
これらの例は、窒化物半導体(ガリウムナイトライド等)や酸化チタンを用いている。ガリウムナイトライドや酸化チタンは光半導体としての機能を有するが、その吸収波長は400nm以下程度であり、可視光は有効に利用されない。
【0005】
【特許文献1】特許第3730142号公報
【特許文献2】特許第3096728号公報
【非特許文献1】横野照尚他、硫黄ドープ可視光応答型酸化チタンナノチューブの光触媒作用、工業材料、2007年12月号、48頁、特集最新光触媒
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窒化物光触媒を用いて水または有機溶媒から効率よく水素ガスを取り出す方法および装置を得る。可視光の利用を行える構成とし、混合気体として取り出された酸素と水素を分離しなければ実用にならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、多面体構造を備えた少なくともGaNを主成分とする結晶の各表面部位に、酸化あるいは還元反応を促進させる少なくとも1種類以上の浮島状の助触媒を備えた光触媒であって、前記光触媒の複数個が少なくとも可視光を吸収するバインダで互いに固定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光触媒集合体において、前記バインダが黒色であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光触媒集合体において、前記バインダが炭素を含有するものであることであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光触媒集合体が反応物を含む媒体中に設けられる光反応装置を特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の光反応装置において、前記媒体が電解液であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項4または5に記載の光反応装置において、該装置内に発生する気体を、水素と酸素に分離する分離手段を備えていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の光反応装置において、前記分離手段は、固体水素吸収体を含むことを特徴とする。
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の光反応装置において、前記分離手段は酸素吸収剤を含むことを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項6ないし8のいずれか1つに記載の光反応装置において、前記分離手段は酸素透過膜を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光の利用効率が向上し、光触媒の反応効率が非常に高くなるので、水素ガスの収率が高くなり、さらに実用化への道が開ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の基本構成を説明するための模式図である。同図(a)はガリウムナイトライドの単結晶を拡大した図、同図(b)は無数の単結晶を集合体として基板状に配置した例を示す図である。
同図において符号1は助触媒付き光触媒、2はガリウムナイトライド結晶、3は助触媒、4は基板、5はバインダをそれぞれ示す。
ガリウムナイトライド(以下GaNと称す)の単結晶は、得られやすい形として6角柱をなすものがあり、各表面は平滑である。大きさは結晶成長の条件によって異なるが、通常長さ数十〜数百μm程度のものが得られやすい。
同図(a)において、GaN結晶の表面には、助触媒3として金属あるいはその酸化物の微細粒子を浮島状に付着させてある。浮島状とは、基本的には助触媒同士が互いに連接することなく独立状態で付着している状態を言う。ただし、部分的に連接する助触媒があっても機能には何ら阻害が生じないので、連接を容認しないと言うことではない。
同図では、煩雑さを避けるため、助触媒3を平面的に示し、相対的な大きさを大きく、数を少なく描いてある。
助触媒3は金属あるいはその酸化物を1種類のみでもかまわないが、後述のように、2種類あるいはそれ以上混ぜることもできる。
【0012】
GaN結晶2はそれ自体で光触媒の機能を有するが、このように構成した助触媒3があることによって、効率的に水素の発生を促すことができる。この助触媒付き光触媒1に水または有機溶媒を接触させた状態で光エネルギを与えると、GaN表面に電子と正孔が発生し、助触媒が還元性の場合、電子が近くの助触媒2に移動し、液中のHと反応してHを発生する。しかし、GaN単結晶は前記したように非常に小さいものであるから、1個の単結晶から得られる水素ガスは僅かなもので、実用的ではない。そこで、このような単結晶を大量に作って、同図(b)に示すように、基板上に密度高く平面状に敷き詰め、相互の位置が移動しないようにバインダで接着する。結晶同士は互いに接触しても、重なり合っても特に問題ないので、むしろ光を無駄なく取り込むためにできるだけ隙間のない状態に敷き詰めるのがよい。光触媒の実際の反応においては、温度が高い方が効率が高くなるので、バインダ5としては光の吸収率が高い、例えば、カーボン系などの黒色のバインダが好ましい。
【0013】
図2はGaN結晶の作製方法を説明するための図である。
同図において符号101は坩堝、102は混合融液、103は内容器、104は外容器、105はヒータ、106は熱電対、107は温度制御装置、108は窒素ボンベ、109、110はガス供給管、111は圧力調整器、112、113は容器内空間、114、115はバルブ、116は真空ポンプ、117は排気配管、118は排気バルブをそれぞれ示す
同図はフラックス法によるIII族窒化物結晶成長装置の断面図である。以下同図を用いてIII族窒化物結晶としてGaN微結晶の作製方法を説明する。
本実施例では金属Naと金属Gaと窒素ガスからGaN結晶を成長させる、所謂Naを用いたフラックス法でGaN微結晶を成長させた。
坩堝101の内部に混合融液102がある。この混合融液102は少なくともIII族金属を含む物質としてのガリウム(Ga)とフラックスとしてのナトリウム(Na)から構成されている。
坩堝101の外側に、坩堝101を包含する内容器103がある。内容器103の外側に、内容器103を包含する外容器104がある。内容器103と外容器104の間にはヒータ105があり、内容器103を加熱出来るようになっている。ヒータ105と内容器103の間には熱電対106があり、概ね内容器103の温度をモニタ出来るようになっている。ヒータ105と熱電対106はそれぞれ温度制御装置107に電気的に接続されており、内容器103の温度が所望の温度となるように温度制御することが可能となっている。
【0014】
外容器104の外部には窒素原料としての窒素ガス(Nガス)が貯蔵されている窒素ボンベ108があり、窒素ボンベ108と内容器103および外容器104はそれぞれガス供給管109,110で連通している。ガス供給管109の窒素ボンベ108が接続されている近傍に圧力調整器111が設置されている。ガス供給管109の圧力調整器111が設置されているところより外容器104に近い側からガス供給管110が分岐して、外容器104に接続されている。ガス供給管109は外容器104を貫通して、内容器103内の空間112につながっている。また、ガス供給管110は外容器104内の空間113につながっている。圧力調整器111により、内容器103と外容器104内の圧力は同じ所望の圧力に制御することが可能となっている。
坩堝101の上部は開放されており、坩堝上部と内容器103内の空間112は、ほぼ同じ雰囲気となっている。内容器103内の空間と外容器104内の空間113は、内容器103により仕切られており、雰囲気は分離されている。
【0015】
ガス供給管109の内容器103の近傍にはバルブ114が接続されており、ガス供給管109と内容器103の雰囲気を遮断、開放することが出来る。ガス供給管110の外容器104の近傍にはバルブ115が接続されており、ガス供給管110と外容器104の雰囲気を遮断、開放することが出来る。これにより窒素ガスを内容器103内および外容器104内に導入、遮断することが可能となる。
外容器104の外側に真空ポンプ116が設置されており、排気配管117を介して外容器104と真空ポンプ116が接続されている。排気配管117の外容器104と真空ポンプ116の間には排気バルブ118が接続されている。これにより外容器104内の雰囲気を真空排気することが可能となる。
【0016】
本装置を用いたGaN微結晶の製造方法について次に述べる。
坩堝101への原料仕込みは、図示していないが高純度アルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス内で行う。このグロープボックス内は水分と酸素分が1ppm以下に除去された高純度雰囲気であり、高純度Ar雰囲気でGaとNaを取り扱うことで、酸素や水分と金属との反応を防止することが出来る。
坩堝101中にGaとNaをそのモル比率が1:1となるように仕込む。グローブボックス内で内容器103の蓋(詳細図示せず)を開け、坩堝101を内容器103内にセットする。内容器103の蓋を閉じて、グローブボックスから内容器103を出して、外容器104内にセットする。内容器103にガス供給管109を接続する。このときガス供給管109内のデッドスペースに大気成分が残らないようにガスパージを実施する。次にバルブ114を開けた状態で外容器104を閉じて、真空ポンプ116、排気配管117、排気バルブ118を用いて、外容器104内の大気成分を排気する。
【0017】
図3はGaN結晶の顕微鏡写真である。
次に窒素ボンベ108から圧力調整器111により窒素ガス圧力が5MPaとなるように、内容器103および外容器104に窒素ガスを導入する。温度制御装置107を用いて、内容器103の温度が800℃となるようにヒータ105により昇温する。この温度と窒素ガス圧力を100時間維持することで、坩堝101内に数十〜数百μmサイズのGaN結晶が成長する。
得られたGaN結晶の写真を同図に示す。このようにGaN結晶は無色透明で転位等の欠陥が少なく、一般的なサファイア基板上のGaN薄膜に比較して非常に高品質である。この結果、光触媒として用いた場合に生成したキャリアが欠陥にトラップされることが少ない。また結晶粒が小さいことから、薄膜に比較して表面積を大きくすることが可能となる。さらに高品質な透明な結晶、すなわち可視光に対して隠蔽性の低い(透過性の高い)結晶であることから、本発明の光触媒集合体にGaN結晶を使用した場合、バインダ成分に十分な可視光を導入することが可能である。これらの結果、高効率な光触媒システムを作製することが可能となる。
またNaを用いたフラックス法によるGaN結晶成長は、金属原料を仕込み、窒素圧力をかけた状態で所定の時間そのままにすることで成長可能なことから、低コストでGaN微結晶を製造することが可能である。
【0018】
尚、上記実施例ではフラックスとしてNaを用いているが、この他にもアルカリ金属としてのLi,Na,K等やアルカリ土類金属MG,Ca,Sr等も使用可能である。窒素を含む物質とは、窒素ガスや、アジ化ナトリウム、アンモニアなどの窒素を構成元素に含む化合物である。III族金属としてはB,Ga,Al,In等が適応可能である。ここで硼素(B)は金属ではないが、III族窒化物としてBNを構成するIII族物質として、本発明においては適応出来るものとする。
【0019】
図4は助触媒付き光触媒の電子顕微鏡(SEM)写真である。
助触媒として白金を用いてGaNを作製した。
8wt%HPtCl水溶液を0.25g、前記方法で作製したGaNを40メッシュのふるいにかけたものを0.95g、水10g、エタノール10gを混合し、加熱還流を2時間おこなった。得られた反応物を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過、上部からイオン交換水で洗浄した。120℃で真空乾燥して白金担持GaNを得た。
同図は作製した白金担持GaNのSEM写真である。多面体構造のGaNに白金(白い小さな島状物)が付与されているのが判る。
助触媒は複数種類使用することもできる。上記では、還元用触媒として白金を付与したが、さらに酸化用助触媒を付与することも可能である。このような態様の場合、還元反応は還元用助触媒上でおこり、酸化反応は酸化用助触媒上でおこる。酸化および、還元の双方が助触媒上で進行するため、半導体であるGaN表面では反応が誘起されなくなる。これにより半導体の腐食を防止でき、寿命の向上をはかることができる。
酸化用助触媒としては、ニッケル酸化物等、GaNに接続してホール輸送性を持つ物質が例示できる。
次に、光触媒集合体の作製について実施例を示す。
【実施例1】
【0020】
アルミニウム板にカーボンペースト(十条ケミカル製;JELCON CH−10)を塗布し、前記白金担持GaNを表面に散布した。120℃で乾燥することにより、カーボン含有樹脂上に白金担持ガリウムナイトライドを固定した。表面より白金担持GaN層約200μm、カーボン樹脂層約80μm、アルミ層50μmである。
[参考例1]
アルミニウム板にカーボンペースト(十条ケミカル製;JELCON CH−10)を塗布し、酸化チタン粉末(和光純薬)を表面に散布した。120℃で乾燥することにより、カーボンペースト上に酸化チタンを固定した。表面より酸化チタン層約2μm、カーボン樹脂層約80μm、アルミ層50μmである。
[参考例2]
アルミニウム板にカーボンペースト(十条ケミカル製;JELCON CH−10)を塗布し、120度で乾燥した。表面よりカーボン樹脂層約80μm、アルミ層50μmである。
【0021】
図5は温度上昇実験の結果を示す図である。
実施例1(本発明)のサンプル、参考例1(酸化チタン)および参考例2(光触媒なし)のサンプル、厚み50μmのアルミニウム板(基板のみ)の4点で以下の実験を実施した。
各サンプルのアルミニウム面(実施例1、参考例1、2についてはカーボンペーストの塗布されてない側)にK熱電対を設置した。熱電対の反対側より400Wキセノンランプ(ウシオ電機製)を光源として光を照射、時間に対する温度上昇を測定した。結果の数値を表1に示し、同図にグラフで示す。温度上昇は参考例2、実施例1、参考例1、アルミニウム板の順に早かった。このことは本発明の光触媒集合体の温度上昇が速やかに起こることを示している。また、実施例1が参考例1より温度上昇が早いのは、本発明のGaN結晶が、酸化チタンより可視光に対する透明性が高いこと(酸化チタンの可視光の隠蔽性が高いこと)に起因する。
【0022】
【表1】

【実施例2】
【0023】
テフロン(登録商標)シート上にカーボンペースト(十条ケミカル製;JELCON CH−10)を塗布し、前記白金担持ガリウムナイトライドを表面に散布した。120℃で乾燥することにより、カーボン含有樹脂上に白金担持ガリウムナイトライドを固定した。ついで、テフロン(登録商標)シートを剥離し、白金担持ガリウムナイトライドカーボン樹脂シートを得た。このシートを2枚用意し、カーボン面同士をカーボンペーストで張り合わせ、120℃で乾燥した。得られた両面白金担持ガリウムナイトライドシートを粉砕し、細かくした。
別途、高さ60mm、横幅20mm、厚さ約1mmの石英製のセルを用意した。このセルには上端と下端にそれぞれ口が空いており、流体が流通できるように構成されている。
前記で得られた、粉砕された光触媒集合体を前記の石英製のセルに詰め込んだ。
水中にアルゴンガスをバブリングしてアルゴンガスを加湿した後このアルゴンガスを、前記のセルの上の口から流入させた。
この状態で400Wキセノンランプ(ウシオ電機製)を光源としてセルに光を照射することにより光反応を実施した。
セル下方から得られるガスをガスクロマトグラフ装置(GC−TCD)で分析したところ、水素の存在を確認できた。これは水の光還元が起こったことを表わしている。
【実施例3】
【0024】
テフロン(登録商標)シート上にカーボンペースト(十条ケミカル製;JELCON CH−10)を塗布し、前記白金担持ガリウムナイトライドを表面に散布した。120℃で乾燥することにより、カーボン含有樹脂上に白金担持ガリウムナイトライドを固定した。ついで、テフロン(登録商標)シートを剥離し、白金担持ガリウムナイトライドカーボン樹脂シートを得た。上部に取り外し可能な石英板窓を持ち、側面に三方コックを有する容器(縦150×横100×高さ50mm)を用意した。石英板窓をはずし、内部に、前記シートを白金担持ガリウムナイトライド面を上にして設置、ついでアルゴンガスで脱気ずみの電解液(1Mの水酸化ナトリウム水溶液)を加えた。このとき白金担持ガリウムナイトライドが完全に水没しないような量(白金担持ガリウムナイトライド表面がぬれている状態)とした。石英板窓を仮設置し、三方コックとアルゴンガスボンベをゴムチューブで接続、アルゴンガスを導入して内部をアルゴンガスで置換した。このときアルゴンガスが仮設置した石英板窓より逃げるようにして内部のガス置換をおこなった。アルゴンガスの供給を停止するとともに石英板窓を完全に固定(密閉)した。三方コックを閉じ(内部密閉)、アルゴンボンベ導入用のゴムチューブをはずし、テフロン(登録商標)チューブを接続、テフロン(登録商標)チューブの他方(出口)を水中に導入して容器内部を外部空気雰囲気と隔絶できるようにした。三方コックの状態をテフロン(登録商標)チューブと容器内部が導通している状態とした。三方コックの残り出口は閉状態とした。上部石英板窓より400Wキセノンランプ(ウシオ電機製)を光源として光を照射することにより光反応を実施した。2時間後、三方コックの残り出口を開状態とし内部ガスを採取してガスクロマトグラフ装置(GC−TCD)で分析したところ、水素の存在を確認できた。これは水の光還元が起こったことを表わしている。
【0025】
次に、光触媒集合体を用いた水素ガス収集装置について説明する。
図6は水素ガス収集装置の実施形態を示す図である。
同図において符号10は光触媒集合体入りの光反応装置、11は原料格納容器、12は気液分離装置、13は水素格納容器、14はガス循環装置、15はヒータ、16はクーラ17はコネクタ、18は2方向バルブをそれぞれ示す。
同図において符号A、Eは液体領域、B、Fは気体領域、C、Gは気体通路をそれぞれ示す。
ここで示すコネクタは、パイプを接続した場合は開放になり、接続してないときは閉塞される機能を有している。したがって、必要に応じて開・閉の状態を選択できる。
水を蓄えた原料格納容器11中にキャリヤーガス(窒素、アルゴン、空気等)をガス循環装置14により導入し、ガスに水を飽和させる。水を含むガスは、本発明の光反応集合体1を内部に有する光反応容器10に導入される。反応容器内では、外部から照射される光により光反応が誘起され、水素と酸素のガス状反応生成物が発生する。その後、ガス状反応生成物(キャリヤーガス、原料水を含む)は気液分離装置12内の水層にバブリングされる。このとき、気体と液体は分離される。分離された、キャリヤーガス、水素、酸素は、水素格納容器13(水素吸蔵合金等の固体水素吸収体を使用)に導かれ、水素が選択的に格納される。水素濃度が下がったガス成分は、ガス循環装置14に導かれ、再度原料格納容器11へと進む。
【0026】
循環系のガス圧調整や酸素濃度を減少させる作業、原料水の追加はコネクタ17Lおよび17Mを通して行う。ガス圧調整はコネクタ17Lで行う。原料水の追加はコネクタ17Mで行う。酸素濃度を減少させる作業は、コネクタ17Lを開きガスを棄てる、あるいはコネクタ17Mを開きガスを棄てる、あるいは、ガスをコネクタ17Lを通して酸素吸収剤を通過させコネクタ17Mに戻す(このとき2方向バルブ18をコネクタ17L側にする)。あるいはガスをコネクタ17Lを通して酸素透過膜(酸素は系外に排出)に接触させコネクタ17Mに戻す(このとき2方向バルブ18をコネクタ17L側にする)ことにより実施できる。酸素吸収剤と酸素透過膜は併用しても良い。
【0027】
この循環系の中での各領域・通路等における温度の上下関係は以下のようにすることが好ましい。
A≦B≦C≦(光反応容器10)
このような関係にすることにより、系内での水の露結を防止できる。
E≦F≦G≦(水素格納容器13)
このような関係にすることにより、系内での水の露結を防止できる。
(A、B、Cの各温度)>(E、F、G、水素格納容器13の各温度)
このような関係にすることにより水素格納容器13への水の混入を防止しやすくできる。
各部の温度はヒータの場合は抵抗発熱体など、クーラの場合はペリチェ素子などが使用できる。温度制御は、各部に熱電対(図示せず)を備えることにより制御できる。
太陽光を光反応光源とし、エネルギ効率を優先する場合は、原料格納容器11および光触反応容器10、両者間の接続部分は太陽光が照射する外部に、気液分離装置12および、水素格納容器13は日陰、流水中等の涼しい場所に設置、ガス循環装置14は水力、風力等の自然エネルギ(水車、風車)を使用することが好ましい。また、電力投入型のヒータおよびクーラは使用しないことが好ましい。
【0028】
図7は水素ガス収集装置の他の実施形態を示す図である。
同図において符号Qは液体領域、Rは気体領域、Sは気体通路をそれぞれ示す。その他の符号は図6に準ずる。
電解液を蓄えた原料格納容器11から、一定の液面高さを保ったまま電解液が光反応容器10内へ供給される。光反応容器10内には本発明の光触媒集合体1が設置されており、供給された電解液により湿っている状態となっている。光が照射されることにより光反応が誘起され、水素と酸素(あるいは酸化物)が発生する。ガス循環装置14により送りこまれるキャリヤーガス(窒素、アルゴン、空気等)により、光反応生成ガス成分は気液分離装置12内の水層にバブリングされる。このとき、気体と液体は分離される。分離された、キャリヤーガス、水素、(酸素)は、水素格納容器13(水素吸蔵合金等の固体水素吸収体を使用)に導かれ、水素が選択的に格納される。水素濃度が下がったガス成分は、ガス循環装置14に導かれ、光反応容器内へと戻る。
【0029】
循環系のガス圧調整や酸素濃度を減少させる作業はコネクタ17Lおよび17Mを通して行う。ガス圧調整はコネクタLで行う。酸素濃度を減少させる作業は、コネクタLを開きガスを棄てる、あるいはコネクタ17Mを開きガスを棄てる、あるいは、ガスをコネクタLを通して酸素吸収剤を通過させコネクタMに戻す(このとき2方向バルブをコネクタL側にする)。あるいはガスをコネクタLを通して酸素透過膜(酸素は系外に排出)に接触させコネクタMに戻す(このとき2方向バルブをコネクタL側にする)ことにより実施できる。
【0030】
この循環系の中での各領域・通路等における温度の上下関係は以下のようにすることが好ましい。
R≦Q≦S≦(水素格納容器13)
このような関係にすることにより、系内での水の露結を防止できる。
P>(R、Q、S、水素格納容器13の各温度)
このような関係にすることにより水素格納容器13への水の混入を防止しやすくできる。
各部の温度はヒータの場合は抵抗発熱体など、クーラの場合はペリチェ素子などが使用できる。温度制御は、各部に熱電対(図示せず)を備えることにより制御できる。
太陽光を光反応光源とし、エネルギ効率を優先する場合は、原料格納容器11および光触反応容器10、両者間の接続部分は太陽光が照射する外部に、気液分離装置12および、水素格納容器13は日陰、流水中等の涼しい場所に設置、ガス循環装置14は水力、風力等の自然エネルギ(水車、風車)を使用することが好ましい。また、電力投入型のヒータおよびクーラは使用しないことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の基本構成を説明するための模式図である。
【図2】GaN結晶の作製方法を説明するための図である。
【図3】GaN決勝の顕微鏡写真である。
【図4】助触媒付き光触媒の電子顕微鏡写真である。
【図5】温度上昇実験の結果を示す図である。
【図6】素ガス収集装置の実施形態を示す図である。
【図7】水素ガス収集装置の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 助触媒付き光触媒
2 ガリウムナイトライド結晶
3 助触媒
10 光反応装置
11 原料格納容器
13 水素格納容器
101 坩堝
102 混合融液
105 ヒータ
116 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体構造を備えた少なくともGaNを主成分とする結晶の各表面部位に、酸化あるいは還元反応を促進させる少なくとも1種類以上の浮島状の助触媒を備えた光触媒であって、前記光触媒の複数個が少なくとも可視光を吸収するバインダで互いに固定されていることを特徴とする光触媒集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒集合体において、前記バインダが黒色であることを特徴とする光触媒集合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光触媒集合体において、前記バインダが炭素を含有するものであることであることを特徴とする光触媒集合体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光触媒集合体が反応物を含む媒体中に設けられることを特徴とする光反応装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光反応装置において、前記媒体が電解液であることを特徴とする光反応装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光反応装置において、該装置内に発生する気体を、水素と酸素に分離する分離手段を備えていることを特徴とする光反応装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光反応装置において、前記分離手段は、固体水素吸収体を含むことを特徴とする光反応装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光反応装置において、前記分離手段は酸素吸収剤を含むことを特徴とする光反応装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1つに記載の光反応装置において、前記分離手段は酸素透過膜を含むことを特徴とする光反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−195809(P2009−195809A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39176(P2008−39176)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】