説明

光記録媒体用紫外線硬化型保護膜組成物及び光記録媒体

【課題】 Ag(銀)又はAgを主成分とする金属及び又は合金を反射膜とする光記録媒体において、高温高湿の耐久性試験においても良好な保護性能を有する紫外線硬化型保護膜組成物及びそれを適用した光記録媒体を提供する。
【解決手段】 反射膜上に、紫外線硬化型組成物の1wt%メタノール溶液のpH値が4.5〜6.8である紫外線硬化型組成物の硬化膜を保護膜として積層する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体及びその媒体の保護膜形成に使用される紫外線硬化型組成物、より詳しくは、反射膜がAg又はAgを主成分とする金属及び又は合金である光記録媒体及びその保護膜として用いられる紫外線硬化型組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、大容量情報記録媒体として、追記型や書き換え可能型などの各種光記録媒体特に光記録ディスクが注目されている。その中で、色素を主成分とする記録層を有する光記録ディスクは、記録層が塗布により形成できるため低コストで製造することが可能であり、年々世界中に大きく普及してゆく傾向が見られる。
【0003】光記録ディスクとしては、従来、記録層上に空気層が設けられたいわゆるエアーサンドイッチ構造のものが用いられていたが、最近では、記録層表面に反射層を密着して設けることにより、コンパクトディスク(CD)規格に対応した再生が可能な光記録ディスクが開発されている。すなわち、この光記録ディスクは、ポリカーボネート等の透明基板上に、色素を主成分とする記録層、反射層及び保護膜がこの順に積層され、反射層が記録層に密着して設けられ、CD規格のディスク全厚1.2mmの構成が可能となっているものである。さらに、高密度に対応したDVD規格に準拠した同様の貼り合わせ型光記録ディスクも提案されている。
【0004】このような層構成の光記録ディスクにおいて反射膜は、従来CD反射率規格保持の為、化学的に安定なAu(金)薄膜が使用されてきた。しかし、光記録ディスクの普及が進むにつれ、より低コスト化が要求され、より安価なディスク製造の為に、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜としたものが主流となりつつある。一方、Ag薄膜は耐食性に乏しい欠点がある。即ち、乾燥雰囲気中では、Agは酸素中でも高温に熱しても酸化されず、化学的にも安定な金属であるけれども、通常の湿気を含んだ大気中や硫化ガスの存在下では、Agは変質したり、変色したり、或いは光沢を失ってしまうという問題があり、それを保護する保護膜にも、Au薄膜を反射膜とする場合以上の保護性能の向上要請が生じている。
【0005】従来、反射膜としてのAg薄膜の耐食性を向上する為に、各種の金属との金属及び又は合金化の手法が提案されてきた。例えば、特開平7−3363号には、1〜10at%のMg(マグネシウム)を含有させる提案がある。しかし、これらの手法も若干の効果が認められるものの、従来の紫外線硬化型組成物にて保護膜を形成した光記録媒体の場合には、高温高湿状態下での耐久性は充分とはいえないものであった。
【0006】一方、保護膜として使用される紫外線硬化型組成物については、従来Al(アルミニウム)薄膜をはじめとした金属薄膜を反射膜とした場合に、リン酸エステルモノマーを含有させることが有効であることが知られていた(例えば、特開昭62−97150号,特開平3−131605号等)。しかし、本知見に基づいた紫外線硬化型組成物の硬化膜を保護膜として使用した場合、上記と同様に、光記録媒体の高温高湿状態下での耐久性は充分とはいえないものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜とする光記録媒体において、反射膜の高温高湿状態下での耐久性を向上させる紫外線硬化型組成物保護膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意検討した結果、従来Al等の金属に有効とされてきたリン酸エステルモノマーを含有する紫外線硬化型組成物は、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜の耐久性には悪影響を及ぼすこと、これらの反射膜にはメタノール溶液のpH値が特定の範囲内にある紫外線硬化型組成物からなる硬化膜を保護膜として用いることが好ましいことを見出し、本発明に到達するに至った。
【0009】すなわち本発明は、基板上に、記録層又は情報記録ピット、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜、紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる保護膜、とをこの順で有する光記録媒体における上記保護膜に用いられる紫外線硬化型組成物であって、1wt%メタノール溶液のpH値が4.5〜6.8であることを特徴とする紫外線硬化型組成物組成物、及びその硬化膜を保護膜とする光記録媒体を提供するものである。
【0010】ここで紫外線硬化型組成物は、カルボキシル基を有するモノマー及び又はオリゴマーを含有することが組成物のpH値を制御する上から好ましく、特にその含有量は0.05〜1wt%であることが好ましい。
【0011】以下、本発明について図面を参照しながら詳しく説明する。光記録媒体として、図1に示すような層構成の光記録ディスク及びこの光記録ディスクの製造方法について説明する。図1は、光記録ディスクの部分断面の一例を示す図であり、光記録ディスク(1)は、基板(2)上に、色素を主成分とする塗布型の記録層(3)を有し、記録層(3)に密着して反射層(4)を有し、反射層(4)上に保護膜(5)を有する。
【0012】基板(2)は、記録光および再生光(波長600〜900nm程度)に対し、実質的に透明(好ましくは透過率88%以上)な樹脂あるいはガラスから形成されている。これにより、基板裏面側からの記録および再生が可能となる。基板材質としては、樹脂を用いることが好ましく、一般にはポリカーボネート樹脂が広く使用されている。
【0013】基板(2)は、通常のサイズのディスク状であって、記録可能なCDとして用いる場合、厚さは1.2mm程度、直径は80〜120mm程度とする。このような基板(2)は射出成形等の公知の方法に従い製造されている。また、その際、トラッキング用やアドレス用等のために、グルーブ(21)等の所定のパターンが基板表面に形成される。なお、基板(2)製造後に、2P法等によりグルーブ等の所定のパターンを有する樹脂層を形成してもよい。
【0014】この基板(2)上に、有機色素を主成分とする記録層(3)が形成される。記録層(3) に用いる光吸収性の有機色素としては、例えばシアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アントラキノン系、アゾ系、トリフェニルメタン系、ピリリウムないしチアピリリウム塩系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ホルマザン系、金属錯体色素系等が挙げられる。
【0015】また、光吸収色素に一重項酸素クエンチャーが混合して用いられる。更に、色素カチオンと一重項酸素クエンチャーアニオンとのイオン結合体が光吸収色素として用いられることもある。
【0016】クエンチャーとしては、アセチルアセトナート系、ビスジチオ−α−ジケトン系やビスフェニルジチオール系などのビスジチオール系、チオカテコール系、サリチルアルデヒドオキシム系、チオビスフェノレート系等の金属錯体が好ましい。また、窒素のラジカルカチオンを有するアミン系化合物やヒンダードアミン等のアミン系のクエンチャーも好適である。
【0017】記録層に用いる色素としては、上記のような光吸収性の色素、色素−クエンチャー混合物、色素−クエンチャー結合体から選択する。
【0018】記録層(3)の形成はスピンコート法により行う。すなわち、色素および有機溶剤を含有する塗布液を、回転する基板(2)上に展開塗布して形成する。記録層形成のための塗布液に用いる有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、芳香族系、ハロゲン化アルキル系等から、用いる色素に応じて適宜選択するが、一分子中に2つ以上の官能基を有する有機溶剤が好適である。スピンコート後、必要に応じて塗膜を乾燥させる。このようにして形成される記録層の厚さは、目的とする反射率などに応じて適宜設定されるものであるが、通常、100〜300nm程度である。
【0019】次いで、記録層(3)上に直接密着して、反射層(4)が形成される。反射層にAuを用いると、高温高湿の状態下でも安定であるが、高価である。従って、比較的安価で、CD規格の反射率を満たす為に、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射層とする光記録ディスクが主流になってきた。この反射層(4)の形成は、スパッタ、蒸着等の各種気相成膜法により行われる。
【0020】次に、反射層(4)上に紫外線硬化型組成物をスピンコートした後、これに紫外線を照射することにより、硬化させて保護層(5)を形成する。紫外線源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられる。保護層(5)の厚さは、通常4〜15μm程度とされる。厚さが薄くなると紫外線硬化型組成物の酸素阻害による硬化不良が生じ、反射層や記録層の防食効果が不十分となる傾向にある。一方、厚さが厚くなると、硬化の際の収縮によりクラックが生じたり、ディスクに反りが発生しやすくなってくる。さらに、この保護膜(5)上には、一般的にレーベル印刷層が設けられる。
【0021】以上は、1回記録の光記録ディスクCD−Rの製造プロセスであるが、本発明は、これ以外にも、例えば、情報記録ピットを有する基板の上に、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射層とするCD、CD−ROM等の読み込み専用光記録ディスクにも適用出来ることは言うまでもない。
【0022】光記録媒体の保護膜に用いられる紫外線硬化型組成物としては、通常、(A)オリゴマー成分、(B)モノマー成分、(C)光重合開始剤成分、(D)その他の成分よりなる。そして、成分(A)、(B)の使用割合は求められる組成物の硬化物物性等により決められる。
【0023】本発明の紫外線硬化型組成物としては、組成物のメタノール溶液のpH値を規定の範囲に納める為の原料組成の選定が重要である。基本的にpH値の小さくなる酸性度の強いオリゴマー、モノマー及び/又は光重合開始剤等、また逆に、pH値の大きくなる塩基性度の大きなオリゴマー、モノマー及び/または光重合開始剤等を含有することを避けなければならない。但し、カルボキシル基を有するオリゴマー、モノマー、光重合開始剤を使用することは組成物のメタノール溶液のpH値を規定の範囲に収める上では問題を生じない為差し支えなく、又含有量によっては、好ましい結果をもたらす。
【0024】以下、更に詳細に説明する。(A)成分としては、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0025】この中で、分子内にカルボキシル基を持つエポキシアクリレートとして、通常の残存2級水酸基を酸無水物にてエステル化する等が挙げられる。市販品としては、共栄社化学社製EX−C101,C106,C300,C501等が挙げられる。 また、分子内にカルボキシル基を持つウレタンアクリレートとしては、分子内にカルボキシル基を持つポリオール例えば、ダイセル化学社製Placcel 205BAをポリオール成分として使用し合成したポリウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0026】(B)成分としては、組成物の硬化塗膜強度をアップする成分(以下、B1成分という)及び組成物の粘度を低下させる希釈成分(以下、B2成分という)を含有することができる。B1成分は、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが特に好ましい。
【0027】分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサオド等のアルキレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド等のアルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】また、B2成分は、分子中に2個以下の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えばトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、N,N,−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリルモルホリン、等のアミノアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N,−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、等のアミノアクリルアミド等の塩基性モノマーを含有することは、上記紫外線硬化型組成物メタノール溶液のpH値の観点からは、あまり好ましくない。
【0030】分子内にカルボキシル基をもつモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルダイマー酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等が挙げられる。市販品としては、東亞合成社製アロニックスM−5300,M−5400,M−5600、共栄社化学社製ライトアクリレートHOA−MS,HOA−MPL、大阪有機化学工業社製98%アクリル酸、ビスコート#2000,2100等が挙げられる。この中で、アロニックスM−5600(アクリルダイマー酸)が特に好ましい。
【0031】(C)成分としては、一般の紫外線硬化型樹脂に使用されている各種の光重合開始剤及び光重合増感剤が使用できる。開裂型の光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチルベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒロドキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メチルフェニルグリオキシレート、、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等の塩基性を有する光重合開始剤は、含有量によっては組成物メタノール溶液のpH値が大きくなるので注意が必要である。また、水素引き抜き型の光重合開始剤の組み合わせとしては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、アクリル化ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系の増感剤と例えばトリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、フェニル−4−ピペリジニルカーボネート等のHALS(ヒンダードアミン)、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の芳香族アミンとの組み合わせ、即ちベンゾフェノン系化合物と塩基性化合物との組み合わせであり、塩基性物質が組成物メタノール溶液のpH値を大きくする為、この組み合わせはあまり好ましくない。
【0032】上記の光重合開始剤及び光重合増感剤の組み合わせ及び添加量は、光記録媒体の保護膜に用いられる紫外線硬化型組成物のメタノール溶液のpH値にも影響するので、硬化速度を実用レベルに確保した上で、光重合開始剤の組み合わせ及び添加量を決定する事が重要である。そのような観点で光重合開始剤を選択すると、ベンゾイル安息香酸、1−ヒロドキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、メチルフェニルグリオキシレート等を使用する事が好ましい。
【0033】(D)成分としては、各種の添加剤−例えば、重合禁止剤、界面活性剤等を必要に応じて使用する。製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止する為に、紫外線硬化樹脂組成物中に、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン等の公知の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
【0034】更に、塗布性を改善するために、界面活性剤が添加されることが多い。界面活性剤としては、大日本インキ化学工業社製の「メガファックF-142D」、「メガファックF-144D」、「メガファックF-150」、「メガファックF-171」、「メガファックF-173」、「メガファックF-177」、「メガファックF-183」等のフッ素系非イオン界面活性剤を挙げることができる
【0035】紫外線硬化型保護膜組成物において、A、B1成分及びB2成分の使用割合は、所望の塗膜強度から決定される。B2成分の割合が増加するに従って、紫外線硬化型保護膜組成物の粘度は低下するが、塗膜強度が弱くなる傾向にある。
【0036】A成分及びB1成分の使用割合は、(A+B1)成分の使用割合において、50wt%以上とするのが塗膜強度の面で好ましく、90wt%以下とすることが組成物粘度からは好ましい。またB2成分の使用割合は、5wt%以上とするのが希釈効果の面から好ましく、40wt%以下とすることが塗膜強度からは好ましい。
【0037】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0038】(紫外線硬化型組成物のメタノール溶液のpH値測定)それぞれの紫外線硬化型組成物の1wt%メタノール溶液を作製した。ここで、メタノールは、試薬1級のものを用いた。次に、電気化学計器社製pH計COM−8、タイプ6155pH複合電極を使用し、液温25±2℃でメタノール溶液のpH値を測定した。
【0039】[実施例1〜4・比較例1,2]図1に示した構成の追記型コンパクトディスク(CD−R)を作製した。まず、渦巻状の連続グルーブ(21)を有する直径120mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂基板(2) 上に、色素を含有する厚さ200nmの記録層(3)を形成した。記録層(3)形成には、下記のシアニン系色素C(80wt%)及び一重項酸素クエンチャーQ(20wt%)の混合物5重量部を、ジアセトンアルコール95重量部に溶解した塗布液をスピンコートで塗布した。
【0040】
【化1】


【0041】次に、記録層(3)上に、Ag(銀)反射層(4)をスパッタ法により形成した。反射層の厚さは80nmとした。反射層(4)上に、表1の紫外線硬化型組成物を平均7μmの厚さになるようにスピンコートで塗布し、紫外線を120W/cmの高圧水銀灯(アイグラフィックス社製H03−L31)で250mJ/cm2 (アイグラフィックス社製UV光量計UVPF−36)照射して硬化させて、保護層(5)を形成した。このようにして、追記型コンパクトディスクサンプルを得た。
【0042】次いで、出来上がった追記型コンパクトディスクサンプルに、メルコ社製CD−RWドライブCDRW−S4224にて、ROMデータを書き込んだディスクサンプルを作製した。
【0043】[比較例3〜8]図2に示した構成の読み込み専用型コンパクトディスク(CD−ROM)を作製した。まず、1.6μmピッチのピット列(22)を有する直径120mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂基板(2)上に、Al(アルミニウム)反射層(4)をスパッタ法により形成した。反射層の厚さは75nmとした。次に、反射層(4)上に、表2の紫外線硬化型組成物を平均7μmの厚さになるようにスピンコートで塗布し、実施例と同一条件で硬化させて、保護層(5)を形成し、コンパクトディスクサンプルを作製した。
【0044】(BLERの測定)以上のようにして得られた各ディスクサンプルについて、(1) 80℃、80%RH、100時間の加速試験を行い、試験前後でブロックエラーレート(BLER)の測定を行った。
【0045】測定は、内周部分につき15分間測定を行い、1秒あたりのC1エラーの平均個数(Counts/sec)を求めた。なお、CD、CD−Rの規格では、BLERが220Counts/sec以下であることが要求されている。以上の結果を表1、2に示す。
【0046】
【表1】


【0047】
【表2】


【0048】ここで、上表1,2の紫外線硬化型組成物に用いられた原料の略号は、それぞれ以下の物質を示している。
BF-TMP:トリメチロールプロパントリアクリレートETA-300:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートAPG-200:トリプロピレングリコールジアクリレートBP:ベンゾフェノンIrg.184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンF-173:大日本インキ化学工業社製非イオン系フッ素界面活性剤M-5600:アクリルダイマー酸HOA-MPL:2−アクリロイロキシエチルフタル酸PM-2:EO変性リン酸ジメタクリレートDMB:2−ジメチルアミノエチル安息香酸
【0049】表1より、実施例のディスクサンプルでは、加速試験後もC1エラー測定値の変化が少なく、実用上十分な性能を有していることが明らかである。一方、比較例のディスクサンプルにおいてAg反射膜を使用したものでは、加速試験後のC1エラーが悪化の程度が大きくなり記録媒体としての機能を失していることが分かる。また、比較のため挙げたAl反射膜を使用した表2のディスクサンプルでは、pH値と特性の間に明確な相関性が見られず、pH制御による本発明の効果がAg反射膜を用いた場合に特有の効果であることを明らかにしている。
【発明の効果】本発明によれば、上述のように、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜とする光記録媒体において、紫外線硬化型組成物のメタノール溶液のpH値を規定の範囲に組成配合されたものを保護膜として使用することにより、反射膜の高温高湿状態下での耐久性が向上した光記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による光記録ディスクの部分断面図の一例である。
【図2】 本発明による光記録ディスクの部分断面図の別の一例である。
【符号の説明】
1 光記録ディスク
2 基板
21 グルーブ
22 ピット
3 記録層
4 反射層
5 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に、記録層又は情報記録ピット、Ag又はAgを主成分とする金属及び又は合金からなる反射膜、紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる保護膜、とをこの順で有する光記録媒体における上記保護膜に用いられる紫外線硬化型組成物であって、1wt%メタノール溶液のpH値が4.5〜6.8であることを特徴とする紫外線硬化型組成物。
【請求項2】 カルボキシル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項3】 カルボキシル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの含有量が0.05〜1wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項2記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項4】 請求項1、2及び3の何れかに記載の紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる保護膜を有することを特徴とする光記録媒体

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−207085(P2001−207085A)
【公開日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−20056(P2000−20056)
【出願日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】