説明

光記録媒体

【課題】高速記録時のパワーマージンを改善することのできる光記録媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも、案内溝が形成された基板と、前記基板上に光反射機能を有する反射層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、前記記録層に接する界面層と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層とをこの順に備えた光記録媒体において、前記界面層が、(In−SnO)及び/又は(In−ZnO)を主成分Mとして含有し、更に、Nb、Ta、TiO、Y、及びLaFからなる副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有することを特徴とする、光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光記録媒体に関し、より詳しくは、色素を含有する記録層を有する光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型の光記録媒体の開発が行なわれている。中でも、比較的安価のコストで効率的な生産が可能となる色素塗布型の追記型媒体の開発が強く望まれている。
【0003】
例えば、安定に成形できる比較的浅い溝深さの基板を用いて、良好な記録再生特性を有する極めて高密度の色素塗布型の追記型光記録媒体が提案されている(特許文献1、2)。即ち、案内溝が形成された基板と、基板上に光反射機能を有する層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層とをこの順に備え、前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、前記記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、主として位相変化により当該記録溝部における未記録時の反射光強度より増加するように構成された光記録媒体である。
【0004】
ここで、前記特許文献1では、記録層とカバー層との間に、界面層としてZnS−SiO等を用いることを提案している。また、前記特許文献2では、記録層の変形、特に、カバー層側へのふくらみ変形を促進したり、抑制することによって良好な記録特性を得ることを目的とし、記録層とカバー層との間に界面層としてITO(In−SnO)を用いることを提案している。ITO界面層は、ZnS−SiO界面層に比べ、良好な記録再生特性を示すことが開示されている。また、従来よりITO(In−SnO)として、In−SnOの重量比が90:10重量%のものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−228402号公報
【特許文献2】特開2009−026378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来の光記録媒体においては、以下のような課題があることが明らかになってきた。追記型の光記録媒体においては、記録時間短縮のため、より高速に記録可能なことが求められるが、従来用いられているITO(In−SnO(90:10重量%))では、記録速度が増加するとパワーマージンが低速記録時に比べ狭くなり、記録再生安定性の確保が難しくなる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は高速記録時のパワーマージンを改善することのできる光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも、案内溝が形成された基板と、前記基板上に光反射機能を有する反射層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、前記記録層に接する界面層と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層とをこの順に備えた光記録媒体において、前記界面層が、(In−SnO)及び/又は(In−ZnO)を主成分Mとして含有し、更に、Nb、Ta、TiO、Y、及びLaFからなる副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有することを特徴とする、光記録媒体に存する。
【0009】
このとき、前記界面層における、主成分Mの構成分子のmol数をMa、副成分群Aの構成分子のmol数をAaとした時、Aa/(Ma+Aa)が0.02から0.50であることが好ましい。
【0010】
また、前記界面層における、主成分Mの構成分子のmol数をMa、副成分群Aの構成分子のmol数をAaとした時、Aa/(Ma+Aa)が0.04から0.20であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記界面層が、Nbを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高速記録時において十分なパワーマージンを有する光記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光記録媒体の第1実施形態の構成を説明する模式的断面図である。
【図2】本発明に係る光記録媒体の第2実施形態の構成を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、大容量の光記録媒体である追記型のブルーレイディスクを想定して詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0015】
[1.第1実施形態]
図1は、本発明の光記記録媒体の第1実施形態の構成を説明する図である。第1実施形態では、色素を主成分とする記録層を有する「膜面入射構成」の追記型媒体を用いて説明する。
【0016】
第1実施形態の光記録媒体20においては、少なくとも、案内溝を形成した基板21上に、光反射機能を有する反射層23と、未記録(記録前)状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する、光吸収機能を有する記録層22と、前記記録層22に接する界面層30及びカバー層24とが順次積層された構造を有している。第1実施形態の光記録媒体20は、膜面入射構成(Reverse stackともいう)をとっており、記録再生をカバー層24側から対物レンズ28を介して集光された記録再生光ビーム27を入射して行う。
【0017】
以下においては、光反射機能を有する反射層を単に「反射層23」、色素を主成分とする光吸収機能を有する記録層22を単に「記録層22」と呼ぶ。膜面入射構成のカバー層24側に記録再生光ビーム27を入射するに当たり、高密度記録のために、通常、NA(開口数)=0.6〜0.9程度の高NA(開口数)の対物レンズ28が用いられる。記録再生光波長λは、赤色から青紫色波長(350nm〜600nm程度)がよく用いられる。さらに、高密度記録のためには、350nm〜450nmの波長域を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0018】
本実施形態においては、図1において、記録再生光ビーム27のカバー層24への入射面(記録再生光ビームが入射する面29)から見て遠い側の案内溝部を記録溝部とし、記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が、記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなるような記録(以下、LtoH記録という)を行う。その主たるメカニズムは、反射光強度の増加が、主として前記記録ピット部での反射光の位相変化による。即ち、主として記録溝部における反射光の往復光路長の、記録前後での変化を利用する。
【0019】
ここで、膜面入射型の光記録媒体20では、記録再生光ビーム27のカバー層24への入射面(記録再生光ビームが入射する面29)から遠い案内溝部(基板21の溝部と一致)をカバー層溝間部25(in−groove)、記録再生光ビームが入射する面29から近い案内溝間部(基板21の溝間部と一致)をカバー層溝部26(on−groove)と呼ぶことにする。
【0020】
ここで、溝形状や各層の屈折率等の光学特性を制御することにより、カバー層溝間部25(in−groove)を記録トラックとする(以下、in−groove記録と記載)LtoH記録を実現することが可能となる。
【0021】
<具体的な層構成及び材料の好ましい態様について>
以下において、図1で示す層構成の具体的材料・態様について、青色波長レーザの開発が進んでいる状況を考慮して、特に、記録再生光ビーム27の波長λが405nm近傍の場合を想定して説明する。
【0022】
(基板21)
基板21は、膜面入射構成で用いる場合には、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等を用いることができる。従来の基板入射構成(基板側から記録再生光ビームを入射する構成)と異なり、透明性や複屈折に対する制限はない。表面に案内溝を形成するのであるが、金属、ガラスでは、表面に光や熱硬化性の薄い樹脂層を設け、そこに、溝を形成する必要がある。この点、プラスチック材料を用い、射出成型によって、基板形状(特には円盤状)と、表面の案内溝とを一挙に形成するほうが製造上は好ましい。
【0023】
射出成型できるプラスチック材料としては、従来CDやDVDで用いられたポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。基板21の厚みとしては、0.5mm〜1.2mm程度とするのが好ましい。中でも、光記録媒体20の厚みを、従来のCDやDVDと同じ1.2mmとすることが好ましい。従来のCDやDVDで使われるケ−ス等をそのまま用いることができ、また記録再生装置の互換性を図るためにも好ましいからである。なお、ブルーレイディスクフォーマットの規格上、基板21の厚みを1.1mm、カバー層24の厚みを0.1mmとすることが、ブルーレイディスクでは規定されている。
【0024】
基板21にはトラッキング用の案内溝が形成されている。第1実施形態において、カバー層溝間部25が記録溝部となるトラックピッチは、CD−R、DVD−Rより高密度化を達成するために、0.1μm以上が好ましく、0.2μmがより好ましく、また0.6μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましい。溝深さは、概ね20nm〜60nmの範囲にあることが好ましい。溝深さは、前記範囲内で、未記録状態の記録溝部反射率、記録信号の信号特性、プッシュプル信号特性、記録層22の光学特性等を考慮して適宜最適化される。
【0025】
本実施形態では、主として記録溝部と記録溝間部とにおけるそれぞれの反射光の位相差による干渉を利用しているから、両方が集束光スポット内に存在することが好ましい。このため、記録溝幅(カバー層溝間部25の幅)は、記録再生光ビーム27の記録層面におけるスポット径(溝横断方向の直径)より小さくするのが好ましい。記録再生光波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系で、トラックピッチを0.32μmとする場合、記録溝幅は0.1μm以上0.2μm以下の範囲とするのが好ましい。これらの範囲外では、溝部または溝間部の形成が困難となる場合が多い。
【0026】
案内溝は、通常は、アドレスや同期信号等の付加情報を付与するために、溝蛇行、溝深さ変調等の溝形状の変調、記録溝部あるいは記録溝間部の断続による凹凸ピット等による付加信号を有する。例えば、ブルーレイディスクでは、MSK(minimum−shift−keying)とSTW(saw−tooth−wobbles)という2変調方式を用いたウォブル・アドレス方式が用いられている。
【0027】
(反射層23)
光反射機能を有する反射層23には、記録再生光ビーム27の波長に対する反射率が高く、記録再生光ビーム27の波長に対して70%以上の反射率を有するものが好ましい。記録再生光ビーム27の波長として用いられる可視光、特に、青色波長域で高反射率を示すものとして、Au、Ag、Al及びこれらを主成分とする合金が挙げられる。より好ましくは、波長λ=405nmでの反射率が高く、吸収が小さいAgを主成分とする合金である。Agを主成分として、Au、Cu、希土類元素(特に、Nd)、Nb、Ta、V、Mo、Mn、Mg、Cr、Bi、Al、Si、Ge等を0.01原子%以上10原子%以下添加することで、水分、酸素、硫黄等に対する耐食性を高めることができ好ましい。この他に、誘電体層を複数積層した誘電体ミラーを用いることも可能である。
【0028】
反射層23の膜厚は、基板21表面の溝段差を保持するために、70nm以下が好ましく、より好ましくは65nm以下とする。後述の、2層媒体を形成する場合(本発明の光記録媒体の第2実施形態)を除いて、反射層膜厚の下限は、30nm以上が好ましく、より好ましくは40nm以上とする。
【0029】
反射層23の表面粗さRaは、5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。Agは添加物の添加によって平坦性が増す性質があり、この意味でも、上記の添加元素は0.1原子%以上が好ましく、さらに好ましくは、0.5原子%以上である。
【0030】
反射層23の形成方法は、スパッタリング法、イオンプレーティング法や、電子ビーム蒸着法など、従来公知の方法で形成することができる。中でもスパッタリング法が好ましい。膜厚や組成が制御しやすく、量産性も優れているためである。
【0031】
(記録層22)
本発明の光記録媒体20の記録層22に含有される色素は、300nm〜800nmの可視光(及びその近傍)波長領域に、その構造に起因した顕著な吸収帯を有する有機化合物である。このような色素を記録層22として形成した未記録(記録前)の状態において、記録再生光ビーム27の波長λに吸収を有し、記録により変質して記録層22に再生光の反射光強度の変化として検出されうる光学的変化を起こす色素を、「主成分色素」と呼ぶ。主成分色素は、複数の色素の混合物として、上記の機能を発揮するものであってもよい。
【0032】
主成分色素含有量は、重量%にして50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。主成分色素は、単独の色素が記録再生光ビーム27の波長λに対して吸収があり、記録によって変質して上記光学的変化を生じることが好ましいが、記録再生光ビーム27の波長λに対する吸収を有し、発熱することで、間接的に他方の色素を変質させ光学的変化を起こさせるように機能分担されていてもよい。
【0033】
主成分色素にはこの他、光吸収機能を有する色素の経時安定性(温度、湿度、光に対する安定性)を改善するためのいわゆるクエンチャーとしての色素が混合されていてもよい。主成分色素以外の含有物としては、低・高分子材料からなる結合剤(バインダー)、誘電体等が挙げられる。
【0034】
主成分色素は、特に構造によって限定されるものではない。本実施形態においては、記録により、記録層22内において屈折率が変化を生じるものであり、未記録(記録前)状態での吸収係数が0より大きい値である限り、原則として光学的特性に対する強い制約はない。主成分色素が記録再生光ビーム27の波長λに対する吸収を有し、且つ、自らの吸光、発熱によって、変質を起こし、屈折率の低下を生じればよい。ここで、変質とは、具体的には、主成分色素の吸収・発熱による膨張、分解、昇華、溶融等の現象をいう。主成分となる色素そのものが変質して、なんらかの構造変化を伴い、屈折率が低下してもよい。また、屈折率の低下は記録層22内及び/または界面に空洞が形成されてもよいし、記録層22の熱膨張による屈折率低下であってもよい。
【0035】
このような変質を示す温度としては、保存安定性、耐再生光劣化の観点からは、100℃以上が好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、高線速度でのジッタ特性の観点から、500℃以下が好ましく、350℃以下がさらに好ましく、300℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。分解温度が300℃以下であれば、特に10m/s以上の高線速度でのジッタ特性が良好になる傾向があり好ましい。分解温度が280℃以下であることが、さらに高速記録での特性を良好にする可能性があるので好ましい。通常は、以上で述べた変質挙動は、主成分色素の熱特性として測定され、熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)法によって、重量減少開始温度として分解温度を測定できる。
【0036】
上記のような特性を有する色素としては、メチン系、(含金)アゾ系、ヒドラジド系、ピロン系、ポルフィリン系化合物等及びこれらの混合物が挙げられる。より具体的には、含金アゾ系色素、ヒドラジド系色素、ピロン系色素は、本来、耐光性に優れ、かつ、TG−DTAでの重量減少開始温度Tdが、150℃以上400℃以下にあり、急峻な減量特性(分解物の揮発性が高く、空洞を形成しやすい)を有する点で好ましい。特に好ましいのは、含金アゾ系色素や含金ヒドラジド系色素である。色素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で混合して用いてもよい。
【0037】
《アゾ系色素》
アゾ系色素としては、下記式[I]で示されるアゾ化合物と金属イオンからなる含金属アゾ化合物が好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
式[I]中、環Aは、5または6員環の飽和または不飽和の、含窒素複素環であり、環Bは、5または6員環の飽和または不飽和の、炭化水素環または複素環であり、環A、Bはそれぞれ独立に5または6員環の飽和または不飽和の、炭化水素環または複素環が縮合してもよい。X1は活性水素を有する基であり、X1から水素が脱離して金属イオンと錯体を形成する。
【0040】
環Aとしてはピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン及びこれらの飽和環などが挙げられ、ピラゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジンなどが好ましい。特に好ましくはイソオキサゾール、ピラゾール、トリアゾールである。
【0041】
環Bとしてはシクロペンタノン、ピロリジノン、チオフェノン、ピラゾリジノン、チアゾリジノン、シクロペンタジオン、ピロジンジオン、チオフェンジオン、ピラゾリジンジオン、インダンジオン、シクロヘキサノン、ピラノン、ピペリジノン、チオピラノン、シクロヘキサジオン、ピランジオン、ピペリジンジオン、チオピランジオン、メルドラム酸、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ピリドン、ベンゼン、ピリジン、ジケトピリミジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、などが挙げられ、チアゾリジノン、インダンジオン、メルドラム酸、バルビツール酸、ピリドン、ピリミジン、ジケトピリミジンなどが好ましい。特に好ましくはインダンジオン、ジケトピリミジン、メルドラム酸である。
【0042】
1としては水酸基、アミノ基、スルホンアミド基などが挙げられ、水酸基が好ましい。
金属イオンとしては、Ni、Co、Cu、Zn、Fe、Mnの2価の金属イオンが挙げられるが、特に、Ni、Coを含有する場合が、耐光性、耐高温高湿環境性に優れており、好ましい。
【0043】
《ヒドラジド系色素》
ヒドラジド系色素としては、下記式[II]で示されるアゾ化合物と金属イオンからなる含金属ヒドラジド化合物が好ましい。
【0044】
【化2】

【0045】
式[II]中、Rは、5もしくは6員環の飽和もしくは不飽和の、炭化水素環もしくは複素環、または5もしくは6員環の飽和もしくは不飽和の、炭化水素環もしくは複素環が2価の連結基を介した構造、であり、上記の環構造にさらに5または6員環の飽和または不飽和の、炭化水素環または複素環が縮合してもよい。さらにRは、置換基を有してもよい鎖状アルキル基でも良い。
【0046】
環Cは、5または6員環の飽和または不飽和の、炭化水素環または複素環であり、環Cには5または6員環の飽和または不飽和の、炭化水素環または複素環が縮合してもよい。X2は活性水素を有する基であり、X2から水素原子が脱離して金属イオンと錯体を形成する。さらにヒドラジド部位の水素原子が脱離して金属イオンと錯体を形成してもよい。
【0047】
Rとしてはピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、プリン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン及びこれらの飽和環などが挙げられ、ベンゼン、ピリジン、イミダゾールなどが好ましい。
【0048】
また上記の構造がメチレン、エチレン、ビニレン、フェニレンと結合してRを形成してもよい。また、ピリジニウム、イミダゾリウムなど、アンモニウム塩をR内で形成することも好ましい。この場合、対アニオンを含金属ヒドラジド化合物に配位させてもよいし、分子内アニオン部位を形成してもよい。
【0049】
環Cとしてはシクロペンタノン、ピロリジノン、チオフェノン、ピラゾリジノン、チアゾリジノン、シクロペンタジオン、ピロジンジオン、チオフェンジオン、ピラゾリジンジオン、インダンジオン、シクロヘキサノン、ピラノン、ピペリジノン、チオピラノン、シクロヘキサジオン、ピランジオン、ピペリジンジオン、チオピランジオン、メルドラム酸、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ピリドン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、などが挙げられ、チアゾリジノン、インダンジオン、メルドラム酸、バルビツール酸、ピリドン、ピリミジンなどが好ましい。
【0050】
2としては水酸基、アミノ基、スルホンアミド基などが挙げられ、水酸基が好ましい。
金属イオンとしては、Ni、Co、Cu、Zn、Fe、Mnの2価の金属イオンが挙げられるが、特に、Ni、Coを含有する場合が、耐光性、耐高温高湿環境性に優れており、好ましい。
【0051】
これらのアゾ系色素、ヒドラジド系色素は環A、環B、環C、X1、X2、R、金属イオンそれぞれの適切な構造を選択することにより、従来CD−RやDVD−Rで用いられたアゾ系色素より、さらに、短波長よりの主吸収帯を有することができ、400nm近傍での吸収係数kが、0.3〜1程度の大きな値となるので好ましい。
【0052】
記録層22の形成方法としては、塗布法、真空蒸着法等で形成することができるが、特に、塗布法で形成することが好ましい。即ち、上記色素を主成分に結合剤、クエンチャー等とともに適当な溶剤に溶解して記録層塗布液を調整し、前述の反射層23上に塗布する。塗布後に塗布液の乾燥を行うことで、記録層22を形成する。
【0053】
溶解液中の主成分色素の濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.2重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。これにより、通常、1nm〜100nm程度の厚みに記録層22が形成される。その厚みを50nm未満とするために、上記色素濃度を1重量%未満とするのが好ましく、0.8重量%未満とするのがより好ましい。また、塗布の回転数をさらに調整することも好ましい。
【0054】
主成分色素材料等を溶解する溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;テトラフルオロプロパノール(TFP)、オクタフルオロペンタノール(OFP)等のフッ素化炭化水素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;ジクロルメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン等を挙げることができる。これらの溶剤を溶解すべき主成分色素材料等の溶解性を考慮して適宜選択し、また、2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
結合剤としては、セルロース誘導体、天然高分子物質、炭化水素系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリビニールアルコール、エポキシ樹脂等の有機高分子等を使うことができる。さらに、記録層22には、耐光性を向上させるために、種々の色素又は色素以外の褪色防止剤を含有させることができる。
【0056】
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、前記記録層22の材料に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、また、好ましくは50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
【0057】
また、本発明において、耐光性が低い色素については、耐光性が良好な他の色素や、例えば、従来CD−R等に使用されている有機色素化合物等を混合することにより、耐光性を光記録媒体20の実用レベルに向上させることが可能である。カップラー成分との組み合わせや金属の種類により変動するが、およその傾向として耐光性はジアゾ成分に由来する割合が高く、波長的に短いジアゾ成分であるイソキサゾール、トリアゾールが低めの傾向が見られ、波長的に長いチアゾールやベンゾチアゾール、ピラゾールの方が耐光性のよい結果が得られている。一方で、耐光性が良好な色素は光感応性が低いため記録感度が低下する傾向がある。
【0058】
本発明においては、後述する第2実施形態に用いる色素材料は、より記録感度を高くする必要がある。そのため、イソキサゾールをジアゾ成分として含む耐光性が低く光感応性が高い(記録感度がよい)含金アゾ色素AAとピラゾールをジアゾ成分として含む耐光性が高く記録感度の悪い含金アゾ色素BBを混合する際に、AAの色素の比率をBBの色素に対して多くすることで、感度が良く、かつ耐光性に優れた色素を含有する記録層22を形成することが好ましい。
【0059】
このように、本願発明においては、特性の異なる2種類以上の色素を混合することにより記録特性を補うことが可能である。
【0060】
(界面層30)
本実施の形態においては、特に、記録層22とカバー層24との間に適当な界面層30を設けることで、高速記録時のパワーマージンを改善し、パーティクルの発生を減らし、原材料コストを低減することができる。
【0061】
本発明の界面層30は、(In−SnO)及び/又は(In−ZnO)を主成分Mとして含有し、更に、Nb、Ta、TiO、Y、及びLaFからなる副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有するものである。
【0062】
本発明における(In−SnO)は、一般にITO(酸化インジウムスズ)と呼ばれる透明導電膜であり、酸化インジウムと酸化スズの混合物である。ITOにおけるInとSnOの重量比は、導電率と透過率のバランスから、実用上9:1であることが多いが、本願発明におけるInとSnOの重量比は9:1に限定されるものではなく、好ましくは9.5:0.5〜6:4である。
【0063】
本発明における(In−ZnO)は、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物である(以下、酸化インジウム亜鉛と記載することがある)。酸化インジウム亜鉛は、ITOの代替物として利用されている透明導電膜であり、InとZnOの重量比は、ITOと同様、実用上9:1であることが多いが、本願発明におけるInとZnOの重量比は9:1に限定されるものではなく、好ましくは9.5:0.5〜6:4である。
【0064】
本発明の界面層30は、(In−SnO)及び/又は(In−ZnO)を主成分Mとして含有する。主成分Mの含有率については、界面層30全体における(In−SnO)及び(In−ZnO)の合計重量、すなわち界面層30における主成分Mの重量割合が、通常50%以上であることが必要である。界面層30における主成分Mの重量割合は60%以上が好ましく、さらに好ましくは75%以上である。また、界面層30における主成分Mの重量割合は、通常98%以下、好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。
【0065】
本発明の界面層30は、更に、Nb、Ta、TiO、Y、及びLaFからなる副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有する。副成分群Aの中でも、Nb、Ta、TiOが好ましく、Nbが特に好ましい。副成分群Aより選ばれる材料は1種であってもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有するものであってもよい。界面層30における副成分群Aより選ばれる材料の重量割合は、通常2%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上であり、通常50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0066】
副成分群Aの材料の含有量については、前記界面層における、主成分Mの構成分子のmol数をMa、副成分群Aの構成分子のmol数をAaとした時、Aa/(Ma+Aa)で表わされる副成分群Aの含有率が通常0.02以上、好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.09以上であり、通常0.50以下、好ましくは0.20以下である。例えば、主成分Mが(In−SnO)であり、副成分群AがNbである場合、界面層30におけるIn及びSnOの合計分子数がMa、Nbの原子数がAaとなる。副成分群Aの含有率が下限値より多いことで、パワーマージンの改善効果を十分に得ることができる傾向にあり、逆に上限値より少ないことで記録感度を維持しながらパワーマージンの改善効果を得ることができる。
【0067】
本発明の界面層を用いることで、特に高速記録におけるパワーマージンが改善されるメカニズムについては、詳細は不明だが、本発明者等は以下のように推定している。
【0068】
まず、本願発明におけるパワーマージンとは、記録再生光のレーザパワーを変化させて、光記録媒体の記録再生特性において最も重要な指標の一つであるジッタを測定した際、所定のジッタ値が得られるレーザパワーの範囲を示す指標である。具体的には、ジッタ値が最小になるパワーをPw(opt)、適当に定めたジッタ値以下となる記録パワーの範囲をPw(Width)とした場合、パワーマージンPM=Pw(Width)/Pw(opt)*100[単位は%]が大きくなれば良い。このパワーマージンが大きいということは、より広いレーザパワー範囲で良好なジッタが得られるということであり、レーザパワーの変動等に対しても良好なジッタを保持できるということになる。
【0069】
本発明の光記録媒体20における界面層30の基本的な機能の一つは、記録層22の色素材料がカバー層24へ拡散することを防ぐことにあるが、更に、レーザ照射による色素記録層の変形の度合いを制御する役割を果たしていると考えられる。この、色素記録層の変形状態は、記録再生特性、ひいてはジッタに大きな影響を与えることになるため、界面層30の硬度や弾性率といった物理的特性もジッタに影響を与えていると考えられる。界面層30の主成分Mに所定の副成分群Aを含有させることによって、硬度等の物理特性が好ましい状態になり、パワーマージンが改善されるものと推定している。
【0070】
なお、本発明の検討においては、界面層をスパッタリングにより形成しているが、スパッタリングターゲットの組成と実際の界面層の膜組成はほぼ一致するものと考えている。実際に成膜された界面層の組成を分析した場合、酸素欠損や2種類以上の酸素以外の元素と酸素が結びついた複合酸化物が発生している可能性はあるが、通常これらの発生はごくわずかであり、化学量論的な組成が材料物性を支配しているものと考えてよい。例えば、界面層の膜組成を分析した場合に、厳密には化学量論的組成からずれていたとしても、複合酸化物の重量割合が界面層全体の5%以下とみなせる場合や、酸素欠損分の全酸素中の割合が10%以下である場合は、これらの存在を無視してもよいと考える。従って、各酸化物分子の好ましい組成範囲については、還元状態、酸素欠損状態等を含む厳密な酸化物状態として考えると不明瞭となるため、ターゲット作製時に原材料として用いる個々の酸化物の分子式(酸化物に含まれる元素種の比が整数比によって表される化学量論的組成であり、かつ、トータルの電価が±0となる最小単位の化学分子式)で表される分子のmol数の比によって規定するものとした。
【0071】
本願発明の界面層30は、上記主成分Mと副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有していれば、他の化合物との混合物であっても構わない。他の化合物としては、金属、半導体等の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のフッ化物等の誘電体化合物やその混合物が好ましい。これら他の化合物を混合する場合、その種類は一種だけに限定されず、2種以上の混合物を任意の組み合わせ及び割合で混合することができる。界面層30に含有される主成分M及び副成分群A以外の材料の合計の含有量は、5mol%以上が好ましく、更に好ましくは10mol%以上である。また、20mol%以下が好ましい。この範囲にあると、適度な硬度となり記録感度が良好となる可能性が高く好ましい。
【0072】
界面層30の膜厚は1nm以上が好ましく、更に好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、50nm以下が好ましく、更に好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下である。膜厚が上記範囲より薄過ぎると、パワーマージン改善の効果が十分に発揮されないことがあり、上記範囲より厚過ぎると、記録感度に影響を及ぼす可能性がある。
【0073】
界面層30はスパッタリング法、イオンプレーティング法や、電子ビーム蒸着法など従来公知の方法で形成することができる。この中では、生産性等の観点より、スパッタリング法で形成することが好ましい。
【0074】
(カバー層24)
カバー層24は、記録再生光ビーム27に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(以下、シートとよぶことがある)を接着剤で貼り合せるか、カバー層24を形成する成分を含有する塗布液を塗布後、光、放射線、または熱等で硬化して形成する。
【0075】
カバー層24は、記録再生光ビーム27の波長λに対して透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0076】
シートの材料として用いられるプラスチックは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等である。接着には、光、放射線硬化、熱硬化樹脂や、感圧性の接着剤が用いられる。感圧性接着剤としては、また、アクリル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着剤を使用できる。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で混合して用いてもよい。
【0077】
例えば、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を記録層22または界面層30上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にポリカーボネートシートを重ね合わせる。その後、必要に応じて重ね合わせた状態で、媒体を回転させるなどして塗布液をさらに延伸展開した後、UVランプで紫外線を照射して硬化させる。あるいは、感圧性接着剤をあらかじめシートに塗布しておき、シートを記録層22あるいは界面層30上に重ね合わせた後、適度な圧力で押さえつけて圧着する。
【0078】
前記粘着剤としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーを、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させる。主成分モノマーの分子量調整、その短鎖成分の混合、アクリル酸による架橋点密度の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる。アクリル系ポリマーの溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、さらに、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で混合して用いてもよい。
【0079】
また、粘着剤は、前述のような材料を用いるが、カバー層24用のシートの記録層22側に接する表面に所定量を均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層22側表面(界面層30を有する場合はその表面)に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させる。該粘着剤を塗布されたカバー層24用のシートを、記録層22を形成した記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
【0080】
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層24用のシートを貼り合わせ、さらに離型フィルムを剥離してカバー層24用のシートと粘着剤層とを一体化した後、記録媒体と貼りあわせても良い。
【0081】
塗布法によってカバー層24を形成する場合には、スピンコート法、ディップ法等が用いられるが、特に、ディスク状媒体に対してはスピンコート法を用いることが多い。塗布によるカバー層24用の材料としては、同様に、ウレタン、エポキシ、アクリル系の樹脂等を用い、塗布後、紫外線、電子線、放射線を照射し、ラジカル重合もしくは、カチオン重合を促進して硬化する。
【0082】
カバー層24は、さらにその入射光側表面に耐擦傷性、耐指紋付着性といった機能を付与するために、表面に厚さ0.1μm〜50μm程度の層を別途設けることもある。カバー層24の厚みは、記録再生光ビーム27の波長λや対物レンズ28のNA(開口数)にもよるが、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がさらに好ましく、また0.3mm以下が好ましく、0.15mm以下がより好ましい。接着層やハードコート層等の厚みを含む全体の厚みが、光学的に許容される厚み範囲となるようにするのが好ましい。たとえば、ブルーレイディスクでは、100μm±3μm程度以下に制御するのが好ましい。
【0083】
(その他の構成)
本実施の形態においては、前述の記録層22とカバー層24との間の界面層30の他に、基板21、反射層23、記録層22、のそれぞれの界面に、相互の層の接触・拡散防止や、位相差及び反射率の調整のために界面機能層を挿入することができる。界面機能層は、本発明の効果を著しく制限しない限り、界面層30と同様の層としてもよいし、他の材料、構成を有する層であってもよい。
【0084】
[2.第2実施形態]
図2は、本発明の光記記録媒体の第2実施形態の構成を説明する図である。第2実施形態は、第1実施形態に比べて反射層の膜厚を薄くし、記録再生光の略50%以上が透過する半透明反射層を設けることで、1枚の光記録媒体に複数の記録層を備えさせることを可能とした多層記録媒体である。即ち、基板上に、複数の記録層及び反射層(以下、併せて情報層と呼ぶ)を設けた記録媒体である。
【0085】
第2実施形態の光記録媒体100は、少なくとも、案内溝を形成した基板101上に、反射層103と、記録層102と、前記記録層102に接する界面層130と、信号の混信を防止するための中間層114と、記録再生光の略50%以上が透過する半透明反射層113と、記録層112と、前記記録層112に接する界面層131と、カバー層111とが順次積層された構造を有している。すなわち、2層の情報層を有している。第2実施形態の光記録媒体100も、膜面入射構成をとっている。
【0086】
(基板101)
基板101は、上述の基板21と同様の構成とすることができ、その材料、製法、形状、厚みなども同様とすることができる。
【0087】
(情報層)
2層の情報層のうち、記録再生光ビーム107が入射する側の情報層をL1層、奥側にある情報層をL0層と呼ぶ。
【0088】
L1層は、透過率50%以上であることが好ましい。そのため、L1層の半透明反射層113が、例えば、Ag合金であれば、Ag合金の膜厚を好ましくは1nm以上、さらに好ましくは5nm以上、また、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下とすることが好ましい。その他、半透明反射層113の材質や形成方法などは、上記の反射層23と同様とすることができる。さらに記録層112の構成、材質、製法、形状等も上記の記録層22と同様とすることができる。
【0089】
L0層については、透過率など制限がないため、反射層103や記録層102の構成、材質、製法、形状等は、第1実施形態の反射層23および記録層22と同様とすることができる。
【0090】
L0層、L1層それぞれに、異なる層構成を用いてもよいし、同一の層構成を用いてもよい。それぞれの情報層に用いる色素を主成分とする記録層102,112の組成や材料が異なっていても良いし、同じでもよい。
【0091】
本実施の形態においては、特に、主として位相変化を利用しているので、記録前後でL1層を透過する光量がほとんど変化しないことが期待される。これは、L1層が記録・未記録であるにかかわらず、L0層への透過光量、L0層からの反射光量がほとんど変化しないことを意味し、L1層の状態に関わらず、安定的にL0層の記録再生ができるので好ましいことである。
【0092】
(中間層114)
L0層とL1層との間には、それぞれの信号の混信を防止するために、透明な中間層114が設けられる。
【0093】
中間層114の材料としては、放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂がある。これら材料の中で、工業的に好ましいのは、放射線硬化性樹脂である。放射線硬化性樹脂としては、電子線や紫外線の照射で硬化する材料を挙げることができるが、工業生産性を考慮すると、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、公知のラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂とが挙げられ、いずれも使用することができる。
【0094】
中間層114の形成方法としては、2層DVD−R等で公知である、フォトポリメリゼーション法(Photo Polymerization:以下、「2P法」と記すことがある。)と呼ばれる製造方法により製造されるのが好ましい。
【0095】
2P法の場合は、中間層114は、通常、以下のようにして製造される。すなわち、まず、L0層上に、紫外線硬化性樹脂原料等を塗布して樹脂原料層を形成した後、この上に転写用の凹凸形状(以下適宜、「転写用凹凸形状」という)を有するスタンパを載置する。次いで、上記紫外線硬化性樹脂原料等を硬化させた後に、スタンパを剥離する。このようにして、紫外線硬化性樹脂の表面にスタンパの転写用凹凸形状を転写させて、凹凸形状を有する中間層114を形成することができるようになっている。
【0096】
中間層114の厚みとしては、例えば記録再生光ビーム107の波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系において、約25μmとされる。中間層114の厚み分布は、同様に±2μm程度以下とするのが好ましい。
【0097】
(カバー層111)
カバー層111は、上述のカバー層24と同様の構成とすることができ、その材料、製法、形状なども同様とすることができる。その厚みは、中間層114が上述の条件下で約25μmとされる場合、カバー層111の厚みは約75μm程度とされる。
(界面層)
【0098】
第2実施形態においては、記録層112とカバー層111との間に界面層131を設ける。また、記録層102と中間層114との間に界面層130を設けてもよい。2カ所以上に界面層を設ける場合は、各界面層の成分や厚みなどは同一であってもよく、異なっていてもよい。各界面層の構成、材料、製法、形状等は、上述の界面層30と同様とすることができる。
【0099】
(その他の構成)
本実施の形態においては、前述の界面層130、131の他に、基板101、反射層103、記録層102、中間層114、半透明反射層113、記録層112、カバー層111のそれぞれの界面に、相互の層の接触・拡散防止や、位相差及び反射率の調整のために界面機能層を挿入することができる。界面機能層は、本発明の効果を著しく制限しない限り、界面層と同様の層としてもよいし、他の材料、構成を有する層であってもよい。
【0100】
[3.本発明に用いる光記録装置について]
本発明に用いる記録装置の基本構造は、従来の光記録装置と同じものを用いることができる。例えば、そのフォーカスサーボ方式や、トラッキングサーボ方式は、従来公知の方式を適用できる。集束ビームの焦点位置のスポットが、カバー層溝間部25に照射され、トラッキングサーボによって、該カバー層溝間部25を追従するようになっていればよい。通常は、プッシュプル信号が利用されている。
【0101】
カバー層溝間部25に記録を行う場合、集束された記録再生光ビーム27,107は、記録層22,102,112の主成分色素を昇温・発熱せしめて、変質(膨張、分解、昇華、溶融等)を起こさせる。マーク長変調記録を行う場合、記録再生光ビーム27,107のパワー(記録パワー)をマーク長に従って、強弱変調させる。なお、マーク長変調方式は、特に制限は無く、通常用いられるRun−Length−Limited符号である、EFM変調(CD)、EFM+変調(DVD)、1−7PP変調(ブルーレイディスク)等を適用できる。
【0102】
ただし、HtoL極性信号を前提とした記録再生系においては、LtoH記録に当たって、マークとスペースでの記録信号極性が逆になるように記録データ信号の極性を予め反転させておくことがある。こうすれば、記録後の信号は、見かけ上、HtoL極性の信号と同等にできる。
【0103】
通常は、マーク部で記録パワーを高レベルPwとし、マーク間(スペース)で低レベルPsとする。Ps/Pwは、通常0.5以下とする。Psは一回だけの照射では、記録層22,102,112に上記変質を生じさせないようなパワーであり、Pwに先行して記録層22,102,112を予熱したりするために利用される。公知の記録パルスストラテジーは、本発明記録方法及び記録装置においても適宜使用される。例えば、記録マーク部に対応する記録パワーPw照射時間はさらに、短い時間で断続的に照射されたり、複数のパワーレベルに変調したり、Pw照射後、Psに移行するまでの一定時間Psよりもさらに低いパワーレベルPbを照射する、等の記録ストラテジーが使用できる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。尚、本実施の形態は実施例に限定されない。
【0105】
(実施例1、2、3および比較例1)
トラックピッチ0.32μmで溝幅約0.18μm、溝深さ約40nmの案内溝を形成したポリカーボネート樹脂基板上に、Ag99Bi1.0合金ターゲット(組成はいずれも原子%)をスパッタして厚さ約20nmの反射層を形成した。
【0106】
その上に、下記構造式で表される配位子Aと二価のNiとからなる含金アゾ色素AWと、下記構造式で表される配位子Bと二価のCoとからなる含金アゾ色素BWと、二価のCoからなる含金ヒドラジド色素CWとを、重量%でAW:BW:CW=45:30:25の割合で混合し、テトラフルオロプロパノール(TFP)で0.58重量%に希釈した混合溶液をスピンコートで成膜して記録層を形成した。
【0107】
【化3】

【0108】
【化4】

【0109】
スピンコート法の条件は、以下のとおりである。すなわち、前記混合溶液をディスク中央付近に0.6g環状に塗布し、ディスクを250rpmで3秒間回転させ混合溶液を延伸し、その後、7000rpmで2秒間回転させ混合溶液を振り切ることによる塗布を行った。尚、塗布後にはディスクを40℃の環境下に20分間保持することで溶媒であるTFPを蒸発除去した。
【0110】
その後、色素記録層上にIn−SnO−Nb(75.0:15.3:9.7mol%)ターゲット(実施例1)、In−SnO−Nb(79.0:16.2:4.8mol%)ターゲット(実施例2)、In−ZnO−Nb(59.9:22.7:17.4mol%)ターゲット(実施例3)、またはITO(In−SnO(83.0:17.0mol%))ターゲット(比較例1)をスパッタして約16nmの厚みの界面層を形成した。
その上に、アクリル系紫外線硬化樹脂をスピンコートし高圧水銀ランプで硬化することによって75μmの透明カバー層を形成した。
作製した光記録媒体の記録再生評価を下記の通り行った。
【0111】
[記録再生評価]
光記録媒体の記録再生評価は、記録再生光波長λ=406nm、NA(開口数)=0.85、集束ビームスポット径約0.42μm(1/eの強度となる領域)の光学系を有するパルステック社製ODU1000テスターを用いて行った。
【0112】
光記録媒体は、線速度29.50m/s(以下、6xと記載)で回転させ、記録光のパワーを変化させて記録を行った。再生は線速度を4.92m/sとし、再生光のパワーは0.70mWとした。記録には、マーク変調信号(1−7PP)を用いた。基準クロック周期Tは15.15ns(チャンネルクロック周波数66MHz)とした。
【0113】
(ジッタ)
ジッタ測定は、記録信号をリミット・イコライザーにより波形等化した後、2値化を行い、2値化した信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジと、チャンネルクロック信号の立ち上がりエッジとの時間差の分布σをタイムインターバルアナライザにより測定し、基準クロック周期をTとして、σ/T×100(%)をジッタと定義した(データ・トゥー・クロック・ジッタ Data to Clock Jitter)。ジッタの値が小さいほど、エラーの発生が少ない記録再生が可能となる。
【0114】
(パワーマージン)
パワーマージンは、ジッタ値が最適、即ち最小となる記録パワーをPwo、ジッタの絶対値が10%となる記録パワー値における、Pwoより高パワー側の記録パワーをPwh、低パワー側の記録パワーをPwlとした場合に、((Pwh−Pwl)/Pwo)×100(%)と定義して求めた。パワーマージンの値が大きいほど、記録再生時における記録パワーの変動に対するジッタのマージンが大きく、優れた光記録媒体であるといえる。実用に際しては、パワーマージンが30%以上あることが好ましい。
【0115】
[結果]
界面層にIn−SnO−Nb(75.0:15.3:9.7mol%)を用いたものを実施例1、In−SnO−Nb(79.0:16.2:4.8mol%)を用いたものを実施例2、In−ZnO−Nb(59.9:22.7:17.4mol%)を用いたものを実施例3、ITOを用いたものを比較例1として、Aa/(Ma+Aa)で表わされる副成分群Aの含有率、及び上記のようにして求めたパワーマージンの値を表1に示す。
【0116】
【表1】

6x記録において、比較例1のパワーマージンに比べて、実施例1〜3のパワーマージンは30%以上の高い値が得られていることが判る。
即ち、本発明の界面層を用いることにより、高速記録におけるパワーマージンが改善されていることが明らかである。
【符号の説明】
【0117】
20,100 光記録媒体
21,101 基板
22,102,112 記録層
23,103 反射層
24,111 カバー層
25 カバー層溝間部
26 カバー層溝部
27,107 記録再生光ビーム
28,108 対物レンズ
29,109 記録再生光ビームが入射する面
30,130,131 界面層
113 半透明反射層
114 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
案内溝が形成された基板と、
前記基板上に光反射機能を有する反射層と、
未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、
前記記録層に接する界面層と、
前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層とをこの順に備えた光記録媒体において、
前記界面層が、(In−SnO)及び/又は(In−ZnO)を主成分Mとして含有し、更に、Nb、Ta、TiO、Y、及びLaFからなる副成分群Aより選ばれる少なくとも1種の材料を含有することを特徴とする、光記録媒体。
【請求項2】
前記界面層における、主成分Mの構成分子のmol数をMa、副成分群Aの構成分子のmol数をAaとした時、Aa/(Ma+Aa)が0.02から0.50であることを特徴とする、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記界面層における、主成分Mの構成分子のmol数をMa、副成分群Aの構成分子のmol数をAaとした時、Aa/(Ma+Aa)が0.04から0.20であることを特徴とする、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記界面層が、Nbを含有することを特徴とする、請求項1〜3記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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