光誘導性損傷から網膜を保護するための方法およびシステム
本出願は、特に、網膜の光の管理システムに関し、それは、危険な波長の除去を可能にすると同時に、使用者の目を透過することが許される残りの光の強度をコントロールすることを可能にする。1つの実施形態において、そのシステムは、糖尿病患者の目に到達する光強度の総量を減らすように光の存在下で調整されることができるフィルターを含む1つの眼鏡を含む。本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、500nmよりも短い波長の光をブロックする少なくとも1つの固定フィルターを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、同一の発明者らにより2007年7月20日に出願された米国仮出願第60/929997号の119eの下での恩典を主張するものである。
【0002】
(発明の分野および背景)
本発明は、幾つかの実施形態においては、使用者の網膜に達する光の強度をコントロールするためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、但し限定するものではないが、使用者の眼に到達する全体的な光の強度を予め定められた最大値以下に維持した状態で、青色光(および/またはもっと大きい波長の光)をフィルターにかけて除去するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は非常に広範な衰弱性疾患である。米国だけで2千万人以上の成人および子供(人口の7%)が糖尿病を有しており、また、1型糖尿病および2型糖尿病の両者の診断率は高まっている。身体が血液中のグルコースレベルを適切にコントロールすることができないことによりもたらされる多くの症状発現のうちの1つが網膜の劣化であり、それは、しばしば失明をもたらす。北米においては、糖尿病が65歳以下の人々での失明の原因の第1位である。糖尿病性網膜症は、早期の背景的段階から後期の重篤な視力を脅かす段階である増殖性糖尿病網膜症(PDR)までゆっくりと進行する、真性糖尿病(DM)の1つの合併症である。
【0004】
増え続ける一連の証拠は、糖尿病による網膜の一次的損傷が高血糖症により引き起こされ、網膜細胞のアポトーシスを伴う網膜機能障害によって反映されることを示している。高い血糖レベルはフリーラジカルの形成につながり、結果として、眼の小さな血管を含めた種々の血管に損傷をもたらし得る。そのような損傷が糖尿病性の網膜症をもたらす。糖尿病性網膜症になると、網膜の幾つかの血管が失われ、その一方で、他の血管は血液を漏出する。その結果が網膜腫脹であり、酸素および栄養素の供給が遮断されることがある。最終的に、網膜は、損傷を被った血管に取って代わるべく、新たな血管を発生させ得る。新たな血管は、以前の血管ほど強くはなく、もっと破損しやすく、眼内出血を引き起こしやすい。
【0005】
糖尿病性網膜症によって引き起こされる損傷は回復不能であると考えられている。それでも、網膜へのさらなる損傷を遅延化または防止するための幾つかの方法が存在する。硝子体切除術、または網膜を標的としたレーザー手術は、網膜とかかわり合っている漏れやすい血管を塞ぐために用いられる。これに加え、高血糖症が長期間にわたって持続するのを防ぐための適切なインスリンの使用は、さらなる眼の損傷を引き起こすフリーラジカルの生成を低減させるのに役立つ。
【0006】
米国特許第4878748号および第5617154号において、Hoffmanは色付きのコンタクトレンズについて開示しており、それらは、500〜700ナノメートルの波長の光には予め定められたレベルの透過率を持たせることで、200〜500ナノメートルの波長の光がコンタクトレンズを透過するのを防ぐものである。Hoffmanは、水晶体、角膜および網膜に対するUV関連損傷について開示しており、さらには、UV関連損傷と黄視白内障とのかかわり合いについても開示している。彼は、さらに、青色光が黄斑変性症および網膜損傷に関与していることについても述べている。「特別な必要条件」を持った人々は、UVおよび青色光の保護に関する付加的な必要条件を有している。
【0007】
米国特許第5177509号において、JohansenおよびDiffandafferは、300ナノメートルの波長から450、500、515、535または550ナノメートルの最終的上限波長までの光を効果的に取り除くサングラスについて開示している。
【0008】
Optiplas(www.optiplas.co.il)は、糖尿病性網膜症および黄斑変性症に罹患している患者用の明るい色の付いた眼鏡と暗い色の付いた眼鏡との両方の眼鏡を提供している。それによれば、UVおよび青色光が眼に到達するのを低減させるため、これらの状態のどちらかを呈している患者のためのレンズとしてCPF 527およびCPF 511カットオフレンズが推奨される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、例えば網膜の損傷および/または網膜のさらなる劣化が発生するのを防止するために、人間の眼に到達する光の量および/または波長に関する特徴を管理するための方法および装置が提供される。
【0010】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、100ルクス〜5000ルクスに及ぶ照度条件の範囲にわたって、眼に到達する光の強度を、第1の予め設定された値以下であって、かつ、第2の予め設定された値以上になるように能動的に維持するように構成されたアイウェアが提供され、ここで、第2の値は関数的に利用可能であって、かつ、30ルクス以上である。
【0011】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、電気的にコントロールされる少なくとも1つの光減衰素子、少なくとも1つのセンサーおよび、前記センサーからの光強度信号に応じて前記光減衰素子をコントロールする、少なくとも1つの回路構成を含んでいる。
【0012】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、累積損傷の評価に従って、前記到達強度を様々に変動させる。
【0013】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成はアラームを含んでいる。
【0014】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記センサーは、前記アイウェアから物理的に分離している。
【0015】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、前記予め設定された値のうちの少なくとも1つに関してプログラム可能である。
【0016】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、そこに入射する光の強度に応じて光学密度を変える少なくとも1つの非線形染料を含んでいる。
【0017】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、500nmよりも短い波長の光をブロックする少なくとも1つの固定フィルターを含んでいる。任意選択的には、前記ブロックされた光は、前記第2の予め設定された値以下にブロックされる。
【0018】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、550nmよりも大きな波長の光をブロックする少なくとも1つの可変型光フィルターを含んでいる。
【0019】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼損傷モニターが提供され、該モニターは:
(a)光センサー;
(b)前記センサーからの光読み取り値を累積し、かつ、光誘起性損傷の指示を発生する回路構成;および
(c)前記指示に反応する出力装置;
を含んでいる。
【0020】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記出力装置はアラーム装置を含んでいる。
【0021】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記出力装置は、眼に隣接して取り付けることができるように適合されている少なくとも1つの光学的な光フィルターを含んでいる。
【0022】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、異なる波長においては異なる読み取り値の累積を行う。
【0023】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼に及ぼす損傷を防止または低減する方法が提供され、該方法は:
眼と関連する能動的な光学素子を利用して、眼に到達する光の強度を、屋内活動および屋外活動の両方に対して、ある損傷レベル以下に維持するステップ
を含んでいる。
【0024】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、該方法は、特定の患者に対して前記損傷レベルを決定するステップを含んでいる。
【0025】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、該方法は、前記維持ステップにおいて、損傷レベルと機能的に有用なレベルをトレードオフするステップを含んでいる。
【0026】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、維持ステップは、その時間のうちの少なくとも50%について維持することを含んでいる。
【0027】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼球モニタリング方法が提供され、該方法は:
眼に到達する光の強度を長期間にわたって追跡するステップ
を含んでいる。
【0028】
任意選択的には、前記追跡ステップは複数の波長で追跡することを含んでいる。
【0029】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、糖尿病患者における網膜損傷を防止し、かつ、白内障の進展を防止するための方法が提供され、該方法は、以下のステップ:
患者を選択するステップ;および
前記患者に光フィルターを提供するステップであって、前記光フィルターが光フィルターのレンズを透過する光に対して、最大光強度カットオフ値を有している、ステップ
を含んでいる。
【0030】
任意選択的には、前記最大光強度カットオフ値は150ルクスである。任意選択的には、または代替的には、該方法は、300〜530ナノメートルの波長を有する光のうちの少なくとも90%を除去するためのフィルターを提供するステップを含んでいる。
【0031】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記光フィルターは光屈折性の材料でできている。
【0032】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、必ずしも限定であることは意図されない。
【0033】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含むことができる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたタスクを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。本発明の方法が、眼鏡、コンタクトレンズ、または他の光学的に透明な表面において実施されうることは理解されるだろう。
【0034】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令として実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書中に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示として添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、時刻または場所の関数としての光強度値リストである。
【図2】図2は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の1つの例証的な実施形態での光強度透過率のグラフである。
【図4】図4は、本発明と関連するレンズフィルターの光フィルタリング能力を示すグラフである。
【図5】図5は、コントローラー素子が光の管理において使用される眼鏡に付随する、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図6】図6は、コントローラー素子が光の管理において使用される眼鏡から物理的に分離している、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図7】図7は、光の管理において使用されるレンズおよびフィルターが、クリップオン型素子の形態で適用される、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図8】図8は、染料が光のフィルタリングおよび全光透過率のコントロールに使用される、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図9】図9は、糖尿病患者にとって潜在的に有害な光のレベルとの対比における有用な可視光の範囲を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明に従って使用者のための眼鏡を作成する方法のフローチャートを示している。
【図11】図11Aおよび11Bは、日中および夜間または屋内の両方で実際に使用したときの、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。
【図12A】図12Aは、本発明の幾つかの実施形態によるフィルタリングを伴った場合と伴わなかった場合の眼に対する損傷を比較する、ラットでの実験の組織学的結果を示している。
【図12B】図12Bは、本発明の幾つかの実施形態によるフィルタリングを伴った場合と伴わなかった場合の眼に対する損傷を比較する、ラットでの実験の組織学的結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、幾つかの実施形態においては、光の管理システムに関し、より詳細には、但し限定するものではないが、使用者の眼に到達する光の波長と量との両方を長期間にわたってコントロールする眼鏡に関する。
【0037】
本発明者らは、UVおよび青色光が眼に到達するのをブロックすることは可能であるものの、眼に到達する光の総量および/または眼に到達する光のピーク値を長期間にわたってモニタリングすることおよび/またはコントロールすることが重要であり得ることに気付いた。UVおよび青色光だけが、幾つかの疾患状態と関連する脆弱化した網膜に損傷を引き起こすのではなく、高強度でのもっと長い波長の光および/または長期間にわたる露光も有意な網膜損傷を引き起こし得ると仮定されている。血糖症と高い光強度との間には、網膜劣化の一因となるフリーラジカルの生成に関して、相乗挙動が存在するということが仮定されている。UVおよび青色光は、一般集団において(白内障を含めた)眼損傷に関与しているものと見なされているが、高い光強度の損傷作用は、黄斑劣化および(網膜症を伴わない)糖尿病などの疾患ならびに/または、例えば乏しい血流もしくは背景的な損傷レベルにより眼の自然治癒メカニズムが損なわれている他の疾患などによって網膜が損なわれている個体においては一層顕著であると思われる。
【0038】
任意選択的には、または代替的には、(たとえ非青色光であったとしても)高い光強度への長期間の暴露によって引き起こされる損傷は、光強度をコントロールおよびモニタリングする治療方式に休養時間を含めることにより、部分的にまたは完全に回復させることができる。具体的に、高い光強度による眼損傷のリスクを負っている個体は、定期的な「休養」期間を取ることが勧められ、その期間中には、眼に到達することが許容される光の強度が有意に低減される。網膜損傷はフリーラジカル形成の副産物であると考えられるため、眼が高レベルの光に暴露されない休養期間は、理想的には、眼においてフリーラジカルの管理および損傷の修復が行われることが可能であろう。(屋内および屋外のどちらの場合にも、また、任意選択的には24時間ずっと絶え間なく)眼に到達することが許容される光の量をコントロールすることにおいては、機能上必要な最小量の光と持続的な網膜劣化を防ぐために許容される光の最大レベルとの間でのトレードオフを認識すべきである。任意選択的には、光コントロールシステムは殆どの非睡眠時間の間作動する。屋外に居るときだけ光をコントロールする場合や、1日のうちの一部分の間だけ光をコントロールする場合は、必ずしも、損なわれている網膜に充分な保護効果をもたらすとは限らないであろう。幾つかの実施形態においては、1日のうち、少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、10時間またはそれらの中間的な数字の時間の間、光のレベルがコントロールされる。該コントロールは、任意選択的には、時間に関して連続的である。任意選択的には、起きている時間の少なくとも30%、50%、80%もしくはそれ以上の間、および/または屋外に居る時間/日中の少なくとも60%、70%、80%もしくはそれ以上の間、光のレベルがコントロールされる。任意選択的には、そのようなコントロールは、本明細書で開示されている如き自動化された手段によってではなく、患者への指示により達成される。本発明の1つの例証的な実施形態においては、光のレベルのモニタリングおよび/またはコントロールは、長期間にわたって行われ、例えば数日間または数週間(例えば、感受性を原因とする薬物療法の場合)、および数ヶ月間または数年間(例えば、糖尿病患者の場合)などにわたって行われる。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態は、これらのカットオフ値よりも長い波長の透過率をコントロールしながら、300ナノメートル〜500、550、600または650ナノメートルの波長のカットオフを可能にする。カットオフ波長は、一般的に、入射光の強度および透過光の強度によって測定したときに、90%または99%がフィルターによって除去される。ある特定の個人が関連する特定の必要条件および医学的問題により、本発明の幾つかの実施形態においては、使用者のニーズおよび医学的健康状態に関連付けられた適切な光の管理を行うことができるように、眼鏡または他の装置を使用者に合わせてよい。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態によれば、光に関する2つの要因が糖尿病被験者における網膜損傷を防止するのに関係していることが提案されている。第1の要因は、波長が300ナノメートル〜高くは650ナノメートルの、より高いエネルギーを有している殆どの光をフィルタリングすることである。任意選択的には、より高いエネルギーの光は、目の色素による最大吸収のピークにおける作用が恐らくは連続的に変動することにより、任意選択的には突然変化することにより、より低いエネルギーの光よりも、1つの光子につきより多くの損傷を引き起こすものと推測されている。第2の要因は、何らかの瞬間における、さらには、ある与えられた期間にわたる、眼に到達する可視スペクトル域における残りの波長からの光の総量に関する。眼に到達する光の強度を予め定められた閾値(任意選択的には波長依存性であり、任意選択的にはすべての波長に対して単一の値で近似され、または幾つかの波長に対して少ない数の閾値で近似される)以下に保つことにより、光誘導性フリーラジカルが形成される可能性を有意に低減させることができる。これに加え、非常に低い光強度が眼に到達することが許容される「休養」期間を含めることにより、フリーラジカル形成および/または損傷からの回復が可能になる。以下で説明されている研究において使用されたラットの場合、(300〜530ナノメートルの波長からの光を少なくとも75%低減させると同時に)光強度を40ルクスまたはそれ以下にすることにより、有意に網膜を健康な状態に保てることが判明した。この40ルクスという値は、例証的なものであって、眼に到達することが許容される光のカットオフ値を限定すべく意図されたものではなく、そのようなカットオフ値は、充分に使用者特異的であることができ、さらには、光条件依存性であることができる。従って、UVおよび青色光(および/またはもっと長い波長の光)のフィルタリングと眼に到達することが許容される残りの光のコントロールとの組み合わせが、単独で低波長の光のみをフィルタリングする方法よりも大きい、有意な健康上の便益性をもたらすことが示されている。
【0041】
適切な光のコントロールを達成するために、本発明の幾つかの実施形態は3つの構成要素を有している(それらは一体化されていてもよい):UVおよび青色(またはより長い波長の)光(波長が約300〜530ナノメートルの光)のうちの90〜99%を除去するためのUV/青色光フィルター;残りの光スペクトルのうちのどのくらいの量が眼へ透過することを許容するのかをコントロールするための光変調フィルター;および、眼に到達する最大光強度を予め定められた値かそれ以下に保つためにフィルターをコントロールする光強度計測/コントローラー素子。幾つかの実施形態においては、コントロールするのではなく、またはコントロールすることに加え、モニタリングが行われる。本発明の1つの例証的な実施形態においては、フィルターまたは染料を付随した眼鏡が、単独で作動するかまたは光センサーおよびコントロール素子との組み合わせにおいて作動するかのどちらかにより、眼に到達する透過光を予め定められた値の範囲内に連続的に維持する。大気光源および環境光源から利用可能な光は、恐らく、医学的に損なわれた状態の網膜を有している個人にとって許容されるレベルよりも高い強度の光であると考えられるため、眼に到達する光のそのようなコントロールは、屋内および屋外のどちらのケースにおいても適用することができる。休養期間は、予め定められた期間にわたる予め定められた量の光への暴露から眼が回復することを可能にするための本発明の幾つかの実施形態の能動的な部分であり得る。本発明の幾つかの実施形態は眼鏡として実現されてよく、前記眼鏡はフィルターを含んでおり、さらに、フィルターは、染料を含んでいてもよいし、または光センサー/コントローラー素子によってコントロールされてもよい。これらの実施形態による眼鏡は、眼に到達する光の総量を、予め定められた1つの特定値ではないにしても、予め定められた値の範囲内に維持すべく、眼に到達する光をコントロールする。
【0042】
別の実施形態においては、ブロックされる光の波長は異なり、例えば450、470、480、500もしくは515に及ぶに過ぎず、またはそれ以上の波長、例えば550、570もしくは600にも及ぶ。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態の範囲内には、青色の波長よりも長い光もブロックすることおよび/または全光強度をブロックすることにより、損傷(例えば、網膜への損傷または白内障)が発生または増大するのを防止する方法が含まれる。幾つかの場合においては、そのようなブロック機能は、それを必要としている患者に、例えば糖尿病に罹患している患者に、適切なフィルタリング用のサングラスを処方することにより達成される。任意選択的には、そのような処方は屋内で使用する場合の指示事項を含んでいる。任意選択的には、眼鏡は、様々な状況に合わせた複数対の眼鏡および/またはクリップオン型として提供される。
【0044】
上記で種々の仮定が為されているが、本発明の様々な実施形態は、必ずしも該仮定の正確さによって制限されるものではないことを認識すべきである。寧ろ、例えば、本明細書で開示されている如き装置および/または方法は、該仮定が間違っていたとしても、使用することができる。
【0045】
添付図面のうちの図2、図5〜8に描かれているような本発明の幾つかの実施形態についての一層良好な理解を得ることを目的として、最初に、図2に描かれている如き1対の光管理用眼鏡の構造および働きについての言及が為される。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0047】
次に、添付図面を参照しながら説明すると、図2は、光フィルターを伴った眼鏡を含む、本発明の1つの実施形態の概略図を描いている。網膜のための光コントロールシステム(200)は、光変調フィルター(235)、光変調フィルターと組み合わされていてよいUV/青色光フィルター(238)、および任意の光強度センサー(260)を付随した眼鏡(210)を含んでいる。眼鏡は、任意の耳掛け(220)および任意の光学レンズ(230)をさらに含んでいてよい。任意のレンズ(230)はどのような形状を成していてもよく、また、側方から迫りくる入射光(250)から防護する「包み込み」式の側方保護具もさらに含んでいてよいことが理解されよう。眼鏡(210)はどのような材料でできていてもよく、また、処方型または非処方型のレンズ(230)を含んでいてよい。レンズ(230)に付随したフィルターは、染料をベースとしたフィルター、液晶をベースとしたフィルター、または前記光変調フィルター(235)を透過する光強度の変調を可能にする他の適切な構造物であってよい。光変調フィルター(235)はレンズ(230)と一体になっていてもよいし、またはレンズ(230)の片側もしくは両側に配置された状態でレンズ(230)から物理的に区別されるものであってもよい。図2に示されている素子は便宜上示されているものであって、物理的に異なる様々な配置であってよく(例えば、前から後への順番を変えることができる)、または単一の素子にまとめられていてもよい。
【0048】
網膜のための光コントロールシステム(200)は、任意選択的には、入射光(250)の強度を測定する光強度センサー(260)を含んでいてよい。光強度センサー(260)は、入射光および/または眼への途中でUV/青色光フィルター(238)および光変調フィルター(235)を透過した光を測定することができる。光強度センサー(260)は、さらに、または代替的に、実際に使用者の眼の瞳孔に到達する光を測定することができる。任意選択的には、センサー(260)は、瞳孔のサイズを測定し、その後、網膜の黄斑領域または他の領域に到達する光の量を見積もるためのセンサー(例えばカメラ)を含んでいる。光強度センサー(260)は、すべての可視波長またはその一部を測定することができる。任意選択的には、センサー(260)は、例えばそれぞれが狭帯域フィルターを伴う複数の光センサーを含んでおり、複数の波長、例えば2個、3個、4個、5個またはそれ以上の波長において光強度を測定する。任意選択的には、角膜および/または網膜に到達する光の量は、例えば予備試験および/または患者によって使用された光学補正の光学的な特性に基づいて見積もられる。任意選択的には、または代替的には、前記実際の量が、例えばセンサーを用いて、例えば1回測定されてキャリブレーションに使用され、または連続的に測定される。
【0049】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、光強度センサー(260)は、光フィルター(235)をコントロールして、前記光変調フィルター(235)を透過する光強度を予め定められたレベルにまで低減することができる。本発明の1つの例証的な実施形態においては、フィルター(235)は、LCDタイプのシャッター(例えば、その間に偏光変化型液晶を伴った2つの偏光子)を含んでおり、その光学密度はそこに加えられる電圧の関数である。このコントロールシステム(200)は、例えば、バッテリーなどの電源、ならびに光の強度レベルおよび/または閾値および/または他の光ターゲットに従って電圧を設定する回路構成、例えばコントローラーを含んでいる。
【0050】
光強度センサー(260)は、例えば眼鏡(210)の外側または内側に配置されてよく、一般的には、眼鏡(210)の光変調フィルター(235)に到達した光の強度および/または眼鏡の光変調フィルター(235)を透過した光の強度のいずれかを適切に決定することができるように配置される。図2に示されているように、光強度フィルター(260)は、便宜上の理由のみで眼鏡(210)の内側に図示されているが、眼鏡の別の箇所に配置されていてもよいし、または代替的に眼鏡から分離して(図示せず)、例えばイヤリングもしくはネックレスまたはリストバンドとして配置されてもよく、また、任意選択的には、眼鏡に設けられたレシーバーへの無線リンクを伴っていてもよい。上記コントローラーは、センサーまたは眼鏡に付随してよい。図2に概略的に示されているように、光強度センサー(260)は、光変調フィルター(235)および任意のレンズ(230)を透過した入射光(250)の強度を測定するため、レンズ(230)の間に配置される。
【0051】
光強度センサー(260)は、1つまたは複数の波長を測定することができる。さらに、光強度センサー(260)は、単一の位置または複数の位置に配置された複数の光強度センサーとして実現されてもよい。光強度センサー(260)は、眼鏡(210)の外側に配置された場合、入射光(250)を測定し、光変調フィルター(235)を透過する光強度の量を調節するために、前記光変調フィルター(235)を加減する。あるいは、図2に示されているように、光強度センサー(260)が眼鏡(210)の内側、即ち、使用者の眼(255)に面する側に配置されている場合には、光強度センサー(260)は、使用者の眼の方向へ光変調フィルター(235)を透過することが許容される光を低減または増大させるために、光変調フィルター(235)をコントロールすることができる。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態が先行技術の「サングラス」などに対する1つの潜在的な利点は、レンズを透過して使用者の網膜に到達する光の強度をコントロールする能力を有していることである。そのようなものとして、光強度モニター(260)は、光フィルターおよび/またはレンズ(230)に付随している染料を変性する特性をさらに含むことができる。前記変調は、入射光(250)が有していた光強度の、使用者の特定の健康上の必要条件に合わせて選定される予め定められた値への適切な低減を可能にする。あるいは、本発明の幾つかの実施形態は、任意のレンズ(230)を透過して使用者の網膜に到達することが許容される光を変調するために光強度センサー(260)からのデータを使用する、別個のコントローラー素子(図5、図6、図8および関連する実施形態を参照のこと)を有していてもよい。レンズ(230)または付随したUV/青色光フィルター(238)は、300〜530nmの波長の光のうちの90%より多くをフィルタリングして取り除くであろう。網膜のための光コントロールシステムを適切に機能させるためにバッテリーおよび電子回路(以下で開示)が含まれていてよい。
【0053】
光強度センサー(260)は、単独で、または個別のコントローラー素子と組み合わせて、光の強度またはある期間にわたる光強度の積分値を測定することができる。さらに、光強度センサー(260)は、300〜700ナノメートルの波長を有する光の個々の波長に関する光強度を測定することができる。光強度センサー(260)は、ある与えられた瞬間において、または予め定められたある期間にわたって、光変調フィルター(235)を透過することが許容される光の固定または加減を行えるようにプログラム可能であってよい。光強度センサー(260)は、直接的に、またはコンピュータもしくは他の適切な電子装置の媒体を通じてプログラム可能であってよい。光強度センサー(260)は、医療専門家による分析用に光強度データを保存するためのプログラム可能型/記録可能型の記憶装置を含んでいてよく、また、さらに、眼鏡(210)に関する潜在的な問題または光に対する眼の(時間もしくは量のいずれかにおける)限度を超えた暴露について使用者に注意を喚起するためのアラームプログラムまたは安全特性を含んでいてよい。本発明の1つの例証的な実施形態においては、本システムは、無線リンク(例えばWiFi、赤外線またはブルートゥース)ならびに閾値および/またはターゲット光機能などの設定レベルが保存されるテーブルなどの記憶装置を含んでいる。任意選択的には、データ転送用および/または本システムの再充電用にUSBコネクターが設けられている。図2に示されている実施例では、コントローラー270、例えばマイクロコントローラーが設けられている。コネクター277は、センサー260からの光の測定値をコントローラーへ提供し、その後(任意選択的には)、該コントローラーが光フィルターをコントロールする。任意選択的にはバッテリー279が設けられており、このバッテリー279は、任意選択的には、再充電可能でありおよび/または手作業で交換可能でありおよび/または光起電力電池(図示せず)によって電力供給される。任意選択的には、様々な設定レベル、例えば閾値および休養のための時間のテーブルなどを保存するための記憶装置278が設けられている。
【0054】
光変調フィルター(235)は、その性状が、例えば電子的、化学的または機械的なものであってよい。光フィルターは、本発明の1つの実施形態の使用者の眼(255)に到達することが許容される入射光(250)の量を低減する。光変調フィルター(235)は、眼鏡(210)を透過して使用者の眼(255)に到達することが許容される光の量を低減または増大させるべく電子的に加減することができる液晶素子として実現されてよい。あるいは、光変調フィルター(235)は、光変調フィルター(235)に到達する光強度に対して反比例関係で光透過率を変化させる化学的な染料として実現されてもよい。光変調フィルター(235)は、代替的に、光強度センサー(260)によって得られた光強度測定値に応じて、眼鏡(210)を透過することが許容される光の量を物理的に低減または増大させる機械的な素子、例えばシャッターなどを含んでいてもよい。UV/青色光フィルター(238)および光変調素子(235)は、便宜上の理由のみで、別個な素子として示されている;それらの素子は組み合わされてよく、また、潜在的には、本発明の1つの実施形態における任意のレンズ(230)と組み合わされてもよい。
【0055】
光変調フィルター(235)は、任意選択的には、UVおよび青色光フィルターを含んでいてよい。図3は、本発明の幾つかの実施形態による網膜のための光コントロールシステム(200)での、典型的な光波長の透過率のグラフを示している。530ナノメートルを越える波長は、光強度センサー(260)によって追跡され、均等に、またはそれぞれの波長が眼にもたらすと考えられる損傷に対して重み付けされた割合で、光変調フィルター(235)を透過することが許容され得る。ブロックアウトされた上記それぞれの波長は損傷の重大性に関するある重みを有しており、また、光変調フィルター(235)を通じる波長のフィルタリングは非線形であってよく、すべての透過光に対して一様に実施されてよく、または眼鏡(210)を透過することが許容されるそれぞれの波長に従って適用されてもよい。本発明の1つの例証的な実施形態においては、記憶装置278は、複数の波長のうちの各波長に対する相対的な損傷度および/または各波長に対する望ましい閾値を指示する一連の重みを含んでいる。幾つかの実施形態においては、より長い波長だけでなく、すべての波長が可変量でブロックされる。
【0056】
図4は、2つの一般的な光源からの入射光の強度および使用者の網膜に到達する際の光の強度を示している。このグラフの場合、予め定められた光の強度値は50ルクスに固定された。実際に予め定められた光の強度値は、使用者間および/または暴露時間に基づいておよび/または波長に基づいて異なっていてよく、また、使用者の眼の予備試験において、および/または集団および/または疾患の研究に基づいて決定されてよいことが理解されよう。本発明の幾つかの実施形態は、明るく照明された家またはオフィスなどのより低い強度の光のフィルタリングだけでなく、太陽光などの高い強度の光のフィルタリングをも可能にする。幾つかの実施形態によれば、日中、糖尿病患者の使用者が遭遇する殆どの状況は、予め定められた許容可能なカットオフ値よりも高い強度の光を提供しているものと仮定されている。矢印(480)は、周囲の環境光源からの光が、使用者の眼に到達することが許容される、予め定められた光強度値(この実施例においては50ルクス)にフィルタリングされる様子を強調して示している。
【0057】
幾つかの実施形態によれば、使用者は、起きている殆どの時間、内部および外部の両方で、本発明に関連する眼鏡、クリップまたはコンタクトレンズを装着するものと仮定されている。外部の場合、網膜のための光コントロールシステム(図2の200)は、10000ルクスまたはそれ以上から(例えば)約30〜150ルクスの予め定められた値に光強度を有意に低減する。ある患者/疾患にとって有用であり得る、別の例証的最小閾値は、50ルクス、300ルクス、250ルクスおよび100ルクスである。例証的な最大閾値は、100ルクス、150ルクス、350ルクス、500ルクスおよび800ルクスである。屋内の場合、網膜のための光コントロールシステム(200)は、環境的な光強度が屋外で見られる場合よりも低い大きさのオーダーであるにもかかわらず、同じ結果を達成する。本発明の幾つかの態様におけるこの特徴、即ち、屋内で「サングラス」を装着することは、ユニークであり、かつ、図1に示されているように、殆どの屋内での照明されている空間は数百ルクスの光強度を呈するため、適切なアイケア管理にとって有用である。
【0058】
ラットでの研究は、70ルクスを越える光は糖尿病ラットとの関連における網膜にとって有害であり、これは、本発明の幾つかの実施形態の観点において、屋外だけでなく、屋内でも光をフィルタリングする必要性があることを示唆している。殆どの場合、「サングラス」はUV光が存在する屋外で使用されるが、本発明の幾つかの実施形態は、損傷を被っている網膜を保護するためおよび/または眼に損傷が及ぶのを防止するために、屋内での光および屋外での光の両方に対して適用することができる。そのようなものとして、本発明の幾つかの実施形態によれば、使用者は、日中の時間ずっと、および恐らくは夜にも屋内で、眼鏡(210)または本明細書中で開示されているのと同様な装置を装着するものと仮定されている。本発明の1つの例証的な実施形態においては、例えば糖尿病患者および黄斑変性患者での付加的な網膜損傷を防止するため、環境光の強度が医学的に予め定められた網膜損傷閾値よりも高い実質的にすべての状況において、光の遮断、コントロールおよび/またはモニタリングが用いられる。
【0059】
次に図5に注意を向けると、図5は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。網膜のための光コントロールシステム(500)は、レンズ(530)、UV/青色光フィルター(538)および光変調フィルター(535)を含む眼鏡(510)として実現されている。さらに、光強度センサー(560)、さらには、コントローラー素子(570)が設けられている。コントローラー素子(570)は眼鏡(510)に一体化されており、眼鏡(510)のあらゆる場所に配置されていてよい。便宜上の理由のみで耳掛け(520)上に図示されている。コントローラー素子(570)および光強度センサー(560)は単一の電子的な素子(図示せず)として実現されてもよい。コントローラー素子(570)は、光強度センサー(560)によって記録された入射光(550)についての情報を受信する。あるいは、光強度素子が使用者の眼(555)に面している場合には、そのコントローラー素子は、UV/青色光フィルター(538)、任意のレンズ(530)および光変調フィルター(535)を透過した光の強度についての情報を受信する。コントローラー素子は、眼鏡(510)を透過して使用者の眼(550)に到達する(530ナノメートルを越えるすべての波長の)光の強度を増大または低減させるために、任意のレンズ(530)に付随した光変調フィルター(535)をコントロールすることができる。コントローラー素子(570)および光強度センサー(560)は単一の素子として実現されてよく、ここでは、便宜上の理由のみで2つの別個な素子として示されている。コントローラー素子(570)には、眼鏡(510)を透過して使用者の眼(555)に到達し得る光強度の1つのカットオフ値または複数のカットオフ値が予めプログラムされていてよい。そのようなものとして、コントローラーは、レンズ(530)を透過して使用者の眼に到達することが許容される非青色光の量を抑制する目的で、眼鏡(510)に付随する染料または他の光変調フィルター(535)をコントロールすることができる。UV/青色光フィルター(538)は、コントローラー素子(570)とは無関係に機能してもよいが、任意選択的には、コントローラー素子(570)の制御下にあってもよい。コントローラー素子(570)は、他の形態を取ることも可能であるが、一般的には、チップとして実現される。
【0060】
図6は、任意のレンズ(630)および入射光(650)から300〜530ナノメートルの波長の光のうちの90%より多くの光を除去するUV/青色光フィルター(638)を伴った眼鏡(610)を含んでいる、網膜のための光コントロールシステム(600)の概略図を示している。別の実施形態においては、そのような光のうちの別のパーセンテージが除去されてよく、また、任意選択的には、より短い波長でより大きなパーセンテージが除去されてよい。例えば、すべてのそのような光のうちの80%が取り除かれ、またはUVのうちの99%および520nmの波長の光のうちの83%が取り除かれる。さらに、任意のレンズ(630)に付随する光変調フィルター(635)が使用者の眼(655)に到達する光強度を低減する。任意選択的には、より短い波長の光における低減のうちの幾分か、例えば20%、50%もしくはそれらの中間的な割合、またはもっと小さな割合もしくはもっと大きな割合の低減が、光変調フィルター(635)によって達成される。入射光(650)の強度は、光強度センサー(660)によって測定することができる。あるいは、UV/青色光フィルター(638)、任意のレンズ(630)および光変調フィルター(635)を透過する光の強度を、前記光が使用者の眼(655)に到達する前に測定することもできる。光強度センサー(660)から得られたデータは、眼鏡(610)から物理的に分離しているコントローラー素子(670)へ伝えられる。光強度センサー(660)とコントローラー素子(670)との間での通信は有線で行われてもよいし、または無線で行われてもよい。無線による通信モードは、限定されるものではないが、赤外線、Wi−Fiおよびブルートゥースを含む。コントローラー素子(670)が眼鏡(610)から物理的に分離していることによる以下の潜在的な利点のうちの1つまたはそれ以上を利用することができる。第1に、単一または複数の使用者に付随する異なるセットの眼鏡(610、611)に対して単一のコントローラー素子(670)を使用することができる。さらに、本実施形態におけるコントローラー素子(670)は、生体内用または生体外用のグルコースモニター(699)に付随させることもできよう。使用者が(任意のグルコースモニター(699)によって測定した際に)高血糖である場合には、前記グルコースモニター(699)に付随するコントローラー素子(670)は、使用者に到達する光のフィルタリング量を増やすことができる。高い血中グルコースレベルおよび高い光強度は危険な組み合わせで組み合わさって、使用者の眼(655)の網膜へ大量のフリーラジカルを送達することが可能であるため、グルコースモニターからのデータを受信するコントローラー素子は、使用者が高血糖であることが知られているときには、前記使用者に到達する光を低減させることができよう。任意選択的には、非眼のコントロール素子は、使用者に及ぼす不快感を少なくするため、例えばデータ入力を一層便利にするのに役立たせるため、より大きく作ることができる。任意選択的には、美観的な理由がその構成を決定するのに役立つ。
【0061】
レンズ630は、任意選択的には処方レンズであり、および/または光低減用の染料および/または偏光子を付随してよい。
【0062】
休養およびモニタリング
本実施形態および先行する実施形態において開示されている如きコントローラー素子(670)の1つの任意の付加的機能は「休養」に関係していてもよい。眼に休養を与えることは、光への暴露からの回復および網膜内において見出されるフリーラジカルによってもたらされた損傷からの回復を可能にすることが判明している。休養期間は、使用者がある与えられた期間にわたって既に最大量の光に暴露されていることを該使用者に注意を喚起すべく、コントローラー素子に予めプログラムされていてよい。任意選択的には、コントローラーは、休養期間が勧められているときには、眼鏡(610)を透過する光強度の量を低減することができる。休養期間は、能動的な眼瞼の閉鎖、または本発明に従って眼鏡(610)を透過することが一般的に許容されている光強度以下の、プログラムされた光強度の低減を含むことができる。
【0063】
光をコントロールする代わりに、または光をコントロールすることに加えて、本明細書中で開示されているシステムはモニタリング用に使用することもできる。例えば、使用者が(例えば、予め保存されている統合的な閾値または関数に基づいて)損傷を引き起こす可能性がある特定の波長および時間において特定の量の光に暴露されたという判定が為された後に、使用者に対して、休養を取るようにおよび/または光のレベルを低減するように警告が発せられる。任意選択的には、そのような警告は、任意選択的にはコントローラーに接続されたアラーム(図示せず)によりもたらされる。任意選択的には、または代替的には、中間的なオートメーションシステム、例えば半自動化システムが提供され、そこでは、使用者が、例えば1つまたはそれ以上の予め設定された光レベルを伴ったノブまたはスイッチを用いて、光レベルを設定することができ、そして、本システムが、そのような設定レベルおよび/または実際の受光レベルに基づいて、許容される暴露時間を計算する。また、時間に関して視覚の質をトレードオフするのも使用者であってよい。
【0064】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記アラームは可聴信号であり、例えばブザー、または録音もしくは作成された音声であってよい。任意選択的には、アラームは、光遮断設定を変更することおよび/またはフィルターを追加することおよび/または光遮断眼鏡を変えることを患者に指示する。
【0065】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、コントローラーは、波長、時間、強度による損傷および/または休養期間の間における非線形関係をサポートすべくプログラムされている。任意選択的には、そのようなサポートは、区分線形関数近似または曲線適合関数によるものである。任意選択的には、または代替的には、状況のテーブルおよび値と結果との間でのマッピングが保存される。任意選択的には、実際の暴露がモニタリングされ、また、任意選択的には、例えばコンピュータ用のリンク手段(例えばUSBケーブル)を本システムに接続し、保存されているログファイルを読み出すことにより、医師へ報告される。任意選択的には、該ログは、定期的に、例えば1分間に1回、眼に到達した1つまたはそれ以上の波長における(測定された、または見積もられた)光強度に関して更新される。そのようなログを患者の疾患の進行状況と比較し、薬剤学的な処方および/または光レベルに関する処方の変更を決定する際に利用することができる。
【0066】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、使用者(またはセンサー)は、異なる閾値および/または損傷累積計算がより高い血中グルコースレベルおよび/またはインスリンレベルで時間に関して実行されることを可能にするため、(例えば、摂食の指示および患者のグルコース応答および/または薬物治療に基づいて)期待される血中グルコースレベルが指示され得る。任意選択的には、または代替的には、患者が投与される、損傷に対する眼の感度を増大または低減させ得る薬剤に対して、そのようなモニタリングが行われる。
【0067】
クリップオン
次に、図7に注意を向けると、図7は、光変調用にクリップオン(790)素子が用いられている本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。任意選択的には、使用者によって標準的な光学眼鏡(712)が使用者に提供される。前記光学眼鏡(712)は読書用眼鏡もしくは二重焦点眼鏡であってよく、または近視用もしくは遠視用の眼鏡であってもよい。これらの眼鏡は、必ずしも、本発明に関連するいずれかのユニークな素子を含んでいないが、例えばサングラスの場合などのように、光フィルタリング機能を含んでいてもよい。これらユニークな素子はクリップオン(790)素子として提供される。クリップオン(790)は、付随したUV/青色光フィルターおよび光変調フィルター(別々には図示されていない)を有するフィルター(736)を含んでいる。クリップオン(790)は、矢印(795)により示唆されているように、手軽な仕様で眼鏡(712)に取り付けることができる。クリップオン(790)は、光強度センサー(760)、さらにはコントローラー素子(図示せず)を含んでいてよい。クリップオン(790)は既存の眼鏡(712)に取り付けることができ、または使用者の処方眼鏡(712)もしくはその一部を包み込むように設計することもできる。本実施形態の1つの潜在的な利点は、糖尿病患者および他の使用者が、既存の処方眼鏡を、敏感な網膜に到達する光強度を有意に低減する網膜のための光コントロールシステム(700)に即座に換えるのを可能にすることである。本発明の1つの例証的な実施形態においては、クリップオン(790)のフィルター(736)は、任意選択的には当技術分野において公知の染料を用いて、300〜530ナノメートルの波長のUVおよび青色光のうちの90%より多くをフィルターにかけて除去する。任意選択的には、センサー(760)は、例えばワイヤに取り付けられて、眼鏡よりも眼の近くに位置するように構成されており、および/または、例えばセンサーとフィルターとの間にレンズを受け入れるためのスペースを定め、フィルターよりもレンズの反対側に位置するように構成されている。
【0068】
幾つかの実施形態においては、屋外に出かけるときに、使用者は、例えば屋外での光のレベルを50%、70%、90%またはそれ以上低減させるため、例えば上記能動型の眼鏡に、非能動型のクリップオンをクリップオンし得る。任意選択的には、該眼鏡は、そのようなクリップオンを装着した状態で屋外の光レベルの下で作用するように構成されている。
【0069】
色付き眼鏡
図8は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。網膜のための光コントロールシステム(800)は、レンズ(830)を伴った眼鏡(810)を含んでいる。前記レンズ(830)は、前記眼鏡(810)の設計により自動的に暗くして入射光(850)をフィルターにかけて除去することができるだけでなく、UVおよび青色波長の光を共にフィルターにかけて除去することができる色素材料(840:薄片として示されている)を含んでいる。色素材料(840)は、1つまたは複数の独特な染料層として実現されてよい。色素材料(840)はレンズ(830)に統合されていてもよいし、または別の素子として実現されてもよい。例えば、100〜150ルクスの光が眼鏡(810)を透過することが許容されている使用者の場合には、入射光(850)をフィルターにかけて除去して、100〜150ルクスの光がレンズ(830)を透過して使用者に至ることを許容すべく、色素材料(840)が選択され、かつ、レンズ(830)の構造に調合される。本実施形態の利点は、デザインが簡素化されるだけでなく、エレクトロニクスが存在しないことにおける機能性を含む。入射する光の強度を変調することに加え、UV/青色光線をフィルタリングするための適切な例証的染料が以下で開示されている。任意選択的には、または代替的には、現在使用されている染料が、本明細書で説明されている望ましい効果を達成する量および調合設計で適用される。任意選択的には、1つは固定された量の短波長の光をブロックするためのものであり、もう1つはより長い波長の光を可変的にブロックするためのものである、2組の染料が使用される。
【0070】
トレードオフ
糖尿病患者の治療に関連したトレードオフの1つは、虚弱な網膜に潜在的に損傷を及ぼし得る光との対比における日常の機能にとって必要な光のバランスである。網膜のための光コントロールシステムが屋外での歩行や屋内での読書などの日常的な活動に充分な光をもたらさない場合には、使用者はそのシステムを使用しないであろう。一方で、網膜のための光コントロールシステムまたは市販のUV防止用サングラスが、過剰な光強度が使用者の眼を透過することを許容するものである場合には、生命活動の質の向上は、網膜損傷の拡大および潜在的に加速した失明に相当する犠牲を払うことになるであろう。
【0071】
図9は、視覚および本発明の幾つかの実施形態に関する幾つかの主要な光レベルを概略的に示している。具体的には、線Aは、休養することなく連続的に眼に与えられた場合には、使用者にとって危険であると考えられる光のレベルを概略的に表している。線Bは、使用者が先に記載された(期間および光のレベル)通りの「休養」期間を取ると仮定した場合の、本発明の使用者に許容される光のレベルを示している。線Cは、快適な読書に必要な最小の光レベルを示しており、一方、線Dは、歩行などの屋外環境における正常な視覚機能に関連する最小の光レベルを示している。図示されているように、線CおよびDによって表されている如き「必要な光」と線AおよびBによって表されている如き糖尿病患者にとって危険な光のレベルとの間には小さなウィンドウが存在する。従って、糖尿病状態の性状を認識し、かつ、正常な機能にとって必要な光を考慮して、患者に対する光強度のカットオフ値が設定されるであろう。これらの値は絶対的なものではなく、使用者毎に異なり、さらには、同一の使用者であっても、使用者が長時間光に暴露されている場合には異なり得ることに留意すべきである。例えば、数時間屋外に居る使用者は、より低く、従って、読書または適切な機能にとって必要な光の最小レベルによりずっと近づいた危険閾値(図9における線A’)を有している可能性がある。幾つかの実施形態においては、本発明のシステムは、テーブル、関数および/または決定アルゴリズム(例えば、X時間後には閾値をYに低減する)を用いることにより、使用者が経験している光暴露の時間および強度に応じて、許容される光強度カットオフ値を動的に変えることができる。任意選択的には、実際のカットオフレベルは、算出された値(変動性の許容光レベルをもたらし得る)だけでなく、実際の測定値にも依存する。任意選択的には、本システムは、その後に低照度状況が続く短時間の高照度状況を許容すべく設定される。任意選択的には、光レベルが上昇および/または下降しつつあるときに、患者に対して警告が発せられる。任意選択的には、または代替的には、使用者は、コントロール手段、例えばノブまたはリモートコントロールなどを操作することにより付加的な時間を「要求」することができ、任意選択的には、そのような要求をより長めの休養期間によって補う。任意選択的には、そのような要求は、例えば使用者が予めプログラムされた損傷閾値を越えているときには、拒否されることがある。
【0072】
50〜150ルクスの典型的なカットオフレベルが網膜のための光コントロールシステムにおいて適用され、これは、環境から本明細書で開示されている如き眼鏡を透過することが許容されている光の総量が50〜150ルクスの間であることを意味している。これらの値を強制的なものとするために、本発明の幾つかの実施形態は、包み込むタイプの設計だけでなく、サイド−レンズ/フィルターを含むことができる。
【0073】
例証的手順
次に、図10に注意を向けると、図10は、患者に対する網膜のための光コントロールシステムを作成する上での1つの可能な手順を示すフローチャートである。多くの場合、先に開示されている種々の実施形態は、予め定められた光強度カットオフ値を有する「店頭販売品」として販売され得ることに留意すべきである。さらに、本発明の実施形態の潜在的な使用者は、一般的集団の構成員だけでなく、糖尿病患者、宇宙飛行士およびパイロットなどを含み得ることも理解すべきである。糖尿病患者または眼の健康状態が懸念される人は、本発明の1つの実施形態による1組の眼鏡を購入することが考えられ、この場合、前記眼鏡は、予め定められた量よりも多くの光がレンズを透過して使用者の眼に到達することを許容しない。光強度の範囲は50ルクス〜150ルクスまでの間、または他のある適切な値であり得よう。幾つかの場合においては、使用者は、本発明の様々な実施形態において説明されているような網膜のための光コントロールシステムに対して適合性を有しているものと仮定されている。
【0074】
図10に示されているように、患者が選択される。患者は、一般的に、糖尿病であるか、または黄斑変性もしくは他の網膜関連変性疾患の症状を有しており、または眼損傷を発症するリスクグループに属している。上記のように、ここで言う「患者」は何らかの特定の症状を呈している必要はなく、例えば健常なパイロットであってよい。任意選択的には、患者の糖尿病の状態がチェックされることがある。具体的には、高血糖挙動の程度を決定するため、グルコース濃度をモニタリングすることができる。任意選択的には、眼鏡を合わせる前に、患者の網膜の状態をチェックすることができる。網膜のチェックは、あらゆる適切な方法(例えば、眼底鏡検査法)により実施されてよい。正常な網膜を有する被験者、または糖尿病もしくは他の疾患によって網膜が既に損傷を被っている被験者が、本発明の幾つかの実施形態による眼鏡に適合性を有してもよい。網膜および眼のチェックが行われた後、担当する医師または他の医療実施者は、本発明に従って作成された眼鏡を透過することが許容され得る光の最大量を決定することができる。この最大値は、光が関係した網膜の損傷を伴わずに、最適に光を利用することができるように決定される。最大値は、先に開示されているとおりの休養期間が存在しない場合と存在する場合との両方に対して設定することができる。光強度の最大値が決定された後、眼鏡または他の光フィルタリング素子(コンタクトレンズまたはウィンドウなど)が作成され、関連する光強度コントロールデータが眼鏡の一部にプログラムされる(電子式光フィルターコントロールを含んでいる実施形態の場合)。眼鏡の場合、幾つかの実施形態によれば、光強度センサーおよびコントローラー素子を含めることができる;前者は後者に、コントローラー素子が入射光を適切にフィルタリングしてこれまでに述べられている予め定められた光強度値に下げることができるように、迫り来る光強度についての情報を伝達する。フィルタリングは、眼鏡を透過することが許容されている530〜700ナノメートルの波長の光を変調するためのカラー染料、液晶フィルター、または他の電子的もしくは機械的な手段を含むことができる。300〜530ナノメートルの波長の光は、任意選択的にはレンズに付随するフィルターおよび/または染料が残りの光の強度を変調する前に、恐らくはそのような変調の後に、(例えば、入射光のうちの少なくとも90%が)フィルターで除去される。上述のような眼鏡は、任意選択的には、快適性を得るために患者に合わせてよい。また、眼鏡は、任意選択的には、処方眼鏡であってよい。眼鏡は、任意選択的には、前記眼鏡のレンズを、過剰な光が透過している状態を使用者に対して警告を発することができるようにプログラムされていてよい。追加的に、および任意選択的には、眼鏡は、使用者の状態にとって最大限度であると考えられる期間にわたって使用者が光に暴露されていることを使用者に警告すべくプログラムされていてよい。その場合、コントローラー素子は、レンズ付随型のフィルター素子を透過する光の強度をさらに低減させることもできるし、または使用者が光への暴露から休養を取るように求めることもできる。
【0075】
例証的反応システム
次に、図11Aに注意を向けると、図11Aは、日中に使用したときの本発明の1つの実施形態を示しており、そこでは、上記で一般的に言及された光学密度および/または偏光調整とは対照的に、屈折率の変化が、眼に到達する光の量をコントロールするために使用されている。光屈折性材料、即ち、入射光(1150)に応じて屈折率が変化する材料でできた第1のレンズ(1131)がエッジ(1145)によって定められる開口の前に配置され、その開口のサイズは、第1のレンズ(1131)後の光(1157)の透過を許容すべく選択されている。該開口の後ろには光(1157)を集光して平行光束(1158)にする光屈折性の現像レンズ(1132)が設けられており、該平行光束(1158)が、その後、使用者の眼(1155)に至る。図11Aに描かれているような本発明の実施形態の利点は、第1のレンズ(1131)と開口との間の日中用焦点(1180)を含むことである。開口は、光反応性の第1レンズ(1131)を透過した光が集光用の第2のレンズ(1132)に到達することができるように位置付けられ、かつ、そのような直径に成されている。図11Bには、夜間/屋内条件が示されている。夜間/屋内条件は、より多くの光(1157)が開口および第2のレンズ(1132)を透過して使用者の眼に至ることが許容される夜間用焦点(1181)を必要とする。例えば、日中用焦点(1180)は第1のレンズ(1131)から3ミリメートルであってよく、一方、夜間用焦点(1181)は第1のレンズ(1131)から7ミリメートルであってよい。夜間用焦点(1181)は日中用焦点(1180)よりも長いであろう。エッジ(1145)により定められる如き開口は、常に、夜間用焦点(1181)の場所の後ろに位置するであろうが、その具体的な位置は、使用者の眼(1155)への最適な光の送達が可能になるように、慎重に選定されなければならない。レンズ(1131、1132)の構成において使用するための光屈折性結晶の非限定的な例としては、BaTiO3(透過率400〜900ナノメートル)、KNbBO3(透過率400〜900ナノメートル)およびLiNbO3(透過率400〜700ナノメートル)が挙げられる。
【0076】
この出願から特許権が満了するまでの期間に、多くの関連するサングラスおよび光変調技術ならびに同様な装置が開発されるものと予期され、用語の範囲は、演繹的にすべてのそのような新しい技術を含めるべく意図されている。
【実施例】
【0077】
糖尿病状態と関連する網膜に到達する光の強度をコントロールすることによる有効性を決定するため、動物実験を行った。
【0078】
実験の目的:この実験の目的は、網膜症および白内障の進展に及ぼす光の影響を糖尿病ラットにおいて調べることであった。
【0079】
材料および方法:ストレプトゾトシン(STZ)を腹腔内に注入することにより、ラットに糖尿病を誘発した。STZを注入してから3日後に、血中グルコースレベルを測定した;血中グルコースレベル>300mg%のラットを糖尿病と同定した。実験は糖尿病を誘導してから7日後に開始された。
【0080】
実験グループ:
12匹のラット(6匹は対照、6匹は糖尿病):12(時間)−通常の光/12(時間)−暗状態。
12匹のラット(6匹は対照、6匹は糖尿病):12(時間)−フィルタリングされた光/12(時間)−暗状態。
8匹のラット(4匹は対照、4匹は糖尿病):24(時間)−暗状態。
4匹のラット(2匹は対照、2匹は糖尿病):24(時間)−フィルタリングされた光。
【0081】
フィルタリングされた光の特徴:光強度が600ルクスから150ルクスへ低減され、かつ、波長が530nm以下の光はブロックされた。
【0082】
11週間後、網膜機能を評価するため、ERG記録およびミューラー細胞におけるGFAP発現の両方を調べた。白内障の進展が別のDMの徴候としてモニタリングされた。
【0083】
【0084】
フィルタリングされた光を24(時間)/日浴びたグループに由来するラットの網膜は完全に破壊されていた。ERG記録は0であり、GFAPが全網膜で発現された。
【0085】
実験から得られた結論および本発明の幾つかの実施形態における反映
*すべてのグループにおいて、糖尿病ラットは対照ラットよりも多くの影響を受けた。
*糖尿病ラットおよび対照ラットのどちらも、光の強度が高ければ高いほど、網膜への損傷が悪化した。
*通常の光とフィルタリングされた光との差異は、フィルタリングされた光と暗状態との間で見られた差異よりも顕著であった。
*ERGのすべての知見が免疫細胞化学(GFAP発現)データにより支持された。
*フィルタリングされた光の下に常に(24時間/日)居たラットの網膜は完全に破壊されており、これは、網膜が回復するためには最小の暗状態期間が必要であることを示しているものと思われる。
*白内障は、光に暴露された糖尿病ラットの水晶体においてのみ発症した。
*光をフィルタリングすることにより、白内障を発症するリスクが低減された。
【0086】
光強度および波長が<530nmの光の遮断の両方の低減が、網膜損傷および糖尿病動物における白内障の進展の低減に寄与する。
【0087】
次に、図12Aに注意を向けると、図12Aは、上記実験において使用されたラットの網膜の暴露に対する結果を示している。ミューラー細胞におけるタンパク質GFAP(グリア細胞線維性酸性タンパク質、1201)が、何ら光のフィルタリングを伴わない状態での光の暴露後に、暗色で示されている。フィルタリングされた光に暴露された細胞におけるGFAP着色(図12B、1201)と比較した際のこの暗色は、網膜に対する強い光の過剰暴露の証拠である。内部および外部細胞に関連する光受容体の数(1202、図12A)は、フィルタリングされた光に暴露された細胞に関連する光受容体の数(1202、図12B)と比較して、フィルタリングされていない光に暴露された網膜に対して有意に少ない。
【0088】
一般的事項
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0089】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0090】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0091】
「患者」、「使用者」、および「糖尿病患者」は、交換可能に使用され、概して本発明の実施形態を利用し得る人に言及することに注意されたい。
【0092】
本明細書で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0093】
本願を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0094】
数値範囲が本明細書で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生物化学、および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、および/または、逆向きにすること、状態の臨床的症状および/または審美的症状を実質的に改善すること、ならびに/あるいは、状態の臨床的症状および/または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0097】
「例証的」という用語は、本明細書では、「例、事例または実例である」ことを意味すべく使用される。「例証」として開示されている実施形態は、必ずしも、他の実施形態に対して好適もしくは有利であると解釈されるべきではなく、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを除外するものでもない。
【0098】
「任意選択的に」という用語は、本明細書では、「幾つかの実施形態においては提供され、別の実施形態においては提供されない」ことを意味すべく使用される。本発明のあらゆる特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾をきたすものでない限り、複数の「任意の」特徴を含むことができる。
【0099】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0100】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0101】
具体的には、本発明の実施形態は、側方から来て眼内に散乱する光を測定することによって使用者の網膜上の光を見積もることができる。個々の使用者に対する散乱係数をコントローラー素子に予めプログラムしておくことができる。あるいは、瞳孔のサイズを測定し、眼の後方で網膜に実際に到達する光強度の量を計算する際に使用することもできる。
【0102】
さらに、光強度の計測器は、眼鏡の外側で入射光線に面する場所に設けてもよい。さらにおよび/または代替的に、光強度の計測器は、本発明の実施形態に関連するフィルターを透過する光のレベルをモニタリングするために、眼鏡の内側に配置することもできる。さらに、内部の光強度計測器は、本発明の実施形態が機能しているのを確認することができる。
【0103】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に参照により本明細書に組み込まれて提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、同一の発明者らにより2007年7月20日に出願された米国仮出願第60/929997号の119eの下での恩典を主張するものである。
【0002】
(発明の分野および背景)
本発明は、幾つかの実施形態においては、使用者の網膜に達する光の強度をコントロールするためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、但し限定するものではないが、使用者の眼に到達する全体的な光の強度を予め定められた最大値以下に維持した状態で、青色光(および/またはもっと大きい波長の光)をフィルターにかけて除去するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は非常に広範な衰弱性疾患である。米国だけで2千万人以上の成人および子供(人口の7%)が糖尿病を有しており、また、1型糖尿病および2型糖尿病の両者の診断率は高まっている。身体が血液中のグルコースレベルを適切にコントロールすることができないことによりもたらされる多くの症状発現のうちの1つが網膜の劣化であり、それは、しばしば失明をもたらす。北米においては、糖尿病が65歳以下の人々での失明の原因の第1位である。糖尿病性網膜症は、早期の背景的段階から後期の重篤な視力を脅かす段階である増殖性糖尿病網膜症(PDR)までゆっくりと進行する、真性糖尿病(DM)の1つの合併症である。
【0004】
増え続ける一連の証拠は、糖尿病による網膜の一次的損傷が高血糖症により引き起こされ、網膜細胞のアポトーシスを伴う網膜機能障害によって反映されることを示している。高い血糖レベルはフリーラジカルの形成につながり、結果として、眼の小さな血管を含めた種々の血管に損傷をもたらし得る。そのような損傷が糖尿病性の網膜症をもたらす。糖尿病性網膜症になると、網膜の幾つかの血管が失われ、その一方で、他の血管は血液を漏出する。その結果が網膜腫脹であり、酸素および栄養素の供給が遮断されることがある。最終的に、網膜は、損傷を被った血管に取って代わるべく、新たな血管を発生させ得る。新たな血管は、以前の血管ほど強くはなく、もっと破損しやすく、眼内出血を引き起こしやすい。
【0005】
糖尿病性網膜症によって引き起こされる損傷は回復不能であると考えられている。それでも、網膜へのさらなる損傷を遅延化または防止するための幾つかの方法が存在する。硝子体切除術、または網膜を標的としたレーザー手術は、網膜とかかわり合っている漏れやすい血管を塞ぐために用いられる。これに加え、高血糖症が長期間にわたって持続するのを防ぐための適切なインスリンの使用は、さらなる眼の損傷を引き起こすフリーラジカルの生成を低減させるのに役立つ。
【0006】
米国特許第4878748号および第5617154号において、Hoffmanは色付きのコンタクトレンズについて開示しており、それらは、500〜700ナノメートルの波長の光には予め定められたレベルの透過率を持たせることで、200〜500ナノメートルの波長の光がコンタクトレンズを透過するのを防ぐものである。Hoffmanは、水晶体、角膜および網膜に対するUV関連損傷について開示しており、さらには、UV関連損傷と黄視白内障とのかかわり合いについても開示している。彼は、さらに、青色光が黄斑変性症および網膜損傷に関与していることについても述べている。「特別な必要条件」を持った人々は、UVおよび青色光の保護に関する付加的な必要条件を有している。
【0007】
米国特許第5177509号において、JohansenおよびDiffandafferは、300ナノメートルの波長から450、500、515、535または550ナノメートルの最終的上限波長までの光を効果的に取り除くサングラスについて開示している。
【0008】
Optiplas(www.optiplas.co.il)は、糖尿病性網膜症および黄斑変性症に罹患している患者用の明るい色の付いた眼鏡と暗い色の付いた眼鏡との両方の眼鏡を提供している。それによれば、UVおよび青色光が眼に到達するのを低減させるため、これらの状態のどちらかを呈している患者のためのレンズとしてCPF 527およびCPF 511カットオフレンズが推奨される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、例えば網膜の損傷および/または網膜のさらなる劣化が発生するのを防止するために、人間の眼に到達する光の量および/または波長に関する特徴を管理するための方法および装置が提供される。
【0010】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、100ルクス〜5000ルクスに及ぶ照度条件の範囲にわたって、眼に到達する光の強度を、第1の予め設定された値以下であって、かつ、第2の予め設定された値以上になるように能動的に維持するように構成されたアイウェアが提供され、ここで、第2の値は関数的に利用可能であって、かつ、30ルクス以上である。
【0011】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、電気的にコントロールされる少なくとも1つの光減衰素子、少なくとも1つのセンサーおよび、前記センサーからの光強度信号に応じて前記光減衰素子をコントロールする、少なくとも1つの回路構成を含んでいる。
【0012】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、累積損傷の評価に従って、前記到達強度を様々に変動させる。
【0013】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成はアラームを含んでいる。
【0014】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記センサーは、前記アイウェアから物理的に分離している。
【0015】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、前記予め設定された値のうちの少なくとも1つに関してプログラム可能である。
【0016】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、そこに入射する光の強度に応じて光学密度を変える少なくとも1つの非線形染料を含んでいる。
【0017】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、500nmよりも短い波長の光をブロックする少なくとも1つの固定フィルターを含んでいる。任意選択的には、前記ブロックされた光は、前記第2の予め設定された値以下にブロックされる。
【0018】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、アイウェアは、550nmよりも大きな波長の光をブロックする少なくとも1つの可変型光フィルターを含んでいる。
【0019】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼損傷モニターが提供され、該モニターは:
(a)光センサー;
(b)前記センサーからの光読み取り値を累積し、かつ、光誘起性損傷の指示を発生する回路構成;および
(c)前記指示に反応する出力装置;
を含んでいる。
【0020】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記出力装置はアラーム装置を含んでいる。
【0021】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記出力装置は、眼に隣接して取り付けることができるように適合されている少なくとも1つの光学的な光フィルターを含んでいる。
【0022】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記回路構成は、異なる波長においては異なる読み取り値の累積を行う。
【0023】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼に及ぼす損傷を防止または低減する方法が提供され、該方法は:
眼と関連する能動的な光学素子を利用して、眼に到達する光の強度を、屋内活動および屋外活動の両方に対して、ある損傷レベル以下に維持するステップ
を含んでいる。
【0024】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、該方法は、特定の患者に対して前記損傷レベルを決定するステップを含んでいる。
【0025】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、該方法は、前記維持ステップにおいて、損傷レベルと機能的に有用なレベルをトレードオフするステップを含んでいる。
【0026】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、維持ステップは、その時間のうちの少なくとも50%について維持することを含んでいる。
【0027】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、眼球モニタリング方法が提供され、該方法は:
眼に到達する光の強度を長期間にわたって追跡するステップ
を含んでいる。
【0028】
任意選択的には、前記追跡ステップは複数の波長で追跡することを含んでいる。
【0029】
本発明の1つの例証的な実施形態によれば、糖尿病患者における網膜損傷を防止し、かつ、白内障の進展を防止するための方法が提供され、該方法は、以下のステップ:
患者を選択するステップ;および
前記患者に光フィルターを提供するステップであって、前記光フィルターが光フィルターのレンズを透過する光に対して、最大光強度カットオフ値を有している、ステップ
を含んでいる。
【0030】
任意選択的には、前記最大光強度カットオフ値は150ルクスである。任意選択的には、または代替的には、該方法は、300〜530ナノメートルの波長を有する光のうちの少なくとも90%を除去するためのフィルターを提供するステップを含んでいる。
【0031】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記光フィルターは光屈折性の材料でできている。
【0032】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、必ずしも限定であることは意図されない。
【0033】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含むことができる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたタスクを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。本発明の方法が、眼鏡、コンタクトレンズ、または他の光学的に透明な表面において実施されうることは理解されるだろう。
【0034】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令として実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書中に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示として添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、時刻または場所の関数としての光強度値リストである。
【図2】図2は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の1つの例証的な実施形態での光強度透過率のグラフである。
【図4】図4は、本発明と関連するレンズフィルターの光フィルタリング能力を示すグラフである。
【図5】図5は、コントローラー素子が光の管理において使用される眼鏡に付随する、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図6】図6は、コントローラー素子が光の管理において使用される眼鏡から物理的に分離している、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図7】図7は、光の管理において使用されるレンズおよびフィルターが、クリップオン型素子の形態で適用される、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図8】図8は、染料が光のフィルタリングおよび全光透過率のコントロールに使用される、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図である。
【図9】図9は、糖尿病患者にとって潜在的に有害な光のレベルとの対比における有用な可視光の範囲を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明に従って使用者のための眼鏡を作成する方法のフローチャートを示している。
【図11】図11Aおよび11Bは、日中および夜間または屋内の両方で実際に使用したときの、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。
【図12A】図12Aは、本発明の幾つかの実施形態によるフィルタリングを伴った場合と伴わなかった場合の眼に対する損傷を比較する、ラットでの実験の組織学的結果を示している。
【図12B】図12Bは、本発明の幾つかの実施形態によるフィルタリングを伴った場合と伴わなかった場合の眼に対する損傷を比較する、ラットでの実験の組織学的結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、幾つかの実施形態においては、光の管理システムに関し、より詳細には、但し限定するものではないが、使用者の眼に到達する光の波長と量との両方を長期間にわたってコントロールする眼鏡に関する。
【0037】
本発明者らは、UVおよび青色光が眼に到達するのをブロックすることは可能であるものの、眼に到達する光の総量および/または眼に到達する光のピーク値を長期間にわたってモニタリングすることおよび/またはコントロールすることが重要であり得ることに気付いた。UVおよび青色光だけが、幾つかの疾患状態と関連する脆弱化した網膜に損傷を引き起こすのではなく、高強度でのもっと長い波長の光および/または長期間にわたる露光も有意な網膜損傷を引き起こし得ると仮定されている。血糖症と高い光強度との間には、網膜劣化の一因となるフリーラジカルの生成に関して、相乗挙動が存在するということが仮定されている。UVおよび青色光は、一般集団において(白内障を含めた)眼損傷に関与しているものと見なされているが、高い光強度の損傷作用は、黄斑劣化および(網膜症を伴わない)糖尿病などの疾患ならびに/または、例えば乏しい血流もしくは背景的な損傷レベルにより眼の自然治癒メカニズムが損なわれている他の疾患などによって網膜が損なわれている個体においては一層顕著であると思われる。
【0038】
任意選択的には、または代替的には、(たとえ非青色光であったとしても)高い光強度への長期間の暴露によって引き起こされる損傷は、光強度をコントロールおよびモニタリングする治療方式に休養時間を含めることにより、部分的にまたは完全に回復させることができる。具体的に、高い光強度による眼損傷のリスクを負っている個体は、定期的な「休養」期間を取ることが勧められ、その期間中には、眼に到達することが許容される光の強度が有意に低減される。網膜損傷はフリーラジカル形成の副産物であると考えられるため、眼が高レベルの光に暴露されない休養期間は、理想的には、眼においてフリーラジカルの管理および損傷の修復が行われることが可能であろう。(屋内および屋外のどちらの場合にも、また、任意選択的には24時間ずっと絶え間なく)眼に到達することが許容される光の量をコントロールすることにおいては、機能上必要な最小量の光と持続的な網膜劣化を防ぐために許容される光の最大レベルとの間でのトレードオフを認識すべきである。任意選択的には、光コントロールシステムは殆どの非睡眠時間の間作動する。屋外に居るときだけ光をコントロールする場合や、1日のうちの一部分の間だけ光をコントロールする場合は、必ずしも、損なわれている網膜に充分な保護効果をもたらすとは限らないであろう。幾つかの実施形態においては、1日のうち、少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、10時間またはそれらの中間的な数字の時間の間、光のレベルがコントロールされる。該コントロールは、任意選択的には、時間に関して連続的である。任意選択的には、起きている時間の少なくとも30%、50%、80%もしくはそれ以上の間、および/または屋外に居る時間/日中の少なくとも60%、70%、80%もしくはそれ以上の間、光のレベルがコントロールされる。任意選択的には、そのようなコントロールは、本明細書で開示されている如き自動化された手段によってではなく、患者への指示により達成される。本発明の1つの例証的な実施形態においては、光のレベルのモニタリングおよび/またはコントロールは、長期間にわたって行われ、例えば数日間または数週間(例えば、感受性を原因とする薬物療法の場合)、および数ヶ月間または数年間(例えば、糖尿病患者の場合)などにわたって行われる。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態は、これらのカットオフ値よりも長い波長の透過率をコントロールしながら、300ナノメートル〜500、550、600または650ナノメートルの波長のカットオフを可能にする。カットオフ波長は、一般的に、入射光の強度および透過光の強度によって測定したときに、90%または99%がフィルターによって除去される。ある特定の個人が関連する特定の必要条件および医学的問題により、本発明の幾つかの実施形態においては、使用者のニーズおよび医学的健康状態に関連付けられた適切な光の管理を行うことができるように、眼鏡または他の装置を使用者に合わせてよい。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態によれば、光に関する2つの要因が糖尿病被験者における網膜損傷を防止するのに関係していることが提案されている。第1の要因は、波長が300ナノメートル〜高くは650ナノメートルの、より高いエネルギーを有している殆どの光をフィルタリングすることである。任意選択的には、より高いエネルギーの光は、目の色素による最大吸収のピークにおける作用が恐らくは連続的に変動することにより、任意選択的には突然変化することにより、より低いエネルギーの光よりも、1つの光子につきより多くの損傷を引き起こすものと推測されている。第2の要因は、何らかの瞬間における、さらには、ある与えられた期間にわたる、眼に到達する可視スペクトル域における残りの波長からの光の総量に関する。眼に到達する光の強度を予め定められた閾値(任意選択的には波長依存性であり、任意選択的にはすべての波長に対して単一の値で近似され、または幾つかの波長に対して少ない数の閾値で近似される)以下に保つことにより、光誘導性フリーラジカルが形成される可能性を有意に低減させることができる。これに加え、非常に低い光強度が眼に到達することが許容される「休養」期間を含めることにより、フリーラジカル形成および/または損傷からの回復が可能になる。以下で説明されている研究において使用されたラットの場合、(300〜530ナノメートルの波長からの光を少なくとも75%低減させると同時に)光強度を40ルクスまたはそれ以下にすることにより、有意に網膜を健康な状態に保てることが判明した。この40ルクスという値は、例証的なものであって、眼に到達することが許容される光のカットオフ値を限定すべく意図されたものではなく、そのようなカットオフ値は、充分に使用者特異的であることができ、さらには、光条件依存性であることができる。従って、UVおよび青色光(および/またはもっと長い波長の光)のフィルタリングと眼に到達することが許容される残りの光のコントロールとの組み合わせが、単独で低波長の光のみをフィルタリングする方法よりも大きい、有意な健康上の便益性をもたらすことが示されている。
【0041】
適切な光のコントロールを達成するために、本発明の幾つかの実施形態は3つの構成要素を有している(それらは一体化されていてもよい):UVおよび青色(またはより長い波長の)光(波長が約300〜530ナノメートルの光)のうちの90〜99%を除去するためのUV/青色光フィルター;残りの光スペクトルのうちのどのくらいの量が眼へ透過することを許容するのかをコントロールするための光変調フィルター;および、眼に到達する最大光強度を予め定められた値かそれ以下に保つためにフィルターをコントロールする光強度計測/コントローラー素子。幾つかの実施形態においては、コントロールするのではなく、またはコントロールすることに加え、モニタリングが行われる。本発明の1つの例証的な実施形態においては、フィルターまたは染料を付随した眼鏡が、単独で作動するかまたは光センサーおよびコントロール素子との組み合わせにおいて作動するかのどちらかにより、眼に到達する透過光を予め定められた値の範囲内に連続的に維持する。大気光源および環境光源から利用可能な光は、恐らく、医学的に損なわれた状態の網膜を有している個人にとって許容されるレベルよりも高い強度の光であると考えられるため、眼に到達する光のそのようなコントロールは、屋内および屋外のどちらのケースにおいても適用することができる。休養期間は、予め定められた期間にわたる予め定められた量の光への暴露から眼が回復することを可能にするための本発明の幾つかの実施形態の能動的な部分であり得る。本発明の幾つかの実施形態は眼鏡として実現されてよく、前記眼鏡はフィルターを含んでおり、さらに、フィルターは、染料を含んでいてもよいし、または光センサー/コントローラー素子によってコントロールされてもよい。これらの実施形態による眼鏡は、眼に到達する光の総量を、予め定められた1つの特定値ではないにしても、予め定められた値の範囲内に維持すべく、眼に到達する光をコントロールする。
【0042】
別の実施形態においては、ブロックされる光の波長は異なり、例えば450、470、480、500もしくは515に及ぶに過ぎず、またはそれ以上の波長、例えば550、570もしくは600にも及ぶ。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態の範囲内には、青色の波長よりも長い光もブロックすることおよび/または全光強度をブロックすることにより、損傷(例えば、網膜への損傷または白内障)が発生または増大するのを防止する方法が含まれる。幾つかの場合においては、そのようなブロック機能は、それを必要としている患者に、例えば糖尿病に罹患している患者に、適切なフィルタリング用のサングラスを処方することにより達成される。任意選択的には、そのような処方は屋内で使用する場合の指示事項を含んでいる。任意選択的には、眼鏡は、様々な状況に合わせた複数対の眼鏡および/またはクリップオン型として提供される。
【0044】
上記で種々の仮定が為されているが、本発明の様々な実施形態は、必ずしも該仮定の正確さによって制限されるものではないことを認識すべきである。寧ろ、例えば、本明細書で開示されている如き装置および/または方法は、該仮定が間違っていたとしても、使用することができる。
【0045】
添付図面のうちの図2、図5〜8に描かれているような本発明の幾つかの実施形態についての一層良好な理解を得ることを目的として、最初に、図2に描かれている如き1対の光管理用眼鏡の構造および働きについての言及が為される。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0047】
次に、添付図面を参照しながら説明すると、図2は、光フィルターを伴った眼鏡を含む、本発明の1つの実施形態の概略図を描いている。網膜のための光コントロールシステム(200)は、光変調フィルター(235)、光変調フィルターと組み合わされていてよいUV/青色光フィルター(238)、および任意の光強度センサー(260)を付随した眼鏡(210)を含んでいる。眼鏡は、任意の耳掛け(220)および任意の光学レンズ(230)をさらに含んでいてよい。任意のレンズ(230)はどのような形状を成していてもよく、また、側方から迫りくる入射光(250)から防護する「包み込み」式の側方保護具もさらに含んでいてよいことが理解されよう。眼鏡(210)はどのような材料でできていてもよく、また、処方型または非処方型のレンズ(230)を含んでいてよい。レンズ(230)に付随したフィルターは、染料をベースとしたフィルター、液晶をベースとしたフィルター、または前記光変調フィルター(235)を透過する光強度の変調を可能にする他の適切な構造物であってよい。光変調フィルター(235)はレンズ(230)と一体になっていてもよいし、またはレンズ(230)の片側もしくは両側に配置された状態でレンズ(230)から物理的に区別されるものであってもよい。図2に示されている素子は便宜上示されているものであって、物理的に異なる様々な配置であってよく(例えば、前から後への順番を変えることができる)、または単一の素子にまとめられていてもよい。
【0048】
網膜のための光コントロールシステム(200)は、任意選択的には、入射光(250)の強度を測定する光強度センサー(260)を含んでいてよい。光強度センサー(260)は、入射光および/または眼への途中でUV/青色光フィルター(238)および光変調フィルター(235)を透過した光を測定することができる。光強度センサー(260)は、さらに、または代替的に、実際に使用者の眼の瞳孔に到達する光を測定することができる。任意選択的には、センサー(260)は、瞳孔のサイズを測定し、その後、網膜の黄斑領域または他の領域に到達する光の量を見積もるためのセンサー(例えばカメラ)を含んでいる。光強度センサー(260)は、すべての可視波長またはその一部を測定することができる。任意選択的には、センサー(260)は、例えばそれぞれが狭帯域フィルターを伴う複数の光センサーを含んでおり、複数の波長、例えば2個、3個、4個、5個またはそれ以上の波長において光強度を測定する。任意選択的には、角膜および/または網膜に到達する光の量は、例えば予備試験および/または患者によって使用された光学補正の光学的な特性に基づいて見積もられる。任意選択的には、または代替的には、前記実際の量が、例えばセンサーを用いて、例えば1回測定されてキャリブレーションに使用され、または連続的に測定される。
【0049】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、光強度センサー(260)は、光フィルター(235)をコントロールして、前記光変調フィルター(235)を透過する光強度を予め定められたレベルにまで低減することができる。本発明の1つの例証的な実施形態においては、フィルター(235)は、LCDタイプのシャッター(例えば、その間に偏光変化型液晶を伴った2つの偏光子)を含んでおり、その光学密度はそこに加えられる電圧の関数である。このコントロールシステム(200)は、例えば、バッテリーなどの電源、ならびに光の強度レベルおよび/または閾値および/または他の光ターゲットに従って電圧を設定する回路構成、例えばコントローラーを含んでいる。
【0050】
光強度センサー(260)は、例えば眼鏡(210)の外側または内側に配置されてよく、一般的には、眼鏡(210)の光変調フィルター(235)に到達した光の強度および/または眼鏡の光変調フィルター(235)を透過した光の強度のいずれかを適切に決定することができるように配置される。図2に示されているように、光強度フィルター(260)は、便宜上の理由のみで眼鏡(210)の内側に図示されているが、眼鏡の別の箇所に配置されていてもよいし、または代替的に眼鏡から分離して(図示せず)、例えばイヤリングもしくはネックレスまたはリストバンドとして配置されてもよく、また、任意選択的には、眼鏡に設けられたレシーバーへの無線リンクを伴っていてもよい。上記コントローラーは、センサーまたは眼鏡に付随してよい。図2に概略的に示されているように、光強度センサー(260)は、光変調フィルター(235)および任意のレンズ(230)を透過した入射光(250)の強度を測定するため、レンズ(230)の間に配置される。
【0051】
光強度センサー(260)は、1つまたは複数の波長を測定することができる。さらに、光強度センサー(260)は、単一の位置または複数の位置に配置された複数の光強度センサーとして実現されてもよい。光強度センサー(260)は、眼鏡(210)の外側に配置された場合、入射光(250)を測定し、光変調フィルター(235)を透過する光強度の量を調節するために、前記光変調フィルター(235)を加減する。あるいは、図2に示されているように、光強度センサー(260)が眼鏡(210)の内側、即ち、使用者の眼(255)に面する側に配置されている場合には、光強度センサー(260)は、使用者の眼の方向へ光変調フィルター(235)を透過することが許容される光を低減または増大させるために、光変調フィルター(235)をコントロールすることができる。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態が先行技術の「サングラス」などに対する1つの潜在的な利点は、レンズを透過して使用者の網膜に到達する光の強度をコントロールする能力を有していることである。そのようなものとして、光強度モニター(260)は、光フィルターおよび/またはレンズ(230)に付随している染料を変性する特性をさらに含むことができる。前記変調は、入射光(250)が有していた光強度の、使用者の特定の健康上の必要条件に合わせて選定される予め定められた値への適切な低減を可能にする。あるいは、本発明の幾つかの実施形態は、任意のレンズ(230)を透過して使用者の網膜に到達することが許容される光を変調するために光強度センサー(260)からのデータを使用する、別個のコントローラー素子(図5、図6、図8および関連する実施形態を参照のこと)を有していてもよい。レンズ(230)または付随したUV/青色光フィルター(238)は、300〜530nmの波長の光のうちの90%より多くをフィルタリングして取り除くであろう。網膜のための光コントロールシステムを適切に機能させるためにバッテリーおよび電子回路(以下で開示)が含まれていてよい。
【0053】
光強度センサー(260)は、単独で、または個別のコントローラー素子と組み合わせて、光の強度またはある期間にわたる光強度の積分値を測定することができる。さらに、光強度センサー(260)は、300〜700ナノメートルの波長を有する光の個々の波長に関する光強度を測定することができる。光強度センサー(260)は、ある与えられた瞬間において、または予め定められたある期間にわたって、光変調フィルター(235)を透過することが許容される光の固定または加減を行えるようにプログラム可能であってよい。光強度センサー(260)は、直接的に、またはコンピュータもしくは他の適切な電子装置の媒体を通じてプログラム可能であってよい。光強度センサー(260)は、医療専門家による分析用に光強度データを保存するためのプログラム可能型/記録可能型の記憶装置を含んでいてよく、また、さらに、眼鏡(210)に関する潜在的な問題または光に対する眼の(時間もしくは量のいずれかにおける)限度を超えた暴露について使用者に注意を喚起するためのアラームプログラムまたは安全特性を含んでいてよい。本発明の1つの例証的な実施形態においては、本システムは、無線リンク(例えばWiFi、赤外線またはブルートゥース)ならびに閾値および/またはターゲット光機能などの設定レベルが保存されるテーブルなどの記憶装置を含んでいる。任意選択的には、データ転送用および/または本システムの再充電用にUSBコネクターが設けられている。図2に示されている実施例では、コントローラー270、例えばマイクロコントローラーが設けられている。コネクター277は、センサー260からの光の測定値をコントローラーへ提供し、その後(任意選択的には)、該コントローラーが光フィルターをコントロールする。任意選択的にはバッテリー279が設けられており、このバッテリー279は、任意選択的には、再充電可能でありおよび/または手作業で交換可能でありおよび/または光起電力電池(図示せず)によって電力供給される。任意選択的には、様々な設定レベル、例えば閾値および休養のための時間のテーブルなどを保存するための記憶装置278が設けられている。
【0054】
光変調フィルター(235)は、その性状が、例えば電子的、化学的または機械的なものであってよい。光フィルターは、本発明の1つの実施形態の使用者の眼(255)に到達することが許容される入射光(250)の量を低減する。光変調フィルター(235)は、眼鏡(210)を透過して使用者の眼(255)に到達することが許容される光の量を低減または増大させるべく電子的に加減することができる液晶素子として実現されてよい。あるいは、光変調フィルター(235)は、光変調フィルター(235)に到達する光強度に対して反比例関係で光透過率を変化させる化学的な染料として実現されてもよい。光変調フィルター(235)は、代替的に、光強度センサー(260)によって得られた光強度測定値に応じて、眼鏡(210)を透過することが許容される光の量を物理的に低減または増大させる機械的な素子、例えばシャッターなどを含んでいてもよい。UV/青色光フィルター(238)および光変調素子(235)は、便宜上の理由のみで、別個な素子として示されている;それらの素子は組み合わされてよく、また、潜在的には、本発明の1つの実施形態における任意のレンズ(230)と組み合わされてもよい。
【0055】
光変調フィルター(235)は、任意選択的には、UVおよび青色光フィルターを含んでいてよい。図3は、本発明の幾つかの実施形態による網膜のための光コントロールシステム(200)での、典型的な光波長の透過率のグラフを示している。530ナノメートルを越える波長は、光強度センサー(260)によって追跡され、均等に、またはそれぞれの波長が眼にもたらすと考えられる損傷に対して重み付けされた割合で、光変調フィルター(235)を透過することが許容され得る。ブロックアウトされた上記それぞれの波長は損傷の重大性に関するある重みを有しており、また、光変調フィルター(235)を通じる波長のフィルタリングは非線形であってよく、すべての透過光に対して一様に実施されてよく、または眼鏡(210)を透過することが許容されるそれぞれの波長に従って適用されてもよい。本発明の1つの例証的な実施形態においては、記憶装置278は、複数の波長のうちの各波長に対する相対的な損傷度および/または各波長に対する望ましい閾値を指示する一連の重みを含んでいる。幾つかの実施形態においては、より長い波長だけでなく、すべての波長が可変量でブロックされる。
【0056】
図4は、2つの一般的な光源からの入射光の強度および使用者の網膜に到達する際の光の強度を示している。このグラフの場合、予め定められた光の強度値は50ルクスに固定された。実際に予め定められた光の強度値は、使用者間および/または暴露時間に基づいておよび/または波長に基づいて異なっていてよく、また、使用者の眼の予備試験において、および/または集団および/または疾患の研究に基づいて決定されてよいことが理解されよう。本発明の幾つかの実施形態は、明るく照明された家またはオフィスなどのより低い強度の光のフィルタリングだけでなく、太陽光などの高い強度の光のフィルタリングをも可能にする。幾つかの実施形態によれば、日中、糖尿病患者の使用者が遭遇する殆どの状況は、予め定められた許容可能なカットオフ値よりも高い強度の光を提供しているものと仮定されている。矢印(480)は、周囲の環境光源からの光が、使用者の眼に到達することが許容される、予め定められた光強度値(この実施例においては50ルクス)にフィルタリングされる様子を強調して示している。
【0057】
幾つかの実施形態によれば、使用者は、起きている殆どの時間、内部および外部の両方で、本発明に関連する眼鏡、クリップまたはコンタクトレンズを装着するものと仮定されている。外部の場合、網膜のための光コントロールシステム(図2の200)は、10000ルクスまたはそれ以上から(例えば)約30〜150ルクスの予め定められた値に光強度を有意に低減する。ある患者/疾患にとって有用であり得る、別の例証的最小閾値は、50ルクス、300ルクス、250ルクスおよび100ルクスである。例証的な最大閾値は、100ルクス、150ルクス、350ルクス、500ルクスおよび800ルクスである。屋内の場合、網膜のための光コントロールシステム(200)は、環境的な光強度が屋外で見られる場合よりも低い大きさのオーダーであるにもかかわらず、同じ結果を達成する。本発明の幾つかの態様におけるこの特徴、即ち、屋内で「サングラス」を装着することは、ユニークであり、かつ、図1に示されているように、殆どの屋内での照明されている空間は数百ルクスの光強度を呈するため、適切なアイケア管理にとって有用である。
【0058】
ラットでの研究は、70ルクスを越える光は糖尿病ラットとの関連における網膜にとって有害であり、これは、本発明の幾つかの実施形態の観点において、屋外だけでなく、屋内でも光をフィルタリングする必要性があることを示唆している。殆どの場合、「サングラス」はUV光が存在する屋外で使用されるが、本発明の幾つかの実施形態は、損傷を被っている網膜を保護するためおよび/または眼に損傷が及ぶのを防止するために、屋内での光および屋外での光の両方に対して適用することができる。そのようなものとして、本発明の幾つかの実施形態によれば、使用者は、日中の時間ずっと、および恐らくは夜にも屋内で、眼鏡(210)または本明細書中で開示されているのと同様な装置を装着するものと仮定されている。本発明の1つの例証的な実施形態においては、例えば糖尿病患者および黄斑変性患者での付加的な網膜損傷を防止するため、環境光の強度が医学的に予め定められた網膜損傷閾値よりも高い実質的にすべての状況において、光の遮断、コントロールおよび/またはモニタリングが用いられる。
【0059】
次に図5に注意を向けると、図5は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。網膜のための光コントロールシステム(500)は、レンズ(530)、UV/青色光フィルター(538)および光変調フィルター(535)を含む眼鏡(510)として実現されている。さらに、光強度センサー(560)、さらには、コントローラー素子(570)が設けられている。コントローラー素子(570)は眼鏡(510)に一体化されており、眼鏡(510)のあらゆる場所に配置されていてよい。便宜上の理由のみで耳掛け(520)上に図示されている。コントローラー素子(570)および光強度センサー(560)は単一の電子的な素子(図示せず)として実現されてもよい。コントローラー素子(570)は、光強度センサー(560)によって記録された入射光(550)についての情報を受信する。あるいは、光強度素子が使用者の眼(555)に面している場合には、そのコントローラー素子は、UV/青色光フィルター(538)、任意のレンズ(530)および光変調フィルター(535)を透過した光の強度についての情報を受信する。コントローラー素子は、眼鏡(510)を透過して使用者の眼(550)に到達する(530ナノメートルを越えるすべての波長の)光の強度を増大または低減させるために、任意のレンズ(530)に付随した光変調フィルター(535)をコントロールすることができる。コントローラー素子(570)および光強度センサー(560)は単一の素子として実現されてよく、ここでは、便宜上の理由のみで2つの別個な素子として示されている。コントローラー素子(570)には、眼鏡(510)を透過して使用者の眼(555)に到達し得る光強度の1つのカットオフ値または複数のカットオフ値が予めプログラムされていてよい。そのようなものとして、コントローラーは、レンズ(530)を透過して使用者の眼に到達することが許容される非青色光の量を抑制する目的で、眼鏡(510)に付随する染料または他の光変調フィルター(535)をコントロールすることができる。UV/青色光フィルター(538)は、コントローラー素子(570)とは無関係に機能してもよいが、任意選択的には、コントローラー素子(570)の制御下にあってもよい。コントローラー素子(570)は、他の形態を取ることも可能であるが、一般的には、チップとして実現される。
【0060】
図6は、任意のレンズ(630)および入射光(650)から300〜530ナノメートルの波長の光のうちの90%より多くの光を除去するUV/青色光フィルター(638)を伴った眼鏡(610)を含んでいる、網膜のための光コントロールシステム(600)の概略図を示している。別の実施形態においては、そのような光のうちの別のパーセンテージが除去されてよく、また、任意選択的には、より短い波長でより大きなパーセンテージが除去されてよい。例えば、すべてのそのような光のうちの80%が取り除かれ、またはUVのうちの99%および520nmの波長の光のうちの83%が取り除かれる。さらに、任意のレンズ(630)に付随する光変調フィルター(635)が使用者の眼(655)に到達する光強度を低減する。任意選択的には、より短い波長の光における低減のうちの幾分か、例えば20%、50%もしくはそれらの中間的な割合、またはもっと小さな割合もしくはもっと大きな割合の低減が、光変調フィルター(635)によって達成される。入射光(650)の強度は、光強度センサー(660)によって測定することができる。あるいは、UV/青色光フィルター(638)、任意のレンズ(630)および光変調フィルター(635)を透過する光の強度を、前記光が使用者の眼(655)に到達する前に測定することもできる。光強度センサー(660)から得られたデータは、眼鏡(610)から物理的に分離しているコントローラー素子(670)へ伝えられる。光強度センサー(660)とコントローラー素子(670)との間での通信は有線で行われてもよいし、または無線で行われてもよい。無線による通信モードは、限定されるものではないが、赤外線、Wi−Fiおよびブルートゥースを含む。コントローラー素子(670)が眼鏡(610)から物理的に分離していることによる以下の潜在的な利点のうちの1つまたはそれ以上を利用することができる。第1に、単一または複数の使用者に付随する異なるセットの眼鏡(610、611)に対して単一のコントローラー素子(670)を使用することができる。さらに、本実施形態におけるコントローラー素子(670)は、生体内用または生体外用のグルコースモニター(699)に付随させることもできよう。使用者が(任意のグルコースモニター(699)によって測定した際に)高血糖である場合には、前記グルコースモニター(699)に付随するコントローラー素子(670)は、使用者に到達する光のフィルタリング量を増やすことができる。高い血中グルコースレベルおよび高い光強度は危険な組み合わせで組み合わさって、使用者の眼(655)の網膜へ大量のフリーラジカルを送達することが可能であるため、グルコースモニターからのデータを受信するコントローラー素子は、使用者が高血糖であることが知られているときには、前記使用者に到達する光を低減させることができよう。任意選択的には、非眼のコントロール素子は、使用者に及ぼす不快感を少なくするため、例えばデータ入力を一層便利にするのに役立たせるため、より大きく作ることができる。任意選択的には、美観的な理由がその構成を決定するのに役立つ。
【0061】
レンズ630は、任意選択的には処方レンズであり、および/または光低減用の染料および/または偏光子を付随してよい。
【0062】
休養およびモニタリング
本実施形態および先行する実施形態において開示されている如きコントローラー素子(670)の1つの任意の付加的機能は「休養」に関係していてもよい。眼に休養を与えることは、光への暴露からの回復および網膜内において見出されるフリーラジカルによってもたらされた損傷からの回復を可能にすることが判明している。休養期間は、使用者がある与えられた期間にわたって既に最大量の光に暴露されていることを該使用者に注意を喚起すべく、コントローラー素子に予めプログラムされていてよい。任意選択的には、コントローラーは、休養期間が勧められているときには、眼鏡(610)を透過する光強度の量を低減することができる。休養期間は、能動的な眼瞼の閉鎖、または本発明に従って眼鏡(610)を透過することが一般的に許容されている光強度以下の、プログラムされた光強度の低減を含むことができる。
【0063】
光をコントロールする代わりに、または光をコントロールすることに加えて、本明細書中で開示されているシステムはモニタリング用に使用することもできる。例えば、使用者が(例えば、予め保存されている統合的な閾値または関数に基づいて)損傷を引き起こす可能性がある特定の波長および時間において特定の量の光に暴露されたという判定が為された後に、使用者に対して、休養を取るようにおよび/または光のレベルを低減するように警告が発せられる。任意選択的には、そのような警告は、任意選択的にはコントローラーに接続されたアラーム(図示せず)によりもたらされる。任意選択的には、または代替的には、中間的なオートメーションシステム、例えば半自動化システムが提供され、そこでは、使用者が、例えば1つまたはそれ以上の予め設定された光レベルを伴ったノブまたはスイッチを用いて、光レベルを設定することができ、そして、本システムが、そのような設定レベルおよび/または実際の受光レベルに基づいて、許容される暴露時間を計算する。また、時間に関して視覚の質をトレードオフするのも使用者であってよい。
【0064】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、前記アラームは可聴信号であり、例えばブザー、または録音もしくは作成された音声であってよい。任意選択的には、アラームは、光遮断設定を変更することおよび/またはフィルターを追加することおよび/または光遮断眼鏡を変えることを患者に指示する。
【0065】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、コントローラーは、波長、時間、強度による損傷および/または休養期間の間における非線形関係をサポートすべくプログラムされている。任意選択的には、そのようなサポートは、区分線形関数近似または曲線適合関数によるものである。任意選択的には、または代替的には、状況のテーブルおよび値と結果との間でのマッピングが保存される。任意選択的には、実際の暴露がモニタリングされ、また、任意選択的には、例えばコンピュータ用のリンク手段(例えばUSBケーブル)を本システムに接続し、保存されているログファイルを読み出すことにより、医師へ報告される。任意選択的には、該ログは、定期的に、例えば1分間に1回、眼に到達した1つまたはそれ以上の波長における(測定された、または見積もられた)光強度に関して更新される。そのようなログを患者の疾患の進行状況と比較し、薬剤学的な処方および/または光レベルに関する処方の変更を決定する際に利用することができる。
【0066】
本発明の1つの例証的な実施形態においては、使用者(またはセンサー)は、異なる閾値および/または損傷累積計算がより高い血中グルコースレベルおよび/またはインスリンレベルで時間に関して実行されることを可能にするため、(例えば、摂食の指示および患者のグルコース応答および/または薬物治療に基づいて)期待される血中グルコースレベルが指示され得る。任意選択的には、または代替的には、患者が投与される、損傷に対する眼の感度を増大または低減させ得る薬剤に対して、そのようなモニタリングが行われる。
【0067】
クリップオン
次に、図7に注意を向けると、図7は、光変調用にクリップオン(790)素子が用いられている本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。任意選択的には、使用者によって標準的な光学眼鏡(712)が使用者に提供される。前記光学眼鏡(712)は読書用眼鏡もしくは二重焦点眼鏡であってよく、または近視用もしくは遠視用の眼鏡であってもよい。これらの眼鏡は、必ずしも、本発明に関連するいずれかのユニークな素子を含んでいないが、例えばサングラスの場合などのように、光フィルタリング機能を含んでいてもよい。これらユニークな素子はクリップオン(790)素子として提供される。クリップオン(790)は、付随したUV/青色光フィルターおよび光変調フィルター(別々には図示されていない)を有するフィルター(736)を含んでいる。クリップオン(790)は、矢印(795)により示唆されているように、手軽な仕様で眼鏡(712)に取り付けることができる。クリップオン(790)は、光強度センサー(760)、さらにはコントローラー素子(図示せず)を含んでいてよい。クリップオン(790)は既存の眼鏡(712)に取り付けることができ、または使用者の処方眼鏡(712)もしくはその一部を包み込むように設計することもできる。本実施形態の1つの潜在的な利点は、糖尿病患者および他の使用者が、既存の処方眼鏡を、敏感な網膜に到達する光強度を有意に低減する網膜のための光コントロールシステム(700)に即座に換えるのを可能にすることである。本発明の1つの例証的な実施形態においては、クリップオン(790)のフィルター(736)は、任意選択的には当技術分野において公知の染料を用いて、300〜530ナノメートルの波長のUVおよび青色光のうちの90%より多くをフィルターにかけて除去する。任意選択的には、センサー(760)は、例えばワイヤに取り付けられて、眼鏡よりも眼の近くに位置するように構成されており、および/または、例えばセンサーとフィルターとの間にレンズを受け入れるためのスペースを定め、フィルターよりもレンズの反対側に位置するように構成されている。
【0068】
幾つかの実施形態においては、屋外に出かけるときに、使用者は、例えば屋外での光のレベルを50%、70%、90%またはそれ以上低減させるため、例えば上記能動型の眼鏡に、非能動型のクリップオンをクリップオンし得る。任意選択的には、該眼鏡は、そのようなクリップオンを装着した状態で屋外の光レベルの下で作用するように構成されている。
【0069】
色付き眼鏡
図8は、本発明の1つの例証的な実施形態の概略図を示している。網膜のための光コントロールシステム(800)は、レンズ(830)を伴った眼鏡(810)を含んでいる。前記レンズ(830)は、前記眼鏡(810)の設計により自動的に暗くして入射光(850)をフィルターにかけて除去することができるだけでなく、UVおよび青色波長の光を共にフィルターにかけて除去することができる色素材料(840:薄片として示されている)を含んでいる。色素材料(840)は、1つまたは複数の独特な染料層として実現されてよい。色素材料(840)はレンズ(830)に統合されていてもよいし、または別の素子として実現されてもよい。例えば、100〜150ルクスの光が眼鏡(810)を透過することが許容されている使用者の場合には、入射光(850)をフィルターにかけて除去して、100〜150ルクスの光がレンズ(830)を透過して使用者に至ることを許容すべく、色素材料(840)が選択され、かつ、レンズ(830)の構造に調合される。本実施形態の利点は、デザインが簡素化されるだけでなく、エレクトロニクスが存在しないことにおける機能性を含む。入射する光の強度を変調することに加え、UV/青色光線をフィルタリングするための適切な例証的染料が以下で開示されている。任意選択的には、または代替的には、現在使用されている染料が、本明細書で説明されている望ましい効果を達成する量および調合設計で適用される。任意選択的には、1つは固定された量の短波長の光をブロックするためのものであり、もう1つはより長い波長の光を可変的にブロックするためのものである、2組の染料が使用される。
【0070】
トレードオフ
糖尿病患者の治療に関連したトレードオフの1つは、虚弱な網膜に潜在的に損傷を及ぼし得る光との対比における日常の機能にとって必要な光のバランスである。網膜のための光コントロールシステムが屋外での歩行や屋内での読書などの日常的な活動に充分な光をもたらさない場合には、使用者はそのシステムを使用しないであろう。一方で、網膜のための光コントロールシステムまたは市販のUV防止用サングラスが、過剰な光強度が使用者の眼を透過することを許容するものである場合には、生命活動の質の向上は、網膜損傷の拡大および潜在的に加速した失明に相当する犠牲を払うことになるであろう。
【0071】
図9は、視覚および本発明の幾つかの実施形態に関する幾つかの主要な光レベルを概略的に示している。具体的には、線Aは、休養することなく連続的に眼に与えられた場合には、使用者にとって危険であると考えられる光のレベルを概略的に表している。線Bは、使用者が先に記載された(期間および光のレベル)通りの「休養」期間を取ると仮定した場合の、本発明の使用者に許容される光のレベルを示している。線Cは、快適な読書に必要な最小の光レベルを示しており、一方、線Dは、歩行などの屋外環境における正常な視覚機能に関連する最小の光レベルを示している。図示されているように、線CおよびDによって表されている如き「必要な光」と線AおよびBによって表されている如き糖尿病患者にとって危険な光のレベルとの間には小さなウィンドウが存在する。従って、糖尿病状態の性状を認識し、かつ、正常な機能にとって必要な光を考慮して、患者に対する光強度のカットオフ値が設定されるであろう。これらの値は絶対的なものではなく、使用者毎に異なり、さらには、同一の使用者であっても、使用者が長時間光に暴露されている場合には異なり得ることに留意すべきである。例えば、数時間屋外に居る使用者は、より低く、従って、読書または適切な機能にとって必要な光の最小レベルによりずっと近づいた危険閾値(図9における線A’)を有している可能性がある。幾つかの実施形態においては、本発明のシステムは、テーブル、関数および/または決定アルゴリズム(例えば、X時間後には閾値をYに低減する)を用いることにより、使用者が経験している光暴露の時間および強度に応じて、許容される光強度カットオフ値を動的に変えることができる。任意選択的には、実際のカットオフレベルは、算出された値(変動性の許容光レベルをもたらし得る)だけでなく、実際の測定値にも依存する。任意選択的には、本システムは、その後に低照度状況が続く短時間の高照度状況を許容すべく設定される。任意選択的には、光レベルが上昇および/または下降しつつあるときに、患者に対して警告が発せられる。任意選択的には、または代替的には、使用者は、コントロール手段、例えばノブまたはリモートコントロールなどを操作することにより付加的な時間を「要求」することができ、任意選択的には、そのような要求をより長めの休養期間によって補う。任意選択的には、そのような要求は、例えば使用者が予めプログラムされた損傷閾値を越えているときには、拒否されることがある。
【0072】
50〜150ルクスの典型的なカットオフレベルが網膜のための光コントロールシステムにおいて適用され、これは、環境から本明細書で開示されている如き眼鏡を透過することが許容されている光の総量が50〜150ルクスの間であることを意味している。これらの値を強制的なものとするために、本発明の幾つかの実施形態は、包み込むタイプの設計だけでなく、サイド−レンズ/フィルターを含むことができる。
【0073】
例証的手順
次に、図10に注意を向けると、図10は、患者に対する網膜のための光コントロールシステムを作成する上での1つの可能な手順を示すフローチャートである。多くの場合、先に開示されている種々の実施形態は、予め定められた光強度カットオフ値を有する「店頭販売品」として販売され得ることに留意すべきである。さらに、本発明の実施形態の潜在的な使用者は、一般的集団の構成員だけでなく、糖尿病患者、宇宙飛行士およびパイロットなどを含み得ることも理解すべきである。糖尿病患者または眼の健康状態が懸念される人は、本発明の1つの実施形態による1組の眼鏡を購入することが考えられ、この場合、前記眼鏡は、予め定められた量よりも多くの光がレンズを透過して使用者の眼に到達することを許容しない。光強度の範囲は50ルクス〜150ルクスまでの間、または他のある適切な値であり得よう。幾つかの場合においては、使用者は、本発明の様々な実施形態において説明されているような網膜のための光コントロールシステムに対して適合性を有しているものと仮定されている。
【0074】
図10に示されているように、患者が選択される。患者は、一般的に、糖尿病であるか、または黄斑変性もしくは他の網膜関連変性疾患の症状を有しており、または眼損傷を発症するリスクグループに属している。上記のように、ここで言う「患者」は何らかの特定の症状を呈している必要はなく、例えば健常なパイロットであってよい。任意選択的には、患者の糖尿病の状態がチェックされることがある。具体的には、高血糖挙動の程度を決定するため、グルコース濃度をモニタリングすることができる。任意選択的には、眼鏡を合わせる前に、患者の網膜の状態をチェックすることができる。網膜のチェックは、あらゆる適切な方法(例えば、眼底鏡検査法)により実施されてよい。正常な網膜を有する被験者、または糖尿病もしくは他の疾患によって網膜が既に損傷を被っている被験者が、本発明の幾つかの実施形態による眼鏡に適合性を有してもよい。網膜および眼のチェックが行われた後、担当する医師または他の医療実施者は、本発明に従って作成された眼鏡を透過することが許容され得る光の最大量を決定することができる。この最大値は、光が関係した網膜の損傷を伴わずに、最適に光を利用することができるように決定される。最大値は、先に開示されているとおりの休養期間が存在しない場合と存在する場合との両方に対して設定することができる。光強度の最大値が決定された後、眼鏡または他の光フィルタリング素子(コンタクトレンズまたはウィンドウなど)が作成され、関連する光強度コントロールデータが眼鏡の一部にプログラムされる(電子式光フィルターコントロールを含んでいる実施形態の場合)。眼鏡の場合、幾つかの実施形態によれば、光強度センサーおよびコントローラー素子を含めることができる;前者は後者に、コントローラー素子が入射光を適切にフィルタリングしてこれまでに述べられている予め定められた光強度値に下げることができるように、迫り来る光強度についての情報を伝達する。フィルタリングは、眼鏡を透過することが許容されている530〜700ナノメートルの波長の光を変調するためのカラー染料、液晶フィルター、または他の電子的もしくは機械的な手段を含むことができる。300〜530ナノメートルの波長の光は、任意選択的にはレンズに付随するフィルターおよび/または染料が残りの光の強度を変調する前に、恐らくはそのような変調の後に、(例えば、入射光のうちの少なくとも90%が)フィルターで除去される。上述のような眼鏡は、任意選択的には、快適性を得るために患者に合わせてよい。また、眼鏡は、任意選択的には、処方眼鏡であってよい。眼鏡は、任意選択的には、前記眼鏡のレンズを、過剰な光が透過している状態を使用者に対して警告を発することができるようにプログラムされていてよい。追加的に、および任意選択的には、眼鏡は、使用者の状態にとって最大限度であると考えられる期間にわたって使用者が光に暴露されていることを使用者に警告すべくプログラムされていてよい。その場合、コントローラー素子は、レンズ付随型のフィルター素子を透過する光の強度をさらに低減させることもできるし、または使用者が光への暴露から休養を取るように求めることもできる。
【0075】
例証的反応システム
次に、図11Aに注意を向けると、図11Aは、日中に使用したときの本発明の1つの実施形態を示しており、そこでは、上記で一般的に言及された光学密度および/または偏光調整とは対照的に、屈折率の変化が、眼に到達する光の量をコントロールするために使用されている。光屈折性材料、即ち、入射光(1150)に応じて屈折率が変化する材料でできた第1のレンズ(1131)がエッジ(1145)によって定められる開口の前に配置され、その開口のサイズは、第1のレンズ(1131)後の光(1157)の透過を許容すべく選択されている。該開口の後ろには光(1157)を集光して平行光束(1158)にする光屈折性の現像レンズ(1132)が設けられており、該平行光束(1158)が、その後、使用者の眼(1155)に至る。図11Aに描かれているような本発明の実施形態の利点は、第1のレンズ(1131)と開口との間の日中用焦点(1180)を含むことである。開口は、光反応性の第1レンズ(1131)を透過した光が集光用の第2のレンズ(1132)に到達することができるように位置付けられ、かつ、そのような直径に成されている。図11Bには、夜間/屋内条件が示されている。夜間/屋内条件は、より多くの光(1157)が開口および第2のレンズ(1132)を透過して使用者の眼に至ることが許容される夜間用焦点(1181)を必要とする。例えば、日中用焦点(1180)は第1のレンズ(1131)から3ミリメートルであってよく、一方、夜間用焦点(1181)は第1のレンズ(1131)から7ミリメートルであってよい。夜間用焦点(1181)は日中用焦点(1180)よりも長いであろう。エッジ(1145)により定められる如き開口は、常に、夜間用焦点(1181)の場所の後ろに位置するであろうが、その具体的な位置は、使用者の眼(1155)への最適な光の送達が可能になるように、慎重に選定されなければならない。レンズ(1131、1132)の構成において使用するための光屈折性結晶の非限定的な例としては、BaTiO3(透過率400〜900ナノメートル)、KNbBO3(透過率400〜900ナノメートル)およびLiNbO3(透過率400〜700ナノメートル)が挙げられる。
【0076】
この出願から特許権が満了するまでの期間に、多くの関連するサングラスおよび光変調技術ならびに同様な装置が開発されるものと予期され、用語の範囲は、演繹的にすべてのそのような新しい技術を含めるべく意図されている。
【実施例】
【0077】
糖尿病状態と関連する網膜に到達する光の強度をコントロールすることによる有効性を決定するため、動物実験を行った。
【0078】
実験の目的:この実験の目的は、網膜症および白内障の進展に及ぼす光の影響を糖尿病ラットにおいて調べることであった。
【0079】
材料および方法:ストレプトゾトシン(STZ)を腹腔内に注入することにより、ラットに糖尿病を誘発した。STZを注入してから3日後に、血中グルコースレベルを測定した;血中グルコースレベル>300mg%のラットを糖尿病と同定した。実験は糖尿病を誘導してから7日後に開始された。
【0080】
実験グループ:
12匹のラット(6匹は対照、6匹は糖尿病):12(時間)−通常の光/12(時間)−暗状態。
12匹のラット(6匹は対照、6匹は糖尿病):12(時間)−フィルタリングされた光/12(時間)−暗状態。
8匹のラット(4匹は対照、4匹は糖尿病):24(時間)−暗状態。
4匹のラット(2匹は対照、2匹は糖尿病):24(時間)−フィルタリングされた光。
【0081】
フィルタリングされた光の特徴:光強度が600ルクスから150ルクスへ低減され、かつ、波長が530nm以下の光はブロックされた。
【0082】
11週間後、網膜機能を評価するため、ERG記録およびミューラー細胞におけるGFAP発現の両方を調べた。白内障の進展が別のDMの徴候としてモニタリングされた。
【0083】
【0084】
フィルタリングされた光を24(時間)/日浴びたグループに由来するラットの網膜は完全に破壊されていた。ERG記録は0であり、GFAPが全網膜で発現された。
【0085】
実験から得られた結論および本発明の幾つかの実施形態における反映
*すべてのグループにおいて、糖尿病ラットは対照ラットよりも多くの影響を受けた。
*糖尿病ラットおよび対照ラットのどちらも、光の強度が高ければ高いほど、網膜への損傷が悪化した。
*通常の光とフィルタリングされた光との差異は、フィルタリングされた光と暗状態との間で見られた差異よりも顕著であった。
*ERGのすべての知見が免疫細胞化学(GFAP発現)データにより支持された。
*フィルタリングされた光の下に常に(24時間/日)居たラットの網膜は完全に破壊されており、これは、網膜が回復するためには最小の暗状態期間が必要であることを示しているものと思われる。
*白内障は、光に暴露された糖尿病ラットの水晶体においてのみ発症した。
*光をフィルタリングすることにより、白内障を発症するリスクが低減された。
【0086】
光強度および波長が<530nmの光の遮断の両方の低減が、網膜損傷および糖尿病動物における白内障の進展の低減に寄与する。
【0087】
次に、図12Aに注意を向けると、図12Aは、上記実験において使用されたラットの網膜の暴露に対する結果を示している。ミューラー細胞におけるタンパク質GFAP(グリア細胞線維性酸性タンパク質、1201)が、何ら光のフィルタリングを伴わない状態での光の暴露後に、暗色で示されている。フィルタリングされた光に暴露された細胞におけるGFAP着色(図12B、1201)と比較した際のこの暗色は、網膜に対する強い光の過剰暴露の証拠である。内部および外部細胞に関連する光受容体の数(1202、図12A)は、フィルタリングされた光に暴露された細胞に関連する光受容体の数(1202、図12B)と比較して、フィルタリングされていない光に暴露された網膜に対して有意に少ない。
【0088】
一般的事項
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0089】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0090】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0091】
「患者」、「使用者」、および「糖尿病患者」は、交換可能に使用され、概して本発明の実施形態を利用し得る人に言及することに注意されたい。
【0092】
本明細書で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0093】
本願を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0094】
数値範囲が本明細書で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生物化学、および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、および/または、逆向きにすること、状態の臨床的症状および/または審美的症状を実質的に改善すること、ならびに/あるいは、状態の臨床的症状および/または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0097】
「例証的」という用語は、本明細書では、「例、事例または実例である」ことを意味すべく使用される。「例証」として開示されている実施形態は、必ずしも、他の実施形態に対して好適もしくは有利であると解釈されるべきではなく、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを除外するものでもない。
【0098】
「任意選択的に」という用語は、本明細書では、「幾つかの実施形態においては提供され、別の実施形態においては提供されない」ことを意味すべく使用される。本発明のあらゆる特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾をきたすものでない限り、複数の「任意の」特徴を含むことができる。
【0099】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0100】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0101】
具体的には、本発明の実施形態は、側方から来て眼内に散乱する光を測定することによって使用者の網膜上の光を見積もることができる。個々の使用者に対する散乱係数をコントローラー素子に予めプログラムしておくことができる。あるいは、瞳孔のサイズを測定し、眼の後方で網膜に実際に到達する光強度の量を計算する際に使用することもできる。
【0102】
さらに、光強度の計測器は、眼鏡の外側で入射光線に面する場所に設けてもよい。さらにおよび/または代替的に、光強度の計測器は、本発明の実施形態に関連するフィルターを透過する光のレベルをモニタリングするために、眼鏡の内側に配置することもできる。さらに、内部の光強度計測器は、本発明の実施形態が機能しているのを確認することができる。
【0103】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に参照により本明細書に組み込まれて提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100ルクス〜5000ルクスに及ぶ照度条件の範囲にわたって、眼に到達する光の強度を、第1の予め設定された値以下であって、かつ、第2の予め設定された値以上になるように能動的に維持するように構成されたアイウェアであって、第2の値は関数的に利用可能であって、かつ、30ルクス以上であるアイウェア。
【請求項2】
電気的にコントロールされる少なくとも1つの光減衰素子、少なくとも1つのセンサー、および前記センサーからの光強度信号に応じて前記光減衰素子をコントロールする少なくとも1つの回路構成を含む、請求項1に記載のアイウェア。
【請求項3】
前記回路構成は、累積損傷の評価に従って、前記到達強度を変動させる、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項4】
前記回路構成はアラームを含む、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項5】
前記センサーは、前記アイウェアから物理的に分離する、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項6】
前記回路構成は、前記予め設定された値のうちの少なくとも1つに関してプログラム可能である、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項7】
入射する光の強度に応じて光学密度を変える少なくとも1つの非線形染料を含む、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項8】
500nmよりも短い波長の光をブロックする少なくとも1つの固定フィルターを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のアイウェア。
【請求項9】
前記ブロックされた光は、前記第2の予め設定された値以下にブロックされる、請求項8に記載のアイウェア。
【請求項10】
550nmよりも大きな波長の光をブロックする少なくとも1つの可変型光フィルターを含む、請求項1〜9のいずれかに記載のアイウェア。
【請求項11】
以下のものを含む眼損傷モニター:
(a)光センサー;
(b)前記センサーからの光読み取り値を累積し、かつ、光誘起性損傷の指示を発生する回路構成;および
(c)前記指示に反応する出力装置。
【請求項12】
前記出力装置はアラーム装置を含む、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項13】
前記出力装置は、眼に隣接して取り付けることができるように適合されている少なくとも1つの光学的な光フィルターを含む、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項14】
前記回路構成は、異なる波長においては異なる読み取り値の累積を行う、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項15】
眼に及ぼす損傷を防止または低減する方法であって、
眼と関連する能動的な光学素子を利用して、眼に到達する光の強度を、屋内活動および屋外活動の両方に対して、ある損傷レベル以下に維持するステップ
を含む方法。
【請求項16】
特定の患者に対して前記損傷レベルを決定するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記維持ステップにおいて、損傷レベルと機能的に有用なレベルをトレードオフするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記維持ステップは、その時間のうちの少なくとも50%について維持することを含む、請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
眼球モニタリング方法であって、
眼に到達する光の強度を長期間にわたって追跡するステップ
を含む方法。
【請求項20】
前記追跡ステップは複数の波長で追跡することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糖尿病患者における網膜損傷を防止し、かつ、白内障の進展を防止するための方法であって、
患者を選択するステップ;および
前記患者に光フィルターを提供するステップであって、前記光フィルターが前記光フィルターのレンズを透過する光に対して、最大光強度カットオフ値を有する、ステップ
を含む方法。
【請求項22】
前記最大光強度カットオフ値は150ルクスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
300〜530ナノメートルの波長を有する光のうちの少なくとも90%を除去するためのフィルターを提供するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記光フィルターは光屈折性の材料から作られている、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
100ルクス〜5000ルクスに及ぶ照度条件の範囲にわたって、眼に到達する光の強度を、第1の予め設定された値以下であって、かつ、第2の予め設定された値以上になるように能動的に維持するように構成されたアイウェアであって、第2の値は関数的に利用可能であって、かつ、30ルクス以上であるアイウェア。
【請求項2】
電気的にコントロールされる少なくとも1つの光減衰素子、少なくとも1つのセンサー、および前記センサーからの光強度信号に応じて前記光減衰素子をコントロールする少なくとも1つの回路構成を含む、請求項1に記載のアイウェア。
【請求項3】
前記回路構成は、累積損傷の評価に従って、前記到達強度を変動させる、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項4】
前記回路構成はアラームを含む、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項5】
前記センサーは、前記アイウェアから物理的に分離する、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項6】
前記回路構成は、前記予め設定された値のうちの少なくとも1つに関してプログラム可能である、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項7】
入射する光の強度に応じて光学密度を変える少なくとも1つの非線形染料を含む、請求項2に記載のアイウェア。
【請求項8】
500nmよりも短い波長の光をブロックする少なくとも1つの固定フィルターを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のアイウェア。
【請求項9】
前記ブロックされた光は、前記第2の予め設定された値以下にブロックされる、請求項8に記載のアイウェア。
【請求項10】
550nmよりも大きな波長の光をブロックする少なくとも1つの可変型光フィルターを含む、請求項1〜9のいずれかに記載のアイウェア。
【請求項11】
以下のものを含む眼損傷モニター:
(a)光センサー;
(b)前記センサーからの光読み取り値を累積し、かつ、光誘起性損傷の指示を発生する回路構成;および
(c)前記指示に反応する出力装置。
【請求項12】
前記出力装置はアラーム装置を含む、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項13】
前記出力装置は、眼に隣接して取り付けることができるように適合されている少なくとも1つの光学的な光フィルターを含む、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項14】
前記回路構成は、異なる波長においては異なる読み取り値の累積を行う、請求項11に記載の眼損傷モニター。
【請求項15】
眼に及ぼす損傷を防止または低減する方法であって、
眼と関連する能動的な光学素子を利用して、眼に到達する光の強度を、屋内活動および屋外活動の両方に対して、ある損傷レベル以下に維持するステップ
を含む方法。
【請求項16】
特定の患者に対して前記損傷レベルを決定するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記維持ステップにおいて、損傷レベルと機能的に有用なレベルをトレードオフするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記維持ステップは、その時間のうちの少なくとも50%について維持することを含む、請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
眼球モニタリング方法であって、
眼に到達する光の強度を長期間にわたって追跡するステップ
を含む方法。
【請求項20】
前記追跡ステップは複数の波長で追跡することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糖尿病患者における網膜損傷を防止し、かつ、白内障の進展を防止するための方法であって、
患者を選択するステップ;および
前記患者に光フィルターを提供するステップであって、前記光フィルターが前記光フィルターのレンズを透過する光に対して、最大光強度カットオフ値を有する、ステップ
を含む方法。
【請求項22】
前記最大光強度カットオフ値は150ルクスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
300〜530ナノメートルの波長を有する光のうちの少なくとも90%を除去するためのフィルターを提供するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記光フィルターは光屈折性の材料から作られている、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公表番号】特表2010−534350(P2010−534350A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517539(P2010−517539)
【出願日】平成20年7月20日(2008.7.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001002
【国際公開番号】WO2009/013737
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(507342353)ラパポート ファミリー インスティテュート フォー リサーチ イン ザ メディカル サイエンシーズ (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月20日(2008.7.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001002
【国際公開番号】WO2009/013737
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(507342353)ラパポート ファミリー インスティテュート フォー リサーチ イン ザ メディカル サイエンシーズ (6)
【Fターム(参考)】
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