光路制御フィルタ、及びこれを備えた画像表示装置
【課題】ディスプレイパネルの画素配列との干渉によるモアレ発生を防いだ光路制御フィルタと、これを用いた表示装置を提供する。
【解決手段】光路制御フィルタ10は、ストライプ状に光吸収部1aと光透過部1bとが交互に配列した光路制御層1を備える。光吸収部1aを上から見た遮光パターン1Pが、種パターン2Pから生成されてなり、この種パターンが、二つの分岐点Bの間を延びて光透過部に対応する透過領域の元になる開口領域Aを閉領域として画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなる。この種パターンに平行四辺形の生成量域を定め、この中から左右を最短距離ぶ結ぶ境界線分を連結線分Lcとして上から順番に抽出して遮光パターンとする。
【解決手段】光路制御フィルタ10は、ストライプ状に光吸収部1aと光透過部1bとが交互に配列した光路制御層1を備える。光吸収部1aを上から見た遮光パターン1Pが、種パターン2Pから生成されてなり、この種パターンが、二つの分岐点Bの間を延びて光透過部に対応する透過領域の元になる開口領域Aを閉領域として画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなる。この種パターンに平行四辺形の生成量域を定め、この中から左右を最短距離ぶ結ぶ境界線分を連結線分Lcとして上から順番に抽出して遮光パターンとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にはディスプレイパネルに適用する光学フィルタとして光の進路を制御する光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置に関する。特に、ディスプレイパネルと組み合わせたときに、ディスプレイパネルの画素の配列周期との干渉によるモアレ(縞模様)が生じない光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種ディスプレイパネルを用いた、テレビジョン、電子看板、多機能携帯情報端末などの各種画像表示装置が実用化されている。また、ディスプレイパネルの観察者側には、ディスプレイパネルの画像光を、効果的に観察者に届けるために、光の進行方向を適切に拡散または集光する光路制御フィルタが、組み込まれている(特許文献1)。
光路制御フィルタは、画像光を適切に拡散し適切に集光すると共に、不要な外光を吸収することで正面輝度を向上させるコントラスト向上機能、視野角を適切に拡大または収束させる視野角制御機能などの光路制御機能を有する。
【0003】
こうした光路制御フィルタは、不要光を吸収する柱状の光吸収部が層面に沿って一定の間隔を空けてストライプ状或いは格子状に多数配列し、この光吸収部の間に必要光を透過させる光透過部を設けた構造を有する光路制御層を備えている。
【0004】
ところで、従来の光路制御フィルタは、光吸収部が一定の繰返周期で配列しているために、ディスプレイパネルと組み合わせて、画像表示装置としたときに、ディスプレイパネルを構成する画素の配列周期と干渉して、モアレ(縞模様)が生じることがある。
そこで、特許文献1のように、直線状或いは波状に伸びる光吸収部の配列方向を、ディスプレイパネルを構成する画素の配列方向に対して傾斜させ、バイアス角を設けることが知られている。こうしたモアレ防止のためにバイアス角を設ける手法は、光路制御フィルタに限らず、ディスプレイ関係では、プラズマディスプレイパネルの前面用電磁波遮蔽フィルタにおいても、特許文献2のように、その導電体メッシュの開口部の配列方向にバイアス角を設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313360号公報
【特許文献2】特開昭61−200783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、モアレ防止のために、バイアス角を設ける手法は、設定する最適なバイアス角が、ディスプレイパネルの画素寸法、画素間寸法、画素の配列周期、光路制御フィルタでの光吸収部の寸法及び光吸収部間の寸法、光吸収部の配列周期の全てが関係する。このため、組み合わせるディスプレイパネルの画面サイズ毎にそれぞれ設計し、多数の仕様の光路制御フィルタが必要となり、製品歩留まりが低下するなどの問題があった。また、汎用品として製造できないため、生産効率が悪く、低コスト化の妨げになっていた。
【0007】
この点に対する或る程度の改善策として、製造途中では製品毎にバイアス角を決めないで、図14で示すように、連続帯状(ウェブ状)で、光吸収部41の延在方向が流れ方向MDに平行(繰返周期を有する配列方向は幅方向TDに平行)な中間製品40wから、枚葉状の光路制御フィルタ40を、所要のバイアス角θに応じて流れ方向MDに対して斜めに切り出す方法もある。
しかし、この方法は、図14から見てとれるように、無駄部分42が多いという問題がある。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、バイアス角を設けなくてもモアレが防止できる光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、次の様な構成の光路制御フィルタと画像表示装置とした。
(1)フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部と、この光吸収部同士の間の光透過部と、を有する光路制御層を備えた光路制御フィルタであって、
前記光吸収部をフィルタ面の法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部を透過領域とする遮光パターンが、種パターンから生成されてなり、
この種パターンが、
二つの分岐点の間を延びて前記透過領域の元になる開口領域を閉領域として画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなるパターンであり、
前記遮光パターンが、
前記種パターンについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターンを生成するための生成領域として定め、この生成領域に対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向とを定め、
前記第1の方向に大局的に延在する遮光パターンを、
前記第2の方向における前記生成領域の一端から他端まで順番に、前記境界線分が前記生成領域の前記第2の方向に平行な二つの辺のうち一方の辺との交差点を開始点とし、他方の辺との交差点を終了点として定め、
前記第2の方向に前記一端から前記他端まで順番に、前記開始点と前記終了点とを最短距離で結ぶ境界線分の組を連結線分として選択し、この連結線分から外れた境界線分は消去して、この境界線分を挟んで対向する開口領域を連結して前記第1の方向に延在する前記透過領域とすることで、
前記光吸収部に対応する連結線分からなる遮光パターンとして生成されてなる、
光路制御フィルタ。
(2)前記光路制御層に透明基材が積層されている、前記(1)の光路制御フィルタ。
(3)ディスプレイパネルと、前記(1)または(2)の光路制御フィルタとを備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光線の進路を制御する光路制御層が有する遮光パターンの線分が直線ではなくランダムな形状からなる線分であると共に、線分の配列に周期性が存在しないために、バイアス角を設定しなくても、モアレ発生を極めて効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光路制御フィルタの一実施形態における、遮光パターンを示す平面図(A)と、光路制御フィルタの断面図(B)と、遮光パターンの種パターンを示す平面図(C)。
【図2】本発明による光路制御フィルタの別の一実施形態(透明基材付き)を示す断面図。
【図3】種パターンの一例を示す平面図。
【図4】種パターンで画成される開口領域の配置に、周期性を有する方向が存在しないことを説明する平面図。
【図5】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成して種パターンを決定する方法を示す図。
【図10】種パターンから遮光パターンを生成する方法を示す図。
【図11】光吸収部の主切断面形状の各種例を示す断面図。
【図12】種パターンが光路制御フィルタの寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図13】本発明による画像表示装置の一実施形態を示す断面図。
【図14】従来の光路制御フィルタが繰返周期を有するが故にバイアス角付きのものを切り出すときに生じる無駄を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0014】
「シート面」とは、シート状の光路制御フィルタ10を全体的かつ大局的に見た場合において、この光路制御フィルタ10の平面方向と一致する面のことを意味する。通常は、光路制御フィルタ10の表面、裏面、又は表裏両面と平行な面となる。図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
「主切断面形状」とは、「シート面」に立てた法線nに平行な断面のうち、光吸収部1a乃至はその遮光パターン1Pの注目部分における延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける形状のことを意味する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線の方向から見た形状のことを意味する。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0015】
〔B〕光路制御フィルタ:
図1は、本発明の一実施形態における光路制御フィルタ10を示す。本実施形態における光路制御フィルタ10は、形状がシート状の形態で、そのフィルタ面でもあるシート面はXY平面に平行な面で、入光面及び出光面となっており、シート面の法線(nの)方向がZ軸方向となっている。図1(A)及び図1(C)は平面図、図1(B)は図(A)のY軸方向に平行な面における断面図である。
【0016】
この光路制御フィルタ10は、フィルタ面1sに沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部1aと、この光吸収部1a同士の間の光透過部1bと、を有する光路制御層1を備える。光吸収部1aは光吸収性材料で構成され、光透過部1bは光透過性材料で構成される。
前記光吸収部1aは、この光吸収部1aをフィルタ面1sの法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部1bを透過領域Tとする遮光パターン1Pが、図1(C)の平面図で示す種パターン2Pから生成されてなる。
【0017】
この種パターン2Pは、二つの分岐点Bの間を延びて前記透過領域Tの元になる開口領域Aを閉領域として画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でない。また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。
図1(C)では、点線で示す境界線分Lは、種パターン2Pにおける境界線分Lのうち、遮光パターン1Pに採用されなかった線分を示す。
【0018】
したがって、この種パターン2Pから生成される遮光パターン1Pを呈する光吸収部1aは、その延在方向での形状が直線状ではなくランダムで不規則な折線状で非周期的な形状であると共に、その配列周期にも周期性が存在しない。
このため、本実施形態による光路制御フィルタ10は、ディスプレイパネルの画素の配列周期との干渉によるモアレを、バイアス角を設定しなくても、極めて効果的に防ぐことができる。
【0019】
なお、本発明においては、図2の断面図で示す一実施形態の光路制御フィルタ10のように、光路制御層1は、機械的強度を補強するため等を目的として、透明基材3を積層することができるなど、各種変形形態をとり得る。
【0020】
以下、本発明に特徴的な遮光パターン1Pを有する光路制御層から詳細に説明する。
【0021】
〔光路制御層〕
光路制御層1は、平面視形状が前記した特定のパターンからなる遮光パターン1Pを呈する柱状の光吸収部1aと、この光吸収部1a以外の部分を占める光透過部1bとからなる。光吸収部1aが不要光を吸収し、光透過部1bが必要光を透過させる。光吸収部1aはランダム線状乃至折線状のの柱状形状であり、その大局的な延在方向を略平行にして、フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列される。この光吸収部1a同士の間が光透過部1bとなっている。この結果、光吸収部1aと光透過部1bとが交互にストライプ状に配列している点では、従来の光路制御層と同じであるが、その平面視形状である遮光パターン1Pの不規則性において本発明は異なる。
【0022】
光路制御層1を構成する光吸収部1a及び光透過部1bは、従来公知の材料及び形成法によることができる。そこで、これらについては後ほど説明することとし、先ず本発明の特徴的な要件である、光吸収部1aが呈する遮光パターン1Pから説明する。
【0023】
[遮光パターン]
遮光パターン1Pは、光吸収部1aの平面視形状であり、ランダムで不規則な線状の線分が互いに間隔を空けて多数、非周期的に配列したパターンである。この遮光パターン1Pは、種パターン2Pから生成されてなるパターンである。
【0024】
[種パターン]
種パターン2Pは、遮光パターン1Pがストライブ状のパターンであるのに対して、メッシュ状のパターンである。
【0025】
[種パターンとこれにより画成される開口領域]
種パターン2Pは、光吸収部1aを、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における、光吸収部1aの平面視形状である遮光パターン1Pの元になるパターンである。以下、この種パターン2Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0026】
種パターン2Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないパターンとなっている。また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。
本発明において、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列、とも言う。
【0027】
図3および図9に示すように、種パターン2Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。種パターン2Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、種パターン2Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
【0028】
なお、種パターン2Pは、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となって、モアレを防ぐ効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aを種パターン2Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、種パターン2Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口領域Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数)と一致する。また、以上に於いて、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0029】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、光路制御層1に十分な不要光吸収機能と高い必要光透過機能とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0030】
一方、モアレの発生を防止するため、遮光パターン1Pの全領域の生成に対応する種パターン2Pは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようになっている。モアレを確実に解消する為には、種パターン2Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に種パターン2Pのパターンを不規則化するのではなく、種パターン2Pの開口領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないように種パターン2Pのパターンを画成することにより、ディスプレイパネルの画素配列との干渉により生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0031】
[繰返周期の不存在]
図4は、種パターン2Pで画成される多数の開口領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でない。そして、開口領域Aに一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない、ことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口領域Aに対して直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に種パターン2Pとは分離して描いてある。
【0032】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0033】
さらに、本実施形態による光路制御フィルタ10の光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、種パターン2Pの配列パターンを、直線がその延在方向を互いに平行にして一定の間隔で周期的配列した単純なストライプパターンの生成に繋がる正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口領域Aの配列を不規則化して、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0034】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、種パターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されている種パターン2Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該種パターン2Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0035】
実際に、図3に示された種パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の種パターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0036】
[種パターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記種パターン2Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0037】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して種パターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0038】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0039】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0040】
以上の手順で、種パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。種パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、種パターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0041】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0042】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうのした母点(群)BPから生成される種パターン2Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0043】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
【0044】
この様に構成することにより、種パターン2Pにおける、任意の一定の小面積内に占める複数の開口領域Aのそれぞれの面積を合計した合計面積の面分布が、より均一化し明暗ムラが防止される。この面分布の面均一性が不足すると生じる明暗ムラを、実質上、目視不能とし、且つ種パターン2Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口領域Aの大きさDの最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
【0045】
ここで、開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最大の対角線長)を以って、大きさDとする。
【0046】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0047】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0048】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、種パターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0049】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成された種パターン2Pから生成される遮光パターン1Pを呈する光路制御層1よって得られる不要光吸収性能と必要光透過機能性能とを勘案して、決定される。以上のようにして、種パターン2Pのパターンを決定することができる。
【0050】
[種パターンから遮光パターンの生成]
図10により、種パターン2Pから遮光パターン1Pを生成する方法を説明する。
最初に、種パターン2Pについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターン1Pを生成するための生成領域Wとして定める。本実施形態においては、この生成領域Wの平行四辺形として長方形を採用する。
なお、この生成領域Wは、得られる遮光パターン1Pを光路制御フィルタ10として利用する際の該光路制御フィルタ10の1枚(1使用単位)分の形状に対応する。
次に、この生成領域Wに対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向d1と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向d2とを定める。本実施形態においては、第1の方向d1は図面左右方向(水平方向)とし、第2の方向d2は図面上下方向(垂直方向)とする。また、生成領域Wには長方形を採用するので、第1の方向d1と第2の方向d2とは互いに直交する。
【0051】
次に、第1の方向d1に大局的に延在する遮光パターン1Pを、次の様にして生成する。
先ず、第2の方向d2に平行な対向する二辺W2c,W2dのうち一方の辺W2cと境界線分Lとの交差点を開始点Psとし、他方の辺W2dと境界線分Lとの交差点を終了点Peとして定める。同図では、開始点Psとして生成領域Wの一端W2a側から他端W2bに向けて順番に、Ps1,Ps2,・・・が定まり、同様に、終了点PsとしてPe1,Pe2,・・・が定まる。
次に、第2の方向d2に一端W2aから他端W2bまで順番に、各開始点Psiと各終了点Peiとを最短距離で結ぶ境界線分Lの組を連結線分Lciとして順次選択していく。尚、ここでi=1,2,3,・・は順番を表す自然数とする。同図では、開始点Ps1と終了点Pe1を連結する連結線分Lc1が選択され、次に、開始点Ps2と終了点Pe2を連結する連結線分Lc2が選択されていく。
こうして、最後に、前記連結線分Lcから外れた境界線分Lは消去して、この境界線分Lを挟んで対向する開口領域A同士を連結して第1の方向d1に延在する透過領域Tとする。同図では、消去される境界線分Lを点線で示してある。
【0052】
以上の結果、生成した複数の連結線分Lcからなる遮光パターン1Pが生成される。
【0053】
こうして、生成された遮光パターン1Pとなる様に、光吸収部1aと光透過部1bとを備えた光路制御層1を形成することで、光路制御フィルタ10が作製される。
【0054】
以上のような本実施形態の遮光パターン1Pによれば、その元になる種パターン2Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素が配列されたディスプレイパネルに、この種パターン2Pから生成された遮光パターン1Pを有する光路制御層1を備えた光路制御フィルタ10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0055】
[光吸収部の主切断面形状と寸法]
光吸収部1aの主切断面形状は、任意である。図11に光吸収部1aの主切断面形状の各種形状を例示する。前記図1を参照した実施形態では、図11(1)の四角形状であった。この他、図11(2)の三角形状や、図11(3)の台形形状のような楔形状などもある。また、主切断面形状は、五角形形状、六角形形状等でも良く、或いは、図11(4)、図11(5)に示す、三角形や台形等の両方又は片方の斜辺が、折れ線化又は曲線化した形状(光吸収部1aの外側に向かって凸形状或いは凹形状)等でも良い。
光吸収部1aの高さ(厚み)は光透過部1bの厚みと同じで、光吸収部1aと光透過部1bとが光路制御層1の層面の両面で面一となるものでもよいし、或いは光吸収部1aの高さは光透過部1bの厚みよりも少なくてもよい(例えば光透過部1bの厚みの80〜99%の厚み)。
光吸収部1aの主切断面形状は、要求される外光遮蔽特性に応じて設計する。
光吸収部1aの主切断面形状の寸法は、一例を示せば、厚み(高さ)は50〜200μm程度、幅は10〜50μm程度、配列時の隙間は平均して50〜100μm程度である。
【0056】
[光透過部の主切断面形状と寸法]
光透過部1bの主切断面形状は、光路制御層1のうち光吸収部1aが占める部分を除いた相補的な形状及び寸法となる。
光透過部1bの厚みは、光路制御層1の厚みに通常等しく、例えば100〜300μm程度である。
【0057】
〔光吸収部の材料〕
光吸収部1aは、光吸収性の暗色材料で形成することができる。暗色材料としては有機材料、無機材料、いずれでも良い。有機材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の暗色樹脂組成物を用いることができる。
該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。光吸収性色材の含有量は、樹脂分固形分100質量部に対して例えば5〜100質量部である。
樹脂バインダの樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0058】
〔光透過部〕
光透過部1bは、画像光を透過させる光学要素である。
光透過部1bは、厚み方向では厚みが、光吸収部1aの厚み以上で、面方向では光吸収部1a同士の間を埋めて光吸収部1aを少なくとも側面から支持して(図1の光吸収部1aと光透過部1bの厚みが同じ場合)機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光学要素である。光透過部1bは透明な樹脂層として形成することができる。
【0059】
[材料]
光透過部1bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0060】
〔光路制御層の形成法〕
光路制御層1の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂に電離放射線照射して重合させて形成する、いわゆるフォトポリマー法(別名2P法)で形成する。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用すれば、透明基材3を連続シートで供給しながら連続的に成形できる点で、生産性に優れる成形方法である。
例えば、先ず最初に、透明基材3上に未硬化で液状の電離放射線硬化性樹脂を塗工し、形成された塗膜上に光吸収部1aに対応する凹凸形状を表面に有する成形型を接触させた状態で該電離放射線硬化性樹脂に紫外線など電離放射線を照射してこれを硬化させた後、離型することによって表面に光吸收部1aと逆凹凸形状の凹部を有する光透過部1bを形成する。次に、前記凹部の内部のみに、暗色材料の暗色インクをワイピング法で充填し固化させて光吸収部1aを形成して、光路制御層1とする。
【0061】
〔透明基材〕
本発明においては、図2で例示した様に、光路制御フィルタ10は、その光路制御層1に透明基材3が積層されてもよい。透明基材3は、光路制御層1それ自身では機械的強度が不足する場合、光路制御層1の形成を容易にする場合などの為に、設けられる。
透明基材3としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等からなる樹脂シート、ガラス、セラミックス等の無機板が用いられる。
【0062】
〔その他の層〕
本発明においては、図示はしないが、光路制御フィルタ10は、上記した以外のその他の層が積層されていても良い。例えば、機能層である。機能層としては、各種光学シートにおいて従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、光学的機能を担う光学機能層として、反射防止層、防眩層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ネオン光吸収層、着色層などが挙げられ、光学的ではない機能を担う非光学機能層として、電磁波遮蔽層、帯電防止層、防汚層、耐衝撃層、ハードコート層、粘着剤層、接着剤層などが挙げられる。それぞれの機能層の内容は、従来公知のものとすることができる。
光路制御フィルタ10は、これらの機能層により、1または複数の機能を有するものとすることができる。複数の機能を設ける場合、それぞれの機能毎に1層を設けても良いし、複数の機能を1層で兼用して設けてもよい。
機能層の光路制御層1に対する位置は任意である。ただし、反射防止層は最外層として設けるなど機能層により自ずと位置が決まるものもある。
【0063】
〔変形形態〕
本発明の光路制御フィルタ10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0064】
[開口領域の形状]
開口領域Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口領域Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、元になる種パターン2Pの粗密による明暗ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口領域Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図4に示した種パターン2Pについて、合計4631個の開口領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
なお、こののメッシュパターンについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0065】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、光路制御フィルタ10中の光路制御層1の全領域において、該光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが、この種パターン2Pによって画成される開口領域Aが周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図12の様に、その内部に於いて光路制御層1が有する種パターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して種パターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、種パターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレは生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内における種パターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0066】
特に最近では、ディスプレイパネルの大型化が進んでおり、この様な大画面のディスプレイパネルに対しては、光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、種パターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0067】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図12に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図12の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0068】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての周期性ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、ディスプレイパネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。この関係は、該種パターン2Pから生成された遮光パターン1Pに於いても同様である。
【0069】
図12に示された例では、光路制御フィルタ10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図12の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図12の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0070】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図13に例示する実施形態例の様に、上記の様な光路制御フィルタ10と、ディスプレイパネル20とを少なくとも備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記ディスプレイパネル20以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
ディスプレイパネル20は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。ディスプレイパネル20としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路とディスプレイパネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、ディスプレイパネル20は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0071】
本光路制御フィルタ10のディスプレイパネル20に対する配置は、図13(A)の様に、ディスプレイパネル20の画像を観察する観察者V側の前面側(画面側)でも良いし、これとは逆に、図示はしないが、ディスプレイパネル20の背面側でも良いし、或いは前面側と背面側の両方の側でも良い。なお、背面側に配置する場合は、ディスプレイパネル20を背面から照明する光源からの光を受けてディスプレイパネル20を照明する為の部材となる。また、背面側に配置する場合は、画像コントラスト向上機能、視野角規制機能ではなく、光源からの光源光の集光機能などを発現する。
【0072】
画像表示装置100は、更に、図13(B)の実施形態例で示すように、機能層30を備えていても良い。機能層30は、例えば光路制御フィルタ10に属する層として説明した前記した機能層である。こうした機能層30を有する光学部材が配置される。したがって、機能層30は、例えば、電磁波遮蔽層などを有する光学フィルタ等である。機能層30を配置する位置は、その機能に用途に応じた位置とする。図13(B)は、本光路制御フィルタ10がディスプレイパネル20の観察者V側に配置された場合の形態である。図13(B)は、ディスプレイパネル20と、このディスプレイパネル20の観察者V側に配置した光路制御フィルタ10との間に、機能層30を配置した形態である。この他、図示は省略するが、ディスプレイパネル20の観察者V側に配置した光路制御フィルタ10に対して、更にその観察者V側に機能層30を配置する形態、ディスプレイパネル20の観察者V側に光路制御フィルタ10を配置し、機能層30は逆にディスプレイパネル20の背面側に配置する形態等があり得る。
【0073】
図面では光路制御フィルタ10、ディスプレイパネル20、機能層30のそれぞれは、互いに分離独立して間に空気層を介して配置した構成となっているが、間に透明樹脂の接着剤層を介して積層一体化しても良く、一体化により総厚みを減らすことができる。
【0074】
以上のように、光路制御フィルタ10を用いた画像表示装置100とすることによって、光路制御層1の光吸収部1aの周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による濃淡ムラも解消して、これらを両立させた画像表示装置とすることができる。
【0075】
〔D〕用途:
本発明による光路制御フィルタ10は、各種ディスプレイパネルの観察者側の前面(画面)側、或いは逆側の背面側に配置する用途が好適である。また、この光路制御フィルタ10を備える画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
この他、本発明による光路制御フィルタ10は、住宅、店舗、学校、事務所、病院乃至医院等の建物の窓、透明な扉、透明な壁面乃至間仕切に貼着し、覗き見防止、日光の遮蔽等の機能を付与する用途にも使用出来る。
【符号の説明】
【0076】
1 光路制御層
1a 光吸収部
1b 光透過部
1P 遮光パターン
2P 種パターン
3 透明基材
10 光路制御フィルタ
20 ディスプレイパネル
40 従来の光路制御フィルタ
41 (従来の)光吸収部
42 無駄部分
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
d1 前記第1の方向
d2 前記第2の方向
L 境界線分
Lc,Lc1,Lc2,・・・ 連結線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
Pe,Pe1,Pe2,・・・ 終了点
Ps,Ps1,Ps2,・・・ 開始点
S 単位パターン領域
T 透過領域
W 生成領域
W2a 一端
W2b 他端
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にはディスプレイパネルに適用する光学フィルタとして光の進路を制御する光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置に関する。特に、ディスプレイパネルと組み合わせたときに、ディスプレイパネルの画素の配列周期との干渉によるモアレ(縞模様)が生じない光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種ディスプレイパネルを用いた、テレビジョン、電子看板、多機能携帯情報端末などの各種画像表示装置が実用化されている。また、ディスプレイパネルの観察者側には、ディスプレイパネルの画像光を、効果的に観察者に届けるために、光の進行方向を適切に拡散または集光する光路制御フィルタが、組み込まれている(特許文献1)。
光路制御フィルタは、画像光を適切に拡散し適切に集光すると共に、不要な外光を吸収することで正面輝度を向上させるコントラスト向上機能、視野角を適切に拡大または収束させる視野角制御機能などの光路制御機能を有する。
【0003】
こうした光路制御フィルタは、不要光を吸収する柱状の光吸収部が層面に沿って一定の間隔を空けてストライプ状或いは格子状に多数配列し、この光吸収部の間に必要光を透過させる光透過部を設けた構造を有する光路制御層を備えている。
【0004】
ところで、従来の光路制御フィルタは、光吸収部が一定の繰返周期で配列しているために、ディスプレイパネルと組み合わせて、画像表示装置としたときに、ディスプレイパネルを構成する画素の配列周期と干渉して、モアレ(縞模様)が生じることがある。
そこで、特許文献1のように、直線状或いは波状に伸びる光吸収部の配列方向を、ディスプレイパネルを構成する画素の配列方向に対して傾斜させ、バイアス角を設けることが知られている。こうしたモアレ防止のためにバイアス角を設ける手法は、光路制御フィルタに限らず、ディスプレイ関係では、プラズマディスプレイパネルの前面用電磁波遮蔽フィルタにおいても、特許文献2のように、その導電体メッシュの開口部の配列方向にバイアス角を設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313360号公報
【特許文献2】特開昭61−200783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、モアレ防止のために、バイアス角を設ける手法は、設定する最適なバイアス角が、ディスプレイパネルの画素寸法、画素間寸法、画素の配列周期、光路制御フィルタでの光吸収部の寸法及び光吸収部間の寸法、光吸収部の配列周期の全てが関係する。このため、組み合わせるディスプレイパネルの画面サイズ毎にそれぞれ設計し、多数の仕様の光路制御フィルタが必要となり、製品歩留まりが低下するなどの問題があった。また、汎用品として製造できないため、生産効率が悪く、低コスト化の妨げになっていた。
【0007】
この点に対する或る程度の改善策として、製造途中では製品毎にバイアス角を決めないで、図14で示すように、連続帯状(ウェブ状)で、光吸収部41の延在方向が流れ方向MDに平行(繰返周期を有する配列方向は幅方向TDに平行)な中間製品40wから、枚葉状の光路制御フィルタ40を、所要のバイアス角θに応じて流れ方向MDに対して斜めに切り出す方法もある。
しかし、この方法は、図14から見てとれるように、無駄部分42が多いという問題がある。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、バイアス角を設けなくてもモアレが防止できる光路制御フィルタと、これを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、次の様な構成の光路制御フィルタと画像表示装置とした。
(1)フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部と、この光吸収部同士の間の光透過部と、を有する光路制御層を備えた光路制御フィルタであって、
前記光吸収部をフィルタ面の法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部を透過領域とする遮光パターンが、種パターンから生成されてなり、
この種パターンが、
二つの分岐点の間を延びて前記透過領域の元になる開口領域を閉領域として画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなるパターンであり、
前記遮光パターンが、
前記種パターンについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターンを生成するための生成領域として定め、この生成領域に対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向とを定め、
前記第1の方向に大局的に延在する遮光パターンを、
前記第2の方向における前記生成領域の一端から他端まで順番に、前記境界線分が前記生成領域の前記第2の方向に平行な二つの辺のうち一方の辺との交差点を開始点とし、他方の辺との交差点を終了点として定め、
前記第2の方向に前記一端から前記他端まで順番に、前記開始点と前記終了点とを最短距離で結ぶ境界線分の組を連結線分として選択し、この連結線分から外れた境界線分は消去して、この境界線分を挟んで対向する開口領域を連結して前記第1の方向に延在する前記透過領域とすることで、
前記光吸収部に対応する連結線分からなる遮光パターンとして生成されてなる、
光路制御フィルタ。
(2)前記光路制御層に透明基材が積層されている、前記(1)の光路制御フィルタ。
(3)ディスプレイパネルと、前記(1)または(2)の光路制御フィルタとを備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光線の進路を制御する光路制御層が有する遮光パターンの線分が直線ではなくランダムな形状からなる線分であると共に、線分の配列に周期性が存在しないために、バイアス角を設定しなくても、モアレ発生を極めて効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光路制御フィルタの一実施形態における、遮光パターンを示す平面図(A)と、光路制御フィルタの断面図(B)と、遮光パターンの種パターンを示す平面図(C)。
【図2】本発明による光路制御フィルタの別の一実施形態(透明基材付き)を示す断面図。
【図3】種パターンの一例を示す平面図。
【図4】種パターンで画成される開口領域の配置に、周期性を有する方向が存在しないことを説明する平面図。
【図5】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】種パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成して種パターンを決定する方法を示す図。
【図10】種パターンから遮光パターンを生成する方法を示す図。
【図11】光吸収部の主切断面形状の各種例を示す断面図。
【図12】種パターンが光路制御フィルタの寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図13】本発明による画像表示装置の一実施形態を示す断面図。
【図14】従来の光路制御フィルタが繰返周期を有するが故にバイアス角付きのものを切り出すときに生じる無駄を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0014】
「シート面」とは、シート状の光路制御フィルタ10を全体的かつ大局的に見た場合において、この光路制御フィルタ10の平面方向と一致する面のことを意味する。通常は、光路制御フィルタ10の表面、裏面、又は表裏両面と平行な面となる。図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
「主切断面形状」とは、「シート面」に立てた法線nに平行な断面のうち、光吸収部1a乃至はその遮光パターン1Pの注目部分における延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける形状のことを意味する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線の方向から見た形状のことを意味する。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0015】
〔B〕光路制御フィルタ:
図1は、本発明の一実施形態における光路制御フィルタ10を示す。本実施形態における光路制御フィルタ10は、形状がシート状の形態で、そのフィルタ面でもあるシート面はXY平面に平行な面で、入光面及び出光面となっており、シート面の法線(nの)方向がZ軸方向となっている。図1(A)及び図1(C)は平面図、図1(B)は図(A)のY軸方向に平行な面における断面図である。
【0016】
この光路制御フィルタ10は、フィルタ面1sに沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部1aと、この光吸収部1a同士の間の光透過部1bと、を有する光路制御層1を備える。光吸収部1aは光吸収性材料で構成され、光透過部1bは光透過性材料で構成される。
前記光吸収部1aは、この光吸収部1aをフィルタ面1sの法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部1bを透過領域Tとする遮光パターン1Pが、図1(C)の平面図で示す種パターン2Pから生成されてなる。
【0017】
この種パターン2Pは、二つの分岐点Bの間を延びて前記透過領域Tの元になる開口領域Aを閉領域として画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でない。また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。
図1(C)では、点線で示す境界線分Lは、種パターン2Pにおける境界線分Lのうち、遮光パターン1Pに採用されなかった線分を示す。
【0018】
したがって、この種パターン2Pから生成される遮光パターン1Pを呈する光吸収部1aは、その延在方向での形状が直線状ではなくランダムで不規則な折線状で非周期的な形状であると共に、その配列周期にも周期性が存在しない。
このため、本実施形態による光路制御フィルタ10は、ディスプレイパネルの画素の配列周期との干渉によるモアレを、バイアス角を設定しなくても、極めて効果的に防ぐことができる。
【0019】
なお、本発明においては、図2の断面図で示す一実施形態の光路制御フィルタ10のように、光路制御層1は、機械的強度を補強するため等を目的として、透明基材3を積層することができるなど、各種変形形態をとり得る。
【0020】
以下、本発明に特徴的な遮光パターン1Pを有する光路制御層から詳細に説明する。
【0021】
〔光路制御層〕
光路制御層1は、平面視形状が前記した特定のパターンからなる遮光パターン1Pを呈する柱状の光吸収部1aと、この光吸収部1a以外の部分を占める光透過部1bとからなる。光吸収部1aが不要光を吸収し、光透過部1bが必要光を透過させる。光吸収部1aはランダム線状乃至折線状のの柱状形状であり、その大局的な延在方向を略平行にして、フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列される。この光吸収部1a同士の間が光透過部1bとなっている。この結果、光吸収部1aと光透過部1bとが交互にストライプ状に配列している点では、従来の光路制御層と同じであるが、その平面視形状である遮光パターン1Pの不規則性において本発明は異なる。
【0022】
光路制御層1を構成する光吸収部1a及び光透過部1bは、従来公知の材料及び形成法によることができる。そこで、これらについては後ほど説明することとし、先ず本発明の特徴的な要件である、光吸収部1aが呈する遮光パターン1Pから説明する。
【0023】
[遮光パターン]
遮光パターン1Pは、光吸収部1aの平面視形状であり、ランダムで不規則な線状の線分が互いに間隔を空けて多数、非周期的に配列したパターンである。この遮光パターン1Pは、種パターン2Pから生成されてなるパターンである。
【0024】
[種パターン]
種パターン2Pは、遮光パターン1Pがストライブ状のパターンであるのに対して、メッシュ状のパターンである。
【0025】
[種パターンとこれにより画成される開口領域]
種パターン2Pは、光吸収部1aを、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における、光吸収部1aの平面視形状である遮光パターン1Pの元になるパターンである。以下、この種パターン2Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0026】
種パターン2Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないパターンとなっている。また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。
本発明において、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列、とも言う。
【0027】
図3および図9に示すように、種パターン2Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。種パターン2Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、種パターン2Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
【0028】
なお、種パターン2Pは、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となって、モアレを防ぐ効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aを種パターン2Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、種パターン2Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口領域Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数)と一致する。また、以上に於いて、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0029】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、光路制御層1に十分な不要光吸収機能と高い必要光透過機能とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0030】
一方、モアレの発生を防止するため、遮光パターン1Pの全領域の生成に対応する種パターン2Pは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようになっている。モアレを確実に解消する為には、種パターン2Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に種パターン2Pのパターンを不規則化するのではなく、種パターン2Pの開口領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないように種パターン2Pのパターンを画成することにより、ディスプレイパネルの画素配列との干渉により生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0031】
[繰返周期の不存在]
図4は、種パターン2Pで画成される多数の開口領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でない。そして、開口領域Aに一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない、ことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口領域Aに対して直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に種パターン2Pとは分離して描いてある。
【0032】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0033】
さらに、本実施形態による光路制御フィルタ10の光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、種パターン2Pの配列パターンを、直線がその延在方向を互いに平行にして一定の間隔で周期的配列した単純なストライプパターンの生成に繋がる正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口領域Aの配列を不規則化して、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0034】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、種パターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されている種パターン2Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該種パターン2Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0035】
実際に、図3に示された種パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の種パターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0036】
[種パターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記種パターン2Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0037】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して種パターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0038】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0039】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0040】
以上の手順で、種パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。種パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、種パターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0041】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0042】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうのした母点(群)BPから生成される種パターン2Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0043】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
【0044】
この様に構成することにより、種パターン2Pにおける、任意の一定の小面積内に占める複数の開口領域Aのそれぞれの面積を合計した合計面積の面分布が、より均一化し明暗ムラが防止される。この面分布の面均一性が不足すると生じる明暗ムラを、実質上、目視不能とし、且つ種パターン2Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口領域Aの大きさDの最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
【0045】
ここで、開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最大の対角線長)を以って、大きさDとする。
【0046】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0047】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0048】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、種パターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0049】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成された種パターン2Pから生成される遮光パターン1Pを呈する光路制御層1よって得られる不要光吸収性能と必要光透過機能性能とを勘案して、決定される。以上のようにして、種パターン2Pのパターンを決定することができる。
【0050】
[種パターンから遮光パターンの生成]
図10により、種パターン2Pから遮光パターン1Pを生成する方法を説明する。
最初に、種パターン2Pについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターン1Pを生成するための生成領域Wとして定める。本実施形態においては、この生成領域Wの平行四辺形として長方形を採用する。
なお、この生成領域Wは、得られる遮光パターン1Pを光路制御フィルタ10として利用する際の該光路制御フィルタ10の1枚(1使用単位)分の形状に対応する。
次に、この生成領域Wに対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向d1と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向d2とを定める。本実施形態においては、第1の方向d1は図面左右方向(水平方向)とし、第2の方向d2は図面上下方向(垂直方向)とする。また、生成領域Wには長方形を採用するので、第1の方向d1と第2の方向d2とは互いに直交する。
【0051】
次に、第1の方向d1に大局的に延在する遮光パターン1Pを、次の様にして生成する。
先ず、第2の方向d2に平行な対向する二辺W2c,W2dのうち一方の辺W2cと境界線分Lとの交差点を開始点Psとし、他方の辺W2dと境界線分Lとの交差点を終了点Peとして定める。同図では、開始点Psとして生成領域Wの一端W2a側から他端W2bに向けて順番に、Ps1,Ps2,・・・が定まり、同様に、終了点PsとしてPe1,Pe2,・・・が定まる。
次に、第2の方向d2に一端W2aから他端W2bまで順番に、各開始点Psiと各終了点Peiとを最短距離で結ぶ境界線分Lの組を連結線分Lciとして順次選択していく。尚、ここでi=1,2,3,・・は順番を表す自然数とする。同図では、開始点Ps1と終了点Pe1を連結する連結線分Lc1が選択され、次に、開始点Ps2と終了点Pe2を連結する連結線分Lc2が選択されていく。
こうして、最後に、前記連結線分Lcから外れた境界線分Lは消去して、この境界線分Lを挟んで対向する開口領域A同士を連結して第1の方向d1に延在する透過領域Tとする。同図では、消去される境界線分Lを点線で示してある。
【0052】
以上の結果、生成した複数の連結線分Lcからなる遮光パターン1Pが生成される。
【0053】
こうして、生成された遮光パターン1Pとなる様に、光吸収部1aと光透過部1bとを備えた光路制御層1を形成することで、光路制御フィルタ10が作製される。
【0054】
以上のような本実施形態の遮光パターン1Pによれば、その元になる種パターン2Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素が配列されたディスプレイパネルに、この種パターン2Pから生成された遮光パターン1Pを有する光路制御層1を備えた光路制御フィルタ10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0055】
[光吸収部の主切断面形状と寸法]
光吸収部1aの主切断面形状は、任意である。図11に光吸収部1aの主切断面形状の各種形状を例示する。前記図1を参照した実施形態では、図11(1)の四角形状であった。この他、図11(2)の三角形状や、図11(3)の台形形状のような楔形状などもある。また、主切断面形状は、五角形形状、六角形形状等でも良く、或いは、図11(4)、図11(5)に示す、三角形や台形等の両方又は片方の斜辺が、折れ線化又は曲線化した形状(光吸収部1aの外側に向かって凸形状或いは凹形状)等でも良い。
光吸収部1aの高さ(厚み)は光透過部1bの厚みと同じで、光吸収部1aと光透過部1bとが光路制御層1の層面の両面で面一となるものでもよいし、或いは光吸収部1aの高さは光透過部1bの厚みよりも少なくてもよい(例えば光透過部1bの厚みの80〜99%の厚み)。
光吸収部1aの主切断面形状は、要求される外光遮蔽特性に応じて設計する。
光吸収部1aの主切断面形状の寸法は、一例を示せば、厚み(高さ)は50〜200μm程度、幅は10〜50μm程度、配列時の隙間は平均して50〜100μm程度である。
【0056】
[光透過部の主切断面形状と寸法]
光透過部1bの主切断面形状は、光路制御層1のうち光吸収部1aが占める部分を除いた相補的な形状及び寸法となる。
光透過部1bの厚みは、光路制御層1の厚みに通常等しく、例えば100〜300μm程度である。
【0057】
〔光吸収部の材料〕
光吸収部1aは、光吸収性の暗色材料で形成することができる。暗色材料としては有機材料、無機材料、いずれでも良い。有機材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の暗色樹脂組成物を用いることができる。
該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。光吸収性色材の含有量は、樹脂分固形分100質量部に対して例えば5〜100質量部である。
樹脂バインダの樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0058】
〔光透過部〕
光透過部1bは、画像光を透過させる光学要素である。
光透過部1bは、厚み方向では厚みが、光吸収部1aの厚み以上で、面方向では光吸収部1a同士の間を埋めて光吸収部1aを少なくとも側面から支持して(図1の光吸収部1aと光透過部1bの厚みが同じ場合)機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光学要素である。光透過部1bは透明な樹脂層として形成することができる。
【0059】
[材料]
光透過部1bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0060】
〔光路制御層の形成法〕
光路制御層1の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂に電離放射線照射して重合させて形成する、いわゆるフォトポリマー法(別名2P法)で形成する。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用すれば、透明基材3を連続シートで供給しながら連続的に成形できる点で、生産性に優れる成形方法である。
例えば、先ず最初に、透明基材3上に未硬化で液状の電離放射線硬化性樹脂を塗工し、形成された塗膜上に光吸収部1aに対応する凹凸形状を表面に有する成形型を接触させた状態で該電離放射線硬化性樹脂に紫外線など電離放射線を照射してこれを硬化させた後、離型することによって表面に光吸收部1aと逆凹凸形状の凹部を有する光透過部1bを形成する。次に、前記凹部の内部のみに、暗色材料の暗色インクをワイピング法で充填し固化させて光吸収部1aを形成して、光路制御層1とする。
【0061】
〔透明基材〕
本発明においては、図2で例示した様に、光路制御フィルタ10は、その光路制御層1に透明基材3が積層されてもよい。透明基材3は、光路制御層1それ自身では機械的強度が不足する場合、光路制御層1の形成を容易にする場合などの為に、設けられる。
透明基材3としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等からなる樹脂シート、ガラス、セラミックス等の無機板が用いられる。
【0062】
〔その他の層〕
本発明においては、図示はしないが、光路制御フィルタ10は、上記した以外のその他の層が積層されていても良い。例えば、機能層である。機能層としては、各種光学シートにおいて従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、光学的機能を担う光学機能層として、反射防止層、防眩層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ネオン光吸収層、着色層などが挙げられ、光学的ではない機能を担う非光学機能層として、電磁波遮蔽層、帯電防止層、防汚層、耐衝撃層、ハードコート層、粘着剤層、接着剤層などが挙げられる。それぞれの機能層の内容は、従来公知のものとすることができる。
光路制御フィルタ10は、これらの機能層により、1または複数の機能を有するものとすることができる。複数の機能を設ける場合、それぞれの機能毎に1層を設けても良いし、複数の機能を1層で兼用して設けてもよい。
機能層の光路制御層1に対する位置は任意である。ただし、反射防止層は最外層として設けるなど機能層により自ずと位置が決まるものもある。
【0063】
〔変形形態〕
本発明の光路制御フィルタ10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0064】
[開口領域の形状]
開口領域Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口領域Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、元になる種パターン2Pの粗密による明暗ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口領域Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図4に示した種パターン2Pについて、合計4631個の開口領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
なお、こののメッシュパターンについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0065】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、光路制御フィルタ10中の光路制御層1の全領域において、該光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが、この種パターン2Pによって画成される開口領域Aが周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でなく、また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図12の様に、その内部に於いて光路制御層1が有する種パターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して種パターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、種パターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレは生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内における種パターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0066】
特に最近では、ディスプレイパネルの大型化が進んでおり、この様な大画面のディスプレイパネルに対しては、光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、種パターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0067】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図12に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図12の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0068】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての周期性ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、ディスプレイパネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。この関係は、該種パターン2Pから生成された遮光パターン1Pに於いても同様である。
【0069】
図12に示された例では、光路制御フィルタ10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各光路制御層1が有する遮光パターン1Pの元になる種パターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図12の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図12の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0070】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図13に例示する実施形態例の様に、上記の様な光路制御フィルタ10と、ディスプレイパネル20とを少なくとも備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記ディスプレイパネル20以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
ディスプレイパネル20は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。ディスプレイパネル20としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路とディスプレイパネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、ディスプレイパネル20は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0071】
本光路制御フィルタ10のディスプレイパネル20に対する配置は、図13(A)の様に、ディスプレイパネル20の画像を観察する観察者V側の前面側(画面側)でも良いし、これとは逆に、図示はしないが、ディスプレイパネル20の背面側でも良いし、或いは前面側と背面側の両方の側でも良い。なお、背面側に配置する場合は、ディスプレイパネル20を背面から照明する光源からの光を受けてディスプレイパネル20を照明する為の部材となる。また、背面側に配置する場合は、画像コントラスト向上機能、視野角規制機能ではなく、光源からの光源光の集光機能などを発現する。
【0072】
画像表示装置100は、更に、図13(B)の実施形態例で示すように、機能層30を備えていても良い。機能層30は、例えば光路制御フィルタ10に属する層として説明した前記した機能層である。こうした機能層30を有する光学部材が配置される。したがって、機能層30は、例えば、電磁波遮蔽層などを有する光学フィルタ等である。機能層30を配置する位置は、その機能に用途に応じた位置とする。図13(B)は、本光路制御フィルタ10がディスプレイパネル20の観察者V側に配置された場合の形態である。図13(B)は、ディスプレイパネル20と、このディスプレイパネル20の観察者V側に配置した光路制御フィルタ10との間に、機能層30を配置した形態である。この他、図示は省略するが、ディスプレイパネル20の観察者V側に配置した光路制御フィルタ10に対して、更にその観察者V側に機能層30を配置する形態、ディスプレイパネル20の観察者V側に光路制御フィルタ10を配置し、機能層30は逆にディスプレイパネル20の背面側に配置する形態等があり得る。
【0073】
図面では光路制御フィルタ10、ディスプレイパネル20、機能層30のそれぞれは、互いに分離独立して間に空気層を介して配置した構成となっているが、間に透明樹脂の接着剤層を介して積層一体化しても良く、一体化により総厚みを減らすことができる。
【0074】
以上のように、光路制御フィルタ10を用いた画像表示装置100とすることによって、光路制御層1の光吸収部1aの周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による濃淡ムラも解消して、これらを両立させた画像表示装置とすることができる。
【0075】
〔D〕用途:
本発明による光路制御フィルタ10は、各種ディスプレイパネルの観察者側の前面(画面)側、或いは逆側の背面側に配置する用途が好適である。また、この光路制御フィルタ10を備える画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
この他、本発明による光路制御フィルタ10は、住宅、店舗、学校、事務所、病院乃至医院等の建物の窓、透明な扉、透明な壁面乃至間仕切に貼着し、覗き見防止、日光の遮蔽等の機能を付与する用途にも使用出来る。
【符号の説明】
【0076】
1 光路制御層
1a 光吸収部
1b 光透過部
1P 遮光パターン
2P 種パターン
3 透明基材
10 光路制御フィルタ
20 ディスプレイパネル
40 従来の光路制御フィルタ
41 (従来の)光吸収部
42 無駄部分
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
d1 前記第1の方向
d2 前記第2の方向
L 境界線分
Lc,Lc1,Lc2,・・・ 連結線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
Pe,Pe1,Pe2,・・・ 終了点
Ps,Ps1,Ps2,・・・ 開始点
S 単位パターン領域
T 透過領域
W 生成領域
W2a 一端
W2b 他端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部と、この光吸収部同士の間の光透過部と、を有する光路制御層を備えた光路制御フィルタであって、
前記光吸収部をフィルタ面の法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部を透過領域とする遮光パターンが、種パターンから生成されてなり、
この種パターンが、
二つの分岐点の間を延びて前記透過領域の元になる開口領域を閉領域として画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなるパターンであり、
前記遮光パターンが、
前記種パターンについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターンを生成するための生成領域として定め、この生成領域に対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向とを定め、
前記第1の方向に大局的に延在する遮光パターンを、
前記第2の方向における前記生成領域の一端から他端まで順番に、前記境界線分が前記生成領域の前記第2の方向に平行な二つの辺のうち一方の辺との交差点を開始点とし、他方の辺との交差点を終了点として定め、
前記第2の方向に前記一端から前記他端まで順番に、前記開始点と前記終了点とを最短距離で結ぶ境界線分の組を連結線分として選択し、この連結線分から外れた境界線分は消去して、この境界線分を挟んで対向する開口領域を連結して前記第1の方向に延在する前記透過領域とすることで、
前記光吸収部に対応する連結線分からなる遮光パターンとして生成されてなる、
光路制御フィルタ。
【請求項2】
前記光路制御層に透明基材が積層されている、請求項1記載の光路制御フィルタ。
【請求項3】
ディスプレイパネルと、請求項1または2記載の光路制御フィルタとを備える、画像表示装置。
【請求項1】
フィルタ面に沿って互いに間隔を空けてストライプ状に多数配列された柱状の光吸収部と、この光吸収部同士の間の光透過部と、を有する光路制御層を備えた光路制御フィルタであって、
前記光吸収部をフィルタ面の法線方向から見た平面視形状であり前記光透過部を透過領域とする遮光パターンが、種パターンから生成されてなり、
この種パターンが、
二つの分岐点の間を延びて前記透過領域の元になる開口領域を閉領域として画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分の数が同一の開口領域の面積及び形状は一定でない領域を含んでなるパターンであり、
前記遮光パターンが、
前記種パターンについて、対向する対辺が互いに平行な平行四辺形を前記遮光パターンを生成するための生成領域として定め、この生成領域に対して前記平行四辺形の任意の辺に平行な第1の方向と、前記任意の辺と交わる辺に平行な第2の方向とを定め、
前記第1の方向に大局的に延在する遮光パターンを、
前記第2の方向における前記生成領域の一端から他端まで順番に、前記境界線分が前記生成領域の前記第2の方向に平行な二つの辺のうち一方の辺との交差点を開始点とし、他方の辺との交差点を終了点として定め、
前記第2の方向に前記一端から前記他端まで順番に、前記開始点と前記終了点とを最短距離で結ぶ境界線分の組を連結線分として選択し、この連結線分から外れた境界線分は消去して、この境界線分を挟んで対向する開口領域を連結して前記第1の方向に延在する前記透過領域とすることで、
前記光吸収部に対応する連結線分からなる遮光パターンとして生成されてなる、
光路制御フィルタ。
【請求項2】
前記光路制御層に透明基材が積層されている、請求項1記載の光路制御フィルタ。
【請求項3】
ディスプレイパネルと、請求項1または2記載の光路制御フィルタとを備える、画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−68855(P2013−68855A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208341(P2011−208341)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]