説明

光路長調整装置及び光路長調整方法

【課題】空間光学系を用いずに、ファイバオプティックな構成品のみによるコンパクトな機構で光路長を精度よく調整可能とする。
【解決手段】一対の波長無依存カプラ(WIC)111,112間において、2×2ポートの光スイッチ群からなる2系統の光線路A,Bにより二重化光線路を構成し、更に各光線路を波長依存型高速光スイッチ群Hと波長無依存型低速光スイッチ群Lとで構成する。その上、波長依存型高速光スイッチ群Hについては、使用波長λ1 ,λ2 に対応した光スイッチ群を一組の波長分割多重カプラ(WDMC)121〜124により並列結合し構成する。光路長調整の際には、高速スイッチ線路と低速スイッチ線路の導通と遮断を組み合わせることにより、任意の光路長の経路パターンを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバにより構成される光線路の光路長を、通信信号を途絶させることなく一定長間隔で変化させることの可能な光路長調整装置及び光路長調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ回線の支障移転工事等において、通信サービスを途絶させることなく、現用回線から移転先回線に移転させることを可能とするサービス無瞬断切替技術が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
本技術は、迂回回線を用意して現用回線との一時的な二重化を行った後、通信光を迂回回線のみで伝送することにより、現用回線の工事を可能とするものである。通信サービスを維持しながら回線を二重化するためには、現用回線と迂回回線の光路長差を規定の誤差範囲内に収める必要があり、迂回回線に光路長を調整するための手段が不可欠となる。
【0003】
従来の光路長調整装置として、光ファイバを伝搬する光信号を一対のコリメータにより空間伝搬させる光空間光学系を構成し、コリメータ間の距離を連続的に変化させて光路長を調整する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この光路長調整装置では、空間光学系について高精度な光軸一致を得るために、剛性の高い基盤の上(例えば、実験室での定盤の上)で空間光学系を構築する必要があることから、装置のコンパクト化が困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東他:光アクセス媒体切り替え方式の基礎検討−サービス無瞬断光媒体切り替えシステム−,信学技法OFT2008-52, pp.27-31, 2008
【非特許文献2】田中他:サービス無瞬断光線路切替技術の信頼性向上,信学技法OFT2010-18, pp.11-16, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来の光路長調整装置では、空間光学系について高精度な光軸一致を得るために、剛性の高い基盤の上で空間光学系を構築する必要があることから、装置のコンパクト化が困難であった。
本発明は、上記の事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、高精度な光軸一致を要する空間光学系を用いずに、ファイバオプティックな構成品のみによるコンパクトな機構で光路長を精度よく調整可能とする光路長調整装置及び光路長調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光路長調整装置は、以下のような態様の構成とする。
(1)光路長差が2のべき乗に単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される光線路が通信波長の数だけ用意され一組の波長分割多重カプラにより並列接続された高速光スイッチ線路と、前記光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される低速光スイッチ線路とを備え、前記高速光スイッチ線路及び低速光スイッチ線路が直列に接続される第1及び第2の光スイッチ線路と、前記第1及び第2の光スイッチ線路を並列に接続する一組の波長無依存カプラと、前記第1及び第2の光スイッチ線路に前記単位長の半分の光路長オフセットを与えるオフセット手段とを具備する態様とする。
【0007】
(2)光路長差が2のべき乗に単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される光線路が通信波長の数だけ用意され一組の波長分割多重カプラにより波長別に並列接続される第1の高速光スイッチ回路と、前記第1の高速光スイッチ回路の各波長の光線路に結合される一組の波長無依存カプラと波長分割多重カプラにより波長別に並列接続され、光路長差が2のべき乗に前記単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される第2の高速光スイッチ回路と、前記第1の高速光スイッチ回路の光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される第1の低速光スイッチ線路と、前記第2の高速光スイッチ回路の光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される第2の低速光スイッチ線路と、前記第1の低速光スイッチ線路及び前記第2の低速光スイッチ線路をそれぞれ波長分割多重カプラにより波長別に分けて波長無依存カプラにより結合し波長分割多重カプラにより多重化してなる波長分割多重化手段と、前記第1の高速光スイッチ線路の各波長線路に前記単位長の半分の光路長オフセットを与えるオフセット手段とを具備する態様とする。
【0008】
本発明に係る光路長調整方法は、以下のような態様の構成とする。
(3)(1)の光路長調整装置に用いられ、前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]まで延伸する間は、前記2×2高速光スイッチの内の2つだけを連続的に反転させて前記高速光スイッチ線路を前記単位長ずつ延伸させ、前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]から[前記単位長×2m ]まで延伸されるときは、先ず前記2×2高速光スイッチの一つを反転させた後、前記2×2低速光スイッチの2つを同時に反転させて前記低速光スイッチ線路を[前記単位長×2m ]だけ延伸させ、前記2×2高速光スイッチのもう一つを反転させて前記高速光スイッチ線路を[前記単位長×(2m −1)]だけ短縮させて最短長に戻すことで、前記第1及び第2の光スイッチ線路の光路長差が前記単位長の半分となるように延伸させる態様とする。
【0009】
(4)(2)の光路長調整装置に用いられ、前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]まで延伸する間は、それぞれの前記2×2高速光スイッチの内の2つだけを連続的に反転させて前記高速光スイッチ線路を前記単位長ずつ延伸させ、前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]から[前記単位長×2m ]まで延伸されるときは、先ず前記2×2高速光スイッチそれぞれの一つを反転させた後、前記2×2低速光スイッチの2つを同時に反転させて前記低速光スイッチ線路を[前記単位長×2m ]だけ延伸させ、前記2×2高速光スイッチそれぞれのもう一つを反転させて前記高速光スイッチ線路を[前記単位長×(2m −1)]だけ短縮させて最短長に戻すことで、前記第1及び第2の光スイッチ線路の光路長差が前記単位長の半分となるように延伸させる態様とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成による本発明の光路長調整は、光ファイバや光スイッチなどのファイバオプティックな構成品により構成されるため、空間光学系に比較してコンパクトな機構で光路長を調整可能とする。具体的には、一対の波長無依存カプラ(WIC)間において、2×2ポートの光スイッチ群からなる2系統の光線路により二重化光線路を構成し、更に各光線路を波長依存型高速光スイッチ群と波長無依存型低速光スイッチ群とで構成する。その上、波長依存型高速光スイッチ群については、使用波長に対応した光スイッチ群を一組の波長分割多重カプラ(WDMC)により並列結合し構成する。光路長調整の際には、高速スイッチ線路と低速スイッチ線路の導通と遮断を組み合わせることに経路パターンを作成することを特徴とする。
【0011】
以上のように本発明によれば、高精度な光軸一致を要する空間光学系を用いずに、ファイバオプティックな構成品のみによるコンパクトな機構で光路長を精度よく調整可能とする光路長調整装置及び光路長調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る光路長調整装置を適用した二重化光線路を示す構成図である。
【図2】図1に示す光路長調整装置に用いられる光スイッチの切り替えモードとその切り替えによる光路の単位長延伸状態を示す図である。
【図3】図1に示す光路長調整装置の高速スイッチ群において、初段スイッチがcrossモードであるときの後段スイッチのモード選択例を示す図である。
【図4】図1に示す光路長調整装置の高速スイッチ群において、初段スイッチがstraightモードであるときの後段スイッチのモード選択例を示す図である。
【図5】図1に示す光路長調整装置において、二重化された両系統が時間周期2T、時間差Tでl0 ずつ光路長を延伸していったときのそれぞれの系統における延伸量を示す特性図である。
【図6】他の実施形態としてWDMCを用いた光路長調整装置を適用した二重化光線路を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
図1は本実施形態の光路長調整装置が適用される二重化光線路の構成を示すブロック図、図2は図1に示す光路長調整装置に用いられる光スイッチSの切り替えモードとその切り替えによる光路の単位長延伸状態を示す図である。
【0014】
図1において、2×2ポートの光スイッチ群からなる2系統の光線路が一組の波長無依存カプラ(WIC:Wavelength Independent Coupler)111,112により結合されて二重化光線路が構成されている。それぞれの光線路系統(以下、上側:A系統、下側:B系統)は波長依存性の大きな高速光スイッチ群H(H1 ,H2 ,H3 ,H4 )と波長依存性の小さい低速光スイッチ群L(L1 ,L2 )とで構成されている。高速光スイッチ群Hはさらに使用される波長λ1 ,λ2 に対応した2系統の光スイッチ群H1 ,H2 ,H3 ,H4 を一組の波長分割多重カプラ(WDMC:Wavelength Division Multiplex Coupler)121,122,123,124により並列結合することによって構成されている。また、A系統にはB系統に対して[単位長×1/2]の長さのオフセットを与える光ファイバ(オフセット導波路)13が接続されている。(図では、「1/2」と記載している。)
上記光スイッチ群で使用する2×2ポートの光スイッチSは、図2(a)に示すように、入力2ポートと出力2ポートをstraight(ストレート)またはcross(クロス)で結合する2つの切替モードを持つ。但し、2つのモードにおける内部光路差は無視できるものとする。
【0015】
図2(b)に、上記光スイッチの切り替えによる光路の単位長延伸のための構成を示す。この構成では、各波長に対応したm+1個の高速光スイッチS0 〜Sm の左からi番目の出力ポートとi+1番目の入力ポートは光路長が[単位長×2i-1 ]の長さだけ異なる一組の導波路(光ファイバ)により接続されている。尚、図2(b)において、導波路(光ファイバ)に関して、例えば[単位長×20 ]の導波路(光ファイバ)については、「20 」と記載しており、個々の導波路について「単位長×」の記載を省略している。
【0016】
図2(b)において、左端の光スイッチS0 の入力ポートと右端の光スイッチSm の出力ポートの一端は無反射終端されている。各系統のn+1個の低速光スイッチも同様な光ファイバ接続がなされ、隣り合うスイッチの入出力ポートをつなぐ光ファイバの光路長差は、[単位長×2i ](ここで、m≦i≦m+n−1)のように増加している。
【0017】
今、単位長をl0 とし、波長λ1 に対応する高速光スイッチを左からS0 , S1 , …, Sm とする。図2(b)に示すように、S0 とSm がcross接続(crossモード)し、その他のスイッチがstraight接続(straightモード)のとき、高速スイッチ群Hの光路長は最短となる。この状態からS0 とSの二つのスイッチのモードを反転させれば、[l0 ×20 ](=単位長)の光ファイバが光路の一部として選択されることになり、この分だけ光路長が延伸される。
【0018】
より一般的な例を図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3は高速スイッチ群において初段スイッチがcrossモードであるときの後段スイッチのモード選択例を示し、図4は高速スイッチ群において初段スイッチがstraightモードであるときの後段スイッチのモード選択例を示している。
【0019】
まず、図3(a)に示すように、S0 がcrossモード、S1 がstraightモードで、S0 の入力ポートからSmの出力ポートまで光路が形成されている場合、S0 をstraightモードに切替えてl0 ×20 の光ファイバを選択し、かつSをstraightモードに反転させれば、Sの出力ポート以降は同じ光路が選択されているので、結果的にl0 だけ光路長が延伸されたことになる。
【0020】
一方、図3(b)に示すように、S0 がcrossモード、S1 がstraightモード、それ以降のいずれかがcrossモードで、S0 の入力ポートからSm の出力ポートまで光路が形成されている場合、S0 をstraightモードに切替えてl0 ×20 の光ファイバを選択し、かつSをcrossモードに反転させれば、Sの出力ポート以降は同じ光路が選択されているので、結果的にl0だけ光路長が延伸されたことになる。
【0021】
また、図4に示すように、S0 がstraightモードで、更にS1 以降もstraightモードで接続されており、Sk (k≦m)で初めてcrossモードとなって光路が形成されている場合、S0 をcrossモードに切替えて、かつSk+1 を反転させれば、Sk+1 の出力ポート以降の光路はそのままで、これ以前の光路長がl0 (20 +…+2k-1 )からl0 k までl0 だけ延伸されたことになる。
【0022】
したがって、上記構成による光路長調整装置では、常に2つの光スイッチのモードを反転させることによって、光路長を単位長ずつ延伸していくことができることになる。高速光スイッチが全てstraightモードの状態となって最大の光路長が形成されている場合には、S0 とSm を反転させて最小光路長を選択すると同時に、低速光スイッチの最初の2つを反転させてl0 m の光ファイバが選択されるようにする。以下、同様の手順によりA及びB系統それぞれにおいて単位長ステップでl0 (2m+n −1)までの光路長延伸が可能になる。
【0023】
図5はA、B両系統が時間周期2T、時間差Tでl0 ずつ光路長を延伸していったときのそれぞれの系統における延伸量を示している。すなわち、上記構成による光路長調整装置では、A系統には光路長l0 /2のオフセットを与える光ファイバ13が付加されているので、図5に示すように、相対的に±l0 /2の光路差を周期Tで繰り返し示しながら延伸されていく。したがって、図1の系において、通信光を通しながら両系統で単位長ずつ延伸していったとしても、A及びB系統の光路差がl0 /2を超えることはない。このことから、デジタル光通信に用いられる信号のパルス幅がl0 /2より十分大きければ、A、B系統が二重化されていても通信に及ぼす影響は無視できると考えられる。
【0024】
一方、光スイッチの切り替え時に入出力2ポートの間にクロストークが存在する場合、2つの光スイッチを同時に動作させると1系統の光線路に二重経路が発生する可能性がある。また、図2(b)のようにS0 とSのモードを同時反転させたとき、その動作が完了するまでの間に反転前後の2つのパスがアクティブとなれば、高速スイッチ群を通過する通信光パルスに光路差l0 に対応する遅延差が生じることになる。前述のように高速光スイッチ群が全てstraightモードで最大の光路長が形成されている場合、S0 とSm 及び低速光スイッチの最初の2つを反転させてl0 の延伸を行う。高速光スイッチの動作が先に完了すれば、延伸動作中の系統の光路長が最小値に戻ってしまい、もう片側の系統との間に大きな光路差が発生して通信状態に大きな影響を及ぼすことになる。
【0025】
上記の課題に対し、非特許文献1に示されているような経路遮断スイッチを各系統に設け、光スイッチによる経路組み換えの最中には光の導通を遮断しておくことも考えられる。ただし、高速光スイッチを使用して高速な光路長延伸を図る場合、経路遮断スイッチも同程度以上の高速切り替え特性が求められることになる。しかしながら、例えば1×1ポートの高速光スイッチを経路遮断スイッチとして用いることを考えると、その波長依存性から各波長に対応する高速スイッチ群の経路ごとにこれを挿入する必要が生じてくる。
【0026】
今、高速光スイッチ群がある光路長で導通しているとするとき、両端のスイッチの入力/出力ポートの一方は無反射終端されている。このため、スイッチ群の任意の一つをモード反転させれば、光の導通は遮断される。前述の通り、光路長をl0 だけ増加させるには2つのスイッチを反転させればよいので、この動作をシーケンシャルに行えば最初の反転で光の導通が遮断され、もう一つのスイッチの反転で光路長がl0 だけ延伸されると同時に導通が再開されることになる。
【0027】
この方式は、高速スイッチのモード反転時間をΔTとすれば2ΔTでl0 の延伸が完了するのに対し、経路遮断スイッチを設ける場合には3ΔT(遮断スイッチON+高速光スイッチモード同時反転+遮断スイッチOFF)を要するという点においてもアドバンテージを有することになる。低速スイッチを駆動する場合には、先ず高速スイッチの一つをモード反転させて系統の導通を遮断し、必要な2つの低速スイッチを同時に反転させた後、もう一つの高速スイッチを反転させれば、同様に光路長がl0 だけ延伸されると同時に導通が再開されることになる。
【0028】
また、本実施形態を非特許文献1のような無瞬断切替システムの光路長調整装置として用いて現用光線路との二重化を行う場合には、文献に示されているように先ず通信光(図1ではλ1 、λ2 )とは異なる試験光によるチャープパルスの干渉を利用した光路差計測手段により光路長調整装置が実現するべき光路長を求める。これに応じて図1のAまたはB系統何れかを、現用線路と二重化する迂回路とするために必要な光スイッチ群の経路パターン(ON/OFFパターン)を求めることになる。そのパターンが実際に実現されるまでの間は、両系統の導通は遮断されていなければならないが、これは例えば低速スイッチの最後をcrossモードにし、その他の全ての光スイッチをstraightモードにしておけばよい。
【0029】
そして先ず、現用線路と二重化を行う系統において、高速光スイッチ群が構成すべき経路パターンを実現した後、何れか一つの高速スイッチを反転させて高速スイッチ群としての光の導通を遮断しておく。その後、低速スイッチ群が構成すべき経路パターンを実現し、最後に反転させておいた高速光スイッチを再反転させれば、全体として必要な経路パターンが完成すると同時に当該経路に光が導通し、現用線路との二重化が形成される。
【0030】
本発明の実施形態は、図1の構成に限られるものではなく、例えば図6のようにWDMCにより波長毎に二重化線路を構成する方法も考えられる。
図6において、2×2ポートの光スイッチ群からなる2系統の光線路が一組の波長分割多重カプラ(WDMC)211,212により波長λ1 ,λ2 毎に分割多重されて二重化光線路が構成されている。それぞれの光線路系統には、波長λ1 ,λ2 毎に用意されるλ1 プリアンプ221,251,222,252が挿入され、通信光が安定に伝送されるようになされている。
【0031】
上記二重化光線路は波長無依存カプラ(WIC)241,242,251,252により波長毎に2系統に分けられ、(以下、上側:A1 系統及びA2 系統、下側:B1 系統及びB2 系統)は波長依存性の大きな高速光スイッチ群H(H1 ,H2 ,H3 ,H4 )と波長依存性の小さい低速光スイッチ群L(L1 ,L2 )とで構成されている。高速光スイッチ群Hはさらに使用される波長λ1 ,λ2 に対応した2系統の光スイッチ群H1 ,H2 ,H3 ,H4 を一組の波長分割多重カプラ(WDMC)261,271により並列結合することによって構成されている。また、A1 系統及びA2 系統にはそれぞれB1 系統及びB2 系統に対して[単位長×1/2]の長さのオフセットを与える光ファイバ(オフセット導波路)281,282が接続されている。(図では、「1/2」と記載している。)この構成では、波長依存性のあるアンプ(及びプリアンプ)を波長の数だけ用意することとなる。この場合も光路長延伸のための光スイッチの制御法は図1の場合と変わらない。
【0032】
尚、本発明におけるA及びBの2系統の二重化、またはその何れかと現用線路との二重化に際して同一波長の光どうしが干渉を起こして合波光のレベルが不安定になる可能性が存在するが、これは例えば非特許文献2に示されている方法により回避することができる。
【0033】
上記実施形態によれば、2系統の光スイッチ群を一対の光パワー分岐カプラにより並列接続して構成される二重化線路によりデジタル光通信サービスを途絶させることなく光分岐カプラ間の光路長を延伸していくことを可能にしている。本実施形態の光路長調整装置は、光ファイバや光スイッチなどのファイバオプティックな構成品から成り立っているため、従来の空間光学系によるものに比べて非常にコンパクトな構造となっている。また、従来2系統の光線路を交互に導通/遮断させるため必要としていた光シャッターを2×2光スイッチ動作のコンビネーション動作により省略し、かつ単位長延伸に要する光スイッチ群の切替時間を短縮している。
【0034】
以上のことから、本発明に係る光路長調整装置は、光通信サービス提供中の現用線路に対して光路長の等しい迂回路を構成して二重化することにより実行されるサービス無瞬断切替オペレーションにおけるコンパクトかつ高速な光路長調整装置としての適用が可能となる。
【0035】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
111,112…波長無依存カプラ(WIC)、H1 ,H2 ,H3 ,H4 …高速光スイッチ群、L1 ,L2 …低速光スイッチ群、121,122,123,124…波長分割多重カプラ(WDMC)、13…光ファイバ(オフセット導波路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路長差が2のべき乗に単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される光線路が通信波長の数だけ用意され一組の波長分割多重カプラにより並列接続された高速光スイッチ線路と、前記光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される低速光スイッチ線路とを備え、前記高速光スイッチ線路及び低速光スイッチ線路が直列に接続される第1及び第2の光スイッチ線路と、
前記第1及び第2の光スイッチ線路を並列に接続する一組の波長無依存カプラと、
前記第1及び第2の光スイッチ線路に前記単位長の半分の光路長オフセットを与えるオフセット手段と
を具備する光路長調整装置。
【請求項2】
光路長差が2のべき乗に単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される光線路が通信波長の数だけ用意され一組の波長分割多重カプラにより波長別に並列接続される第1の高速光スイッチ回路と、前記第1の高速光スイッチ回路の各波長の光線路に結合される一組の波長無依存カプラと波長分割多重カプラにより波長別に並列接続され、光路長差が2のべき乗に前記単位長を乗じて与えられる光ファイバ対の最初のmセットが波長依存型の2×2高速光スイッチm+1個を介在して直列接続される第2の高速光スイッチ回路と、前記第1の高速光スイッチ回路の光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される第1の低速光スイッチ線路と、前記第2の高速光スイッチ回路の光ファイバ対mセット後のnセットが波長無依存型の2×2低速光スイッチn+1個を介して直列接続される第2の低速光スイッチ線路と、前記第1の低速光スイッチ線路及び前記第2の低速光スイッチ線路をそれぞれ波長分割多重カプラにより波長別に分けて波長無依存カプラにより結合し波長分割多重カプラにより多重化してなる波長分割多重化手段と、
前記第1の高速光スイッチ線路の各波長線路に前記単位長の半分の光路長オフセットを与えるオフセット手段と
を具備する光路長調整装置。
【請求項3】
請求項1記載の光路長調整装置に用いられ、
前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]まで延伸する間は、前記2×2高速光スイッチの内の2つだけを連続的に反転させて前記高速光スイッチ線路を前記単位長ずつ延伸させ、
前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]から[前記単位長×2m ]まで延伸されるときは、先ず前記2×2高速光スイッチの一つを反転させた後、前記2×2低速光スイッチの2つを同時に反転させて前記低速光スイッチ線路を[前記単位長×2m ]だけ延伸させ、前記2×2高速光スイッチのもう一つを反転させて前記高速光スイッチ線路を[前記単位長×(2m −1)]だけ短縮させて最短長に戻すことで、前記第1及び第2の光スイッチ線路の光路長差が前記単位長の半分となるように延伸させることを特徴とする光路長調整方法。
【請求項4】
請求項2記載の光路長調整装置に用いられ、
前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]まで延伸する間は、それぞれの前記2×2高速光スイッチの内の2つだけを連続的に反転させて前記高速光スイッチ線路を前記単位長ずつ延伸させ、
前記第1及び第2の光スイッチ線路が[前記単位長×(2m −1)]から[前記単位長×2m ]まで延伸されるときは、先ず前記2×2高速光スイッチそれぞれの一つを反転させた後、前記2×2低速光スイッチの2つを同時に反転させて前記低速光スイッチ線路を[前記単位長×2m ]だけ延伸させ、前記2×2高速光スイッチそれぞれのもう一つを反転させて前記高速光スイッチ線路を[前記単位長×(2m −1)]だけ短縮させて最短長に戻すことで、前記第1及び第2の光スイッチ線路の光路長差が前記単位長の半分となるように延伸させることを特徴とする光路長調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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