説明

光軸調整方法およびプロジェクタ

【課題】 プロジェクタの投写対象面に対する光軸調整を行う場合、簡単な構成での光軸調整方法、および、その光軸調整方法を用いたプロジェクタを提供する。
【解決手段】 光軸調整用画像を投写対象面としてのスクリーン200に投写する照明光学系30、液晶パネル40および投写レンズ50を備える。また、投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する受光センサ部60を備える。そして、受光センサ部60で取得したデータに基づき、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行うCPU80と、CPU80で変換処理された角度のズレ具合のデータに基づいて、角度のズレ具合をユーザーに通知する表示装置100を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタが投写対象面に画像を投写する場合の投写対象面に対するプロジェクタの光軸調整方法、およびその光軸調整方法を用いたプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザーが、可搬型のプロジェクタを用いてスクリーンに画像を投写する場合、スクリーンとプロジェクタの相対的な位置関係により、投写画像のフォーカスや、サイズや、形状をユーザーが調整する必要が出てくる。そこで、フォーカス調整や、スクリーン外形に投写画像のサイズを合わせるズーム調整や、投写画像の歪んだ形状(台形歪)の調整をプロジェクタに自動的に行わせる方法として、例えば、以下の方法が提案されている。
【0003】
プロジェクタにモニタカメラを備えることで、フォーカス調整は、モニタカメラを用いて投写画像を撮像し、撮像した撮影像を基に水平信号の振幅に対して波高値の高いところを検出することでフォーカス位置を求める。また、ズーム調整に関しては、撮影像を基に水平走査線上で反射光の輝度が大きく変化する点を検出し、スクリーンの位置を検出する。そして、投写レンズをズーミングして投写画面がスクリーンの端点に達するまで投写範囲を縮小または拡大する。また、台形歪調整に関しては、投写画像が、スクリーンの中央に位置するように投写レンズの俯仰角を調整する。そして、その投写画像を撮像し、撮影像におけるスクリーンの対向辺の長さを比較して台形歪を検定し、その結果で台形歪調整を行っている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−241874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、自動でフォーカス調整や、ズーム調整や、台形歪調整を行う場合には、モニタカメラや、投写レンズを構成するフォーカスレンズ・ズームレンズ及び投写レンズ自体を駆動する駆動部や、レンズ位置を検出する検出部などの構成が必要となる。そのため、このようなプロジェクタを実現するには、構造が複雑となる課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プロジェクタの投写対象面に対する光軸調整を行う場合、簡単な構成での光軸調整方法、および、その光軸調整方法を用いたプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、プロジェクタの光軸調整方法であって、光軸調整用画像を投写対象面に投写する投写工程と、投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する取得工程と、取得工程で取得したデータに基づき、投写対象面と、プロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行う処理工程と、処理工程で変換処理された角度のズレ具合のデータに基づき、角度のズレ具合をユーザーに通知する通知工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような光軸調整方法によれば、投写工程は、光軸調整用画像を投写対象面に投写し、取得工程は、その投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する。そして、処理工程は、取得工程で取得したデータに基づき、投写対象面と、プロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行い、通知工程は、処理工程で変換処理された角度のズレ具合のデータに基づき、角度のズレ具合をユーザーに通知する。そのため、ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる(プロジェクタが投写対象面に正対する位置に合わせる)場合、その角度のズレ具合を認識することができ、その通知を認識しながら簡単に、正確に光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、取得工程では、受光センサを用いることを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、取得工程では、受光センサを用いて投写対象面に投写された投写画像の反射光を受光することができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、処理工程では、取得したデータに基づき、投写対象面とプロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに変換処理を行い、通知工程では、少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに基づき、少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を通知することを特徴とする。
【0011】
このような光軸調整方法によれば、取得工程では、少なくとも2個の受光センサを用いることで、投写対象面とプロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を通知工程によりユーザーに通知することができる。そのため、ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、その少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を認識することができるため、その通知を認識しながら更に簡単に、正確に光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、通知工程では、処理工程で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合をプロジェクタに備わる表示装置に表示することを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、通知工程では、処理工程で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合をプロジェクタに備わる表示装置に表示させるため。ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、表示装置に表示される少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を確認しながら調整できるため、効率的にプロジェクタの光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、通知工程では、処理工程で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を投写対象面に表示することを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、通知工程では、処理工程で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を投写対象面に表示させるため。ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、投写画像とそこに表示される少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を同時に確認しながら調整できるため、より効率的にプロジェクタの光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、投写工程の後、さらに取得工程での出力電圧を調整するキャリブレーション工程を備えたことを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、投写工程の後にキャリブレーション工程を備えて取得工程での出力電圧を調整するため、取得工程では、光軸調整用画像の適正な反射光を受光でき、適正なデータとして出力することができる。よって、正確に処理工程を実行することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、キャリブレーション工程は、光軸調整用画像の輝度を切替える輝度切替え工程を備えたことを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、キャリブレーション工程が輝度切替え工程を備えたため、輝度切替え工程によって、投写画像である光軸調整用画像の輝度を切替えることができる。そのため、取得工程では、適正な反射光を受光することができる。よって、正確に処理工程を実行することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、キャリブレーション工程は、取得工程において、投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得した後、データの増幅率を切替える増幅率切替え工程を備えたことを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、キャリブレーション工程が増幅率切替え工程を備えたため、増幅率切替え工程は、取得工程において反射光をデータとして取得した後、データの増幅率を切替えることができる。そのため、適正なデータを処理工程に出力することができる。よって、正確に処理工程を実行することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタの光軸調整方法であって、取得工程では、フィルタを備えて、受光する感度を変更させることを特徴とする。
このような光軸調整方法によれば、取得工程では、反射光をデータとして取得する際、フィルタを備えたことにより、入射光量と取得工程での受光センサの出力電流との関係が比例関係になるように受光センサの感度を調整することができる。よって、取得工程では、反射光を適正に受光することができる。
【0018】
上述した目的を達成するために、本発明は、画像を投写するプロジェクタであって、光軸調整用画像を投写対象面に投写する投写部と、投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する取得部と、取得部で取得したデータに基づき、投写対象面とプロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行う処理部と、処理部で変換処理された角度のズレ具合のデータに基づき、角度のズレ具合をユーザーに通知する通知部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
このようなプロジェクタによれば、投写部は、光軸調整用画像を投写対象面に投写し、取得部は、その投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する。そして、処理部は、取得部で取得したデータに基づき、投写対象面とプロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行い、通知部は、処理部で変換処理された角度のズレ具合のデータに基づき、角度のズレ具合をユーザーに通知する。そのため、ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる(プロジェクタが投写対象面に正対する位置に合わせる)場合、その角度のズレ具合を認識することができ、その通知を認識しながら簡単に、正確に光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、取得部は、受光センサを備えたことを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、取得部は、受光センサを備えて投写対象面に投写された投写画像の反射光を受光することができる。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、処理部は、取得したデータに基づき、投写対象面とプロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合に変換処理を行い、通知部は、少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに基づき、少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を表示することを特徴とする。
【0022】
このようなプロジェクタによれば、取得部は、少なくとも2個の受光センサを用いることで、投写対象面とプロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を通知部により通知することができる。そのため、ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、その少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を確認することができるため、その通知を認識しながら更に簡単に、正確に光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、通知部は、処理部で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合をプロジェクタに備わる表示装置に表示することを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、通知部は、処理部で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合をプロジェクタに備わる表示装置に表示させるため。ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、表示装置に表示される少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を確認しながら調整できるため、効率的にプロジェクタの光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタあって、通知部は、処理工程で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を投写対象面に表示することを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、通知部は、処理部で変換処理された後の少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を投写対象面に表示させるため、ユーザーは、プロジェクタを移動させて投写対象面とプロジェクタの光軸を合わせる場合、投写画像とそこに表示される少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合を同時に確認しながら調整できるため、より効率的にプロジェクタの光軸を投写対象面に合わせることができる。
【0025】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、さらに取得部での出力電圧を調整するキャリブレーション部を備えたことを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、キャリブレーション部を備えて取得部での出力電圧を調整するため、取得部は、光軸調整用画像の適正な反射光を受光でき、適正なデータとして出力することができる。よって、処理部は、データを正確に処理することができる。
【0026】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、キャリブレーション部は、光軸調整用画像の輝度を必要に応じて切替える輝度切替え部を備えたことを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、輝度切替え部は、投写画像である光軸調整用画像の輝度を必要に応じて切替えるため、取得部は、適正な反射光を受光することができる。よって、処理部は、受光したデータを正確に処理することができる。
【0027】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、キャリブレーション部は、取得部において、投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得した後、データの増幅率を必要に応じて切替える増幅率切替え部を備えたことを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、増幅率切替え部は、取得部において反射光をデータとして取得した後、データの増幅率を必要に応じて切替えることができるため、適正なデータを処理部に出力することができる。よって、処理部は、データを正確に処理することができる。
【0028】
また、本発明の好ましい態様によれば、プロジェクタであって、取得部は、受光する感度を変更させるフィルタを備えたことを特徴とする。
このようなプロジェクタによれば、取得部は、フィルタにより反射光をデータとして取得する際、入射光量と取得部での受光センサの出力電流との関係が比例関係になるように、受光センサの感度を調整することができる。よって、取得部は、反射光を適正に受光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明のプロジェクタの光軸調整方法を用いた第1の実施形態の構成を示すブロック図である。図1を用いて、プロジェクタ1の構成を説明する。
【0031】
プロジェクタ1は、入力される画像信号を画像データに変換するA/D変換部(図示省略)と、変換された画像データを液晶パネル40の特性にあわせて変換する画像処理部10と、変換された画像データに基づき液晶パネル40を駆動させる液晶パネル駆動部20とを備えている。
【0032】
そして、プロジェクタ1は、光学系として、投写するための光源となるランプを含め、ランプの出射光を偏光変換や色(赤色・緑色・青色)分離など行う照明光学系30と、出射光を各色毎に変調する液晶パネル40と、変調後の出射光を合成するダイクロイックプリズム(図示省略)と、その合成光を拡大投写する投写レンズ50とを備えている。そして、壁などに設置された投写対象面としてのスクリーン200に拡大された画像を投写する。ここで、投写部は、照明光学系30、液晶パネル40、ダイクロイックプリズム、投写レンズ50で構成される。
【0033】
また、プロジェクタ1は、スクリーン200に投写された投写画像の反射光を受光する取得部としての受光センサ部60と、受光センサ部60から出力された受光データとしての出力電圧をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ70とを備える。そして、変換されたデジタル信号に基づき、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸との角度のズレ具合を表すデータ(以降、角度ズレデータと称す)に変換処理を行う処理部としてのCPU(Central Processing Unit)80とを備えている。また、プロジェクタ1は、CPU80で変換処理された角度ズレデータに基づき、表示装置ドライバ90を介して変換処理された角度ズレデータが表示される表示装置100を備えている。また、変換処理された角度ズレデータは、画像処理部10に送られて、光軸調整用画像とともにスクリーン200にも投写される。
【0034】
ここで、受光センサ部60は、受光センサであるフォトダイオード62と、フォトダイオード62が、投写画像の反射光を受光して出力した微弱な電流を増幅し、そして、電圧に変換してA/Dコンバータ70に出力するオペアンプ回路64とを備えている。また、フォトダイオード62は、プロジェクタ1の前面で、かつ、投写レンズ50の直近に備えられている。
【0035】
なお、プロジェクタ1の動作の詳細に関しては、図4を用いて後述する。また、受光センサ部60の詳細な構成および動作に関しては、図3を用いて後述する。
【0036】
図2は、本実施形態の光軸調整を行う場合のスクリーンとプロジェクタとの位置関係を表す配置図である。図2を用いて、本実施形態の光軸調整方法を簡単に説明する。
【0037】
図2(a)は、スクリーンとプロジェクタの光軸とを合わせた状態での配置図である。
ここで、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸とを合わせるとは、スクリーン200とプロジェクタ1を正対させることである。または、プロジェクタ1の投写光の光軸と、その光軸がスクリーン200の投写面と交差する交点におけるスクリーン200の法線とのなす角度を0°にすることである。この時、投写レンズ50から拡大投写された投写画像の反射光をフォトダイオード62が受光する場合、受光量が最大となる。
【0038】
これに対して、図2(b)は、スクリーンとプロジェクタの光軸とが合っていない状態での配置図である。
スクリーン200とプロジェクタ1が正対しておらず、角度α(角度のズレ量という)だけ傾いている。そして、光軸は、スクリーン200の投写面との交点におけるスクリーン200の法線とのなす角度αをもって交差することになるため、投写光も角度αのズレを初期的に持ってスクリーン200に投写され、角度αを持って反射されることになる。この場合、投写レンズ50から拡大投写された投写画像の反射光をフォトダイオード62が受光する場合、受光量は、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸とを合わせた状態(角度αが0°:プロジェクタ1の光軸とスクリーン200の法線との成す角度が0°の状態)での受光量のように最大とはならずに、角度αの大きさに応じて受光量が変化する。そして、角度αが大きくなるに従って、受光量は減少することになる。
【0039】
このように、本実施形態の光軸調整方法は、フォトダイオード62を用いて投写画像の反射光を受光することで、スクリーン200とプロジェクタ1との角度のズレによる受光量の変化をデータとして取得して、角度のズレ量をユーザーに理解し易い表示(図5を用いて後述する)で表示装置100に表示させる方法である。また、本実施形態の光軸調整方法は、ユーザー本人の行う調整状態を同時に表示装置100に表示させる方法である。よって、ユーザーは、表示装置100に表示される表示内容を確認しながら、角度αのズレを角度0°になるように調整することになる。
【0040】
図3は、第1の実施形態の受光センサ部の概略構成図である。図3を用いて、受光センサ部60の説明を行う。
【0041】
受光センサ部60は、上述したように受光素子であるフォトダイオード62と、フォトダイオード62が、投写画像の反射光を受光して出力した微弱な電流を、電圧に変換および増幅してA/Dコンバータ70に出力するオペアンプ回路64(電流-電圧変換回路)とを備えている。フォトダイオード62は、本実施形態では可視光の測光用のSiフォトダイオードを採用している。
【0042】
また、オペアンプ回路64は、オペアンプOPと、安定化用の抵抗R1と、ローパスフィルタとしてのコンデンサCと、出力電圧の増幅率を切替える、抵抗R2,R3,R4からなる増幅率切替え部641などで構成されている。
【0043】
このオペアンプ回路64において、増幅率切替え部641を構成する抵抗の抵抗値の大きさが、R2>R3>R4となる順番とした場合、抵抗を切替えた時の増幅される出力電圧Voutの大きさの順番も抵抗値の大きさの順番と同一となる。このように、増幅率切替え部641の抵抗の切替えに応じて増幅率が変更され、その増幅率に基づいた電圧Voutが出力される。
【0044】
図4は、第1実施形態の光軸調整方法を示すフローチャートである。図4および図1を用いて、プロジェクタ1の動作および光軸調整方法のフローチャートを説明する。
【0045】
ステップS100では、プロジェクタ1を動作させると、ランプが発光を開始する。そして、ステップS101では、CPU80は、メモリ(図示省略)から光軸調整用画像を読出して、画像処理部10で液晶パネル40の特性に合わせて、また、輝度を最大となるように変換し、液晶パネル駆動部20により、液晶パネル40を駆動する。そして、照明光学系30および投写レンズ50により、スクリーン200に拡大投写する。これにより、受光センサ部60の出力電圧のキャリブレーションを開始する。
ここで、本実施形態では、光軸調整用画像として白色の単色のみの画像を使用している。
【0046】
ステップS102では、CPU80は、オペアンプ回路64の増幅率切替え部641の増幅率が最小となるように、増幅率切替え部641の抵抗値の最小のものに切替える。そして、ステップS103では、受光センサ部60の出力電圧を測定する。具体的には、受光センサ部60のフォトダイオード62でスクリーン200の反射光を受光し光量を取得する。その光量に応じて、フォトダイオード62は、電流を出力する。オペアンプ回路64は、出力された電流を、増幅率切替え部641に設定された最小の増幅率に応じた電圧を出力する。そして、CPU80は、出力された電圧をA/Dコンバータ70に入力し、デジタル信号に変換し、この変換した電圧のデジタル信号を入力する。
【0047】
まず、上限側のキャリブレーションを行う。これは、キャリブレーションを行っているときの受光量が最大とは限らないため、投射角度を変化させていくうちに出力電圧が飽和してしまい、正しい投射角度なのか否かを判別できなくなるということを防ぐためである。ステップS104では、CPU80は、受光センサ部60で出力された電圧が、4.75V以上か否かを判断する。4.75Vとは、A/Dコンバータ70の素子規格に応じた動作電圧の上限値より所定量低い値としている。素子規格により、この値は設定することになる。ここで、4.75V以上であると判断した場合には、ステップS105に移行する。
【0048】
ステップS105では、CPU80は、光軸調整用画像の輝度を初期的に設定されるレベルの1段階のレベル分下げる操作を行い、投写画像の輝度を1段階下げる。具体的には、画像処理部10により、光軸調整用画像として白色の単色の明るさが1段階分暗くなるように処理することにより、液晶パネル駆動部20が液晶パネル40を駆動することで、光軸調整用画像の輝度を1段階分暗くすることになる。ステップS105で、光軸調整用画像の輝度を1段階下げると、ステップS103に戻り、ステップS103からステップS105を繰返す。そして、ステップS104で、CPU80が、受光センサ部60で出力された電圧を4.75V未満と判断した場合には、ステップS106に移行する。
【0049】
次に、下限側のキャリブレーションを行う。これは、検出したレベルが低すぎると、投射角度を変更したときの出力電圧の違いが計測できないということを防ぐためである。ステップS106では、CPU80は、受光センサ部60で出力された電圧が、0.25V以下か否かを判断する。0.25Vとは、A/Dコンバータ70の素子規格に応じた動作電圧の下限値より所定量高い値としている。素子規格により、この値は設定することになる。ここで、CPU80が、0.25V以下と判断した場合には、ステップS107に移行する。ステップS107では、CPU80は、受光センサ部60の増幅率が上げられるか否かの判断を行う。ここで、増幅率を上げられると判断した場合、ステップS108に移行する。ステップS108では、受光センサ部60の増幅率を1段階上げる操作を行う。これはオペアンプ回路64の増幅率切替え部641での抵抗値を前回の抵抗値よりも次に高い抵抗値に切替える動作を行うこととなる。そして、ステップS109に移行し、再度受光センサ部60での出力電圧を測定し、再度ステップS106に移行する。
【0050】
ステップS107でCPU80が、受光センサ部60の増幅率が上げられないと判断した場合には、ステップS110に移行する。ステップS110では、CPU80は、表示装置ドライバ90を駆動して、キャリブレーションが行えないことを、表示装置100に表示する。受光センサ部60の不具合の場合などにはこの表示となる。
【0051】
ステップS106で、CPU80が、受光センサ部60で出力された電圧が、0.25Vより大きいと判断した場合、キャリブレーションを終了する。
【0052】
キャリブレーションが終了すると、実際の測定に移行する。
そして、ステップS111に移行し、CPU80は、キャリブレーション後、2回目以降の測定の場合に、今回測定した出力電圧が前回以前の出力電圧と比較して最大値となったか否かを判断する。ここで、キャリブレーション後、1回目の測定を開始した場合においては、最初に受光センサ部60で受光した光量に対する電圧を最大値としている。
【0053】
ここで、ユーザーは、プロジェクタ1を少しずつ回動させて角度αを0°に近づける操作を行うことになる。また、受光センサ部60は、CPU80からの信号を受け、所定時間間隔毎にその時の受光量を取込み、対応する電圧を出力する動作を行うことになる。また、本実施形態での光軸調整は、受光センサ部60での出力電圧が最大値になるように、スクリーン200に対して、プロジェクタ1の角度を調整する方法であり、出力電圧が最大値になった場合が、スクリーン200の法線とプロジェクタ1の光軸が合った状態(角度αが0°の状態)ということになる。
【0054】
ステップS111に移行し、ユーザーのプロジェクタ1の回動による電圧に対して、CPU80が、最大値であると判断した場合、ステップS112に移行する。ステップS112では、CPU80は、最大値と判断した電圧をメモリ内に記憶し、前回の電圧を更新し、ステップS113に移行する。
【0055】
ステップS111で、CPU80が、今回測定した出力電圧が前回以前の出力電圧に比較して最大値とはならないと判断した場合には、ステップS113に移行する。ステップS113では、CPU80は、表示装置ドライバ90を駆動して、現在の電圧と最大の電圧を表示装置100に表示する。
【0056】
そして、ステップS114では、ユーザーが行うプロジェクタ1の回動による位置調整に対応して、CPU80は、受光センサ部60の出力電圧を測定する。ステップS114で、受光センサ部60の出力電圧を測定すると、ステップS111に戻り、それ以降は、ステップS111からステップS114のステップを繰返す。
【0057】
よって、ユーザーは、電圧が最大値と同じになるようにプロジェクタ1を回動させる。そして、回動させた時の電圧が最大値と同じになると、スクリーン200の法線とプロジェクタ1の光軸が合った状態(角度αが0°の状態)ということになる。
【0058】
このステップの途中において、ユーザーのプロジェクタ1に備わる入力部(図示省略)での入力操作により、光軸調整の終了としての信号をCPU80が受け取ると、その時点で、光軸調整を終了することになる。この動作は、本フローチャートとは別の割込み処理となる。
以上説明したフローチャートにより、光軸調整が行われる。
【0059】
ここで、投写対象面であるスクリーン200に投写する投写工程は、各ステップにおいて、光軸調整用画像としての光軸調整用画像をスクリーン200に照明光学系30、液晶パネル40、および、投写レンズ50を用いて投写する工程をいう。
取得工程は、ステップS103、ステップS109およびステップS114での受光センサ部60において出力電圧として出力する各ステップに対応する。
通知工程は、ステップS110およびステップS113の各ステップに対応する。
処理工程は、ステップS104以降のステップにおいて、上記、取得工程および通知工程以外の各ステップに対応する。
キャリブレーション工程は、ステップS100からステップS106の各ステップに対応する。
【0060】
図5は、スクリーンに投写した光軸調整用画像および調整中の状態のデータを表示した例示図である。図5を用いて、内容を説明する。
図5において、白で表す四角の形状内の領域が、光軸調整用画像300である。また、斜線で示す四角の最外形がスクリーン200の外形となる。ここで、図4のフローチャートの中で、ステップS113での結果として、CPU80は、プロジェクタ1に備える表示装置100に出力電圧の現在値と最大値とを表示している。しかし、それ以外に、CPU80は、出力電圧のデータを画像処理部10で変換し、変換された出力電圧の現在値と最大値のデータに基づき液晶パネル駆動部20に液晶パネル40を駆動させることで、光軸調整用画像と共に、スクリーン200にも図5に示すような内容で拡大投写している。表示内容は、表示装置100に表示される内容と同様にしている。
【0061】
詳しくは、図中の「最大値:xx」および「現在値:yy」が、出力電圧の最大値と現在値である。この表示の「xx」および「yy」の値は、出力電圧そのものを表示することでも良いが、本実施形態では、処理部であるCPU80が、受光センサ部60の出力電圧を元に、ユーザーが、最大値(調整の目標とする値)と現在値(調整中の状態での値)とが客観的に理解できるように処理されたデータを表示している。
【0062】
例えば、最大値はどのような出力電圧であっても、「最大値:10」として、現在値は、最大値との出力電圧の比により、例えば、「現在値:9」という表示となる。この場合ユーザーは、現在値の値である「9」を「10」にするために、プロジェクタ1を若干調整すれば良いことが理解でき、プロジェクタ1を微調整することができる。この場合、ユーザーが、プロジェクタ1を回動する場合、回動の中心はあまり動かさないことが必要である。
【0063】
図6は、スクリーンとプロジェクタの光軸とを合わせた状態での投写画面の例示図である。ユーザーが、プロジェクタ1を調整して、スクリーン200に対してプロジェクタ1の光軸が合った状態となった場合、図中の「OK」の表示となる。
なお、ユーザーは、光軸調整が終了した後、プロジェクタ1の投写レンズ50に備わるズームレンズ(図示省略)を操作して、好みの投写画面大きさに調整してプロジェクタ1を使用することになる。
【0064】
上述した第1の実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)ユーザーは、プロジェクタ1を移動させてスクリーン200とプロジェクタ1の光軸とを合わせる光軸調整を行う場合、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸との角度のズレ具合を取得部である受光センサ部60を備えたことで、フォトダイオード62で受光量を受光し、オペアンプ回路64で、出力電圧として取り出せる。そして、その出力電圧を処理部としてのCPU80により処理して、通知部としての表示装置100に、理解し易い表示内容(最大値と現在値)で表示することができる。更に、スクリーン200にも光軸調整用画像と一緒に表示内容(最大値と現在値)を投写し表示できる。そのためユーザーは、表示装置100およびスクリーン200に表示される内容を確認することで光軸調整状態を認識することができ、その表示を認識しながら簡単に、正確に光軸をスクリーン200に合わせることができる。
【0065】
(2)キャリブレーション部が輝度切替え部を備えることで、CPU80の指示により、画像処理部10が、光軸調整用画像の輝度を切替えることができる。また増幅率切替え部641を備えることで、受光センサ部の出力電圧の増幅率を切替えることができる。そのため、正確なキャリブレーションが行える。そして、受光センサ部60は、適正な反射光を受光することができる。また、A/Dコンバータ70は、適正な電圧としてデジタル変換できる。また、CPU80により、受光したデータを正確に処理することができ、その結果を表示装置100およびスクリーン200に表示できる。
【0066】
(3)CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)カメラを用いて、オートフォーカス調整、オートズーム調整を行い、投写画像の台形歪補正を行う構成のプロジェクタでは、プロジェクタの構成および制御プログラムが複雑となる。しかし、本実施形態のフォトダイオード62を用いた構成にすることで、構成も簡単になり、併せて制御プログラムも簡易となる光軸調整を行うことができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第2の実施形態)
【0067】
図7は、本発明のプロジェクタの光軸調整方法を用いた第2の実施形態の構成を示すブロック図である。図7を用いて、図1のプロジェクタ1の構成と異なる構成部分を説明する。
【0068】
図7において、プロジェクタ1は、受光センサ部600として、フォトダイオードを2個備えたことが、図1と異なる構成の部分である。この2個のフォトダイオードであるフォトダイオード62Aおよびフォトダイオード62Bは、プロジェクタ1での配置位置として、投写レンズ50がスクリーン200に投写する方向をプロジェクタ1側からスクリーン200を見た場合に、投写レンズ50左側にフォトダイオード62Aを配置し、投写レンズ50の右側にフォトダイオード62Bを配置している。そして、それぞれの位置において、光軸調整用画像の投写によるスクリーン200からの反射光を受光している。
【0069】
それ以外の構成においては、図1の構成と同様であるため、説明は省略する。また、同様の構成に対して、同様の番号を付記している。
【0070】
図8は、第2の実施形態の受光センサ部の概略構成図である。図8を用いて、受光センサ部600の説明を行う。
【0071】
受光センサ部600は、上述したようにフォトダイオード62Aと、フォトダイオード62Bが、それぞれの位置において、投写画像のスクリーン200からの反射光を受光して出力した微弱な各電流の差に基づいて、電圧に変換および増幅してA/Dコンバータ70に出力するオペアンプ回路65を備えている。フォトダイオード62A,62Bは、本実施形態では可視光の測光用のSiフォトダイオードを採用しており、それぞれの電気特性は同様である。
【0072】
また、オペアンプ回路65は、第1実施形態のオペアンプ回路64と同様に増幅率切替え部651を備えて、出力電圧の増幅率を切替えるための、抵抗R5,R6,R7,R8からなる増幅率切替え部651などで構成されている。
【0073】
また、増幅率切替え部651の抵抗の抵抗値の大きさが、R5>R6>R7>R8となる順番とした場合、抵抗を切替えた時の増幅される出力電圧Voutの大きさの順番も抵抗の抵抗値の大きさの順番と同一となる。このように、増幅率切替え部651の抵抗の切替えに応じて増幅率が変更され、その増幅率に基づいた電圧Voutが出力される。
【0074】
図9は、第2実施形態の光軸調整方法を示すフローチャートである。図9および図7を用いて、プロジェクタ1の動作および光軸調整方法のフローチャートを説明する。
【0075】
ステップS200では、プロジェクタ1を動作させると、ランプが発光を開始する。そして、ステップS201では、CPU80は、増幅率のキャリブレーションを行う場合、片側(本実施形態ではフォトダイオード62A)の値を使用するため、受光センサ部600のオペアンプ回路65のスイッチSWを開放する。
【0076】
次のステップS202からステップS211までのステップは、図4のフローチャートで説明したステップS101からステップS110のステップと同様にして、キャリブレーションが行われる。
【0077】
キャリブレーションが終了すると、ステップS212に移行して、CPU80は、受光センサ部600のオペアンプ回路65のスイッチSWを閉じる。そして、実際の測定に移行する。
【0078】
ステップS213では、CPU80は、今回測定した出力電圧(本実施形態での受光センサ部600は、出力電圧としてフォトダイオード62Aとフォトダイオード62Bとの受光量の差が出力される)が±0.1Vの範囲に入るか否かを判断する。
ここで、CPU80が、出力電圧が±0.1Vの範囲に入ると判断した場合には、ステップS214に移行する。ステップS214では、CPU80は、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸とが合ったことを、表示装置ドライバ90を駆動させて、表示装置100に表示する。
【0079】
ここで、出力電圧が±0.1Vの範囲に入ると光軸調整ができたことと判断するのは、実際の出力電圧とスクリーン200に投写される光軸調整用画像の投写具合を確認することで設定した値である。光軸調整ができたことと判断するための出力電圧範囲を設定するには、プロジェクタ1の出荷時に製造工場において、受光センサ部600を備えたプロジェクタ1を用いて、実際の出力電圧とその時のスクリーン200に投写される光軸調整用画像の投写具合を確認することで設定を行う。また、光軸調整ができたことと判断するための出力電圧範囲を何種類かテーブルとして、プロジェクタ1の記憶部に書き込み、ユーザーが、光軸調整を行う場合にその範囲を設定させることでも良い。
【0080】
ステップS213で、CPU80が、出力電圧が±0.1Vの範囲に入らないと判断した場合には、ステップS215に移行する。ステップS215では、CPU80は、出力電圧が+0.1V以上か否かを判断する。
【0081】
ここで、出力電圧の「+」および「−」に関して説明する。
受光センサ部600は、フォトダイオード62A,62Bの受光量の差として電圧を出力する。よって、フォトダイオード62A,62Bの受光量が同量で合った場合には、出力電圧は0Vとなり、スクリーン200の法線とプロジェクタ1の光軸とが完全に合った(光軸調整が完了した)ことを表している。また、プロジェクタ1が角度のズレを持っている場合には、そのズレの方向によって出力電圧が「+」または「−」の出力電圧となる。本実施形態では、フォトダイオード62Aがフォトダイオード62Bに比べてスクリーン200から離れている場合には、出力電圧は、「−」側の値として出力される。これに対して、フォトダイオード62Bがフォトダイオード62Aに比べてスクリーン200から離れている場合には、出力電圧は、「+」側の値として出力される。ただし、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸とが合ったと判断するステップにおいて、出力電圧に範囲を持たせているため、判断基準の出力電圧を「+0.1V」より小さい方向が「−」側に傾いていると判断し、「+0.1V」以上を「+」側に傾いていると判断することになる。
【0082】
ステップS215で、CPU80が、出力電圧が+0.1V以上ではない(実質的には−0.1V未満)と判断した場合、ステップS216に移行する。ステップS216では、上述したように、フォトダイオード62Aがフォトダイオード62Bに比べてスクリーン200から離れている、言い換えると、プロジェクタ1がスクリーン200に対して左方向に傾いている(左方向に回転している)状態を示している。そこで、CPU80は、表示装置ドライバ90を駆動して、表示装置100に、右方向に傾ける旨の表示を行う。
【0083】
これに対し、ステップS215で、CPU80が、出力電圧が+0.1V以上であると判断した場合、ステップS217に移行する。ステップS217では、ステップS216とは逆に、プロジェクタ1がスクリーン200に対して右方向に傾いている(右方向に回転している)状態を示している。そこで、CPU80は、表示装置ドライバ90を駆動して、表示装置100に、左方向に傾ける旨の表示を行う。
【0084】
ユーザーは、表示装置100に表示される方向を指示する旨の表示画面を見て、プロジェクタ1を回動させる。そして、ステップS218において、CPU80は、プロジェクタ1が回動した状態の受光センサ部600の出力電圧を測定する。出力電圧を測定するとステップS213に戻り、ステップS213からステップS218のステップを繰返すことになる。
【0085】
また、このステップの途中において、ユーザーのプロジェクタ1に備わる入力部(図示省略)での入力操作により、光軸調整の終了としての信号をCPU80が受け取ると、その時点で、光軸調整を終了することになる。これは本フローチャートとは別の割込み処理となる。
【0086】
以上説明したフローチャートにより、光軸調整のキャリブレーションおよび実際の計測が行われる。
【0087】
ここで、投写対象面としてのスクリーン200に投写する投写工程は、各ステップにおいて、光軸調整用画像をスクリーン200に照明光学系30、液晶パネル40、および、投写レンズ50を用いて投写する工程をいう。
取得工程は、ステップS204、ステップS210およびステップS218での受光センサ部600において出力電圧として出力する各ステップに対応する。
通知工程は、ステップS211、ステップS214、ステップS216およびステップS217の各ステップに対応する。
処理工程は、ステップS205以降のステップにおいて、上記、取得工程および通知工程以外の各ステップに対応する。
キャリブレーション工程は、ステップS200からステップS212の各ステップに対応する。
【0088】
図10は、スクリーンに投写した光軸調整用画像および調整中の状態のデータを表示した例示図である。図10を用いて、内容を説明する。
図10において、白で表す四角の形状内の領域が、光軸調整用画像300である。また、斜線で示す四角の最外形がスクリーン200の外形となる。
図9のフローチャートの中で、ステップS216およびステップS217での結果として、CPU80は、プロジェクタ1に備える表示装置100にプロジェクタ1を傾ける表示を行っている。しかし、それ以外に、CPU80は、出力電圧のデータを画像処理部10で変換し、変換された、光軸調整用画像および傾ける表示のデータに基づき液晶パネル駆動部20に液晶パネル40を駆動させることで、スクリーン200にも図10に示すような内容で拡大投写している。表示内容は、表示装置100に表示される内容と同様にしている。
【0089】
図10(a)は、図9のステップS216での表示を、スクリーンに光軸調整用画像と共に投写した図である。この場合には、プロジェクタ1を右側に傾けることを客観的にユーザーに理解できるように、右側を示す矢印として表示している。ユーザーは、この表示および光軸調整用画像を確認しながらプロジェクタ1を右側に傾けることとなる。また、同図の矢印は3個表示されているが、矢印の数は出力電圧の所定の閾値により決められており、光軸が合ってくるに従い矢印の数は減る表示方法としている。
【0090】
また、図10(b)は、図9のステップS217での表示を、スクリーンに光軸調整用画像と共に投写した図である。この場合には、プロジェクタ1を左側に傾けることを客観的にユーザーに理解できるように、左側を示す矢印として表示している。ユーザーは、この表示および光軸調整用画像を確認しながらプロジェクタ1を左側に傾けることとなる。また、同図の矢印の数の表示方法も上記と同様である。
【0091】
なお、図9のステップS214で、光軸が合ったことを表示する場合にも、表示装置100以外に、スクリーン200にも上記と同様に、投写画像として投写する。その場合の投写画像は、図6で説明したと同様の画像となる。
なお、ユーザーは、光軸調整が終了したら、プロジェクタ1の投写レンズ50に備わるズームレンズ(図示省略)を操作して、好みの投写画面大きさに調整してプロジェクタ1を使用することになる。
【0092】
上述した、第2の実施形態によれば、前記第1の実施形態における効果(1)〜(3)が同様に得られる他、以下の効果が得られる。
(1)受光センサ部600として、フォトダイオードを2個備えたことにより、光軸調整を行う場合、角度のズレ具合のみならず方向のズレ具合をも表示することが可能となる。それにより、ユーザーは、方向のズレ具合を表示装置100およびスクリーン200で確認しながら、より効率的に正確に光軸調整を行うことができる。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良など加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0094】
(変形例1)前記実施形態では、受光センサとしてSiフォトダイオードを採用している。Siフォトダイオードは、それ自体に備わるフィルタにより、入射光量に対して比例した電流を出力するが、その他の受光センサを用いる場合、入射光量に対して比例した電流が得られない場合には、受光センサ部の使用するフォトダイオードの前面にフィルタを設けることで、入射光量と出力電流との関係を比例関係になるように、受光センサの感度を調整することができる。それにより、受光センサは、反射光を適正に受光することができる。
【0095】
(変形例2)前記実施形態では、受光センサとしてSiフォトダイオードを採用しているが、これに限らず、光電導素子など使用することができる。それにより、受光センサの選択範囲が広がる。
【0096】
(変形例3)前記実施形態では、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸との角度のズレ具合(量)や方向のズレ具合(量)を、表示装置100やスクリーン200を用いて、角度のズレ量を最大値と現在値で表示させたり、方向のズレ量を矢印で表示させたりしている。しかし、これに限らず、ズレ量を最大値とのズレ量として表示しも良いし、方向のズレ量を左右のバーの長さで表示しても良い。いずれの場合も、ユーザーにとって、光軸の角度のズレ量や方向のズレ量が理解し易い表示であるなら良い。
【0097】
(変形例4)前記実施形態では、スクリーン200とプロジェクタ1の光軸とのズレの具合をユーザーに通知する方法として、表示装置100に表示させ、また、スクリーン200に投写して表示させている。これはどちらか一方のみでも良い。また、これに限らず、音を使用して、ズレの具合を周波数や音の報音間隔の変化により通知しても良い。これにより、ユーザーは、表示を見る必要がなく音を聞くことで光軸調整を行うことができる。
【0098】
(変形例5)前記実施形態では、光軸調整用画像として、白色の単色のみの画像を使用している。しかし、これに限らず、キャリブレーションが行えるのであるなら、単色の各色でも良いし、単色以外の静止画像でも良い。
【0099】
(変形例6)前記実施形態における、プロジェクタ1は、透過型液晶方式のプロジェクタ1である。しかし、これに限らず、DLP(登録商標)(Digital Light Processing)方式、および、反射型液晶方式であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式などを採用したプロジェクタに実施することが可能である。これにより、様々な方式を採用するプロジェクタに対して、本発明の光軸調整方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図。
【図2】光軸調整を行う場合のスクリーンとプロジェクタとの位置関係を表す配置図。
【図3】受光センサ部の概略構成図。
【図4】光軸調整方法を示すフローチャート。
【図5】スクリーンに投写した光軸調整用画像および調整中の状態のデータを表示した例示図。
【図6】スクリーンとプロジェクタの光軸とを合わせた状態での投写画像の例示図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図。
【図8】受光センサ部の概略構成図。
【図9】光軸調整方法を示すフローチャート。
【図10】スクリーンに投写した光軸調整用画像および調整中の状態のデータを表示した例示図。
【符号の説明】
【0101】
1…プロジェクタ、10…画像処理部、20…液晶パネル駆動部、30…投写部を構成する照明光学系、40…投写部を構成する液晶パネル、50…投写部を構成する投写レンズ、60…受光センサ部、62…フォトダイオード、62A…フォトダイオード、62B…フォトダイオード、64…オペアンプ回路、65…オペアンプ回路、70…A/Dコンバータ、80…処理部としてのCPU、90…表示装置ドライバ、100…通知部としての表示装置、200…投写対象面および通知部としてのスクリーン、600…取得部としての受光センサ部、641…キャリブレーション部を構成する増幅率切替え部、651…キャリブレーション部を構成する増幅率切替え部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタの光軸調整方法であって、
光軸調整用画像を投写対象面に投写する投写工程と、
投写された前記光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する取得工程と、
前記取得工程で取得したデータに基づき、前記投写対象面と前記プロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行う処理工程と、
前記処理工程で変換処理された前記角度のズレ具合のデータに基づき、該角度のズレ具合をユーザーに通知する通知工程とを備えたことを特徴とする光軸調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光軸調整方法であって、
前記取得工程では、受光センサを用いることを特徴とする光軸調整方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光軸調整方法であって、
前記処理工程では、前記取得したデータに基づき、前記投写対象面と前記プロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに変換処理を行い、
前記通知工程では、少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに基づき、少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を通知することを特徴とする光軸調整方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光軸調整方法であって、
前記通知工程では、前記処理工程で変換処理された後の少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を前記プロジェクタに備わる表示装置に表示することを特徴とする光軸調整方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光軸調整方法であって、
前記通知工程では、前記処理工程で変換処理された後の少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を前記投写対象面に表示することを特徴とする光軸調整方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光軸調整方法であって、
前記投写工程の後、さらに前記取得工程での出力電圧を調整するキャリブレーション工程を備えたことを特徴とする光軸調整方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光軸調整方法であって、
前記キャリブレーション工程は、前記光軸調整用画像の輝度を切替える輝度切替え工程を備えたことを特徴とする光軸調整方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の光軸調整方法であって、
前記キャリブレーション工程は、取得工程において、前記投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得した後、該データの増幅率を切替える増幅率切替え工程を備えたことを特徴とする光軸調整方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光軸調整方法であって、
前記取得工程では、フィルタを備えて、受光する感度を変更させることを特徴とする光軸調整方法。
【請求項10】
画像を投写するプロジェクタであって、
光軸調整用画像を投写対象面に投写する投写部と、
投写された前記光軸調整用画像の反射光をデータとして取得する取得部と、
前記取得部で取得したデータに基づき、前記投写対象面と前記プロジェクタの光軸との角度のズレ具合のデータに変換処理を行う処理部と、
前記処理部で変換処理された前記角度のズレ具合のデータに基づき、該角度のズレ具合をユーザーに通知する通知部とを備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項11】
請求項10に記載のプロジェクタであって、
前記取得部は、受光センサを備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のプロジェクタであって、
前記処理部は、前記取得したデータに基づき、前記投写対象面と、前記プロジェクタの光軸との少なくとも角度のズレ具合または方向のズレ具合に変換処理を行い、
前記通知部は、少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合のデータに基づき、少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を表示することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
前記通知部は、前記処理部で変換処理された後の少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を前記プロジェクタに備わる表示装置に表示することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項14】
請求項10〜請求項13のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
前記通知部は、前記処理工程で変換処理された後の少なくとも前記角度のズレ具合または方向のズレ具合を前記投写対象面に表示することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項15】
請求項10〜請求項14のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
さらに前記取得部での出力電圧を調整するキャリブレーション部を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項16】
請求項15に記載のプロジェクタであって、
前記キャリブレーション部は、前記光軸調整用画像の輝度を必要に応じて切替える輝度切替え部を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載のプロジェクタであって、
前記キャリブレーション部は、前記取得部において、前記投写された光軸調整用画像の反射光をデータとして取得した後、該データの増幅率を必要に応じて切替える増幅率切替え部を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項18】
請求項10〜請求項17のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
前記取得部は、受光する感度を変更させるフィルタを備えたことを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−30644(P2006−30644A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209945(P2004−209945)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】