説明

光送信器

【課題】自動制御でマッハツェンダ変調器に印加するRF振幅調整電圧および直流バイアス電圧を最適点に収束させることのできる簡易な電圧制御部を設けることにより、製造工程における人件費を削減できる光送信器を提供することを目的にする。
【解決手段】変調データを伝送する伝送経路に設けられたマッハツェンダ変調器と、このマッハツェンダ変調器に印加する振幅調整電圧および直流バイアス電圧を制御する電圧制御部とを有する光送信器において、前記マッハツェンダ変調器を駆動するドライバ電源の電源供給経路に設けられたスイッチと、前記電圧制御部に設けられ、前記スイッチをオンオフ制御するスイッチ制御手段とを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッハツェンダ(MZ;Mach-Zehnder)変調器(以下、MZ変調器という)を用いた光送信器に関し、特に、電圧電源投入後における光位相変調を制御するための電圧の初期調整を自動化するための改良を施した光送信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信における変調方式としては、DPSK(Differential Phase-ShiftKeying;差動位相偏移変調)やDQPSK(Differential Quadrature Phase-ShiftKeying;差動四位相偏移変調)などの光位相変調が広く用いられている。
【0003】
図15は、従来の光送信器で用いられているMZ変調器を用いたDPSK光変調器の構成図の一例である。
【0004】
図15のDPSK光変調器10は、MZ変調器で構成されている。また、DPSK光変調器10には、2系統に分岐された光導波路が形成され、これら各光導波路には変調用のデータを印加するための位相変調部10aと位相変調部10b、位相変調部10cと位相変調部10dがそれぞれ直列接続され、さらに位相変調部10a、10bと10c、10dが並列に接続されている。
【0005】
光源11がDPSK光変調器10の光導波路の一端と接続され、この光導波路が2系統に分岐されて、それぞれの位相変調器10a、10b、10c、10dを介して、再び合波されて他端と光分配器14が接続されている。
【0006】
また、光分配器14にはこの光分配器14からの光を入力する受光器15が接続され、受光器15の出力端子にはDPSK光変調器10の電圧を制御する電圧制御部16が接続されている。電圧制御部16にはこの電圧制御部16から出力される直流バイアス電圧を入力するバイアス電圧アンプ17が接続されている。さらに、DPSK光変調器10の位相変調部10c、10dにはバイアス電圧アンプ17が接続されている。
【0007】
電圧制御部16は、振幅調整電圧制御16aと、直流バイアス電圧制御手段16bとから構成されている。高周波(Rapid frequency)ドライバ(以下、RFドライバ13という)には、RF振幅調整電圧を入力する電圧制御部16の振幅調整電圧制御手段16aが接続され、ドライバ電源やデータ発生器12が接続されている。また、RFドライバ13にはドライブされた信号を入力するドライブDPSK光変調器10の位相変調部10a、10bが接続されている。
【0008】
DPSK光変調器10の光導波路の一端には光源11から連続光が入力されていて、この連続光は2系統に分岐されて各光導波路を通過し、再び合波されて他端から光分配器14を介して光信号Soutとして出力される。
【0009】
データ発生器12から出力されるデータはRFドライバ13に入力され、またフィードバック経路を構成する電圧制御部16内の振幅調整電圧制御手段16aによりRF振幅調整電圧がRFドライバ13に印加され、DPSK光変調器10を駆動するドライバ電源をRFドライバ13に入力することにより、RFドライバ13に入力されたデータは適切な振幅電圧に増幅されてDPSK光変調器10の各光導波路に設けられている各位相変調部10a、10bに印加される。
【0010】
DPSK光変調器10の光導波路に設けられている各位相変調部10c、10dには、フィードバック経路を構成する電圧制御部16内の直流バイアス電圧制御手段16bによりバイアス電圧アンプ17を介して所定の直流バイアス電圧が印加され、この直流バイアス電圧が適切に調整される。ここに、RF信号を印加することにより、ゼロ、またはπに位相変調され、外部に出力される信号Soutと受光器15に入力される信号に分配される。
【0011】
RFドライバの振幅と直流バイアス電圧が適切に設定されていないと、復調した際のアイパターンが閉じてしまいデータの「0」あるいは「1」の識別が困難になり、伝送品質が低下して伝送劣化の原因となる。そこで、図15の光送信器では、電圧制御部16内に振幅調整電圧制御手段16aと直流バイアス電圧制御16bを設け、DPSK光変調器10に所定の電圧をフィードバックすることにより、伝送品質を保っている。
【0012】
ここでは、DPSK変調器に対する制御方式について説明する。RF振幅調整電圧の制御時には直流バイアス電圧の最適点に対してある誤差範囲内に設定される必要があり、直流バイアス電圧の制御時にはRF振幅調整電圧の最適点に対してある誤差範囲内に設定される必要がある。この直流バイアス電圧の制御時にはRF振幅調整電圧の最適点に対してある誤差範囲内に設定されることを以下前提条件という。
【0013】
ここで、前提条件が必要な理由を以下説明する。ある瞬時におけるDPSK変調器10の出力光パワーは、式(1)で近似される。ここで、DPSK光変調器10の出力光パワーをPow、DPSK光変調器の出力光パワー基準値をPow、直流バイアス電圧によって決まる光位相のバイアス角をθDC、RFドライバ13の印加電圧による光位相の変化量をθRFとする。
Pow(θDC、θRF)=Pow・{1+cos(θDC+θRF)}・・・式(1)
【0014】
ここで、RFドライバ13の変調波形をある位相変化量(±θAMP)に相当する振幅を持った方形に近い台形波であると仮定すると、出力光パワーの平均値は、式(2)で近似できる。

【0015】
図16は、式(2)の関係式から導かれる平均光パワーと直流バイアス電圧、RF振幅の関係例を示す。(a)、(b)は直流バイアス電圧に対する平均光パワー特性、(c)、(d)はRF振幅に対する平均光パワー特性の関係をグラフで示したものである。
【0016】
(a)、(b)において、平均光パワーは直流バイアス電圧に対して周期的に変化している。また、(a)と(b)を比較すると、RF振幅の最適点である±(以下、プラスマイナスという)0.5*Vπを境界にして、傾きが反転しているのが確認できる。すなわち、(a)ではRF振幅の最適点が−(以下、マイナスという)0.5*Vπから+(以下、プラスという)0.5*Vπの場合、平均光パワーが最大となる点が直流バイアス電圧の最適点となっているのに対して、(b)ではRF振幅の最適点が(マイナス)0.5*Vπ以下、かつ(プラス)0.5*Vπ以上の場合、平均光パワーが最小となる点が直流バイアス電圧の最適点となっている。
【0017】
(c)、(d)において、平均光パワーはRF振幅に対して周期的に変化している。また、(c)と(d)を比較すると、直流バイアス電圧の最適点である(プラスマイナス)0.5*Vπを境界にして、傾きが反転しているのが確認できる。すなわち、(c)では直流バイアス電圧の最適点が(マイナス)0.5*Vπから(プラス)0.5*Vπの場合、平均光パワーが最大となる点がRF振幅の最適点となっているのに対して、(d)では直流バイアス電圧の最適点が(マイナス)0.5*Vπ以下、かつ(プラス)0.5*Vπ以上の場合、平均光パワーが最小となる点がRF振幅の最適点となっている。
【0018】
そこで、特許文献1では光デュオバイナリ変調方式において、光変調器の電圧対光出力特性の変動に伴う動作点変動を補償できる光変調装置および光変調器の制御方法の提案が行われている。
【0019】
また、特許文献2では光信号に、たとえばRZ―DPSK変調形式で、強度変調およびDPSK変調を施す光信号送信器のバイアスおよび整合を制御するための方法および装置の提案が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−162563号公報
【0021】
【特許文献2】特開2008−524655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、このような光送信器には、次のような課題があった。平均光パワーの最大点を探索する制御方式では、直流バイアス電圧およびRF振幅の初期値設定により、起動制御時に、最適点ではない点、すなわち最適点からVπはなれた点に収束してしまうという問題がある。
【0023】
また、直流バイアス電圧およびRF振幅が最適点ではない点に収束するのを回避する方法として、一般的に、製造工程でRF振幅調整電圧の初期値を調整する手法が使用されているが、この手法では調整する際に人件費が発生するという問題がある。
【0024】
さらに、調整にかかる人件費を削減するために、RF振幅調整電圧の初期値を製品間で共通の固定パラメータとする必要がある。RF振幅調整電圧の初期値を製品間で共通の固定パラメータとするためには、MZ変調器の光位相をπ変化させるために必要なRF振幅電圧とRFドライバの振幅特性による部品の選別が必要となり、人件費が発生するという問題もある。
【0025】
本発明の目的は、自動制御でマッハツェンダ変調器に印加するRF振幅調整電圧および直流バイアス電圧を最適点に収束させることのできる簡易な電圧制御部を設けることにより、製造工程における人件費を削減できる光送信器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
変調データを伝送する伝送経路に設けられたマッハツェンダ変調器と、このマッハツェンダ変調器に印加する振幅調整電圧および直流バイアス電圧を制御する電圧制御部とを有する光送信器において、
前記マッハツェンダ変調器を駆動するドライバ電源の電源供給経路に設けられたスイッチと、
前記電圧制御部に設けられ、前記スイッチをオンオフ制御するスイッチ制御手段と
を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記スイッチ制御手段は、
前記直流バイアス電圧の値が不定の場合は前記スイッチをオフに制御し、
前記直流バイアス電圧の値が最適点にある場合は前記スイッチをオンに制御することを特徴とする請求項1記載の光送信器。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記マッハツェンダ変調器としてマッハツェンダ型の誘電体結晶LiNbO3を用いたDPSK光変調器、あるいはDQPSK光変調器を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、自動制御でマッハツェンダ変調器に印加するRF振幅調整電圧および直流バイアス電圧を最適点に収束させることのできる簡易な電圧制御部を設けることにより、マッハツェンダ変調器のRF-Vπ、RFドライバの振幅特性に関して部品のばらつきがある場合にも製造工程で初期値の調整や部品の選別などを行うことなく、自動制御を行うことにより、製造工程における人件費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の一実施例を示す構成図である。
【図2】電圧制御部の起動制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の他の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の他の実施例を示す構成図である。
【図5】本発明の光送信器の他の実施例を示す構成図である。
【図6】MZAにおける直流バイアス電圧およびRF振幅が共に最適な場合のMZA出力光の電界ベクトル図の一例である。
【図7】DQPSK光変調器出力光の電界ベクトルを示した図の一例である。
【図8】図7に示す最適状態からMZA、MZB共にRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にしたときの電界ベクトルを示した図である。
【図9】図4、5で使用している制御装置の起動制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【図10】MZCの位相変調部MZC(直流)の最適点探索原理図である。
【図11】図9のフローチャートについて光の電界ベクトル図である。
【図12】MZAにRFドライバのHighとLowが非対称である場合の光電界ベクトル図の一例である。
【図13】非対称をRFドライブに対応したRF振幅およびバイアス制御装置の起動制御フローチャートの一例である。
【図14】図13のDQPSK起動制御フローチャートを説明する光の電界ベクトル図の一例である。
【図15】従来の光送信器で用いられているMZ変調器を用いたDPSK光変調器の構成図の一例である。
【図16】従来の光出力強度グラフと光出力波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の実施例を示す構成図である。なお、図15と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0032】
図15の従来例と異なる点は、電圧制御部20にDPSK光変調器10を駆動するドライバ電源のオンオフを制御する機能を有するスイッチ制御手段20aを設けた点である。また、スイッチ制御手段20aからの出力信号に基づきドライバ電源のオンオフを行うスイッチ21を設けた点である。
【0033】
また、電圧制御部20は、従来から設けられている振幅調整電圧制御手段16aと直流バイアス電圧制御手段16bのほかに、スイッチ制御手段20aとで構成されている。図1のDPSK光変調器10は、MZ変調器で構成されている。
【0034】
MZ変調器からなるDPSK光変調器10の各光導波路には、光源11から光が入射される。一方、データはRFドライバ13に入力され、適切な振幅電圧にドライブされてDPSK光変調器10の各光導波路に設けられている各位相変調部10a、10bに印加される。
【0035】
光導波路に設けられている位相変調部10a、10bには、RFドライバ13から所定の電圧が印加されて、光の強度が変調される。このDPSK光変調器10により光の強度が変調された光信号が光分配器14に入力されて、外部に出力される信号Soutと光受光器15に入力される信号に分配される。
【0036】
電圧制御部20内のスイッチ制御手段20aにより、スイッチ21が制御され、すなわちRFドライバ13に印加されるドライバ電源の接続が制御される。たとえば、スイッチ21がオンの場合、ドライバ電源の電圧がRFドライバ13に印加され、さらにDPSK光変調器10からの出力電流に基づいて、電圧制御部20内の振幅調整電圧制御手段16aから所定のRF振幅調整電圧がRFドライバ13に入力される。RFドライバ13から適切な振幅電圧にドライブされてDPSK光変調器10の各光導波路に設けられている各位相変調部10a、10bに印加される。
【0037】
また、RFドライバ13やスイッチ21、バイアス電圧アンプ17に、フィーバック手段が構成されている。ここで、フィードバック手段とは、第1のフィードバック手段と第2のフィードバック手段と第3のフィードバック手段のことである。第1のフィードバック手段は電圧制御部20の直流バイアス電圧制御手段16bおよびバイアス電圧アンプ17とからなる構成である。第2のフィードバック手段は電圧制御部20の振幅調整電圧制御手段16aおよびRFドライバ13とからなる構成である。第3のフィードバック手段は電圧制御部20のスイッチ制御手段20aおよびスイッチ21およびRFドライバ13とからなる構成である。
【0038】
また、第1のフィードバック手段により、直流バイアス電圧のフィードバック制御が行われることにより、調整された光調整出力波形がDPSK光変調器10から出力される。
【0039】
フィードバック制御により、DPSK光変調器10の直流バイアス電圧について自動制御ができ、光送信波形の伝送品質を保つことができる。
【0040】
図2は、電圧制御部の起動制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS1では、電圧制御部20内のスイッチ制御手段20aによりスイッチ21を制御し、RFドライバ13に接続されているドライバ電源との接続を切ることにより、RF振幅をゼロにする。
【0042】
次に、ステップS2では、直流バイアス電圧の最適点を探索する。ステップS1により、直流バイアス電圧に対する平均光パワーの関係は従来の図16(b)の状態になる。つまり、直流バイアス電圧の最適点は、平均光パワーが最小となる。したがって、ここでは直流バイアス電圧の最適点である平均光パワーが最小となる点を探索する。
【0043】
ステップS3では、電圧制御部20内のスイッチ制御手段20aによりスイッチ21を制御し、RFドライバ13に接続されているドライバ電源の接続をオフからオンにする。
【0044】
ステップS4では、RF振幅の最適点を探索する。ステップS2において直流バイアス電圧が最適点になっているため、RF振幅に対する平均光パワーの関係は、従来の図16(c)の状態になる。つまり、RF振幅の最適点は、平均光パワーが最大となる。したがって、ここでは、平均光パワーが最大となる点を探索すれば処理が終了する。
【0045】
図3は、本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の他の実施例を示す構成図である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図1と異なる点は、DPSK光変調器10の出力側に、RZ光変調器30を設けた点である。また、DPSK光変調器10あるいは、RZ(return to zero)の光変調器(以下、RZ光変調器30という)からの少なくともどちらか一方の出力電流、すなわち受光器15a、15bからの電流に基づいてDPSK光変調器10の振幅調整電圧および直流バイアス電圧の制御を行っている。
【0047】
図4は、本発明の光送信器で用いられているDPSK光変調器の他の実施例を示す構成図である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図1と異なる点は、DPSK光変調器10の替わりにDQPSK光変調器40を使用している点である。また、DQPSK光変調器40の内部には、マッハツェンダ変調器を3台設けている。これら3台のマッハツェンダ変調器を以下MZA、MAB、MZCとする。また、DQPSK光変調器40の内部に、マッハツェンダ変調器を3台設けていることにより、MZA、MZBの位相変調部40Aaから40Ad、40Baから40Bdは図1の位相変調部の構成と同様である。また、MZA、MZB用のスイッチ21a、21bがそれぞれ設けられ、MZA、MZBにはそれぞれのRFドライバ13a、13bが接続され、各マッハツェンダ変調器にそれぞれバイアス電圧アンプ17aから17cが接続されている。
【0049】
詳細には、DQPSK光変調器40は、2系統に分岐された光導波路が形成され、MZAとMZBが設けられている。MZAは、各光導波路をさらに2系統に分岐された光導波路が形成され、これら各光導波路には変調用のデータを印加するための位相変調部40Aaと位相変調部40Ab、位相変調部40Acと位相変調部40Adがそれぞれ直列接続され、さらに位相変調部40Aa、40Abと40Ac、40Adが並列に接続されている。それぞれの位相変調器40Aa、40Ab、40Ac、40Adを介して、再び合波されて、MZCの位相変調部40Caと接続されている。
【0050】
MZBもMZA同様に構成され、すなわち位相変調部40Baと位相変調部40Bb、位相変調部40Bcと位相変調部40Bdがそれぞれ直列接続され、さらに位相変調部40Ba、40Bbと40Bc、40Bdが並列に接続されている。それぞれの位相変調器40Ba、40Bb、40Bc、40Bdを介して、再び合波されて、MZCの位相変調部40Cbと接続されている。このMZCの位相変調部40Ca、40Cbを介して、再び合波されて、光分配器14と接続されている。
【0051】
すなわち、光源11がDQPSK光変調器40の光導波路の一端と接続され、この光導波路が2系統に分岐されて、それぞれの位相変調器40Aaから40Ad、40Baから40Bd、40Ca、40Cdを介して、再び合波されて他端と光分配器14が接続されている。
【0052】
また、光分配器14にはこの光分配器14からの光を入力する受光器15が接続され、受光器15の出力端子にはDQPSK光変調器40の電圧を制御する電圧制御部23が接続されている。電圧制御部23にはこの電圧制御部23から出力される直流バイアス電圧を入力するバイアス電圧アンプ17aから17cがそれぞれ接続されている。さらに、DQPSK光変調器40の位相変調部40Ac、40Ad、40Bc、40Bd、40Ca、40Cbにはそれぞれバイアス電圧アンプ17aから17cが接続されている。
【0053】
電圧制御部16は、振幅調整電圧制御16aと、直流バイアス電圧制御手段16bのほかにスイッチ制御手段23aとから構成されている。RFドライバ13a、13bには、RF振幅調整電圧を入力する電圧制御部23の振幅調整電圧制御手段16aがそれぞれ接続され、スイッチ21a、21bが接続されている。また、RFドライバ13aにはドライブされた信号を入力するDQPSK光変調器40の位相変調部40Aa、40Abが接続されて、RFドライバ13bにはドライブされた信号を入力するDQPSK光変調器40の位相変調部40Ba、40Bbが接続されている。
【0054】
フィードバック制御により、DQPSK光変調器40の直流バイアス電圧について自動制御ができ、光送信波形の伝送品質を保つことができる。
【0055】
図5は、本発明の光送信器の他の実施例を示す構成図である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図1と異なる点は、DPSK光変調器10の替わりにDQPSK光変調器40を使用し、このDQPSK光変調器40の出力側に、RZ光変調器50を設けた点である。また、DQPSK光変調器40あるいは、RZ光変調器50からの少なくともどちらか一方の出力光パワーに応じた電流に基づいて、すなわち受光器15からの出力電流に基づいてDQPSK光変調器40の振幅調整電圧および直流バイアス電圧の制御を行っている。ここで、DQPSK光変調器40の位相データの制御とは、DQPSK光変調器40内のMZA,MZB,MZCのうち少なくともひとつのマッハツェンダ変調器の位相データを制御することである。
【0057】
図6は、MZAにおける直流バイアス電圧およびRF振幅が共に最適な場合のMZA出力光の電界ベクトル図の一例を示す。
【0058】
(a)は入力データがゼロの場合の電界ベクトル図であり、(b)は入力データが1の場合の電界ベクトル図であり、(c)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にした場合の電界ベクトルであり、(d)は(a)から(c)の3つの状態を重ねて表示したものである。
【0059】
また、DQPSK光変調器40内部のMZAのそれぞれ位相変調部を40Aa(RF)、40Ab(RF)、40Aa(直流)、40Ab(直流)とする。ここで、40Aa(RF)、40Ab(RF)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオンにした場合の位相変調部40Aa、40Abであり、40Ac(直流)、40Ad(直流)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にした場合の位相変調部40Ac、40Adである。
【0060】
(a)では、RFドライバに入力するデータをゼロにし、RFドライバの電源をオンにする場合、位相変調部40Aaと位相変調部40Abにおいて、DQPSK光変調器40内部のMZAの電界ベクトルは、上を向いていることが確認できる。それに対して、(b)では、RFドライバに入力するデータを1にし、RFドライバの電源をオンにする場合、位相変調部40Aaと位相変調部40Abにおいて、DQPSK光変調器40内部のMZAの電界ベクトルは、下を向いていることが確認できる。(c)では、RFドライバの電源をオフにする場合、電源をオフにしたため、位相変調部40Acと位相変調部40Adの電界ベクトルは水平線になっている。また、反対方向を向いていることが確認できる。そして、(d)では、(a)から(c)の3つの状態を重ねて表示していることにより、様々な状態の電界ベクトルを確認できる。
【0061】
また、MZBは、MZAと同様であるため、説明を省略する。
【0062】
図7は、MZAおよびMZB共に、図6に示すように、直流バイアス電圧およびRF振幅が共に最適な場合であり、さらにMZCの直流バイアス電圧が最適な場合のDQPSK光変調器出力光の電界ベクトルを示した図である。
【0063】
ここで、MZA(0)はMZAに入力されるデータがゼロの場合のMZAベクトルであり、MZA(1)はMZAに入力されるデータが1の場合のMZAベクトルであり、MZB(0)はMZBに入力されるデータがゼロの場合のMZBベクトルであり、MZB(1)はMZBに入力されるデータが1の場合のMZBベクトルである。
【0064】
また、MZA(0)とMZB(0)が直交し、MZA(1)とMZB(1)が直交していることにより、MZAの出力光とMZBの出力光の電界ベクトルは直交することが確認できる。
【0065】
図8は、図7に示す最適状態からMZA、MZB共にRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にしたときの電界ベクトルを示した図である。
【0066】
また、DQPSK光変調器内部のMZAの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Ac(直流)、40Ad(直流)とし、MZBの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Bb(直流)、40Bd(直流)とする。ここで、40Ac(直流)、40Ad(直流)、40Bb(直流)、40Bd(直流)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にした場合の位相変調部である。
【0067】
40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Ac(直流)と位相変調部40Ad(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルの合波光VMZAはゼロベクトルとなる。
【0068】
また、40Bb(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Bb(直流)と位相変調部40Bd(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Bb(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルの合波光VMZBはゼロベクトルとなる。
【0069】
したがって、MZAとMZBからの出力光は、ゼロベクトルとなる。また、位相変調部40Acおよび位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルと、位相変調部40Bb(MZb1)および位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルは、直交することが確認できる。
【0070】
図9は、図4、5で使用している制御装置の起動制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS11では、RFドライバの電源をオフにする。すなわち、制御部内のスイッチ制御手段によりMZA、MZBそれぞれのRFドライバを制御するスイッチ21a、21bを制御し、それぞれのRFドライバの電源をオフすることにより、RF振幅をゼロにする。
【0072】
次に、ステップS12では、MZCを対象にして、平均光パワーの最大点を探索する。
【0073】
図10は、MZCの位相変調部MZC(直流)の最適点探索原理図である。すなわち、DQPSK光変調器内のMZAおよびMZBのRF振幅をゼロとした場合におけるMZCの直流バイアス電圧と変調器出力光パワーの関係を示したものである。
【0074】
ここで、図10より、平均光パワー最大点VC_MAXは、MZAからの出力光とMZBからの出力光の電界ベクトルが同位相となっていることが確認できる。すなわち、平均光パワー最大点VC_MAXは、MZAからの出力光とMZBからの出力光の電界ベクトルの位相差ゼロの点に相当している。
【0075】
図9のステップS12に戻って、出力光パワーの最大値をPowC_MAXとして記憶し、平均光パワー最大点を探索時の直流バイアス電圧をVC_MAXをとして記憶する。
【0076】
次に、ステップS13では、MZCを対象にして、平均光パワーの最小点を探索する。
【0077】
ここで、図10より、平均光パワー最小点VC_MINは、MZAからの出力光とMZBからの出力光の電界ベクトルが逆位相となっていることが確認できる。すなわち、平均光パワー最小点VC_MINはMZAからの出力光とMZBからの出力光の電界ベクトルの位相差がπの点に相当している。
【0078】
図9のステップS13に戻って、出力光パワーの最小値をPowC_MINとして記憶し、平均光パワー最小点を探索時の直流バイアス電圧をVC_MINをとして記憶する。
【0079】
ステップS14では、|PowC_MAX−PowC_MIN|>閾値を判定する。すなわち、ステップS12で記憶した平均光パワー最大点PowC_MAXからステップS13で記憶した平均光パワー最小点PowC_MINを引いた値が閾値よりも大きいか判断し、大きい場合はステップS15へ進み、小さい場合はステップS21に進む。
【0080】
ここで、ステップS12で記憶した平均光パワー最大点PowC_MAXからステップS13で記憶した平均光パワー最小点PowC_MINを引いた値が閾値よりも大きいか判断するのは、十分な検出感度が得られているかを判断するためである。すなわち、MZAの直流バイアス点、MZBの直流バイアス点によって、MZAおよびMZBからの出力光がゼロとなる場合、MZCの直流バイアス電圧によらず、DQPSK光変調器からの平均光パワーは一定となり、平均光パワー最大および最小点VC_MAX、VC_MINの探索精度が低下する。このような状態にならないようにするために、ステップS12で記憶した平均光パワー最大点PowC_MAXからステップS13で記憶した平均光パワー最小点PowC_MINを引いた値を計算している。
【0081】
ステップS12で記憶した平均光パワー最大点PowC_MAXからステップS13で記憶した平均光パワー最小点PowC_MINを引いた値が閾値よりも大きいか判断し、大きい場合すなわち十分な検出感度が得られる場合はステップS15に進み、小さい場合すなわち十分な検出感度が得られない場合はステップS21に進む。
【0082】
ステップS15では、MZCを対象にして、MZCの電圧を(VC_MAX+VC_MIN)/2に設定する。
【0083】
ここで、図10より、(VC_MAX+VC_MIN)/2、すなわちVC_MAXおよびVC_MINの中間点であるVC_MAXとVC_MINを加算し、2で割った値は、MZAからの出力光とMZBからの出力光の位相差がπ/2となっていることが確認できる。また、MZAからの出力光とMZBからの出力光の位相差がπ/2となる点は、MZCにおける直流バイアスの最適点である。つまり、MZAおよびMZBが直交するMZCの最適点を設定する。
【0084】
図9に戻って、MZCの直流バイアスとしてステップS12、ステップS13により、MZCにおいて、直流バイアスの最適点である平均光パワーの最大および最小となる点、すなわちそれぞれの最適点VC_MAXとVC_MINを加算し、2で割った値に設定し、最適状態とする。
【0085】
ステップS16では、MZA(直流)を対象にして、平均光パワーの最小点を探索する。すなわち、MZAにおいて直流バイアスの最適点を探索する。
【0086】
MZAおよびMZBは、RF振幅がゼロである場合、MZA、MZBそれぞれから出力される光の電界ベクトルをVMZA、VMZBとする場合、DQPSK光変調器からの出力光パワーは式(3)のようになる。
Pow=|VMZA+VMZB|
=|VMZA|+|VMZB|+2(VMZA・VMZB)・・・式(3)
【0087】
図9のステップS15により、VMZAとVMZBは直交されているため、式(3)は式(4)のようになる。すなわち、MZAからの出力光パワーおよびMZBからの出力光パワーの単純な加算になる。
Pow =|VMZA|+|VMZB|・・・式(4)
【0088】
式(4)により、MZBの直流バイアス電圧を固定し、MZAの直流バイアス電圧を変化させた場合、MZAからの出力光パワーが最大のときはDQPSK光変調器からの出力光パワーも最大となり、MZAからの出力光パワーが最小のときはDQPSK光変調器からの出力光パワーも最小となる。
【0089】
MZAはDPSK光変調器と同一構成であるため、MZAにおいて、直流バイアス、RF振幅に対する出力光パワーの関係はDPSK光変調器と同様の特性になる。
【0090】
ここで、図9のステップS11により、RF振幅をゼロに設定しているので、図16(b)でMZAの平均光パワーが最小となる点がMZAの直流バイアス電圧の最適点となる。また、MZAとMZBの出力光ベクトルは直交しているため、DQPSK光変調器からの平均光パワーが最小となる点がMZAの平均光パワーが最小となる点であり、MZAの直流バイアス電圧の最適点となる。
【0091】
したがって、MZAにおいて、平均光パワーが最小となる直流バイアス電圧点を探索することにより、MZAの直流バイアス電圧を最適状態にしている。
【0092】
次に、ステップS16で、MZAとMZBを入れ替える。ステップS17では、MZB(直流)を対象にして、平均光パワーの最小点を探索する。すなわち、MZBにおいて直流バイアス電圧の最適点を探索する。ステップS11により、RF振幅をゼロに設定しているので、図16(b)でMZAの平均光パワーが最小となる点がMZAの直流バイアス電圧の最適点となる。また、MZAとMZBの出力光ベクトルは直交しているため、DQPSK光変調器からの平均光パワーが最小となる点がMZBの平均光パワーが最小となる点であり、MZBの直流バイアス電圧の最適点となる。
【0093】
したがって、MZBにおいて、平均光パワーが最小となる直流バイアス電圧点を探索することにより、MZBの直流バイアス電圧を最適状態にしている。
【0094】
ステップS18では、RFドライバの電源をオンにする。すなわち、制御部内のスイッチ制御手段によりMZA、MZBのそれぞれのRFドライバの電源供給を制御するスイッチ21a、21bを制御し、それぞれのRFドライバの電源をオンする。
【0095】
ステップS19では、MZAにおいてRFドライバ振幅電圧の最適点を探索する。ステップS11により、直流バイアス電圧に対する平均光パワーの関係は図16(a)の状態になる。つまり、RFドライバ振幅の最適点は、平均光パワーが最大となる。したがって、ここでは直流バイアス電圧の最適点である平均光パワーが最大となる点を探索する。つまり、MZAにおけるRFドライバ振幅の最適点を探索する。
【0096】
MZAのRFドライバに入力されるデータをデータAとし、MZBのRFドライバに入力されるデータをデータBとする場合、(データA,データB)の組合せは、(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)の4パターンが存在し、各データの出現確率は1/4であることを前提とする。
【0097】
また、各データが入力された時のMZA、MZBの出力光の電界ベクトルの組合せは、(VMZA(0),VMZB(0))、(VMZA(0),VMZB(1))、(VMZA(1),VMZB(0))、(VMZA(1),VMZB(1))とし、各データの出現確率が均等に1/4である場合、DQPSK光変調器からの出力光の平均光パワーは、式(5)により近似される。
【0098】

【0099】
図5に示すように、MZAの40Aa(RF)と40Ad(RF)に、符号が逆で絶対値が同じ電圧が印加されるRFドライバとDQPSK光変調器の組み合わせである場合、図9のステップS15により、直流状態でのVMZAとVMZBの直交化がされていれば、i=0 or 1、j=0 or 1の任意のi、jに対し、VMZA(i)とVMZB(j)は直交する。これにより、式(5)は式(6)のようになる。すなわち、MZAからの出力光パワーおよびMZBからの出力光パワーの単純な加算になる。
【0100】

【0101】
つまり、MZBの直流バイアス電圧を固定し、MZAの直流バイアス電圧を変化させた場合、MZAからの出力光パワーの平均値が最大のときはDQPSK光変調器からの出力光パワーの平均値も最大となり、MZAからの出力光パワーの平均値が最小となるときには、DQPSK光変調器からの出力光パワーの平均値も最小となる。
【0102】
MZAはDPSK光変調器と同一構成であるため、MZAにおいて、直流バイアス電圧、RF振幅に対する出力光パワーの関係はDPSK光変調器と同様の特性になる。
【0103】
ここで、図9のステップS16により、MZAの直流バイアス電圧は最適点となっているため、図16(c)によりMZAの平均光パワーが最大となる点がMZAのRF振幅の最適点となる。
【0104】
また、VMZA(i)とVMZB(j)は直交しているため、DQPSK光変調器から出力される出力光パワーが最大となる点がMZAからの出力光パワーが最大となる点であり、MZAのRF振幅の最適点となる。
【0105】
したがって、MZAにおいて、平均光パワーが最大となるRF振幅を探索することにより、MZAのRF振幅を最適状態にしている。
【0106】
ステップS20では、ステップS19では対象がMZAであったが、対象をMZBに入れ替えて、ステップS19と同様のことを行う。すなわち、MZB(RF)を対象にして、平均光パワーの最大点を探索する。すなわち、MZBにおいて直流バイアス電圧の最適点を探索する。
【0107】
したがって、MZBにおいて、平均光パワーが最大となるMZBのRF振幅を探索することにより、MZBのRF振幅を最適状態にする。
【0108】
ステップS21では、MZA(直流)およびMZB(直流)を対象にして、直流バイアス電圧を変更する。ステップS15により、検出感度が得られないと判断された場合、検出感度が得られるバイアス点になるようにMZAおよびMZBの直流バイアス電圧の変更を行う。すなわち、MZA、MZBにおいて、直流バイアス電圧が変更されて、ステップS12へ進む。すなわち、ステップS14において検出感度が得られないと判断された場合は、ステップS21からステップS12へ進み、ステップS13、ステップS14と進む。したがって、ステップS14において検出感度が得られると判断されるまで、ステップ12からステップS21へ進み、ステップS12、S13、S14を繰り返す。また、バイアスの変更方法として、固定値の加算、あるいは減算を行ったり、ある範囲内でランダムに値を変更する方法が挙げられる。
【0109】
すなわち、スイッチ制御手段は、直流バイアス電圧の値が不定(ステップS1)の場合はスイッチ21a、21bをオフに制御し、直流バイアス電圧の値が最適点にある(ステップS17)場合はスイッチ21a、21bをオンに制御している。ここで、RFドライバの電源をオフとは、スイッチ21aおよびスイッチ21bをオフすることである。また、RFドライバの電源をオンとは、スイッチ21aおよびスイッチ21bをオンにすることである。
【0110】
図11は、図9のフローチャートについて説明した光の電界ベクトル図である。(a)は図9のステップS15終了時点に対応する光の電界ベクトル図であり、(b)は図9のステップS17終了時点に対応する光の電界ベクトル図であり、(c)は図9のステップS20終了時点に対応する光の電界ベクトル図である。
【0111】
また、DQPSK光変調器内部のMZAの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Ac(直流)、40Ad(直流)とし、MZBの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Bb(直流)、40Bd(直流)とする。ここで、(b)において、40Ac(直流)、40Ad(直流)、40Bb(直流)、40Bd(直流)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にした場合の位相変調部である。
【0112】
(b)において、40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Ac(直流)と位相変調部40Ad(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルの合波光VMZAはゼロベクトルとなる。
【0113】
また、40Bc(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Bc(直流)と位相変調部40Bd(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Bc(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルの合波光VMZBはゼロベクトルとなる。
【0114】
したがって、MZAとMZBからの出力光は、ゼロベクトルとなる。また、位相変調部40Acおよび位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルと、位相変調部40Bb(MZb1)および位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルは、直交することが確認できる。
【0115】
(c)において、MZA(0)はMZAに入力されるデータがゼロの場合のMZAベクトルであり、MZA(1)はMZAに入力されるデータが1の場合のMZAベクトルであり、MZB(0)はMZBに入力されるデータがゼロの場合のMZBベクトルであり、MZB(1)はMZBに入力されるデータが1の場合のMZBベクトルである。
【0116】
また、MZA(0)とMZB(0)が直交し、MZA(1)とMZB(1)が直交していることにより、MZAの出力光とMZBの出力光の電界ベクトルは直交することが確認できる。
【0117】
図2のステップS2、S4、図9のステップS12、S13、S16、S17、S19、S20における平均光パワーの最小点、もしくは最大点の探索方法として、たとえば次に示すような手法が有効である。
【0118】
たとえば、1つ目の探索方法として、対象とする制御部にある周波数fのディザ信号を加算して入力し、検出した受光器からの電流を周波数fの参照信号で同期検波し、この同期検波値を目標値ゼロに対して負帰還、もしくは正帰還させることにより、出力電圧を制御する。
【0119】
このように制御することにより、同期検波値が負から正に切り替るゼロクロス点、または正から負に切り替るゼロクロス点が探索される。負から正に切り替るゼロクロス点、または正から負に切り替るゼロクロス点は、一方で平均光出力パワーが最大となる点に対応し、他方で平均光出力パワーが最小となる点に対応する。この対応関係は、マッハツェンダ型の誘電体結晶を用いたLiNbO3変調器(以下、LN変調器という)、すなわちDPSK光変調器、DQPSK光変調器、RZ光変調器の構成によって決まるものである。
【0120】
2つ目の探索方法として、受光器からの電流の計測値の直流成分をもとに受光器からの電流が最大となる、もしくは最小となる制御電圧を探索する。さらに、この具体例の1つ目として、対象となる制御部に印加する電圧をある範囲でスイープし、スイープするのと同時に、受光器からの電流の値を取得する。取得された受光器からの電流の値のうち、最大もしくは、最小となったときの制御電圧を平均光パワーが最大となる点、または最小となる点として決定する。具体例の2つ目として、過去N点の制御電圧と、このN点の制御電圧に対する受光器からの電流を取得し、保持する。このN点の制御電圧と受光器からの電流のデータ列をもとに、最小自乗法などの手法を使って直線近似を行い、制御電圧の現在値における、制御電圧に対する受光器からの電流特性の傾きを推定する。その推定した傾きを目標値ゼロに対して負帰還、もしくは正帰還させることにより、制御電圧に対する受光器からの電流特性の極大点(最大点)もしくは、極小点(最小点)を探索する。
【0121】
このように、LN変調器のRF-Vπ、RFドライバの振幅特性について部品ばらつきがある場合においても、製造工程で初期値の調整および部品の選別などを行うことなく、自動制御を行うことにより、正しい最適点に収束できる簡易な制御器を実現し、製造工程における人件費を削減することができる。
【0122】
図1から図11までの実施例では、RFドライバの特性として中心電圧対し、HighとLowが対称なものを前提としていたが、実際にはRFドライバの性能としてHighとLowが非対称、つまり入力データがゼロの場合と、1の場合とで、電圧振幅が異なることがある。そのため、RFドライバのHighとLowが非対称である場合の実施例を図12に示す。
【0123】
図12は、MZAにRFドライバのHighとLowが非対称である場合の光電界ベクトル図の一例を示す。
【0124】
RFドライバのHighとLowが非対称である場合、位相変調部40Aa、40Acおよび位相変調部40Ab、40Adを通過する光はRF振幅をゼロにし、直流バイアス電圧のみ印加された場合の通過光(40Ac(直流)、40Ad(直流))を基準とした場合、位相差はπ/2ではなくなる。この場合、図9に示した起動制御フローチャートでは、ステップS18のRFドライバ電源をオンした後に、MZAからの出力光とMZBからの出力光の間で直交性が保たれなくなり、RF振幅の最適点と平均光パワーの極大点の不一致が生じ、最適点探索が正確にできなくなる。このような非対称性が、RFドライバの設計、もしくは、製造プロセスに依存するものであり、同じ設計、同じ製造プロセスで製造されたものは、全て同一特性を示す場合、MZBについても、MZAと同様の特性がある。MZBについても、MZAと同様の特性があることを利用して、図9で示したDQPSKの起動制御フローを改善したものを図13に示す。
【0125】
図13は、非対称をRFドライブに対応したRF振幅およびバイアス制御装置の起動制御フローチャートの一例である。
【0126】
図9と異なる点は、図13のステップS39において、対象MZAのRF振幅最適点を探索するときには、MZAのRFドライバのみ電源をオンにし、MZBのRFドライバの電源はオフにする点である。また、図13のステップS41において、対象MZBのRF振幅最適点を探索するときには、MZBのRFドライバのみ電源をオンにし、MZAのRFドライバの電源はオフにする点である。
【0127】
図14は、図13のDQPSK起動制御フローチャートを説明する光の電界ベクトル図の一例である。
【0128】
(a)は図13のステップS37の時点における光の電界ベクトル図であり、(b)は図13のステップS39の時点における光の電界ベクトル図であり、(c)は図13のステップS41の時点における光の電界ベクトル図であり、(d)は図13のステップS42の時点における光の電界ベクトル図である。
【0129】
(a)はMZA、MZB共にRFドライバの電源をオフにした(RF振幅をゼロ)場合である。また、DQPSK光変調器内部のMZAの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Ac(直流)、40Ad(直流)とし、MZBの直流バイアス電圧を印加する位相変調部を40Bb(直流)、40Bd(直流)とする。ここで、40Ac(直流)、40Ad(直流)、40Bb(直流)、40Bd(直流)は直流バイアス電圧が最適状態でRFドライバの電源をオフ(RF振幅をゼロ)にした場合の位相変調部である。
【0130】
40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Ac(直流)と位相変調部40Ad(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Ac(直流)と40Ad(直流)の電界ベクトルの合波光VMZAはゼロベクトルとなる。
【0131】
また、40Bb(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルが打消し合う方向に向いていることにより、位相変調部40Bb(直流)と位相変調部40Bd(直流)を通過する光がお互いに打ち消しあうことが確認できる。また、40Bb(直流)と40Bd(直流)の電界ベクトルの合波光VMZBはゼロベクトルとなる。
【0132】
したがって、MZAとMZBからの出力光は、ゼロベクトルとなる。また、位相変調部40Acおよび位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルと、位相変調部40Bbおよび位相変調部40Adを通過する光の電界ベクトルは、直交することが確認できる。
【0133】
(b)はMZAのRFドライバ電源をオンにし、MZBのRFドライバの電源をオフにした場合である。RFドライバに入力するデータをゼロにし、RFドライバの電源をオンにする場合、位相変調部40Aaと位相変調部40Abにおいて、DQPSK光変調器40内部のMZAの電界ベクトルは、上を向いていることが確認できる。それに対して、RFドライバに入力するデータを1にし、RFドライバの電源をオンにする場合、位相変調部40Aaと位相変調部40Abにおいて、DQPSK光変調器40内部のMZAの電界ベクトルは、下を向いていることが確認できる。RFドライバの電源をオフにする場合、電源をオフにしたため、位相変調部40Aaと位相変調部40Abの電界ベクトルは水平線になっている。また、反対方向を向いていることが確認できる。また、様々な状態の電界ベクトルを確認できる。
【0134】
(c)はMZAのRFドライバ電源をオフにし、MZBのRFドライバの電源をオンにした場合である。(c)は、(b)と比較すると、π/2後退した電界ベクトル図になっていることが確認できる。
【0135】
(d)はMZA、MZB共にRFドライバの電源をオンにした場合である。MZAに入力されるデータがゼロの場合のMZAベクトルと、MZBに入力されるデータがゼロの場合のMZBベクトルとが直交し、MZAに入力されるデータが1の場合のMZAベクトルと、MZBに入力されるデータが1の場合のMZBベクトルが直交していることにより、MZAの出力光とMZBの出力光の電界ベクトルは直交することが確認できる。
【0136】
以上説明したように、本発明によれば、自動制御でマッハツェンダ変調器に印加するRF振幅調整電圧および直流バイアス電圧を最適点に収束させることのできる簡易な電圧制御部を設けることにより、LN変調器のRF-Vπ、RFドライバの振幅特性に関して部品のばらつきがある場合にも製造工程で初期値の調整や部品の選別などを行うことなく、自動制御を行うことにより、製造工程における人件費を削減することができる。
【符号の説明】
【0137】
10 DPSK光変調器
20、22、23 電圧制御部
16a 振幅調整電圧手段
16b 直流バイアス電圧制御手段
20a、22a、23a スイッチ制御手段
21 スイッチ
21a、21b スイッチ
40 DQPSK光変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調データを伝送する伝送経路に設けられたマッハツェンダ変調器と、このマッハツェンダ変調器に印加する振幅調整電圧および直流バイアス電圧を制御する電圧制御部とを有する光送信器において、
前記マッハツェンダ変調器を駆動するドライバ電源の電源供給経路に設けられたスイッチと、
前記電圧制御部に設けられ、前記スイッチをオンオフ制御するスイッチ制御手段と
を設けたことを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記スイッチ制御手段は、
前記直流バイアス電圧の値が不定の場合は前記スイッチをオフに制御し、
前記直流バイアス電圧の値が最適点にある場合は前記スイッチをオンに制御することを特徴とする請求項1記載の光送信器。
【請求項3】
前記マッハツェンダ変調器としてマッハツェンダ型の誘電体結晶LiNbO3を用いたDPSK光変調器、あるいはDQPSK光変調器を使用することを特徴とする請求項1または2記載の光送信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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