説明

光通信システム及び接続装置

【課題】通信可能な電子機器の数を増すことができると共に、電気的遅延の影響を抑制して高品質な通信を行うことができる光通信システム及び接続装置を提供する。
【解決手段】アクティブ型の光信号中継装置1と複数のパッシブ型の光合成器3及び光分配器4とを用いて複数の光通信装置2がCANプロトコルによる調停処理を行うことができる通信システムを構成する。詳しくは、信号中継装置1を根ノードとし、光合成器3及び光分配器4の各組をそれぞれ分岐ノードとし、各光通信装置2をそれぞれ葉ノードとした木構造の光通信システムとする。このときに、光信号中継装置1及び各光通信装置2の間に介在する光合成器3及び光分配器4の数が等しくなるように、光合成器3及び光分配器4による木構造を構成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子機器が光信号を介して情報の送受信を行う光通信システム、及びこのシステムに用いることができるジャンクションボックスなどの接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌に搭載された複数の電子機器間の通信にはCAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが広く採用されている(非特許文献1、2参照)。CANの通信プロトコルでは、複数の電子機器が共通のCANバスに接続されるため、複数の電子機器が同時的に送信処理を行って衝突が発生した場合には、各電子機器で調停処理(アービトレーション)が行われ、優先度の高い通信が実行される。アービトレーションを行うために、各電子機器は、CANバスに送信信号の出力を行うと同時に、CANバスの信号レベルの検出を行い、自らが出力した送信信号に対して、検出した信号の信号レベルがレセシブ(劣性値)からドミナント(優性値)に変化した場合、通信の衝突が発生したと判断し、送信処理を停止する。CANバス上の信号はレセシブよりドミナントが優位であるため、通信の衝突が発生してもドミナントを出力した電子機器は送信処理を継続して行うことができる。
【0003】
一方、近年ではEV(Electric Vehicle、電気自動車)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle、ハイブリッド電気自動車)等の車輌が普及し始めており、これらの車輌では、従来の車輌と比較して多くの電子機器が搭載され、より多くの電子機器が通信を行う必要がある。しかし、CANプロトコルによる通信を多くの電子機器で行うためには、UTP(Unshielded Twist Pair cable)などで構成されるCANバスに多くの分岐部分を設ける必要があり、この分岐部分でのインピーダンス不整合などの要因によって信号反射などが繰り返され、信号の伝送路上にリンギングが発生するという問題がある。リンギングの影響によってCANバスに接続する電子機器の数が限界に達した場合、ゲートウェイを介して複数のCANバスを接続する必要がある。このため、1つのCANバスに対する接続可能数より1つでも多くの電子機器が通信を行うためには、車輌にゲートウェイを搭載する必要があり、車輌の部品点数の増加及び高コスト化の要因となる。
【0004】
また、EV又はHEV等では車輌内に高電圧用のケーブルが配され、高電圧用ケーブルからの電磁ノイズの影響を低減するためにCANバスなどの通信ケーブルはシールド処理を施す必要がある。しかし、シールド処理を施すことによって、通信ケーブルのサイズ及び重量等が増大し、車輌の軽量化を阻害すると共に、高コスト化を招来するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling
【非特許文献2】ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and definitions
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信ケーブルに分岐部分を設けることによりリンギングが発生するという問題、並びに、シールド処理によって通信ケーブルのサイズ及び重量等が増大するという問題を解決するために、本願発明者は、車輌に搭載された複数の電子機器間を光ファイバなどの光ケーブルを用いて接続し、複数の電子機器がCANプロトコルに従った光通信を行う構成を提案している。電子機器間を光ケーブルにて接続することによって、光ケーブルはリンギングを含む電磁ノイズが発生することはなく、高電圧用ケーブルを含むノイズ源からの影響を受けることがないため、上記の問題を解決することができる。
【0007】
本願発明者が提案する構成は、例えばN個の電子機器がCANプロトコルによる光通信を行うために、N入力N出力のパッシブ(受動型)の光スターカプラをCANバスとして用い、各電子機器と光スターカプラの入出力とをそれぞれ光ケーブルで接続する構成である。この構成によって、各電子機器は、自らが送信した信号に対してCANバスの信号が変化したか否か、即ち通信の衝突が発生したか否かを判断することが可能となり、CANプロトコルによる光通信が可能となる。ただしこの構成では、光スターカプラにて光信号が分配されるため、接続する電子機器の数が多い場合に光信号のパワーが低下し、通信品質が低下する虞がある。
【0008】
また、本願発明者が提案する別の構成は、複数の光トランシーバを備えるアクティブ(能動型)の光信号中継装置を用い、各電子機器と光信号中継装置とをそれぞれ光ケーブルで接続する構成である。この構成では、各電子機器が備える光トランシーバと光信号中継装置が備えるトランシーバとが一対一で接続されるため、光信号中継装置には多くの光トランシーバを搭載する必要があり、多くの光トランシーバを動作させるために多くの電力が必要とされる。またこの構成では、複数の光信号中継装置を他段階で接続することによって、多数の電子機器を接続することが可能であるが、光信号中継装置内においては複数の光トランシーバ間で電気信号の授受が行われるため、電気的な遅延が発生する虞がある。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通信可能な電子機器の数を増すことができると共に、電気的遅延の影響を抑制して高品質な通信を行うことができる光通信システム、及びこのシステムに用いられる接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光通信システムは、送信用及び受信用の一組の光通信線が接続される接続部、並びに、該接続部に接続された光通信線を介して、優性値及び劣性値の2値で表される光信号を送受信する送受信部をそれぞれ有する複数の光通信装置と、一組の光通信線が接続される複数の接続部、該接続部毎に設けられ、該接続部に接続された光通信線を介した光信号の送受信を行い、受信した光信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を光信号に変換して送信する送受信部、並びに、光信号の優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部へ入力する信号分配部を有し、一の送受信部にて受信した光信号を複数の送受信部から送信する光信号中継装置と、複数の光入力部及び少なくとも1つの光出力部を有し、複数の光入力部から入力された光信号を合成して光出力部から出力する複数の光合成器と、少なくとも1つの光入力部及び複数の光出力部を有し、光入力部から入力された光信号を複数の光出力部へ分配して出力する複数の光分配器とを備え、前記光信号中継装置の各接続部は、一組の光通信線を介して、前記光合成器の光出力部及び前記光分配器の光入力部、又は、前記光通信装置の接続部にそれぞれ接続され、前記光合成器の光入力部及び前記光分配器の光出力部は、一組の光通信線を介して、前記光通信装置の接続部、又は、他の前記光合成器の光出力部及び他の前記光分配器の光入力部に接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光通信システムは、前記光信号中継装置から各光通信装置までの間に介在する前記光合成器及び前記光分配器の数が等しいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光通信システムは、各光合成器は、2つの光入力部と1つの光出力部とをそれぞれ有し、各光分配器は、1つの光入力部と2つの光出力部とをそれぞれ有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光通信システムは、赤外線による無線信号を送受信する赤外線送受信部を有する赤外線無線通信装置を更に備え、前記光信号中継装置は、赤外線による無線信号を送受信し、受信した赤外線による無線信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を赤外線による無線信号に変換して送信する赤外線送受信部を有し、前記光信号中継装置の信号分配部は、優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部又は赤外線送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部及び赤外線送受信部へ入力するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る接続装置は、送信用及び受信用の一組の光通信線を介して外部機器が接続される外部接続部を複数備える接続装置であって、一組の光通信線が接続される複数の接続部、該接続部毎に設けられ、該接続部に接続された光通信線を介した光信号の送受信を行い、受信した光信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を光信号に変換して送信する送受信部、並びに、光信号の優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部へ入力する信号分配部を有し、一の送受信部にて受信した光信号を複数の送受信部から送信する光信号中継装置と、複数の光入力部及び少なくとも1つの光出力部を有し、複数の光入力部から入力された光信号を合成して光出力部から出力する複数の光合成器と、少なくとも1つの光入力部及び複数の光出力部を有し、光入力部から入力された光信号を複数の光出力部へ分配して出力する複数の光分配器とを備え、前記光信号中継装置の各接続部は、一組の光通信線を介して、前記光合成器の光出力部及び前記光分配器の光入力部、又は、前記外部接続部にそれぞれ接続され、前記光合成器の光入力部及び前記光分配器の光出力部は、一組の光通信線を介して、前記外部接続部、又は、他の前記光合成器の光出力部及び他の前記光分配器の光入力部に接続されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る接続装置は、前記光信号中継装置から各外部接続部までの間に介在する前記光合成器及び前記光分配器の数が等しいことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る接続装置は、各光合成器は、2つの光入力部と1つの光出力部とをそれぞれ有し、各光分配器は、1つの光入力部と2つの光出力部とをそれぞれ有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る接続装置は、前記光信号中継装置は、赤外線による無線信号を送受信し、受信した赤外線による無線信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を赤外線による無線信号に変換して送信する赤外線送受信部を有し、前記光信号中継装置の信号分配部は、優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部又は赤外線送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部及び赤外線送受信部へ入力するようにしてあり、外部機器との間で赤外線による無線信号を送受信するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、光信号及び電気信号の変換を行う複数の送受信部を有し、一の送受信部にて受信した光信号を電気信号に変換して複数の送受信部へ分配し、光信号に変換して出力する能動型の光信号中継装置と、入力された複数の光信号を合成して出力する受動型の光合成器及び入力された光信号を複数に分配する受動型の光分配器とを用いて複数の光通信装置を接続し、光通信システムを構成する。
光信号中継装置の各接続部には、一組の光通信線を介して、一組の光合成器及び光分配器を接続する。これにより、光信号中継装置には接続部の数に応じた組数の光合成器及び光分配器が接続される。また光合成器の光入力部及び光分配器の光出力部には、一組の光通信線を介して、光通信装置又は他の一組の光合成器及び光分配器を接続する。即ち、光合成器及び光分配器には、光通信装置を接続してもよく、多段階に他の光合成器及び光分配器を接続してもよい。なお、一組の光合成器及び光分配器に他の一組の光合成器及び光分配器を接続する場合、一方の組の光合成器の光入力部と他方の組の光合成器の光出力部とを一組の光通信線の一方にて接続し、一方の組の光分配器の光出力部と他方の組の光分配器の光入力部とを一組の光通信線の他方にて接続する。
即ち、この構成は、光信号中継装置を根(ルート)ノードとし、各組の光合成器及び光分配器をそれぞれ分岐ノードとし、各光通信装置をそれぞれ葉ノードとした木構造の接続である。
【0019】
上記の構成によって、光信号中継装置には、一段階又は多段階の光合成器及び光分配器を介して、複数の光通信装置が接続される。光通信装置が送信した光信号は、一又は複数の光合成器によって合成されて光信号中継装置へ入力され、光信号中継装置はこの光信号を全ての光分配器へ分配し、各分配器が全ての光通信装置へ光信号を分配する。よって各光通信装置は、自らが送信した光信号及び他の光通信装置が送信した光信号が合成された光信号を受信することができる。これにより、光の有/無を優性値(ドミナント)/劣性値(レセシブ)に対応付けた光信号を送受信することによって、CANプロトコルと同様の調停処理を行うことができる。
光信号中継装置及び複数の光通信装置の間に、光合成器及び光分配器は多段階で接続できる構成であるため、容易に多数の光通信装置を接続して通信システムを構成することができる。能動型の光信号中継装置に受動型の光合成器及び光分配器を複数接続する構成であるため、多数の光通信装置を接続する場合であっても、光信号のパワーの低下を抑制できると共に、電気的な信号の遅延を光信号中継装置のみに抑えることができるため、高品質な通信を行うことができる。
【0020】
また、本発明においては、光信号中継装置から各光通信装置までの間に介在する光合成器及び光分配器の数が等しくなるように接続を行う。これにより、各光通信装置間を送受信される光信号の通信経路の距離が略等しくなり、各光通信装置が略同じタイミングで光信号の送受信を行うことができるため、高品質な通信を実現できる。
【0021】
また、本発明においては、2入力1出力の光合成器と、1入力2出力の光分配器とを組にして用い、光信号中継装置及び複数の光通信装置間の接続を行う。2入力1出力又は1入力2出力の構成は、最も簡易な構成であるため低コストであると共に、2分木構造で光通信装置を接続できるため、容易且つ効率のよい接続が実現できる。
【0022】
また車輌内においては、通信用のケーブルを著しく屈曲させなければならないなど、通信用ケーブル(特に光通信線)の配設が困難な場合がある。
そこで本発明においては、光信号中継装置に赤外線による無線信号の送受信を行う機能を設け、赤外線無線通信装置との間で光信号中継装置が赤外線を介した無線通信を行うことが可能な構成とする。光信号中継装置は、光通信線を介して受信した信号と共に、赤外線を介して受信した信号の分配を行う。これにより、光通信線を介した有線のネットワークと、赤外線を介した無線のネットワークとが混在した光通信システムを実現できる。よって、光通信線の配設が困難な箇所については赤外線による無線通信を適用することができ、車輌などにおける通信装置の配置の自由度などを高めることができる。なお、赤外線無線通信装置と光信号中継装置との間には、鏡又はプリズム等のように赤外線を導くための光学素子を配してもよい。
【0023】
また、本発明においては、上記の光信号中継装置、光合成器及び光分配器を1つの筐体などに収容し、ジャンクションボックスなどの接続装置とする。接続装置に設けられた複数の外部接続部には、一組の光通信線を介して外部装置(上記の光通信装置、又は、他の接続装置、光信号中継装置、光合成器若しくは光分配器等であってもよい)が接続され、接続された複数の外部装置間の光通信を接続装置が中継する。光信号中継装置、光合成器及び光分配器を1つの接続装置として提供することにより、複数の外部装置の接続を容易化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による場合は、光信号中継装置の複数の接続部に光通信性を介して光合成器及び光分配器の組を(一段階又は多段階で)それぞれ接続し、各組の光合成器及び光分配器に光通信装置をそれぞれ接続した木構造の光通信システムを構成することによって、各光通信システムから送信された光信号は、光合成器によって合成されて光信号中継装置へ入力され、光信号中継装置によって光分配器へ分配され、各光分配器によって全ての光通信装置へ分配される。各光通信装置は、自らが送信した光信号及び他の光通信装置が送信した光信号が合成された光信号を受信することができ、CANプロトコルと同様の調停処理を行うことができるため、CANプロトコルによる通信システムの光通信化を実現でき、リンギング及び外部からのノイズ等の影響のない高品質な通信を行うことができる。
この構成では、光信号中継装置及び複数の光通信装置の間に、光合成器及び光分配器の組を多段階で接続できるため、容易に多数の光通信装置を接続して光通信システムを構成することができ、光通信システム中の光通信装置の数を容易に増大させることができる。また、能動型の光信号中継装置に受動型の光合成器及び光分配器を複数接続する構成であるため、多数の光通信装置を接続する場合であっても、光信号のパワーの低下を抑制できると共に、電気的な信号の遅延を光信号中継装置のみに抑えることができるため、信号遅延の発生を最大限に抑制して高品質な通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光通信システムの構成を示す模式図である。
【図2】光通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】光信号中継装置の構成を示すブロック図である。
【図4】光合成器及び光分配器の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る光通信システムの構成を示す模式図である。
【図8】赤外線無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】光信号中継装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る光通信システムの構成を示す模式図である。図において一点鎖線で示す99は車輌であり、実施の形態1の光通信システムは、車輌99に搭載された複数の光通信装置2を、1つの光信号中継装置1と、複数の光合成器3及び光分配器4と、光通信線とを介して接続した構成である。なお図1においては、光通信線を矢印で示すが、これは光信号が伝達される方向を示している。また図1において、光分配器4と、光分配器4に接続された光通信線とは、破線で示してある。
【0027】
図示の例の光通信システムは、1個の光信号中継装置1と、16個の光通信装置2と、12個の光合成器3と、12個の光分配器4と、これらの構成要素を接続する複数の光通信線とを備えている。本光通信システムにおいて、光合成器3及び光分配器4は、それぞれ1個ずつを1組として用いられ、また、光信号の伝達方向が逆の2本の光通信線が1組として用いられる。
【0028】
光信号中継装置1は、4組の光通信線が接続されており、この各組の光通信線には光合成器3及び光分配器4がそれぞれ接続されている(光信号中継装置1には、4組の光通信線を介して、4組の光合成器3及び光分配器4が接続されている)。即ち、光信号中継装置1には、受信用の光通信線(実線矢印)及び送信用の光通信線(破線矢印)が4本ずつ接続可能であり、受信用の光通信線を介して光合成器3がそれぞれ接続され、送信用の光通信線を介して光分配器4がそれぞれ接続されている。光信号中継装置1は、4つの受信用の光通信線を介して受信した光信号を合成し、合成した光信号を4つの送信用の光通信線を介して送信する処理を行う。なお、以下においては、光信号中継装置1に光通信線を介して接続された4組の光合成器3及び光分配器4を、1段目の光合成器3及び光分配器4という。
【0029】
光合成器3は、入力された2つの光信号を1つの光信号に合成して出力する2入力1出力の光学部品である。また光分配器4は、入力された2つの信号を2つに分配して出力する1入力2出力の光学部品である。光合成器3及び光分配器4は2個を1組として用いられ、1組の光合成器3及び光分配器4については、光合成器3の出力及び光分配器4の入力がそれぞれ同じ機器又は装置等に1組の光通信線を介して接続され、光合成器3の一方の入力及び光分配器4の一方の出力がそれぞれ同じ機器又は装置等に1組の光通信線を介して接続され、光合成器3の他方の入力及び光分配器4の他方の出力がそれぞれ同じ機器又は装置等に1組の光通信線を介して接続される。
【0030】
光合成器3及び光分配器4は、一側(光合成器3の出力及び光分配器4の入力が設けられた側)に1組の光通信線が接続され、他側(光合成器3の入力及び光分配器4の出力が設けられた側)に2組の光通信線が接続される。一側にて光通信線を介して光信号中継装置1に接続された1段目の光合成器3及び光分配器4は、他側にて2組の光通信線を介して2組の光合成器3及び光分配器4が接続されている(4組の1段目の光合成器3及び光分配器4には、8組の光通信線を介して、8組の光合成器3及び光分配器4が接続されている)。即ち、1段目の光合成器3の出力には、光信号中継装置1が光通信線を介して接続されると共に、1段目の光合成器3の2つの入力には、他の2つの光合成器3の出力がそれぞれ光通信線を介して接続される。同様に、1段目の光分配器4の入力には、光信号中継装置1が光通信線を介して接続されると共に、1段目の光分配器4の2つの出力には、他の2つの光分配器4の入力がそれぞれ光通信線を介して接続される。なお、以下においては、1段目の光合成器3及び光分配器4に接続された8組の光合成器3及び光分配器4を、2段目の光合成器3及び光分配器4という。
【0031】
一側にて1段目の光合成器3及び光分配器4に接続された2段目の光合成器3及び光分配器4は、他側にて2組の光通信線を介して2個の光通信装置2が接続されている(8組の2段目の光合成器3及び光分派器4には、16組の光通信線を介して、16個の光通信装置2が接続されている)。即ち、2段目の光合成器3の出力には、1段目の光合成器3の入力が光通信線を介して接続されると共に、2段目の光合成器3の2つの入力には、光通信装置2がそれぞれ光通信線を介して接続される。同様に、2段目の光分配器4の入力には、1段目の光分配器4の出力が光通信線を介して接続されると共に、2段目の光分配器4の2つの出力には、光通信装置2がそれぞれ光通信線を介して接続される。光通信装置2には、1組の光通信線がそれぞれ光信号の送信用及び受信用として接続される。
【0032】
光通信装置2が送信した光信号は、光通信線を介して2段目の光合成器3へ入力される。2段目の光合成器3は、光通信装置2から入力された2つの光信号を合成し、合成した光信号を1段目の光合成器3へ出力する。1段目の光合成器3は、2段目の光合成器3から入力された2つの光信号を合成し、合成した光信号を光信号中継装置1へ出力する。光信号中継装置1は、4つの1段目の光合成器3から入力された4つの光信号を合成し、合成した光信号を4つの1段目の光分配器4へ出力する。1段目の光分配器4は、光信号中継装置1から入力された光信号を2段目の2つの光分配器4へ分配する。2段目の光分配器4は、1段目の光分配器4から入力された光信号を2つの光通信装置2へ分配する。これにより、光通信装置2から送信された光信号は、2段目の光合成器3、1段目の光合成器3、光信号中継装置1、1段目の光分配器4、2段目の光分配器4を介して、光通信システム中の全ての光通信装置2にて受信される。よって、光信号の送信元の光通信装置2は、自らが送信した光信号を受信することができるため、光信号の信号値に変化が生じたか否かを判定することによって、CANのプロトコルに応じたアービトレーションを行うことができる。
【0033】
図2は、光通信装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る光通信装置2は、車輌99に搭載されたECU(Electronic Control Unit)などの電子機器に光通信の機能を搭載したものである。光通信装置2は、CPU(Central Processing Unit)21、CANコントローラ22、接続部23及び光送受信モジュール24等を備えて構成されている。光通信装置2のCPU21は、予めROM(Read Only Memory)などに記憶されたプログラムを実行することによって、装置内の各部の動作制御及び制御に必要な各種の演算等の処理を行うものである。またCPU21は、これらの処理過程において他の光通信装置2との情報交換が必要と判断した場合には、CANコントローラ22へ通信指示を与えることによって、他の光通信装置2との通信を行うことができる。CPU21は、他の光通信装置2へデータを送信する場合、このデータをCANコントローラ22へ与える。またCANコントローラ22は、他の光通信装置2からのデータを受信した場合、このデータをCPU21へ与える。
【0034】
CANコントローラ22は、CPU21からデータが与えられた場合、このデータをCANプロトコルのデータ形式に従った送信用データに変換し、光送受信モジュール24の送信部25へ与える。CANプロトコルにて送受信されるデータは、アービトレーションフィールド、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールド及びACK(ACKnowledgement)フィールド等の複数のフィールドで構成されており、CPU21から与えられたデータはデータフィールドに格納される。またアービトレーションフィールドは通信の衝突を調停するためのデータであり、送信データの優先度に応じた値が格納され、データ"0(ドミナント)"の方がデータ"1(レセシブ)"より優先度が高い。
【0035】
またCANコントローラ22は、光送受信モジュール24の受信部26にて受信されたデータが与えられている。この受信データはCANプロトコルのデータ形式であるため、CANコントローラ22は受信データのデータフィールドから必要なデータを抽出してCPU21へ与える。これによりCPU21は、他の光通信装置2からの受信データに応じた処理を行うことができる。
【0036】
光送受信モジュール24は、送信部25及び受信部26を有しており、CANコントローラ22との間で授受する電気信号と、他の光通信装置2との間で授受する光信号との相互変換を行うものである。光送受信モジュール24の送信部25は、例えば発光ダイオードなどの光源及びこの光源の点灯/消灯を行う駆動回路等を有して構成され、CANコントローラ22から電気信号として与えられた送信データを光信号に変換し、この光信号を送信用の光通信線へ出力する。
【0037】
光送受信モジュール24の受信部26は、例えばフォトダイオードなどの受光素子を有して構成され、受信用の光通信線から出射される光を検出する。受信部26は、受光素子にて検出した光に応じた電気信号を出力することができ、これにより他の光通信装置2が送信した光信号を受信して電気信号に変換し、CANコントローラ22へ与えることができる。
【0038】
接続部23は、一組の送信用の光通信線及び受信用の光通信線を、嵌合などの方法によって光通信装置2に接続するためのものである。接続部23に光通信線が接続された場合、送信用の光通信線の端部が光送受信モジュール24の送信部25が有する発光素子に対向し、受信用の光通信線の端部が光送受信モジュール24の受信部26が有する受光素子に対向する。これにより光送受信モジュール24は発光素子及び受光素子によって光信号の送受信を行うことができる。
【0039】
なお本実施の形態においては、送信部25の発光ダイオードが発光して光通信線内に光信号が導通している状態をCANプロトコルのドミナント(優性値)に対応付け、光通信線内に光信号が導通していない状態をレセシブ(劣性値)に対応付けて、各光通信装置2がCANプロトコルに従った光通信を行うものとする。
【0040】
図3は、光信号中継装置1の構成を示すブロック図である。光信号中継装置1は、4つの接続部11と、4つの光送受信モジュール12と、1つのOR素子15とを備えて構成されている。光信号中継装置1の各接続部11は、光通信装置2の接続部23と同様に、一組の送信用の光通信線及び受信用の光通信線を、嵌合などの方法によってそれぞれ接続するためのものである。本実施の形態の光信号中継装置1は、4つの接続部11を備えているため、4組の光通信線を接続することができる。
【0041】
光信号中継装置1の各光送受信モジュール12は、光通信装置2の光送受信モジュール24と同様に、送信部13及び受信部14をそれぞれ有し、光信号と電気信号との相互変換をそれぞれ行うものである。4つの光送受信モジュール12は、4つの接続部11にそれぞれ一対一に対応付けて設けられており、対応する接続部11に接続された光通信線との間で光信号の送受信を行って、送受信に係る光信号と電気信号との相互変換を行う。
【0042】
各光送受信モジュール12は、電気信号の入出力を行うための入力端子13a及び出力端子14aをそれぞれ有している。ただし光信号中継装置1では、光信号のドミナントと電気信号のハイレベルとが対応付けられており、光送受信モジュール12の送信部13は、入力端子13aにハイレベルの電気信号が入力された場合にドミナントの光信号を送信し、入力端子13aにローレベルの電気信号が入力された場合にレセシブの光信号を送信する。同様に光送受信モジュール12の受信部14は、ドミナントの光信号を受信した場合にハイレベルの電気信号を出力端子14aから出力し、レセシブの光信号を受信した場合にローレベルの電気信号を出力端子14aから出力する。
【0043】
光信号中継装置1の4つの光送受信モジュール12の出力端子14aは、4入力1出力のOR素子15の入力にそれぞれ接続されている。またOR素子15の出力は、4つの光送受信モジュール12の入力端子13aに接続されている。OR素子15は、4つの入力のいずれかにハイレベルの電気信号が入力された場合にハイレベルの電気信号を出力し、全ての入力にローレベルの電気信号が入力された場合にローレベルの電気信号を出力するロジックゲート回路である。よってOR素子15は、いずれかの受信部14にてドミナントの光信号が受信されて出力端子14aからハイレベルの信号が出力された場合に、ドミナントの光信号に対応するハイレベルの電気信号を、全ての送信部13へ与える。
【0044】
これにより光信号中継装置1は、一の接続部11に接続された光通信線を介して受信部14が受信した光信号を、全ての接続部11に接続された光通信線に対して送信部13から送信することができる。また光信号中継装置1は、複数の受信部14にて同時的に光信号を受信した場合に、ドミナントに対応する電気信号を優性としてOR素子15にて信号合成を行って、全ての送信部13から送信することができる。
【0045】
図4は、光合成器3及び光分配器4の構成を示す模式図であり、(A)に光合成器3の構成を示し、(B)に光分配器4の構成を示してある。光合成器3及び光分配器4は、2本の光ファイバを結合した(又は、1本の光ファイバを2本に分岐させた)態様の光学部品であり、いわゆるパッシブ型の光カプラである。図示の光カプラは、一側に1つの入出力端が設けられ、他側に2つの入出力端が設けられた構成である。本実施の形態において、光合成器3及び光分配器4は、同じ構成の光カプラを用いて実現することができ、光信号の入出力の方向が異なるのみである。
【0046】
光合成器3は、光カプラの他側の2つの入出力端をそれぞれ光信号の入力端31とし、一側の1つの入出力端を光信号の出力端32として用いたものである。この構成では、少なくともいずれか一方の入力端31から光が入力された場合に出力端32から光が出力されるため、光の有/無をドミナント/レセシブに対応づけた光信号を2つの入力端31から入力する構成とすることにより、光合成器3は、2つの入力端31から入力された光信号を合成して出力端32から出力することができる。
【0047】
光分配器4は、光カプラの一側の1つの入出力端を光信号の入力端41とし、他側の2つの入出力端をそれぞれ光信号の出力端42として用いたものである。この構成では、入力端41から光が入力された場合、この光は2つの出力端42から共に出力されるため、光分配器4は、入力端41から入力された光信号を分配して2つの出力端42から出力することができる。
【0048】
以上の構成の光通信システムは、1つの信号中継装置1を根ノードとし、光合成器3及び光分配器4の各組をそれぞれ分岐ノードとし、各光通信装置2をそれぞれ葉ノードとした2分木構造のネットワーク接続である。図1に示した構成例では、12組の光合成器3及び光分配器4を用いて信号中継装置1及び光通信装置2の間に2段の木構造を構成することによって、16個の光通信装置2がCANプロトコルによる光通信を行うことができる。この構成では、光合成器3及び光分配器4の組を追加/削除することによって、ネットワークに接続する光通信装置2の数を容易に増減することができる。
【0049】
例えば9個〜15個の光通信装置2をネットワーク接続する場合、図1に示した構成例に対して、2段目の光合成器3及び光分配器4の組を適宜に削除し、1段目のいくつかの光合成器3及び光分配器4に光通信装置2を接続する構成とすればよい。また8個の光通信装置2をネットワーク接続する場合、1段目の光合成器3及び光分配器4のみを用いて接続を行えばよい。更に、7個以下の光通信装置2をネットワーク接続する場合には、いくつかの光通信装置2を直接的に光信号中継装置1へ接続する構成としてよい。また例えば、17個以上の光通信装置2をネットワーク接続する場合、光合成器3及び光分配器4の組を適宜に追加して3段目を構成し、3段目の光合成器3及び光分配器4に光通信装置2を接続すればよい。
【0050】
ただし、光信号中継装置1及び各光通信装置2の間に介在する光合成器3及び光分配器4の数が等しくなるように、光合成器3及び光分配器4による二分木構造を構成することが好ましい。図1に示した構成例では、光信号中継装置1及び各通信装置2の間にそれぞれ2つ(2組)の光合成器3及び光分配器4が介在している。また光通信装置2の数が10個などのように、全ての光通信装置2について光合成器3及び光分配器4の介在数を等しくすることができない場合には、介在数の差が1以下となるように、光合成器3及び光分配器4の二分木構造を構成することが好ましい。
【0051】
また2入力1出力の光合成器3及び1入力2出力の光分配器4(即ち、一側に1つの入出力端と他側に2つの入出力端とを有するパッシブ型の光カプラ)を用いることによって、この構成は最も簡易な構成であるため光合成器3及び光分配器4を低コストで実現できると共に、複数組の光合成器3及び光分配器4を二分木構造で接続できるため、光通信装置2を容易且つ効率よく接続することができる。
【0052】
また本実施の形態に係る光通信システムは、パッシブ型の光カプラ(光合成器3及び光分配器4)のみでなく、アクティブ型の光信号中継装置1を介して複数の光通信装置2が光信号の送受信を行う構成である。この構成によって、パッシブ型の光カプラのみで構成された光ネットワークと比較して、多数の光合成器及び光分配器4を介して多数の光信号中継装置1を接続する場合であっても、光信号のパワーの低下を抑制できる。また、アクティブ型の光信号中継装置1を複数接続して光ネットワークを構成した場合と比較して、本実施の形態に係る光通信システムは、光信号中継装置1にて生じる電気的な信号の遅延を最小限に抑えることができる。よって、本実施の形態に係る光通信システムは、より多くの光通信装置2がCANプロトコルに従った光通信を行うことができると共に、高品質な光通信を行うことができる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、本発明の光通信システムを車輌99に搭載されたECUなどの通信に適用する構成としたが、これに限るものではなく、車輌以外の通信システムに同様の構成を適用してもよい。特に本発明の光通信システムは、CANプロトコルによる通信が行われる通信システムを光通信化する場合に好適である。
【0054】
また、図1においては、光信号中継装置1と光合成器3及び光分配器4とを用いて16個の光通信装置2を接続する構成としたが、これは一例であって、これに限るものではなく、15個以下又は17個以上の光通信装置2が光通信を行う構成であってよい。また、光信号中継装置1は、4つの接続部11及び光送受信モジュール12を備える構成としたが、これに限るものではなく、3つ以下又は5つ以上の接続部11及び光送受信モジュール12を備える構成としてもよい。また、2入力1出力の光合成器3及び1入力2出力の光分配器4を用いる構成としたが、これに限るものではなく、例えば3入力1出力の光合成器及び1入力3出力の光分配器、4入力1出力の光合成器及び1入力4出力の光分配器など、その他の構成の光合成器及び光分配器を用いてもよい。
【0055】
また光信号中継装置1内においては、光信号のドミナントを電気信号のハイレベルに対応付ける構成としたが、これに限るものではなく、光信号のドミナントを電気信号のローレベルに対応付ける構成としてもよく、この場合には論理和演算を行うOR素子15に代えて論理積演算を行うAND素子を用いればよい。
【0056】
図5及び図6は、本発明の実施の形態1に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。図5に示す光通信システムは、1つのジャンクションボックス(接続装置)5に複数の光通信装置2を接続した構成である。ジャンクションボックス5には複数の外部接続部51が設けられており、各光通信装置2は、一組の光通信線を介して、ジャンクションボックス5の外部接続部51にそれぞれ接続されている。
【0057】
ジャンクションボックス5は、1つの光信号中継装置1と、12組の光合成器3及び光分配器4とを筐体内に収容したものである。ジャンクションボックス5の筐体には16個の外部接続部51が設けられており、各外部接続部51には送信用及び受信用の一組の光通信線をそれぞれ接続することができ、一組の光通信線を介して光通信装置2又はその他の装置(例えば、他のジャンクションボックス5、光合成器3及び光分配器4、又は、GWなどの装置)を接続することができる。
【0058】
ジャンクションボックス5内の1つの光信号中継装置1、12組の光合成器3及び光分配器4の接続は、図1に示したものと略同じである。光信号中継装置1の4つの接続部11には1段目として4組の光合成器3及び光分配器4が接続されている。1段目の各組の光合成器3及び光分配器4には、それぞれ2組の他の光合成器3及び光分配器4が接続されている(即ち、1段目の4組の光合成器3及び光分配器4には、2段目の8組の光合成器3及び光分配器4が接続されている)。2段目の各組の光合成器3及び光分配器4は、それぞれ2個の外部接続部51に接続されている(即ち、2段目の8組の光合成器3及び光分配器4は、16個の外部接続部51に接続されている)。
【0059】
このように、1つの光信号中継装置1、12組の光合成器3及び光分配器4を1つの筐体に収容してジャンクションボックス5とすることにより、車輌99への搭載を容易化することができる。
【0060】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る光通信システムの構成を示す模式図である。実施の形態2に係る光通信システムは、光信号中継装置201が赤外線による無線通信の機能を有し、赤外線無線通信装置202との間で赤外線(図7において二点鎖線の矢印で示す)を介した通信を行うことができる。光信号中継装置201及び赤外線無線通信装置202は、光通信線などのケーブルを介して接続する必要はなく、赤外線信号が授受できる程度に障害物の少ない空間を隔てて車輌1内に配設される。このときに光信号中継装置201及び赤外線無線通信装置202は必ずしも対向して配設される必要はなく、障害物などで反射された赤外線を光信号中継装置201及び赤外線無線通信装置202が授受する構成であってもよく、光信号中継装置201及び赤外線無線通信装置202の間に鏡又はプリズム等の導光部材を配する構成であってもよい。
【0061】
図8は、赤外線無線通信装置202の構成を示すブロック図である。赤外線無線通信装置202は、車輌99に搭載されたECUなどの電子機器に赤外線を介した無線通信の機能を搭載したものである。赤外線無線通信装置202は、光通信装置2と同様のCPU21及びCANコントローラ22を備えると共に、光通信装置2の接続部23及び光送受信モジュール24に代えて赤外線送受信モジュール224を備えている。
【0062】
赤外線送受信モジュール224は、送信部225及び受信部226を有しており、赤外線信号と、CANコントローラ22との間で授受する電気信号との相互変換を行うものである。赤外線送受信モジュール224の送信部225は、例えば赤外線を発する発光ダイオードなどの光源及びこの光源の点灯/消灯を行う駆動回路等を有して構成され、CANコントローラ22から電気信号として与えられた送信データを赤外線信号に変換し、この赤外線信号を出力する。
【0063】
赤外線送受信モジュール224の受信部226は、例えば赤外線を検知するフォトダイオードなどの受光素子を有して構成され、赤外線の検出を行う。受信部226は、受光素子にて検出した赤外線に応じた電気信号を出力することができ、これにより赤外線無線通信装置202が送信した赤外線信号を受信して電気信号に変換し、CANコントローラ22へ与えることができる。
【0064】
なお本実施の形態においては、受信部226の受光素子が赤外線を検出している状態をCANプロトコルのドミナント(優性値)に対応付け、受光素子が赤外線を検出していない状態をレセシブ(劣性値)に対応付けて、赤外線無線通信装置202がCANプロトコルに従った光通信を行うものとする。
【0065】
図9は、光信号中継装置201の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る光信号中継装置201は、3つの接続部11と、3つの光送受信モジュール12と、1つのOR素子15と、1つの赤外線送受信モジュール212とを備えて構成されている。即ち、実施の形態2に係る光信号中継装置201は、実施の形態1に係る光信号中継装置1の1つの接続部11及び光送受信モジュール12を、1つの赤外線送受信モジュール212に置き換えた構成である。
【0066】
赤外線送受信モジュール212は、赤外線無線通信装置202の光送受信モジュール224と同様に、送信部213及び受信部214をそれぞれ有し、赤外線信号と電気信号との相互変換をそれぞれ行うものである。赤外線送受信モジュール212は、電気信号の入出力を行うための入力端子213a及び出力端子214aをそれぞれ有している。ただし光信号中継装置201では、光信号のドミナントと電気信号のハイレベルとが対応付けられており、赤外線送受信モジュール212の送信部213は、入力端子213aにハイレベルの電気信号が入力された場合にドミナントの赤外線信号を送信し、入力端子213aにローレベルの電気信号が入力された場合にレセシブの赤外線信号を送信する。同様に赤外線送受信モジュール212の受信部214は、ドミナントの赤外線信号を受信した場合にハイレベルの電気信号を出力端子214aから出力し、レセシブの赤外線信号を受信した場合にローレベルの電気信号を出力端子214aから出力する。
【0067】
光信号中継装置201の3つの光送受信モジュール12の出力端子14a及び赤外線送受信モジュール212の出力端子214aは、4入力1出力のOR素子15の入力にそれぞれ接続されている。またOR素子15の出力は、3つの光送受信モジュール12の入力端子13a及び赤外線送受信モジュール212の入力端子213aに接続されている。よってOR素子15は、受信部14又は受信部214のいずれかにてドミナントの光信号が受信されて出力端子14a又は出力端子214aからハイレベルの信号が出力された場合に、ドミナントの光信号に対応するハイレベルの電気信号を、全ての送信部13及び送信部213へ与える。
【0068】
これにより光信号中継装置201は、接続部11に接続された光通信線を介して受信した光信号のみでなく、赤外線送受信モジュール212にて受信した赤外線信号を、全ての接続部11に接続された光通信線に対して送信すると共に、赤外線送受信モジュール212から赤外線無線通信装置202へ送信することができる。また光信号中継装置201は、光送受信モジュール12及び赤外線送受信モジュール212の複数にて同時的に信号を受信した場合に、ドミナントに対応する電気信号を優性としてOR素子15にて信号合成を行って、全ての光送受信モジュール12及び赤外線送受信モジュール212から送信することができる。
【0069】
以上の構成の実施の形態2に係る光通信システムは、光信号中継装置201に赤外線送受信モジュール212による赤外線通信機能を搭載し、光信号中継装置201が光通信線を介して受信した光信号と赤外線にて受信した信号とを合成・分配する構成とすることによって、光通信線を介した光通信と赤外線を介した無線通信とが混在したシステムを実現することができる。これにより、例えば車輌99内において光通信線の配設が困難な箇所については赤外線による無線通信を適用するなど、通信装置及び通信線等の配設の自由度を高めることができる。
【0070】
なお本実施の形態においては、光信号中継装置201に1つの赤外線送受信モジュール212を設ける構成としたが、これに限るものではなく、2つ以上の赤外線送受信モジュール212を設ける構成としてもよい。
【0071】
図10は、本発明の実施の形態2に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。図10に示す光通信システムは、1つの光信号中継装置201と9組の光合成器3及び光分配器4を1つの筐体に収容してジャンクションボックス205とし、ジャンクションボックス205の12個の外部接続部51に1組の光通信線を介して光通信装置2などの装置をそれぞれ接続する構成である。
【0072】
ジャンクションボックス205内の1つの光信号中継装置201、9組の光合成器3及び光分配器4の接続は、図7に示したものと略同じである。光信号中継装置201の3つの接続部11には1段目として3組の光合成器3及び光分配器4が接続されている。また1段目の3組の光合成器3及び光分配器4には、2段目の6組の光合成器3及び光分配器4が接続され、2段目の6組の光合成器3及び光分配器4は12個の外部接続部51に接続されている。
【0073】
またジャンクションボックス205の筐体には、赤外線を透過する透光窓252が設けてあり、光信号中継装置201の赤外線送受信モジュール212にて送受信する赤外線信号をジャンクションボックス205の透光窓252を通して外部の赤外線無線通信装置202との間で送受信することができる。
【0074】
なお、実施の形態2に係る光通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る光通信システムの構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0075】
1 光信号中継装置
2 光通信装置
3 光合成器
4 光分配器
5 ジャンクションボックス(接続装置)
11 接続部
12 光送受信モジュール(送受信部)
13 送信部
13a 入力端子
14 受信部
14a 出力端子
15 OR素子
21 CPU
22 CANコントローラ
23 接続部
24 光送受信モジュール(送受信部)
25 送信部
26 受信部
31 入力端(光入力部)
32 出力端(光出力部)
41 入力端(光入力部)
42 出力端(光出力部)
51 外部接続部
99 車輌
201 光信号中継装置
202 赤外線無線通信装置
205 ジャンクションボックス(接続装置)
212 赤外線送受信モジュール(赤外線送受信部)
213 送信部
213a 入力端子
214 受信部
214a 出力端子
224 赤外線送受信モジュール(赤外線送受信部)
225 送信部
226 受信部
252 透光窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信用及び受信用の一組の光通信線が接続される接続部、並びに、該接続部に接続された光通信線を介して、優性値及び劣性値の2値で表される光信号を送受信する送受信部をそれぞれ有する複数の光通信装置と、
一組の光通信線が接続される複数の接続部、該接続部毎に設けられ、該接続部に接続された光通信線を介した光信号の送受信を行い、受信した光信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を光信号に変換して送信する送受信部、並びに、光信号の優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部へ入力する信号分配部を有し、一の送受信部にて受信した光信号を複数の送受信部から送信する光信号中継装置と、
複数の光入力部及び少なくとも1つの光出力部を有し、複数の光入力部から入力された光信号を合成して光出力部から出力する複数の光合成器と、
少なくとも1つの光入力部及び複数の光出力部を有し、光入力部から入力された光信号を複数の光出力部へ分配して出力する複数の光分配器と
を備え、
前記光信号中継装置の各接続部は、一組の光通信線を介して、前記光合成器の光出力部及び前記光分配器の光入力部、又は、前記光通信装置の接続部にそれぞれ接続され、
前記光合成器の光入力部及び前記光分配器の光出力部は、一組の光通信線を介して、前記光通信装置の接続部、又は、他の前記光合成器の光出力部及び他の前記光分配器の光入力部に接続されていること
を特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記光信号中継装置から各光通信装置までの間に介在する前記光合成器及び前記光分配器の数が等しいこと
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
各光合成器は、2つの光入力部と1つの光出力部とをそれぞれ有し、
各光分配器は、1つの光入力部と2つの光出力部とをそれぞれ有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
赤外線による無線信号を送受信する赤外線送受信部を有する赤外線無線通信装置を更に備え、
前記光信号中継装置は、赤外線による無線信号を送受信し、受信した赤外線による無線信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を赤外線による無線信号に変換して送信する赤外線送受信部を有し、
前記光信号中継装置の信号分配部は、優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部又は赤外線送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部及び赤外線送受信部へ入力するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の光通信システム。
【請求項5】
送信用及び受信用の一組の光通信線を介して外部機器が接続される外部接続部を複数備える接続装置であって、
一組の光通信線が接続される複数の接続部、該接続部毎に設けられ、該接続部に接続された光通信線を介した光信号の送受信を行い、受信した光信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を光信号に変換して送信する送受信部、並びに、光信号の優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部へ入力する信号分配部を有し、一の送受信部にて受信した光信号を複数の送受信部から送信する光信号中継装置と、
複数の光入力部及び少なくとも1つの光出力部を有し、複数の光入力部から入力された光信号を合成して光出力部から出力する複数の光合成器と、
少なくとも1つの光入力部及び複数の光出力部を有し、光入力部から入力された光信号を複数の光出力部へ分配して出力する複数の光分配器と
を備え、
前記光信号中継装置の各接続部は、一組の光通信線を介して、前記光合成器の光出力部及び前記光分配器の光入力部、又は、前記外部接続部にそれぞれ接続され、
前記光合成器の光入力部及び前記光分配器の光出力部は、一組の光通信線を介して、前記外部接続部、又は、他の前記光合成器の光出力部及び他の前記光分配器の光入力部に接続されていること
を特徴とする接続装置。
【請求項6】
前記光信号中継装置から各外部接続部までの間に介在する前記光合成器及び前記光分配器の数が等しいこと
を特徴とする請求項5に記載の接続装置。
【請求項7】
各光合成器は、2つの光入力部と1つの光出力部とをそれぞれ有し、
各光分配器は、1つの光入力部と2つの光出力部とをそれぞれ有すること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の接続装置。
【請求項8】
前記光信号中継装置は、赤外線による無線信号を送受信し、受信した赤外線による無線信号を電気信号に変換して出力すると共に、入力された電気信号を赤外線による無線信号に変換して送信する赤外線送受信部を有し、
前記光信号中継装置の信号分配部は、優性値に対応する信号レベルの電気信号がいずれかの送受信部又は赤外線送受信部から出力された場合に、該電気信号を複数の送受信部及び赤外線送受信部へ入力するようにしてあり、
外部機器との間で赤外線による無線信号を送受信するようにしてあること
を特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載の接続装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−231409(P2012−231409A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99794(P2011−99794)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】