説明

光部品用光ファイバの製造方法

【目的】 長さ方向にMFDや分散値が変化する光部品用光ファイバの製造方法を提供する。
【構成】 VAD法と外付け法の併用により、GeO2 −SiO2 コア−SiO2 クラッドロッドを作製する。このロッドのクラッド外周部を切削して長さ方向にテーパ状のロッドとする。このテーパ状ロッドを延伸して外径が長さ方向に均一な光ファイバ母材とする。この母材のコア径は必然的に長さ方向に変化したものとなる。この母材を均一外径に線引きすることにより、長さ方向にコア径が変化した。MFDおよび分散値が長さ方向に徐々に変化した光ファイバが得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、光ファイバ型部品として使用される光ファイバの製造方法に関するもので、特に長さ方向に分散値やMFDを変化させた特性を有するものを提供する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ網が広がり、多くのところで光ファイバが使用されるようになるといろいろな用途の光ファイバが必要とされる。例えば、数百m〜数百kmのファイバの長さ方向に分散値やMFDが徐々に変化する光ファイバ等である。従来この種の光ファイバは次のようにして作製していた。まず、VAD法により所望の屈折率分布を持つようなGeO2 ドープSiO2多孔質ガラスプリフォームを作製する。この多孔質ガラスプリフォームをおよそ1000℃のHeと塩素系ガス雰囲気で脱水処理し、その後、およそ1500℃のHe雰囲気で透明ガラス化する。このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにクラッディング用の純粋SiO2 からなる多孔質ガラス層を外付けして同様に脱水、透明ガラス化して光ファイバ母材とする。この光ファイバ母材はその長さ方向に構造的にも組成的にも均一に作製されているので、線引きの際に例えば光ファイバ母材の降下速度を変化させることで光ファイバ径を徐々に変化させる。こうして、長さ方向に分離値やMFDが徐々に変化する光ファイバが得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、線引きの際に長尺にわたって光ファイバの外径を徐々に変えるために母材の降下速度を変化させるのは制御が困難ということがあった。また、光ファイバの外径が所定の125μmから大きくずれることもあり、作製後の測定が困難であり、また所定の特性のものが得られないということがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、以上の観点から比較的に簡単な方法で長さ方向に分散値やMFDの変化した光部品用光ファイバを得ようとするもので、その特徴とする請求項1記載の発明は、コアとなる部分およびクラッドとなる部分の径が共に長さ方向に均一な石英系ガラスロッドを用意し、このロッドのクラッドとなる部分の外周部を切削してテーパ状のロッドとなし、このテーパ状のロッドを延伸して均一な外径の光ファイバ母材となし、しかる後均一な外径の光ファイバに線引きすることにある。なお、テーパ状のロッドを延伸して均一な外径の光ファイバ母材とするには、例えば次のようにすれば良い。すなわち、ロッドを垂直に位置させ、円筒状の加熱炉内を通過させる。その際、ロッドの上下両端部をチャックに把持させる。上部チャック、下部チャックともロッドの長さ方向にトラバース可能な移動チャックとし、ロッドの大径の方を上部チャックに、小径の方を下部チャックに把持させる。このような構成の下で、下部チャックの降下速度を上部チャックの降下速度よりも速くする。これにより、コア部がその長さ方向に変化し、クラッド部外径が長さ方向に均一な延伸母材となる。なお、コアの屈折率分布としては長さ方向に一定であれば良く、ステップ型、グレーテッド型を問わず、さらには任意のものでも良い。
【0005】
【作用】ロッドの長さはせいぜい50〜200mmと短いので、これをテーパ状に切削することは比較的簡単であり、また、テーパ状に切削されたロッドを均一な外径にすべく延伸速度を徐々に変えることも比較的簡単なため、容易に長さ方向に外径が均一な光ファイバ母材を得ることができる。かくして、コア部は長さ方向に直径が変化し、外径は均一な光ファイバ母材が容易に得られる。
【0006】
【実施例】
〔実施例1〕VAD法と外付け法の併用によって、コアとなる部分10およびクラッドとなる部分12の径が長さ方向に均一な石英系ロッド1を作製した。このロッド1のクラッド部12の外周を機械的に切削して、図1に示す一端は当初の外径のままで他端は小径のテーパ状ロッド1とした。次に、このテーパ状ロッド1を延伸して図2に示すように、長さ方向に均一な外径の光ファイバ母材20とした。ロッド1の延伸は図3に示す装置を用いた。図において、1は垂直に支持されたテーパ状ロッドで、その両端にはダミーのロッド2が取付けられている。3、4はテーパ状ロッド1を把持する上下移動チャックで、上部チャック3はロッド1の上部大径側のダミーロッド2を把持し、下部チャック4はロッド1の下端の小径側のダミーロッド2を把持する。5は円筒状の抵抗加熱炉で、6はその内部に配置された炉心管である。
【0007】以上の構成において、加熱炉5に通電して炉心管6内温度を1800℃程度に維持する。ロッド1の下端部が軟化しはじめたところで上下チャック3、4を下方に向けて降下させる。この両チャック部の降下速度は、下部チャック4の速度を上部チャック3の速度よりも速い速度で降下させるが、炉心管6内に導かれるロッド1の径が次第に大になるにつれて下部チャック4の速度を次第に速める。両チャック3、4の降下速度は、炉心管6内温度およびロッド1のテーパーの程度を勘案して設定される。かくして、図2に示すように外径が均一な光ファイバ母材が得られる。この光ファイバ母材を一端から線引きし外径が均一で、コア径が長さ方向に次第に変化する光ファイバが得られる。なお、ロッド1の両端にダミーのロッド2を取付けるのは、ロッド1の全長を極力製品とするためである。
【0008】〔具体例1〕VAD法と外付け法の併用により、コア部が直径4.6mmφのGeO2 −SiO2 (純粋SiO2 との比屈折率差0.8%)、クラッド部外径が33mmφのSiO2 からなり、長さが100mmLの光ファイバ用ロッドを作製した。このロッドは、ファイバ径が125.0μmになるように線引きすると、波長1.55μmにおける分散値が0ps/nm/km、ファイバ径が137.5μmになるように線引きすると波長1.55μmにおける分散値が+5.0ps/nm/kmという1.55μm帯分散シフトファイバとなるものである。このロッド外周部を一端はそのままで、他端が30mmφとなるようにテーパ状に切削した後延伸し30mmφの外径が均一な光ファイバ母材とした。この母材をファイバ径125.0μmで線引きした。得られた光ファイバは、一端における分散値が波長1.55μmにおいて0ps/nm/kmであり、他端における分散値が波長1.55μmにおいて+5.0ps/nm/kmというものであった。
【0009】〔比較例1〕実施例1と同じように、VAD法と外付け法の併用により、コア部が直径4.2mmφのGeO2 −SiO2 (純粋SiO2 との比屈折率差Δ=0.8%)、クラッド部外径が30mmφのSiO2 からなり、長さが100mmLの光ファイバ用ロッドを作製した。このロッドの分散特性は、実施例1と同一であり、ファイバ径が125.0μmになるように線引きすると、波長1.55μmにおける分散値が0ps/nm/km、ファイバ径が137.5μmになるように線引きすると波長1.55μmにおける分散値が+5.0ps/nm/kmという1.55μm帯分散シフトファイバとなるものである。この母材を線引きするに際して、母材の降下速度を次第に変化させることによって、先端が125.0μm、後端が137.5μmの光ファイバとした。この光ファイバ作製においてはロッドを切削するという工程はなくてすむものの、線引きに際してファイバ径を徐々に変動させるのに極めて困難をともなった。
【0010】
【発明の効果】この発明方法によれば、MFDや分散値がその長さ方向に変化する光ファイバを得るに際して、ロッドの段階でクラッドとなる部分の径を長さ方向に均一になすとともに、コアとなる部分の径を長さ方向に変化させたものを得、これを線引きする方法であるので、極めて簡単に所望の特性のものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一工程におけるテーパ状ロッドの説明図。
【図2】この発明方法により得られた延伸母材の説明図。
【図3】この発明方法に用いられる延伸装置の概略説明図。
【符号の説明】
1 石英系ガラスロッド
2 ダミーのロッド
3 上部チャック
4 下部チャック
5 加熱炉
6 炉心管
10 コアとなる部分
12 クラッドとなる部分
20 光ファイバ母材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コアとなる部分およびクラッドとなる部分の径が共に長さ方向に均一な石英系ガラスロッドを用意し、このロッドのクラッドとなる部分の外周部を切削してテーパ状のロッドとなし、このテーパ状のロッドを延伸して均一な外径の光ファイバ母材となし、しかるのち均一な外径の光ファイバに線引きすることを特徴とする光部品用光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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